(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001966
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】車両及び回転翼
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20221227BHJP
F03D 9/32 20160101ALI20221227BHJP
B62D 35/00 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
F03D3/06 Z
F03D9/32
B62D35/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102908
(22)【出願日】2021-06-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-02
(71)【出願人】
【識別番号】309025199
【氏名又は名称】株式会社エコ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 政春
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA33
3H178AA43
3H178BB31
3H178CC03
3H178DD26X
(57)【要約】
【課題】車両に搭載される風力発電用の回転翼を効率よく回転させること。
【解決手段】車両のフロントウィンドウより前側の外面を形成する前側カバー102には、前方の外側空間を臨む前方開口107と、前方開口107よりも後方かつ上方の位置にて上方の外側空間を臨む上方開口108とが形成される。前側カバー102の内側には、前方開口107から入った風を上方開口108まで案内する通路113を形成する内側カバー112が設けられる。内側カバー112内に風力発電用の回転翼9が配置される。上方開口108の前端108aは後端108bよりも上方に位置する。通路113の出口113bの面積は入口113aの面積より大きい。内側カバー112は、前方開口107から見て、回転翼9の回転軸線より上方の領域を隠す円弧部114cを有する。円弧部114cの中心角は90度以上180度以下に定められる。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外側空間に露出するように設けられ、前方の外側空間を臨む前方開口と、前記前方開口よりも後方かつ上方の位置にて上方の外側空間を臨む上方開口とを形成する外側カバーと、
前記外側カバーの内側の前記前方開口と前記上方開口の間の位置において、前記車両の左右方向に向いた回転軸線の周りに回転可能に設けられる風力発電用の回転翼とを備え、
前記回転翼は、
前記回転軸線と平行かつ回転方向の前方に突出するように湾曲する前方翼面と、
前記前方翼面の背面側に配置され、前記回転軸線と平行かつ前記回転方向の前方に凹むように湾曲し、前記前方翼面よりも湾曲深さが小さい後方翼面とを備え、
前記回転軸線に直交する平面視において、前記前方翼面の、前記回転軸線に遠い側の端部を外側端部、前記回転軸線に近い側の端部を内側端部として、
前記前方翼面は、
前記回転軸線から離れた部分を構成し、前記外側端部から前記回転方向の前方に向かって形成される第1湾曲面と、
前記回転軸線に近い部分を構成し、前記第1湾曲面の前記外側端部の反対側から前記回転方向の後方に向かって前記内側端部に繋がるように形成され、前記平面視における面長が前記第1湾曲面よりも短い第2湾曲面とを備える、
車両。
【請求項2】
前記外側カバーの内側において前記前方開口から入った風を前記上方開口まで案内する通路を形成する通路形成部を備え、
前記回転翼は前記通路内に設けられる請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記回転翼は、前記車両の左側面側から見て反時計回りに回転するように設けられ、
前記通路形成部は、前記回転軸線に直角な断面で見て、前記回転軸線よりも上側かつ前記回転翼の外側において前記回転軸線周りの円周に沿って円弧状に形成された円弧部を有する請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記円弧部の中心角が90度以上180度以下である請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記通路形成部の出口は前記通路形成部の入口よりも大きい請求項2~4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記上方開口の前端が後端よりも上方に位置する請求項1~5のいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
前記前方開口から前記回転翼への風の流通を許可した状態と遮断した状態との間で切り替える流通制御部を備える請求項1~6のいずれか1項に記載の車両。
【請求項8】
前記外側カバーは、前記車両のフロントウィンドウよりも前側かつ下側の位置において、前記車両の前端面を形成するとともに前記前方開口を形成する前面部と、前記前面部から後方に延びるように設けられて、前記上方開口を形成する上面部とを有する請求項1~7のいずれか1項に記載の車両。
【請求項9】
前記車両は、乗員室を形成する車両本体とその車両本体の後ろに接続される貨物収容部とを含む貨物車両であり、
前記外側カバーは、前記乗員室の天井部の上に設けられる請求項1~7のいずれか1項に記載の車両。
【請求項10】
前記外側端部には、前記第1湾曲面と前記後方翼面との間を貫通させる凹部が、前記外側端部が延びた方向に沿って複数形成される請求項1~9のいずれか1項に記載の車両。
【請求項11】
前記車両は、内燃機関を備えておらず、電動機により走行する電気自動車である請求項1~10のいずれか1項に記載の車両。
【請求項12】
回転軸線周りに回転可能に設けられる風力発電用かつ車載用の回転翼であって、
前記回転軸線と平行かつ回転方向の前方に突出するように湾曲する前方翼面と、
前記前方翼面の背面側に配置され、前記回転軸線と平行かつ前記回転方向の前方に凹むように湾曲し、前記前方翼面よりも湾曲深さが小さい後方翼面とを備え、
前記回転軸線に直交する平面視において、前記前方翼面の、前記回転軸線に遠い側の端部を外側端部、前記回転軸線に近い側の端部を内側端部として、
前記前方翼面は、
前記回転軸線から離れた部分を構成し、前記外側端部から前記回転方向の前方に向かって形成される第1湾曲面と、
前記回転軸線に近い部分を構成し、前記第1湾曲面の前記外側端部の反対側から前記回転方向の後方に向かって前記内側端部に繋がるように形成され、前記平面視における面長が前記第1湾曲面よりも短い第2湾曲面とを備え、
前記外側端部には、前記第1湾曲面と前記後方翼面との間を貫通させる凹部が、前記外側端部が延びた方向に沿って複数形成される回転翼。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、風力発電用の回転翼が搭載された車両及びその回転翼に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には風力発電装置を搭載した車両が開示されている。特許文献1の風力発電装置の回転翼は、回転軸線と平行かつ回転方向の前方に突出するように湾曲する前方翼面と、前方翼面の背面側に配置され、回転軸線と平行かつ回転方向の前方に凹むように湾曲し、前方翼面よりも湾曲深さが小さい後方翼面とを備える。前方翼面は、回転軸線から離れた部分を構成する第1湾曲面(高速気流通過面、第一面)と、回転軸線に近い部分を構成し、平面視における面長が第1湾曲面よりも短い第2湾曲面(低速気流通過面、第二面)とを備える。この回転翼によれば、後方翼面で風を受けたときに生じる抗力と、前方翼面の第1湾曲面と第2湾曲面とに沿って流れる気流の速度差により生じる揚力とにより、回転翼を回転させることができる。
【0003】
また、特許文献1では、風力発電装置が車両のエンジンルーム内又は天井部の上に設けられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
言うまでもなく、車両に搭載される回転翼はより効率良く回転させるのが望ましい。
【0006】
そこで、本開示は、車両に搭載される回転翼を効率よく回転させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示の車両は、
車両の外側空間に露出するように設けられ、前方の外側空間を臨む前方開口と、前記前方開口よりも後方かつ上方の位置にて上方の外側空間を臨む上方開口とを形成する外側カバーと、
前記外側カバーの内側の前記前方開口と前記上方開口の間の位置において、前記車両の左右方向に向いた回転軸線の周りに回転可能に設けられる風力発電用の回転翼とを備え、
前記回転翼は、
前記回転軸線と平行かつ回転方向の前方に突出するように湾曲する前方翼面と、
前記前方翼面の背面側に配置され、前記回転軸線と平行かつ前記回転方向の前方に凹むように湾曲し、前記前方翼面よりも湾曲深さが小さい後方翼面とを備え、
前記回転軸線に直交する平面視において、前記前方翼面の、前記回転軸線に遠い側の端部を外側端部、前記回転軸線に近い側の端部を内側端部として、
前記前方翼面は、
前記回転軸線から離れた部分を構成し、前記外側端部から前記回転方向の前方に向かって形成される第1湾曲面と、
前記回転軸線に近い部分を構成し、前記第1湾曲面の前記外側端部の反対側から前記回転方向の後方に向かって前記内側端部に繋がるように形成され、前記平面視における面長が前記第1湾曲面よりも短い第2湾曲面とを備える。
【0008】
これによれば、後方翼面で風を受けることで、回転翼を回転させる抗力を発生させることができる。また、前方翼面の第1湾曲面に沿って後方に流れる風と第2湾曲面に沿って後方に流れる風の流速差により揚力を生じさせることができる。これら抗力及び揚力により回転翼を効率よく回転させることができる。
【0009】
また、外側カバーの前方開口は車両前方の外側空間を臨んでいるので、前方からの風を効率的に外側カバー内に取り込むことができる。また、外側カバーの上方開口は、前方開口よりも後方かつ上方の位置にて上方の外側空間を臨んでいる。ここで、車両走行時の前方からの走行風が外側カバーに沿って上方開口の方に流れる場合に、上方開口の位置において周囲の気圧よりも小さい陰圧(換言すれば負圧)が生じやすい。この陰圧により、外側カバー内において回転翼まで導かれた風を効率よく上方開口の方に流すことができる。これにより、回転翼を効率よく回転させることができる。
【0010】
本開示の回転翼は、
回転軸線周りに回転可能に設けられる風力発電用かつ車載用の回転翼であって、
前記回転軸線と平行かつ回転方向の前方に突出するように湾曲する前方翼面と、
前記前方翼面の背面側に配置され、前記回転軸線と平行かつ前記回転方向の前方に凹むように湾曲し、前記前方翼面よりも湾曲深さが小さい後方翼面とを備え、
前記回転軸線に直交する平面視において、前記前方翼面の、前記回転軸線に遠い側の端部を外側端部、前記回転軸線に近い側の端部を内側端部として、
前記前方翼面は、
前記回転軸線から離れた部分を構成し、前記外側端部から前記回転方向の前方に向かって形成される第1湾曲面と、
前記回転軸線に近い部分を構成し、前記第1湾曲面の前記外側端部の反対側から前記回転方向の後方に向かって前記内側端部に繋がるように形成され、前記平面視における面長が前記第1湾曲面よりも短い第2湾曲面とを備え、
前記外側端部には、前記第1湾曲面と前記後方翼面との間を貫通させる凹部が、前記外側端部が延びた方向に沿って複数形成される。
【0011】
これによれば、後方翼面で生じる抗力と前方翼面で生じる揚力とにより回転翼を効率よく回転させることができる。また、前方翼面と後方翼面の境界に位置する外側端部に形成される複数の凹部により、回転翼を逆方向に回転させようとする気流を、速やかに前方翼面の第1湾曲面側から後方翼面側へと通すことができる。これにより、外側端部にて生じる、回転翼を逆方向に回転させる圧力を小さくでき、回転翼を効率よく回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】第1湾曲面に形成される凹部の拡大断面図である。
【
図6】
図2のA部の拡大図であり、回転翼の外側端部に形成される凹部の拡大斜視図である。
【
図7】第1回転部の回転翼と第2回転部の回転翼との回転方向における位置関係を示す平面図である。
【
図8】発電部のロータにおける界磁用磁石の配置を示す平面図である。
【
図9】発電部のステータにおける発電用コイルの配置を示す平面図である。
【
図12】第1実施形態における車両のフロントウィンドウよりも前側の部分の断面図であり、外側カバー、内側カバー及び回転翼を車両の左側面側から見た断面図である。
【
図13】第1実施形態における外側カバー、内側カバー及び回転翼を模式的に示した斜視図である。
【
図14】風力発電装置の発電部から車両の走行駆動モータまでの車両の電気的構成を示したブロック図である。
【
図15】内側カバーの通路の開閉制御に関する車両の電気的構成を示したブロック図である。
【
図16】第1実施形態における外側カバー、内側カバー及び回転翼を車両の左側面側から見た断面図であり、車両走行時の空気(風)の流れを示した図である。
【
図17】内側カバーの通路の中間部(回転翼が配置される部分)が回転翼により絞られることを模式的に示した図である。
【
図19】第2実施形態の外側カバー、内側カバー及び回転翼を車両の左側面側から見た断面図である。
【
図20】第2実施形態の外側カバー及びその内側に配置される風力発電装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態の風力発電装置1の概略図である。風量発電装置1は、
図10、
図11に示す車両100内において回転軸線Lが車両2の車幅方向(左右方向)に向いた状態に設けられる。風力発電装置1は、回転軸線L周りに回転する回転装置2と、回転装置2の回転に伴い発電する発電部3とを備える。
【0014】
回転装置2は、第1回転部4と第2回転部5とスペーサ6と回転軸7、8とを備える。第1回転部4及び第2回転部5は回転軸線Lを共通にして回転軸線Lの方向にスペーサ6を介して左右に並ぶように設けられる。第1回転部4は
図2、
図3に示すように、4枚の回転翼9を備えている。なお、
図2では、回転軸線Lが上下方向を向いているが、実際は上述のように車幅方向に回転軸線Lを向けた状態で第1回転部4は設けられる。また、
図2では、後述の凹部20(
図3参照)の図示を省略している。また、
図3では、後述の蓋プレート31(
図2参照)の図示を省略している。
【0015】
4枚の回転翼9は、各々同一形状とされ、取付位置のみ異なる。4枚の回転翼9は、回転軸線Lを中心とした円周方向に等間隔(すなわち回転角が90度の間隔)に、かつ、回転軸線Lから径方向への距離が互いに同じ距離となる位置に配置されている。回転翼9の材質としては、アルミニウム、ジュラルミン、チタン、などの軽合金、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ポリカーボネート(PC)等の合成樹脂などを用いることができる。
【0016】
回転翼9は、回転軸線Lと直交する方向で気流(風力)を受けて、受けた気流により回転力を生じさせるための部材である。回転翼9は、軸線Lの方向(軸線Lが直交する平面視)から見て、
図4に示すように、翼形状WIを想定し、その前方部分を用いた形状とされている。翼形状WIは、前方からの風(WIND)に対して揚力を発生させることの可能な、一般的な飛行機の翼の断面と同様の形状であり、翼弦WGに対して一方側(後述の第1湾曲面12の側)が他方側(後述の第2湾曲面13の側)よりも大きく膨らんだ形状とされている。回転に伴う相対風の向きをAK、自然風をASとすると、回転翼9には揚力Fが作用して、回転軸線Lの周りをX方向に回転する。
【0017】
回転翼9の、軸線L方向からみた断面は、どの水平断面位置でも同様の形状とされている。回転翼9は、
図3に示すように、軸線L方向からみて、進行方向(回転方向)Xの前側は、前側プレート10で構成され、進行方向Xの後側は、後側プレート11で構成され、それらプレート10、11の間は空間となっており、つまり中空形状となっている。
【0018】
前側プレート10の外面である前方翼面は、回転軸線Lと平行かつ回転方向Xの前方に突出するように湾曲する凸湾曲面として構成されている。前方翼面10は、後側プレート11(後方翼面)よりも湾曲深さが大きな形状に形成されている。詳細には、前方翼面10は、回転翼9の回転半径方向における中間位置に曲率が極大となる頂点部14を有する。前方翼面10は、その頂点部14よりも回転中心(回転軸線L)から離れた側に位置して回転半径方向の外側を向く第1湾曲面12と、頂点部14よりも回転中心側に位置して回転方向Xを向く第2湾曲面13とで構成されている。頂点部14は、第1湾曲面12と第2湾曲面13との境界に位置する部分(境界部)である。
【0019】
第1湾曲面12は、回転軸線Lから遠い側に配置されており、頂点部14から回転方向Xの後方に向かって連続形成されている。換言すれば、第1湾曲面12は、頂点部14の反対側の端部である外側端部15から回転方向Xの前方に向かって連続形成されている。第1湾曲面12は例えば頂点部14付近を除いて一定の曲率の円弧形状に形成されている。第1湾曲面12は、軸線L方向からみて、
図4に示すように、翼型WIの翼弦WGを考えた場合、第2湾曲面13よりも翼弦WGから離れる方向に大きく膨らむ曲面形状とされている。また、
図3、
図4の平面視での第1湾曲面12の面長は、第2湾曲面13よりも長く、換言すれば第2湾曲面13よりも回転方向Xの後方に延びている。第1湾曲面12の回転方向後端部(頂点部14と反対側の端部)である外側端部15は、回転翼9のなかで最も回転軸線Lから遠い位置に配置され、第2湾曲面13の後端部である内側端部16よりも回転方向Xの後方に配置されている。第1湾曲面12は、頂点部14から外側端部15に向けて第1湾曲面12に沿って生ずる相対気流の速度が、頂点部14から内側端部16に向けて第2湾曲面13に沿って生ずる相対気流の速度よりも大きくなるよう、高速気流通過面として機能する。
【0020】
さらに、第1湾曲面12には部分的に凹部20が形成されている。
図3、
図4、1つの回転翼9当たりに4つの凹部20が形成された例を示しているが、5つ以上でもよいし、3つ以下でもよい。複数の凹部20は、
図3、
図4の平面視で見て、第1湾曲面12の全体に分布するように形成されている。換言すれば、
図3、
図4の平面視で見て、第1湾曲面12の領域を、第1湾曲面12の中間の位置を境に2つに分けたときに、凹部20は外側端部15側の領域と、頂点部14側の領域の双方に形成されている。さらには、
図3、
図4の平面視で見て、第1湾曲面12の領域を3等分又は4等分したときに、3等分した各領域又は4等分した各領域に凹部20が形成されている。なお、凹部20は、第2湾曲面13及び後方翼面11には形成されていない。
【0021】
以下の説明では、第1湾曲面12の、凹部20が形成されていない部分を主面という。凹部20は、回転軸線Lに直角な断面で見て楔形に形成されている。具体的には、凹部20は、回転軸線Lに直角な断面で見て、
図5に示すように、主面23に対して回転方向Xの後方を臨む段差を形成する第1内側面21と、第1内側面21の凹み方向における端部27から回転方向Xの後方に向かって形成されて、主面23に繋がる第2内側面22とを含んで構成される。第1内側面21は、凹部20の内面のうち、回転方向Xの前方に位置する内面を構成する。第1内側面21の、主面23に対する傾斜角θ1(
図5参照)は、例えば60度以上150度以下であり、好ましくは90度以上150度以下である。なお、傾斜角θ1は、主面23と第1内側面21との境界部25での主面23の接線を境界部25から外側(凹部20側)に延長した第1接線延長線26と、上記境界部25での第1内側面21の接線との成す角度である。換言すれば、傾斜角θ1は、境界部25での主面23の法線N1と、境界部25での第1内側面21の法線N2との成す角度である。なお、境界部25がR形状の場合には、R形状が開始又は終了する点での主面23の接線又は法線N1と第1内側面21の接線又は法線N2とに基づいて傾斜角θ1が定められる。第1内側面21は、
図5の断面でみて、主面23との境界部25から第2内側面22に向かって直線状又は一定の曲率の曲線状に延びている。
【0022】
第2内側面22の、第1内側面21に対する傾斜角θ2(
図5参照)は例えば90度以上150度以下である。なお、傾斜角θ2は、第1内側面21と第2内側面22との境界部27での第1内側面21の接線を境界部27から外側に延長した第2接線延長線28と、上記境界部27での第2内側面22の接線との成す角度である。換言すれば、傾斜角θ2は、境界部27での第1内側面21の法線N3と、境界部27での第2内側面22の法線N4との成す角度である。なお、境界部27がR形状の場合には、R形状が開始又は終了する点での第1内側面21の接線又は法線N3と第2内側面22の接線又は法線N4とに基づいて傾斜角θ2が定められる。
【0023】
ここで、主面23と第1内側面21との境界部25から凹部20側に、境界部25での主面23の曲率と同一曲率の面を延長した面24(
図5参照)を仮想曲面と定義する。第2内側面22は、仮想曲面24から凹んだ位置に形成されている。第2内側面22は、
図5の断面でみて、第1内側面21との境界部27から仮想曲面24に向かって直線状に又は一定の曲率の曲線状に延びている。
【0024】
また、第2内側面22の、主面23に対する傾斜角θ3(
図5参照)は、上記傾斜角θ1、θ2より小さい角度であり、具体的には例えば10度以上90度未満である。なお、傾斜角θ3は、第2内側面22と主面23との境界部29での第2内側面22の接線を境界部29から外側に延長した第3接線延長線30と、境界部29での主面23の接線との成す角度である。換言すれば、傾斜角θ3は、上記境界部29での第2内側面22の法線N5と、境界部29での主面23の法線N6との成す角度である。なお、境界部29がR形状の場合には、R形状が開始又は終了する点での第2内側面22の接線又は法線N5と主面23の接線又は法線N6とに基づいて傾斜角θ3が定められる。また例えば
図5の断面における第2内側面22の面長は第1内側面21よりも長い。これにより、傾斜角θ3が傾斜角θ1よりも小さい角度であることを満たしやすくなる。
【0025】
なお、上記傾斜角θ1は上記仮想曲面24に対する第1内側面21の傾斜角と同じ意味であり、すなわち仮想曲面24と第1内側面24との境界部25での仮想曲面24の接線又は法線と、境界部25での第1内側面21の接線又は法線との成す角度を意味する。また、上記傾斜角θ3は上記仮想曲面24に対する第2内側面22の傾斜角と同じ意味であり、すなわち仮想曲面24と第2内側面22との境界部29での仮想曲面24の接線又は法線と、境界部29での第2内側面22の接線又は法線との成す角度を意味する。
【0026】
また、複数の凹部20は、間に主面23を介在させた形で形成されてもよいし、主面23を介在させずに連続して形成されてもよい。
【0027】
また、各凹部20は、前方翼面10の、回転軸線Lに平行な方向における一方の端部から他方の端部までを貫通するように(換言すれば連続するように)形成されている。凹部20の、回転軸線Lに直角な断面形状は、回転軸線L上のいずれの位置においても同一形状(
図5に示す形状)に形成されている。
【0028】
なお、複数の凹部20は互いに同一形状に形成されていてもよいし、異なる形状に形成されてもよい。具体的には、第1内側面21の長さ、第2内側面22の長さ、又は上記傾斜角θ1~θ3が、複数の凹部20間で同じでもよいし異なっていてもよい。
【0029】
第2湾曲面13は、回転軸線Lに近い側に配置されており、頂点部14から回転方向Xの後方に向かって連続形成されている。第2湾曲面13は、例えば頂点部14付近を除いて一定の曲率の円弧形状に形成されている。第2湾曲面13の、頂点部14と反対側の端部である内側端部16は、回転翼9のなかで最も回転軸線Lに近い位置に配置されている。また、第2湾曲面13は、回転方向Xで前隣りに位置する回転翼9の後方翼面11と対向している(
図3参照)。また、
図3、
図4の平面視における第2湾曲面13の面長は第1湾曲面12よりも短い。
【0030】
後側プレート11は、前側プレート10(前方翼面)の背面側に配置され、前側プレート10の外側端部15と内側端部16とを結び、回転方向Xの前方に向かって凹状に湾曲されている。つまり、後側プレート11の外面である後方翼面は、回転軸線Lと平行かつ回転方向Xの前方に凹むように湾曲した凹湾曲面として構成されている。後方翼面11は、回転軸線Lを面内に含む円筒面の一部になっている。換言すれば、
図3、
図4の平面視でみて、後方翼面11の形状である円弧を回転軸線L側へ延長した位置に、回転軸線Lが配置されている。これにより、回転翼9は、後方翼面11に当たった風(気流)を後述の風洞部34(
図2参照)へ向けて流し、その風を風洞部34を挟んで反対側の回転翼9に当てることができる。また、後方翼面11は前方翼面10よりも湾曲深さが小さい。したがって、前方翼面10と後方翼面11との間には中空の空間R(
図4参照)が構成される。
【0031】
なお、前方翼面10の外側端部15は、後方翼面11の、回転軸線Lに遠い側の端部(外側端部)でもある。また、前方翼面10の内側端部16は、後方翼面11の、回転軸線Lに近い側の端部(内側端部)でもある。外側端部15及び内側端部16は、回転軸線Lに平行な方向に延びている。
【0032】
図2に示すように、外側端部15には、第1湾曲面12と後方翼面11との間を貫通させる凹部32が、外側端部15が延びた方向(軸線Lに平行な方向)に沿って複数形成されている。各凹部32はV字状に形成されている。具体的には、
図6に示すように、後方翼面11側の凹部32の縁線32aと、第1湾曲面12側の凹部32の縁線32bとが同一形状のV字状に形成されている。これら縁線32a、32b間には凹部32の内面32cが形成されている。この内面32cにより、回転翼9の内側空間が凹部32から露出しないように閉塞されている。内面32cは、軸線Lに平行な方向に進むにしたがって次第に内側(軸線Lに近づく側)に変位する第1内面32dと、その第1内面32の底部32fから軸線Lの方向に進むにしたがって次第に外側(軸線Lから離れる側)に変位する第2内面32eとを含む。これら内面32d、32eは、軸線Lに対して傾斜した傾斜平面として構成される。第1内面32dの軸線Lに対する傾斜角と、第2内面32eの軸線Lに対する傾斜角は同じである。
【0033】
複数の凹部32は、外側端部15の、軸線Lの方向における一端から他端までの全範囲に分布するよう形成される。また、複数の凹部32は連続して形成されている。すなわち、各凹部32は、軸線Lに平行に延びた区間を介在させずに隣の凹部32に繋がる。なお、隣り合う2つの凹部32における一方の凹部32の第2内側面32eと、他方の凹部32の第1内側面32dとで三角形状(山形)の凸部33が形成される。この凸部33が、外側端部15が延びた方向に沿って連続して複数形成される。
【0034】
なお、凹部32の形状はV字以外の形状でもよい。また、複数の凹部32は間隔をあけて形成されてよい。すなわち、凹部32間に、軸線Lに平行な区間が介在してもよい。
【0035】
図2に示すように、回転翼9は、上記前側プレート10及び後側プレート11の他に蓋プレート31を備えている。蓋プレート31は、回転翼9毎に2枚設けられる。2枚の蓋プレート31は互いに同一形状に形成され、かつ、
図4で示される平面視における中空空間Rの形状と同様の形状の板状に形成されている。2枚の蓋プレート31のうちの一方は、前側プレート10及び後側プレート11の、回転軸線Lに平行な方向における一方の端部に固定されており、空間R(
図4参照)を閉鎖している。他方の蓋プレート31は、前側プレート10及び後側プレート11の、回転軸線Lに平行な方向における他方の端部に固定されており、空間R(
図4参照)を閉鎖している。
【0036】
また、
図2、
図3に示すように、回転翼9は、軸線Lの方向で対峙した1対の翼支持部17を備えている。前側プレート10、後側プレート11及び蓋プレート31は翼支持部17により支持されている。言い換えれば、前方翼面10及び後方翼面11の、回転軸線Lに平行な方向における端部が、蓋プレート31を介して間接的に翼支持部17に接続(支持)されている。翼支持部17は4枚の回転翼9を支持する。翼支持部17の材質としては、アルミニウム、ジュラルミン、チタン、などの軽合金、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ポリカーボネート(PC)等の合成樹脂などを用いることができる。
【0037】
翼支持部17は、板状に形成され、後述の中央部18の法線が回転軸線Lに平行な方向を向くように設けられる。翼支持部17は、
図3に示すように、回転軸線Lの位置に設けられる円形の中央部18と、中央部18の外周縁から径方向外向きに放射状に延びた4つのアーム部19とを備えている。中央部18の中心が回転軸線L上に位置している。
【0038】
4つのアーム部19は、互いに同一形状であり、中央部18の中心(換言すれば回転軸線L)の周りの円周方向に等間隔に設けられている。アーム部19は、中央部31から遠ざかるに従って回転方向Xと逆方向を向くように湾曲した形状(円弧状)に形成されている。アーム部19の、回転方向Xの前側の端部(前端部)と、蓋プレート31の後端部とが重ねられており、それらがビス等により固定されることで、各回転翼9(前方翼面10、後方翼面11及び蓋プレート31)は各アーム部19に接続されている。
【0039】
一対の翼支持部17における一方である第1翼支持部17A(
図2参照)は、回転翼9の、回転軸線Lの方向における一方の端部を支持する。一対の翼支持部17における他方である第2翼支持部17B(
図2参照)は、回転翼9の、回転軸線Lの方向における他方の端部を支持する。第1翼支持部17Aの中央部18の中心には第1回転軸7(
図1参照)が固定されている。第2翼支持部17Bの中央部18の中心にはスペーサ6(
図1参照)がネジ等で固定されている。
【0040】
図2に示すように、一対の翼支持部17A、17Bと4枚の回転翼9とに囲まれた部分に、回転軸線Lを中心とし、隣り合う回転翼9、9の間が気流の出入口となる空洞部である風洞部34が形成されている。風洞部34には実体の回転軸は設けられていない。
【0041】
図1に示す第2回転部5は、第1回転部4と共通の回転軸線L周りの方向において第1回転部4に対して所定角度だけずれた位置に配置されており、それ以外は第1回転部4の構成と同じである。具体的には、第2回転部5は、第1回転部4の回転翼9と同一形状の回転翼9を備えている。以下、第1回転部4の回転翼の符号を「9A」とし、第2回転部5の回転翼の符号を「9B」として説明する。
図7に示すように、第2回転部5は、第1回転部4の回転翼9Aと同じ枚数(つまり4枚)の回転翼9Bを備えている。回転翼9Bは互いに同一形状である。これら回転翼9Bは、回転軸線Lの方向に等間隔に配置されている。また回転翼9Bは、第1回転部4の回転翼9Aと同じ方向Xに回転するように設けられ、すなわち回転翼9Bの前方翼面(凸湾曲面)は方向Xを向き、後方翼面(凹湾曲面)は方向Xと逆向きとなるように設けられる。上記所定角度は、第1回転部4の回転翼9Aの、回転軸線Lの周りの方向における配置間隔を示す角度(具体的には90度)の半分の角度つまり45度である。したがって、第2回転部5の各回転翼9Bは、
図7の平面視でみて、第1回転部4の隣り合う回転翼9A、9Aの間の中間の位置に設けられる。
【0042】
第2回転部5の一方の翼支持部の中心はスペーサ6(
図1参照)にネジ等で固定されている。また第2回転部5の他方の翼支持部の中心は第2回転軸8(
図1参照)が固定されている。
【0043】
第1回転部4及び第2回転部5は、スペーサ6によって、回転軸線Lの方向に間隔をあけて設けられ、かつ、互いに同一の回転方向かつ同一の回転速度で一体回転するように連結されている。そのため、第1回転部4の回転翼9Aと第2回転部5の回転翼9Bとは45度の回転角度差を維持しながら回転方向Xに回転する。
【0044】
スペーサ6は、その軸線が回転軸線Lに一致するように設けられて、軸線周りの回転が可能に設けられる。
【0045】
回転装置2の軸線L方向の両端に接続された第1回転軸7及び第2回転軸8は回転軸線Lを規定する部材であって、それぞれ軸支持部(図示外)によって軸線L周りに回転可能に支持されている。これにより、回転装置2(第1回転部4及び第2回転部5)は軸線L周りに回転可能となる。
【0046】
図1に示す発電部3は、第1回転軸7と第2回転軸8の両方に取り付けられている。ただし、これに限定されず、発電部3は、第1回転軸7と第2回転軸8のいずれか一方のみに取り付けられてもよい。発電部3は、例えばアキシャルギャップ型の発電部として構成される。具体的には、発電部3は、ロータ(回転子)35とステータ(固定子)36とを備える。ロータ35は、第1回転軸7又は第2回転軸8に接続されており、第1回転軸7又は第2回転軸8の回転に伴い軸線L周りに回転するように設けられる。
図8に示すように、ロータ35には、複数の界磁用磁石38が、着磁された状態で回転軸線Lの周りに等間隔に設けられている。これら界磁用磁石38は、中空構造の扁平なロータ本体37の内側に備えられる。ロータ本体37の中心に第2回転軸8が一体回転可能に結合されている。なお、界磁用磁石38は、厚さ方向(上下方向)に着磁された扁平な永久磁石であって、隣接する磁石同士の極性が互いに反転するように配置されている。
【0047】
ロータ本体37は、ステータ36を間に挟んで軸線Lの方向に対峙する一対のロータ部品で構成される。各ロータ部品に、同数の界磁用磁石38が備えられている。一方のロータ部品に取り付けられた界磁用磁石38Aは、他方のロータ部品に取り付けられた界磁用磁石38Bに対応する位置に配置され、界磁用磁石38Aと界磁用磁石38Bとは、互いに逆向きに着磁されている。
【0048】
図9に示すように、ステータ36には、界磁用磁石38によって励磁される発電用コイル40が複数備えられている。発電用コイル40は、中心軸が回転軸線Lと平行となるように配置され、界磁用磁石38と同じ数だけ回転軸線Lの周りに等間隔に設けられている。そして、界磁用磁石38と発電用コイル40とが、回転軸線Lの方向に隙間を介して対向配置されている。各発電用コイル40には、スリップリング(図示外)が嵌合され、このスリップリングと摺接するブラシ(図示外)を介して、交流電流が出力されるように構成されている。
【0049】
図10、
図11に示す車両100は上述の風力発電装置1を搭載する。車両100は例えば乗用自動車である。また車両100は、内燃機関(エンジン)を備えておらず、電動機(モータ)によって走行する電気自動車である。すなわち、
図14に示すように、車両100は、バッテリ52(蓄電池)と、バッテリ52の直流電力を交流電力に変換するインバータ53と、インバータ53により変換された交流電力により車輪を回転させる電動機としての走行駆動モータ54とを備える。また、車両100は、外部電源に接続するためのコネクタ55を備えている。コネクタ55に接続された外部電源からの電力がバッテリ52に充電できるように構成されている。さらに、車両100は、風力発電装置1で発電された電力も利用して走行するように構成されている。すなわち、車両100は、
図14に示すように、風力発電装置1の発電部3で発電された交流電力を直流電力に変換するコンバータ51を備えている。このコンバータ51で変換された直流電力がバッテリ52に充電される。なお、
図11において、車両100の運転者から見て右側を車両100の右側とし、運転者から見て左側を車両100の左側としている。
【0050】
車両100の外面を形成する車体は、フロントウィンドウ101より前側かつ下側の外面を形成する外側カバーとしての前側カバー102を含む(
図10~
図13参照)。なお、
図12は前側カバー102及びその内側の構成を、回転翼9の回転軸線Lに直交する平面で切った断面図である。また、
図13では、後述の内側カバー112を前側カバー102の外側から透視して図示している。前側カバー102は車両100の外側空間に露出するように設けられる。前側カバー102は、車両100の前端面を形成する前面部103と、前面部103の上端から後方に延びるように設けられ、後端がフロントウィンドウ101の下端に繋がる上面部104と、車両100の左右の側面の一部を形成する側面部105とを含む。前側カバー102の内側に風力発電装置1等を収容するための収容空間が形成されている。
【0051】
前面部103は車両100の前方の外側空間を臨むように設けられる。前面部103の左右端には、車両100の前照灯109(ヘッドライト)が設けられる(
図11参照)。また、前面部103には、車両100の外側空間と内側の収容空間とを導通させる前方開口107が形成されている(
図11~
図13参照)。前方開口107は前方の外側空間を臨むように形成される。
図11の例では、前方開口107は、前照灯109よりも下側に形成されているが、前照灯109と同じ高さ位置における左右の前照灯109の間の位置に形成されてもよい。前方開口107の面積は例えば後述の上方開口108の面積より小さい。
【0052】
上面部104はいわゆるボンネットと呼ばれる部分である。上面部104は、車両100の上面(車室の天井部を含む)の一部を形成する。また、上面部104は、上面部104の後端に設定された車幅方向に向いた軸線周りに回動可能に設けられる。つまり、上面部104は、
図10~
図13の閉じた状態から、上面部104の後端を支点として上方に移動可能に設けられる。上面部104が開くと、内側の収容空間が露出する。
【0053】
上面部104は、閉じた状態において上方の外側空間を臨むように設けられる。より具体的には、上面部104は、後方に向かうにしたがって徐々に上方に変位するよう水平面に対して若干傾斜した面として構成される。また、上面部104は流線型に形成される。
【0054】
上面部104には、車両100の外側空間と内側の収容空間とを導通させる上方開口108が形成されている(
図11~
図13参照)。上方開口108は上方の外側空間を臨むように形成される。また、上方開口108は、前方空間107よりも後方かつ上方の位置に形成される。また、上方開口108の面積は例えば前方開口107の面積より大きい。さらに、
図12に示すように、上方開口108の前端108aは上方開口108の後端108bよりも上方の位置している。すなわち、前端108aは、後端108bに対して上方への段差dを形成するよう設けられる。この段差dは、車両100の運転者の視界を妨げない程度の高さに設定され、例えば0cmより大きく20cm以下に設定される。なお、前端108aと後端108bとは同一の上下方向位置に形成されてもよい。つまり、段差d=0cmであってもよい。
【0055】
上面部104は、上方開口108の前側で上方開口108に隣接した位置に段差形成部110を有している(
図12参照)。段差形成部110は、例えば開口108の左右幅の全範囲に亘って設けられるが、該左右幅の一部範囲のみに設けられてもよい。段差形成部110は、後方に向かうにしたがって徐々に上方に変位する傾斜上面111を有する。この傾斜上面111の後端が開口108の前端108aとして機能する。
【0056】
車両100は、前側カバー102の内側の収容空間に、通路形成部としての内側カバー112を備える(
図10、
図12、
図13参照)。内側カバー112は、前方開口107から入った風を上方開口108まで案内する通路113を形成するダクトとして機能する。風力発電装置1は、通路113内において回転軸線Lが車両100の左右方向に平行となるように、換言すれば車両100の上下方向及び前後方向に直角となるように配置される。
【0057】
内側カバー112は、通路113の上面を形成する上面部114と、下面を形成する下面部115と、左右側面を形成する側面部116とを有する。上面部114及び下面部115は、例えば、左右方向(車幅方向)に水平に延びた仮想の左右水平線(風力発電装置1の回転軸線Lに平行な線)に対して平行な板として構成される。側面部116は、例えば上記左右水平線に対して直角な板として構成される。
【0058】
図12に示すように、通路113の入口113aは、前方開口107に対峙した位置に設けられる。入口113aが外側カバー102の前面部103から若干離れた位置に設けられることで、入口113aと前方開口107との間に若干の隙間があってよい。この場合、隙間は小さい方が好ましく、例えば5cm以下が好ましく、2cm以下がより好ましい。または、入口113aが外側カバー102の前面部103に接触する位置に設けられることで、入口113aと前方開口107との間に隙間がなくてもよい。また、入口113aは前方開口107と同じ形状に形成されて、入口113aの位置と前方開口107の位置とが完全に一致した状態に入口113aが設けられてもよい。つまり、入口113aと前方開口107とは完全一致していてもよい。
【0059】
また、入口113aは、前方開口107と同じ形状に形成されてもよいし、異なる形状に形成されてもよい。また、入口113aの面積(大きさ)S1は前方開口107と同じ面積でもよいし、前方開口107より小さい面積でもよいし、前方開口107より大きい面積でもよい。また、入口113aの面積(大きさ)S1は、通路113の出口113bの面積S2よりも小さい。また入口113aの面積(大きさ)S1は、上方開口108の面積よりも小さい。
【0060】
通路113の出口113bは、上方開口108に対峙した位置に設けられる。出口113bと上方開口108との間に若干の隙間があってもよいし、隙間がなくてもよい。隙間がある場合は、その隙間は例えば5cm以下が好ましく、2cm以下がより好ましい。また、出口113bは上方開口108と同じ形状に形成されて、出口113bの位置と上方開口108の位置とが完全に一致した状態に出口113bが設けられてもよい。つまり、出口113bと上方開口108とは完全一致していてもよい。
【0061】
また、出口113bは、上方開口108と同じ形状に形成されてもよいし、異なる形状に形成されてもよい。また、出口113bの面積(大きさ)S2は上方開口108と同じ面積でもよいし、上方開口108より小さい面積でもよいし、上方開口108より大きい面積でもよい。出口113bの面積S2は入口113aの面積S1よりも大きい。また出口113bの面積S2は前方開口107の面積よりも小さい。
【0062】
通路113は、入口113a及び出口113以外に開口を有しない。
図12に示すように、通路113は、入口113aと風力発電装置1が収容される空間113dとの間に位置する入口側通路113cと、風力発電装置1が収容される中間通路113dと、中間通路113dと出口113bとの間に位置する出口側通路113eとを含む。
【0063】
通路113の上面部114のうち、入口側通路113cの上面を形成する部分114a(入口側上面部)は、
図12の断面(左右方向に直角な断面)で見て、後述の円弧部114cが形成する仮想円300の中心Oとほぼ同じ上下方向位置において、車両100の前後方向及び左右方向の両方に平行な仮想的な平面である仮想水平面301とほぼ平行に設けられる。入口側上面部114aの後端114bは、仮想円300の中心Oと同じ上下方向位置に設けられてもよいし、中心Oより若干上方の位置に設けられてもよいし、中心Oより若干下方の位置に設けられてもよい。具体的には、後端114bと中心Oとを結ぶ仮想直線302と、中心Oを面内に含む仮想水平面301との成す角度を「φ1」とし、後端114bが仮想水平面301よりも上方に位置する場合の角度φ1を正の符号とし、後端114bが仮想水平面301よりも下方の位置する場合の角度φ1を負の符号とする。このとき、角度φ1は例えば-10度以上+10度以下に定められ、好ましくは-5度以上+5度以下に定められ、より好ましくは-2度以上+2度以下に定められる。
【0064】
通路113の下面部115のうち、入口側通路113cの下面を形成する部分115a(入口側下面部)は、仮想円300のうちの最も下方に位置する点とほぼ同じ上下方向位置において仮想水平面301とほぼ平行に設けられる。また、入口側下面部115aは、入口側上面部114aより下方位置において入口側上面部114aとほぼ平行に設けられる。
【0065】
このように、入口側通路113cは、仮想円300で囲まれた領域113d(中間通路113d)のうち、中心Oを面内に含む仮想水平面301よりも下側の領域に導通するように形成される。なお、入口側通路113cの、空気の流れ方向に直角な断面積(例えば、入口側通路11cの上下方向幅又は左右方向幅)は、流れ方向に沿って一定であってもよいし、流れ方向に沿って徐々に小さくなってもよいし、流れ方向に沿って徐々に大きくなってもよい。
【0066】
通路113の上面部114のうち、中間通路113dの上面を形成する部分114c(中間上面部)は、
図12の断面で見て、車両100の左右方向に延びた仮想の左右水平線上の点を中心Oとした円弧状に形成される。中間上面部としての円弧部114cは、真円の円弧として形成されてもよいし、楕円の円弧として形成されてもよい。
【0067】
円弧部114cは、中間通路113dに配置される回転翼9の外側端部15の回転軌跡を示した仮想円303(以下、回転軌跡円という場合がある)に沿った形状に形成される。また、円弧部114cは、入口側通路113cに対して(言い換えれば、前方開口107又は入口113aから見て)、回転軌跡円303で囲まれた領域のうちの回転軸線Lよりも上側の領域を露出しないよう覆う形態に設けられる。より具体的には、円弧部114cの中心角φ2は例えば90度以上180度以下に定められる。なお、中心角φ2は、円弧部114cの前端114b(入口側上面部114aの後端でもある)と中心Oとを結ぶ仮想直線302と、円弧部114cの後端114dと中心Oとを結ぶ仮想直線304との成す角度である。円弧部114cの後端114dは、中心角φ2が90度以上180度以下であることを満たすのであれば、中心Oを面内に含む仮想水平面301上に設けられてもよいし、仮想水平面301より上方に設けられてもよいし、仮想水平面301より若干下方に設けられてもよい。
【0068】
また、円弧部114cの曲率半径r1(換言すれば仮想円300の半径)は、回転軌跡円303の半径r2より若干大きい値に設定される。具体的には、円弧部114cの曲率半径r1は、例えば回転軌跡円303の半径r2の100%おり大きく、かつ、130%以下に設定される。つまり、1.0×r2<r1≦<1.3×r2が成立する。
【0069】
通路113の下面部115のうち、中間通路113dの下面を形成する部分115b(中間下面部)は、仮想円300上の点のうち最も下方に位置する点300a(最下点)を通るように、又は最下点300aより若干下方の位置(具体的には例えば、最下点300aとの差が、仮想円300の直径の30%以下となる位置)を通るように設けられる。
【0070】
出口側通路113eは後方に向かうにしたがって徐々に上方に変位するように湾曲した形状に形成される。なお、出口側通路113eの、空気の流れ方向に直角な断面積は、流れ方向に沿って一定であってもよいし、流れ方向に沿って徐々に小さくなってもよいし、流れ方向に沿って徐々に大きくなってもよい。
【0071】
風力発電装置1は、中間通路113d内において、回転軸線Lが車両100の左右方向を向き、かつ回転軸線Lが円弧部114cの中心Oに一致した位置に配置される。より具体的には、
図12の断面(車両100の左側面側から見た側方断面)で見て、回転翼9が反時計回りに回転するように設けられる。言い換えれば、回転翼9の回転方向は、回転翼9が上方から下方に移動するにしたがい前方に移動し、その後、後方に移動するように定められる。
【0072】
さらに、
図12に示すように、車両100は、入口側通路113cを開通させる状態と閉鎖させる状態との間で切り替える開閉部117を備える。開閉部117は、前方開口107の位置又は入口113aの位置又は入口113aよりも下流の入口側通路113c内の位置に設けられる。開閉部117は、例えば開閉部117の下端に車両の左右方向に向いた回転軸118を有しており、この回転軸118周りに回転可能に設けられる。なお、
図12では、開閉部117が入口側通路113cを閉鎖した状態を示している。また、
図12には、開閉部117が開いたときの位置を破線117aで示している。この
図12の状態から、開閉部117が回転軸118を支点として下方かつ後方に回転することで、入口側通路113cが開通する。
【0073】
車両100は、
図15に示すように、開閉部117の開閉を制御する開閉制御部56と、開閉部117の開閉を指示するための開閉指示スイッチ57とを備えている。開閉制御部56は、回転軸118を回転させるためのモータ等から構成される。開閉指示スイッチ57は、車両100の運転席周辺に設けられて、車両100の運転者によって操作が行われる操作部である。開閉指示スイッチ57は例えば第1位置と第2位置との間で切り替え可能に構成される。そして、開閉制御部56は、開閉指示スイッチ57が第1位置にあるときには開閉部117を開いた状態にし、開閉指示スイッチ57が第2位置にあるときには開閉部117を閉じた状態にする。なお、開閉部17、開閉制御部56及び開閉指示スイッチ57が本開示の流通制御部に相当する。
【0074】
なお、
図14、
図15に示すコンバータ51、バッテリ52、インバータ53、モータ54及び開閉制御部55は、車両100のどの位置に設けられてもよく、車両100の前側(前側カバー102内)に設けられてもよいし、後側に設けられてもよい。
【0075】
以下、本実施形態の作用効果を
図16、
図17を参照して説明する。
図16では、
図12と同様の断面において風力発電装置1の第1回転部4又は第2回転部5の4枚の回転翼9を示している。4枚の回転翼9のうち最も前方開口107に近い位置にある回転翼の符号を「9X」とし、回転翼9Xから回転方向に並ぶ残りの回転翼の符号を順に「9Y」、「9Z」、「9W」として、4枚の回転翼9を適宜区別することにする。また、
図16では、前方開口107から入った風の流れを、先端に矢印が付いた線で示している。また、
図16では、開閉部117が開いた状態を示している。
【0076】
前方開口107から通路113内に入った風の一部は、回転翼9Xの第1湾曲面12に当たって、その面12に沿って回転方向X側に流れた後、回転翼9Xの第2湾曲面13と前隣りの回転翼9Yの後方翼面11との間の空間に回り込む。回り込んだ風の大部分は回転翼9Wの後方翼面11に当たる。これにより、回転翼9Wに対して回転方向Xへの抗力F1を生じさせることができる。
【0077】
また、回転翼9Xの第1湾曲面12を経て回転翼9Xと回転翼9Yとの間の空間に回り込んだ風の一部は、回転翼9Yの後方翼面11に当たる。また、前方開口107から通路113内に入った風の一部は、直接に(回転翼9Xの第1湾曲面12を経ないで)回転翼9Yの後方翼面11に当たる。これにより、回転翼9Yに対して回転方向Xへの抗力F2を生じさせることができる。
【0078】
さらに、回転翼9Xの第1湾曲面12に沿って回転方向X側に流れる風の一部は、その第1湾曲面12に形成された凹部20に当たる。これによって、回転翼9Xに対して回転方向Xへの抗力F3を生じさせることができる。特に、複数の凹部20が第1湾曲面12の全体に分布するように設けられるので、抗力F3を大きくできるとともに、抗力F3の持続時間を長くできる。
【0079】
また、
図5に示すように、凹部20の第1内側面21は回転方向Xの後方に向いており、第2内側面22の、主面23又は仮想曲面24に対する傾斜角θ3は、第1内側面21の、主面23又は仮想曲面24に対する傾斜角θ1よりも小さい角度なので、第1湾曲面12に沿って流れる風を第2内側面22から第1内側面21まで案内して第1内側面21で効果的に受けることができる。これにより、回転方向Xへの抗力F3を効果的に発生させることができる。
【0080】
また、第1内側面21の傾斜角θ1(
図5参照)は、例えば60度以上150度以下であり、好ましくは90度以上150度以下であるので、方向Xに回転するのに伴い凹部20の向きが変わったとしても、第1湾曲面12に沿って流れる風を第1内側面21で、該面21に直角又は直角に近い角度で受けやすい。これにより、抗力F3の持続時間を長くできる。
【0081】
また、回転方向Xにおいて後方翼面11の位置に加えて後方翼面11とは異なる位置(凹部20)でも抗力が発生することで、回転軸線L周りの位置(換言すれば回転角度)に対する回転翼9で発生する抗力の変動を抑制できる。
【0082】
また、凹部20の第1内側面21は回転方向Xの後方を向いており、第2内側面22の、主面23又は仮想曲面24に対する傾斜角θ3(
図5参照)は、第1内側面21の、主面23又は仮想曲面24に傾斜角θ1(
図5参照)よりも小さい角度なので、仮に、風が第1湾曲面12に沿って回転方向Xの逆側に流れたとしても、回転翼9を回転方向Xの逆方向に回転させようとする抗力を抑制できる。
【0083】
また、回転翼9の収容空間113d(中間通路)のうち回転軸線Lよりも上方の領域は、回転翼9にとって向かい風となる領域である。この領域は、円弧部114cによって、入口側通路113cから見て隠されているので、入口側通路113cからの風が、収容空間113dの上方に位置する回転翼9(
図16では回転翼9W)の前方翼面10に当たるのを抑制できる。これにより、回転翼9に向かい風が当たるのを抑制でき、回転翼9の回転を阻害する空気抵抗を抑制できる。
【0084】
円弧部114cの前端114bは回転軸線Lと同程度の上下方向位置にあり、なおかつ、円弧部114cの中心角φ2(
図12参照)は90度以上なので、入口側通路113cから見て収容空間113dの上方領域を効果的に隠すことができる。また、中心角φ2は180度以下なので、収容空間113dと出口側通路113eとの境界の流路断面積が小さくなってしまうのを抑制できる。これにより、風を、収容空間113d(回転翼9)から出口側通路113eへと流しやすくでき、前方開口107から上方開口108への風の流通効率を向上でき、ひいては回転翼9の回転効率を向上できる。
【0085】
また、円弧部114cは、回転翼9の回転軸線L周りの円周に沿った円弧状に形成されるので、円弧部114cと回転翼9の前方翼面10の間の空気160(
図16参照)を、回転軸線L側に回り込ませて、回転翼9の後方翼面11に当てることができる。つまり、収容空間1113dの空気を回転翼9の回転に有効利用できる。特に、円弧部114cの曲率半径r1は、回転軌跡円303の半径r2より若干大きい値(具体的には1.0×r2<r1≦<1.3×r2)に設定されるので、上記空気160を、回転軸線L側に効果的に回り込ませることができる。また、空気160が回転軸線L側に回り込むことで、円弧部114cと回転翼9の前方翼面10の間の気圧(pressure)を小さくでき、つまり回転翼9の回転を阻害する空気抵抗を小さくでき、回転翼9の回転効率を向上できる。
【0086】
さらに、
図2、
図6に示すように、回転翼9の外側端部15には、第1湾曲面12と後方翼面11との間を貫通させる凹部32が、外側端部15が延びた方向に沿って複数形成されているので、第1湾曲面12側における外側端部15付近に存在する空気161(
図16参照)を凹部32を通して後方翼面11側に抜くことができる。これにより、空気161の圧力を小さくでき、つまり回転翼9の回転を阻害する空気抵抗を小さくでき、回転翼9の回転効率を向上できる。特に、外側端部15付近は、回転軸線Lから離れた位置にあるので、空気161bの抵抗によって回転翼9の回転を阻害する方向に作用するモーメントが大きくなりやすい。しかし、凹部32があることで、上記モーメントを小さくできる。
【0087】
また、回転翼9の周囲が内側カバー112に囲まれることで、回転翼9の外側の空気が回転翼9の回転に伴い内側カバー112の内壁に当たって、音が発生する。しかし、凹部32があることで、回転翼9の外側の空気と内側カバー112の内壁との当たりを弱めることができる。これにより、回転翼9の回転に伴い発生する騒音を小さくできる。
【0088】
また、通路113の中間下面部115bは、仮想円300上の最下点300aを通り、又は最下点300aより若干下方の位置を通るように設けられるので、回転軌跡円303と中間下面部115bとの間の流路を小さくできる。ここで、
図17は、回転軌跡円303と中間下面部115bとで通路113が絞られることを模式的に示している。
図17に示すように、中間下面部115bが回転軌跡円303に近い位置に設けられることで、中間下面部115bと回転軌跡円303との間の流路113fの断面積が、入口側通路113c及び出口側通路113eの断面積よりも小さくなる。これにより、ベルヌーイの定理により、流路113fを流れる空気の運動エネルギー(流速)を増加させることができ、回転翼9の回転速度(回転力)を大きくできる。
【0089】
また、回転翼9は、車両100の左側面側から見て反時計周りに回転するように設けられることで、円弧部114cを前方開口107よりも上方に、言い換えれば、前方開口107を円弧部114cよりも下方に配置させることができる。前方開口107が下方に配置されることで、前方開口107及びそれに繋がる入口側通路113cの高さを、回転翼9の収容空間113dの下半分の高さと同等の高さにでき、風を、収容空間113dの下側に効率的に供給できる。また、前方開口107が形成される前面部103の上側には前照灯109が設けられるが(
図11参照)、前照灯109が設けられない下側に前方開口107が形成されることで、前方開口107の形状や大きさの自由度を高くできる。
【0090】
これに対して、仮に、回転翼9が、車両100の左側面側から見て時計周りに回転するように設けられる場合には、前方開口が円弧部より上方に設けられることとなる。この場合、収容空間113dの上半分の高さH(
図16参照)と同程度の高さの前方開口を前面部103の上側に設けることは困難である。
【0091】
また、前方開口107は車両100の進行方向(前方)の外側空間を臨んでいるので、走行風を通路113内に効率的に取り込むことができる。また、前方開口107から取り込まれ走行風の圧力は周囲の気圧に比べて高い陽圧力(Positive pressure)である。陽圧力の走行風によって、通路113内の空気が下流側(上方開口108側)に押されることで、通路113内の空気の流速を大きくできる。
【0092】
また、
図10に示すように、車両100の上面は下面に対して凸の形状であるとともに、流線型に形成されるので、その上面(外側カバー102の上面部104を含む)に沿って流れる走行風(Running wind)の圧力は周囲の気圧に比べて低い陰圧力(Negative pressure)になりやすい。この陰圧力によって、通路113内の空気を上方開口108側に吸引できる(
図10、
図13、
図16参照)。また、車両100の前面部103から上面部104へとダクト112(内側カバー)を通すことで、前面部103に受ける空気抵抗を小さくできる。また、上面部104に作用する陰圧力が前面部103に作用する陽圧力を上回り、ダクト112内の風速を加速させることができる。
【0093】
このように、前方開口107における陽圧力と、上方開口108における陰圧力とによって、通路113内の空気の流速を大きくでき、回転翼9の回転速度を大きくできる。仮に陰圧が作用しない場合には、前方開口107から通路113内に導入された空気のエネルギーが回転翼9の回転に使われる結果、出口側通路113eでの空気の流速が下がる。また、
図17に示すように、中間下面部115bと回転軌跡円303との間の流路113fが絞られると、ベルヌーイの定理により、出口側通路113eでの空気の運動エネルギー(流速)が下がる。しかし、出口側通路113eに上方開口108からの陰圧が作用することで、出口側通路113eでの空気の流速を上げることができる。
【0094】
また、通路113の出口113bの面積S2は入口113aの面積S1よりも大きいので、回転翼9を通過した空気を、出口側通路113eを通して上方開口108から効率的に出すことができる。これにより、通路113での空気の流通効率を上げることができ、回転翼の回転効率を向上できる。
【0095】
また、上方開口108の前端108aは後端108bよりも上方に位置するので、外側カバー102の上面部104に沿って流れる前方からの走行風(Running wind)が後端108bに当たって上方開口108付近に乱流が生じるのを抑制できる。これにより、上方開口108の陰圧レベルを大きくできる。
【0096】
回転装置2は、同一回転方向に設けられる第1回転部4と第2回転部5とに分割されており、これら第1回転部4及び第2回転部5が回転軸線Lを中心とした円周方向において45度の角度差があるので、回転装置2全体として回転角度に対する抗力(回転トルク)の変動を小さくできる。すなわち、第1回転部4が抗力が生じにくい回転位置にある場合であっても、回転方向に45度の角度差を持って設けられる第2回転部5により、抗力の落ち込みを抑制できる。これにより、回転装置2の回転効率を向上できる。
【0097】
また、第1回転部4と第2回転部5とは回転軸線Lの方向の異なる位置に設けられるので、回転軸線Lの方向の同一位置に8枚の回転翼が等間隔に配置される構造に比べて、回転軸線L周りの方向における回転翼間の空間を大きくできる。これにより、回転翼間に風を流しやすくできる。
【0098】
車両100の走行時に回転装置2が回転することで発電部3により発電させることができる。その発電電力はバッテリ52に充電されるので(
図14参照)、電気自動車100の走行可能距離を長くできる。
【0099】
また、車両100の走行時に回転翼9が回転することで、マグヌス効果により、車両100に対して下方への力(ダウンフォース)を作用させることができる。これにより、車両100の走行を安定させることができる。
【0100】
また、入口側通路113cには開閉部117が設けられるので(
図12参照)、開閉部117を閉じることで、通路113内に異物が入るのを抑制でき、通路113の内壁又は回転翼9に異物が付着するのを抑制できる。例えば、雪が降っているとき、又は砂が舞っているときに開閉部117を閉じることで、通路113内に雪や砂が入ってしまうのを抑制できる。
【0101】
また、開閉部117の開閉を指示するスイッチ57が設けられるので(
図15参照)、運転者が所望するタイミングで開閉部117の開閉を切り替えることができる。
【0102】
また、車両100は内燃機関を備えない電気自動車として構成されるので、前側カバー102内に、内側カバー112及び風力発電装置1を配置するスペースを確保しやすい。
【0103】
(第2実施形態)
次に本開示の第2実施形態を第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図18は、本実施形態の車両の側面図を示している。
図18の車両200は、運転者を含む乗員の座席空間(乗員室)を形成する車両本体201と、車両本体201の後ろに接続される貨物収容部202とを含む貨物自動車(いわゆるトラック)である。また、車両200は第1実施形態と同様に電気自動車として構成されている。車両本体201のフロントウィンドウを含む前面201bは、例えば上方に向かうにつれて徐々に後方に変位する傾斜形状に形成される。ただし、前面201bは、車両200の前後方向に延びた水平線にほぼ直角な面に形成されてもよい。車両本体201に形成される乗員室の天井部201aは、貨物収容部202の上面202a(天井部)よりも低い位置に設けられる。
【0104】
貨物収容部202は貨物を収容する箱型収容室を形成する。貨物収容部202は車両本体201と別体の車体で構成されている。貨物収容部202の上面202aは、車両本体201の乗員室の上方を閉塞する乗員室天井部201aよりも上方に位置する。また、上面202aは接地面に平行な面に形成される。
【0105】
車両200は、乗員室天井部201a上に設けられる外側カバー60と、外側カバー60内に設けられる通路形成部としての内側カバー70と、内側カバー70内に設けられる風力発電装置80とを備える(
図18~
図20参照)。なお、
図18、
図20では、風力発電装置80を外側カバー60の外側から透視して示している。
【0106】
外側カバー60は車両200の外側空間に露出するように設けられる。外側カバー60は、内側に上記内側カバー70及び風力発電装置80を収容するための収容空間を形成する。外側カバー60はその収容空間の前後左右上下のそれぞれを閉塞するように設けられる。外側カバー60の外面は車両200の外面の一部を構成する。
【0107】
外側カバー60は、具体的には、車両200の前方の外側空間を臨む前面部60aと上方の外側空間を臨む上面部60bとを有する。前面部60aは例えば上方に向かうにつれて徐々に後方に変位する傾斜形状に形成される。また、車両200の前後方向に延びた水平線に直角な仮想平面を仮想垂直面としたとき、前面部60aの仮想垂直面に対する傾斜角は、車両本体201の前面201bの仮想垂直面に対する傾斜角と同様に設定されてよい。具体的には前面部60aの傾斜角と前面201bの傾斜角との差分の絶対値が例えば10度以下としてよい。また、前面部60aは、車両本体201の前面201bと連続するように設けられてよい。言い換えれば、前面部60aと、前面201bとの境界には、水平面の段差が形成されていない。
【0108】
外側カバー60には、車両200の前方の外側空間を臨む前方開口61と、前方開口61よりも後方かつ上方の位置にて上方の外側空間を臨む上方開口62とが形成されている。前方開口61は前面部60aに形成される。上方開口62は上面部60bに形成される。上方開口62の前端62aは後端62bよりも上方の位置している。すなわち、前端62aは、後端62bに対して上方への段差を形成するよう設けられる。この段差は例えば0cmより大きく20cmm以下に設定される。また、前端62aは、貨物収容部202の上面202aよりも上方に位置してよい。外側カバー60は、上方開口62の前側で上方開口62に隣接した位置に、上記段差を形成する段差形成部63を有している(
図19参照)。段差形成部63は第1実施形態の段差形成部110(
図12参照)と同様に形成されている。
【0109】
外側カバー60の、前方開口61と上方開口62の間の部分64(
図19参照)は、流線型に形成され、具体的には、後方に向かうにしたがって徐々に上方に変位する曲面状に形成されている。部分64の曲率中心は、部分94よりも下方の位置に設定されている。つまり、部分64は上方に凸の曲面状に形成されている。
【0110】
内側カバー70は、第1実施形態の内側カバー112と同様に形成されており、前方開口61から入った風を上方開口62まで案内する通路71を形成するダクトとして機能する。通路71の入口72は前方開口61に対峙した位置に設けられる。入口72は、前方開口61から若干離れて設けられてもよいし、前方開口61に接続されて前方開口61と一致した形で設けられてもよい。
【0111】
通路72の出口73は上方開口62に対峙した位置に設けられる。出口73は、上方開口62から離間した位置に設けられてもよいし、上方開口62に接続されて上方開口62と一致した形で設けられてもよい。出口73の面積は入口72の面積よりも大きい。
【0112】
内側カバー70の上面部74には円弧部75が形成されている。円弧部75は第1実施形態の円弧部114c(
図12参照)と同様に形成されている。すなわち、円弧部75は、前方開口61から見て、風力発電装置80の回転軸線よりも上方の領域(向かい風となる領域)を隠すように形成される。また、円弧部75の中心角は第1実施形態と同様に、例えば90度以上180度以下に定められる。
【0113】
風力発電装置80は第1実施形態の風力発電装置1と同様に構成される。風力発電装置80は、通路71内の円弧部75で囲まれた空間において、風力発電装置80の回転軸線が車両200の左右方向を向き、かつ、その回転軸線と円弧部75が形成する仮想円の中心とが一致するように設けられる。また、風力発電装置80の回転翼81は、車両200の左側面側から見て(
図19の方向から見て)、反時計回りに回転するように設けられる。
【0114】
また、車両200は、
図14と同様の構成を備えており、すなわち、風力発電装置80で発電された交流電力を直流電力に変換するコンバータと、コンバータで変換された直流電力を充電するバッテリと、バッテリの直流電力を交流電力に変換するインバータと、インバータにより変換された交流電力により車輪を回転させる走行駆動モータと、外部電源に接続するためのコネクタとを備えている。
【0115】
本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、前方開口61での陽圧(Positive pressure)の走行風と、上方開口62での陰圧(Negative pressure)の走行風とにより、通路71の空気の流通効率を高くでき、ひいては、回転翼81の回転効率を向上できる。
【0116】
また、外側カバー60の、前方開口61と上方開口62の間の部分64(
図19参照)は、後方に向かうにしたがって徐々に上方に変位する曲面状に形成されるので、この部分64に沿って流れる走行風の圧力を陰圧にすることができる。さらに、車両本体201の前面201bは傾斜形状に形成され、外側カバー60の前面部60aは前面201bと連続した傾斜形状に形成されるので、走行風が、前面201b、前面部60a及び上面部60bに沿って流れやすくなり、走行風による空気抵抗を低減できる。
【0117】
(変形例)
なお、本開示は上記実施形態に限定されず種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、回転装置の各回転部(第1回転部、第2回転部)に備えられた回転翼の数がそれぞれ4つであったが、3つであっても、5つ以上であってもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、発電部の界磁用磁石と発電用コイルとが、回転軸線方向に隙間を介して対向配置されたアキシャルギャップ型の発電部を例示したが、界磁用磁石と発電用コイルとが回転軸線に直角な径方向に隙間を介して対向配置されたラジアルギャップ型の発電部でもよい。
【0119】
また、上記実施形態では、回転装置は2つの回転部(第1回転部、第2回転部)に分割された例を示したが、3つ以上に分割されてもよい。この場合であっても、複数の回転部間で回転方向を同一としつつ円周方向における回転翼の配置角度をずらす。例えば、各回転部における回転翼の円周方向における配置間隔角度をY、回転部の個数をNとしたとき、複数の回転部間でY/Nの角度だけ回転方向における回転翼の配置位置をずらす。例えば、第1回転部、第2回転部及び第3回転部の3つに分割され、各回転部の回転翼の枚数が4枚であり、配置間隔角度Yが90度である場合には、第1回転部と第2回転部との間で90/3=30度だけ回転方向における回転翼の配置位置をずらし、第2回転部と第3回転部との間でも30度だけ回転方向における回転翼の配置位置をずらす。これによっても、回転角度に対する抗力変動を抑制できる。
【0120】
また上記実施形態では、回転装置の第1回転部と第2回転部との間で上記配置間隔角度Yの半分の角度(=Y/2)だけ回転翼の配置位置をずらす例を示したが、Y/2以外の角度差で第1回転部及び第2回転部が設けられてもよい。この場合であっても、回転角度に対する抗力変動を抑制できる。
【0121】
また、上記実施形態では、風力発電装置の発電電力を、車両の走行駆動モータの駆動に用いる例を示したが、車両駆動以外の用途(例えば車両に備えられる冷房装置の補助電源)に用いられてもよい。
【0122】
また、第1実施形態において、外側カバー102の上面部104と、内側カバー112の上面部114とが一体化されて、外側カバー102の上面部104が開くに伴い、内側カバー112の上面部114が下面部115から離間して、内側の通路113及び風力発電装置1が露出するように構成されてもよい。これによれば、内側カバー112及び風力発電装置1のメンテナンスや交換が容易となる。
【符号の説明】
【0123】
1、80 風力発電装置
2 回転装置
3 発電部
4 第1回転部
5 第2回転部
9、81 回転翼
10 前方翼面
11 後方翼面
12 第1湾曲面
13 第2湾曲面
15 回転翼の外側端部
32 凹部
100、200 車両
102、60 外側カバー
107、61 前方開口
108、62 上方開口
112、70 内側カバー(通路形成部)
【手続補正書】
【提出日】2021-07-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外側空間に露出するように設けられ、前方の外側空間を臨む前方開口と、前記前方開口よりも後方かつ上方の位置にて上方の外側空間を臨む上方開口とを形成する外側カバーと、
前記外側カバーの内側の前記前方開口と前記上方開口の間の位置において、前記車両の左右方向に向いた回転軸線の周りに回転可能に設けられる風力発電用の回転翼とを備え、
前記回転翼は、
前記回転軸線と平行かつ回転方向の前方に突出するように湾曲する前方翼面と、
前記前方翼面の背面側に配置され、前記回転軸線と平行かつ前記回転方向の前方に凹むように湾曲し、前記前方翼面よりも湾曲深さが小さい後方翼面とを備え、
前記回転軸線に直交する平面視において、前記前方翼面の、前記回転軸線に遠い側の端部を外側端部、前記回転軸線に近い側の端部を内側端部として、
前記前方翼面は、
前記回転軸線から離れた部分を構成し、前記外側端部から前記回転方向の前方に向かって形成される第1湾曲面と、
前記回転軸線に近い部分を構成し、前記第1湾曲面の前記外側端部の反対側から前記回転方向の後方に向かって前記内側端部に繋がるように形成され、前記平面視における面長が前記第1湾曲面よりも短い第2湾曲面とを備え、
前記外側カバーは、前記車両のフロントウィンドウよりも前側かつ下側の位置において、前記車両の前端面を形成するとともに前記前方開口を形成する前面部と、前記前面部から後方に延びるように設けられて、前記上方開口を形成する上面部とを有する、
車両。
【請求項2】
前記外側カバーの内側において前記前方開口から入った風を前記上方開口まで案内する通路を形成する通路形成部を備え、
前記回転翼は前記通路内に設けられる請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記回転翼は、前記車両の左側面側から見て反時計回りに回転するように設けられ、
前記通路形成部は、前記回転軸線に直角な断面で見て、前記回転軸線よりも上側かつ前記回転翼の外側において前記回転軸線周りの円周に沿って円弧状に形成された円弧部を有する請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記円弧部の中心角が90度以上180度以下である請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記通路形成部の出口は前記通路形成部の入口よりも大きい請求項2~4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記上方開口の前端が後端よりも上方に位置する請求項1~5のいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
前記前方開口から前記回転翼への風の流通を許可した状態と遮断した状態との間で切り替える流通制御部を備える請求項1~6のいずれか1項に記載の車両。
【請求項8】
前記外側端部には、前記第1湾曲面と前記後方翼面との間を貫通させる凹部が、前記外側端部が延びた方向に沿って複数形成される請求項1~7のいずれか1項に記載の車両。
【請求項9】
前記車両は、内燃機関を備えておらず、電動機により走行する電気自動車である請求項1~8のいずれか1項に記載の車両。
【請求項10】
回転軸線周りに回転可能に設けられる風力発電用かつ車載用の回転翼であって、
前記回転軸線と平行かつ回転方向の前方に突出するように湾曲する前方翼面と、
前記前方翼面の背面側に配置され、前記回転軸線と平行かつ前記回転方向の前方に凹むように湾曲し、前記前方翼面よりも湾曲深さが小さい後方翼面とを備え、
前記回転軸線に直交する平面視において、前記前方翼面の、前記回転軸線に遠い側の端部を外側端部、前記回転軸線に近い側の端部を内側端部として、
前記前方翼面は、
前記回転軸線から離れた部分を構成し、前記外側端部から前記回転方向の前方に向かって形成される第1湾曲面と、
前記回転軸線に近い部分を構成し、前記第1湾曲面の前記外側端部の反対側から前記回転方向の後方に向かって前記内側端部に繋がるように形成され、前記平面視における面長が前記第1湾曲面よりも短い第2湾曲面とを備え、
前記外側端部には、前記第1湾曲面と前記後方翼面との間を貫通させる凹部が、前記外側端部が延びた方向に沿って複数形成される回転翼。