(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019692
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】マヌカ蜂蜜発酵物、それを含む組成物、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
C12P 1/00 20060101AFI20230202BHJP
A61K 8/99 20170101ALI20230202BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20230202BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20230202BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20230202BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230202BHJP
C12P 1/04 20060101ALI20230202BHJP
C12R 1/02 20060101ALN20230202BHJP
C12R 1/01 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
C12P1/00 Z
A61K8/99
A61K8/98
A61Q5/02
A61Q19/10
A61Q19/00
C12P1/04 Z
C12R1:02
C12R1:01
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124624
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】591210622
【氏名又は名称】ヤヱガキ醗酵技研株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399084753
【氏名又は名称】日新蜂蜜株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000240950
【氏名又は名称】片倉コープアグリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今城 小百合
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 恵巳
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 誠
(72)【発明者】
【氏名】成田 亮
(72)【発明者】
【氏名】下島 響子
【テーマコード(参考)】
4B064
4C083
【Fターム(参考)】
4B064AH19
4B064CA02
4B064CA05
4B064CD21
4B064DA20
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA071
4C083AA072
4C083AB312
4C083AB352
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC642
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD162
4C083AD202
4C083AD352
4C083AD432
4C083AD532
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC25
4C083CC38
4C083DD16
4C083DD21
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE06
4C083EE12
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】皮膚のバリア機能を向上させる作用を有する新たな成分、及び前記成分を含有し、皮膚外用剤、化粧料等として有用な組成物を提供する。
【解決手段】本発明の一以上の実施形態は、ギョリュウバイ(Leptospermum scoparium)の花蜜より得られるマヌカ蜂蜜の、グルコースを基質としてグルコン酸を生成する能力を有する微生物による発酵生産物であることを特徴とするマヌカ蜂蜜発酵物、並びにそれを含有する、皮膚外用剤、化粧料等として利用できる組成物に関する。本発明の別の一以上の実施形態は、前記マヌカ蜂蜜発酵物の製造方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギョリュウバイ(Leptospermum scoparium)の花蜜より得られるマヌカ蜂蜜の、グルコースを基質としてグルコン酸を生成する能力を有する微生物による発酵生産物であることを特徴とする、マヌカ蜂蜜発酵物。
【請求項2】
前記微生物が、グルコノバクター属又はアセトバクター属に属する1種以上の微生物である、請求項1に記載のマヌカ蜂蜜発酵物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物。
【請求項4】
皮膚外用剤である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
化粧料である、請求項3又は4に記載の組成物。
【請求項6】
トランスグルタミナーゼ1活性を促進するための、請求項3~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
皮膚細菌叢を改変するための、請求項3~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
皮膚バリア機能を改善するための、請求項3~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
皮膚保湿のための、請求項3~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
ギョリュウバイ(Leptospermum scoparium)の花蜜より得られるマヌカ蜂蜜の存在下で、グルコースを基質としてグルコン酸を生成する能力を有する微生物を培養して、前記マヌカ蜂蜜の前記微生物による発酵生産物を得る工程を含む、マヌカ蜂蜜発酵物の製造方法。
【請求項11】
前記微生物が、グルコノバクター属又はアセトバクター属に属する1種以上の微生物である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マヌカ蜂蜜発酵物、それを含む組成物、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蜂蜜はミツバチが各種の花から吸い集めた甘みの強い物質であり、成分組成として糖質が約8割と最も多い。蜂蜜中の糖質は主にグルコースとフルクトースからなる。蜂蜜自体は全世界で日常的に食されているほか、化粧品分野にも広く利用されている(非特許文献1)。蜂蜜は蜜源となる植物の種類によって味や色、香り、性状、成分、機能が異なることが知られている(非特許文献2、3)。この内、ニュージーランドに植生するフトモモ科ネズモドキ属の植物であるギョリュウバイ(Leptospermum scoparium)はマオリ語で「マヌカ」と呼ばれることから、ギョリュウバイ花蜜を西洋ミツバチが採取して得られる蜂蜜は「マヌカ蜂蜜」と呼ばれる。マヌカ蜂蜜は他の蜂蜜には含まれない抗菌活性成分であるメチルグリオキサールが含まれており、口腔内細菌や胃がんの原因菌とされるピロリ菌に対する抗菌作用が期待される(非特許文献4、5)。
【0003】
最近、化粧品分野における素材開発において、新たな機能の付与を期待した発酵技術の利用の報告が多く見受けられる。例えばテンペ菌で発酵させたバジルの葉を用いた化粧品素材や担子菌で発酵させた発酵哺乳動物のプラセンタを用いた化粧品素材がある(特許文献1、2)。しかしながら、蜂蜜発酵物の利用は限定され、マヌカ蜂蜜を発酵した事例は見当たらない。
【0004】
発酵には様々な菌種が用いられるが、例えば酢酸菌が挙げられる。2018年の時点で酢酸菌には18の属が提案されている(非特許文献6)。このうち、産業利用の視点で見るならば、古くから分類されてきたグルコノバクター属とアセトバクター属が酢酸菌の中心的な属を形成していると言える。グルコノバクター属とアセトバクター属は、グルコースを酸化してグルコン酸を産生する。グルコン酸は、腸内のビフィズス菌増加や、血流改善、骨粗しょう症予防等の効果を有することが知られている。
【0005】
一方、近年、環境汚染や生活習慣の変化等により皮膚の敏感性の増大が問題となっており、皮膚バリア性の向上を付与する素材に対する需要が高まっている。
【0006】
皮膚を構成する角層細胞は15~20nmの厚さの極めて強靭な構造物で、細胞膜の内側から裏打ちされている。これは終末角化とともに現れ、CE(Cornified cell envelope)と呼ばれている。CEは細胞膜の内側に形成される架橋されたタンパク分子と、層板顆粒由来のセラミドが細胞膜を置換した脂質部分からなる。細胞膜内面を裏打ちするタンパク分子の層はまずエンボプラキンとペリプラキンのヘテロダイマーとインボルクリンが細胞膜上に結合し、さらにトランスグルタミナーゼ1により架橋され、トランスグルタミナーゼ3で架橋されたSPR(small proline rich protein)とロリクリンのダイマーが、トランスグルタミナーゼ1により細胞膜上のタンパク分子に架橋されて補強される。CEの内側にはコルネオデスモゾームにケラチン線維が結合し、外側にはトランスグルタミナーゼ1の働きにより、主にインボルクリンにωヒドロキシセラミド等の脂質がエステル結合して脂質エンベロープを形成している(非特許文献7)。この構造により皮膚には堅牢なバリア機能が付与される。このためトランスグルタミナーゼ1の活性を促進することは皮膚のバリア機能の向上に寄与するものと考えられる。
【0007】
また、人体の表面には多数の微生物が生存していることが知られており、このうち常に高頻度で検出される数種の細菌や酵母は、皮膚常在菌と呼ばれている。この皮膚常在菌は、皮膚上の皮表脂質やアミノ酸等を生育のための栄養源としており、宿主が正常な状態であれば病原性を示さず、むしろ、外部からの病原菌の侵入を防ぎ一種のバリア機能を果たしているといわれている(非特許文献8)。皮膚バリア機能は単に外界からアレルゲンや細菌等の侵入を防ぐ機能にとどまらず、皮膚内部からの水分の蒸散を防ぎ保湿性を付与する働きも有している(非特許文献9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第6703696号
【特許文献2】特許第6836004号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本公定書協会編「化粧品原料基準 第二版注解」p.780~782、薬事日報社発行(1984)
【非特許文献2】調理科学、26巻、1号、p.47~53(1993)
【非特許文献3】福岡県立大学看護学研究紀要、15、p.25~34(2018)
【非特許文献4】ミツバチ科学、24巻、1号、p.7~14(2003)
【非特許文献5】日本家政学会誌、70巻、2号、p.97~101(2019)
【非特許文献6】日本醸造協会誌、113巻、1号、p.18~23(2018)
【非特許文献7】日本美容皮膚科学会監修「美容皮膚科学」p.12~13、南山堂発行(2009)
【非特許文献8】日本化粧品技術者会誌、20巻、3号、p.167~171(1986)
【非特許文献9】アレルギー、54巻、5号、p.445~450(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来、皮膚のバリア機能の向上のために様々な製剤が用いられているが、皮膚内部より例えば、トランスグルタミナーゼ1の活性を促進してバリア機能を向上し、皮膚外部より例えば、皮膚細菌叢組成を改変することでバリア機能を向上するといった、皮膚内外部より同時に皮膚バリア機能を向上させる組成物は知られていない。
【0011】
本発明は、皮膚のバリア機能を向上させる作用を有する新たな成分、及び前記成分を含有し、皮膚外用剤、化粧料等として有用な組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記目的を達成するために利用方法・作用の検討、追究を試み鋭意研究を進めた結果、マヌカ蜂蜜の、グルコースを基質としてグルコン酸を生成する能力を有する微生物による発酵生産物が、皮膚の内外部より効果的に皮膚バリア機能を向上させる作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち本発明は以下の態様を包含する。
(1)ギョリュウバイ(Leptospermum scoparium)の花蜜より得られるマヌカ蜂蜜の、グルコースを基質としてグルコン酸を生成する能力を有する微生物による発酵生産物であることを特徴とする、マヌカ蜂蜜発酵物。
(2)前記微生物が、グルコノバクター属又はアセトバクター属に属する1種以上の微生物である、(1)に記載のマヌカ蜂蜜発酵物。
(3)(1)又は(2)に記載のマヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物。
(4)皮膚外用剤である、(3)に記載の組成物。
(5)化粧料である、(3)又は(4)に記載の組成物。
(6)トランスグルタミナーゼ1活性を促進するための、(3)~(5)のいずれかに記載の組成物。
(7)皮膚細菌叢を改変するための、(3)~(6)のいずれかに記載の組成物。
(8)皮膚バリア機能を改善するための、(3)~(7)のいずれかに記載の組成物。
(9)皮膚保湿のための、(3)~(8)のいずれかに記載の組成物。
(10)ギョリュウバイ(Leptospermum scoparium)の花蜜より得られるマヌカ蜂蜜の存在下で、グルコースを基質としてグルコン酸を生成する能力を有する微生物を培養して、前記マヌカ蜂蜜の前記微生物による発酵生産物を得る工程を含む、マヌカ蜂蜜発酵物の製造方法。
(11)前記微生物が、グルコノバクター属又はアセトバクター属に属する1種以上の微生物である、(10)に記載の方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一以上の実施形態に係るマヌカ蜂蜜発酵物は、トランスグルタミナーゼ1活性を促進する作用、皮膚細菌叢を改変する作用、皮膚バリア機能を改善する作用、皮膚を保湿する作用を有する。
本発明一以上の実施形態に係る組成物は、皮膚の内外部より効果的に皮膚バリア機能を向上させる皮膚外用剤及び化粧料として有用である。
本発明の一以上の実施形態に係る方法は、上記のマヌカ蜂蜜発酵物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
<マヌカ蜂蜜発酵物>
本発明のマヌカ蜂蜜発酵物の原料となるマヌカ蜂蜜は特に限定されないが、好ましくはニュージーランド産のギョリュウバイ(Leptospermum scoparium)の花蜜をセイヨウミツバチが採取することで作られる蜂蜜を用いる。
【0017】
本発明者らは、マヌカ蜂蜜の発酵物は、トランスグルタミナーゼ1活性を促進する作用、黄色ブドウ球菌を低減する作用、及び、表皮ブドウ球菌を増加させる作用を有するのに対して、アカシア蜂蜜の発酵物はこれらの作用を有していないことを見出した。
【0018】
マヌカ蜂蜜発酵物の製造に用いる微生物は、グルコースを基質としてグルコン酸生成能を有する微生物であれば、特に限定されない。前記微生物は、特に好ましくは、グルコノバクター属又はアセトバクター属に属する1種以上の微生物である。グルコノバクター属又はアセトバクター属に属する微生物は「酢酸菌」に分類される。グルコノバクター属に属する微生物の好ましい具体例としては、グルコノバクター・フラテウリ(Gluconobacter frateurii)、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、グルコノバクター・アルビダス(Gluconobacter albidus)、グルコノバクター・セリナス(Gluconobacter cerinus)、グルコノバクター・アサイ(Gluconobacter asaii)が挙げられる。アセトバクター属に属する微生物の好ましい具体例としては、アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti)、アセトバクター・パスツリアナス(Acetobacter pasteurianus)、アセトバクター・エスチュネンシス(Acetobacter estunensis)、アセトバクター・ラバニエンシス(Acetobacter lovaniensis)、アセトバクター・オリエンタリス(Acetobacter orientalis)、アセトバクター・オレアネンシス(Acetobacter orleanensis)が挙げられる。グルコノバクター属に属する1種以上の微生物を用いることが特に好ましい。
【0019】
マヌカ蜂蜜発酵物の製造に、グルコースを基質としてグルコン酸生成能を有する微生物以外の微生物を用いた場合、トランスグルタミナーゼ1活性を促進する作用、黄色ブドウ球菌を低減する作用、及び、表皮ブドウ球菌を増加させる作用を有するマヌカ蜂蜜発酵物を製造することはできない。
【0020】
本明細書に開示するマヌカ蜂蜜発酵物は、マヌカ蜂蜜の存在下で、前記微生物を培養して、前記マヌカ蜂蜜の前記微生物による発酵生産物を得る工程を含む方法により製造することができる。
【0021】
前記工程において、「マヌカ蜂蜜の存在下で、前記微生物を培養する」とは、マヌカ蜂蜜を含み、前記微生物の培養が可能な組成物中で、前記微生物を培養することを指す。このような組成物としては、マヌカ蜂蜜自体、又は、マヌカ蜂蜜の、水、緩衝液、液体培地等の液体成分による希釈液が例示でき、好ましくは、マヌカ蜂蜜自体、又は、マヌカ蜂蜜の水による希釈液である。
【0022】
前記工程において、培養温度は、前記微生物が増殖できる温度であればよく、特に限定されないが、典型的には15~45℃、好ましくは25~40℃、例えば28~37℃とすることができる。培養時のpHは、前記微生物が増殖できるpHであればよく、特に限定されないが、例えば2.0~7.0、好ましくは2.0~6.0、より好ましくは3.0~5.0とすることができる。前記工程の培養時間は特に限定されないが、好ましくは24~144時間、より好ましくは24~96時間とすることができる。
【0023】
培養組成物を「発酵生産物」と称する。微生物菌体の除去は、ろ過、遠心分離等の任意の固液分離手段により行うことができる。
【0024】
本明細書において、マヌカ蜂蜜発酵物又は発酵生産物とは、前記工程においてマヌカ蜂蜜の存在下で前記微生物を培養して得られた培養液等の培養組成物であってもよいし、培養完了後に殺菌処理及び/又は微生物菌体除去処理を更に施した培養組成物であってもよいし、培養組成物に、濃縮、乾燥、抽出、精製、希釈等の1以上の処理を更に施した処理物であってもよい。
【0025】
<マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物>
本明細書はまた、上記のマヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物を開示する。
前記組成物は、皮膚外用剤又は化粧料であることが好ましい。
前記組成物はまた、トランスグルタミナーゼ1活性を促進するための、皮膚外用剤、化粧料等の組成物であることが好ましい。
前記組成物はまた、皮膚細菌叢を改変するための、皮膚外用剤、化粧料等の組成物であることが好ましい。ここで皮膚細菌叢を改変するとは、黄色ブドウ球菌を低減すること、及び、表皮ブドウ球菌を増加させることの、少なくとも一方、好ましくは両方を指す。
前記組成物はまた、皮膚バリア機能を改善するための、皮膚外用剤、化粧料等の組成物であることが好ましい。
前記組成物はまた、皮膚保湿のための、皮膚外用剤、化粧料等の組成物であることが好ましい。
【0026】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物において、マヌカ蜂蜜発酵物の配合量は特に限定されず、0.001~100重量%であってよく、0.1~10重量%であることが特に好ましい。すなわちマヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物は、マヌカ蜂蜜発酵物のみからなるものであってもよいし、マヌカ蜂蜜発酵物と、皮膚外用剤、化粧料等の用途において許容される他の成分とを含むものであってもよい。
【0027】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物において、マヌカ蜂蜜発酵物の形態は特に限定されない。例えば、皮膚外用剤、化粧料等の組成物の有効成分として、マヌカ蜂蜜の存在下で前記微生物を培養して得られた培養液等の培養組成物をそのまま配合してもよいし、凍結乾燥等の方法で乾燥して得た粉末を配合してもよい。
【0028】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が化粧料である実施形態では、化粧料の形態は特に限定されないが、例えば、化粧水、乳液、美容液、一般クリーム、クレンジングクリーム等の洗顔料、パック、髭剃り用クリーム、日焼けクリーム、日焼け止めクリーム、日焼け止めローション、日焼けローション、化粧石鹸、ファンデーション、おしろい、パウダー、口紅、リップクリーム、アイライナー、アイクリーム、アイシャドウ、マスカラ、浴用化粧品、シャンプー、リンス、染毛料、頭髪用化粧品等の形態であってよい。
【0029】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物は、皮膚外用剤、化粧料等の用途において許容される1以上の他の成分を更に含んでいてよい。
【0030】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としては、化粧品、医薬部外品や浴用剤で一般に使用される基剤、薬剤等が例示できる。
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としては、コラーゲン、コラーゲン加水分解物、ゼラチン、ゼラチン加水分解物、エラスチン、エラスチン加水分解物、ラクトフェリン、ケラチン、ケラチン加水分解物、カゼイン、アルブミン、ローヤルゼリー由来タンパク加水分解物等のタンパク質又はその加水分解物が例示できる。
【0031】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、ヒアルロン酸ナトリウム、キサンタンガム、カラギーナン、グアーガム、アルギン酸及びその塩、ペクチン、コンドロイチン硫酸及びその塩、水溶性キチン、キトサン誘導体及びその塩、デオキシリボ核酸、アラビアゴム、トラガントゴム等の天然高分子及びそれらの誘導体が例示できる。
【0032】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、甘草エキス、アロエエキス、カモミラエキス、シソエキス等の植物抽出物、酵母エキス等の微生物由来物、海藻末や海藻エキス、並びに、プラセンタエキス等の動物由来抽出物が例示できる。
【0033】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、カルボキシビニルポリマー及びその塩、ポリアクリル酸及びその塩、カルボキシメチルセルロース及びその塩等の酸性ポリマー、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ニトロセルロースポリビニルメチルエーテル等の中性ポリマー、並びに、カチオン化セルロース、ポリエチレンイミン、カチオン化グアーガム等のカチオン性ポリマー、並びに、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類が例示できる。
【0034】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、アントラニエール酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤が例示できる。
【0035】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、リン酸L-アスコルビルマグネシウム及びその誘導体、ビタミンD群、酢酸d-α-トコフェノール、ビタミンE群、葉酸類、β-カロチン、γ-オリザノール、ニコチン酸、パントテン酸類、ビオチン類、フェルラ酸等のビタミン類、グリチルリチン酸及びその塩類、グアイアズレン及びその誘導体、アラントイン等の抗炎症剤が例示できる。
【0036】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、ステアリン酸エステル、ノルジヒドログアセレテン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、パラヒドロキシアニソール、没食子プロピル、セサモール、セサモリン、ゴシポール等の抗酸化剤が例示できる。
【0037】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、パラ安息香酸メチル、パラ安息香酸エチル、パラ安息香酸プロピル、パラ安息香酸ブチル等のパラ安息香酸エステル類、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、フェノキシエタノール、安息香酸等の防腐剤が例示できる。
【0038】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、エデト酸、エデト酸二ナトリウム等のエデト酸及びその塩類、フィチン酸、ヒドロキシエタンジスルホン酸等の金属イオン封鎖剤が例示できる。
【0039】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類が例示できる。
【0040】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、L-アスパラギン酸、DL-アラニン、L-アルギニン、L-システイン、L-グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸類及びその塩が例示できる。
【0041】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、マルチトール、ソルビトール、キシロビオース、N-アセチル-D-グルコサミン、蜂蜜等の糖類が例示できる。
【0042】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、クエン酸、乳酸、α-ヒドロキシ酢酸、ピロリドンカルボン酸等の有機酸類及びその塩類が例示できる。
【0043】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、アンモニア水、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の塩基類が例示できる。
【0044】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類、オリーブ油、ヤシ油、月見草油、ホホバ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油等の油脂類、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の脂肪酸類、ミリスチルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類が例示できる。
【0045】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、トリオクタン酸グリセリン、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸ステアリル等のエステル類、レシチン及びその誘導体等のリン脂質類、ウシ骨髄脂やウシ脳脂質等の動植物由来脂質、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸エタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキル硫酸塩が例示できる。
【0046】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、ポリオキシエチレン(2EO)ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン(なお、EOはエチレンオキサイドでEOの前の数値はエチレンオキサイドの付加モル数を示す。)、ポリオキシエチレン(3EO)アルキル(炭素数11~15のいずれかまたは2種以上の混合物)エーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキル硫酸塩が例示できる。
【0047】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン等のアルキルベンゼンスルホン酸塩が例示できる。
【0048】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、ポリオキシエチレン(3EO)トリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が例示できる。
【0049】
本明細書に開示する、マヌカ蜂蜜発酵物を含有する組成物が含有し得る他の成分としてはまた、
ヤシ油脂肪酸サルコシンナトリウム、ラウロイルサルコシントリエタノールアミン、ラウロイルメチル-L-グルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸-L-グルタミン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸-L-グルタミン酸トリエタノールアミン、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等のN-アシルアミノ酸塩、エーテル硫酸アルカンスルホン酸ナトリウム、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリン硫酸ナトリウム、ウンデシノイルアミドエチルスルホコハク酸二ナトリウム、オクチルフェノキシジエントキシエチルスルホン酸ナトリウム、オレイン酸アミノスルホコハク酸二ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル(炭素鎖12~15)エーテルリン酸(8~10EO)、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンセチルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤;
塩化ステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジ(ポリオキシエチレン)オレイルメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム等のカチオン性界面活性剤;
2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ウンデシルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ウンデシル-N-ヒドロキシエチル-N-カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、ステアリルジヒドロキシエチルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ヤシ油アルキル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ヤシ油アルキル-N-カルボキシメトキシエチル-N-カルボキシメチルイミダゾリニウムジナトリウムラウリル硫酸、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル-DL-ピロリドンカルボン酸塩等の両性界面活性剤;
ポリオキシエチレンアルキル(炭素数12~14)エーテル(7EO)、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオレイン酸グリセリン、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルステアリルジエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール・ラノリン(40EO)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル等のノニオン性界面活性剤;
イソステアリン酸ジエタノールアミド、ウンデシレン酸モノエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、牛脂脂肪酸モノエタノールアミド、硬化牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸エタノールアミド、ラウリン酸イソプロパノールアミド、ラウリン酸エタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラノリン脂肪酸ジエタノールアミド等の増粘剤;
鎖状または環状メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンポリエチレングリコール共重合体、ジメチルポリシロキサンポリプロピレン共重合体、アミノ変性シリコンオイル、第四級アンモニウム変性シリコンオイル等のシリコンオイル;
チオグリコール酸及びその塩;
システアミン及びその塩;
過酸化水素、過硫酸塩、過ほう酸塩、過酸化尿素等の過酸化物;
臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム等の臭素酸塩;
その他、pH調整剤、着色料、香料、安定化剤、清涼剤、血流促進剤、角質溶解剤、収斂剤、創傷治療剤、増泡剤、口腔用剤、消臭・脱臭剤、抗アレルギー剤、細胞賦活剤等
が例示できる。
【実施例0050】
以下、本発明を実験結果に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実験での構成によってその技術的範囲が限定されるものではない。
【0051】
<製造例1>前培養液
製造例2以下に示すジャーファーメンター発酵において、前培養として添加するフラスコ培養物の組成を表1に示す。300mLバッフル付き三角フラスコに、表1記載の培地を入れて121℃で20分間殺菌をした。降温後、表1に記載した凍結保存菌液を各1mL植菌した。30℃、100rpmの条件で、2日間攪拌培養をして、前培養液とした。
【0052】
【0053】
<製造例2>
小型ジャーファーメンターにマヌカ蜂蜜400gを入れ、水で希釈して全量を1.9Lとし、オートクレーブ殺菌処理した(121℃、20分間)。殺菌後降温し、製造例1の条件1で示したGluconobacter frateuriiの前培養液100mLを添加して発酵させた(30℃、4日間、400rpm、0.2vvm)。発酵終了後、殺菌(121℃、20分間)を行い、フィルターろ過してマヌカ蜂蜜発酵物を製造した。
【0054】
<製造例3>
製造例2で得たマヌカ蜂蜜発酵物を濃縮後、真空凍結乾燥して、マヌカ蜂蜜発酵物凍結乾燥粉末を得た。
【0055】
<製造例4>
小型ジャーファーメンターにマヌカ蜂蜜400gを入れ、水で希釈して全量を1.9Lとし、オートクレーブ殺菌処理した(121℃、20分間)。殺菌後降温し、製造例1の条件2で示したAcetobacter acetiの前培養液100mLを添加して発酵させた(30℃、4日間、400rpm、0.2vvm)。発酵終了後、殺菌(121℃、20分間)を行い、フィルターろ過してマヌカ蜂蜜発酵物を製造した。
【0056】
<製造例5>
小型ジャーファーメンターにマヌカ蜂蜜400gを入れ、水で希釈して全量を1.9Lとし、オートクレーブ殺菌処理した(121℃、20分間)。殺菌後降温し、製造例1の条件3で示したAspergillus nigerの前培養液100mLを添加して発酵させた(30℃、4日間、400rpm、0.2vvm)。発酵終了後、殺菌(121℃、20分間)を行い、フィルターろ過してマヌカ蜂蜜発酵物を製造した。
【0057】
<製造例6>
小型ジャーファーメンターにマヌカ蜂蜜400gを入れ、水で希釈して全量を1.9Lとし、オートクレーブ殺菌処理した(121℃、20分間)。殺菌後降温し、製造例1の条件4で示したLactobacillus delbrueckiiの前培養液100mLを添加して発酵させた(30℃、4日間、400rpm、0.2vvm)。発酵終了後、殺菌(121℃、20分間)を行い、フィルターろ過してマヌカ蜂蜜発酵物を製造した。
【0058】
<製造例7>
マヌカ蜂蜜を濃度20%(w/v)となるよう水で希釈し、殺菌(121℃、20分間)を行い、フィルターろ過してマヌカ蜂蜜抽出物を製造した。
【0059】
<製造例8>
小型ジャーファーメンターにアカシア蜂蜜400gを入れ、水で希釈して全量を1.9Lとし、オートクレーブ殺菌処理した(121℃、20分間)。殺菌後降温し、製造例1の条件1で示したGluconobacter frateuriiの前培養液100mLを添加して発酵させた(30℃、4日間、400rpm、0.2vvm)。発酵終了後、殺菌(121℃、20分間)を行い、フィルターろ過してアカシア蜂蜜発酵物を製造した。
【0060】
<試験例1>
(トランスグルタミナーゼ1活性促進試験)
トランスグルタミナーゼ1は、前述したように細胞膜内面を裏打ちするタンパク分子を架橋する酵素である。
【0061】
製造例2で得たマヌカ蜂蜜発酵物、製造例4で得たマヌカ蜂蜜発酵物、製造例5で得たマヌカ蜂蜜発酵物、製造例6で得たマヌカ蜂蜜発酵物、又は、製造例7で得たマヌカ蜂蜜抽出物を1%となるよう水で希釈した溶液を調製した。
【0062】
上記で調製した溶液を、こめかみに塗布する操作を1日2回14日間実施した。対照として水を塗布した。
【0063】
塗布したこめかみの角層3層目をテープストリッピングにより採取し、リン酸緩衝液(0.05%、TritonX-100含有)にて抽出したものを試料液とした。
【0064】
前記試料液のトランスグルタミナーゼ1の活性測定を次の手順で行った。前記試料液に、基質としてベンジルオキシカルボニル-L-グルタミニルグリシンとヒドロキシルアミンを加えて反応を行った。反応により生成したヒドロキサム酸の鉄錯体を、トリクロロ酢酸存在下で形成させ、525nmの吸光を測定した。吸光度の測定値から、ヒドロキサム酸の量を検量線より求め、トランスグルタミナーゼ1活性を算出した。トランスグルタミナーゼ1活性測定の具体的な操作は以下の通りである。
【0065】
(活性測定法)
試薬A
0.2M トリス塩酸緩衝液(pH7.0)
0.1M ヒドロキシルアミン
0.01M 還元型グルタチオン
0.03M ベンジルオキシカルボニル-L-グルタミニルグリシン
試薬B
3N 塩酸
12% トリクロロ酢酸
5% FeCl3・6H2O (0.1N HClに溶解)
上記溶液の1:1:1の混合液を試薬Bとする。
【0066】
前記試料液の0.05mlに試薬A0.05mlを加えて混合し25℃で10分間反応後、試薬Bを加えて反応停止とFe錯体の形成を行った後525nmの吸光度を測定した。対照としてあらかじめ熱失活させた試料液を用いて同様に反応させたものの吸光度を測定し、試料液との吸光度差を求めた。別に試料液の代わりにL-グルタミン酸γ-モノヒドロキサム酸を用いて検量線を作成し、前記吸光度差より生成されたヒドロキサム酸の量を求め1分間に1μモルのヒドロキサム酸を生成する酵素活性を1単位とした。
【0067】
(試験結果)
表2で示したとおり、製造例7で得たマヌカ蜂蜜抽出物を塗布することで、水を塗布した場合に比べてトランスグルタミナーゼ1活性が1.2倍程度に増加した。製造例2で得たマヌカ蜂蜜発酵物または、製造例4で得たマヌカ蜂蜜発酵物を塗布することで、水を塗布した場合に比べてトランスグルタミナーゼ1活性が2倍程度増加した。製造例5で得たマヌカ蜂蜜発酵物または、製造例6で得たマヌカ蜂蜜発酵物を塗布した場合には、水を塗布した場合に比べてトランスグルタミナーゼ1活性は1.2倍程度の増加にとどまった。これより、製造例2で得たGluconobacter frateuriiによるマヌカ蜂蜜発酵物、及び、製造例4で得たAcetobacter acetiによるマヌカ蜂蜜発酵物はトランスグルタミナーゼ1活性を促進する効果を有することが分かった。
【0068】
【0069】
<試験例2>
(皮膚細菌叢を改変する作用についての試験)
細菌は固有の酵素を作り出す種があり、黄色ブドウ球菌はトリプシンを作り出し、表皮ブドウ球菌はセリンプロテアーゼを作り出すことが知られている。この2種類の酵素を指標に皮膚細菌叢の変化についての試験を行った。試験は、製造例2で得たマヌカ蜂蜜発酵物、若しくは製造例4で得たマヌカ蜂蜜発酵物、製造例5で得たマヌカ蜂蜜発酵物、製造例6で得たマヌカ蜂蜜発酵物、製造例7で得たマヌカ蜂蜜抽出物、又は、製造例8で得たアカシア蜂蜜発酵物を1%となるよう水で希釈した溶液を調製した。
【0070】
上記で調製した溶液を、頬に塗布する操作を1日2回14日間実施した。対照として水を塗布した。頬の表面をスワブでふき取り、テープストリッピングにより頬の細菌叢を採取し、リン酸緩衝液(0.05%、TritonX-100含有)にて抽出して試料液とした。
【0071】
0.1Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)中で試料液と、トリプシン又はセリンプロテアーゼの基質とを反応せしめ、トリプシン又はセリンプロテアーゼ酵素活性を測定した。測定された酵素活性を、黄色ブドウ球菌数又は表皮ブドウ球菌数の指標とした。
【0072】
(試験結果)
表3に示すごとく、製造例2で得たGluconobacter frateuriiによるマヌカ蜂蜜発酵物、又は、製造例4で得たAcetobacter acetiによるマヌカ蜂蜜発酵物を塗布した場合は、水を塗布した場合に比べて、黄色ブドウ球菌を1割程度削減せしめ、表皮ブドウ球菌を1割5分程度増加せしめた。これより、製造例2で得たマヌカ蜂蜜発酵物、及び、製造例4で得たマヌカ蜂蜜発酵物は皮膚細菌叢を改変する効果を有することが分かった。また、製造例5で得たAspergillus nigerによるマヌカ蜂蜜発酵物、製造例6で得たLactobacillus delbrueckiiによるマヌカ蜂蜜発酵物、又は、製造例8で得たGluconobacter frateuriiによるアカシア蜂蜜発酵物は、水を塗布した場合に比べて黄色ブドウ球菌及び表皮ブドウ球菌数に変動は認められなかった。
【0073】
【0074】
<試験例3>
(アレルゲンの侵入を防ぐ作用についての試験)
表皮角化細胞PHK16-0bを、製造例3で得たマヌカ蜂蜜発酵物凍結乾燥粉末を含むMCDB153培地中、又は前記粉末を含まないMCDB153培地(コントロール)中で、コンフルエントになるまで培養し、スギ花粉を添加し、一晩培養し、培養上澄を回収した。培養液中に分泌されたインターロイキン-1αを、インターロイキン-1αELISAキット(Peprotech社)により定量した。すなわち、培養液中のインターロイキン-1αを、キットのマイクロプレート上に固相化されたインターロイキン-1α抗体に結合させた後、ペルオキシダーゼ結合インターロイキン-1α抗体を添加して反応させ、次いで2,2’-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸]-ジアンモニウム塩を加え、405nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーにて測定した。インターロイキン-1α量を、標準インターロイキン-1α溶液を用いて同時に作成した検量線より算出した。
【0075】
(試験結果)
表4に示すごとく、製造例3で得たマヌカ蜂蜜発酵物凍結乾燥粉末を添加した場合は、コントロールと比べ、インターロイキン-1αの量を半減せしめた。これより、製造例3で得たマヌカ蜂蜜発酵物凍結乾燥粉末はアレルゲンの侵入を防ぐ効果を有することが分かった。
【0076】
【0077】
<試験例4>
(微細な異物の侵入を防ぐ作用についての試験)
表皮角化細胞PHK16-0bを、製造例3で得たマヌカ蜂蜜発酵物凍結乾燥粉末を含むMCDB153培地中、又は前記粉末を含まないMCDB153培地(コントロール)中で、コンフルエントになるまで培養し、大気中より得られる粉塵を添加し、一晩培養した。各wellより培養上澄を吸引除去し、PBS(-)で洗浄後、各wellにMCDB153培地を100μL/wellで添加して再びCO2インキュベーター内に1時間静置した。その後、Cell counting kit試薬を10μL/wellとなるように添加し、CO2インキュベーター内に2時間静置換した。WST-1ホルマザン生成量は生細胞数に対応することが知られているため、生成したWST-1ホルマザン量を、マイクロプレートリーダーにより波長450nmの吸光度を測定して求め、式1に従い細胞生存率を算出した。
(式1)
細胞生存率(%Control)
=(マヌカ蜂蜜発酵物を含む試験区のO.D.、又は、マヌカ蜂蜜発酵物を含まない試験区(コントロール)のO.D.)/(大気中より得られる粉塵を添加しない試験区のO.D.)×100
【0078】
(試験結果)
試験結果を表5に示す。これより、細胞生存率は、製造例3で得たマヌカ蜂蜜発酵物凍結乾燥粉末を添加しない場合で35%程度まで低下した。これに対して、製造例3で得たマヌカ蜂蜜発酵物凍結乾燥粉末を0.125%添加した場合で45%程度に、0.250%添加した場合で55%程度になった。これより、マヌカ蜂蜜発酵物は微細な異物の侵入を防ぐ効果を有することが分かった。
【0079】
【0080】
<試験例5>
(保湿試験)
被験者の前腕部に製造例2で得たマヌカ蜂蜜発酵物、製造例4で得たマヌカ蜂蜜発酵物、製造例5で得たマヌカ蜂蜜発酵物、製造例6で得たマヌカ蜂蜜発酵物、又は、製造例7で得たマヌカ蜂蜜抽出物をそのまま(濃度100重量%とする)、或いは、濃度50重量%となるよう調整した水溶液を塗布し、2時間後の経皮水分蒸散量を、経皮水分蒸散量(TEWL)測定装置(Tewameter TMHex、Courage+Khazaka社製)を用いて測定した。対照は生理食塩水とした。
【0081】
(試験結果)
試験結果を表6に示す。生理食塩水を塗布した場合に比べて、製造例2で得たマヌカ蜂蜜発酵物、又は、製造例4で得たマヌカ蜂蜜発酵物を100%の濃度で塗布したときは25%程度、50%の濃度で塗布したときは20%程度経皮水分蒸散量を抑制した。また、生理食塩水を塗布した場合に比べて、製造例5で得たマヌカ蜂蜜発酵物、又は、製造例6で得たマヌカ蜂蜜発酵物を100%の濃度で塗布したときは10%程度、50%の濃度で塗布したときは7%程度の経皮水分蒸散量抑制にとどまった。さらに、生理食塩水を塗布した場合に比べて、製造例7で得たマヌカ蜂蜜抽出物を100%の濃度で塗布したときは5%程度、50%の濃度で塗布したときは2%程度の経皮水分蒸散量抑制にとどまった。これにより、製造例2で得たGluconobacter frateuriiによるマヌカ蜂蜜発酵物、及び、製造例4で得たAcetobacter acetiによるマヌカ蜂蜜発酵物は、経皮水分蒸散量を抑制する効果を有することが分かった。
【0082】
【0083】
【0084】
表7の処方に従い、(1)~(10)を80℃で撹拌、溶解後室温に冷却し、化粧水を得た。得られた実施例1の化粧水は清澄であり、40℃、RH75% の条件下において6か月間白濁を生じることもなく安定であった。
なお、マヌカ蜂蜜発酵物を添加しないこと以外は上記の実施品と全く同様に行って化粧水を調製し、これを比較例1とした。
【0085】
実施例1及び比較例1の化粧水について、専門パネラー10名による官能試験を行った。評価は下記の項目について5段階の評点評価を実施した。
【0086】
(1)肌のしっとりさ
1.かさつく
2.ややかさつく
3.普通
4.ややしっとりする
5.しっとりする
【0087】
(2)肌の滑らかさ
1.ざらつく
2.ややざらつく
3.普通
4.やや滑らか
5.滑らか
【0088】
(3)肌のべたつき
1.べたつく
2.ややべたつく
3.普通
4.ややさっぱり
5.さっぱり
【0089】
パネラー10名の評点の平均を表8に示す。表8から明らかなように、マヌカ蜂蜜発酵物を配合した実施例1は、比較例1のマヌカ蜂蜜発酵物無配合のものより優れた保湿性と皮膚平滑性を示した。
【0090】
【0091】
【0092】
表9の処方に従い、(1)~(3)、(5)、(7)、(11)を混合した。ここに(4)、(6)、(8)、(9)を混合したものを添加した。さらに(10)を加えてpH6.5とした。
得られた実施例2の美容液は肌が滑らかとなり、肌をしっとりとさせるものであった。
【0093】
<実施例3>
(ボディジェル剤の製造)
【表10】
【0094】
表10の処方に従い、(1)、(2)、(5)、(6)、(7)を混合した。ここに、(4)、(8)を加熱溶解したものを添加した。さらに、(3)を添加した。
得られた実施例3のボディジェル剤は使用中にべたつかず、肌をしっとりとさせるものであった。
【0095】
【0096】
表11の処方に従い、(1)と(2)を加熱溶解し、60℃にした(3)、(4)、(5)を添加して撹拌した。ここに、(6)~(9)を添加して撹拌した。ここに、(10)をpH5.5~6.0となるように添加し、(12)、(13)を(11)に溶解して添加した。さらに(14)を添加して全量を100とした。
得られた実施例4のシャンプーを用いて洗髪したところ、髪の感触が滑らかとなり、髪に潤いを与えるものであった。
【0097】
【0098】
表12の処方に従い、(1)~(3)の各成分を混合撹拌し顆粒状浴用剤を調製した。
得られた実施例5の顆粒状浴用剤は肌をしっとりとさせ、使用後の体温の保温性に優れるものであった。
【0099】
【0100】
表13の処方に従い、(1)~(6)を80℃で混合撹拌したものに、別途(7)~(10)を80℃で混合撹拌したものを加えてホモジナイズし、撹拌しながら室温まで冷却し、クリーム剤を得た。
得られた実施例6のクリーム剤は、肌をしっとりとさせるものであった。