IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ササクラの特許一覧

<>
  • 特開-バルブの漏洩検知装置および方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001971
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】バルブの漏洩検知装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/26 20060101AFI20221227BHJP
   G01M 3/04 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
G01M3/26 R
G01M3/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102914
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕介
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA37
2G067BB02
2G067BB07
2G067BB14
2G067BB22
2G067CC04
2G067DD02
(57)【要約】
【課題】 電力を必要とすることなく、バルブのグランド部からの漏洩ガスを容易に検知することができるバルブの漏洩検知装置を提供する。
【解決手段】 バルブ50のグランド部54からの流体の漏洩を検知する装置であって、グランド部54からの漏洩流体を導くリーク流路10と、リーク流路10に接続されたパイロット式切換弁20と、リーク流路10から分岐してパイロット式切換弁20にパイロット圧を導くパイロット流路30と、リーク流路10にパイロット式切換弁20を介して接続される排出流路40とを備え、パイロット式切換弁20は、パイロット圧が設定圧力以上になると、リーク流路10を排出流路40に連通する一方、パイロット圧が設定圧力未満になると、リーク流路10を排出流路40から遮断するバルブの漏洩検知装置1である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブのグランド部からの流体の漏洩を検知する装置であって、
前記グランド部からの漏洩流体を導くリーク流路と、
前記リーク流路に接続されたパイロット式切換弁と、
前記リーク流路から分岐して前記パイロット式切換弁にパイロット圧を導くパイロット流路と、
前記リーク流路に前記パイロット式切換弁を介して接続される排出流路とを備え、
前記パイロット式切換弁は、前記パイロット圧が設定圧力以上になると、前記リーク流路を前記排出流路に連通する一方、前記パイロット圧が設定圧力未満になると、前記リーク流路を前記排出流路から遮断するバルブの漏洩検知装置。
【請求項2】
前記パイロット圧を検出する圧力検出部を更に備える請求項1に記載のバルブの漏洩検知装置。
【請求項3】
前記パイロット流路に絞り弁が設けられている請求項1または2に記載のバルブの漏洩検知装置。
【請求項4】
前記排出流路に逆止弁が設けられている請求項1から3のいずれかに記載のバルブの漏洩検知装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のバルブの漏洩検知装置を用いたバルブの漏洩検知方法であって、
前記バルブは、低温流体が通過する内管と前記内管を覆う外管との間に真空層が形成された真空二重配管に接続されており、
前記排出流路を前記真空層に接続して、前記内管を通過する低温流体の漏洩を検知するバルブの漏洩検知方法。
【請求項6】
前記低温流体は液化水素である請求項5に記載のバルブの漏洩検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブの漏洩検知装置および方法に関し、より詳しくは、バルブのグランド部からの漏洩を検知するバルブの漏洩検知装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブのグランド部からの漏洩ガスを検知するため、バルブにキリ穴を形成して、当該キリ穴から大気に放出される漏洩ガスを検知器などで確認することが従来から行われている。ところが、この漏洩検知方法は、大気開放が問題になるおそれがある漏洩ガス(例えば水素)の場合には、採用が困難である。
【0003】
グランド部からのグランドリークを検知する方法として、特許文献1には、原子炉格納容器内の弁のグランド部から漏洩流体が導かれるリークオフラインに電磁弁および圧力トランスミッタを設けて、電磁弁を閉じた状態で圧力値が設定値を超えると、警報が出力されることが記載されている。漏洩検知後は、電磁弁操作スイッチの操作により電磁弁を開放し、漏洩流体をLCWサンプに案内して処理することで、漏洩流体の大気への放出が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-136795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1の漏洩検知方法は、リークオフライン内の圧力上昇により警報を出力することで、流体温度に依存しない漏洩検知が可能とされているが、漏洩検知後は、電磁弁を開いて圧力を逃がした後に電磁弁を再び閉じる必要があるため、このような電磁弁操作スイッチの操作が煩雑になるという問題があった。また、電磁弁を作動させる電力が必要になるため、設置場所の制約を受けるおそれがあった。
【0006】
そこで、本発明は、電力を必要とすることなく、バルブのグランド部からの漏洩ガスを容易に検知することができるバルブの漏洩検知装置および方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、バルブのグランド部からの流体の漏洩を検知する装置であって、前記グランド部からの漏洩流体を導くリーク流路と、前記リーク流路に接続されたパイロット式切換弁と、前記リーク流路から分岐して前記パイロット式切換弁にパイロット圧を導くパイロット流路と、前記リーク流路に前記パイロット式切換弁を介して接続される排出流路とを備え、前記パイロット式切換弁は、前記パイロット圧が設定圧力以上になると、前記リーク流路を前記排出流路に連通する一方、前記パイロット圧が設定圧力未満になると、前記リーク流路を前記排出流路から遮断するバルブの漏洩検知装置により達成される。
【0008】
このバルブの漏洩検知装置は、前記パイロット圧を検出する圧力検出部を更に備えることが好ましい。
【0009】
前記パイロット流路には、絞り弁が設けられていることが好ましい。
【0010】
前記排出流路には、逆止弁が設けられていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の前記目的は、上記のバルブの漏洩検知装置を用いたバルブの漏洩検知方法であって、前記バルブは、低温流体が通過する内管と前記内管を覆う外管との間に真空層が形成された真空二重配管に接続されており、前記排出流路を前記真空層に接続して、前記内管を通過する低温流体の漏洩を検知するバルブの漏洩検知方法により達成される。前記低温流体は、液化水素を例示することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電力を必要とすることなく、バルブのグランド部からの漏洩ガスを容易に検知することができるバルブの漏洩検知装置および方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るバルブの漏洩検知装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るバルブの漏洩検知装置の概略構成図である。図1に示すバルブの漏洩検知装置(以下、単に「漏洩検知装置」という)1は、真空二重配管100に接続されたバルブ50のグランドリークを検知するものである。
【0015】
真空二重配管100は、ステンレス等の金属材料からなる内菅101および外管102を備えており、内管101の内部を、液化水素、液化アンモニア、液化ヘリウム、液化窒素、液化酸素等の低温流体が矢示F方向に通過する。
【0016】
外管102は、内管101を覆うように内管101と同心状に配置されており、内管101と外管102との間に真空層103が形成されている。真空層103は、真空ポンプ(図示せず)による真空引きが行われて、内管101を真空断熱する。
【0017】
バルブ50は、弁箱51と、弁箱51内に配置された弁体52と、弁体52を回動自在に支持する弁軸53とを備えている。弁箱51の上流側および下流側は、内管101の上流側部分および下流側部分に対してボルト・ナット等の締結具で気密にフランジ結合されており、弁体52を弁軸53まわりに回転させることで、内管101の流路を開閉することができる。
【0018】
本実施形態の漏洩検知装置1は、上記のバルブ50におけるグランド部54からの漏洩流体を導くリーク流路10と、リーク流路10に接続されたパイロット式切換弁20と、リーク流路10から分岐してパイロット式切換弁20にパイロット圧を導くパイロット流路30と、リーク流路10にパイロット式切換弁20を介して接続される排出流路40とを備えている。リーク流路10、パイロット流路30および排出流路40は、例えば配管により構成される。
【0019】
パイロット式切換弁20は、受圧室にパイロットエアが供給されることにより作動する3ポート式のパイロット弁であり、パイロット流路30から受圧室に導かれるパイロット圧が設定圧力未満の場合には、ばね21の付勢力によってリーク流路10を排出流路40から遮断する一方、パイロット圧が設定圧力以上の場合には、ばね21の付勢力に抗して弁体が移動し、リーク流路10が排出流路40に連通される。
【0020】
パイロット流路30には、オリフィス31が設けられており、オリフィス31のオリフィス効果により、リーク流路10が排出流路40に連通されたときのパイロット圧の急激な低下が抑制される。また、パイロット流路30におけるオリフィス31とパイロット式切換弁20との間には、パイロット圧を検出する圧力検出部としての圧力計32が設けられている。
【0021】
排出流路40は、先端が外管102の連結孔102aに連結されて、真空層103に接続されている。排出流路40には分岐流路41が接続されており、分岐流路41の先端で、排出流路40に導かれた漏洩流体を他の捕集設備等により捕集することができる。分岐流路41による漏洩流体の分岐は、開閉弁42,43の操作により行うことができる。また、排出流路40には逆止弁44が設けられており、排出流路40からリーク流路10への漏洩流体の逆流が防止される。
【0022】
次に、上記の構成を備える漏洩検知装置1の作動を説明する。真空二重配管100の内管101を通過する低温流体がバルブ50のグランド部54から漏洩して、漏洩流体がリーク流路10に導かれると、リーク流路10は排出流路40から遮断されているため、パイロット式切換弁20の受圧室に作用するパイロット圧が上昇する。このパイロット圧は圧力計32で検出されるため、この検出値からグランドリークの有無を判別することができる。
【0023】
パイロット圧がパイロット式切換弁20の設定圧力以上になると、リーク流路10が排出流路40に連通されて、漏洩流体が排出流路40に導かれる。これにより、リーク流路10内で加圧された漏洩流体が解放されて、パイロット圧がパイロット式切換弁20の設定圧力未満に低下し、リーク流路10は排出流路40から再び遮断される。パイロット流路30に設けられたオリフィス31により、パイロット圧の低下が緩やかなものとなるため、パイロット圧の変化に伴うパイロット式切換弁20の切換動作の繰り返しを防止することができ、リーク流路10を排出流路40から確実に遮断することができる。パイロット式切換弁20の設定圧力は、圧力計32の検出値に基づき適宜調整することができる。
【0024】
このように、本実施形態の漏洩検知装置1は、リーク流路10に導かれた漏洩流体の圧力により、漏洩の状況を容易且つ正確に検知することができると共に、漏洩を検知した後は、パイロット式切換弁20が自動的に復旧して、電力を要することなく再び漏洩検知が可能な状態になる。
【0025】
漏洩検知装置1を用いた漏洩検知方法は、真空二重配管100に接続されたバルブ50だけでなく、例えば、空調設備、蒸気タービン、発電プラント等、種々のバルブに対するグランドリークの検知に適用可能であるが、本実施形態のように真空二重配管100のバルブ50に適用する場合には、排出流路40を真空層30に接続することで、新たな設備を要することなく漏洩流体の大気開放を容易に抑制することができる。このことは、内管101を流れる低温流体が、液体水素などのように大気開放が問題になるおそれがある流体の場合に、特に効果的である。
【0026】
本実施形態の排出流路40は、分岐流路41を設けることにより、真空層30または他の捕集設備により選択的に捕集可能としているが、いずれか一方のみで捕集されるように構成してもよい。排出流路40が真空層30のみに接続される場合には、排出流路40の先端側が常時負圧に維持されるため、逆止弁44を設けることなく漏洩流体の逆流を確実に防止することができる。なお、排出流路40に導かれる漏洩流体の種類によっては、捕集せずに大気に開放することもできる。
【0027】
漏洩検知装置1による漏洩検知は、圧力計32の検出に基づいて行う代わりに、パイロット式切換弁20の切換動作の検出に基づいて行うこともできる。パイロット式切換弁20の切換動作の検出は、例えば、パイロット式切換弁20に磁気センサ等を設けて、弁の切換動作を直接検出する他、排出流路40の温度や圧力等の変化を検出して行うこともできる。
【符号の説明】
【0028】
1 バルブの漏洩検知装置
10 リーク流路
20 パイロット式切換弁
30 パイロット流路
31 絞り弁
32 圧力計(圧力検出部)
40 排出流路
44 逆止弁
50 バルブ
54 グランド部
100 真空二重配管
101 内管
102 外管
103 真空層
図1