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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019628
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】判定装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/024 20160101AFI20230202BHJP
   H02P 6/12 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H02P29/024
H02P6/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124520
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】平谷 浩洋
(72)【発明者】
【氏名】大原 惟暉
【テーマコード(参考)】
5H501
5H560
【Fターム(参考)】
5H501BB08
5H501BB09
5H501CC01
5H501DD08
5H501HA08
5H501HB07
5H501JJ03
5H501KK05
5H501LL22
5H501LL35
5H501LL53
5H560BB04
5H560BB07
5H560DA02
5H560DC12
5H560EB01
5H560GG04
5H560JJ18
5H560RR10
5H560SS01
5H560TT15
5H560UA05
(57)【要約】
【課題】電気モータの回転を抑制しつつ断線判定を行うこと。
【解決手段】判定装置は、電気モータに生じるトルクがつり合うように前記電気モータ内において複数方向に電流を流した状態で検出した電流値を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記電流値に基づいて断線の有無を判定する断線判定を行う判定部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モータに生じるトルクがつり合うように前記電気モータ内において複数方向に電流を流した状態で検出した電流値を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記電流値に基づいて断線の有無を判定する断線判定を行う判定部と、
を有する
判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の判定装置であって、
前記電気モータの各相に対応するスイッチング素子を駆動させる制御部を有し、
前記取得部は、前記電気モータを構成するロータの位置に応じて前記制御部が前記スイッチング素子を駆動させた状態における前記電流値を取得する
判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の判定装置であって、
前記電気モータは3相の電気モータであり、
前記制御部は、3相のうちの上段1相から下段2相に対して、または、3相のうちの上段2相から下段1相に対して電流が流れるように前記スイッチ素子を駆動させる
判定装置。
【請求項4】
請求項2に記載の判定装置であって、
前記制御部は、予め定められた正位相の通電パターンで電流が流れるように前記スイッチング素子を駆動させるとともに、前記正位相の通電パターンとは駆動するスイッチング素子が逆になる逆位相の通電パターンで電流が流れるように前記スイッチング素子を駆動させる
判定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の判定装置であって、
前記判定部は、前記正位相の通電パターンおよび前記逆位相の通電パターンの一方において断線判定を行う第一判定フローと、前記正位相の通電パターンおよび前記逆位相の通電パターンの他方において断線判定を行う第二判定フローとを有し、
前記第一判定フローにおいて断線無しと判定された場合は、前記第一判定フローから直接、前記第二判定フローに移行する、
判定装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのうちのいずれか1項に記載の判定装置であって、
前記電気モータよりも下段側に前記電流値を検出する電流検出回路が設けられており、
前記取得部は前記電流検出回路から前記電流値を取得する
判定装置。
【請求項7】
判定装置が、
電気モータに生じるトルクがつり合うように前記電気モータ内において複数方向に電流を流した状態で検出した電流値を取得し、
取得した前記電流値に基づいて断線の有無を判定する断線判定を行う
判定方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータにおける断線の有無を判定する判定装置、判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスモータなどの電気モータにおいて断線の有無を判定するための技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、電気モータの巻線に通電するためのモータドライバと、電気モータの巻線に流れる電流を検出する電流検出手段と、通電制御手段と、を有する断線検出装置が記載されている。特許文献1に記載の技術の場合、通電制御手段は、モータドライバに通電を指示する。そして、通電制御手段は、モータドライバに通電を指示してから電気モータの正常巻線の電流レベルが所定値に達するまでの所定時間の後に、電流検出手段の所定レベル以上の電流検出有無をチェックし、モータドライバに制動通電を指示する。例えば、特許文献1によると、モータへの通電時に反時計方向の回転を検出した場合、時計方向に回転させる通電パターンへ切り替える。また、モータへの通電時に時計方向の回転を検出した場合、反時計方向に回転させる通電パターンへ切り替える。また、回転を検出できない低回転の領域では、制動通電パターンに切り替える。例えば、特許文献1では、上記のような処理により、断線検知するための通電により発生する回転をより速く停止状態へ収束させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3388525号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
断線の判定を行う際に電気モータが回転してしまうと、断線判定の際に回転を制御するための制御手段が必要となったり、電気モータの回転による振動や音が発生してしまったりする。このような問題を抑制するためには、出来る限り断線判定の際に電気モータを回転させないことが望ましい。しかしながら、特許文献1に記載の技術の場合、一方向にトルクが生じるため、電気モータの回転を抑制することが難しかった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上述した課題である、電気モータの回転を抑制しつつ断線判定を行うことが難しい、という課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態である判定装置は、
電気モータに生じるトルクがつり合うように前記電気モータ内において複数方向に電流を流した状態で検出した電流値を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記電流値に基づいて断線の有無を判定する断線判定を行う判定部と、
を有する
という構成をとる。
【0008】
また、本発明の他の形態である判定方法は、
判定装置が、
電気モータに生じるトルクがつり合うように前記電気モータ内において複数方向に電流を流した状態で検出した電流値を取得し、
取得した前記電流値に基づいて断線の有無を判定する断線判定を行う
という構成をとる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のように構成されることにより、電気モータの回転を抑制しつつ断線判定を行うことが可能な判定装置、判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態における判定システムの構成例を示す斜視図である。
図2】判定装置の構成例を示すブロック図である。
図3】正位相の通電パターン例を示す図である。
図4】逆位相の通電パターン例を示す図である。
図5】各セクションにおける位置関係、通電パターン、トルクの関係例を示す図である。
図6】判定装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態においては、3相ブラシレスモータなどの電気モータ200における断線判定を行う判定システム100について説明する。後述するように、判定システム100では、電気モータ200に生じるトルクがつり合うように電気モータ内において複数方向に電流を流した状態で電流値を計測する。例えば、電気モータ200として3相のブラシレスモータを用いる場合、3相のうちの上段1相から下段2相に対して、または、上段2相から下段1相に対して電流を流した状態で電流値を計測する。そして、計測した電流値に基づいて断線の有無を判定する断線判定を行う。
【0012】
なお、本実施形態において、トルクがつり合うとは、例えば、後述する正位相の通電パターンのセクション1の場合、V相を中心にU相とW相に向かって対称となるようかつ、同じ大きさのトルクが発生することをいう。同じ大きさのトルクは、同じ大きさの電流を各相に流すことで発生する。
【0013】
また、本実施形態で説明する判定システム100の場合、ロータの位置に応じた正位相の通電パターンで出力を行うとともに、正位相の通電パターンとは駆動オンするスイッチング素子310と駆動オフするスイッチング素子310とが逆になる逆位相の通電パターンで出力を行う。これにより、判定システム100は、2種類の通電パターンで3相すべてに電流を流すことが出来る。
【0014】
図1は、判定システム100の構成例を示している。図1を参照すると、判定システム100は、3相ブラシレスモータなどの電気モータ200と、スイッチ部300と、判定装置400と、を有している。図1で示すように、電気モータ200の各相はスイッチ部300に接続されている。また、判定装置400は、判定装置400からの指示に応じてスイッチング素子310を制御したり電流検出回路320が検出した電流値を判定装置400に対して送信したりすることが出来るように、スイッチ部300に含まれる各構成と接続されている。
【0015】
電気モータ200は、例えば、2極3スロットを有する一般的な3相ブラシレスモータである。例えば、電気モータ200は、巻線コイルであるステータと永久磁石であるロータとを有しており、U相、V相、W相の3相を有している。また、電気モータ200は、例えば、位置センサであるホールセンサを3つ有しており、ロータの位置(角度)を検知可能なよう構成されている。なお、電気モータ200は、4極6スロットである、3つ以外の数のホールセンサを有するなど、上記例示した以外の構成であってもよい。
【0016】
スイッチ部300は、判定装置400などからの指示に応じて駆動オン又は駆動オフするスイッチング素子310を6つ有している。具体的には、スイッチ部300は、ハイサイドである上段側に3つのスイッチング素子310を有しており、ローサイドである下段側に3つのスイッチング素子310を有している。換言すると、スイッチ部300は、電気モータ200よりも上段側および下段側において、電気モータ200の各相に対応するスイッチング素子310を有している。また、スイッチ部300のうち下段側の所定箇所には、電流値を検出する電流検出回路320が設けられている。例えば、図1の場合、下段側のスイッチング素子310それぞれに対応する箇所に電流検出回路320が設けられている。つまり、スイッチ部300は、3つの電流検出回路320を有している。なお、電流検出回路320は、上段側に設けられていてもよい。また、電流検出回路320の数も上記例示した以外であってもよい。
【0017】
スイッチング素子310は、例えば、FET(Field effect transistor、電界効果トランジスタ)などである。例えば、スイッチング素子310は、判定装置400などからの指示に応じて駆動オン又は駆動オフする。上述したように、スイッチング素子310は、上段側に3つ設けられており、下段側に3つ設けられている。なお、スイッチング素子310の数は、電気モータ200の構成などに応じて適宜変更されてよい。
【0018】
電流検出回路320は、電流値を検出する。例えば、電流検出回路320は、シャント抵抗間の電圧に基づいて電流値を計測するなど、一般的な電流検出回路であってよい。上述したように、本実施形態の場合、電流検出回路320は下段側の任意の箇所に設けられている。電流検出回路320は上段側に設けられるなど、本実施形態で例示する箇所以外に設けられていてもよい。
【0019】
判定装置400は、断線判定を行うマイクロプロセッサなどの演算装置である。判定装置400は、スイッチング素子310に対して駆動オンや駆動オフを指示したり、電流検出回路320から電流値を取得したりする。また、判定装置400は、電流検出回路320から取得した電流値に基づいて断線あり又は断線なしなどを判定する断線判定を行う。
【0020】
図2は、判定装置400の構成例を示している。図2を参照すると、判定装置400は、例えば、制御部410と電流値取得部420と判定部430とを有している。例えば、判定装置400は、記憶部に格納されたプログラムを実行することで、上記各処理部を実現することが出来る。判定装置400は、論理回路などのハードウェアを用いて上記各処理部を実現してもよい。
【0021】
制御部410は、ホールセンサにより検知されるロータの位置に応じて正位相や逆位相の通電パターンを決定する。そして、制御部410は、決定した正位相や逆位相の通電パターンとなるようスイッチング素子310に対して駆動オン又は駆動オフを指示する。例えば、まず制御部410は、ロータの位置に応じてセクションを特定するとともに、特定したセクションに応じて決定される正位相の通電パターンとなるように各スイッチング素子310に対して駆動オン又は駆動オフを指示する。また、制御部410は、判定部430が断線なしと判定した際や正位相の通電パターンで電流を流し始めてから予め定められた最大時間経過した場合など所定の条件を満たす場合に、同一セクションにおける逆位相の通電パターンとなるように各スイッチング素子310に対して駆動オン又は駆動オフを指示する。なお、最大時間は任意の値であってよい。
【0022】
具体的には、例えば、判定装置400などが有する記憶装置には、図3から図5までに例示するようなロータの位置と正位相や逆位相の通電パターンとの関係を示すパターン情報が格納されている。制御部410は、記憶装置に格納された制御用情報を参照することなどにより、ホールセンサにより検知されるロータの位置に応じて正位相や逆位相の通電パターンを決定する。
【0023】
ここで、図3から図5までを参照して、パターン情報の一例について説明する。本実施形態では、図3から図5で示す通電パターンを予め定めた通電パターンとして定義しているが、通電パターンは記述したものに限られるものではない。図5は、ロータの位置と正位相や逆位相の通電パターン及びトルクの関係例を示している。また、図3は正位相の通電パターン例を示しており、図4は逆位相の通電パターン例を示している。図3から図5までで例示するように、パターン情報には、例えば、ロータの位置に応じた6つの情報が含まれている。また、パターン情報では、例えば、同一のセクション(つまり、ロータの位置が同一の場合)において、正位相の通電パターンと逆位相の通電パターンとで駆動オン/オフするスイッチング素子310が逆になっている。例えば、ロータの位置がセクション1に相当する場合では、正位相の通電パターンにおいて、上段V相に対応するスイッチング素子310が駆動オン、上段W相、上段U相に対応するスイッチング素子310が駆動オフする一方で、下段U相、下段W相に対応するスイッチング素子310が駆動オン、下段V相に対応するスイッチング素子310が駆動オフする。その結果、電気モータ200において上段V相から下段U相と下段W相に向けて電流が流れることとなり、2方向にトルクが発生してトルクがつり合う位置で止まることとなる。一方、セクション1に相当する場合において逆位相の通電パターンでは、上段U相、上段W相に対応するスイッチング素子310が駆動オン、上段V相に対応するスイッチング素子310が駆動オフする一方で、下段V相に対応するスイッチング素子310が駆動オン、下段W相、下段U相に対応するスイッチング素子310が駆動オフしている。その結果、電気モータ200において上段U相と上段W相から下段V相に向けて電流が流れることとなり、2方向にトルクが発生してトルクがつり合う位置で止まることとなる。なお、図3から図5までで示すように、セクション2から6までにおいても、セクション1と同様に、同一セクションである場合において正位相の通電パターンと逆位相の通電パターンとでは、駆動オンするスイッチング素子310と駆動オフするスイッチング素子310とは逆になる。
【0024】
なお、図3から図5までは、パターン情報の一例を示している。パターン情報は、図3から図5までに例示した以外であってよい。例えば、パターン情報は、電気モータ200の構成に応じた、複数方向に電流を流すことで複数方向につり合うようにトルクを生じさせる図3から図5までに例示した以外の通電パターンを示すことが出来る。また、パターン情報は、ホールセンサの数などに応じたものであってよい。
【0025】
また、制御部410は、判定部430が断線なしと判定できなかった場合などにおいて、より大きな電流が流れるように出力を上昇させる処理を行うことが出来るよう構成してもよい。ここで、出力の上昇は、任意の手段で実現してよい。例えば、制御部410は、まず正位相の通電パターンとなるよう各スイッチング素子310に対して指示した後、予め定められた最大時間が経過するまで、待機するとともに必要に応じて出力を上昇させる処理を行う。また、制御部410は、判定部430が断線なしと判定した場合に、逆位相の通電パターンとなるよう各スイッチング素子310に対して指示した後、予め定められた最大時間が経過するまで、待機するとともに必要に応じて出力を上昇させる処理を行う。例えば、以上のように、制御部410は、正位相の通電パターンと逆位相の通電パターンそれぞれにおいて最大時間経過までの間、判定部430が断線なしと判定できなかった場合などの必要に応じて出力を上昇させる処理を行うよう構成してよい。制御部410は、正位相の通電パターンと逆位相の通電パターンそれぞれにおいて必要に応じて所定回数まで出力を上昇させるよう構成してもよい。
【0026】
なお、制御部410は、判定部430が断線なしと判定できなかった場合などにおいて適宜ロータの位置を確認するよう構成してもよい。
【0027】
電流値取得部420は、電流検出回路320から電流検出回路320が検出した電流値を取得する。
【0028】
判定部430は、電流値取得部420が取得した電流値に基づいて、断線あり又は断線なしを判定する断線判定を行う。例えば、判定部430は、U相、V相、W相のそれぞれについて、所定の条件を満たすか否かに基づいて断線あり又は断線なしを判定する断線判定を行う。
【0029】
例えば、判定部430は、通電パターンを確認して下段側で駆動オンになっているスイッチング素子310を特定する。そして、判定部430は、駆動オンになっているスイッチング素子310に対応する電流検出回路320から取得した電流値に基づいて断線判定を行う。例えば、対応する電流検出回路320から取得した電流値が予め定められた通電確認閾値よりも大きい場合、判定部430は、対応する相について断線なしと判定する。そして、判定部430は、断線なしと判定した旨を制御部410に通知する。一方、対応する電流検出回路320から取得した電流値が予め定められた通電確認閾値以下の場合、判定部430は、対応する相について断線なしと判定できないと判定する。そして、判定部430は、断線なしと判定できない旨を制御部410などに通知する。また、判定部430は、電流を流し始めてから最大時間経過開いた場合などにおいて断線なしと判定できなかった場合、断線ありと判定する。なお、通電確認閾値は任意の値であってよい。
【0030】
また、判定部430は、取得した電流値が所定値(例えば、通電確認閾値)よりも大きくなる時間である通電確認時間に基づいて断線なしと判定できるか否か確認するよう構成してもよい。例えば、判定部430は、通電確認時間が確認時間閾値よりも大きくなった場合に、対応する相について断線なしと判定することが出来る。一方、判定部430は、所定時間経過した段階で通電確認時間が確認時間閾値以下である場合に、対応する相について断線なしと判定できないと判定することが出来る。
【0031】
具体的には、例えば、ロータの位置がセクション1に相当する場合において正位相の通電パターンである場合では、上段V相、下段U相、下段W相に対応するスイッチング素子310が駆動オンする。そのため、判定部430は、下段U相に対応する電流検出回路320から取得した電流値に基づいて上段V相から下段U相について断線判定を行うとともに、下段W相に対応する電流検出回路320から取得した電流値に基づいて上段V相から下段W相について断線判定を行う。また、セクション1に相当する場合において逆位相の通電パターンである場合では、上段U相、上段W相、下段V相に対応するスイッチング素子310が駆動オンする。そのため、判定部430は、下段V相に対応する電流検出回路320から取得した電流値に基づいて上段U相及び上段W相から下段V相について断線判定を行う。
【0032】
例えば、以上のように、判定部430は、通電確認閾値や確認時間閾値などを用いて断線判定を行う。なお、判定部430は、上記例示した方法のいずれかのみを用いてもよいし、組み合わせてもよい。
【0033】
なお、判定部430は、正位相の通電パターンと逆位相の通電パターンそれぞれについて断線なしと判定した場合に、(全体として)断線なしと判定するよう構成してもよい。また、判定部430は、正位相の通電パターンと逆位相の通電パターンのいずれかにおいて最大時間経過まで断線なしと判定できなかった場合などにおいて、3相のいずれかに断線ありと判定するよう構成してもよい。
【0034】
以上が、判定装置400の構成例である。なお、正位相の通電パターンにおいて判定部430が断線ありと判定した場合などにおいて、判定装置400は、逆位相の通電パターンにおける断線判定を省略するよう構成してもよい。続いて、図6を参照して、判定装置400の動作例について説明する。図6では、正位相における断線判定を第一判定フローにおいて行い、逆位相の断線判定を第二判定フローにおいて行う場合について説明する。
【0035】
図6は、判定装置400の動作例を示している。図6を参照すると、制御部410は、まずスイッチング素子310などについて初期化する初期化処理を行う(ステップS101)。
【0036】
制御部410は、決定した通電パターンで電流を流し始めてから最大時間を経過しているか否か確認する(ステップS102)。最大時間以内である場合(ステップS102、Yes)、制御部410は、ホールセンサにより検知されるロータの位置に応じてセクション判定を行うとともに、駆動オン/オフするスイッチング素子310を決定する(ステップS103)。つまり、制御部410は、ロータの位置に応じて正位相の通電パターンを決定する。その後、制御部410による指示に応じてスイッチング素子310が駆動オン又は駆動オフした状態で電流が流れる(ステップS104)。
【0037】
判定部430は、電流値取得部420が取得した電流値が所定の条件を満たすか否か確認する(ステップS105)。条件を満たさない場合(ステップS105、NO)、制御部410はより大きな電流が流れるように出力を上昇させる(ステップS106)。その後、ステップS102の処理に戻る。
【0038】
一方、条件を満たす場合(ステップS106、Yes)、制御部410は、出力をオフにして初期化する初期化処理を行う(ステップS107)。
【0039】
制御部410は、新たに決定した通電パターンで電流を流し始めてから最大時間を経過しているか否か確認する(ステップS108)。最大時間以内である場合(ステップS108、Yes)、制御部410は、ホールセンサにより検知されるロータの位置に応じてセクション判定を行うとともに、駆動オン/オフするスイッチング素子310を決定する(ステップS109)。つまり、制御部410は、ロータの位置に応じて正位相の通電パターンを決定する。また、制御部410による指示に応じてスイッチング素子310が駆動オン又は駆動オフした状態で電流が流れる(ステップS110)。なお、ステップS109の処理は省略してもよい。
【0040】
判定部430は、電流値取得部420が取得した電流値が所定の条件を満たすか否か確認する(ステップS111)。条件を満たさない場合(ステップS111、NO)、制御部410はより大きな電流が流れるように出力を上昇させる(ステップS112)。その後、ステップS108の処理に戻る。一方、条件を満たす場合(ステップS111、Yes)、判定部430は、3相すべてについて断線なしと判定する(ステップS113)。
【0041】
また、電流を流し始めてから最大時間を経過した場合(ステップS102、NoまたはステップS108、No)、判定部430は、断線ありと判定する(ステップS114)。判定部430は、対応する相について断線あり判定してもよいし、3相のうちのいずれかに断線ありと判定してもよい。
【0042】
以上が、判定装置400の動作例である。
【0043】
なお、図6で示す例では、例えば、ステップS101からステップS106までが正位層の通電パターンにおいて断線判定を行う第一判定フローに属し、ステップS107からステップS112までが逆位相の通電パターンにおいて断然判定を行う第二判定フローに属する。従来においては、断線判定を行う際、第一判定フローまたは第二判定フローを行った後に、ロータの回動を停止させるための回生制御フローが必要となっていた。これに対して、本発明では、断線判定を行う際、ロータの回動が起こらないため回生制御フローが必要なく、第一判定フローの後、直接第二判定フローを行うことができる。つまり、本発明の場合、例えば、第一判定フローにおいて断線無しと判定された場合に、回生制御フローなどを挟まずに第一判定フローから直接、第二判定フローに移行することが出来る。
【0044】
なお、図6示す動作フローでは、正位相における断線判定を第一判定フローにおいて行い、逆位相の断線判定を第二判定フローにおいて行うこととしているが、本発明においては逆位相における断線判定を第一判定フロー、正位相の断線判定を第二判定フローにおいて行ってもよい。
【0045】
以上のように、判定装置400は、制御部410と判定部430とを有している。このような構成によると、判定部430は、トルクがつり合うように制御部410がスイッチング素子310を駆動オン又は駆動オフした状態で取得した電流値に基づいて断線判定を行うことが出来る。その結果、電気モータ200を回転させることなく断線判定を行うことが出来る。
【0046】
また、制御部410は、駆動オンするスイッチング素子310と駆動オフするスイッチング素子310とが逆になる正位相の通電パターンと逆位相の通電パターンとで電流を流すように各スイッチング素子310に対して指示するよう構成される。このような構成によると、電気モータ200の回転を抑制しつつ効率的に断線判定を行うことが出来る。
【0047】
なお、判定装置400の構成は本実施形態で例示した以外であってもよい。例えば、判定装置400は、正位相の通電パターンを複数種類用いる、または、逆位相の通電パターンを複数種類用いるなどの方法により、3相すべてに電流を流すよう構成してもよい。つまり、判定装置400は、必ずしも正位相と逆位相の通電パターンを用いるよう構成しなくてもよい。
【0048】
また、電流検出回路320は、電気モータ200よりも上段側または下段側のどこかに設けられていれば、本実施形態で例示した以外の箇所に設けられていてもよい。つまり、電流検出回路320はスイッチ部300の外部に設けられていてもよい。
【0049】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本発明における判定装置の構成の概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
【0050】
(付記1)
電気モータに生じるトルクがつり合うように前記電気モータ内において複数方向に電流を流した状態で検出した電流値を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記電流値に基づいて断線の有無を判定する断線判定を行う判定部と、
を有する
判定装置。
(付記2)
付記1に記載の判定装置であって、
前記電気モータの各相に対応するスイッチング素子を駆動させる制御部を有し、
前記取得部は、前記電気モータを構成するロータの位置に応じて前記制御部が前記スイッチング素子を駆動させた状態における前記電流値を取得する
判定装置。
(付記3)
付記2に記載の判定装置であって、
前記電気モータは3相の電気モータであり、
前記制御部は、3相のうちの上段1相から下段2相に対して、または、3相のうちの上段2相から下段1相に対して電流が流れるように前記スイッチング素子を駆動させる
判定装置。
(付記4)
付記2に記載の判定装置であって、
前記制御部は、予め定められた正位相の通電パターンで電流が流れるように前記スイッチング素子を駆動させるとともに、前記正位相の通電パターンとは駆動するスイッチング素子が逆になる逆位相の通電パターンで電流が流れるように前記スイッチング素子を駆動させる
判定装置。
(付記5)
付記4に記載の判定装置であって、
前記判定部は、前記正位相の通電パターンおよび前記逆位相の通電パターンの一方において断線判定を行う第一判定フローと、前記正位相の通電パターンおよび前記逆位相の通電パターンの他方において断線判定を行う第二判定フローとを有し、
前記第一判定フローにおいて断線無しと判定された場合は、前記第一判定フローから直接、前記第二判定フローに移行する、
判定装置。
(付記6)
付記1から付記5までのうちのいずれか1項に記載の判定装置であって、
前記電気モータよりも下段側に前記電流値を検出する電流検出回路が設けられており、
前記取得部は前記電流検出回路から前記電流値を取得する
判定装置。
(付記7)
判定装置が、
電気モータに生じるトルクがつり合うように前記電気モータ内において複数方向に電流を流した状態で検出した電流値を取得し、
取得した前記電流値に基づいて断線の有無を判定する断線判定を行う
判定方法。
【0051】
以上、上記実施形態等を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0052】
100 判定システム
200 電気モータ
300 スイッチ部
310 スイッチング素子
320 電流検出回路
400 判定装置
410 制御部
420 電流値取得部
430 判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6