(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001964
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】計測用治具、テンプレート治具、及びそれらを用いた橋梁補修・補強方法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20221227BHJP
E01D 19/02 20060101ALI20221227BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
E01D22/00 A
E01D19/02
E01D22/00 B
G01B11/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102905
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉嶺 建史
【テーマコード(参考)】
2D059
2F065
【Fターム(参考)】
2D059AA01
2D059AA03
2D059AA05
2D059GG39
2D059GG40
2D059GG55
2F065AA04
2F065AA14
2F065AA17
2F065BB27
2F065CC14
2F065DD02
2F065FF04
2F065FF61
2F065JJ03
2F065QQ03
2F065QQ17
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065UU05
(57)【要約】
【課題】より手軽に計測可能とするための計測用治具の提供。
【解決手段】橋梁を補修又は補強するために用いる支持部材300取り付けにあたって、橋梁に用いられるコンクリート製の橋脚10又は橋台又は橋桁に設けたアンカーボルト150の挿入穴20の位置と傾きを調査するのに用いる計測用治具80において、中間治具100及び計測用先端治具200の2つの治具よりなる構成とした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
橋梁を補修又は補強するために用いる支持部材取り付けにあたって、前記橋梁に用いられるコンクリート製の橋脚又は橋台又は橋桁に設けたアンカーボルト挿入穴の位置と傾きを調査するのに用いる計測用治具において、
前記アンカーボルト挿入穴に挿入される軸部と、前記アンカーボルト挿入穴の中心軸に対して直交して配置されるマーカープレートよりなること、
を特徴とする計測用治具。
【請求項2】
請求項1に記載の計測用治具において、
前記軸部を備える第1治具と、前記マーカープレートを備える第2治具よりなり、
前記第1治具に前記第2治具を係合させて使うこと、
を特徴とする計測用治具。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の計測用治具において、
前記第1治具が、
前記軸部の延長線上に形成された雄ネジ部と、
前記軸部と前記雄ネジ部の間に形成された頭部と、を備え、
前記第2治具が、
前記雄ネジ部と螺合させる為の雌ネジ部と、
前記雌ネジ部の中心軸に対して直交する直交面に設けられた中心検出マークを有する前記マーカープレートと、を備え、
前記第1治具と前記第2治具が螺合され、前記軸部が前記アンカーボルト挿入穴に挿入されることで、前記アンカーボルト挿入穴の中心軸に対して前記マーカープレートが直交して配置されること、
を特徴とする計測用治具。
【請求項4】
請求項2及び請求項3に記載の計測用治具において、
前記第1治具の前記軸部と前記頭部が樹脂で構成され、前記雄ネジ部が前記頭部に対して埋め込まれて一体成形されていること、
を特徴とする計測用治具。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の計測用治具を用いて調査された前記アンカーボルト挿入穴の位置に対応した複数の貫通孔を備え、
前記貫通孔にアンカーボルトが挿通されて保持されることで、前記橋脚又は前記橋台又は前記橋桁に前記アンカーボルトが固定される際の位置決めに用いられること、
を特徴とするテンプレート治具。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の計測用治具、及び請求項5に記載のテンプレート治具を用い、
前記支持部材を前記橋梁の前記橋脚又は前記橋台又は前記橋桁に固定すること、
を特徴とする橋梁の補修・補強方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁などを補修・補強する技術に関し、詳しくは支承の交換において上部構造物と下部構造物を連結するための支持部材を施工する場合に、アンカーボルトの位置を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、震災の発生などを切っ掛けにインフラの耐震性を調査し、必要に応じて土木構造物を補修する需要が高まっている。特に、橋梁の経年劣化に対し補修又は補強する手法が模索されている。橋梁は橋桁等の上部構造物と橋脚や橋台といった下部構造物よりなり、その間に設置される支承と呼ばれる部材により、上部構造物が下部構造物に支持されている。このため、支承を補修・補強する場合には、下部構造物に設置したアンカーボルトにより支持された鋼製支持部材等を用いて、一時的に上部構造物を支持する必要がある。
【0003】
特許文献1には、計測用治具に関する技術が開示されている。下部構造物である橋脚などに設けたアンカーボルトの先端に螺合させる為の雌ネジ部と、雌ネジ部と螺合したアンカーボルトの軸に対して直交する直交面と、中心検出マークを有するマーカープレートを備えた計測用治具を用い、この直交面にマーカープレートが設置されることで、アンカーボルトの位置及び傾きを検出することができる。この計測用治具を使って、橋梁の上部構造物と下部構造物を接続する金具の製造が容易になり、支承の補修・補強に用いることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いた場合、アンカーボルトを橋脚に定着させた後に計測用治具をアンカーボルトの先端に取り付ける必要がある。すなわち、橋脚にアンカーボルト用の挿入穴を開け、接着剤等を用いて挿入穴にアンカーボルトを定着させる作業が必要となる。このアンカーボルト定着には相応の時間を要し、外気温によってはその時間が長引くことがある。また、多数のアンカーボルト全てが定着するまで計測作業を行うことができないことも時間がかかる要因となる。
【0006】
そこで、本発明はこの様な課題を解決し、より手軽に計測可能とするための計測用治具、またこれを補助するテンプレート治具、及びこれらを用いた橋梁補修・補強方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による計測用治具は、以下のような特徴を有する。
【0008】
(1)橋梁を補修又は補強するために用いる支持部材取り付けにあたって、前記橋梁に用いられるコンクリート製の橋脚又は橋台又は橋桁に設けたアンカーボルト挿入穴の位置と傾きを調査するのに用いる計測用治具において、
前記アンカーボルト挿入穴に挿入される軸部と、前記アンカーボルト挿入穴の中心軸に対して直交して配置されるマーカープレートよりなること、
を特徴とする。
【0009】
上記(1)に記載の態様により、より手軽にアンカーボルト挿入穴の位置を計測能可能とするこができる。これは、特許文献1に記載の計測用治具のように、アンカーボルトを定着させてから計測用治具を用いるのではなく、軸部を有する計測用治具をアンカーボルト挿入穴に差し込むことで、アンカーボルト挿入穴と直交してマーカープレートが配置され、特許文献1に示される様な手順でアンカーボルト挿入穴の位置を取得することが可能となる。このような手順を採用することで、アンカーボルトが橋脚などに設けられたアンカーボルト挿入穴に定着されるまでの時間を待たずに、アンカーボルト挿入穴の位置を取得することができる。
【0010】
(2)(1)に記載の計測用治具において、
前記軸部を備える第1治具と、前記マーカープレートを備える第2治具よりなり、
前記第1治具に前記第2治具を係合させて使うこと、
が好ましい。
【0011】
上記(2)に記載の態様により、直接コンクリートに触れる軸部を備える第1治具と、マーカープレートを備える第2治具に分離することができるため、軸部が損傷した場合には容易に交換可能となり、計測用治具のコストダウンに貢献することができる。例えば、特許文献1に記載の計測用治具(第2治具に相当)を用いて、第1治具と係合させて用いることで、アンカーボルト挿入穴にアンカーボルトを定着させる前に計測用治具を用いてアンカーボルト挿入穴の位置を計測できる。
【0012】
(3)(1)または(2)に記載の計測用治具において、
前記第1治具が、
前記軸部の延長線上に形成された雄ネジ部と、
前記軸部と前記雄ネジ部の間に形成された頭部と、を備え、
前記第2治具が、
前記雄ネジ部と螺合させる為の雌ネジ部と、
前記雌ネジ部の中心軸に対して直交する直交面に設けられた中心検出マークを有する前記マーカープレートと、を備え、
前記第1治具と前記第2治具が螺合され、前記軸部が前記アンカーボルト挿入穴に挿入されることで、前記アンカーボルト挿入穴の中心軸に対して前記マーカープレートが直交して配置されること、
が好ましい。
【0013】
上記(3)に記載の態様により、第1治具と第2治具の結合が螺合によって行うことができる構成となっていることで、第1治具と第2治具の分離・交換を容易に行うことが可能となる。また、第1治具と第2治具の螺合は予め行っておくことで、更に作業時間を短縮することが可能である。
【0014】
(4)(2)及び(3)に記載の計測用治具において、
前記第1治具の前記軸部と前記頭部が樹脂で構成され、前記雄ネジ部が前記頭部に対して埋め込まれて一体成形されていること、
が好ましい。
【0015】
上記(4)に記載の態様により、安価に第1治具を製造することが可能となる。第2治具に比べて第1治具は直接コンクリートに接触する分、消耗しやすい部品ではあるが、例えば雄ネジ部に六角ボルトを用いて、頭部にネジの頭が埋め込まれる形で一体成形することで、安価に製造することが可能となる。
【0016】
また、前記目的を達成するために、本発明の別の態様によるテンプレート治具は、以下のような特徴を有する。
【0017】
(5)(1)乃至(4)のいずれかに記載の計測用治具を用いて調査された前記アンカーボルト挿入穴の位置に対応した複数の貫通孔を備え、
前記貫通孔にアンカーボルトが挿通されて保持されることで、前記橋脚又は前記橋台又は前記橋桁に前記アンカーボルトが固定される際の位置決めに用いられること、
を特徴とする。
【0018】
上記(5)に記載の態様により、テンプレート治具を用いてアンカーボルトの固定を行うことで、アンカーボルトの定着作業効率の改善を図ることが可能である為である。アンカーボルトは事前に開けられたアンカーボルト挿入穴に挿入され、専用の接着剤を用いて固定される。ただしこの作業において、アンカーボルトのズレや傾きが生じてしまうと、(1)乃至(4)のいずれかの計測用治具を用いて計測したデータと、アンカーボルトの頂部の位置とで齟齬が生じてしまうおそれがある。このため、アンカーボルトの頂部側をテンプレート治具で固定して、間隔を定めた状態でアンカーボルトの定着を行う方法を採用することで、これを解消することが可能となる。アンカーボルトがテンプレート治具に固定されていることで、作業性の改善も期待出来る。
【0019】
また、前記目的を達成するために、本発明の別の態様による橋梁の補修・補強方法は、以下のような特徴を有する。
【0020】
(6)(1)乃至(4)のいずれかに記載の計測用治具、及び(5)に記載のテンプレート治具を用い、
前記支持部材を前記橋梁の前記橋脚又は前記橋台又は前記橋桁に固定すること、
を特徴とする。
【0021】
上記(6)に記載の態様により、(1)乃至(4)のいずれかに記載の計測用治具を用いて、アンカーボルト挿入穴の位置を計測し、及び(5)に記載のテンプレート治具を用いて、橋脚又は橋台あるいは橋桁にアンカーボルトを定着させるという作業手順を踏むことで、支持部材の取り付けにおける作業性を向上させ、短期間での補修・補強が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】本実施形態の、中間治具を穴に差し込む様子を示す断面図である。
【
図4】本実施形態の、橋脚の計測イメージの斜視図である。
【
図5】本実施形態の、アンカーボルトを挿入穴に挿入した様子を示す断面図である。
【
図6】本実施形態の、模式的に示したゲージプレートの斜視図である。
【
図7】本実施形態の、支持部材を配置する様子を示す斜視図である。
【
図8】本実施形態の、支持部材を配置した様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
まず、本発明の実施形態について、図面を用いて説明を行う。
図1に、本実施形態の中間治具100の斜視図を示す。計測治具の一部となる中間治具100は、頭部110と軸部120及び雄ネジ部130よりなり、後に
図2で説明するアンカーボルト150用の挿入穴20に差し込んで用いられる。頭部110及び軸部120は樹脂製で、それぞれ円柱状に形成されている。
【0024】
頭部110は軸部120の径よりも太く、また、頭部110、軸部120、及び雄ネジ部130は同一直線上にそれぞれの軸心が配置されるよう設計されている。頭部110に埋め込まれている雄ネジ部130は、
図1に示すように六角ボルト(本実施形態ではM36)の頭部が中間治具100の頭部110に埋め込まれるような形で形成されており、非常に簡素な構造になっている。
【0025】
図2に、中間治具100(第1治具)を挿入穴20に差し込んだ様子を断面図に示す。中間治具100は、下部構造物である橋脚10の側面に設けられた挿入穴20に軸部120を挿入して用いる。そして雄ネジ部130には、計測用先端治具200を螺合する。計測用先端治具200は、マーカープレート202が頂部に貼り付けられた円筒状の構造であり、その裏面には雌ネジ部201が設けられている特許文献1に記載の内容に準じるものである。中間治具100及び計測用先端治具200を組み合わせることで、計測用治具80として機能する。
【0026】
図3に、計測用先端治具200の斜視図を示す。計測用先端治具200(第2治具)に設けられたマーカープレート202の表面は黒地202aに白枠203が描かれたものとなっており、白枠203の四隅の一角に設けられた位置マーカー203aと、白枠203内に設けられた識別マーカー204を有している。また、計測用先端治具200のマーカープレート202が貼り付けられた面には、その外周を等分(本実施形態では4等分)する位置にマーカープレート202の貼り付けられた面の中心に向かって中心線200aが設けられる。一方、マーカープレート202の側面中央に、マーカープレート202の厚さ方向に基準線202bが設けられる。そして、中心線200aを延長する線が基準線202bと交差するようにマーカープレート202が配置される。
【0027】
図4に、橋脚10の計測イメージを斜視図に示す。
図2に示すような計測用治具80を用いて、橋脚10に設けられた挿入穴20の位置(定着されたアンカーボルト150の位置)を計測する。詳細な説明は省略するが、特許文献1同様に、計測用治具80に加え橋脚10にマーカープレート202や、両端にマーカープレート202が貼られたスケール210を配置する。その状態で橋脚10を、カメラで撮影してデジタルデータを取得する。このデジタルデータを解析して3次元座標位置を算出し、3次元座標位置から挿入穴20の位置を取得する。
【0028】
続いて、テンプレート治具について図を用いて説明する。
図5に、テンプレート治具であるゲージプレート250を用いてアンカーボルト150を挿入穴20に設置した様子を断面図で示す。
図6に、模式的に示したゲージプレート250の斜視図を示す。ゲージプレート250は、
図5に示される様に、アンカーボルト150の定着にあたって位置決めに用いる薄い鋼板(本実施形態では2.3mm)である。保持孔251を通したアンカーボルト150の先端を第1ナット255及び第2ナット256で挟んだゲージプレート250によって、アンカーボルト150同士の傾きや距離を保持することができる。なお、
図6に示したゲージプレート250は、説明の都合で保持孔251が4箇所として説明しているが、もっと多数の保持孔251が開けられることを妨げない。
【0029】
ゲージプレート250には、保持孔251を避けるようにして開口部252が設けられている。保持孔251の直径は、アンカーボルト150の直径より僅かに大きい程度(本実施形態では1~2mm)に設定されている。この開口部252はゲージプレート250を肉抜きして軽量化を図ると共に、アンカーボルト150の定着作業における作業性の向上の目的で設けられている。なお、
図6では説明の簡略化のために橋脚10に保持孔251を4つのみ設けた図としているが、実際には多数の保持孔251を用意する必要があるため、開口部252もゲージプレート250に必要な剛性を確保できる程度で増やすことを妨げない。
【0030】
ゲージプレート250に設けられた保持孔251の位置は、前述のデジタルデータから得られた3次元位置情報を基に決定されている。このデジタルデータは、特許文献1に示される様に、挿入穴20の傾きなども反映して取得されるため、アンカーボルト150を定着させるにあたって、挿入穴20が傾いていた場合にも、これに対応した保持孔251が形成される。
【0031】
このような第1治具に相当する中間治具100と、第2治具に相当する計測用先端治具200、及びゲージプレート250を用いた施工手順について簡単に説明する。まず、
図2に示すように、中間治具100を橋脚10に予め穿設した挿入穴20に挿入すると共に、中間治具100の雄ネジ部130に計測用先端治具200を螺合させる。なお、
図2では説明の都合で中間治具100を挿入穴20に挿入した後に、計測用先端治具200を螺合させるような図になっているが、挿入穴20に挿入する前に中間治具100と計測用先端治具200を螺合させておいても良い。
【0032】
そして
図4に示すように、マーカープレート202やスケール210を橋脚10に配置した状態で、図示しない高解像度のカメラを用いて撮影し、デジタルデータを取得する。この際に、撮影する領域をタイル状に複数の領域に区切って全体像を撮影することを妨げない。この場合、1つ以上のマーカープレート202又は識別マーカー204が重複するよう領域を設定することが望ましい。マーカープレート202には識別マーカー204が備えられて個体識別が可能である為、データ取得後にデータの結合処理を行うことができるからである。こうしてアンカーボルト150を設置する挿入穴20の位置を算出した3次元位置情報を得る。
【0033】
次に、3次元位置情報を用いて工場にてゲージプレート250の製作を行う。3次元位置情報は得られているので、レーザー加工機などを用いて短時間での製作が可能である。そして、同じ3次元位置情報を用いて支持部材300を製作する。
図7に、支持部材300を配置する様子を斜視図に示す。
図8に、支持部材300を配置した様子を斜視図に示す。なお、
図7に示す支持部材300は、説明の都合上模式的に示している。ゲージプレート250は製作された後、
図5に示すように現場にてアンカーボルト150を配置し、定着させるのに用いる。
【0034】
支持部材300は、工場にて3次元位置情報に基づいて取付穴310を開け、現場に搬送される。そして、橋脚10に定着されたアンカーボルト150を取付穴310に差し込んでナット160を用いて締め込むことで、支持部材300を橋脚10に取り付ける。支持部材300を橋脚10に取り付けたイメージが
図8である。このように支持部材300が取り付けられた状態で、トッププレート310で図示しない主桁を支持できるように調整される。こうして、橋脚10に固定された支持部材300によって主桁を支持するので、図示しない支承の交換が可能となる。なお、支承の交換ではなく、支持部材300によって橋脚10を補強する目的で本実施形態の発明が用いられることを妨げない。
【0035】
本実施形態の計測用治具80(中間治具100及び計測用先端治具200を組み合わせて構成されたもの)、ゲージプレート250、及びそれを用いた橋梁修理補強方法は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0036】
まず、本実施形態の計測用治具80により手軽に計測可能となる。これは、橋梁を補修又は補強するために用いる支持部材300の取り付けにあたって、橋梁に用いられるコンクリート製の橋脚10又は橋台に設けたアンカーボルト150の挿入穴20の位置と傾きを調査するのに用いる計測用治具80において、中間治具100及び計測用先端治具200の2つの治具よりなる構成としたためである。
【0037】
具体的には、第1治具に相当する中間治具100が、アンカーボルト150の挿入穴20に挿入する軸部120と、軸部120の延長線上に形成された雄ネジ部130と、軸部120と雄ネジ部130の間に形成された頭部110と、を備えていること。そして、第2治具に相当する計測用先端治具200が、雄ネジ部130と螺合させる為の雌ネジ部201と、雌ネジ部201の中心軸に対して直交する直交面と、直交面に設けられた中心検出マークを有するマーカープレート202と、を備えていること。こうした中間治具100と計測用先端治具200が螺合され、軸部120が挿入穴20に挿入されることで、挿入穴20の中心軸に対してマーカープレート202が直交して配置される。
【0038】
このような構成を採用することで、橋脚10の側面に設けられたアンカーボルト150用の挿入穴20の位置や傾きを容易に計測することが可能である。これは、計測用治具80として、特許文献1に記載の計測用先端治具200だけでなく、中間治具100を組み合わせることで、計測用治具80を挿入穴20に挿入するだけでマーカープレート202の配置が可能となるからである。アンカーボルト150の定着は、課題に示した様に挿入穴20に接着剤などを注入し、所定の時間待って接着剤を硬化させる必要がある。そして、アンカーボルト150が定着した後に計測用先端治具200を取り付けて計測に入る必要があるため、その分だけ時間を要することになる。
【0039】
しかしながら中間治具100を用いることでその時間を短縮することができる。また、接着剤を用いるのに適さない気象条件の日であっても計測作業が出来る。更に、計測作業で得られたデジタルデータは現場からインターネットなどの通信網にて工場に送ることができ、支持部材300を早い段階で製造に取りかかることが可能になる。こうした時間の短縮が、トータルでの橋梁補修作業時間の短縮に繋がる。この結果、作業コストの削減を実現することが可能である。
【0040】
また、中間治具100の軸部120と頭部110が樹脂で構成され、雄ネジ部130が頭部110に対して埋め込まれて一体成形されていることで、中間治具100のコストダウンが可能である。中間治具100は、直接コンクリートに接触する部品である為、消耗し易い。一方で、精度が必要な計測用先端治具200は比較的コストが高いため、中間治具100を交換可能な構造にすることで、計測用先端治具200の消耗を押さえることにも繋がる。
【0041】
そして、中間治具100自身は雄ネジ部130に六角ボルト(本実施形態ではM36)を用いて樹脂に埋め込み、軸部120は鋼材か樹脂性の円柱を切削して製造するような製造方法を採用すれば、低コストで必要な精度を出すことが可能である。つまり、計測用治具80の製作精度を落とさずにコストダウンを実現することが可能である。
【0042】
また、ゲージプレート250は、3次元位置情報を用いて、挿入穴20の位置に対応した複数の貫通孔に相当する保持孔251を備え、保持孔251にアンカーボルト150が挿通されて保持されることで、橋脚10にアンカーボルト150が定着される際の位置決めに用いることができるため、アンカーボルト150の定着時における作業性を改善できる。
【0043】
ゲージプレート250を用いてアンカーボルト150を定着させる場合、アンカーボルト150同士の隙間や傾きが変化することを防ぐことができる。挿入穴20はアンカーボルト150より僅かに(本実施形態では1~2mm)径が太いため、アンカーボルト150を定着させる際には、アンカーボルト150同士の間隔や傾きが変化する可能性がある。しかし、ゲージプレート250を用いてアンカーボルト150を保持した状態で挿入穴20にアンカーボルト150を定着させることで、そうしたアンカーボルト150同士の隙間や傾きの変化を抑える効果が得られる。
【0044】
更に、ゲージプレート250と支持部材300とは同じデータに基づいて取付穴310が加工されるので、ゲージプレート250の保持孔251で規定された位置に設置されたアンカーボルト150に支持部材300を確実に取り付けることができ、支持部材300の現場での修正作業を行う必要がなく、施工時間の短縮に寄与できる。
【0045】
ゲージプレート250には、3.2mm程度の板厚のものを用いるので、加工も搬送も容易である。一方で、支持部材300は上部構造物を支持するだけの剛性を必要とするため、50mm以上の厚みの鋼材を用いることもある。このため、加工に時間がかかる。その点、本実施形態のゲージプレート250を用いてアンカーボルト150の定着を行えば、支持部材300を製作している時間でアンカーボルト150の定着作業を行うことが可能となり、作業時間の短縮に貢献ができる。
【0046】
また、
図5に示すような形でゲージプレート250が用いられる、具体的には、橋脚10から距離xが概ね100mm程度に設定されており、かつ、ゲージプレート250には肉抜きの為に開口部252が設けられている。この結果、ゲージプレート250の軽量化に貢献しつつ、作業性も向上させることが可能となる。
【0047】
こうして、計測用先端治具200と一緒に、中間治具100やゲージプレート250を用いて作業することで、支持部材300の取り付け時間を短縮することが可能となり、結果的に橋梁の補修や補強にかかる時間の短縮に繋がる。
【0048】
以上、本発明に係る計測用治具80に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、中間治具100の形状及び材質について、頭部110及び軸部120が樹脂製で、雄ネジ部130が金属製であるように示しているが、適切な部品に変更することを妨げない。例えば、耐久性を高めるために軸部120を金属製のものに変更しても良いし、中間治具100全体を金属製に変更しても良い。また、本実施形態では支持部材300を橋脚10に取り付けるケースを説明しているが、橋台に取り付ける場合でもほぼ同様の手順で施工できるため、本発明を適用することを妨げない。
【0049】
更に、コンクリート製の橋梁の主桁や横桁といった橋桁にアンカーボルト150を設置する際に適用することを妨げない。加えて、橋梁の補修や補強に限らず、架設の際にコンクリート製の橋脚10や橋台や橋桁にアンカーボルト150を設置するのに本発明を適用することを妨げない。
【符号の説明】
【0050】
10 橋脚
20 挿入穴
80 計測用治具
100 中間治具
110 頭部
120 軸部
130 雄ネジ部
150 アンカーボルト
200 計測用先端治具
201 雌ネジ部
202 マーカープレート
300 支持部材