(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019651
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】投影デバイスおよび測距システム
(51)【国際特許分類】
G01C 3/06 20060101AFI20230202BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20230202BHJP
G02B 7/36 20210101ALI20230202BHJP
G02B 7/32 20210101ALI20230202BHJP
G03B 35/04 20210101ALI20230202BHJP
G03B 13/36 20210101ALI20230202BHJP
H04N 23/56 20230101ALI20230202BHJP
H04N 23/45 20230101ALI20230202BHJP
【FI】
G01C3/06 110A
G01B11/00 H
G02B7/36
G02B7/32
G03B35/04
G03B13/36
H04N5/225 600
H04N5/225 800
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124558
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173691
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 康久
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(72)【発明者】
【氏名】川上 啓介
(72)【発明者】
【氏名】安食 賢
【テーマコード(参考)】
2F065
2F112
2H011
2H059
2H151
5C122
【Fターム(参考)】
2F065AA06
2F065BB05
2F065DD03
2F065DD04
2F065FF01
2F065FF05
2F065FF09
2F065GG07
2F065GG24
2F065HH06
2F065JJ03
2F065JJ05
2F065JJ26
2F065QQ31
2F065UU01
2F112AA07
2F112AA09
2F112AC03
2F112AC06
2F112BA06
2F112BA07
2F112CA12
2F112FA35
2H011BA14
2H011BA37
2H059AA08
2H151BA25
2H151BA37
2H151BA55
2H151BA72
2H151BA77
2H151CB05
2H151CB06
2H151CB22
2H151CC04
5C122DA13
5C122EA42
5C122FC04
5C122FD05
5C122GG08
5C122HA85
5C122HA88
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】対象物に投影されるパターンが測距のための特徴点として利用可能なコントラスト比を維持している範囲を拡張しつつ、対象物に投影されるパターンの輝度の低下を抑制可能な投影デバイスおよび測距システムを提供する。
【解決手段】投影デバイス1は、第1のパターンを有する第1のパターン板11aと、第2のパターンを有する第2のパターン板11bと、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bに対して光を照射するための光源12と、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bを透過した透過光を集光することにより、第1のパターンおよび第2のパターンを対象物200上に投影するための投影光学系13と、を含む。第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bは、投影光学系13の光軸OA上であって、光源12と投影光学系13との間に設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のパターンを有する第1のパターン板と、
第2のパターンを有する第2のパターン板と、
前記第1のパターン板および前記第2のパターン板に対して光を照射するための光源と、
前記光源によって照射され、前記第1のパターン板および前記第2のパターンを透過した透過光を集光することにより、前記第1のパターンおよび前記第2のパターンを対象物に投影するための投影光学系と、を含み、
前記第1のパターン板および前記第2のパターン板は、前記投影光学系の光軸上であって、前記光源と前記投影光学系との間に設けられていることを特徴とする投影デバイス。
【請求項2】
前記第1のパターン板は、前記投影光学系の前記光軸上であって、前記第2のパターン板よりも前記光源側に設けられている請求項1に記載の投影デバイス。
【請求項3】
前記第1のパターンのパターンサイズは、前記第2のパターンのパターンサイズよりも大きい請求項2に記載の投影デバイス。
【請求項4】
前記第1のパターンのパターン密度は、前記第2のパターンのパターン密度よりも低い請求項2または3に記載の投影デバイス。
【請求項5】
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンのそれぞれは、ランダムに配置された複数のドットによって構成されるランダムドットパターンまたはランダムに延伸する複数の格子線から構成されるランダム格子パターンである請求項1ないし4のいずれかに記載の投影デバイス。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の投影デバイスと、
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンが投影された前記対象物を撮像することにより、前記対象物までの距離を測定するよう構成された測距デバイスと、を含むことを特徴とする測距システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、対象物にパターンを投影するための投影デバイスおよび該投影デバイスを含む測距システムに関し、より具体的には、対象物に、結像位置が互いに異なる第1のパターンおよび第2のパターンを投影するための投影デバイスおよび該投影デバイスを含む測距システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物を撮像することにより、対象物までの距離を測定する測距デバイスが広く用いられている。このような測距デバイスとして、対象物からの光を集光し、対象物の光学像を形成するための撮像光学系と、該撮像光学系によって形成された対象物の光学像を画像に変換するための撮像素子とを少なくとも2対備えるステレオカメラ方式の測距デバイスが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1が開示するようなステレオカメラ方式の測距デバイスは、光軸方向に対して垂直な方向に互いにシフトして配置された2つの撮像光学系によって形成された2つの光学像の対応する特徴点間の視差を算出し、この視差の値に基づいて、対象物の特徴点までの距離を算出することができる。また、対象物の複数の特徴点までの距離を算出することによって、対象物の奥行情報(3次元情報)を生成することができる。
【0004】
視差を算出する際に用いられる特徴点としては、エッジ部や模様(テクスチャともいう)等の他の部位との区別が容易で、検出し易い部位が利用される。換言すれば、ステレオカメラ方式の測距デバイスを用いて対象物までの距離を算出するためには、対象物上に、エッジ部や模様等の特徴点として利用可能な部位が存在している必要がある。そのため、対象物の表面が凹凸のない滑らかな曲面である場合のように、対象物の表面上に特徴点として利用可能な部位(エッジ部や模様等)が存在しない、または、少ない場合、視差に基づいて、対象物までの距離を測定し、対象物の3次元形状を正確に取得することが困難であった。
【0005】
このような問題を解決するため、所定のパターン(例えば、ドットパターンや格子パターン)を有するパターン板(レチクル板ともいう)と、パターン板に光を照射する光源と、パターン板を透過した透過光を集光することにより、対象物にパターンを投影するための投影光学系と、を含む投影デバイスが、一般に用いられている。投影デバイスによって対象物にパターンが投影され、さらに、対象物に投影されたパターンが、視差を算出するための特徴点として利用される。この結果、対象物の表面上に特徴点として利用可能な部位が存在しない、または、少ない場合であっても、視差に基づいて、対象物までの距離を測定し、対象物の奥行情報を正確に取得することができる。
【0006】
投影光学系によってパターンを対象物に投影する場合、対象物のできるだけ広い範囲にパターンを投影するために、焦点距離の長い(すなわち、画角の広い)投影光学系が用いられる。また、対象物に投影されるパターンの輝度を上げるために、投影光学系のFナンバーは、小さいことが好ましい。しかしながら、焦点距離が長く、かつ、Fナンバーの小さい(すなわち、明るい)投影光学系を用いた場合、投影される所定のパターンが許容可能な合焦状態を維持できる被写界深度(DoF:Depth of Field)が非常に浅くなってしまう。投影光学系の被写界深度外に対象物が存在する場合、対象物に投影されるパターンがデフォーカスしてしまい、パターンが測距のための特徴点として利用可能なだけのコントラスト比を維持することができず、対象物に投影されたパターンを測距のための特徴点として利用することができない。そのため、対象物の測距可能範囲が極めて狭くなってしまう。
【0007】
このような問題に対し、特許文献2は、
図1に示すような、投影デバイス500を開示している。
図1に示されているように、投影デバイス500は、投影光学系510と、投影光学系510からの光路長がそれぞれ異なるよう配置された複数のパターン板520a、520b、520cと、投影光学系510の光軸上に配置された2つのハーフミラー530a、530bと、を含む。図示しない第1の光源から発せられ、第1のパターン板520aを透過した透過光は、2つのハーフミラー530a、530bを透過し、投影光学系510によって集光され、第1の合焦面540aで結像する。図示しない第2の光源から発せられ、第2のパターン板520bを透過した透過光は、第1のハーフミラー530aによって反射された後、第2のハーフミラー530bを透過し、投影光学系510によって集光され、第2の合焦面540bで結像する。図示しない第3の光源から発せられ、第3のパターン板520cを透過した透過光は、第2のハーフミラー530bによって反射され、投影光学系510によって集光され、第3の合焦面540cで結像する。このような構成により、対象物に投影されるパターンが、測距のための特徴点として利用可能なコントラスト比を維持している範囲を拡張し、対象物の測距可能範囲を拡張している。
【0008】
しかしながら、
図1に示した構成の場合、2つのハーフミラー530a、530bのそれぞれの光の反射率が80%であり、光の透過率が20%であると仮定すると、第1のパターン板520aを透過した透過光の光量は、投影光学系510に到達するまでに、4%にまで低下してしまう(1×0.2×0.2=0.04)。同様に、第2のパターン板520bを透過した透過光の光量は、投影光学系510に到達するまでに、16%まで低下し(1×0.8×0.2=0.16)、第3のパターン板520cを透過した透過光の光量は、投影光学系510に到達するまでに、80%まで低下してしまう(1×0.8=0.8)。そのため、各合焦面540a、540b、540cに結像されるパターンの光学像の輝度が低下、特に、第1の合焦面540aおよび第2の合焦面540bに結像されるパターンの光学像の輝度が著しく低下してしまうという問題があった。そのため、
図1に示した構成では、対象物に投影されるパターンが測距のための特徴点として利用可能なコントラスト比を維持している範囲を拡張しつつ、対象物に投影されるパターンの輝度の低下を抑制したいというニーズを満たすことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-26841号公報
【特許文献2】特開平7-218232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記従来の問題点を鑑みたものであり、その目的は、対象物に投影されるパターンが測距のための特徴点として利用可能なコントラスト比を維持している範囲を拡張しつつ、対象物に投影されるパターンの輝度の低下を抑制可能な投影デバイスおよび該デバイスを含む測距システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、以下の(1)~(2)によって規定される本発明により達成される。
【0012】
(1)第1のパターンを有する第1のパターン板と、
第2のパターンを有する第2のパターン板と、
前記第1のパターン板および前記第2のパターン板に対して光を照射するための光源と、
前記光源によって照射され、前記第1のパターン板および前記第2のパターンを透過した透過光を集光することにより、前記第1のパターンおよび前記第2のパターンを対象物に投影するための投影光学系と、を含み、
前記第1のパターン板および前記第2のパターン板は、前記投影光学系の光軸上であって、前記光源と前記投影光学系との間に設けられていることを特徴とする投影デバイス。
【0013】
(2)上記(1)に記載の投影デバイスと、
前記第1のパターンおよび前記第2のパターンが投影された前記対象物を撮像することにより、前記対象物までの距離を測定するよう構成された測距デバイスと、を含むことを特徴とする測距システム。
【発明の効果】
【0014】
本発明の投影デバイスにおいては、第1のパターンを有する第1のパターン板および第2のパターンを有する第2のパターン板が、投影光学系の光軸上であって、光源と投影光学系との間に設けられている。そのため、結像位置が互いに異なる第1のパターンおよび第2のパターンを、対象物に投影することができる。さらに、第1のパターン板および第2のパターン板は、光源から発せられる光に対する高い光透過率を有しているので、対象物に投影された第1のパターンおよび第2のパターンの輝度の低下を抑制することができる。この結果、本発明の投影デバイスは、対象物に投影される第1のパターンまたは第2のパターンの少なくとも一方が測距のための特徴点として利用可能なコントラスト比を維持している範囲を拡張しつつ、対象物に投影されるパターンの輝度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明の実施形態に係る測距システムを示す概略図である。
【
図3】
図2に示す投影デバイスの構成を示す概略図である。
【
図4】第1のパターンおよび第2のパターンの例を示す図である。
【
図5】第1のパターン板および第2のパターン板の代わりに使用可能な透明構造体を示す図である。
【
図6】投影距離に応じた第1のパターンの光学像および第2のパターンの光学像のコントラスト比の変化の1例を示すグラフである。
【
図7】
図2に示す測距デバイスの構成を示す概略図である。
【
図8】
図7に示す演算ユニットのブロック図である。
【
図9】
図2に示す測距システムによって実行される測距方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、
図2~
図9を参照して、本発明の実施形態に係る投影デバイスおよび測距システムを詳述する。また、各図において、同一または対応する要素には、同じ参照番号が付されている。
図2は、本発明の実施形態に係る測距システムを示す概略図である。
図3は、
図2に示す投影デバイスの構成を示す概略図である。
図4は、第1のパターンおよび第2のパターンの例を示す図である。
図5は、第1のパターン板および第2のパターン板の代わりに使用可能な透明構造体を示す図である。
図6は、投影距離に応じた第1のパターンの光学像および第2のパターンの光学像のコントラスト比の変化の1例を示すグラフである。
図7は、
図2に示す測距デバイスの構成を示す概略図である。
図8は、
図7に示す演算ユニットのブロック図である。
図9は、
図2に示す測距システムによって実行される測距方法のフローチャートである。
【0017】
図2に示す本発明の測距システム100は、対象物200上に、結像位置が互いに異なる第1のパターンおよび第2のパターンを投影するための投影デバイス1と、第1のパターンおよび第2のパターンが投影された対象物200を撮像することにより、対象物200までの距離を算出するよう構成された測距デバイス2と、を含む。測距デバイス2は、2つの撮像系IS1、IS2(
図7参照)を含むステレオカメラ方式の測距デバイスであり、対象物200を撮像することにより第1の画像と第2の画像を取得し、第1の画像と第2の画像との間の視差に基づいて対象物200までの距離を算出するよう構成されている。投影デバイス1から対象物200に第1のパターンおよび第2のパターンが投影された状態で、測距デバイス2が対象物200を撮像することにより、第1の画像および第2の画像を取得し、第1の画像と第2の画像と間の視差に基づいて、対象物200までの距離が算出される。なお、対象物200の種類は特に限定されず、対象物200は、電子部品、構造物、建築物、地形、人、動物等の測距の対象となり得る任意の種類のオブジェクトである。
【0018】
図3は、投影デバイス1の構成を概略的に示している。
図3に示されているように、投影デバイス1は、第1のパターンを有する第1のパターン板11aと、第2のパターンを有する第2のパターン板11bと、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bに対して光(典型的には、白色光)を照射する光源12と、光源12によって照射され、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bを透過した透過光を集光することにより、第1のパターンおよび第2のパターンを、対象物200上に投影するための投影光学系13と、を含む。
【0019】
第1のパターン板11aは、光源12から発せられる光に対して高い光透過率(例えば、80%以上の光透過率)を有する透明ガラス等の透明材料から構成された透明板の一方または双方の面上に、着色料や顔料等の不透明材料をプリントまたは焼き付け、第1のパターンを形成することにより得られる。同様に、第2のパターン板11bは、光源12から発せられる光に対して高い光透過率(例えば、80%以上の光透過率)を有する透明ガラス等の透明材料から構成された透明板の一方または双方の面上に、着色料や顔料等の不透明材料をプリントまたは焼き付け、第2のパターンを形成することにより得られる。したがって、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bのそれぞれは、一方または双方の面上に、光源12からの光を透過させる透過部分と、光源12からの光を遮断する不透過部分とを有している。第1のパターン板11aは、一方または双方の面上の不透過部分が第1のパターンを形成するポジ型のパターン板である。同様に、第2のパターン板11bは、一方または双方の面上の不透過部分が第2のパターンを形成するポジ型のパターン板である。投影光学系13によって、第1のパターンの光学像が第1の合焦面FP1に結像され、第2のパターンの光学像が第2の合焦面FP2に結像される。
【0020】
第1のパターン板11aの第1のパターンおよび第2のパターン板11bの第2のパターンのそれぞれは、高いコントラスト比を有するパターンであれば特に限定されないが、典型的には、
図4Aに示されているようなランダムドットパターン3または
図4Bに示されているようなランダム格子パターン4である。ランダムドットパターン3は、ランダムに配置された複数のドット31によって構成されている。ランダムドットパターン3の複数のドット31は、全て同じサイズを有している。ランダム格子パターン4は、ランダムに延伸する複数の格子線41と、複数の格子線41の複数の交点(格子点)42と、から構成されている。ランダム格子パターン4の格子線41は、全て同じ太さを有している。さらに、各格子線41の延伸方向は、各格子線41が交点42を通過するたびにランダムに変化している。
【0021】
第1のパターンと第2のパターンは、同じ種類のパターンである。例えば、第1のパターンがランダムドットパターン3である場合、第2のパターンもランダムドットパターン3である。同様に、第1のパターンがランダム格子パターン4である場合、第2のパターンもランダム格子パターン4である。このように第1のパターンと第2のパターンは、同じ種類のパターンであるが、第1のパターンのパターン特性と、第2のパターンのパターン特性は互いに異なっていてもよい。ここで言う「パターン特性」とは、ランダムドットパターン3の場合、複数のドット31のサイズおよび平均密度であり、ランダム格子パターン4の場合、複数の格子線41の太さおよび複数の交点42の平均密度である。また、以下の説明において、複数のドット31のサイズまたは格子線41の太さを「パターンサイズ」といい、複数のドット31の平均密度または複数の交点(格子点)42の平均密度を「パターン密度」という。
【0022】
図3に戻り、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bの双方は、光源12と投影光学系13との間であって、投影光学系13の光軸OA上に設けられている。第1のパターン板11aは、投影光学系13の光軸OA上において、第2のパターン板11bよりも光源側に位置している。第2のパターン板11bは、投影光学系13の光軸OA上において、第1のパターン板11aよりも投影光学系13側に、距離Dだけ離間して位置している。また、第2のパターン板11bは、投影光学系13の後側主点から、投影光学系13の焦点距離より大きい距離だけ離間して位置している。
【0023】
第1のパターン板11aと第2のパターン板11bと間の距離Dは、任意に設定することができる。好ましくは、第1のパターンの光学像が合焦状態で結像される第1の合焦面FP1と、第2のパターンの光学像が合焦状態で結像される第2の合焦面FP2との間の範囲Rの全てにおいて、第1のパターンの光学像および第2のパターンの光学像の少なくとも一方が、測距のための特徴点として利用可能なコントラスト比を維持するよう、第1のパターン板11aと第2のパターン板11bと間の距離Dが設定される。このような構成により、対象物200が第1の合焦面FP1と第2の合焦面FP2との間の範囲R内に位置する場合に、確実に、対象物200上に、測距のための特徴点として利用可能なコントラスト比を維持した第1のパターンまたは第2のパターンを投影することができる。
【0024】
なお、
図3に示す態様においては、それぞれ別部材である第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bを、投影光学系13の光軸OA上であって、光源12と投影光学系13との間に、互いに距離Dだけ離間して設けることにより、対象物200上に、結像位置が互いに異なる第1のパターンおよび第2のパターンを投影することを可能としているが、本発明はこれに限られない。例えば、
図5に示されているような透明構造体14を、投影光学系13の光軸OA上であって、光源12と投影光学系13との間に設けることにより、対象物200上に、結像位置が互いに異なる第1のパターンおよび第2のパターンを投影することを可能としてもよい。
【0025】
透明構造体14は、光源12から発せられる光に対して高い光透過率(例えば、80%以上の光透過率)を有する透明ガラス等の透明材料によって構成された、対向する一対の面を有する構造体である。透明構造体14の一方の面上に、着色料や顔料等の不透明材料をプリントまたは焼き付けることにより第1のパターンが形成されており、透明構造体14の一方の面が第1のパターン板11aとして機能する。さらに、透明構造体14の他方の面上に、着色料や顔料等の不透明材料をプリントまたは焼き付けることにより第2のパターンが形成されており、透明構造体14の他方の面が第2のパターン板11bとして機能する。また、透明構造体14の対向する一対の面間の距離Dは、第1のパターン板11aと第2のパターン板11bとの間の距離Dと等しい。透明構造体14は、第1のパターン板11aとして機能する一方の面が光源12と対向し、第2のパターン板11bとして機能する他方の面が投影光学系13と対向するよう、投影光学系13の光軸OA上であって、光源12と投影光学系13との間に設けられる。このような透明構造体14を用いた態様も、本発明の範囲内である。
【0026】
図3に戻り、光源12は、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bに対して拡散光を照射する機能を有している。光源12が第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bに対して照射する拡散光は、白色光や単色光(赤色光、緑色光、青色光等)の可視光、または、赤外線光や紫外線光等の非可視光である。典型的には、光源12は、白色LEDである。なお、説明の簡略化のため、特に言及がない場合、光源12から発せられる光は、白色光であるものとして以下の説明が提供される。光源12は、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bに対して、略均一に拡散光を照射するよう構成されている。
【0027】
投影光学系13は、光源12によって照射され、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bを透過した透過光を集光することにより、第1のパターンおよび前記第2のパターンを、対象物200上に投影する機能を有している。投影光学系13は、1つ以上のレンズと絞り等の光学素子から構成された固定焦点光学系である。また、投影光学系13の色収差は、複数のレンズの組み合わせにより十分に補正されていることが好ましい。これにより、光源12が白色拡散光を発する場合、投影光学系13は、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bを透過した透過光を集光することにより、高コントラスト比で、対象物200に第1のパターンおよび第2のパターンを投影することができる。
【0028】
投影光学系13によって、第1のパターンの光学像が第1の合焦面FP1に結像され、さらに、第2のパターンの光学像が第2の合焦面FP2に結像される。ここで、投影光学系13の後側主点から第1のパターン板11aまでの距離までの距離b1と、投影光学系13の後側主点から第2のパターン板11bまでの距離b2は、レンズの公式から、下記式(1)によって表される。
【0029】
【0030】
ここで、fは、投影光学系13の焦点距離、a1は、投影光学系13の前側主点から第1の合焦面FP1までの距離、a2は、投影光学系13の前側主点から第2の合焦面FP2までの距離である。
【0031】
このように、本発明の投影デバイス1においては、投影光学系13の光軸OA上において、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bが、互いに投影光学系13の光軸方向に距離Dだけシフトした状態で配置されているため、第1のパターンの光学像が結像される第1の合焦面FP1と第2のパターンの光学像が結像される第2の合焦面FP2は一致しない。
【0032】
図6は、投影光学系13の前側主点から第1の合焦面FP1までの距離a
1が450mmとなり、投影光学系13の前側主点から第2の合焦面FP2までの距離a
2が700mmとなるように、投影デバイス1を構成した場合における、投影距離(投影光学系13の前側主点からの距離)に応じた第1のパターンの光学像および第2のパターンの光学像のコントラスト比の変化の1例を示している。
【0033】
図6から明らかなように、第1のパターンの光学像のコントラスト比は、第1のパターンの光学像の結像位置である450mm前後の範囲において高い値を維持しており、第2のパターンの光学像のコントラスト比は、第2のパターンの光学像の結像位置である700mm前後の範囲において高い値を維持している。対象物200上に投影される第1のパターンまたは第2のパターンが、測距のための特徴点として利用可能となるコントラスト比が30%だと仮定する。第1のパターンのみを対象物200に投影する場合、約300mm以下の投影距離および約800mm以上の投影距離において、第1のパターンの光学像のコントラスト比が30%以下となり、対象物200に投影された第1のパターンを、測距のための特徴点として利用することができなくなってしまう。この場合、測距デバイス2の測距可能範囲が、約300mm~約800mmに限定されてしまう。一方、第2のパターンのみを対象物200に投影する場合、約400mm以下の投影距離において、第2のパターンの光学像のコントラスト比が30%以下となり、対象物200に投影された第2のパターンを、測距のための特徴点として利用することができなくなってしまう。この場合、測距デバイス2の測距可能範囲が、約400mm以上に限定されてしまう。
【0034】
一方、本発明の投影デバイス1は、結像位置が互いに異なる第1のパターンと第2のパターンの双方を、対象物200に投影する。第1のパターンおよび第2のパターンの少なくとも一方が30%以上のコントラスト比を維持している投影距離は、約300mm以上となる。そのため、結像位置が互いに異なる第1のパターンと第2のパターンの双方を測距のための特徴点として利用することにより、測距デバイス2の測距可能範囲を拡張することができる。
【0035】
このように、本発明の投影デバイス1において、第1のパターンの光学像が測距のための特徴点として利用可能なコントラスト比を維持する範囲と、第2のパターンの光学像が測距のための特徴点として利用可能なコントラスト比を維持する範囲とが完全に一致しない。測距デバイス2は、対象物200に投影された第1のパターンまたは第2のパターンのいずれかを測距のための特徴点として利用することができるので、投影デバイス1を用いて、対象物200に、結像位置が互いに異なる第1のパターンおよび第2のパターンを投影することにより、測距デバイス2の測距可能範囲を拡張することができる。
【0036】
さらに、前述したように、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bのそれぞれは、一方または双方の面上の不透過部分が第1のパターンまたは第2のパターンを形成するポジ型のパターン板である。そのため、第1のパターンまたは第2のパターンのパターンサイズやパターン密度にもよるが、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bのそれぞれは、光源12から発せられる光(白色光)に対して、約70%以上の高い光透過率を有している。そのため、第1のパターン板11aを透過した透過光を投影光学系13によって集光することにより第1の合焦面FP1に結像される第1のパターンの輝度および第2のパターン板11bを透過した透過光を投影光学系13によって集光することにより第2の合焦面FP2に結像される第2のパターンの輝度の低下を大幅に抑制することができる。
【0037】
また、本発明の投影デバイス1においては、第1のパターンの光学像が結像される第1の合焦面FP1と第2のパターンの光学像が結像される第2の合焦面FP2は一致しないので、第1の合焦面FP1に結像される第1のパターンの光学像の倍率m1は、第2の合焦面FP2に結像される第2のパターンの光学像の倍率m2と異なるものとなる。
【0038】
具体的には、第1の合焦面FP1に結像される第1のパターンの光学像の倍率m1および第2の合焦面FP2に結像される第2のパターンの光学像の倍率m2は、下記式(2)によって表される。
【0039】
【0040】
このように、第1の合焦面FP1に結像される第1のパターンの光学像の倍率m1と第2の合焦面FP2に結像される第2のパターンの光学像の倍率m2が異なる。通常、m2>m1の関係が成立する。そのため、第2の合焦面FP2に結像される第2のパターンの光学像のパターン密度は、第1の合焦面FP1に結像される第1のパターンの光学像のパターン密度より低くなり、第2の合焦面FP2に結像される第2のパターンの光学像のパターンサイズは、第1の合焦面FP1に結像される第1のパターンの光学像のパターンサイズよりも大きくなる。このように、第1のパターン板11aに形成された第1のパターンのパターン特性(パターンサイズおよびパターン密度)と、第2のパターン板11bに形成された第2のパターンのパターン特性が同じである場合、第1の合焦面FP1に結像される第1のパターンの光学像のパターン特性は、第2の合焦面FP2に結像される第2のパターンの光学像のパターン特性と異なったものとなる。
【0041】
本発明の投影デバイス1の1つの態様において、第1の合焦面FP1に結像される第1のパターンの光学像のパターンサイズと第2の合焦面FP2に結像される第2のパターンの光学像のパターンサイズとが等しくなるように、第1のパターン板11aの第1のパターンおよび第2のパターン板11bの第2のパターンが構成されていてもよい。
【0042】
具体的には、第1のパターン板11aに形成されている第1のパターンの各ドット31のサイズ(第1のパターンおよび第2のパターンのそれぞれがランダムドットパターン3である場合)または各格子線41の太さ(第1のパターンおよび第2のパターンのそれぞれがランダム格子パターン4である場合)をPS1とし、第2のパターン板11bに形成されている第2のパターンの各ドット31のサイズまたは各格子線41の太さをPS2とした場合、PS1×m1=PS2×m2との条件を満たすよう、第1のパターン板11aの第1のパターンおよび第2のパターン板11bの第2のパターンが構成されている。この場合、通常、m2>m1の関係が成立しているので、PS1>PS2の関係が成立する。すなわち、第1のパターン板11aの第1のパターンのパターンサイズPS1は、第2のパターン板11bの第2のパターンのパターンサイズPS2よりも大きい。このような構成により、第1の合焦面FP1に結像される第1のパターンの光学像のパターンサイズと第2の合焦面FP2に結像される第2のパターンの光学像のパターンサイズとを等しくすることができる。
【0043】
また、本発明の投影デバイス1の別の態様において、第1の合焦面FP1に結像される第1のパターンの光学像のパターン密度と第2の合焦面FP2に結像される第2のパターンの光学像のパターン密度とが等しくなるように、第1のパターン板11aの第1のパターンおよび第2のパターン板11bの第2のパターンが構成されていてもよい。
【0044】
具体的には、第1のパターン板11aに形成されている第1のパターンの複数のドット31の平均密度(第1のパターンおよび第2のパターンのそれぞれがランダムドットパターン3である場合)または複数の交点42の平均密度(第1のパターンおよび第2のパターンのそれぞれがランダム格子パターン4である場合)をPD1とし、第2のパターン板11bに形成されている第2のパターンの複数のドット31の平均密度または複数の交点42の平均密度をPD2とした場合、PD1×m2=PD2×m1との条件を満たすよう、第1のパターン板11aの第1のパターンおよび第2のパターン板11bの第2のパターンが構成されている。この場合、通常、m2>m1の関係が成立しているので、PD1<PD2の関係が成立する。すなわち、第1のパターン板11aの第1のパターンのパターン密度PD1は、第2のパターン板11bの第2のパターンのパターン密度PD2よりも低い。このような構成により、第1の合焦面FP1に結像される第1のパターンの光学像のパターン密度と第2の合焦面FP2に結像される第2のパターンの光学像のパターン密度とを等しくすることができる。
【0045】
また、本発明の投影デバイス1の別の態様において、第1の合焦面FP1に結像される第1のパターンの光学像のパターンサイズおよびパターン密度と、第2の合焦面FP2に結像される第2のパターンの光学像のパターンサイズおよびパターン密度とが、それぞれ等しくなるように、第1のパターン板11aの第1のパターンおよび第2のパターン板11bの第2のパターンが構成されていてもよい。
【0046】
このように、本発明の投影デバイス1においては、第1のパターン板11aに形成される第1のパターンのパターン特性と、第2のパターン板11bに形成される第2のパターンのパターン特性とが互いに異なっていてもよい。特に、第1の合焦面FP1に結像される第1のパターンの光学像のパターンサイズおよびパターン密度と、第2の合焦面FP2に結像される第2のパターンの光学像のパターンサイズおよびパターン密度とが、それぞれ等しくなるように、第1のパターン板11aの第1のパターンおよび第2のパターン板11bの第2のパターンが構成されていることが好ましい。
【0047】
このような構成により、第1の合焦面FP1と第2の合焦面FP2の間の範囲R内に位置する対象物200に投影される第1のパターンのパターン特性と第2のパターンのパターン特性とを略等しくすることができる。そのため、測距デバイス2が、範囲R内に位置する対象物200に投影された第1のパターンを測距のための特徴点として利用した場合であっても、範囲R内に位置する対象物200に投影された第2のパターンを測距のための特徴点として利用した場合であっても、対象物200の奥行情報を生成するために必要な分解能で、対象物200の距離情報を取得することができる。さらに、測距デバイス2が、範囲R内に位置する対象物200に投影された第1のパターンを測距のための特徴点として利用した場合であっても、範囲R内に位置する対象物200に投影された第2のパターンを測距のための特徴点として利用した場合であっても、取得される対象物200の距離情報の分解能に差が生じないため、対象物200の各箇所の奥行位置に応じて、生成される対象物200の奥行情報の精度が変化することを抑制することができる。
【0048】
このように、第1のパターン板11aに形成される第1のパターンのパターン特性(パターンサイズPS1およびパターン密度PD1)と、第2のパターン板11bに形成される第2のパターンのパターン特性(パターンサイズPS2およびパターン密度PD2)は、任意に設定することができる。第1のパターン板11aに形成される第1のパターンのパターン特性と、第2のパターン板11bに形成される第2のパターンのパターン特性を適切に設定することにより、投影光学系13の前側主点から、第1のパターンおよび第2のパターンが投影される対象物200までの距離が大きくなった際に発生する、対象物200に投影される第1のパターンのパターン密度および第2のパターンのパターン密度の極度の低下、並びに、対象物200に投影される第1のパターンのパターンサイズおよび第2のパターンのパターンサイズの過度な拡大を防止することができる。
【0049】
さらに、従来技術の欄において
図1を参照して詳述した従来の投影デバイス500では、第1のパターン板520a用の第1の光源、第2のパターン板520b用の第2の光源、および第3のパターン板520c用の第3の光源を含む3つの光源を使用する必要があった。一方、本発明の投影デバイス1では、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bが、光源12と投影光学系13との間であって、投影光学系13の光軸OA上に設けられているので、1つの光源12で、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bに対して光を照射することができる。そのため、本発明の投影デバイス1において用いられる光源12の数は、従来の投影デバイス500において用いられる光源の数よりも少ない。この結果、投影デバイス1の製造コストを低減させることができる。
【0050】
さらに、従来の投影デバイス500では、第2のパターン板520bおよび第3のパターン板520cは、投影光学系510の光軸から、投影光学系510の光軸方向に対して垂直な方向にシフトした位置に設けられている。そのため、従来の投影デバイス500の幅(投影光学系510の光軸方向に対して垂直な方向の長さ)が増大してしまい、従来の投影デバイス500のサイズが増加してしまう。一方、本発明の投影デバイス1では、第1のパターン板11aおよび第2のパターン板11bが、投影光学系13の光軸OA上に設けられているので、投影デバイス1の幅の増加を抑制することができる。
【0051】
図7は、本発明の測距システム100において用いられる測距デバイス2の構成を概略的に示している。
図7に示されているように、測距デバイス2は、第1の撮像光学系OS1および第1の撮像素子S1を含む第1の撮像系IS1と、第2の撮像光学系OS2および第2の撮像素子S2を含む第2の撮像系IS2と、第1の撮像素子S1が取得した第1の画像および第2の撮像素子S2が取得した第2の画像を受信し、第1の画像と第2の画像との間の視差に基づいて対象物200までの距離を算出する演算ユニット5と、を含む。
【0052】
第1の撮像光学系OS1および第2の撮像光学系OS2のそれぞれは、1つ以上のレンズと絞り等の光学素子から構成され、同じ特性(焦点距離、収差特性、Fナンバー、前側主点位置、後側主点位置等)を有する固定焦点光学系である。また、第1の撮像光学系OS1および第2の撮像光学系OS2は、第1の撮像光学系OS1の光軸と第2の撮像光学系OS2の光軸が平行となり、かつ、第1の撮像光学系OS1の光軸方向(または、第2の撮像光学系OS2の光軸方向)に対して垂直な方向に距離Pだけ離間するよう配置されている。このため、第1の撮像光学系OS1によって形成される第1の光学像と第2の撮像光学系OS2によって形成される第2の光学像との間には視差が存在することになる。
【0053】
第1の撮像光学系OS1は、投影デバイス1によって第1のパターンおよび第2のパターンが投影された対象物200からの光を集光し、第1の撮像素子S1の撮像面上に第1の光学像を形成する。同様に、第2の撮像光学系OS2は、投影デバイス1によって第1のパターンおよび第2のパターンが投影された対象物200からの光を集光し、第2の撮像素子S2の撮像面上に第2の光学像を形成する。
【0054】
第1の撮像素子S1は、第1の撮像光学系OS1の光軸上に配置されており、第1の撮像光学系OS1によって形成された第1の光学像を撮像し、第1の画像を取得する機能を有している。第2の撮像素子S2は、第2の撮像光学系OS2の光軸上に配置されており、第2の撮像光学系OS2によって形成された第2の光学像を撮像し、第2の画像を取得する機能を有している。第1の撮像素子S1および第2の撮像素子S2のそれぞれは、ベイヤー配列等の任意のパターンで配列されたRGB原色系カラーフィルターやCMY補色系カラーフィルターのようなカラーフィルターを有するカラー撮像素子であってもよいし、そのようなカラーフィルターを有さない白黒撮像素子であってもよい。
【0055】
また、測距デバイス2の向きと投影デバイス1の向きは、第1の撮像光学系OS1の光軸および第2の撮像光学系OS2の光軸が、投影デバイス1の投影光学系13の光軸OAに対して傾くように設定される。また、測距デバイス2は、測距デバイス2の第1の撮像系IS1の合焦面および第2の撮像系IS2の合焦面が、投影デバイス1の第1の合焦面FP1と第2の合焦面FP2との間の範囲R内において、投影デバイス1の投影光学系13の光軸OAと交差するよう、構成および配置されていることが好ましい。より好ましくは、測距デバイス2は、測距デバイス2の第1の撮像系IS1の合焦面および第2の撮像系IS2の合焦面が、投影デバイス1の第1の合焦面FP1と第2の合焦面FP2との間の範囲Rの中間点において、投影デバイス1の投影光学系13の光軸OAと交差するよう、構成および配置されていることが好ましい。このような構成により、投影デバイス1の第1の合焦面FP1と第2の合焦面FP2との間の範囲R内に位置する対象物200に対する測距を精度良く実行することができる。
【0056】
第1の撮像素子S1および第2の撮像素子S2は、演算ユニット5からの制御によって同じタイミングで撮像を行い、それぞれ、第1の画像および第2の画像を取得する。第1の撮像素子S1によって取得された第1の画像および第2の撮像素子S2によって取得された第2の画像は、演算ユニット5に送信される。
【0057】
演算ユニット5は、第1の撮像素子S1および第2の撮像素子S2からそれぞれ受信した第1の画像および第2の画像を用いて、対象物200までの距離を算出するよう構成されている。
図8に示されているように、演算ユニット5は、演算ユニット5の動作を実行するための1つ以上のプロセッサー51と、演算ユニット5への入力および演算ユニット5からの出力を実行するためのI/O(インプット/アウトプット)インターフェース52と、演算ユニット5の処理を実行するために用いられるデータ54およびモジュール55を保存している1つ以上のメモリー53と、を備えている。
【0058】
1つ以上のプロセッサー51は、1つ以上のマイクロプロセッサー、マイクロコンピューター、マイクロコントローラー、デジタル信号プロセッサー(DSP)、中央演算処理装置(CPU)、メモリーコントロールユニット(MCU)、画像処理用演算処理装置(GPU)、状態機械、論理回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはこれらの組み合わせ等のコンピューター可読命令に基づいて信号操作等の演算処理を実行する演算ユニットである。特に、プロセッサー51は、メモリー53内に保存されているコンピューター可読命令(例えば、データ、プログラム、モジュール等)をフェッチし、演算、信号操作および制御を実行するよう構成されている。
【0059】
I/Oインターフェース52は、ウェブインターフェース、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)等の様々なソフトウェアインターフェースおよびハードウェアインターフェースを含む。例えば、I/Oインターフェース52は、キーボード、マウス、タッチパネルディスプレイ、外部メモリー、プリンター、ディスプレイのような周辺デバイスのためのインターフェースである。I/Oインターフェース52は、キーボード、マウス、タッチパネルディスプレイのような入力デバイスを用いた演算ユニット5への入力およびディスプレイ、プリンター、外部メモリーへの演算ユニット5からの出力を可能とする。
【0060】
メモリー53は、揮発性記憶媒体(例えば、RAM、SRAM、DRAM)、不揮発性記憶媒体(例えば、ROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリー、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、SDカード、光ディスク、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイディスク、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク)、またはこれらの組み合わせを含むコンピューター可読媒体である。
【0061】
メモリー53は、プロセッサー51と通信可能に接続されており、プロセッサー51により実行可能な複数のモジュール55、および、複数のモジュール55による処理に必要なデータ54を保存している。また、メモリー53は、複数のモジュール55の1つ以上によって受信、処理、生成されたデータや、複数のモジュール55による処理を実行するために必要なデータを一時保存する機能を備えている。
【0062】
データ54は、第1の画像と第2の画像との間の視差に基づいて対象物200までの距離を測定するために必要な測距パラメーター541と、演算ユニット5の処理を実行するために必要な任意の数のその他データ542と、を含んでいる。測距パラメーター541は、第1の撮像系IS1および第2の撮像系IS2のそれぞれの特性に関する内部パラメーター(第1の撮像光学系OS1および第2の撮像光学系OS2の焦点距離、第1の撮像光学系OS1および第2の撮像光学系OS2の収差特性、第1の撮像素子S1および第2の撮像素子S2の画素数や画素ピッチ等の特性等)と、第1の撮像光学系OS1および第2の撮像光学系OS2の配置に関する外部パラメーター(第1の撮像光学系OS1の光軸と第2の撮像光学系OS2の光軸との距離P等)と、を含んでいる。測距パラメーター541は、第1の撮像系IS1および第2の撮像系IS2の構成および配置によって決定される固定パラメーターであり、メモリー53内に事前に保存される。演算ユニット5は、第1の画像と第2の画像との間の視差と、測距パラメーター541に基づいて、対象物200までの距離を算出する。
【0063】
モジュール55は、ルーティーン、アプリケーション、プログラム、アルゴリズム、ライブラリー、オブジェクト、コンポーネント、データ構造、またはこれらの組み合わせ等のプロセッサー51により実行可能なコンピューター可読命令である。
【0064】
モジュール55は、第1の撮像素子S1および第2の撮像素子S2の撮像を制御するための撮像制御モジュール551と、第1の画像中の特徴点および第2の画像中の対応特徴点を抽出するための特徴点抽出モジュール552と、算出された視野に基づいて対象物200の特徴点までの距離を算出する距離算出モジュール553と、算出された対象物200の複数の特徴点までの距離に基づいて、対象物200の奥行情報を生成する奥行情報生成モジュール554と、演算ユニット5が提供する機能を補うための任意の数のその他モジュール555と、を含んでいる。
【0065】
撮像制御モジュール551は、I/Oインターフェース52を介して、ユーザーから入力された操作に従って、第1の撮像素子S1および第2の撮像素子S2を制御し、第1のパターンおよび第2のパターンが投影された対象物200を撮像する機能を有している。撮像制御モジュール551からの制御によって、第1の撮像素子S1および第2の撮像素子S2が、同じタイミングで第1のパターンおよび第2のパターンが投影された対象物200を撮像し、第1の画像および第2の画像をそれぞれ取得する。
【0066】
特徴点抽出モジュール552は、第1の撮像素子S1が取得した第1の画像中の特徴点と、第2の撮像素子S2が取得した第2の画像中の対応特徴点を抽出する機能を有している。具体的には、特徴点抽出モジュール552は、最初に、第1の画像中における、対象物200に投影された第1のパターンまたは第2のパターンのエッジ部の1つを第1の画像中の特徴点として抽出する。その後、特徴点抽出モジュール552は、第2の画像を探索し、抽出した第1の画像中の特徴点に対応する対応特徴点を検出する。エッジ部の抽出および対応特徴点の抽出は、ステレオカメラ方式を用いた測距分野において既知の種々の方法(例えば、Sobelフィルタを用いたエッジ抽出方法や、エピポーラ線を利用した対応特徴点の検出方法等)を用いて実行することができる。第1の画像中の特徴点の座標および第2の画像中の対応特徴点の座標の差が算出され、第1の画像中の特徴点と第2の画像中の対応特徴点との間の視差として、メモリー53内に一時保存される。
【0067】
また、特徴点抽出モジュール552は、パターンマッチングにより、第1の画像中の特徴点および第2の画像中の対応特徴点を抽出してもよい。この場合、特徴点抽出モジュール552は、最初に、第1の画像中における、対象物200に投影された第1のパターンまたは第2のパターンの任意の領域を、所定のサイズで切り出し、テンプレートパターンとしてメモリー53内に一時保存する。次に、特徴点抽出モジュール552は、メモリー53内に保存されているテンプレートパターンを用いてパターンマッチングを実行し、テンプレートパターンとマッチングするパターンを、第2の画像中から抽出する。なお、パターンマッチングは、2つのパターン間の相関係数(類似度)を算出する幾何学形状パターンマッチング等の画像処理の分野において既知の種々の方法を用いて実行することができる。第1の画像中の切り出されたパターン(テンプレートパターン)の任意の箇所の座標と、第2の画像中のマッチングパターンの対応する箇所の座標との差が算出され、第1の画像中の特徴点と第2の画像中の対応特徴点との間の視差として、メモリー53内に一時保存される。この場合、測距のために利用される一対の特徴点は、第1の画像中の切り出されたパターン(テンプレートパターン)の任意の箇所と、第2の画像中のマッチングパターンの対応する箇所である。
【0068】
距離算出モジュール553は、特徴点抽出モジュール552によって抽出された視差に基づいて、対象物200の特徴点までの距離を算出する機能を有している。具体的には、距離算出モジュール553は、メモリー53内に一時保存されている第1の画像中の特徴点と第2の画像中の対応特徴点との間の視差およびメモリー53内に保存されている測距パラメーター541を参照し、対象物200の特徴点までの距離を算出する。距離算出モジュール553によって算出された対象物200の特徴点までの距離は、メモリー53内に一時保存される。特徴点抽出モジュール552および距離算出モジュール553は、奥行情報生成モジュール554が対象物200の奥行情報を生成するのに十分な数の距離情報を取得するまで、第1の画像中の特徴点および第2の画像内の対応特徴点の抽出と、対象物200の特徴点までの距離の算出を、抽出する特徴点を変えながら、繰り返し実行する。
【0069】
奥行情報生成モジュール554は、距離算出モジュール553によって算出された対象物200の複数の特徴点までの距離に基づいて、対象物200の奥行情報を生成する機能を有している。具体的には、奥行情報生成モジュール554は、対象物200の複数の特徴点までの距離に基づいて、対象物200の3次元グリッドおよびテクスチャを生成し、対象物200の3次元モデルを生成し、メモリー53内に対象物200の奥行情報として保存する。
【0070】
このように、本発明の測距システム100においては、投影デバイス1が対象物200に対して、結像位置が互いに異なる第1のパターンおよび第2のパターンを投影する。また、上述のように、投影デバイス1によって対象物200に投影される第1のパターンおよび第2のパターンの輝度の低下が大幅に抑制されている。そのため、測距デバイス2は、投影デバイス1によって対象物200に投影された第1のパターンまたは第2のパターンを、測距のための特徴点として利用することができる。この結果、対象物200の表面が凹凸のない滑らかな曲面である場合であっても、対象物200の奥行情報を生成するのに十分な数の距離情報を取得することができる。
【0071】
また、投影デバイス1によって対象物200に対して投影される第1のパターンおよび第2のパターンは、互いに異なる位置で結像する。さらに、測距デバイス2は、対象物200に投影された第1のパターンまたは第2のパターンを測距のための特徴点とすることができるので、測距デバイス2の測距可能範囲を拡張することができる。
【0072】
次に、
図9を参照して、本発明の測距システム100によって実行される測距方法S100を詳述する。工程S110において、ユーザーは、投影デバイス1を用いて、対象物200に対して、結像位置が互いに異なる第1のパターンおよび第2のパターンを投影する。工程S120において、ユーザーは、演算ユニット5に対して対象物200に対する撮像を実行するための操作を実行する。演算ユニット5がユーザーからの操作を受け付けると、演算ユニット5のプロセッサー51は、撮像制御モジュール551を用いて、第1の撮像素子S1および第2の撮像素子S2を制御し、投影デバイス1によって第1のパターンおよび第2のパターンが投影された対象物200の撮像を行い、第1の画像および第2の画像を取得する。
【0073】
工程S130において、演算ユニット5のプロセッサー51は、特徴点抽出モジュール552を用いて、第1の画像中の特徴点および第2の画像中の対応特徴点を抽出し、第1の画像中の特徴点と第2の画像中の対応特徴点との間の視差を算出する。工程S140において、演算ユニット5のプロセッサー51は、距離算出モジュール553を用いて、工程S130において算出された視差に基づいて、対象物200の特徴点までの距離を算出する。工程S130および工程S140は、奥行情報生成モジュール554が対象物200の奥行情報を生成するのに十分な数の距離情報を取得するまで、工程S130において抽出される特徴点を変えて、繰り返し実行される。工程S150において、演算ユニット5のプロセッサー51は、奥行情報生成モジュール554を用いて、工程S140において算出された対象物200の複数の特徴点までの距離に基づいて、対象物200の奥行情報を生成する。工程S140において対象物200の奥行情報が生成されると、測距方法S100は、終了する。
【0074】
以上、本発明の投影デバイスおよび測距システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。上述の投影デバイスおよび測距デバイスの構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、投影デバイスおよび測距デバイスに任意の構成のものを付加することができる。
【0075】
例えば、
図3に示された投影デバイスおよび
図7に示された測距デバイスのそれぞれのコンポーネントの数や種類は、説明のための例示にすぎず、本発明は必ずしもこれに限られない。本発明の原理および意図から逸脱しない範囲において、任意のコンポーネントが追加若しくは組み合わされ、または任意のコンポーネントが削除された様態も、本発明の範囲内である。また、投影デバイスおよび測距デバイスの各コンポーネントは、ハードウェア的に実現されていてもよいし、ソフトウェア的に実現されていてもよいし、これらの組み合わせによって実現されていてもよい。
【0076】
また、上述の説明では、測距デバイスは、2つの画像間の視差を利用して対象物までの距離を算出しているが、本発明はこれに限られない。例えば、測距デバイスは、対象物に投影された第1のパターンまたは第2のパターンのドットや交点の画像中の位置や位相差情報等の視差以外の情報に基づいて、対象物までの距離を算出する測距分野において既知の種々の方法(アクティブステレオ法等)によって、対象物までの距離を算出してもよい。このような態様もまた、本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0077】
1…投影デバイス 11a…第1のパターン板 11b…第2のパターン板 12…光源 13…投影光学系 14…透明構造体 2…測距デバイス 3…ランダムドットパターン 31…ドット 4…ランダム格子パターン 41…格子線 42…交点 5…演算ユニット 51…プロセッサー 52…I/Oインターフェース 53…メモリー 54…データ 541…測距パラメーター 542…その他データ 55…モジュール 551…撮像制御モジュール 552…特徴点抽出モジュール 553…距離算出モジュール 554…奥行情報生成モジュール 555…その他モジュール 100…測距システム 200…対象物 500…投影デバイス 510…投影光学系 520a…第1のパターン板 520b…第2のパターン板 520c…第3のパターン板 530a…第1のハーフミラー 530b…第2のハーフミラー 540a…第1の合焦面 540b…第2の合焦面 540c…第3の合焦面 D…距離 FP1…第1の合焦面 FP2…第2の合焦面 IS1…第1の撮像系 IS2…第2の撮像系 OA…光軸 OS1…第1の撮像光学系 OS2…第2の撮像光学系 P…距離 R…範囲 S1…第1の撮像素子
S2…第2の撮像素子 S100…測距方法 S110、S120、S130、S140、S150…工程