(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019654
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】揚げ玉製造装置および揚げ玉製造方法
(51)【国際特許分類】
A47J 37/12 20060101AFI20230202BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20230202BHJP
【FI】
A47J37/12 321
A23L5/10 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124565
(22)【出願日】2021-07-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】516049755
【氏名又は名称】タマムラデリカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175787
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 龍也
(72)【発明者】
【氏名】岡住 昌則
【テーマコード(参考)】
4B035
4B059
【Fターム(参考)】
4B035LC11
4B035LE17
4B035LG35
4B035LG57
4B035LK15
4B035LP07
4B035LT03
4B059AB02
4B059AD20
4B059BE02
4B059BE03
(57)【要約】
【課題】簡素な装置構成で、具材入り揚げ玉(特に食感の良い大振りな具材の入った具材入り揚げ玉)を製造することができる揚げ玉製造装置を提供する。
【解決手段】揚げ玉製造装置1は、揚げ玉12の原料であるバッター液6を流下させる流下板2と、揚げ油8が注入される油槽4と、を備え、流下板2が油槽4に向かって下向きの傾斜を有するように設置され、流下板2の先端側からバッター液6を油槽4中の揚げ油8に流下させるように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揚げ玉製造装置であって、
揚げ玉の原料であるバッター液を流下させる流下板と、揚げ油が注入される油槽と、を備え、
前記流下板が前記油槽に向かって下向きの傾斜を有するように設置され、前記流下板の先端側から前記バッター液を前記油槽中の前記揚げ油に流下させるように構成されているもの。
【請求項2】
請求項1に記載の揚げ玉製造装置であって、
前記流下板の先端側に複数本の指状部が形成されているもの。
【請求項3】
請求項2に記載の揚げ玉製造装置であって、
前記複数本の指状部が不均一な長さに形成されているもの。
【請求項4】
請求項2に記載の揚げ玉製造装置であって、
前記複数本の指状部の先端位置が不揃いに形成されているもの。
【請求項5】
請求項2に記載の揚げ玉製造装置であって、
前記複数本の指状部の先端部および股部が曲線的に形成されているもの。
【請求項6】
請求項1に記載の揚げ玉製造装置であって、
前記流下板に、前記バッター液の流下方向に沿って複数の凹溝が形成されているもの。
【請求項7】
請求項1に記載の揚げ玉製造装置であって、
前記流下板の上方に、前記バッター液の流下速度を調整可能な調整板を備え、
前記調整板は前記流下板に向かって下向きに傾斜するように設置され、その先端側から前記バッター液を前記流下板に流下させるように構成されており、前記流下板に対する傾斜角を変更することにより、前記バッター液の流下量を調整可能とするもの。
【請求項8】
揚げ玉製造方法であって、
油槽に向かって下向きの傾斜を有する流下板の先端側から、揚げ玉の原料であるバッター液を前記油槽中の揚げ油に流下させ、揚げ玉を製造するもの。
【請求項9】
請求項8に記載の揚げ玉製造方法であって、
前記流下板として、先端側に複数本の指状部が形成された流下板を用い、前記指状部の縁部から前記バッター液を前記油槽中の揚げ油に流下させるもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の加熱調理方法、特に揚げ玉を製造する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、揚げ玉(天かす、たぬきとも称される)としては、天ぷらを揚げた際に天ぷら種から外れてしまった揚げかすを利用していた。
【0003】
しかし、揚げ玉は蕎麦やうどん等の麺類の具材として利用されることが多く、天ぷらの副産物としてではなく、揚げ玉のみを単独で製造することが増えている。特に近年、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで麺類の流通量が増加しており、揚げ玉を手作りしていたのでは供給が追いつかない。従って、揚げ玉を機械的に大量生産することが可能な製造装置や製造方法が提案されている。
【0004】
例えば、バッターミックス(揚げ玉の原料液。バッター液とも言う。)を開孔部よりフライヤーの油槽内に滴下させて揚げ玉を製造する方法が公開されている(特許文献1乃至3)。
【0005】
また、具材を加圧空気と共にネットコンベア上へ吹き出し、前記ネットコンベアの進行中にバッター液(揚げ玉の原料液)を付着させた後、バッター付き具材をフライヤーに投入して揚げる方法;具材を飛ばしてバッター液が流下するスクリーンを通過させ、前記具材に前記バッター液を付着させた後、フライヤーに投入して揚げる方法;も公開されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭61-128848
【特許文献2】特開2015-123278
【特許文献3】特開2017-127584
【特許文献4】特許2990613
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1乃至3に記載の方法は、具材入り揚げ玉、特に食感の良い大振りな具材の入った具材入り揚げ玉を製造しようとすると開孔部に具材が詰まってしまう;といった課題があった。
【0008】
また、特許文献4に記載の方法は、特許文献1乃至3に記載の方法と比べれば具材入り揚げ玉の製造に適しているものの、装置構成が複雑であり、導入コストが高くなる;といった課題があった。
【0009】
本発明は、前記のような従来技術が有する課題を解決するものである。すなわち、本発明は、簡素な装置構成で、具材入り揚げ玉(特に食感の良い大振りな具材の入った具材入り揚げ玉)の製造に適した揚げ玉製造装置および揚げ玉製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記従来技術、特に特許文献1乃至3に記載の方法の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。そして、これらの方法の不具合がバッター液を開孔部から油槽内に滴下する方式によるものであることを見出した。
【0011】
そして、本発明者は、バッター液を開孔部から滴下させるのではなく、傾斜させた板(流下板)の先端側から油槽中にバッター液を流下させる方式を採用することによって、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、前記課題は以下に示す本発明によって解決される。
【0012】
[1]揚げ玉製造装置:
本発明は、揚げ玉製造装置であって、揚げ玉の原料であるバッター液を流下させる流下板と、揚げ油が注入される油槽と、を備え、前記流下板が前記油槽に向かって下向きの傾斜を有するように設置され、前記流下板の先端側から前記バッター液を前記油槽中の前記揚げ油に流下させるように構成されているもの;である。
【0013】
本発明の揚げ玉製造装置は、
前記流下板の先端側に複数本の指状部が形成されているもの;
前記複数本の指状部が不均一な長さに形成されているもの;
前記複数本の指状部の先端位置が不揃いに形成されているもの;
前記複数本の指状部の先端部および股部が曲線的に形成されているもの;
前記流下板に、前記バッター液の流下方向に沿って複数の凹溝が形成されているもの;
前記流下板の上方に、前記バッター液の流下速度を調整可能な調整板を備え、前記調整板は前記流下板に向かって下向きに傾斜するように設置され、その先端側から前記バッター液を前記流下板に流下させるように構成されており、前記流下板に対する傾斜角を変更することにより、前記バッター液の流下量を調整可能とするもの;が好ましい。
【0014】
[2]揚げ玉製造方法:
また、本発明は、揚げ玉製造方法であって、油槽に向かって下向きの傾斜を有する流下板の先端側から、揚げ玉の原料であるバッター液を前記油槽中の揚げ油に流下させ、揚げ玉を製造するもの;である。
【0015】
本発明の揚げ玉製造方法は、
前記流下板として、先端側に複数本の指状部が形成された流下板を用い、前記指状部の縁部から前記バッター液を前記油槽中の揚げ油に流下させるもの;が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の揚げ玉製造装置および揚げ玉製造方法は、簡素な装置構成で、具材入り揚げ玉(特に食感の良い大振りな具材の入った具材入り揚げ玉)を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の揚げ玉製造装置の一の実施形態を模式的に示す概念図である。
【
図2】
図1に示す揚げ玉製造装置の一部を拡大して模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す揚げ玉製造装置の流下板部分を拡大して示す斜視図である。
【
図4A】指状部を有する流下板においてバッター液の液滴が形成される様子を模式的に示す概念図である。
【
図4B】
図4Aに示す流下板と液滴を側面方向から見た様子を模式的に示す概念図である。
【
図5】指状部を有する流下板においてバッター液の液滴が形成される様子を模式的に示す概念図である。
【
図6】流下板の別の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態について、
図1および
図2に示す揚げ玉製造装置1を例に具体的に説明する。但し、本発明は特許請求の範囲に記載された要件を満たす全ての形態を包含し、図面に示された形態のみに限定されるものではない。
【0019】
[1]本発明の特徴:
揚げ玉製造装置1は、揚げ玉12の原料であるバッター液6を流下させる流下板2と、揚げ油8が注入される油槽4と、を備えている。
【0020】
そして、揚げ玉製造装置1は、流下板2が油槽4に向かって下向きの傾斜を有するように設置され、流下板2の先端側からバッター液6を油槽4中の揚げ油8に流下させるように構成されている。
【0021】
揚げ玉製造装置1のように流下板2の上方が開放されていれば、大きな具材を含むバッター液6でもその流れを阻害されることがなく、具材入り揚げ玉(特に食べごたえのある大振りな具材の入った具材入り揚げ玉)を製造することに適している。一方、特許文献1乃至3に記載の方法のようなバッター液を開孔部から滴下させる方式では、開孔部に具材が詰まるおそれがある。
【0022】
また、揚げ玉製造装置1は流下板2を下向きに傾斜させて設置するという極めて簡素な装置構成である。このような簡素な装置構成であれば、特許文献4に記載の方法のような複雑な装置構成に比べて、装置の導入コストはかなり低減することができる。
【0023】
[2]揚げ玉製造装置:
揚げ玉製造装置1は、必須構成要素として流下板2と油槽4とを備える。揚げ玉製造装置1は揚げ玉12の原料であるバッター液6から揚げ玉12を製造するための装置である。
【0024】
バッター液6の組成は揚玉の内容により異なる。例えば、小麦粉、水、そして具材を混合してなるスラリーが好適に用いられる。具材は揚げ玉の風味を向上させるものであれば特に限定されない。例えば、野菜(ネギ、小松菜等);魚介類(エビ、イカ、タコ等);海草類(のり、昆布等);香草類(バジル、パセリ等)等の具材を好適に用いることができる。これらの具材は揚げ玉に適した大きさや形状となるよう、刻んだり、カットしたりしてもよい。
【0025】
[2-1]流下板:
流下板2は、揚げ玉12の原料であるバッター液6を流下させるための板状の部材である。バッター液6を油槽4中の揚げ油8に流下させる必要から、流下板2は油槽4に向かって下向きの傾斜を有するように設置されている。「傾斜」は水平方向より下方に向かう軌跡を有していれば足り、直線的であっても曲線的であってもよい。図示の流下板2は下向きの円弧状、即ち曲線的な傾斜を有している。
【0026】
図3に示すように、流下板2はその先端側に複数本の指状部2Aが形成されている。流下板2には先端側から末端側に向かう複数本のスリット2Bが形成され、その残部があたかも手の指のような形状を呈している。この「手の指」に当たる突出部分が指状部2Aである。
【0027】
図4Aおよび
図4Bに示すように、流下板2に指状部2Aを形成すると、バッター液6は指状部2Aの縁部、具体的には指先、指の中程、指の股部と様々な箇所から流れ落ちる。これにより、揚げ玉の形状は不揃いになり、手作り感に溢れた揚げ玉を製造することができる。また、流下板の先端が直線的に形成されている場合と比較すると、製造される揚げ玉がドーム状(中空半球状)となり易く、揚げ玉の食感を向上させることができる。
【0028】
一方、特許文献1乃至3に記載の技術のように、均一形状の開孔部からバッター液を滴下した場合、揚げ玉の形状が揃ってしまい、機械的に製造した印象の揚げ玉しか製造することができない。このため、本発明者らは従来、手作り感のある揚げ玉を作るために、作業員が高温の油槽の前に立ち、作業員の手からバッター液を流下させることにより、具材入り揚げ玉を製造する方法を採用していた。流下板2を用いれば、手作り感のある揚げ玉を自動で大量生産することが可能となり、揚げ玉の生産性を向上させることができる。また、作業員は長時間の手作業や危険作業から解放され、作業負担が減ることに加え、作業員ごとに揚げ玉の形状がばらつく等の属人的な品質ばらつきを抑制することもできる。
【0029】
また、
図5に示すように、流下板に指状部2Aを形成すると、バッター液6は表面張力によって指状部2Aの縁部にある程度の量が溜まった後、流れ落ちる。これにより、比較的大振りな揚げ玉を製造することができる。即ち、揚げ玉製造装置1は、具材を含む大振りな揚げ玉を製造するのに適している。
【0030】
図3に示すように、流下板2は複数本の指状部2Aが不均一な長さに形成され、さらに複数本の指状部2Aの先端位置が不揃いに形成されている。このような構造は、形状の異なる指状部2Aの様々な部分からバッター液6が流れ落ちるため、揚げ玉の形状は不揃いになり易く、手作り感に溢れた揚げ玉を製造することに資する。
【0031】
また、
図3に示すように、流下板2は複数本の指状部2Aの幅が均一な幅に形成され、かつ、複数本の指状部2Aが等間隔に配置されている。
【0032】
さらに、
図3に示すように、流下板2は複数本の指状部2Aの先端部および股部が曲線的に形成されている。既に説明したように、バッター液6は表面張力によって指状部2Aの縁部にある程度の量が溜まった後、流れ落ちる(
図5参照)。
【0033】
本発明者らが様々な形状の指状部が形成された流下板を用いてテストを行ったところ、指状部2Aの先端部や股部に直線的なコーナー(角部)を有しているよりも、人間の手指と同様に滑らかな曲線状(R形状)に形成されていた方が、形がよくサクサクした食感の良い揚げ玉を形成することができることを見出した。
【0034】
指状部2Aの先端部や股部からバッター液6が雫状に落下し、揚げ玉の形状がドーム状となり易いためである。特に、指状部2Aの股部が曲線状に形成されていると、その股部でバッター液が膜状に広がり、表面張力で収斂し、バッター液6が雫状に落下し易く、理想的な形状と食感を有する揚げ玉を得られる。
【0035】
指状部2Aを人間の手指と同様に滑らかな曲線状としたのは、従来、作業員の指先や指の間からバッター液を流下させ、揚げ玉を製造していた作業をヒントにしたものである。各々の指状部の長さや太さも人間の手指に近いサイズであることが好ましく、複数の指状部全体の形状も人間の手を広げた形状に近いものが好ましい。
【0036】
流下板の形状・サイズ、指状部の本数・形状・サイズについてはバッター液の性状や揚げ玉のサイズ、具材の有無によって適宜定めればよく、特に限定されない。但し、流下板の幅はバッター液が確実に油槽に流下するよう、油槽の半分から2/3程度の幅とすることが好ましい。
【0037】
また、指状部の幅は10mm以上30mm以下であることが好ましく、15mm以上20mm以下であることが更に好ましい。また、指状部の長さは10mm以上150mm以下であることが好ましく、30mm以上90mm以下であることが更に好ましい。
【0038】
本発明の揚げ玉製造装置においては、先端側に複数本の指状部が形成された流下板に代えて、
図6に示すように、バッター液6の流下方向に沿って複数の凹溝102Aが形成された流下板102を用いてもよい。
【0039】
このような構造であれば、凹溝102Aに沿ってバッター液6が流下するため、凹溝102Aの幅や深さを調整することによって、所望の大きさの揚げ玉を製造することができる。また、流下板102(ひいては凹溝102A)の上方の空間は開放されているため、バッター液6に大振りの具材を混ぜ込んでも、特許文献1乃至3に記載の技術のように、装置に具材が引っかかるという不具合を生じることがない。
【0040】
凹溝が形成された流下板の形状・サイズ、凹溝の本数・形状・サイズについてはバッター液の性状や揚げ玉のサイズ、具材の有無によって適宜定めればよく、特に限定されない。
【0041】
但し、流下板102は波板状に形成されている。このように、凹溝102Aの断面形状が曲線的に構成されていると、バッター液6が流下し易く、バッター液6の付着ロスも少ない点で好ましい。また、凹溝102Aの先端でバッター液が膜状に広がり、表面張力で収斂し、バッター液6が雫状に落下し易く、理想的な形状と食感を有する揚げ玉を得られる。
【0042】
また、凹溝の幅は10mm以上30mm以下であることが好ましく、15mm以上20mm以下であることが更に好ましい。また、凹溝の長さは10mm以上150mm以下であることが好ましく、30mm以上90mm以下であることが更に好ましい。また、指状部および凹溝は流下板の中心からバランスよく配置するのがよい。
【0043】
[2-2]油槽:
油槽4は揚げ油が注入される容器である。油槽4は金属製の箱型容器を用いている。但し、揚げ玉を製造することが可能である限り、形状や材質は特に限定されない。
【0044】
油槽4は槽内において揚げ油を循環させるための循環機22を備えている。循環機22を備えることにより、揚げ油の温度を均一化せたり、製造された揚げ玉を取り出し口方向に移送し、揚げ玉の取り出しを容易にしたりすることができる。
【0045】
但し、循環機22に代えて、撹拌機を有するものであってもよい。撹拌機も循環機22と同様に一定方向への油流を作ることができ、循環機22と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、油槽4は揚げ油を所定の温度に加熱するためのヒータ、温度を測定する温度センサ等、従来公知の揚げ物製造装置(フライヤー)に用いられる機器を備えていてもよい。
【0047】
[2-3]調整板:
調整板10は、バッター液6の流下速度(または流下量)を調整可能な板状部材である。調整板10は流下板2の上方に、流下板2に向かって下向きに傾斜するように設置され、その先端側からバッター液6を流下板2に流下させるように構成されている。
【0048】
調整板10は、流下板2に対する傾斜角を変更することにより、バッター液6の流下速度を調整可能とするものである。調整板10を備えると、バッター液6の粘度に応じてバッター液6の流下速度を適宜調整可能である点において好ましい。
【0049】
調整板10の表面には多数のくぼみが形成されている。例えば、エンボス加工等により、このようなくぼみを形成することで、バッター液6が調整板10のくぼみに流入し、バッター液6の流下速度が低下する。そのため、バッター液6の流下板2への流下速度(流下量)、ひいてはバッター液6の流下板2から油槽4中の揚げ油8への流下速度(流下量)をより精密にコントロールすることが可能となる。
【0050】
調整板10の幅はバッター液6が確実に流下板2に流下するよう、流下板2の幅より、10mmから20mm狭い幅とすることが好ましい。
【0051】
[2-4]その他:
本発明の揚げ玉製造装置は、流下板、油槽、調整板の他、揚げ玉の製造に必要な各種器具や機器を備えていてもよい。例えば、揚げ玉製造装置1はバッター液6を貯留するためのホッパ14、バッター液6を送り出すためのポンプ16、ポンプ16を駆動させるためのモータ18、バッター液6を送液するための配管20等を備えている。
【0052】
[3]揚げ玉製造方法:
本発明の揚げ玉製造方法は、本発明の揚げ玉製造装置を用いて揚げ玉を製造する揚げ玉の製造方法である。以下、本発明の揚げ玉製造方法を
図1および
図2に示す揚げ玉製造装置1の例で説明する。
【0053】
以下の工程で揚げ玉を製造する。
(1)ホッパ14において揚げ玉原料を混合し、バッター液6を調製する。
(2)油槽4中の揚げ油8を図示されないヒータにより高温に加熱しておく。
(3)モータ18を駆動し、ポンプ16によりバッター液6を配管20経由で調整板10に流下させる。この際、ポンプの運転条件は低速で連続的に運転してもよいし、間欠的(断続的)に運転してもよい。
(4)調整板10の先端側から流下板2にバッター液6を流下させる。
(5)流下板2の先端側から油槽4中の揚げ油8にバッター液6を流下させる。
(6)高温の揚げ油8中でバッター液6中の水分を蒸発させ、揚げ玉12を製造する。
【実施例0054】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様のみに限定されるものではない。
【0055】
[1]揚げ玉製造装置:
図1および
図2に示す揚げ玉製造装置1を作製した。
図3に示す流下板2も適宜参照しながら説明する。
【0056】
[1-1]流下板:
流下板2は、ステンレス製の金属板を加工して作製した(幅400mm)。流下板2の側縁にはバッター液6が漏れないよう側壁(高さ30mm)を形成した。
図3に示すように、流下板2には幅方向に10本の指状部2Aを形成した。
【0057】
指状部2Aの幅は15mm、スリット2Bの幅は15mmとした。指状部2Aの長さは40mmから90mmの間で長さを段階的に変化させた。複数本の指状部2Aの先端部および股部は曲線的な形状となるように形成した。流下板2は下向きの曲線的な傾斜を有するように形成した。流下板2の末端側と先端側の高低差は45mmとなるように設置した。
【0058】
[1-2]油槽:
油槽4としてはステンレス製の箱型容器(幅700mm、長さ3,000mm、深さ100mm、容量200L)を用いた。
【0059】
油槽4には揚げ油8を循環させる循環機22と揚げ油8を加熱するヒータ(図示せず)を設置した。
【0060】
[1-3]調整板:
調整板10は、ステンレス製の金属板を加工して作製した(幅390mm、長さ200mm)。調整板10の表面にはエンボス加工により、深さ1mm程度のくぼみを多数形成した。調整板10の側縁にはバッター液6が漏れないよう側壁(高さ30mm)を形成した。調整板10の傾斜角は下向きに15°とした。
【0061】
[1-4]その他:
ホッパ14としては、容量80Lのものを用いた。
【0062】
[2]揚げ玉製造方法:
図1および
図2に示す揚げ玉製造装置1を用いて揚げ玉を製造した。
【0063】
(1)ホッパ14において、揚げ玉の原料である小麦粉、水、具材を混合し、バッター液6を調製した。具材としては、輪切りのネギを用いた。
【0064】
(2)油槽4中の揚げ油8を図示されないヒータにより180℃に加熱した。
【0065】
(3)モータ18を駆動し、ポンプ16によりバッター液6を配管20経由で調整板10に流下させた。バッター液6の供給量は1.5L/分とした。
【0066】
(4)調整板10の先端側から流下板2にバッター液6を流下させた。
【0067】
(5)流下板2の先端側から油槽4中の揚げ油8にバッター液6を流下させた。
【0068】
(6)180℃の揚げ油8中でバッター液6を5分間加熱し、バッター液6中の水分を蒸発させ、揚げ玉12を製造した。これにより、外径5mmから10mm程度の適度に不揃いで、手作り感があり、かつ、食感の良い具材入りの揚げ玉12が製造された。
本発明の揚げ玉製造装置および揚げ玉製造方法は、例えば、蕎麦やうどん等の麺類の具材となる揚げ玉の製造に利用することができる。特に、食感の良い大振りな具材の入った具材入り揚げ玉の製造に好適に用いることができる。