(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019685
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】開封口の湾曲変形防止機能を有する包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D81/34 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124614
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000237787
【氏名又は名称】富士特殊紙業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100198797
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 裕
(72)【発明者】
【氏名】水谷 礼士
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA26
3E013BB12
3E013BC04
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
3E013BE03
3E013BF06
3E013BF23
3E013BF34
3E013BF62
3E013BG20
3E013CB15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】合成樹脂製のフィルムから成る包装体に関するものであって、包装体を切り取って食品等の内容物を取り出す際に、包装体の材料に限定されることなく、開封口の湾曲変形を防止することができる包装体を提供する。
【解決手段】包装体4の開封予定線8上の前面フィルム4aと背面フィルム4bに熱融着が可能な帯状フィルム1が挿入され、複数の熱融着部2と非熱融着部3を設けた形状にて帯状フィルム1と前面フィルム4a及び背面フィルム4bを熱融着にて接合することにより、開封予定線8上を切り取って開封した際に開封口の湾曲変形を防止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製フィルムから成る包装体であって、前記包装体の開封予定線上の前記合成樹脂製フィルムの前面及び背面に熱融着が可能な帯状フィルムが挿入され、前記帯状フィルムと前記合成樹脂製フィルムの前面及び背面は複数の熱融着部と非熱融着部により熱融着にて接合されることを特徴とした包装体。
【請求項2】
前記帯状フィルムは、3種の合成樹脂製フィルムを積層させたものであって、内容物と接する層及び前記合成樹脂製フィルムの前面と背面に接する層には熱融着が可能な未延伸フィルムを使用し、中間層には延伸フィルムを使用することを特徴とする請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
電子レンジ加熱時に自動的に包装体内の圧力を調整する自動蒸気抜け機構を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の包装体。
【請求項4】
前記包装体は、前面側となる前面フィルムと背面側となる背面フィルムが熱融着可能な面を対向させて配置された状態で、前記包装体の底部側に熱融着可能な面を前記前面フィルムと背面フィルム側に向けて折りたたんだ底部フィルムが挿入され、前記包装体の両側端部及び前記底部フィルムが挿入された底部に熱融着が施された自立型袋であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項5】
前記包装体は、1枚の合成樹脂製フィルムを筒状とし、前記合成樹脂製フィルムの両端を直接熱融着すること、または前記合成樹脂製フィルムの両端に熱融着が可能な部材を挿入しそれらを熱融着することにより形成された合掌袋であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の包装体。
【請求項6】
前記包装体は、2枚の合成樹脂製フィルムが熱融着可能な面を対向させて配置された状態で前記合成樹脂製フィルムの両側端部及び上部又は下部のどちらか一方に熱融着が施された三方袋であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装体の一部を切り取って開封し食品等の内容物を取り出す際に、開封口が湾曲変形することを防止する合成樹脂製フィルムから成る包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、料理を提供する際の利便性から調理済みの食品を密封包装した商品が広く普及している。
【0003】
これらの商品を使用する際には、皿や茶わん等の食器類に内容物を移してから喫食することが一般的であるが、食器の準備や洗浄が面倒であったり、より時間をかけず簡便に食事を済ませたいとの利用者の要望がある。そのため、密封包装されている状態の商品をそのまま電子レンジ加熱や湯煎によって加熱し、開封後には包装体をそのまま食器として利用することができる機能が求められている。
【0004】
しかし、従来の合成樹脂製フィルムから成る包装体では、ホット充填、ボイル殺菌およびレトルト殺菌等の工程を経た後や、密封包装された内容物を電子レンジ加熱もしくは湯煎等で加熱した後に開封すると開封口が湾曲し、変形することは避けられない。
【0005】
そして、この開封口が湾曲・変形により開封口の面積が小さくなり、さらには内容物や箸等の器具に湾曲したフィルムの端が引っ掛かり易くなるため、喫食しにくい、内容物が飛び散って周辺が汚れる、といった問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
合成樹脂製フィルムから成る包装体は、強度、密封性、ガスバリア性、耐熱性、耐寒性および耐内容物適性等の内容物保護のために必要な物性や、印刷適性、製袋適性および内容物の充填適性等の加工適性を確保するため、多種多様な性質を持った合成樹脂製フィルムを包装仕様に合わせて選定し、複数の合成樹脂製フィルムを積層させることにより包装の機能を適えている。
【0007】
このように合成樹脂製フィルムから成る包装体は、熱的性質や機械的性質が異なる合成樹脂製フィルムを積層しているため、殺菌工程や流通、調理等の各工程で包装体に対して生じる吸湿、加熱、冷却および包装体内の体積膨張による引張張力などにより、積層された単体フィルム同士の間で収縮率や引張伸び率の差が生じる。これは、該積層された単体フィルム同士の間で生じる収縮率や引張伸び率の差が包装体を開封した際に開封口が湾曲し、変形する大きな原因であると考えられている。
【0008】
また、包装体は、アルミニウム等の金属箔を用いることで剛性とデットホールド性が付与され、開口部の形状を保持させることが可能であるが、製品の検品工程に使用される金属探知機および電子レンジが使用できなくなる。さらに、合成樹脂とは異素材の金属箔を使用することで包装体をリサイクルすることが難しくなる。
【0009】
以上を踏まえ特許文献1は、一軸延伸が成されたテープ状の高密度ポリエチレン、および該テープ状の高密度ポリエチレンの表面または裏面のいずれか、もしくは両面に直鎖状低密度ポリエチレンが積層されたフィルムを開封予定線上に導入することにより、開封口の形状が維持されることが示されているが、一軸延伸が成されたテープ状の高密度ポリエチレンでは、延伸が成された方向が非常に裂けやすいため、製袋加工が困難である。また、これに直鎖状低密度ポリエチレンを積層した場合には、製袋加工が容易となるが、材料がポリエチレンに限定されるため、熱融着可能な被着体自身もポリエチレンに限定される。さらに、ポリエチレンをシーラントフィルムとした包装体は、一般的に耐熱性が低いことが知られており、高負荷条件のボイル殺菌工程やレトルト殺菌工程に耐えられないため、使用用途も限定される。
【0010】
また、特許文献2によれば、包装体を構成するフィルムに、袋胴部の水平方向に直線上に引き裂くことができる性質をもったポリエチレンテレフタレートフィルムやポリアミドフィルム、ポリプロピレンフィルムを使用することが示されているが、開封時の手切れ性についての評価の記述はあるものの開封口の形状維持に関する評価については示されていない。また、これらのフィルムは、一般的に市場に出回っているが、特殊品であるために価格が高く、それを使用した包装体も高価なものとなってしまう。
【0011】
本発明の目的は、包装体の材料に限定されることなく、内容物を取り出す際に、水分、熱および引張張力によって生ずる開封口の湾曲変形を防止することができる包装体を提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2020-75723
【特許文献2】特開2020-200047
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、合成樹脂製フィルムから成る包装体であって、前記包装体の開封予定線上の前記合成樹脂製フィルムの前面及び背面に熱融着が可能な帯状フィルムが挿入され、前記帯状フィルムと前記合成樹脂製フィルムの前面及び背面は複数の熱融着部と非熱融着部により熱融着にて接合されることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の包装体において、前記帯状フィルムは、3種の合成樹脂製フィルムを積層させたものであって、内容物と接する層及び前記合成樹脂製フィルムの前面と背面に接する層には熱融着が可能な未延伸フィルムを使用し、中間層には延伸フィルムを使用することを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の包装体において、電子レンジ加熱時に自動的に包装体内の圧力を調整する自動蒸気抜け機構を設けたことを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の包装体において、前記包装体は、前面側となる前面フィルムと背面側となる背面フィルムが熱融着可能な面を対向させて配置された状態で、前記包装体の底部側に熱融着可能な面を前記前面フィルムと背面フィルム側に向けて折りたたんだ底部フィルムが挿入され、前記包装体の両側端部及び前記底部フィルムが挿入された底部に熱融着が施された自立型袋であることを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の包装体において、前記包装体は、1枚の合成樹脂製フィルムを筒状とし、前記合成樹脂製フィルムの両端を直接熱融着すること、または前記合成樹脂製フィルムの両端に熱融着が可能な部材を挿入しそれらを熱融着することにより形成された合掌袋であることを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の包装体において、前記包装体は、2枚の合成樹脂製フィルムが熱融着可能な面を対向させて配置された状態で前記合成樹脂製フィルムの両側端部及び上部又は下部のどちらか一方に熱融着が施された三方袋であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によると、包装体を構成するフィルムと、それとは別部材となる熱融着が可能な帯状フィルムを包装体の開封予定線上に複数の熱融着部と非熱融着部を設けた形状にて接合することにより、開封予定線上付近の前記包装体を構成するフィルムが帯状フィルムに支えられるため、水分、熱および引張張力等の因子によって生ずる開封口の湾曲変形を防止することができる。
【0020】
前記帯状フィルムは、包装体を構成するフィルムと熱融着が可能な合成樹脂製フィルムであれば材質や厚みに限定されることはなく、包装体のシーラントフィルムや製品の使用用途に合わせて選定することが可能である。
【0021】
そのため、包装体を構成するフィルムにおいても、使用するフィルムの材質、厚みおよび層構成に制限されることはなく、現存する多種多様な合成樹脂フィルム製の包装体に適用することができる。
【0022】
包装体を構成するフィルムと前記帯状フィルムを接合する熱融着の形状は、
図1に示すような様々な形状が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、熱融着部と非熱融着部がバランスよく配置されている形状であれば開封口の湾曲変形を防止することができる。
【0023】
前記帯状フィルムの面積を大きくすることにより、より大きな開封口の湾曲変形の防止効果が得られるが、製袋加工適性および包装体のコストの観点から包装体の高さ方向にあたる前記帯状フィルムの幅は、12mmから40mmであり、より望ましくは15mmから30mmである。
【0024】
請求項2の発明によると、前記帯状フィルムの中間層に延伸フィルムを使用することにより、耐熱性が向上すると共に、製袋加工が容易となり、さらに、熱融着部におけるフィルムの熱収縮による波打ちおよび包装体端部の樹脂の流出が抑制されることで包装体の仕上がりがきれいになる。
【0025】
また、前記帯状フィルムに製造上の流れ方向に沿って一直線状に引き裂くことができるフィルムを使用することにより、包装体を横断する方向の開封予定線に沿って直線状に引き裂くことができる。
【0026】
例えば、一直線状に引き裂くことができる性質を持つ一軸延伸ポリエチレンフィルムや延伸ポリエステルフィルム、延伸ポリアミドフィルムおよびポリプロピレンフィルムを中間層として組み込み、その両面に熱融着可能な未延伸フィルムを貼り合わせることで前記の機能が得られる。
【0027】
包装体を構成するフィルムの層構成に前記の一直線状に引き裂くことができるフィルムを組み込むことにより前述と同様の機能が得られるが、価格が高い前記の一直線状に引き裂くことができるフィルムを包装体全体に使用してしまうため、前記帯状フィルムに使用する方がより安価に包装体を生産することができる。
【0028】
請求項3に記載の発明によると、電子レンジ加熱時に自動的に包装体内の圧力を調整する蒸気抜け機構が備わる請求項1または請求項2の包装体を用いることにより、密封包装された状態で内容物を電子レンジ加熱することができ、且つ、加熱後に開封した際に開封口の湾曲変形を防止することができる。
【0029】
包装体の開封予定線は、前記自動蒸気抜け機構より下方に配置されることにより、前記帯状フィルムが自動蒸気抜け機構に掛からなくなり、自動蒸気抜けの動作に弊害が生まれず、且つ、自動蒸気抜け機構が開封の妨げにならなくなる。
【0030】
請求項4に記載の発明によると、包装体の前面と背面となる2枚の合成樹脂製フィルムが熱融着可能な面を対向させて配置された状態で包装体底部側に熱融着可能な面を表側に向けて折りたたんだ合成樹脂製フィルムが挿入され、両側端部および折りたたんだフィルムが挿入された底部に熱融着が施された自立型袋の開封口に湾曲変形を防止する機能を付与させることができる。
【0031】
請求項5に記載の発明によると、1枚の合成樹脂製フィルムを筒状に合わせて互いに接した該合成樹脂製フィルムの両端を直接または、熱融着が可能な部材を該合成樹脂製フィルムの両端に接合するように挿入して熱融着することにより形成された合掌袋の開封口に湾曲変形を防止する機能を付与させることができる。
【0032】
請求項6に記載の発明によると、2枚の合成樹脂製フィルムが熱融着可能な面を対向させて配置された状態で両側端部および上下のどちらかに熱融着が成された三方袋の開封口に湾曲変形を防止する機能を付与させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】(a)~(f)包装体を構成する合成樹脂製フィルムと帯状フィルムを接合させる熱融着形状を示すものである。
【
図2】(a)実施例1~3で用いた
図1(a)の熱融着形状にて開封予定線に帯状フィルムが挿入された自立型袋を前面側から示すものである。(b)実施例1~3で用いた
図1(a)の熱融着形状にて開封予定線に帯状フィルムが挿入された自立型袋を背面側から示すものである。
【
図3】実施例1~3で用いた帯状フィルムの全面に熱融着が成された自立型袋を示すものである。
【
図4】実用例1~3で用いた帯状フィルムがない自立型袋を示すものである。
【
図5】実施例1~3における包装体を構成するフィルムの断面図である。
【
図6】実施例1~3における帯状フィルムの断面図である。
【
図7】実施例1~3における開封口の湾曲変形がないサンプルの代表的な例を示す写真である。
【
図8】実施例1~3における開封口の湾曲変形が発生し、フィルム端部が折れ曲がったサンプルの代表的な例を示す写真である。
【
図9】実施例1~3における開封口の湾曲変形が大きく発生し、フィルム端部が回り込んだサンプルの代表的な例を示す写真である。
【
図10】
図1(a)の熱融着形状にて開封予定線に帯状フィルムが挿入された合掌袋を示すものである。
【
図11】
図1(a)の熱融着形状にて開封予定線に帯状フィルムが挿入された三方袋を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施例を
図1から
図11に基づいて詳細に説明する。
【実施例0035】
実施例1では、内容物を充填する際に加熱殺菌処理工程がない調理済み冷凍食品を包装することを想定した材質構成の包装体を用いて、電子レンジ加熱後に対象の包装体を開封した時の開封口の湾曲変形の状態を評価する。
【0036】
図1(a)~(f)は、本発明の包装体を構成する合成樹脂製フィルムと帯状フィルム1を接合させる熱融着形状を示すものである。
なお、これらの形状は例示であって、本発明に係る熱融着形状を限定するものではない。
【0037】
図2に示すように、包装体4の包装形態は、前面フィルム4a、背面フィルム4b、包装体4の底部に折りたたんで挿入された底部フィルム4cを包装体4の両側端部の熱融着部5及び包装体底部の熱融着部6にて接合することで形成された自立型袋とし、包装体の開封予定線8上には帯状フィルム1を挿入し、直線状で包装体4の高さ方向の幅が2mmの熱融着部2と非熱融着部3を互い違いに設けた形状にて、開封予定線8と非熱融着部3の位置が重なるよう包装体4の前面フィルム4aと背面フィルム4bの熱融着が可能な面(シーラント面)にそれぞれ接合している。
【0038】
包装体4の寸法は、一人前の調理済み食品を充填包装することができることを前提として、横幅が180mm、高さが170mm、底材の折込み幅が50mmとしている。包装体4の高さ方向にあたる帯状フィルム1の幅は、30mmとしている。また、開封手段7および開封予定線8の位置は、上部過ぎると電子レンジ加熱時に発生する包装体内の体積膨張による開封予定線8付近に働く引張張力が小さくなり、逆に下部過ぎると開封予定線8が内容物に近づきすぎるため、包装体4の上端部から70mmとしている。
【0039】
実施例1で使用する包装体4の層構成は、
図5(a)に示すように、符号11は包装体最表層の基材フィルムとしての耐熱性および寸法安定性の高い二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以後、PETと言う。)12μm、符号12はシーラントフィルムとして低温熱融着性を有し、耐寒衝撃性の高い直鎖状低密度ポリエチレン(以後、LLDPEと言う。)30μmであり、これらの合成樹脂フィルムはウレタン系2液硬化型の接着剤13を用いたドライラミネート方式にて積層されたものである。
【0040】
実施例1で使用する帯状フィルム1の層構成は、包装体4と熱融着し、且つ、帯状フィルム同士も熱融着する必要があるため、
図6の(a)に示すように、上から順にLLDPE30μm(符号12)/接着剤(符号13)/PET12μm(符号11)/接着剤(符号13)/LLDPE30μm(符号12)とし、ドライラミネート方式で積層されたものである。なお、包装体4と熱融着する側のLLDPEは、その反対面にあたるLLDPEより低温で熱融着が可能なフィルムを使用すると製袋工程での作業効率がよくなるため、より好ましい。
【0041】
評価の比較対象として、
図3に示すような帯状フィルム1と包装体4を接合する帯状フィルム内の全面熱融着部10が帯状フィルム1と同面積であり、帯状フィルム内の非熱融着部3が存在しない全面熱融着品20を作製した。
【0042】
加えて、
図4に示すような帯状フィルム1を使用しない従来品30も同仕様で作製した。
【0043】
実施例1に係る包装体4(
図2)、全面熱融着品20(
図3)および従来品30(
図4)にそれぞれ水200mlを封入し、600W×3分間の加熱条件にて電子レンジ加熱を行った後、開封手段7より開封予定線8を切り取った際の開封口の湾曲変形の程度を比較検証した。
【0044】
電子レンジ加熱時の包装体内の体積膨張によって検証サンプル袋が破裂することを防ぐため、右上角部よりタテ20mm、ヨコ20mmの位置の表フィルムに、自動蒸気抜け機構として水蒸気排出口となるタテ4mm、ヨコ4mmの十字の切り込み9を入れた。
【0045】
開封口の湾曲変形の検証結果を表1に記載する。
【表1】
【0046】
各袋の開封口の湾曲変形の程度は
図7から
図9に示され、表1において、
図7程度で〇 、
図8程度で△、
図9程度で×とし、〇であれば湾曲変形がなく、開封口の湾曲変形を防止するという本発明の目的は達成されたと捉える。
【0047】
前記の条件にて電子レンジ加熱を行った際には、加熱開始から約2分15秒で包装体内部に発生した水蒸気によって包装体内の体積が最大限に膨張し、切り込み9から水蒸気が排出されていることが確認された。
【0048】
その後約45秒間は、包装体に水蒸気や熱、引張張力が作用し続けることになり、加熱終了後にこの負荷を受けた包装体の開封予定線8上を切り取って開封し、開封口が外気によって冷却されたときに包装体4最内層のLLDPEフィルム12の収縮が最外層のPETフィルム11よりも大きくなることで包装体の内側に向かって湾曲変形したと考えられる。
【0049】
表1より、実施例1に係る包装体4(
図2)においては前記の湾曲変形の発生を防止する効果が確認できた。
これに対し、全面熱融着品20(
図3)は帯状フィルム1との熱融着により開封口付近のフィルムに剛性を付与させることができ、冷却時の包装袋4最内層のLLDPEフィルム12の収縮を抑え、
図9に示す従来品30(
図4)のような大きな変形は発生しないが、帯状フィルム1の最下部を起点として包装体の内側に向けて折れ曲がってしまう検証サンプル袋が見られた。
ボイル殺菌の処理条件は、90℃×60分間とし、冷蔵流通を想定し、ボイル殺菌後は、5℃の雰囲気下にて24時間保管した。内容物、電子レンジ加熱条件および評価方法は、実施例1と同じである。
ボイル殺菌後開封した全面融着品20および従来品30は、ボイル殺菌により最外層のNyフィルム14が収縮し、袋の外側に向かって湾曲変形した。電子レンジ加熱後開封した全面熱融着品20にて湾曲変形が発生しなかったのは、ボイル殺菌によりNyフィルム14が収縮した状態で電子レンジ加熱を行うことで、LLDPEフィルム12の収縮とのバランスが取れたためであると推察する。一方、帯状フィルム1のない従来品30は、開封口の剛性が弱いため、ボイル殺菌によるNyフィルム14の収縮よりも電子レンジ加熱によるLLDPEフィルム12の収縮の方が大きいため、袋の内側へ大きく湾曲変形する結果となった。
実施例1に係る包装体4は、ボイル殺菌および電子レンジ加熱によるNyフィルム14やLLDPEフィルム12の収縮を帯状フィルム1上の熱融着部2と非熱融着部3の収縮度合いの差を利用し、コントロールすることで、開封口の湾曲変形を防止することができた。