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特開2023-19673電子契約方法、電子契約システムおよびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019673
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】電子契約方法、電子契約システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04L 9/32 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
H04L9/00 675Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124595
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】301063496
【氏名又は名称】東芝デジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高都 勝己
(57)【要約】
【課題】契約に関するブロックチェーンを記憶するシステムをより容易に構築する。
【解決手段】実施形態の電子契約方法は、トランザクションをブロックチェーンに記憶するブロックチェーンシステムに接続される電子契約システムで実行される電子契約方法である。電子契約方法は、契約処理ステップと、記憶制御ステップと、を含む。契約処理ステップは、第1契約者および第2契約者の間で締結した契約に対する合意の指示を第1契約者および第2契約者それぞれから受け付ける。記憶制御ステップは、第1契約者が契約に合意したことを示す第1トランザクションをブロックチェーンに記憶する指示、および、第2契約者が契約に合意したことを示す第2トランザクションをブロックチェーンに記憶する指示を、ブロックチェーンシステムに送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランザクションをブロックチェーンに記憶するブロックチェーンシステムに接続される電子契約システムで実行される電子契約方法であって、
第1契約者および第2契約者の間で締結した契約に対する合意の指示を前記第1契約者および前記第2契約者それぞれから受け付ける契約処理ステップと、
前記第1契約者が前記契約に合意したことを示す第1トランザクションを前記ブロックチェーンに記憶する指示、および、前記第2契約者が前記契約に合意したことを示す第2トランザクションを前記ブロックチェーンに記憶する指示を、前記ブロックチェーンシステムに送信する記憶制御ステップと、
を含む電子契約方法。
【請求項2】
前記ブロックチェーンシステムは、前記トランザクションの種類ごとの処理をそれぞれ定めた複数のスマートコントラクトのうち、指示されたスマートコントラクトに従って前記トランザクションを前記ブロックチェーンに記憶するように構成され、
複数の前記スマートコントラクトは、前記電子契約システムによる契約を記憶する電子契約スマートコントラクトを含み、
前記記憶制御ステップは、前記電子契約スマートコントラクトを用いて、前記第1トランザクションを前記ブロックチェーンに記憶する指示、および、第2トランザクションを前記ブロックチェーンに記憶する指示を送信する、
請求項1に記載の電子契約方法。
【請求項3】
前記第1契約者および前記第2契約者のいずれかである第1ユーザに割り当てられた1以上の公開鍵またはウォレットアドレスと、前記ブロックチェーンシステムのユーザである第2ユーザと、を対応づける処理を行う登録処理ステップと、
前記公開鍵またはウォレットアドレスと前記第2ユーザとを対応づけたことを示す第3トランザクションを前記ブロックチェーンに記憶する指示を、前記ブロックチェーンシステムに送信する第2記憶制御ステップと、をさらに含む、
請求項1に記載の電子契約方法。
【請求項4】
前記記憶制御ステップは、前記第1契約者に割り当てられた第1秘密鍵により電子署名が付された前記第1トランザクションを前記ブロックチェーンに記憶する指示、および、前記第2契約者に割り当てられた第2秘密鍵により電子署名が付された前記第2トランザクションを前記ブロックチェーンに記憶する指示を、前記ブロックチェーンシステムに送信する、
請求項1に記載の電子契約方法。
【請求項5】
前記第1契約者は、電子入札の発注者であり、
前記第2契約者は、前記電子入札の落札者であり、
前記契約は、前記電子入札の契約を示し、
前記第1秘密鍵は、前記電子入札の処理のために前記第1契約者に割り当てられた鍵であり、
前記第2秘密鍵は、前記電子入札の処理のために前記第2契約者に割り当てられた鍵である、
請求項4に記載の電子契約方法。
【請求項6】
前記第1契約者は、電子入札の発注者であり、
前記第2契約者は、前記電子入札の落札者であり、
前記契約は、前記電子入札の契約を示し、
前記第2秘密鍵は、前記電子入札の処理のために秘密鍵が割り当てられない前記第2契約者に対して、前記ブロックチェーンに記憶するトランザクションへの電子署名のために割り当てられた鍵である、
請求項4に記載の電子契約方法。
【請求項7】
前記第1秘密鍵は、前記電子入札の処理のために前記第1契約者に割り当てられた鍵である、
請求項6に記載の電子契約方法。
【請求項8】
前記第1秘密鍵は、前記電子入札の処理のために秘密鍵が割り当てられない前記第1契約者に対して、前記ブロックチェーンに記憶するトランザクションへの電子署名のために割り当てられた鍵である、
請求項6に記載の電子契約方法。
【請求項9】
前記第1トランザクションは、前記第1契約者が前記契約に合意したことを示す情報と、前記契約に関する電子文書のハッシュ値と、を含み、
前記第2トランザクションは、前記第2契約者が前記契約に合意したことを示す情報と、前記電子文書のハッシュ値と、を含む、
請求項1に記載の電子契約方法。
【請求項10】
前記契約処理ステップは、前記第1契約者および前記第2契約者を含む複数の契約者の間で締結した契約に対する合意の指示を複数の前記契約者それぞれから受け付け、
前記記憶制御ステップは、複数の前記契約者それぞれが前記契約に合意したことを示す複数のトランザクションを前記ブロックチェーンに記憶する複数の指示を、前記ブロックチェーンシステムに送信する、
請求項1に記載の電子契約方法。
【請求項11】
トランザクションをブロックチェーンに記憶するブロックチェーンシステムに接続される電子契約システムであって、
第1契約者および第2契約者の間で締結した契約に対する合意の指示を前記第1契約者および前記第2契約者それぞれから受け付ける契約処理部と、
前記第1契約者が前記契約に合意したことを示す第1トランザクションを前記ブロックチェーンに記憶する指示、および、前記第2契約者が前記契約に合意したことを示す第2トランザクションを前記ブロックチェーンに記憶する指示を、前記ブロックチェーンシステムに送信する記憶制御部と、
を備える電子契約システム。
【請求項12】
トランザクションをブロックチェーンに記憶するブロックチェーンシステムに接続される電子契約システムが備えるコンピュータに、
第1契約者および第2契約者の間で締結した契約に対する合意の指示を前記第1契約者および前記第2契約者それぞれから受け付ける契約処理ステップと、
前記第1契約者が前記契約に合意したことを示す第1トランザクションを前記ブロックチェーンに記憶する指示、および、前記第2契約者が前記契約に合意したことを示す第2トランザクションを前記ブロックチェーンに記憶する指示を、前記ブロックチェーンシステムに送信する記憶制御ステップと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子契約方法、電子契約システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
合意した契約に関するトランザクションをブロックチェーンに記憶する契約合意システムが提案されている。ブロックチェーンは、分散型ネットワークを構成する複数の装置がトランザクションを同期してチェーンのように繋げて記憶する仕組みである。
【0003】
例えば、複数の契約者が使用する複数の端末が、ブロックチェーンを記憶する記憶部をそれぞれ備え、契約に合意するか否かの証跡を含むトランザクションを自端末が備える記憶部にそれぞれ記憶する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-220710号公報
【特許文献2】国際公開第2017/010455号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、契約に関するブロックチェーンを記憶するシステムを容易に構築できない場合があった。例えば、上記の従来技術では、各端末にブロックチェーンを記憶するように構成されるため、契約者を追加する場合には、ブロックチェーンを記憶する記憶部を備える端末を、追加する契約者それぞれについて準備する必要がある。また、複数の契約者それぞれに対応するすべての端末が、対応する契約者とは無関係の契約についてのトランザクションを記憶する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電子契約方法は、トランザクションをブロックチェーンに記憶するブロックチェーンシステムに接続される電子契約システムで実行される電子契約方法である。電子契約方法は、契約処理ステップと、記憶制御ステップと、を含む。契約処理ステップは、第1契約者および第2契約者の間で締結した契約に対する合意の指示を第1契約者および第2契約者それぞれから受け付ける。記憶制御ステップは、第1契約者が契約に合意したことを示す第1トランザクションをブロックチェーンに記憶する指示、および、第2契約者が契約に合意したことを示す第2トランザクションをブロックチェーンに記憶する指示を、ブロックチェーンシステムに送信する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態の電子契約システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、対応情報のデータ構造の一例を示す図である。
図3図3は、本実施形態における事前登録処理の一例を示すシーケンス図である。
図4図4は、本実施形態における電子入札・電子契約処理の一例を示すシーケンス図である。
図5図5は、電子入札・電子契約処理の流れの例を示す図である。
図6図6は、契約内容入力画面の一例を示す図である。
図7図7は、契約出力画面の一例を示す図である。
図8図8は、電子契約画面の一例を示す図である。
図9図9は、落札者側での電子契約の流れの例を示す図である。
図10図10は、発注者側での電子契約の流れの例を示す図である。
図11図11は、取引情報のデータ構造の一例を示す図である。
図12図12は、本実施形態にかかる装置のハードウェア構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる電子契約方法、電子契約システムおよびプログラムの好適な実施形態を詳細に説明する。
【0009】
以下では、電子入札を管理するとともに、電子入札に関する契約を行うシステムとして電子契約システムを実現する場合を例に説明する。適用可能なシステムは電子入札に関するシステムに限られるものではない。
【0010】
上記の従来技術では、複数の契約者が使用する複数の端末が、ブロックチェーンを記憶する記憶部をそれぞれ備えている。すなわち、従来技術では、各端末は、契約の合意に用いるユーザ端末であると同時に、ブロックチェーンの記憶も行うように構成される。
【0011】
仮にこのような構成を電子入札に関する電子契約システムに適用した場合、例えば、入札を行う業者(契約に合意する契約者に相当する事業者、および、法人など)が、自社の端末にブロックチェーンの記憶も行うという構成になる。ブロックチェーンにはすべての契約についてのトランザクションが記憶されるため、入札を行う業者は、大量に発生しうる(例えば年間数千件から数万件となりうる)入札の契約について、自身に無関係の契約であっても、自社の端末内にすべて記憶する必要がある。
【0012】
本実施形態にかかる電子契約システムは、内部にブロックチェーンを記憶する記憶部は備えず、ブロックチェーンを記憶する記憶部を備えるブロックチェーンシステムに対してトランザクションの記憶を指示する。
【0013】
ブロックチェーンシステムは、本実施形態の電子契約システムを含む外部のシステムからの指示に従い、内部の記憶部にブロックチェーンを記憶するように構成される。ブロックチェーンシステムは、例えば、分散配置される複数のサーバ(ブロックチェーン・ピア)により構成される。各サーバは、例えば、電子契約の当事者とは無関係の複数の業者によって運用される。
【0014】
電子契約システムは、例えば、秘密鍵を用いてトランザクション(トランザクションを含むパケット)に電子署名を付与し、トランザクションをブロックチェーンシステムに送信する。この後、ブロックチェーンに関する処理は、ブロックチェーンシステムが実行する。
【0015】
このように、電子契約システムは、トランザクションの作成、電子署名、および、トランザクションの送信を行うための機能(プログラムなど)を備えればよく、内部にブロックチェーンを記憶する記憶部を備える必要がない。契約者が追加される場合は、例えば、契約者が使用する端末から上記機能を利用可能にする、または、上記機能を利用可能な端末を追加するのみでよい。このように、契約に関するブロックチェーンを記憶するシステムをより容易に構築することが可能となる。
【0016】
図1は、本実施形態の電子契約システム100の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、電子契約システム100は、ネットワーク10を介して、認証局201、202と、発注者端末301と、応札者端末302と、ブロックチェーンシステム400と、に接続される。
【0017】
ネットワーク10は、例えばインターネットであるが、その他のどのような形態のネットワークであってもよい。ネットワーク10は、有線ネットワーク、無線ネットワーク、および、有線ネットワークと有線ネットワークとが混在したネットワークのいずれであってもよい。
【0018】
認証局201、202は、各種システムで使用する電子証明書を発行する機関である。例えば認証局201、202は、公開鍵認証基盤(PKI:Public Key Infrastructure)に基づいた認証技術における秘密鍵および公開鍵証明書を発行する。
【0019】
認証局201は、例えば、GPKI(政府認証基盤:Government Public Key Infrastructure)が認めた府省認証局、または、LGPKI(地方公共団体組織認証基盤:Local Government Public Key Infrastructure)が認めた組織認証局であってもよい。府省認証局は、例えば、発注者の官職証明書を発行する認証局である。組織認証局は、発注者の職責証明書を発行する認証局である。認証局202は、例えば、応札者の職責証明書を発行する民間の認証局であってもよい。
【0020】
認証局201、202は、区別される必要はなく、発注者および応札者の両方に電子証明書を発行する1つの認証局で置き換えられてもよい。また、電子契約システム100は、3つ以上の認証局に接続されてもよい。
【0021】
認証局201、202は、秘密鍵および公開鍵証明書を記憶するIC(Integrated Circuit)カードを発行するように構成されてもよい。
【0022】
発注者端末301は、電子入札の発注者が使用する端末である。図1では、1つの発注者端末301が記載されているが、電子契約システム100は、2つ以上の発注者端末301に接続されてもよい。
【0023】
応札者端末302は、電子入札の応札者が使用する端末である。図1では、1つの応札者端末302が記載されているが、電子契約システム100は、2つ以上の応札者端末302に接続されてもよい。
【0024】
各端末(発注者端末301および応札者端末302)は、例えばパーソナルコンピュータなどの一般的なコンピュータにより構成することができる。また、各端末は、電子契約システム100が提供する各種画面を介して、電子契約システム100の各機能を利用する。例えば各端末は、ブラウザまたはWebアプリケーションなどにより電子契約システム100の各機能を利用するように構成することができる。
【0025】
ブロックチェーンシステム400は、上記のように、外部のシステムからの指示に従い、内部に備える記憶部にブロックチェーンを記憶するように構成されるシステムである。
【0026】
ブロックチェーンシステム400は、通信制御部411と、スマートコントラクト処理部412と、管理部413と、ブロックチェーン記憶部421と、を備えている。ブロックチェーンシステム400は、これらの各部をそれぞれ備えるように多重化され、分散配置される複数のサーバ(ブロックチェーン・ピア)を含む。各サーバは、クラウド環境上に構築されてもよい。
【0027】
ブロックチェーン記憶部421は、ブロックチェーンを記憶する記憶部である。例えばブロックチェーン記憶部421は、スマートコントラクト処理部412により実行されるスマートコントラクトに従い、トランザクションをブロックチェーンに記憶する。
【0028】
通信制御部411は、電子契約システム100などの外部システムとの間の通信を制御する。例えば通信制御部411は、電子契約システム100から送信された、トランザクションをブロックチェーン記憶部421に記憶する指示(スマートコントラクトの実行指示など)を受信する。また通信制御部411は、処理の実行結果(指示されたスマートコントラクトの戻り値など)を、処理の要求元(電子契約システム100など)に送信する。
【0029】
スマートコントラクト処理部412は、実行が指示されたスマートコントラクトを実行する。例えばスマートコントラクト処理部412は、トランザクションの種類ごとの処理をそれぞれ定めた複数のスマートコントラクトのうち、指示されたスマートコントラクトを実行し、トランザクションをブロックチェーンに記憶する。複数のスマートコントラクトは、電子契約システム100による契約を記憶する電子契約スマートコントラクトを含む。
【0030】
スマートコントラクトは、例えばJavaScript(登録商標)などの汎用の言語で記述されてもよい。電子契約システム100などの外部システムは、スマートコントラクトを呼び出すAPIを使用したWebアプリケーションなどを用いて、所望のスマートコントラクトを実行させることが可能となる。
【0031】
スマートコントラクトを実行することがトランザクションであると解釈することもできる。トランザクションの実行状態を示すログ(トランザクションログ)が、ブロックチェーンに記憶される。トランザクションログは、例えば、呼び出されたスマートコントラクトを特定する情報、スマートコントラクトの引数、日時、および、呼出し元などを含む。
【0032】
スマートコントラクトは、新たに追加すること、および、修正することが可能であってもよい。管理部413は、このようなスマートコントラクトの管理とともに、システムの状態の管理、および、ユーザの管理などを行う。例えば管理部413は、スマートコントラクトの修正、および、テスト実行などのための管理画面を管理者用の端末に表示させる。また管理部413は、ブロックチェーンシステム400の状態を確認するための画面、および、ユーザの権限を変更するための画面を表示させる。
【0033】
スマートコントラクトを修正したこと、および、その他の管理者による処理(システム構成の変更、ユーザの権限変更など)も、トランザクションとしてブロックチェーンに記憶されてもよい。これにより、より信頼性の高いシステムを実現することができる。
【0034】
スマートコントラクトは、他のスマートコントラクトを呼び出す機能を有してもよい。例えば、電子契約スマートコントラクトが、支払処理を実行するためのスマートコントラクトを呼び出すように構成してもよい。スマートコントラクトとして実現すれば、上記のようにトランザクションログをブロックチェーンに記憶させることができるため、ブロックチェーンシステム400の外部で支払処理を実現する方法と比較して、より信頼性の高いシステムを実現できる。
【0035】
電子契約システム100は、登録処理部111と、契約管理部112と、入札処理部113と、契約処理部114と、記憶制御部115と、認証部116と、記憶部121と、を備えている。
【0036】
登録処理部111は、電子契約システム100のユーザ(第1ユーザ)の登録処理を行う。ユーザは、電子契約システム100により電子契約を行う契約者に相当する。例えば登録処理部111は、電子入札を行う業者の資格を審査し、審査により認定された業者をユーザとして登録する業者登録処理を実行する。業者登録処理では、業者の名称、代表者の氏名、所在地、メールアドレス、および、認定時に交付される登録番号などの業者情報が、例えば記憶部121に記憶される。
【0037】
また、登録処理部111は、登録された業者に対して電子契約システム100を利用させるための利用登録処理を実行する。利用登録処理は、例えば、事前に業者に対して割り当てられたICカードの情報を登録する処理を含む。業者は、利用登録処理の前に、例えば認証局201、202に対してICカードの発行を依頼し、ICカードを入手しておく。ICカードは、例えば、電子契約システム100へのログイン処理(ICカード情報を用いた本人確認、または、ユーザIDおよびパスワードを用いた本人確認)、および、電子入札の処理で扱われる電子文書に対する電子署名のために用いることができる。
【0038】
ICカードに記憶される秘密鍵および公開鍵証明書は、ブロックチェーンシステム400に記憶するトランザクションの電子署名に用いられてもよい。トランザクションの電子署名に用いられる鍵情報は、電子契約システム100の利用のために発行されたICカードに記憶される鍵情報に限られない。
【0039】
例えばICカードの代わりに、他の方法(どのような方法でもよい)でユーザ(業者)に割り当てられた秘密鍵がトランザクションの電子署名に用いられてもよい。秘密鍵および公開鍵を記憶するウォレットがICカードの代わりに用いられてもよい。
【0040】
1つの業者に対して2つ以上の鍵情報(ICカード、ウォレット)が割り当てられてもよい。例えば、1つの業者に対して、電子入札の種類ごとに異なる鍵情報が割り当てられる場合がある。また、1つの業者に所属する個人ごとに異なる鍵情報が割り当てられる場合がある。
【0041】
このような場合、登録処理部111は、ブロックチェーンシステム400のユーザ(第2ユーザ)と、複数の鍵情報と、を対応づける処理(対応づけ処理)を実行してもよい。例えば、登録処理部111は、電子契約システム100のユーザに割り当てられた1以上の公開鍵と、ブロックチェーンシステムのユーザと、を対応づける対応づけ処理を実行する。公開鍵の代わりに公開鍵から生成されるウォレットアドレスが用いられてもよい。
【0042】
対応づけ処理により、電子契約システム100のユーザが、自身に割り当てられた秘密鍵による電子署名を付した電子契約のトランザクションを、ブロックチェーンシステム400に記憶させることが可能となる。
【0043】
契約管理部112は、電子入札に関する契約を管理する。例えば契約管理部112は、電子入札の対象となる案件の登録、電子入札による落札者の管理、および、落札者との契約内容の管理などを行う。
【0044】
入札処理部113は、電子入札に関する処理を実行する。例えば入札処理部113は、契約管理部112により登録された案件を電子入札の対象として、応札者が表示または検索できるようにする。また入札処理部113は、応札者による入札の申請書の受け付け、および、決定された落札者を示す情報の受け付けなどを行う。
【0045】
契約処理部114は、電子契約に関する処理を実行する。例えば契約処理部114は、電子入札の発注者に相当する契約者(第1契約者)、および、電子入札の落札者に相当する契約者(第2契約者)のそれぞれについて、両者間で締結した契約に対する合意の指示を受け付ける。そして、契約処理部114は、記憶制御部115を用いて、契約に合意したことを示すトランザクションをブロックチェーンに記憶させる処理を行う。
【0046】
なお、契約処理部114の機能は、契約管理部112に統合されてもよい。既存のシステム(電子入札システムなど)に対して、契約を電子化する機能(電子契約機能)を追加するような場合は、本実施形態のように、電子契約機能を実現する契約処理部114を、契約管理部112とは独立に設ける構成が採用されうる。これにより、既存のシステムに対して電子契約機能、すなわち、ブロックチェーンシステム400に契約を記憶する機能をより容易に追加することが可能となる。
【0047】
記憶制御部115は、トランザクションをブロックチェーン記憶部421に記憶させる処理を制御する。例えば記憶制御部115は、発注者が契約に合意したことを示すトランザクション(第1トランザクション)をブロックチェーンに記憶する指示、および、落札者が契約に合意したことを示すトランザクション(第2トランザクション)をブロックチェーンに記憶する指示を、ブロックチェーンシステム400に送信する。
【0048】
上記の電子契約スマートコントラクトが用意されている場合は、記憶制御部115は、電子契約スマートコントラクトを用いて、すなわち、電子契約スマートコントラクトを呼び出すことにより、契約に合意したことを示すトランザクションをブロックチェーンに記憶することを指示することができる。
【0049】
登録処理部111が対応づけ処理を実行した場合は、記憶制御部115は、対応づけ処理を示すトランザクション、例えば、電子契約システム100のユーザに割り当てられた1以上の公開鍵(またはウォレットアドレス)と、ブロックチェーンシステムのユーザと、を対応づけたことを示すトランザクション(第3トランザクション)をブロックチェーンに記憶させてもよい。これにより、電子契約が正しいユーザにより記憶されたことを検証することが可能となる。
【0050】
認証部116は、電子契約システム100のユーザの認証を行う。例えば認証部116は、ユーザの識別情報であるユーザID、および、パスワードを含む認証情報を用いて、当該ユーザの認証を行う。認証方法はこれに限られず、どのような方法であってもよい。例えばICカードに記憶されたPIN(Personal Identification Number)番号を用いた認証方法が用いられてもよい。
【0051】
記憶部121は、電子契約システム100で用いられる各種情報を記憶する。例えば記憶部121は、登録処理部111による業者登録処理で得られた業者情報を記憶する。また、記憶部121は、登録処理部111による対応づけ処理で得られた対応情報を記憶する。
【0052】
図2は、対応情報のデータ構造の一例を示す図である。図2に示すように、対応情報は、ブロックチェーンユーザIDと、鍵情報と、を対応づけた構造となっている。ブロックチェーンユーザIDは、ブロックチェーンシステム400のユーザの識別情報である。鍵情報は、ブロックチェーンユーザIDで識別されるユーザに相当する電子契約システム100のユーザ(業者など)に割り当てられた鍵を特定する情報である。例えば、鍵を特定する情報は、ICカードまたはウォレットに含まれる公開鍵、または、この公開鍵から算出される一意の値である。
【0053】
上記各部(登録処理部111、契約管理部112、入札処理部113、契約処理部114、記憶制御部115、および、認証部116)は、例えば、1または複数のプロセッサにより実現される。例えば上記各部は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサにプログラムを実行させること、すなわちソフトウェアにより実現してもよい。上記各部は、専用のICなどのプロセッサ、すなわちハードウェアにより実現してもよい。上記各部は、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。複数のプロセッサを用いる場合、各プロセッサは、各部のうち1つを実現してもよいし、各部のうち2以上を実現してもよい。
【0054】
上記の各記憶部(記憶部121およびブロックチェーン記憶部421)は、フラッシュメモリ、メモリカード、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、および、光ディスクなどの一般的に利用されているあらゆる記憶媒体により構成することができる。
【0055】
電子契約システム100は、クラウド環境上に構築されてもよいし、ブロックチェーンシステム400と同様に、分散配置される複数のサーバにより構成されてもよい。
【0056】
次に、このように構成された電子契約システム100による事前登録処理について説明する。事前登録処理は、電子契約を実行する前に行われる処理であり、上記の業者登録処理および利用登録処理を含む。図3は、本実施形態における事前登録処理の一例を示すシーケンス図である。
【0057】
応札者は、応札者端末302を用いて、電子契約システム100に対して資格申請を送信する(ステップS101)。例えば応札者端末302のブラウザに、電子契約システム100が提供する資格申請のための画面が表示される。応札者は、この画面を用いて資格申請を送信する。
【0058】
電子契約システム100の登録処理部111は、送信された資格申請を受け付け、認定した応札者を登録する業者登録処理を実行する(ステップS102)。
【0059】
資格の審査は、審査担当者が申請書類を確認することにより実行される場合がある。このような場合は、審査担当者による審査が完了し、審査担当者が応札者を認定したことを電子契約システム100に対して指定した場合に、業者登録処理が実行されてもよい。
【0060】
登録処理部111は、審査結果を応札者端末302に送信する(ステップS103)。審査結果は、例えば電子メールにより送信されるが、その他のどのような方法で送信されてもよい。
【0061】
資格申請の結果、認定された場合、応札者は、応札者端末302を用いて、利用登録処理のためのICカードの発行を、認証局202に対して依頼する(ステップS104)。認証局202は、依頼元の応札者に対して発行したICカードを送付する(ステップS105)。
【0062】
ICカードを受け取った応札者は、応札者端末302を用いて、利用登録申請を電子契約システム100に送信する(ステップS106)。例えば電子契約システム100(登録処理部111)は、資格申請の送信時に通知される、または、資格審査の結果として通知される応札者の登録番号およびパスワードなどを入力させるための画面を応札者端末302に表示する。応札者がこの画面で登録番号およびパスワードなどを入力すると、登録処理部111は、利用者情報を登録するための画面を表示する。利用者情報は、例えば、応札者(業者)の企業情報、担当者、および、連絡先のメールアドレスを含む。応札者がこの画面で利用者情報を入力して登録を指示すると、利用者情報を含む利用登録申請が電子契約システム100に送信される。
【0063】
登録処理部111は、送信された利用登録申請に応じて、利用登録処理を実行する(ステップS107)。例えば登録処理部111は、利用登録申請に含まれる利用者情報を、記憶部121などに記憶する。
【0064】
登録処理部111は、対応づけ処理を実行してもよい(ステップS108)。登録処理部111は、対応づけ処理で得られた対応情報を記憶部121に記憶する。また、登録処理部111は、記憶制御部115を介して、対応づけ処理を示すトランザクションをブロックチェーンシステム400(ブロックチェーン記憶部421)に記憶させる(ステップS109)。
【0065】
次に、このように構成された電子契約システム100による電子入札・電子契約処理について説明する。電子入札・電子契約処理は、電子入札に関する処理(ステップS201~S210)、および、電子入札の結果締結される契約をブロックチェーンに記憶する処理(ステップS211~S217)を含む。図4は、本実施形態における電子入札・電子契約処理の一例を示すシーケンス図である。
【0066】
ステップS201~ステップS204は、発注者および応札者の電子契約システム100に対するログイン処理に相当する。
【0067】
例えば発注者は、発注者端末301に表示される認証用の画面を用いて、発注者の認証情報(例えばユーザID、パスワード)を入力し、認証情報を電子契約システム100(認証部116)に送信する(ステップS201)。認証部116は、認証情報を用いた認証を行い、認証結果を発注者端末301に送信する(ステップS202)。
【0068】
同様に、応札者は、応札者端末302に表示される認証用の画面を用いて、応札者の認証情報を入力し、認証情報を電子契約システム100(認証部116)に送信する(ステップS203)。認証部116は、認証情報を用いた認証を行い、認証結果を応札者端末302に送信する(ステップS204)。
【0069】
正常にログインできた場合、発注者は、例えば発注者端末301に表示される案件登録用の画面を用いて、電子入札の対象とする案件に関する情報(案件情報)を入力し、登録を指示する。発注者端末301は、指示に応じて案件情報の登録指示を電子契約システム100(契約管理部112)に送信する(ステップS205)。
【0070】
契約管理部112は、受信された案件情報に従い、該当案件を電子入札の対象として登録する処理などを行う。登録された案件は、例えば電子入札用の画面に表示される、または、電子入札用の画面で検索可能とされる。
【0071】
正常にログインできた場合、応札者は、例えば応札者端末302に表示される電子入札用の画面を用いて、希望する案件についての入札の条件などを含む入札情報を入力し、送信を指示する。応札者端末302は、指示に応じて入札情報を電子契約システム100(入札処理部113)に送信する(ステップS206)。
【0072】
発注者は、各応札者から送信された入札情報を参照して、落札者を決定する。発注者は、例えば発注者端末301に表示される落札者登録用の画面を用いて、決定した落札者を示す落札者情報を入力し、送信を指示する。発注者端末301は、指示に応じて落札者情報を電子契約システム100(入札処理部113)に送信する(ステップS207)。
【0073】
入札処理部113は、送信された落札者情報を契約管理部112に送信する(ステップS208)。これにより、契約管理部112は、該当案件の落札者が決定されたことを管理することができる。
【0074】
発注者は、さらに、例えば発注者端末301に表示される契約内容登録用の画面を用いて、落札者との間で締結する契約の内容を入力し、送信を指示する。発注者端末301は、指示に応じて契約内容を電子契約システム100(契約管理部112)に送信する(ステップS209)。
【0075】
契約管理部112は、受信した契約内容に従い、契約書の電子データに相当する契約書情報を生成する(ステップS210)。
【0076】
電子契約を実行しないシステムの場合、例えば、生成された契約書情報が紙媒体に印刷され、紙媒体を用いた契約が実行される。本実施形態では、以下のステップS211~S217により、契約書の電子データを用いた電子契約が実行される。
【0077】
契約処理部114は、契約書情報を、落札者である応札者が使用する応札者端末302に送信する(ステップS211)。契約書情報は、契約書のみでなく、関連する他の文書(関連図書)の電子データを含んでもよい(詳細は後述)。
【0078】
応札者(落札者)は、例えば応札者端末302に表示される合意形成用の画面を用いて、契約に合意することを示す情報を入力し、送信を指示する。応札者端末302は、指示に応じて契約合意を示す情報を電子契約システム100(契約処理部114)に送信する(ステップS212)。
【0079】
契約処理部114は、契約合意の指示を受信すると、契約合意を示す情報を含む取引情報をトランザクションとしてブロックチェーンシステム400に記憶することを、記憶制御部115に指示する(ステップS213)。例えば契約処理部114は、電子契約スマートコントラクトを用いて契約に合意したことを示すトランザクションを記憶することを指示する。
【0080】
記憶制御部115は、指示に応じて取引情報をトランザクションとしてブロックチェーンシステム400(ブロックチェーン記憶部421)に記憶させる(ステップS214)。例えば記憶制御部115は、電子契約スマートコントラクトを呼び出すことにより、トランザクションを記憶させる。
【0081】
同様の処理が、発注者側でも実行される。例えば、発注者は、発注者端末301に表示される合意形成用の画面を用いて、契約に合意することを示す情報を入力し、送信を指示する。発注者端末301は、指示に応じて契約合意を示す情報を電子契約システム100(契約処理部114)に送信する(ステップS215)。
【0082】
ステップS216、S217は、ステップS213、S214と同様であるため説明を省略する。
【0083】
なお、図4では、先に応札者(落札者)が契約合意のトランザクションを記憶し、その後、発注者が契約合意のトランザクションを記憶しているが、これらの記憶処理の順序は逆であってもよい。
【0084】
また、図4では、二者間(発注者、落札者)の契約の合意形成の例が示されているが、三者以上の契約者間での合意形成についても同様の手順を適用できる。この場合、ブロックチェーンには、複数の契約者による合意形成を示す複数のトランザクションが繋げて記憶される。
【0085】
次に、電子入札・電子契約処理の詳細についてさらに説明する。図5は、電子入札・電子契約処理の流れの例を示す図である。
【0086】
なお、図5では、契約処理部114が、電子契約の契約書情報を作成する「電子契約」機能、ブロックチェーンへ契約のトランザクションを記憶する「契約APL(アプリケーション)」機能、および、契約者の本人確認を行う「ログイン処理」機能と、に分けて記載されている。
【0087】
登録処理部111による資格申請および業者登録処理で得られる業者情報は、記憶部121などに記憶され、契約管理部112で参照される(ステップS301)。契約管理部112は、発注者の指示に従い送信された案件情報を登録する(ステップS302)。登録された案件は、電子入札の対象として入札処理部113に送信される(ステップS303)。
【0088】
入札処理部113は、応札者から送信される入札情報を受信する(ステップS304)。入札処理部113は、発注者により決定された落札者情報に従い、応札者のうち落札者に対して落札されたことを通知する(ステップS305)。また入札処理部113は、落札結果を契約管理部112に送信する(ステップS306)。
【0089】
契約管理部112は、発注者により入力された契約内容を受信する(ステップS307)。図6は、契約内容の入力に用いられる契約内容入力画面の一例を示す図である。契約内容入力画面は、対象とする案件を検索する機能、契約を削除する機能、契約を更新する機能、および、入力した契約内容を登録する機能などを含む。
【0090】
図5に戻り、契約管理部112は、図6の契約内容入力画面などにより入力された契約内容に基づき生成した契約書情報を契約処理部114に送信する(ステップS308)。
【0091】
契約書情報は、発注者が出力を指定したときに契約処理部114に出力されてもよい。図7は、契約書情報の出力を指定するための契約出力画面の一例を示す図である。契約出力画面は、対象とする案件を検索する機能、および、契約内容に対応する契約書情報を出力する機能などを含む。
【0092】
図5に戻り、落札者を特定する情報(例えばユーザIDなどの識別情報)は、例えば入札処理部113から契約処理部114に送信される(ステップS309)。
【0093】
上記のように、契約書情報は、契約書の関連図書の電子データを含んでもよい。例えば契約処理部114は、関連図書を指定するための画面を発注者端末301に表示させ、発注者がこの画面を用いて指定した関連図書を示す情報を受信する(ステップS310)。契約処理部114は、関連図書を記憶部121などに記憶して管理してもよい(図5の図書管理)。
【0094】
契約のトランザクションの生成では、契約者の識別情報(ステップS311)と、契約者情報のハッシュ値(ステップS312)とが用いられる。
【0095】
契約処理部114は、落札者が使用する応札者端末302に契約書情報を送信する(ステップS313)。落札者が契約への合意を指示した場合、契約合意を示す情報が契約処理部114に送信される(ステップS314)。契約処理部114は、落札者について契約に合意したことを示す情報を含む取引情報をトランザクションとしてブロックチェーンシステム400に記憶させる。
【0096】
発注者が契約への合意を指示した場合(ステップS315)、契約処理部114は、発注者について契約に合意したことを示す情報を含む取引情報をトランザクションとしてブロックチェーンシステム400に記憶させる。
【0097】
契約処理部114は、契約結果を示す情報を契約管理部112に送信する(ステップS316、S317)。
【0098】
このように、本実施形態によれば、資格申請(登録処理部111)、電子入札(入札処理部113)、および、契約管理(契約管理部112)などの各機能と連携して、電子契約の機能(契約処理部114)を実現可能となる。
【0099】
図8は、契約処理部114による各種処理で用いることができる電子契約画面の一例を示す図である。電子契約画面は、関連図書追加ボタン801、契約書類送信ボタン802、契約合意ボタン803、終了ボタン804を含む。
【0100】
関連図書追加ボタン801が押下されると、例えば、契約書に対して追加する関連図書を指定するための画面が表示される。契約者は、この画面により関連図書を追加することができる。
【0101】
契約書類送信ボタン802が押下されると、契約書情報が落札者(応札者端末302)に送信される。この機能は、図5ではステップS313に対応する。
【0102】
契約合意ボタン803が押下されると、契約に合意したことを示す情報を含む取引情報がトランザクションとしてブロックチェーンシステム400に記憶される。この機能は、図5ではステップS314、S315に対応する。
【0103】
終了ボタン804が押下されると、契約処理部114による処理が終了する。このとき、契約結果を示す情報が契約管理部112に送信されてもよい(図5のステップS317)。
【0104】
図9は、落札者側での電子契約の流れの例を示す図である。落札者は、例えば契約処理部114のログイン処理機能により認証される。契約処理部114の契約APL機能により、電子契約の対象とする案件の検索、および、契約書情報のダウンロードが可能となる。なお契約書セットは、ダウンロードされた契約書情報(関連図書を含んでもよい)に相当する。
【0105】
落札者は、さらに、契約処理部114の契約APL機能により、契約合意を指定し、契約合意を示すトランザクションとしてブロックチェーンシステム400に記憶させることができる。
【0106】
図10は、発注者側での電子契約の流れの例を示す図である。発注者は、例えば契約処理部114のログイン処理機能により認証される。発注者は、契約管理部112(図10の「契約管理」)により契約書に含める契約内容を入力できる。また、契約処理部114の契約APL機能により、関連図書の追加、および、過去の他の契約の検索が可能となる。
【0107】
発注者は、さらに、契約処理部114の契約APL機能により、契約合意を指定し、契約合意を示すトランザクションとしてブロックチェーンシステム400に記憶させることができる。
【0108】
図11は、取引情報(トランザクション)のデータ構造の一例を示す図である。図11の電子文書は、例えば契約書の電子データに相当する。甲、乙は、例えば落札者、発注者に相当する。
【0109】
図11に示すように、取引情報は、電子文書のハッシュ値に電子署名した情報と、公開鍵のアドレスと、取引行為を示す情報と、を含む。
【0110】
ハッシュ値はどのような方法で算出されてもよい。例えば、SHA-256(Secure Hash Algorithm 256-bit)などのハッシュ関数により算出する方法を適用できる。SHA-256は、任意の長さのデータを256ビットに要約した値をハッシュ値として算出する。
【0111】
取引行為を示す情報は、例えば契約合意を示す情報に相当する。なお仮に契約に合意しないことが指定された場合は、契約に合意しないことを示す情報が取引行為を示す情報として記憶されてもよい。
【0112】
このように、本実施形態では、電子文書自体はブロックチェーンに記憶されず、取引(契約合意)した事実のみが記憶される。また、本実施形態では、例えば甲(落札者)が合意したことをブロックチェーン記憶部421に記憶した後、乙(発注者)が同じ電子文書に対して合意形成することができる。すなわち、1つの契約書の電子データに対して複数の契約者(甲、乙)が合意した旨を、ブロックチェーンに記憶させることができる。
【0113】
なお、ブロックチェーンに記憶されたトランザクションは、第三者が正当性を確認することができる。第三者は、例えば、業者に所属する契約者(落札者)以外の個人(監査担当者など)、業者に対する融資担当者、および、契約された案件に関連する住民などである。
【0114】
本実施形態では、ブロックチェーンに記憶する電子文書が電子入札の契約書である場合を例に説明した。電子入札は、上記のように、資格審査で認定され、認証局によりICカードが発行された応札者のみに許可される場合がある。このため、電子入札の契約書は、応札者が所属する組織で扱われる文書のうち一部にしか相当しない場合がある。
【0115】
しかし、本実施形態の電子文書の記憶手法は、電子文書自体には署名しない手法であるため、対象とする電子文書は電子入札の契約書に限る必要がない。すなわち、ブロックチェーンに記憶する電子文書は電子入札の契約書に限られず、どのような電子文書であってもよい。
【0116】
例えば対象とする文書は、以下のような文書に拡張することができる。このように対象文書を拡張した場合であっても、本実施形態の手法は変更せずに適用可能である。
・随意契約案件の契約書
・契約関係書類(申請届出、図面、図書など)
・その他の一般文書
【0117】
以上のように、本実施形態にかかる電子契約システムは、内部にブロックチェーンを記憶する記憶部を備えず、ブロックチェーンを記憶する記憶部を備えるブロックチェーンシステムに対して電子文書に関するトランザクションの記憶を指示する。従って、契約に関するブロックチェーンを記憶するシステムをより容易に構築することが可能となる。
【0118】
また、既存のシステム(電子入札システムなど)が存在するような場合であっても、ブロックチェーンシステムと連携する機能(契約処理部)を追加するのみで、電子文書に関するトランザクションをブロックチェーンに記憶させることができる。
【0119】
既存のシステムが追加する機能に対する連携機能、例えば、シングルサインオン機能を備える場合は、このような連携機能を用いることで、より容易に電子契約システムを実現できる。
【0120】
また、既存のシステムでICカードなどの鍵情報が用いられている場合は、この鍵情報を、ブロックチェーンシステム400に記憶するトランザクションの電子署名にも用いることができる。従って、鍵情報の管理を簡易化することができる。
【0121】
次に、本実施形態にかかる装置(発注者端末301、応札者端末302)のハードウェア構成について図12を用いて説明する。図12は、本実施形態にかかる装置のハードウェア構成例を示す説明図である。
【0122】
本実施形態にかかる装置は、CPU51などの制御装置と、ROM(Read Only Memory)52やRAM(Random Access Memory)53などの記憶装置と、ネットワークに接続して通信を行う通信I/F54と、各部を接続するバス61を備えている。
【0123】
本実施形態にかかる電子契約システムで実行されるプログラムは、ROM52等に予め組み込まれて提供される。
【0124】
本実施形態にかかる電子契約システムで実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disk Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるように構成してもよい。
【0125】
さらに、本実施形態にかかる電子契約システムで実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態にかかる電子契約システムで実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0126】
本実施形態にかかる電子契約システムで実行されるプログラムは、コンピュータを上述した電子契約システムの各部として機能させうる。このコンピュータは、CPUがコンピュータ読取可能な記憶媒体からプログラムを主記憶装置上に読み出して実行することができる。
【0127】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0128】
100 電子契約システム
111 登録処理部
112 契約管理部
113 入札処理部
114 契約処理部
115 記憶制御部
116 認証部
121 記憶部
201 認証局
202 認証局
301 発注者端末
302 応札者端末
400 ブロックチェーンシステム
411 通信制御部
412 スマートコントラクト処理部
413 管理部
421 ブロックチェーン記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12