IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本プラスト株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エアバッグ及びエアバッグ装置 図1
  • 特開-エアバッグ及びエアバッグ装置 図2
  • 特開-エアバッグ及びエアバッグ装置 図3
  • 特開-エアバッグ及びエアバッグ装置 図4
  • 特開-エアバッグ及びエアバッグ装置 図5
  • 特開-エアバッグ及びエアバッグ装置 図6
  • 特開-エアバッグ及びエアバッグ装置 図7
  • 特開-エアバッグ及びエアバッグ装置 図8
  • 特開-エアバッグ及びエアバッグ装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019620
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】エアバッグ及びエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/231 20110101AFI20230202BHJP
【FI】
B60R21/231
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124503
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(72)【発明者】
【氏名】小泉 裕之
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054CC30
3D054DD13
3D054FF17
(57)【要約】
【課題】インフレーター又はリテーナをエアバッグ内に挿入して取り付ける作業を行い易くして、作業性を向上させることが可能なエアバッグを提供する。
【解決手段】本発明のエアバッグ(20)は、挿入孔部(24)が設けられたエアバッグ本体部(21)と、エアバッグ本体部(21)に取り付けられるガイド部(31)とを有し、ガイド部(31)は、第1方向の一端部に設けられる第1開口部(32)と、第1方向の他端部に設けられるとともに開口面積が第1開口部(32)よりも大きい第2開口部(33)と、ガイド部(31)の第1方向に直交する周長さが第1開口部(32)に向けて漸減するテーパー部(35)とを有し、エアバッグ本体部(21)及びガイド部(31)は、エアバッグ本体部(21)の挿入孔部(24)とガイド部(31)の第2開口部(33)とが直接接続されて一体化されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが導入される気室を備えた袋状のエアバッグ本体部と、前記エアバッグ本体部に取り付けられるガイド部とを有し、
前記エアバッグ本体部は、前記気室に連通する挿入孔部を有し、
前記ガイド部は、第1方向に延びる筒状の形状を有し、
前記ガイド部は、前記第1方向の一端部に設けられる第1開口部と、前記第1方向の他端部に設けられるとともに開口面積が前記第1開口部よりも大きい第2開口部と、前記ガイド部の前記第1方向に直交する周長さが前記第1開口部に向けて漸減するテーパー部とを有し、
前記エアバッグ本体部及び前記ガイド部は、前記エアバッグ本体部の前記挿入孔部と前記ガイド部の前記第2開口部とが直接接続されて一体化されている
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
前記第1方向に直交する方向の1つを第2方向とした場合、前記ガイド部が筒状に膨らんだ状態において、前記ガイド部の前記第2開口部における前記第2方向の大きさは、前記第1開口部における前記第2方向の大きさの150%以上250%以下である
請求項1記載のエアバッグ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の前記エアバッグと、前記エアバッグの前記ガイド部内に取り付けられるインフレーターとを有する
ことを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記エアバッグ本体部の内側に保持され、
前記ガイド部は、前記第1開口部と前記第2開口部との間に配される折り返し部を有し、
前記ガイド部は、前記第1開口部と前記折り返し部との間に形成される内側筒部が、前記折り返し部と前記第2開口部との間に形成される外側筒部の内側に配されるように前記折り返し部で折り返され、
前記インフレーターは、前記ガイド部の前記内側筒部内に取り付けられている
請求項3記載のエアバッグ装置。
【請求項5】
前記内側筒部と前記外側筒部とに、前記インフレーターに又は前記インフレーターを保持するリテーナに設けられた取付ボルトが挿通する少なくとも1つの挿通孔部がそれぞれ形成され、
前記内側筒部及び前記外側筒部は、前記第1開口部又は前記第2開口部と前記折り返し部との間でよじられている
請求項4記載のエアバッグ装置。
【請求項6】
前記ガイド部における前記折り返し部で折り返される前の前記第1方向に沿った長さは、前記インフレーターの前記ガイド部に挿入される方向に沿った長さの200%以上である
請求項4又は5記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋状のエアバッグ本体部を有するエアバッグ、及び、そのエアバッグとインフレーターとを有するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、自動車の衝突時等に乗員への衝撃を緩和するエアバッグ装置が装着されている。エアバッグ装置は、通常、ガスを発生させるインフレーターと、インフレーターからガスが供給される袋状のエアバッグ本体部とを有する。エアバッグ装置としては、例えば、ステアリングホイールに設けられる運転席エアバッグ装置、インストルメントパネルに設けられる助手席エアバッグ装置、シートの外側に膨張するサイドエアバッグ装置、ルーフサイド部分から膨張するカーテンエアバッグ装置、ステアリングホイール又はインストルメントパネルの下側から膨張する膝用のニーエアバッグ装置等が知られている。
【0003】
例えば特開2017-81248号公報(特許文献1)には、サイドエアバッグ装置が記載されている。この特許文献1に記載されているサイドエアバッグ装置のエアバッグには、インフレーターを挿入するためのスリットが形成されている。また、そのエアバッグには、スリットの少なくとも一部を覆うカバークロスが設けられている。
【0004】
特許文献1には、エアバッグに設けたカバークロスがスリットを押さえ付けてスリットとインフレーター外周面との隙間を覆うため、エアバッグ膨張時にスリットからのガス漏れを抑制し、ガス流出量を低減することができると説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-81248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エアバッグ装置では、エアバッグ内の所定の位置にインフレーターを設置するために、インフレーターに、又はインフレーターを保持するリテーナに取付ボルトが設けられており、エアバッグには、インフレーター又はリテーナに設けた取付ボルトを挿通させるためのボルト挿通孔部が設けられていることがある。
【0007】
例えばインフレーターに取付ボルトが設けられている場合、インフレーターをエアバッグ内に挿入してから、エアバッグ内でインフレーターを移動させながら、インフレーターの取付ボルトを、エアバッグに設けたボルト挿通孔部の位置に合わせて、エアバッグの内側からボルト挿通孔部を介して外側に突出させる作業が行われている。
【0008】
また、リテーナに取付ボルトが設けられている場合、インフレーターを保持したリテーナ、又はインフレーターを保持する前のリテーナをエアバッグ内に挿入してから、そのリテーナの取付ボルトを、エアバッグに設けたボルト挿通孔部を介して、エアバッグの内側からボルト挿通孔部を介して外側に突出させる作業が行われている。
【0009】
しかし、従来のエアバッグ装置又はエアバッグの構造において、取付ボルトを備えたインフレーター又はリテーナをエアバッグ内に挿入した後、エアバッグ内でのインフレーター又はリテーナの位置や向き(姿勢)を正確に把握できない又は把握し難いことから、取付ボルトをエアバッグの内側からボルト挿通孔部に通す作業を行うことが難しかった。特に、インフレーター又はリテーナをエアバッグ内に挿入した後は、そのインフレーター又はリテーナをエアバッグの外側から目視で確認できない状態で取付作業が行われることが多いため、作業性の低下や作業時間の遅延を招いていた。
【0010】
更に例えば、インフレーター又はリテーナをエアバッグ内に挿入するエアバッグの挿入口の位置と、エアバッグに設けるボルト挿通孔部の位置とが、互いに離れている場合や、エアバッグの互いに異なる向きの面に設けられている場合等では、インフレーター又はリテーナの取付ボルトをエアバッグのボルト挿通孔部に通す作業が更に困難になることもあった。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、インフレーター又はリテーナをエアバッグ内に挿入して取り付ける作業を行い易くして、作業性を向上させることが可能なエアバッグ、及びそのエアバッグ及びインフレーターを有するエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明により提供されるエアバッグは、ガスが導入される気室を備えた袋状のエアバッグ本体部と、前記エアバッグ本体部に取り付けられるガイド部とを有し、前記エアバッグ本体部は、前記気室に連通する挿入孔部を有し、前記ガイド部は、第1方向に延びる筒状の形状(細長くて中空の形状)を有し、前記ガイド部は、前記第1方向の一端部に設けられる第1開口部と、前記第1方向の他端部に設けられるとともに開口面積が前記第1開口部よりも大きい第2開口部と、前記ガイド部の前記第1方向に直交する周長さが前記第1開口部に向けて漸減するテーパー部とを有し、前記エアバッグ本体部及び前記ガイド部は、前記エアバッグ本体部の前記挿入孔部と前記ガイド部の前記第2開口部とが直接接続されて一体化されていることを特徴とする。
【0013】
本発明のエアバッグにおいて、前記第1方向に直交する方向の1つを第2方向とした場合、前記ガイド部が筒状に膨らんだ状態において、前記ガイド部の前記第2開口部における前記第2方向の大きさは、前記第1開口部における前記第2方向の大きさの150%以上250%以下であることが好ましい。
【0014】
次に、本発明により提供されるエアバッグ装置は、上述した構成を備える前記エアバッグと、前記エアバッグの前記ガイド部内に取り付けられるインフレーターとを有することを特徴とする。
【0015】
本発明のエアバッグ装置において、前記ガイド部は、前記エアバッグ本体部の内側に保持され、前記ガイド部は、前記第1開口部と前記第2開口部との間に配される折り返し部を有し、前記ガイド部は、前記第1開口部と前記折り返し部との間に形成される内側筒部が、前記折り返し部と前記第2開口部との間に形成される外側筒部の内側に配されるように前記折り返し部で折り返され、前記インフレーターは、前記ガイド部の前記内側筒部内に取り付けられていることが好ましい。
【0016】
この場合、前記内側筒部と前記外側筒部とに、前記インフレーターに又は前記インフレーターを保持するリテーナに設けられた取付ボルトが挿通する少なくとも1つの挿通孔部がそれぞれ形成され、前記内側筒部及び前記外側筒部は、前記第1開口部又は前記第2開口部と前記折り返し部との間でよじられていることが好ましい。
また、前記ガイド部における前記折り返し部で折り返される前の前記第1方向に沿った長さは、前記インフレーターの前記ガイド部に挿入される方向に沿った長さの200%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のエアバッグ及びエアバッグ装置によれば、インフレーター又はリテーナをエアバッグ内に挿入して取り付ける作業を行い易くして、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施例に係るエアバッグ装置を分解された状態で模式的に示す模式図である。
図2】エアバッグ装置のインフレーターを模式的に示す図である。
図3】インフレーターをエアバッグのガイド部に保持した状態を模式的に示す説明図である。
図4】ガイド部及びインフレーターをエアバッグ本体部の内側に挿入した状態を模式的に示す説明図である。
図5図4に示したV-V線における断面図である。
図6】ガイド部がよじられたエアバッグ装置の要部を模式的に示す模式図である。
図7図6に示したVII-VII線における断面図である。
図8】本発明の第1変形例に係るガイド部を模式的に示す斜視図である。
図9】本発明の第2変形例に係るガイド部を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら説明する。
【実施例0020】
図1は、本実施例に係るエアバッグ装置を分解された状態で模式的に示す模式図である。図2は、エアバッグ装置のインフレーターのみを模式的に示す図である。図6は、本実施例に係るエアバッグ装置の要部を模式的に示す模式図である。
本実施例のエアバッグ装置1は、自動車の衝突時等にステアリングホイール又はインストルメントパネルの下方から膨張、展開することによって、乗員の膝への衝撃を緩和するニーエアバッグ装置であり、例えばインストルメントパネルの下部又は下方に装着される。
【0021】
このエアバッグ装置1は、図1及び図6に示したように、ガスを発生させるインフレーター10と、インフレーター10で発生したガスが供給されることによって膨張して展開するエアバッグ20とを有する。
【0022】
インフレーター10は、図2に示したように、略円筒状に形成されたシリンダ型のインフレーター10であり、インフレーター本体部11と、ガス噴出部(ディフューザー)12とを有する。このインフレーター10は、衝突等を検知した信号が入力されたときにインフレーター本体部11でガスを発生させ、そのガスをガス噴出部12から噴出させるように形成されている。
【0023】
このインフレーター10には、インフレーター10を固定するために設けられる2本の取付ボルト13がインフレーター本体部11から突出している。また。ガス噴出部12には、インフレーター10の位置決め及び固定に用いられる突起部14が設けられている。この突起部14は、円柱又は角柱の形状を有する。また、突起部14は、取付ボルト13がインフレーター本体部11から突出する長さと同じ長さでガス噴出部12から突出している。2本の取付ボルト13と突起部14とは、例えばインフレーター10の長さ方向の一方側から見たときに(不図示)、インフレーター本体部11及びガス噴出部12から同じ方向に向けて突出している。なお本発明において、取付ボルト13及び突起部14の形状、大きさ、及び設置数は限定されない。また、本発明のインフレーターは、突起部14を設けずに形成されていてもよい。
【0024】
エアバッグ20は、インフレーター10からガスが供給されて膨らむエアバッグ本体部21と、エアバッグ本体部21に取り付けられるとともにエアバッグ本体部21内へのインフレーター10の挿入をガイドする筒状のガイド部31とを有する。エアバッグ本体部21は、2枚の基布を重ねて縫い合わせることによって袋状に形成されている。なお、エアバッグ本体部21は、1枚の基布又は3枚以上の基布を袋状に縫製して形成されていてもよい。また、エアバッグ本体部21の形状及び大きさも特に限定されない。
【0025】
エアバッグ本体部21は、ガスが導入される気室22を有する。また、エアバッグ本体部21には、縫製糸で形成されるとともに基布を縫い合わせる縫製部(接合部)23が、気室22の少なくとも一部を囲むように形成されている。このエアバッグ本体部21は、エアバッグ本体部21が折り畳まれる前の全体的にフラットな状態に保持されたときに、一方側(例えば、図1の手前側)に配される第1基布部21aと、第1基布部21aの反対側(例えば、図1の奥側)に配される第2基布部21bとを有する。
【0026】
本実施例において、エアバッグ本体部21の第1基布部21aには、ガイド部31及びインフレーター10を挿入するための挿入孔部24と、エアバッグ本体部21内に保持されるインフレーター10の取付ボルト13及び突起部14を挿通させて外側に突出させる3つの貫通孔部25とが設けられている。
【0027】
エアバッグ本体部21の挿入孔部24は、エアバッグ本体部21の気室22に連通している。また、この挿入孔部24は、ガイド部31の後述する第2開口部33に対応する形状及び大きさで形成されており、本実施例の場合、挿入孔部24は、円形若しくは楕円形、又はそれらに近い形状を有する。エアバッグ本体部21の各貫通孔部25は、円形(又は楕円形)に形成されている。また、3つの貫通孔部25は、インフレーター10の取付ボルト13及び突起部14の位置関係に対応して設けられており、且つ、ガイド部31の後述する第2挿通孔部37よりも開口面積を大きくして形成されている。
【0028】
ガイド部31は、1枚の基布又は複数枚の基布を縫い合わせて形成されている。このガイド部31は、第1方向に細長く延びる中空の形状を有する。この場合、ガイド部31の第1方向(図1における左右方向)は、ガイド部31の長さ方向に沿った方向である。
【0029】
ガイド部31は、ガイド部31の長さ方向の一端部(図1における左側の端部)に設けられる円形の第1開口部32と、ガイド部31の長さ方向の他端部(図1における右側の端部)に設けられる円形の第2開口部33とを有する。また、ガイド部31の内周面には、シリコンコーティングが施されていることが好ましい。
【0030】
このガイド部31は、第2開口部33の開口面積が第1開口部32の開口面積よりも大きなラッパ状の形状を有する。また、ガイド部31は、ガイド部31の長さ方向(第1方向)に直交するガイド部31の周長さ(円周の長さ)が一定に又は略一定になるストレート部34と、前記ガイド部31の周長さが第1開口部32に向けて漸減するテーパー部35とを有する。
【0031】
本実施例の場合、ストレート部34は、第1開口部32からガイド部31における長さ方向の中央部又は略中央部までの範囲に設けられている。テーパー部35は、ガイド部31における長さ方向の中央部又は略中央部から第2開口部33までの範囲に設けられている。なお本発明において、ガイド部のテーパー部は、ガイド部における長さ方向の全体に設けられていてもよく、又は、ガイド部の2箇所以上の領域に設けられていてもよい。
【0032】
またガイド部31には、インフレーター10の取付ボルト13及び突起部14を挿通させる3つの第1挿通孔部36及び3つの第2挿通孔部37が設けられている。なお、ガイド部31に設ける第1挿通孔部36及び第2挿通孔部37の個数は、使用されるインフレーターの取付ボルト及び突起部の数に応じて変更できる。
【0033】
本実施例において、3つの第1挿通孔部36は、ガイド部31の第1開口部32側の半部(ストレート部34)に、インフレーター10の取付ボルト13及び突起部14の位置に対応して設けられている。また、3つの第1挿通孔部36は、互いに同じ開口面積で形成されている。
【0034】
3つの第2挿通孔部37は、ガイド部31の第2開口部33側の半部(テーパー部35)に、ガイド部31の長さ方向に関して第1挿通孔部36と対称的な位置関係で設けられている。また、3つの第2挿通孔部37は、互いに同じ開口面積で形成されているとともに、第1挿通孔部36よりも開口面積を大きくして形成されている。
【0035】
本実施例のガイド部31において、ガイド部31の長さ方向に直交する方向(ガイド部31の半径方向に沿った方向)の1つを第2方向と規定した場合、ガイド部31が筒状に膨らんだ状態において、ガイド部31の第2開口部33における第2方向の大きさX2は、ガイド部31の第1開口部32における第2方向の大きさX1の150%以上250%以下、好ましくは200%である(図1を参照)。
【0036】
第2開口部33の前記大きさX2を第1開口部32の前記大きさX1の150%以上にすることにより、インフレーター10を後述するようにガイド部31のストレート部34に保持した状態でエアバッグ本体部21の内部に挿入するときに、インフレーター10を挿入し易くして、その作業性を向上させることができる。第2開口部33の前記大きさX2を第1開口部32の前記大きさX1の250%以下にすることにより、インフレーター10の取付ボルト13及び突起部14をガイド部31の3つの第2挿通孔部37にそれぞれ挿入させ易くすることができる。また、インフレーター10をエアバッグ本体部21の内側に挿入したときにインフレーター10の位置を安定させ易くすることができる。
【0037】
本実施例のガイド部31は、ガイド部31が後述する折り返し部41で折り返される前の筒状に膨らんだ状態において(図1を参照)、ガイド部31におけるガイド部31の長さ方向に沿った長さY2が、インフレーター10の長さY1(具体的には、インフレーター10がガイド部31に挿入される方向に沿った長さ)の200%以上となるように形成されている。これにより、インフレーター10をエアバッグ本体部21の内部に挿入したときに(例えば図4及び図6を参照)、インフレーター10を、その長さ方向の全体に亘って、ガイド部31が折り返し部41で折り返されて2枚重ねとなった部分(後述する内側筒部42及び外側筒部43)で安定して包み込むことができる。これにより、ガイド部31の2枚重ねの部分によって、エアバッグ本体部21を、インフレーター10から発生するガスから保護できる。
【0038】
例えば従来のエアバッグでは、インフレーターから発生するガスからエアバッグを保護するために、補強布等が設けられることがある。一方、本実施例では、インフレーター10の挿入をガイドするガイド部31を2枚重ねにして、上述のようにエアバッグ本体部21を、インフレーター10から噴き出されるガスがエアバッグ本体部21に直線的に当たらないように、インフレーター10のガスから保護できる。このため、本実施例のエアバッグ20は、エアバッグ本体部をガスから保護するための従来の補強布(ヒートパッチ)を別途設置しなくても、ガイド部31で補強布と同様の効果を安定して得ることが可能となるため、補強布の使用を削減することができる。
【0039】
なお本実施例において、ガイド部31の前記長さY2は、インフレーター10の前記長さY1の300%以下であることが好ましく、それによって、ガイド部31が大きくなり過ぎることを防ぎ、また、エアバッグ装置1の作動時に、インフレーター10のガスをエアバッグ本体部21の気室22に円滑に流入させ易くすることができる。
【0040】
上述のようなガイド部31は、ガイド部31の第2開口部33とエアバッグ本体部21の挿入孔部24とが直接接続されるように、ガイド部31の第2開口部33側の端部をエアバッグ本体部21の挿入孔部24の外周縁部に連結することによって、エアバッグ本体部21とガイド部31とが一体化されてエアバッグ20が形成されている。
【0041】
なお本発明において、ガイド部31をエアバッグ本体部21に連結する方法及び手段は特に限定されないが、例えば縫製加工を行ってエアバッグ本体部21の挿入孔部24の外周縁部とガイド部31の第2開口部33側の端部とを縫い合わせることによって、ガイド部31をエアバッグ本体部21に容易に連結できる。
【0042】
また本実施例において、ガイド部31は、ガイド部31をエアバッグ本体部21に取り付けてエアバッグ本体部21の内部に挿入したときに、ガイド部31に設けた第1開口部32及び第2開口部33が、エアバッグ本体部21の貫通孔部25が設けられた第1基布部21aではなく、その反対側の第2基布部21bに対向する向きで、エアバッグ本体部21に連結されている(図3及び図4を参照)。
【0043】
次に、エアバッグ本体部21とガイド部31とが一体化されたエアバッグ20に対し、図2に示したインフレーター10を取り付ける方法について説明する。
先ず、インフレーター10を、エアバッグ20におけるガイド部31の第1開口部32からガイド部31内に挿入し、更に、インフレーター10の取付ボルト13及び突起部14を、ガイド部31に設けた第1開口部32に挿通させてガイド部31の外側に突出させる第1挿入作業を行う。このとき、インフレーター10は、インフレーター10のガス噴出部12側の端部からガイド部31内に挿入される。
【0044】
この第1挿入作業では、インフレーター10を直接目視しながらガイド部31内に挿入して、インフレーター10の取付ボルト13及び突起部14をガイド部31の第1開口部32に挿通させることができる。このため、第1挿入作業を容易に、また比較的短い時間で行うことができる。また、この第1挿入作業を行うことによって、図3に示したように、インフレーター10を、ガイド部31の所定位置(具体的には、ガイド部31のストレート部34)に、所要の向き(姿勢)で保持できる。
【0045】
第1挿入作業の終了後、インフレーター10と、インフレーター10を保持するガイド部31とを、エアバッグ本体部21の挿入孔部24からエアバッグ本体部21内に挿入し、更に、インフレーター10の取付ボルト13及び突起部14を、ガイド部31に設けた第2開口部33に挿通させる第2挿入作業を行う。
【0046】
この第2挿入作業では、ガイド部31及びインフレーター10をエアバッグ本体部21内に挿入しながら、ガイド部31自体を第1開口部32と第2開口部33との間の位置で折り返す。これにより、図4に示すように、ガイド部31がエアバッグ本体部21内に保持されるとともに、そのガイド部31に折り返し部41が形成される。
【0047】
また、その折り返し部41を境界部にして、ガイド部31の第1開口部32と折り返し部41との間の部分により形成される内側筒部42と、内側筒部42の外側に配されるとともに折り返し部41と第2開口部33との間の部分により形成される外側筒部43とが設けられる。本実施例の場合、ガイド部31の内側筒部42は、主にガイド部31のストレート部34により形成され、ガイド部31の外側筒部43は、主にガイド部31のテーパー部35により形成されている。
【0048】
更に第2挿入作業では、インフレーター10が、当該インフレーター10の取付ボルト13及び突起部14をガイド部31の第1開口部32に挿通させることによってガイド部31のストレート部34に保持されているため、インフレーター10をエアバッグ本体部21の挿入孔部24からエアバッグ本体部21の内部に強く挿入したとしても、インフレーター10がエアバッグ本体部21内の奥深くに入り込むことを防ぎ、インフレーター10を作業者がその位置や姿勢を把握し易い位置に留めておくことが可能となる。
【0049】
また第2挿入作業において、ガイド部31を折り返して内側筒部42及び外側筒部43を形成した後、ガイド部31の第1開口部32に挿通させたインフレーター10の取付ボルト13及び突起部14を、ガイド部31の外側筒部43に形成されている第2開口部33に挿通させる。
【0050】
このとき、インフレーター10は、取付ボルト13及び突起部14がガイド部31の第1開口部32に挿通されていることによって、作業者がインフレーター10の位置及び向きを把握し易くなり、その結果、インフレーター10がエアバッグ本体部21の内側に挿入された状態であっても、インフレーター10の取付ボルト13及び突起部14をガイド部31の第2開口部33に円滑に挿入して、外側筒部43の外側に突出させることができる。更に本実施例では、ガイド部31の第2開口部33が、第1開口部32よりも開口面積を大きくして形成されているため、ガイド部31の第2開口部33に、インフレーター10の取付ボルト13及び突起部14をより挿入させ易くすることができる。
【0051】
この場合、インフレーター10のインフレーター本体部11及びガス噴出部12は、ガイド部31の内側筒部42内に保持されている。また、第2開口部33を介して外側筒部43の外側に突出させた取付ボルト13及び突起部14は、エアバッグ本体部21の第2基布部21bとガイド部31の外側筒部43との間に保持されている(図5を参照)。
【0052】
第2挿入作業の終了後、ガイド部31の内側筒部42内に保持されているインフレーター本体部11及びガス噴出部12を、インフレーター10の挿入方向を軸にするようにして回転させる。これによって、ガイド部31の少なくとも外側筒部43を(好ましくは、内側筒部42及び外側筒部43を)、ガイド部31の第1開口部32又は第2開口部33と折り返し部41との間で容易によじることができる。このとき、ガイド部31は、エアバッグ本体部21内で180度又はそれに近い角度までよじられる。
【0053】
このようにガイド部31がよじられることにより、例えばインフレーター10からガスを発生させたときに、ガスがガイド部31の第1開口部32から外部に流出する(漏れる)ことを抑制して、エアバッグ本体部21の気室22内にガスを効率的に流入させることが可能となるため、エアバッグ20の気密性を高めることができる。その結果、ガスの発生時からエアバッグ20を迅速に膨張させることが可能となり、また、インフレーター10の小型化に繋がる可能性もある。更に、エアバッグ本体部21内でガイド部31がよじられることによって、ガイド部31の外側筒部43の外側に突出させたインフレーター10の取付ボルト13及び突起部14を、エアバッグ本体部21の第1基布部21a側に向けることができる(図5及び図7を参照)。
【0054】
続いて、エアバッグ本体部21の第1基布部21a側に向けたインフレーター10の取付ボルト13及び突起部14を、エアバッグ本体部21に設けた貫通孔部25にそれぞれ挿入して、図7に示したように、エアバッグ本体部21の外側に突出させる。
【0055】
このとき、インフレーター10は、取付ボルト13及び突起部14をガイド部31の第1開口部32及び第2開口部33に挿通させていることによって、ガイド部31内に所定の位置及び向きで保持されている。更に、エアバッグ本体部21の貫通孔部25は、ガイド部31の第2開口部33よりも開口面積を大きくして形成されている。これによって、インフレーター10の取付ボルト13及び突起部14を、エアバッグ本体部21の貫通孔部25に挿入させ易くすることができる。
【0056】
このようにインフレーター10の取付ボルト13をエアバッグ本体部21の外側に突出させることにより、ガイド部31をよじれた状態で保持することができる。また、エアバッグ本体部21から突出させた取付ボルト13を、例えばインストルメントパネル等に取り付けることが可能となる。
【0057】
以上のように、本実施例のエアバッグ装置1では、エアバッグ20に、インフレーター10を保持する筒状のガイド部31が設けられている。このため、取付ボルト13を備えたインフレーター10をエアバッグ本体部21内に挿入して所定の位置に取り付けるときに、インフレーター10がエアバッグ本体部21の奥深くまで入り込むことや、エアバッグ本体部21内でインフレーター10の向きが変わることを防止できる。その結果、エアバッグ20内へのインフレーター10の取付作業を行い易くすることができる。
【0058】
更に例えば、エアバッグ本体部21の挿入孔部24の位置と貫通孔部25の位置とが、互いに離れている場合や、互いにエアバッグ本体部21の異なる向きの面に設けられている場合等であったとしても、本実施例のようにエアバッグ20に設ける筒状のガイド部31でインフレーター10を保持してインフレーター10の挿入を案内できるため、インフレーター10の取付ボルト13及び突起部14をエアバッグ本体部21の貫通孔部25に挿通させる作業を円滑に行うことができる。
【0059】
従って、筒状のガイド部31を備えた本実施例のエアバッグ装置1によれば、例えば従来のエアバッグ装置に比べて、インフレーター10をエアバッグ20に取り付ける作業の作業性を向上させ、また、その作業時間を短縮させることが可能となる。その結果、作業者の負担を低減でき、また、製造コストの削減を図ることができる。
【0060】
なお、本発明は、上述した実施例に何ら限定されるものではなく、本発明と実質的に同一な構成を有し、かつ、同様な作用効果を奏しさえすれば、多様な変更が可能である。例えば上述した実施例において、インフレーター10の取付ボルト13及び突起部14を挿通させるためにエアバッグ20のガイド部31に設けた第1挿通孔部36及び第2挿通孔部37は、どちらも円形(又は楕円形)に形成されている(図1等を参照)。しかし本発明において、エアバッグのガイド部に設ける第1挿通孔部及び第2挿通孔部の形状は、ガイド部内におけるガスの気密性を適切に保つことが可能であれば特に限定されない。
【0061】
例えば本発明では、図8にガイド部の第1変形例を示すように、第1挿通孔部36a及び第2挿通孔部37aがスリットの形状を有するようにガイド部31aが形成されていてもよく、また、図9にガイド部の第2変形例を示すように、第1挿通孔部36b及び第2挿通孔部37bがひし形の形状を有するようにガイド部31bが形成されていてもよい。更に本発明で、エアバッグ本体部に設ける貫通孔部の形状も特に限定されない。
【0062】
また上述した実施例では、取付ボルト13及び突起部14を備えたインフレーター10をエアバッグ20のガイド部31に保持した状態で、エアバッグ本体部21内に挿入して取り付けている。しかし本発明では、例えば取付ボルト及び突起部が設けられたリテーナに、インフレーター本体部及びガス噴出部からなるインフレーターを取り付けて保持し、そのインフレーターをリテーナとともにエアバッグのガイド部に保持した状態で、エアバッグ本体部内に挿入して取り付けることも可能である。
【0063】
更に、実施例のエアバッグ装置1は、上述したように、ニーエアバッグ装置として形成されているが、本発明のエアバッグ装置は、これに限定されるものではなく、例えば運転席エアバッグ装置、助手席エアバッグ装置、サイドエアバッグ装置、又はカーテンエアバッグ装置として形成されていてもよい。また、エアバッグの全体形状及び大きさ等も特に限定されず、例えば自動車の種類や形態、エアバッグ装置の装着位置等に応じて変更することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 エアバッグ装置
10 インフレーター
11 インフレーター本体部
12 ガス噴出部(ディフューザー)
13 取付ボルト
14 突起部
20 エアバッグ
21 エアバッグ本体部
21a 第1基布部
21b 第2基布部
22 気室
23 縫製部(接合部)
24 挿入孔部
25 貫通孔部
31 ガイド部
31a,31b ガイド部
32 第1開口部
33 第2開口部
34 ストレート部
35 テーパー部
36 第1挿通孔部
36a,36b 第1挿通孔部
37 第2挿通孔部
37a,37b 第2挿通孔部
41 折り返し部
42 内側筒部
43 外側筒部
X1 第1開口部における第2方向の大きさ
X2 第2開口部における第2方向の大きさ
Y1 インフレーターの長さ
Y2 ガイド部におけるガイド部の長さ方向に沿った長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9