(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019703
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】光通信システム、及び光受信機
(51)【国際特許分類】
H04B 10/079 20130101AFI20230202BHJP
【FI】
H04B10/079
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124641
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】521335373
【氏名又は名称】株式会社協立テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA52
5K102PB01
5K102PB02
5K102PH31
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】使用する光ファイバの選択自由度を高めることが容易な光通信システム、及び光受信機を提供する。
【解決手段】光通信システム1は、光ファイバ6を介して光信号OSでデータを送信する光送信機3と、光ファイバ6を介してデータを受信する光受信機2とを備え、光受信機2は、光ファイバ6の光信号OSを電気信号ESに変換する受光素子22と、電気信号ESの論理レベルを反転させない非反転信号ESを出力するか反転させた反転信号IESを出力するかを切り替え可能な反転切替部24と、反転切替部24の出力信号が示すデータを取得する通信I/F部25(データ取得部)と、光送信機3からのデータの送信終了を判断する終了判定部211と、終了判定部211によって送信終了と判断されたとき、受光素子22の電気信号ESの論理レベルに基づいて反転切替部24を切り替える切替制御部212とを備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを介して光信号でデータを送信する光送信機と、
前記光ファイバを介して前記データを受信する光受信機とを備え、
前記光受信機は、
前記光ファイバの前記光信号を電気信号に変換する受光素子と、
前記電気信号の論理レベルを反転させない非反転信号を出力するか反転させた反転信号を出力するかを切り替え可能な反転切替部と、
前記反転切替部の出力信号が示すデータを取得するデータ取得部と、
前記光送信機からの前記データの送信終了を判断する終了判定部と、
前記終了判定部によって前記送信終了と判断されたとき、前記受光素子の前記電気信号の論理レベルに基づいて前記反転切替部を切り替える切替制御部とを備える光通信システム。
【請求項2】
前記終了判定部によって前記送信終了と判断されたとき、前記受光素子の前記電気信号の論理レベルを記憶するレベル記憶部と、
前記終了判定部によって前記送信終了と判断されたときであって、今回の前記電気信号の論理レベルと、前回前記レベル記憶部によって記憶された前記電気信号の論理レベルとが一致する場合、前記データ取得部によって取得されたデータを目的データとし、今回の前記電気信号の論理レベルと前回の前記電気信号の論理レベルとが一致しない場合、前記データ取得部によって取得されたデータを破棄する目的データ取得部をさらに備える請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
前記光送信機は、予め設定されたチェックデータを前記データとして送信すると共に前記チェックデータを送信した後の予め設定された禁止期間の間、前記光ファイバを介するデータの送信を禁止するチェック処理を、間隔を空けて繰り返し実行するチェック処理部を備える請求項1記載の光通信システム。
【請求項4】
前記終了判定部によって前記送信終了と判断されたとき、前記データ取得部によって取得されたデータと前記チェックデータとを比較し、前記データ取得部によって取得されたデータが前記チェックデータと異なる場合、前記データ取得部によって取得されたデータを目的データとし、前記データ取得部によって取得されたデータが前記チェックデータと一致する場合、前記データ取得部によって取得されたデータを破棄する目的データ取得部をさらに備える請求項3に記載の光通信システム。
【請求項5】
前記目的データ取得部は、前記目的データを外部へ出力する請求項2又は4に記載の光通信システム。
【請求項6】
前記光送信機は、外部から受信したデータを前記データとして前記光受信機へ送信すると共に前記データを送信した後の予め設定された禁止期間の間、前記光ファイバを介するデータの送信を禁止する外部データ送信部を備える請求項1~5のいずれか1項に記載の光通信システム。
【請求項7】
前記光送信機は、外部から受信したデータを、前記チェックデータの送信期間及び前記禁止期間を避けて前記光ファイバを介して前記光受信機へ送信する外部データ送信部を備える請求項3又は4に記載の光通信システム。
【請求項8】
光送信機から光ファイバを介して光信号で表されたデータを受信する光受信機であって、
前記光ファイバの前記光信号を電気信号に変換する受光素子と、
前記電気信号の論理レベルを反転させない非反転信号を出力するか反転させた反転信号を出力するかを切り替え可能な反転切替部と、
前記反転切替部の出力信号が示すデータを取得するデータ取得部と、
前記光送信機からの前記データの送信終了を判断する終了判定部と、
前記終了判定部によって前記送信終了と判断されたとき、前記受光素子の前記電気信号の論理レベルに基づいて前記反転切替部を切り替える切替制御部とを備える光受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に用いられる光通信システム、及び光受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各局間を光ファイバで接続し、光ファイバを介して光信号を送受信することにより光通信を行う光通信装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光通信用の光ファイバは、数多くのメーカから、種々の光ファイバが市販されている。光通信装置に接続する光ファイバとして、光通信装置のメーカ指定の光ファイバを使用する場合は何ら問題はない。しかしながら、コストや入手のし易さの関係でメーカ指定されていない光ファイバを使用したい場合や、そもそも光ファイバが指定されていない場合もある。
【0005】
本発明の発明者らは、光通信装置と光ファイバの組み合わせによって、光信号の論理が反転して正常に通信できなくなる場合があることを見出した。
【0006】
本発明の目的は、使用する光ファイバの選択自由度を高めることが容易な光通信システム、及び光受信機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光通信システムは、光ファイバを介して光信号でデータを送信する光送信機と、前記光ファイバを介して前記データを受信する光受信機とを備え、前記光受信機は、前記光ファイバの前記光信号を電気信号に変換する受光素子と、前記電気信号の論理レベルを反転させない非反転信号を出力するか反転させた反転信号を出力するかを切り替え可能な反転切替部と、前記反転切替部の出力信号が示すデータを取得するデータ取得部と、前記光送信機からの前記データの送信終了を判断する終了判定部と、前記終了判定部によって前記送信終了と判断されたとき、前記受光素子の前記電気信号の論理レベルに基づいて前記反転切替部を切り替える切替制御部とを備える。
【0008】
また、本発明に係る光受信機は、光送信機から光ファイバを介して光信号で表されたデータを受信する光受信機であって、前記光ファイバの前記光信号を電気信号に変換する受光素子と、前記電気信号の論理レベルを反転させない非反転信号を出力するか反転させた反転信号を出力するかを切り替え可能な反転切替部と、前記反転切替部の出力信号が示すデータを取得するデータ取得部と、前記光送信機からの前記データの送信終了を判断する終了判定部と、前記終了判定部によって前記送信終了と判断されたとき、前記受光素子の前記電気信号の論理レベルに基づいて前記反転切替部を切り替える切替制御部とを備える。
【0009】
この構成によれば、データの送信終了後のアイドル状態において受光素子から出力された電気信号の論理レベルに基づいて、データ取得部に入力される信号が非反転信号か反転信号かに切り替えられるので、光信号の論理が反転しない光ファイバ及び光信号の論理が反転する光ファイバのうちいずれを用いた場合でも、光通信が可能となる。従って、使用する光ファイバの選択自由度を高めることが容易となる。
【0010】
また、前記終了判定部によって前記送信終了と判断されたとき、前記受光素子の前記電気信号の論理レベルを記憶するレベル記憶部と、前記終了判定部によって前記送信終了と判断されたときであって、今回の前記電気信号の論理レベルと、前回前記レベル記憶部によって記憶された前記電気信号の論理レベルとが一致する場合、前記データ取得部によって取得されたデータを目的データとし、今回の前記電気信号の論理レベルと前回の前記電気信号の論理レベルとが一致しない場合、前記データ取得部によって取得されたデータを破棄する目的データ取得部をさらに備えることが好ましい。
【0011】
今回の前記電気信号の論理レベルと前回の前記電気信号の論理レベルとが一致しない場合、前回と今回の間で、光ファイバによる論理反転の発生状況が変化したことになる。この場合、データ取得部によって取得されたデータは、正しく受信されていないことになるので破棄し、今回と前回とで前記電気信号の論理レベルが一致する場合はデータ取得部によって取得されたデータを目的データとする。これにより、正しく受信されたデータのみを目的データとすることができる。
【0012】
また、前記光送信機は、予め設定されたチェックデータを前記データとして送信すると共に前記チェックデータを送信した後の予め設定された禁止期間の間、前記光ファイバを介するデータの送信を禁止するチェック処理を、間隔を空けて繰り返し実行するチェック処理部を備えることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、間隔を空けて繰り返し光送信機から光受信機2へチェックデータが送信される。その結果、光受信機において、受信されたチェックデータ送信終了後の禁止期間において受光素子から出力された電気信号の論理レベルに基づいて、データ取得部に入力される信号が非反転信号か反転信号かに、間隔を空けて繰り返し切り替えられるので、例え論理反転の発生状況が変化した場合であっても、所定間隔で正常に通信可能な状態にすることができる。その結果、光通信が正常に実行できる確実性が向上する。
【0014】
また、前記終了判定部によって前記送信終了と判断されたとき、前記データ取得部によって取得されたデータと前記チェックデータとを比較し、前記データ取得部によって取得されたデータが前記チェックデータと異なる場合、前記データ取得部によって取得されたデータを目的データとし、前記データ取得部によって取得されたデータが前記チェックデータと一致する場合、前記データ取得部によって取得されたデータを破棄する目的データ取得部をさらに備えることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、データ内容そのものには意味のないチェックデータが破棄され、本来の通信の目的であるデータのみが目的データとして取得される。
【0016】
また、前記目的データ取得部は、前記目的データを外部へ出力することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、光受信機は、光送信機から受信したデータを外部の機器等へ出力することができる。
【0018】
また、前記光送信機は、外部から受信したデータを前記データとして前記光受信機へ送信すると共に前記データを送信した後の予め設定された禁止期間の間、前記光ファイバを介するデータの送信を禁止する外部データ送信部を備えることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、外部から受信したデータの光受信機への送信終了後の禁止期間において、光受信機の切替制御部が、受光素子の電気信号の論理レベルに基づいて反転切替部を切り替えることができる。
【0020】
また、前記光送信機は、外部から受信したデータを、前記チェックデータの送信期間及び前記禁止期間を避けて前記光ファイバを介して前記光受信機へ送信する外部データ送信部を備えることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、光送信機は、外部から受信したデータを光通信によって光受信機へ送信することができる。
【発明の効果】
【0022】
このような構成の光通信システム、及び光通信方法は、使用する光ファイバの選択自由度を高めることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光通信システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す光受信機の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】
図2に示すデータ転送処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図2に示すチェック処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図1に示す光受信機の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図1に示す光受信機の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】光通信装置と光ファイバの組み合わせ試験の試験構成である。
【
図8】
図7に示す発光素子に入力したシリアルデータの信号波形図である。
【
図9】サンプルAについてオシロスコープで観測された出力信号の信号波形図である。
【
図10】サンプルBについてオシロスコープで観測された出力信号の信号波形図である。
【
図11】サンプルCについてオシロスコープで観測された出力信号の信号波形図である。
【
図12】サンプルDについてオシロスコープで観測された出力信号の信号波形図である。
【
図13】サンプルEについてオシロスコープで観測された出力信号の信号波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る光通信システムの一例を示すブロック図である。
図1に示す光通信システム1は、光受信機2と、光送信機3とを備える。
【0025】
光送信機3は、光ファイバ6を介して光信号でデータを送信する。光受信機2は、光ファイバ6を介して光送信機3からデータを受信する。
【0026】
光送信機3は、外部に送信側端末装置4を接続可能にされている。送信側端末装置4は、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置であってよい。光受信機2は、外部に受信側端末装置5を接続可能にされている。受信側端末装置5は、例えば計測装置その他の電子機器であってもよく、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置であってよい。
【0027】
図1に示す光通信システム1によれば、例えば受信側端末装置5と光受信機2とを電波暗室内に配置し、送信側端末装置4と光送信機3とを電波暗室外に配置し、光送信機3と光受信機2とを光ファイバ6で接続することによって、送信側端末装置4と受信側端末装置5との間の通信信号によるノイズの電波暗室内での発生を低減することが可能となる。
【0028】
光送信機3は、制御部31、外部I/F(インターフェイス)部32、バッファメモリ33、通信I/F部34、及び発光素子35を備える。外部I/F部32は、送信側端末装置4との間でデータ送受信可能なインターフェイス回路である。
【0029】
制御部31は、例えばマイクロコンピュータである。制御部31は、例えば所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶部、周期タイマT1、禁止タイマT2、およびこれらの周辺回路等を用いて構成されている。そして、制御部31は、予め記憶部に記憶された制御プログラムを実行することによって、チェック処理部311、及び外部データ送信部312として機能する。
【0030】
周期タイマT1は、チェックデータCDの送信周期を計時するタイマである。周期タイマT1は、計時開始後、予め設定された設定周期cycが経過するとタイプアップし、再度起動されると再び最初から設定周期cycを計時する。設定周期cycは、例えば1~9秒程度が好適である。
【0031】
禁止タイマT2は、禁止期間PPを計時するタイマである。禁止タイマT2は、計時開始後、予め設定された禁止期間PPが経過するとタイプアップし、再度起動されると再び最初から禁止期間PPを計時する。禁止期間PPは、例えば1秒以下とすることができ、例えば100msec~900msec程度が好適である。
【0032】
チェック処理部311は、予め設定されたチェックデータCDを光受信機2へ送信すると共にチェックデータCDを送信した後の予め設定された禁止期間PPの間、光ファイバ6を介するデータの送信を禁止するチェック処理を、間隔を空けて繰り返し実行する。
【0033】
外部データ送信部312は、送信側端末装置4から受信したデータを、チェックデータCDの送信期間及び禁止期間PPを避けて光ファイバ6を介して光受信機2へ送信する。
【0034】
通信I/F部34は、制御部31から出力されたデータを、所定の通信プロトコルに応じたシリアル信号に変換して発光素子35へ出力する通信インターフェイス回路である。
【0035】
発光素子35は、例えば発光ダイオードや半導体レーザ等を用いて構成された発光デバイスである。発光素子35は、通信I/F部34から出力されたシリアル信号を光信号OSに変換し、光ファイバ6を介して光受信機2へ送信する。
【0036】
光受信機2は、制御部21、受光素子22、反転切替部24、通信I/F部25(データ取得部)、及び外部I/F部26を備える。
【0037】
受光素子22は、例えばフォトダイオード等を用いて構成された受光デバイスである。受光素子22は、光ファイバ6を介して送られてきた光信号OSを、電気信号ESに変換する。受光素子22は、光信号OSの発光/消灯を、例えば電気信号ESのハイ(H)レベル/ロー(L)レベルの論理レベルに変換し、反転切替部24及び制御部21へ出力する。
【0038】
反転切替部24は、電気信号ESの論理レベルを反転させない非反転信号、すなわち電気信号ESをそのまま通信I/F部25へ出力するか、反転させた反転信号IESを通信I/F部25へ出力するかを切り替え可能な切替回路である。反転切替部24は、インバータ241と、切替スイッチ242とを備える。インバータ241は、電気信号ESの論理レベルを反転させた反転信号IESを切替スイッチ242へ出力する。
【0039】
切替スイッチ242は、制御部21からの制御信号に応じて、通信I/F部25の入力端子に、受光素子22の出力端子を接続するか、インバータ241の出力端子を接続するか、すなわち電気信号ESを通信I/F部25へ出力するか、反転信号IESを通信I/F部25へ出力するかを切り替える。
【0040】
通信I/F部25は、反転切替部24から出力された信号が示すデータを、通信I/F部34と同じ通信プロトコルに基づいて取得し、制御部21へ出力する通信インターフェイス回路である。外部I/F部26は、受信側端末装置5との間でデータ送受信可能なインターフェイス回路である。
【0041】
制御部21は、例えばマイクロコンピュータである。制御部21は、例えば所定の演算処理を実行するCPU、データを一時的に記憶するRAM、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶部、終了判定タイマT3、およびこれらの周辺回路等を用いて構成されている。そして、制御部21は、予め記憶部に記憶された制御プログラムを実行することによって、終了判定部211、切替制御部212、レベル記憶部213、及び目的データ取得部214として機能する。
【0042】
終了判定タイマT3は、光送信機3からのデータの送信終了を判定するためのタイマである。終了判定タイマT3は、計時開始後、予め設定された終了判定時間Eが経過するとタイプアップし、再度起動されると再び最初から終了判定時間Eを計時する。終了判定時間Eは、例えば送信側端末装置4から連続してデータ送信が継続されることが通常あり得ない時間とし、かつマージン確保のため禁止期間PPの半分以下の時間が好適である。
【0043】
終了判定部211は、光送信機3からのデータの送信終了を判断する。切替制御部212は、終了判定部211によって送信終了と判断されたとき、受光素子の電気信号の論理レベルに基づいて反転切替部24の切替スイッチ242を切り替える。
【0044】
レベル記憶部213は、終了判定部211によって光送信機3の送信終了と判断されたとき、受光素子22の電気信号ESの論理レベルを例えばRAMに記憶させる。
【0045】
目的データ取得部214は、終了判定部211によって送信終了と判断されたときであって、今回の電気信号ESの論理レベルと、前回レベル記憶部213によってRAMに記憶された電気信号ESの論理レベルとが一致する場合、通信I/F部25によって取得されたデータを目的データとし、今回の電気信号ESの論理レベルと前回の電気信号ESの論理レベルとが一致しない場合、通信I/F部25によって取得されたデータを破棄する。
【0046】
次に、本発明の発明者らが見出した、光通信における課題、すなわち光通信装置と光ファイバの組み合わせによって、光信号の論理が反転して正常に通信できなくなる場合があることについて説明する。
【0047】
図7は、光通信装置と光ファイバの組み合わせ試験の試験構成である。発光素子と受光素子を光ファイバFで接続し、シリアルデータSDを発光素子に入力して発光させ、受光素子から出力された出力信号OUTの波形をオシロスコープで観測した。
【0048】
発光素子としては、エバーライト社(中国)製Photo-link Light Transmitter Unit PLT133/T9を用いた。受光素子としては、エバーライト社(中国)製Photolink-Fiber Optic Receiver PLR135/T9を用いた。出力信号OUTの波形観測に用いたオシロスコープは、ヒューレットパッカード社製54645B(500MHz)である。
【0049】
シリアルデータSDは、1200bps、データビット幅8ビット、パリティビット無し、ストップビット1ビットとし、データはアスキーコードで「Z」(16進数で「5A」)とした。
【0050】
光ファイバFとしては、2品種、5サンプルを用いて試験を行った。サンプルA,Bは、フジパーツ社製HK-200、20mである。サンプルC,D,Eは、中国のケーブルクリエーション社製CF0005、15mである。
【0051】
図8は、
図7に示す発光素子に入力したシリアルデータSDの信号波形図である。
図9~
図13は、オシロスコープで観測された出力信号OUTの信号波形図である。
図8~
図13の縦軸は一目盛り2Vである。
図8~
図13の横軸は、(a)が一目盛り2msec、(b)が一目盛り100msecである。
図9~
図13で使用した光ファイバFは、
図9がサンプルA、
図10がサンプルB、
図11がサンプルC、
図12がサンプルD、
図13がサンプルEである。
【0052】
図11、
図12に示すように、サンプルC,Dは
図8の入力されたシリアルデータSDと同じ信号波形となっている。一方、
図9、
図10、
図13に示すように、サンプルA,B,Eは
図8の入力されたシリアルデータSDが反転した信号波形となっている。
【0053】
このように、本発明者らは、光ファイバFによって、光信号の論理が反転する場合があることを見出した。特に、
図11(サンプルC)、
図12(サンプルD)、
図13(サンプルE)は、同じメーカの同じ型式長さの光ファイバであるにも関わらず、サンプルC,Dは反転が生じず、サンプルEのみ反転する結果となった。このことから、光信号の論理反転が生じるか否かは、不安定であると考えられ、経年劣化や環境温度等によって発生状況が変化するおそれがあると考えられる。
【0054】
以下、
図1に示す光通信システム1の動作について説明する。
図2は、
図1に示す光受信機2の動作の一例を示すフローチャートである。まず、チェック処理部311は、周期タイマT1を起動して、周期タイマT1による設定周期cycの計時を開始させる(ステップS1)。
【0055】
次に、外部データ送信部312は、送信側端末装置4からデータが送信されたか否かを確認する(ステップS2)。外部データ送信部312は、外部I/F部32によってデータが受信されていれば送信側端末装置4からのデータ送信有として(ステップS2でYES)、データ転送処理へ移行する(ステップS3)。
【0056】
図3は、
図2に示すデータ転送処理の一例を示すフローチャートである。まず、外部データ送信部312は、送信側端末装置4からの一連の送信データを、通信I/F部34を介して受信し、バッファメモリ33に記憶させる(ステップS11)。
【0057】
次に、外部データ送信部312は、禁止タイマT2がタイムアップしているか否かを確認する(ステップS12)。そして、禁止タイマT2がタイムアップしていなければ(ステップS12でNO)、外部データ送信部312は、タイムアップするまで待って(ステップS12でYES)、バッファメモリ33に記憶された、送信側端末装置4からのデータを、通信I/F部34、発光素子35、及び光ファイバ6を介して光通信で光受信機2へ送信する(ステップS13)。
【0058】
そして、外部データ送信部312は、データの送信を終了した後に禁止タイマT2による禁止期間PPの計時を開始させ(ステップS14)、再びステップS1へ処理を移行する。
【0059】
禁止タイマT2は、ステップS14及び後述するステップS23で起動される。従って、ステップS12によって、送信側端末装置4からのデータ、又はチェックデータCDの送信終了後、禁止期間PPの間、送信側端末装置4からのデータの送信が禁止される。
【0060】
一方、ステップS2において、外部I/F部32によってデータが受信されていなければ、外部データ送信部312は、送信側端末装置4からのデータ送信無として(ステップS2でNO)、ステップS4へ移行する。
【0061】
ステップS4では、チェック処理部311は、周期タイマT1がタイムアップしているか否かを確認する(ステップS4)。そして、チェック処理部311は、周期タイマT1がタイムアップしていなければ(ステップS4でNO)、再びステップS2~S4の処理を繰り返す。
【0062】
一方、周期タイマT1がタイムアップしていれば(ステップS4でYES)、チェック処理部311は、チェック処理を実行する(ステップS5)。
【0063】
図4は、
図2に示すチェック処理の一例を示すフローチャートである。まず、チェック処理部311は、禁止タイマT2がタイムアップしているか否かを確認する(ステップS21)。そして、禁止タイマT2がタイムアップしていなければ(ステップS21でNO)、チェック処理部311は、タイムアップするまで待って(ステップS21でYES)、予め設定されたチェックデータCDを、通信I/F部34、発光素子35、及び光ファイバ6を介して光通信で光受信機2へ送信する(ステップS22)。
【0064】
これにより、チェックデータCDは、禁止期間PPを避けて略設定周期cycで繰り返し送信される。チェックデータCDは、通常、光送信機3が光受信機2へ送信しないようなデータであることが好ましい。
【0065】
次に、チェック処理部311は、チェックデータCDの送信を終了した後に禁止タイマT2による禁止期間PPの計時を開始させ(ステップS23)、再びステップS1へ処理を移行する。
【0066】
以上、ステップS1~S23の処理により、チェックデータCDが略設定周期cycで繰り返し送信され、禁止期間PPの間、光送信機3から光受信機2へのデータ送信が禁止される。
【0067】
次に、
図1に示す光受信機2の動作について説明する。
図5、
図6は、
図1に示す光受信機2の動作の一例を示すフローチャートである。まず、目的データ取得部214は、通信I/F部25でデータが1バイト受信されるまで待機し(ステップS31でNO)、データが1バイト受信されたら(ステップS31でYES)、通信I/F部25で受信されたデータを取得し(ステップS32)、例えばRAMに記憶させる。
【0068】
次に、終了判定部211は、終了判定タイマT3を起動して、終了判定タイマT3による終了判定時間Eの計時を開始させる(ステップS33)。
【0069】
次に、目的データ取得部214は、新たに通信I/F部25でデータが1バイト受信されたか否か確認し(ステップS34)、受信されたら(ステップS34でYES)ステップS32~S33を繰り返し、光送信機3から送信された一連のデータを取得して例えばRAMへ記憶させる。
【0070】
一方、受信されていなければ(ステップS34でNO)、終了判定部211は、終了判定タイマT3がタイムアップしているか否かを確認する(ステップS35)。そして、終了判定タイマT3は、終了判定タイマT3がタイムアップしていなければ(ステップS35でNO)、まだ光送信機3の送信が終了していないおそれがあるため、受信を継続するべくステップS34へ処理を移行する。
【0071】
一方、終了判定タイマT3がタイムアップしていれば(ステップS35でYES)、終了判定部211は、光送信機3からのデータの送信終了と判断し、ステップS36へ処理を移行する。なお、終了判定タイマT3を用いてデータの受信開始からの経過時間に基づいて、光送信機3からのデータの送信終了を判断する例を示したが、終了判定部211は、光送信機3からのデータの送信終了を判断することができればよく、時間に基づき送信終了を判断する例に限らない。
【0072】
ステップS36において、レベル記憶部213は、受光素子22の電気信号ESの論理レベルを読み取って、例えばRAMに記憶させる(ステップS36)。
【0073】
次に、切替制御部212は、レベル記憶部213によって読み取られた電気信号ESがハイレベルであった場合(ステップS37でYES)、反転切替部24で電気信号ESを反転させることなく電気信号ESを通信I/F部25へ出力させ(ステップS38)、ステップS41へ処理を移行する。
【0074】
一方、電気信号ESがローレベルであった場合(ステップS37でNO)、切替制御部212は、反転切替部24で電気信号ESを反転させて反転信号IESを通信I/F部25へ出力させ(ステップS39)、ステップS41へ処理を移行する。
【0075】
光送信機3からのデータの送信が終了した後(ステップS35でYES)は通信がアイドル状態であるから、ステップS36で読み取られた電気信号ESは、光送信機3の送信データとは無関係に、光ファイバ6によって送信された光信号OSが受光素子22で受信された際に光信号OSの論理が反転するか否かを示すことになる。
【0076】
ステップS37~S39は、正常な光通信において、アイドル状態で電気信号ESがハイレベルになるべきである場合に実行すべき処理を示しており、光信号OSが論理反転していなければステップS37でYESとなって、正常な電気信号ESが通信I/F部25へ出力される(ステップS38)。その結果、通信I/F部25が、正常なデータを受信することが可能となる。
【0077】
一方、光信号OSが論理反転して正常でなければ、ステップS37でNOとなって、電気信号ESが反転され、正常な論理に戻された反転信号IESが通信I/F部25へ出力される。その結果、例えば発光素子35又は受光素子22と光ファイバ6との組み合わせによって、信号の論理反転が生じた場合であっても、通信I/F部25が正常なデータを受信することが可能となる。
【0078】
正常な光通信において、アイドル状態で電気信号ESがローレベルになるべきである場合には、ステップS38とステップS39とを入れ替えて実行すればよい。
【0079】
これにより、例えば上述のサンプルA~Eのいずれの光ファイバを光ファイバ6として用いた場合であっても、正常に光通信を行うことができるので、使用する光ファイバの選択自由度を高めることが容易となる。
【0080】
次に、ステップS41において、目的データ取得部214は、今回レベル記憶部213によって記憶された電気信号ESの論理レベルと、前回レベル記憶部213によって記憶された電気信号ESの論理レベルとを比較する(ステップS41)。そして、今回の電気信号ESの論理レベルと、前回の電気信号ESの論理レベルとが同一であれば(ステップS41でYES)、ステップS42へ処理を移行する。
【0081】
一方、今回の電気信号ESの論理レベルと、前回の電気信号ESの論理レベルとが同一でなければ(ステップS41でNO)、目的データ取得部214はステップS45へ処理を移行し、ステップS32で取得したデータを破棄(ステップS45)してステップS31へ処理を移行する。
【0082】
受信信号の論理反転が生じる現象は、光ファイバ6、発光素子35、又は受光素子22の経年劣化や環境温度等によって、発生状況が変化するおそれがある。そのため、今回の電気信号ESの論理レベルと、前回の電気信号ESの論理レベルとが同一でなければ(ステップS41でNO)、前回と今回の間で論理レベルの発生状態が変化したと考えられる。この場合、ステップS32で取得したデータは正常に受信されたデータでないおそれがあるためそのデータを破棄(ステップS45)してステップS31へ処理を移行する。
【0083】
一方、今回の電気信号ESの論理レベルと、前回の電気信号ESの論理レベルとが同一であれば(ステップS41でYES)、前回ステップS37~S39で設定された反転切替部24における切替スイッチ242の切替状態においてステップS32で取得されたデータは、正常に受信されたデータであると考えられる。従って、データを破棄することなくステップS42へ移行する。
【0084】
次に、目的データ取得部214は、ステップS32で取得されたデータとチェックデータCDとを比較する(ステップS42)。そして、ステップS32で取得されたデータがチェックデータCDであれば(ステップS42でYES)、目的データ取得部214は、そのデータを破棄(ステップS45)してステップS31へ処理を移行する。
【0085】
一方、ステップS32で取得されたデータがチェックデータCDでなければ(ステップS42でNO)、そのデータは送信側端末装置4から送信されたデータであると考えられるので、目的データ取得部214は、そのデータを目的データとする(ステップS43)。
【0086】
次に、目的データ取得部214は、目的データを、外部I/F部26を介して外部の受信側端末装置5へ送信し(ステップS44)、ステップS31へ処理を移行する。
【0087】
また、ステップS1,S4,S5によって、設定周期cycで周期的に光送信機3から光受信機2へチェックデータCDが送信される。その結果、光受信機2において、受信されたチェックデータCDに基づいてステップS31~S39が実行されるので、少なくとも設定周期cycで、論理反転の状況に応じて反転切替部24の切替スイッチ242が切り替えられる。
【0088】
従って、例え上述した経年劣化や環境温度等によって論理反転の発生状況が変化した場合であっても、少なくとも設定周期cycで正常に通信可能な状態にすることができる。その結果、送信側端末装置4から受信側端末装置5へ送信しようとする本来の送信目的となるデータが受信側端末装置5において正常に受信できる確実性が向上する。
【0089】
なお、光受信機2と受信側端末装置5とが別個の装置である必要はなく、単一の受信側端末装置5の一部として光受信機2が組み込まれていてもよい。また、光送信機3と送信側端末装置4とが別個の装置である必要はなく、単一の送信側端末装置4の一部として光送信機3が組み込まれていてもよい。
【0090】
また、光送信機3は、チェック処理部311を備えていなくてもよく、ステップS1,S4,S5を実行しなくてもよく、光受信機2の目的データ取得部214は、ステップS42を実行しなくてもよい。
【0091】
また、光受信機2は、ステップS31~S45を常時実行する例に限らない。光受信機2は、例えばステップS31~S45を1回実行し、反転切替部24による切り替え(信号の選択)を実行した後はその切替状態を固定したままデータを受信する構成であってもよい。また、光受信機2は、レベル記憶部213を備えず、ステップS36,S41を実行しなくてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 光通信システム
2 光受信機
3 光送信機
4 送信側端末装置
5 受信側端末装置
6 光ファイバ
21,31 制御部
22 受光素子
24 反転切替部
25 通信I/F部(データ取得部)
26,32 外部I/F部
33 バッファメモリ
34 通信I/F部
35 発光素子
211 終了判定部
212 切替制御部
213 レベル記憶部
214 目的データ取得部
241 インバータ
242 切替スイッチ
311 チェック処理部
312 外部データ送信部
CD チェックデータ
cyc 設定周期
E 終了判定時間
ES 電気信号(非反転信号)
F 光ファイバ
IES 反転信号
OS 光信号
OUT 出力信号
PP 禁止期間
SD シリアルデータ
T1 周期タイマ
T2 禁止タイマ
T3 終了判定タイマ