(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019724
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】連続繊維補強材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/52 20060101AFI20230202BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230202BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230202BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20230202BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20230202BHJP
B29C 70/20 20060101ALI20230202BHJP
E04C 5/07 20060101ALI20230202BHJP
B29K 101/10 20060101ALN20230202BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
B29C70/52
B05D7/00 K
B05D7/24 301R
B05D7/24 303A
B05D7/24 303B
B05D3/12 C
B05D3/02 Z
B29C70/20
E04C5/07
B29K101:10
B29K105:08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124668
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 寛哲
(72)【発明者】
【氏名】菅原 宏
(72)【発明者】
【氏名】淺野 良治
【テーマコード(参考)】
2E164
4D075
4F205
【Fターム(参考)】
2E164AA05
4D075AB01
4D075AB12
4D075AB35
4D075BB06Z
4D075BB16X
4D075BB21X
4D075BB21Z
4D075BB26Z
4D075BB27Z
4D075BB49X
4D075BB91Y
4D075BB95Y
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA01
4D075DA23
4D075DA29
4D075DB61
4D075DC05
4D075EA05
4D075EA14
4D075EA19
4D075EA27
4D075EB13
4D075EB37
4D075EB39
4D075EC01
4D075EC03
4D075EC07
4D075EC08
4D075EC13
4D075EC51
4D075EC53
4D075EC54
4F205AA36
4F205AB07
4F205AB16
4F205AD16
4F205AG14
4F205AH43
4F205AR17
4F205HA05
4F205HA27
4F205HA33
4F205HA37
4F205HB02
4F205HC02
4F205HK04
4F205HK05
(57)【要約】
【課題】外表面に凹凸形状を有する連続繊維補強材を良好に得ることができる連続繊維補強材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る連続繊維補強材の製造方法は、熱硬化性樹脂の硬化物及び補強繊維を含む芯材と、前記芯材の外表面を被覆する被覆層とを備える連続繊維補強材の製造方法であって、前記芯材の外表面上に、熱硬化性樹脂と無機充填材とチクソトロピック剤とを含む被覆材料を配置する配置工程と、前記芯材の外表面上に配置された前記被覆材料を、タックフリー状態となるまで仮硬化させる仮硬化工程と、金型を用いて、仮硬化させた前記被覆材料の外表面に凹凸形状を形成する賦形工程と、凹凸形状が形成された前記被覆材料を、加熱により硬化させる加熱工程とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂の硬化物及び補強繊維を含む芯材と、前記芯材の外表面を被覆する被覆層とを備える連続繊維補強材の製造方法であって、
前記芯材の外表面上に、熱硬化性樹脂と無機充填材とチクソトロピック剤とを含む被覆材料を配置する配置工程と、
前記芯材の外表面上に配置された前記被覆材料を、タックフリー状態となるまで仮硬化させる仮硬化工程と、
金型を用いて、仮硬化させた前記被覆材料の外表面に凹凸形状を形成する賦形工程と、
凹凸形状が形成された前記被覆材料を、加熱により硬化させる加熱工程とを備える、連続繊維補強材の製造方法。
【請求項2】
前記賦形工程において、表面に凹凸形状を有するローラー金型部を2個以上備える金型を用いる、請求項1に記載の連続繊維補強材の製造方法。
【請求項3】
熱硬化性樹脂の硬化物及び補強繊維を含む芯材と、前記芯材の外表面を被覆する被覆層とを備える連続繊維補強材の製造方法であって、
前記芯材の外表面上に、熱硬化性樹脂と無機充填材とチクソトロピック剤とを含む被覆材料を配置する配置工程を備え、
前記配置工程において、前記芯材の外表面上に前記被覆材料を配置するために用いられる被覆用金型を前記芯材の周方向に回転させることにより前記芯材の外表面上に凹凸形状が形成された前記被覆材料を配置するか、前記被覆材料の吐出量を周期的に変化させることにより前記芯材の外表面上に凹凸形状が形成された前記被覆材料を配置するか、又は、前記芯材の送り出し速度を周期的に変化させることにより前記芯材の外表面上に凹凸形状が形成された前記被覆材料を配置する、連続繊維補強材の製造方法。
【請求項4】
凹凸形状が形成された前記被覆材料を、加熱により硬化させる加熱工程を備える、請求項3に記載の連続繊維補強材の製造方法。
【請求項5】
前記被覆材料に含まれる前記無機充填材が、平均粒子径が1μm以上100μm以下でありかつモース硬度が3以上10以下である無機充填材である、請求項1~4のいずれか1項に記載の連続繊維補強材の製造方法。
【請求項6】
前記被覆材料100重量%中、前記無機充填材の含有量が、25重量%以上80重量%以下であり、
前記被覆材料100重量%中、前記チクソトロピック剤の含有量が、0.1重量%以上10重量%以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の連続繊維補強材の製造方法。
【請求項7】
前記被覆材料に含まれる前記無機充填材が、炭化ケイ素、炭化窒素、アルミナ、水酸化アルミニウム、又はシリカである、請求項1~6のいずれか1項に記載の連続繊維補強材の製造方法。
【請求項8】
前記被覆材料に含まれる前記チクソトロピック剤が、フュームドシリカ、ポリオレフィン合成パルプ、ポリエーテルリン酸エステル、有機変性ベントナイト、又はアマイドである、請求項1~7のいずれか1項に記載の連続繊維補強材の製造方法。
【請求項9】
前記被覆材料に含まれる前記無機充填材が、シランカップリング剤による表面処理物であり、
前記シランカップリング剤が、アミノシラン、メタクリルシラン、又はエポキシシランである、請求項1~8のいずれか1項に記載の連続繊維補強材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続繊維補強材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート中に連続繊維補強材等のコンクリート補強部材が埋め込まれたコンクリート構造物が広く知られている。コンクリート補強部材は、一般的に、ガラス繊維等の繊維に、樹脂を含浸させて製造される。コンクリート補強部材は、鉄筋と比べて、軽量であり、かつ耐腐食性及び施工性に優れる。
【0003】
従来、連続繊維補強材とコンクリートとの付着力を高めるために、外表面に凹凸形状を有する連続繊維補強材が用いられている。
【0004】
外表面に凹凸形状を有する連続繊維補強材は、例えば、以下の(1),(2)又は(3)の方法により、製造されている。(1)棒状の成形物の外表面を、刃物等を用いて切削加工し、凹凸を形成する方法。(2)下記の特許文献1に記載のように、紐状物を巻き付け、押圧等により溝形状を作成し、硬化後に上記紐状物を取り除いて、凹凸を形成する方法。(3)下記の特許文献2に記載のように、未硬化部分に金型を押し当て、被覆材料を流動させた後に硬化させて、凹凸を形成する方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04-12828号公報
【特許文献2】特開平07-139093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記(1)のように、切削加工により凹凸形状を形成する方法では、硬度の高い棒状の成形物を切削するという手間が生じたり、切削器具がすぐに摩耗して交換費用がかかったり、2次加工による製造コストが増加したりする。上記(2)のように、紐状物を用いて凹凸形状を形成する方法では、紐状物を準備して成形するという手間が生じたり、該紐状物を取り除く手間が生じたり、廃棄物が増えたりする。上記(3)のように、金型を押し当てて凹凸形状を形成する方法では、未硬化の樹脂が連続繊維補強材の凹凸形状部分に付着して凹凸形状の美観が損なわれたり、はみだし量のコントロールが難しく凹凸形状が不揃いになったり、後の硬化を行う際に、被覆部の樹脂の粘度が低下し、凹凸形状が保持できなかったりする。
【0007】
本発明の目的は、外表面に凹凸形状を有する連続繊維補強材を良好に得ることができる連続繊維補強材の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の広い局面によれば、熱硬化性樹脂の硬化物及び補強繊維を含む芯材と、前記芯材の外表面を被覆する被覆層とを備える連続繊維補強材の製造方法であって、前記芯材の外表面上に、熱硬化性樹脂と無機充填材とチクソトロピック剤とを含む被覆材料を配置する配置工程と、前記芯材の外表面上に配置された前記被覆材料を、タックフリー状態となるまで仮硬化させる仮硬化工程と、金型を用いて、仮硬化させた前記被覆材料の外表面に凹凸形状を形成する賦形工程と、凹凸形状が形成された前記被覆材料を、加熱により硬化させる加熱工程とを備える、連続繊維補強材の製造方法が提供される。
【0009】
本発明に係る連続繊維補強材の製造方法のある特定の局面では、前記賦形工程において、表面に凹凸形状を有するローラー金型部を2個以上備える金型を用いる。
【0010】
本発明の広い局面によれば、熱硬化性樹脂の硬化物及び補強繊維を含む芯材と、前記芯材の外表面を被覆する被覆層とを備える連続繊維補強材の製造方法であって、前記芯材の外表面上に、熱硬化性樹脂と無機充填材とチクソトロピック剤とを含む被覆材料を配置する配置工程を備え、前記配置工程において、前記芯材の外表面上に前記被覆材料を配置するために用いられる被覆用金型を前記芯材の周方向に回転させることにより前記芯材の外表面上に凹凸形状が形成された前記被覆材料を配置するか、前記被覆材料の吐出量を周期的に変化させることにより前記芯材の外表面上に凹凸形状が形成された前記被覆材料を配置するか、又は、前記芯材の送り出し速度を周期的に変化させることにより前記芯材の外表面上に凹凸形状が形成された前記被覆材料を配置する、連続繊維補強材の製造方法が提供される。
【0011】
本発明に係る連続繊維補強材の製造方法のある特定の局面では、前記連続繊維補強材の製造方法は、凹凸形状が形成された前記被覆材料を、加熱により硬化させる加熱工程を備える。
【0012】
本発明に係る連続繊維補強材の製造方法のある特定の局面では、前記被覆材料に含まれる前記無機充填材が、平均粒子径が1μm以上100μm以下でありかつモース硬度が3以上10以下である無機充填材である。
【0013】
本発明に係る連続繊維補強材の製造方法のある特定の局面では、前記被覆材料100重量%中、前記無機充填材の含有量が、25重量%以上80重量%以下であり、前記被覆材料100重量%中、前記チクソトロピック剤の含有量が、0.1重量%以上10重量%以下である。
【0014】
本発明に係る連続繊維補強材の製造方法のある特定の局面では、前記被覆材料に含まれる前記無機充填材が、炭化ケイ素、炭化窒素、アルミナ、水酸化アルミニウム、又はシリカである。
【0015】
本発明に係る連続繊維補強材の製造方法のある特定の局面では、前記被覆材料に含まれる前記チクソトロピック剤が、フュームドシリカ、ポリオレフィン合成パルプ、ポリエーテルリン酸エステル、有機変性ベントナイト、又はアマイドである。
【0016】
本発明に係る連続繊維補強材の製造方法のある特定の局面では、前記被覆材料に含まれる前記無機充填材が、シランカップリング剤による表面処理物であり、前記シランカップリング剤が、アミノシラン、メタクリルシラン、又はエポキシシランである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外表面に凹凸形状を有する連続繊維補強材を良好に得ることができる連続繊維補強材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る連続繊維補強材の製造方法における芯材を得る工程を説明するための図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る連続繊維補強材の製造方法における配置工程、仮硬化工程、賦形工程及び加熱工程を説明するための図である。
【
図3】
図3(a)は、ローラー金型部を3個備える金型を模式的に示す斜視図であり、
図3(b)は、ローラー金型部を3個備える金型を模式的に示す正面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る連続繊維補強材の製造方法における配置工程及び加熱工程を説明するための図である。
【
図5】
図5は、被覆用金型の一例を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明に係る連続繊維補強材の製造方法(1)は、熱硬化性樹脂の硬化物及び補強繊維を含む芯材と、上記芯材の外表面を被覆する被覆層とを備える連続繊維補強材の製造方法である。本発明に係る連続繊維補強材の製造方法(1)は、上記芯材の外表面上に、熱硬化性樹脂と無機充填材とチクソトロピック剤とを含む被覆材料を配置する配置工程と、上記芯材の外表面上に配置された上記被覆材料を、タックフリー状態となるまで仮硬化させる仮硬化工程とを備える。本発明に係る連続繊維補強材の製造方法(1)は、金型を用いて、仮硬化させた上記被覆材料の外表面に凹凸形状を形成する賦形工程と、凹凸形状が形成された上記被覆材料を、加熱により硬化させる加熱工程とを備える。
【0021】
本発明に係る連続繊維補強材の製造方法(2)は、熱硬化性樹脂の硬化物及び補強繊維を含む芯材と、上記芯材の外表面を被覆する被覆層とを備える連続繊維補強材の製造方法である。本発明に係る連続繊維補強材の製造方法(2)は、上記芯材の外表面上に、熱硬化性樹脂と無機充填材とチクソトロピック剤とを含む被覆材料を配置する配置工程を備える。本発明に係る連続繊維補強材の製造方法(2)では、上記配置工程において、以下の(2A),(2B)又は(2C)を備える。(2A)上記芯材の外表面上に上記被覆材料を配置するために用いられる被覆用金型を上記芯材の周方向に回転させることにより上記芯材の外表面上に凹凸形状が形成された上記被覆材料を配置する。(2B)上記被覆材料の吐出量を周期的に変化させることにより上記芯材の外表面上に凹凸形状が形成された上記被覆材料を配置する。(2C)上記芯材の送り出し速度を周期的に変化させることにより上記芯材の外表面上に凹凸形状が形成された上記被覆材料を配置する。
【0022】
本発明に係る連続繊維補強材の製造方法(1),(2)では、上記の構成が備えられているので、外表面に凹凸形状を有する連続繊維補強材を良好に得ることができる。
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。なお、以下の図面において、大きさ、厚み及び形状等は、図示の便宜上、実際の大きさ、厚み及び形状等と異なる場合がある。
【0024】
[連続繊維補強材の製造方法(1)]
(芯材を得る工程)
上記連続繊維補強材の製造方法(1)は、熱硬化性樹脂の硬化物及び補強繊維を含む芯材を得る工程を備えることが好ましい。上記芯材の製造方法は特に限定されない。上記芯材は、従来公知の方法で製造することができる。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る連続繊維補強材の製造方法における芯材を得る工程を説明するための図である。
【0026】
熱硬化性樹脂含浸槽16に、熱硬化性樹脂12が貯留されている。ガラスロービング15から巻き出した連続繊維11を、熱硬化性樹脂含浸槽16内の熱硬化性樹脂12と接触させて、熱硬化性樹脂12が含浸された連続繊維11を得る。次いで、絞り金型17を用いて、熱硬化性樹脂12が含浸された連続繊維11から余分な熱硬化性樹脂を除去するとともに、形状をある程度整える。次いで、引抜金型18を用いて加熱成形を行い、また、引取機19で引き取ることにより、熱硬化性樹脂12の硬化物と連続繊維11とを含む芯材1を得る。本実施形態では、円柱状の芯材が得られている。
【0027】
なお、上記引抜金型を用いた上記加熱成形における加熱は、ヒーター等による加熱であってもよい。
【0028】
上記芯材は、必要に応じて、表面処理されていてもよい。上記芯材を得る工程では、表面処理された芯材を得てもよい。上記芯材の表面を処理する方法としては、プラズマ放電装置による処理方法、ヤスリによる処理方法及び熱処理方法等が挙げられる。引取機で引き取られた芯材に対して表面処理を行うことにより、表面処理された芯材を得ることができる。
【0029】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る連続繊維補強材の製造方法における配置工程、仮硬化工程、賦形工程及び加熱工程を説明するための図である。
【0030】
(配置工程)
図2では、
図1で得られた芯材1が用いられている。
図1と
図2とは、連続プロセスで行われており、同じ製造ラインで行われている。すなわち、
図1で得られた芯材1は、所定の長さに切断されることなく、
図2で用いられている。
【0031】
なお、上記配置工程以降では、所定の長さに切断された芯材が用いられてもよい。上記芯材を得る工程を行う製造ラインと、上記配置工程を行う製造ラインとは、異なる製造ラインであってもよい。また、上記配置工程では、上記表面処理された芯材が用いられてもよい。
【0032】
第1のタンク21には、熱硬化性樹脂(主剤)と無機充填材とチクソトロピック剤との混合物2XAが収容されている。第2のタンク22には、硬化剤(熱硬化性樹脂の硬化剤)と無機充填材とチクソトロピック剤との混合物2XBが収容されている。ポンプを駆動させて、混合物2XA及び混合物2XBをスタティックミキサー23で混合した後、熱硬化性樹脂と硬化剤と無機充填材とチクソトロピック剤との混合物である被覆材料を被覆用金型20に導入する。被覆用金型20は、芯材1の送り機(図示せず)により送られてきた芯材1の外表面上に被覆材料を配置するために用いられる金型である。被覆用金型20を用いて、芯材1の外表面上に、熱硬化性樹脂と硬化剤と無機充填材とチクソトロピック剤とを含む被覆材料2Xを配置する。このようにして、芯材1と被覆材料2Xとを備える構造体を得る。
【0033】
なお、第1のタンクに熱硬化性樹脂と無機充填材とチクソトロピック剤とを収容し、第2のタンクに熱硬化性樹脂の硬化剤を収容してもよい。また、第1のタンクに熱硬化性樹脂と無機充填材とを収容し、第2のタンクに熱硬化性樹脂の硬化剤とチクソトロピック剤とを収容してもよい。また、押出プロセスによって、上記被覆材料を上記芯材の外表面上に配置してもよい。被覆材料を複数用いる場合は、スタティックミキサー等を用いて、充分に混合することが好ましい。
【0034】
(仮硬化工程)
次に、芯材1と被覆材料2Xとを備える構造体を、第1の加熱炉30内で加熱して、芯材1の外表面上に配置された被覆材料2Xを、タックフリー状態となるまで仮硬化させる。このようにして、芯材1の外表面上に仮硬化された被覆材料2Yが配置された構造体を得る。仮硬化された被覆材料2Yは、硬化が完全に進行しておらず、更に硬化可能である。
【0035】
被覆材料2Xがタックフリー状態となるまで仮硬化されたか否かは、JIS K6249「未硬化及び硬化シリコーンゴムの試験方法」に記載の「指触による方法」又は「鉛筆による方法」により評価することができる。
【0036】
上記仮硬化工程における加熱温度は、好ましくは20℃以上、より好ましくは50℃以上、好ましく130℃以下、より好ましくは100℃以下である。上記加熱温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、被覆材料2Xをタックフリー状態となるまで適度に仮硬化させることができ、仮硬化された被覆材料2Yを良好に得ることができる。
【0037】
(賦形工程)
次に、芯材1と仮硬化された被覆材料2Yとを備える構造体において、金型40を用いて、仮硬化された被覆材料2Yの外表面上に凹凸形状を形成させる。金型40は、第1の金型部41と、第2の金型部42とを備える。第1,第2の金型部41,42はそれぞれ、表面に凹凸形状を有するローラー金型部である。仮硬化された被覆材料2Yは適度な硬さを有するため、金型40(第1,第2の金型部41,42)を仮硬化された被覆材料2Yに押し当てることによって、仮硬化された被覆材料2Yの外表面上に凹凸形状を形成させることができる。このようにして、芯材1の外表面上に、凹凸形状が形成された被覆材料2Z(仮硬化されておりかつ凹凸形状が形成された被覆材料)が配置された構造体を得る。
【0038】
上記賦形工程において、表面に凹凸形状を有するローラー金型部を備える金型を用いることが好ましい。ローラー金型部は回転可能な金型である。芯材1と仮硬化された被覆材料2Yとを備える構造体が上流から下流に送られることによって、ローラー金型部が回転しながら、仮硬化された被覆材料2Yの外表面上に凹凸形状を形成させることができる。
【0039】
上記金型は、表面に凹凸形状を有するローラー金型部を、2個備えていてもよく、2個以上備えていてもよく、3個備えていてもよく、3個以上備えていてもよく、4個備えていてもよく、4個以上備えていてもよい。上記金型は、表面に凹凸形状を有するローラー金型部を、4個以下備えていてもよく、3個以下備えていてもよい。表面に凹凸形状を有するローラー金型部を2個以上備える金型を用いることにより、仮硬化された被覆材料の外表面上に凹凸形状を良好に形成させることができる。
【0040】
図3は、ローラー金型部を3個備える金型を模式的に示す図である。
図3(a)は、ローラー金型部を3個備える金型を模式的に示す斜視図であり、
図3(b)は、ローラー金型部を3個備える金型を模式的に示す正面図である。
【0041】
図3に示す金型40Aは、第1のローラー金型部41Aと、第2のローラー金型部42Aと、第3のローラー金型部43Aとを備える。第1,第2,第3のローラー金型部41A,42A,43Aはそれぞれ、表面に凹凸形状を有する。第1,第2,第3のローラー金型部41A,42A,43Aで囲まれた領域により、通し穴45Aが形成されている。
図3では、通し穴45Aの奥方向から手前方向に向かって、芯材と仮硬化された被覆材料とを備える構造体が送られる。この際、第1,第2,第3のローラー金型部41A,42A,43Aがそれぞれ、ローラー軸41Aa,42Aa,43Aaを軸に回転することで、仮硬化された被覆材料の外表面上に凹凸形状が形成される。
【0042】
(加熱工程)
次に、凹凸形状が形成された被覆材料2Zを加熱により硬化させる。より具体的には、
図2に示すように、芯材1と凹凸形状が形成された被覆材料2Zとを備える構造体を、第2の加熱炉50内で加熱して、被覆材料2Zを加熱により硬化させる。このようにして、芯材1の外表面上に被覆層2が配置された連続繊維補強材3を得る。
【0043】
上記加熱工程における加熱温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記加熱温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、凹凸形状が形成された被覆材料2Zを良好に硬化させることができる。
【0044】
[連続繊維補強材の製造方法(2)]
(芯材を得る工程)
上記連続繊維補強材の製造方法(2)は、熱硬化性樹脂の硬化物及び補強繊維を含む芯材を得る工程を備えることが好ましい。上記芯材の製造方法は特に限定されない。上記芯材は、従来公知の方法で製造することができる。上記連続繊維補強材の製造方法(2)における芯材を得る工程の詳細は、上述した連続繊維補強材の製造方法(1)における芯材を得る工程と同様である。
【0045】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る連続繊維補強材の製造方法における配置工程及び加熱工程を説明するための図である。
【0046】
(配置工程)
図4では、
図1で得られた芯材1が用いられている。
図1と
図4とは、連続プロセスで行われており、同じ製造ラインで行われている。すなわち、
図1で得られた芯材1は、所定の長さに切断されることなく、
図4で用いられている。
【0047】
なお、上記配置工程以降では、所定の長さに切断された芯材が用いられてもよい。上記芯材を得る工程を行う製造ラインと、上記配置工程を行う製造ラインとは、異なる製造ラインであってもよい。また、上記配置工程では、上記表面処理された芯材が用いられてもよい。
【0048】
第1のタンク21には、熱硬化性樹脂(主剤)と無機充填材とチクソトロピック剤との混合物2XAが収容されている。第2のタンク22には、硬化剤(熱硬化性樹脂の硬化剤)と無機充填材とチクソトロピック剤との混合物2XBが収容されている。ポンプを駆動させて、混合物2XA及び混合物2XBをスタティックミキサー23で混合した後、熱硬化性樹脂と硬化剤と無機充填材とチクソトロピック剤との混合物である被覆材料を被覆用金型70に導入する。被覆用金型70は、芯材1の送り機60により送られてきた芯材1の外表面上に被覆材料を配置するために用いられる金型である。被覆用金型70を用いて、芯材1の外表面上に、熱硬化性樹脂と硬化剤と無機充填材とチクソトロピック剤とを含む被覆材料2AXを配置する。
【0049】
なお、第1のタンクに熱硬化性樹脂と無機充填材とチクソトロピック剤とを収容し、第2のタンクに熱硬化性樹脂の硬化剤を収容してもよい。また、第1のタンクに熱硬化性樹脂と無機充填材とを収容し、第2のタンクに熱硬化性樹脂の硬化剤とチクソトロピック剤とを収容してもよい。また、押出プロセスによって、上記被覆材料を上記芯材の外表面上に配置してもよい。被覆材料を複数用いる場合は、スタティックミキサー等を用いて、充分に混合することが好ましい。
【0050】
連続繊維補強材の製造方法(2)では、芯材1の外表面上に被覆材料2AXを配置する配置工程において、以下の(2A),(2B)又は(2C)が行われる。
【0051】
(2A)上記配置工程において、芯材1の外表面上に被覆材料2AXを配置するために用いられる被覆用金型70を芯材1の周方向に回転させることにより芯材1の外表面上に凹凸形状が形成された被覆材料2AXを配置する。
【0052】
(2B)上記配置工程において、被覆材料2AXの吐出量を周期的に変化させることにより芯材1の外表面上に凹凸形状が形成された被覆材料2AXを配置する。
【0053】
(2C)上記配置工程において、芯材1の送り出し速度を周期的に変化させることにより芯材1の外表面上に凹凸形状が形成された被覆材料2AXを配置する。
【0054】
以下、上記(2A)が行われる配置工程を配置工程(2A)と称することがあり、上記(2B)が行われる配置工程を配置工程(2B)と称することがあり、上記(2C)が行われる配置工程を配置工程(2C)と称することがある。
【0055】
<配置工程(2A)>
配置工程(2A)では、被覆用金型70を芯材1の周方向に回転させながら芯材1の外表面上に被覆材料2AXを配置する。これにより、芯材1の外表面上に凹凸形状が形成された被覆材料2AXを配置することができる。回転モーター等を利用して、被覆用金型70を芯材1の周方向に回転させることができる。
【0056】
図5は、被覆用金型の一例を示す正面断面図である。
図5は、配置工程(2A)で用いることが可能な被覆用金型の一例を示す正面断面図である。
【0057】
図5に示す被覆用金型70Aは、1個の被覆用穴71Aを備える。また、被覆用金型70Aは、ボルト穴を複数個備える。被覆用穴71Aは、第1のリブ部71Aaと第2のリブ部71Abとを有する。被覆用穴71Aに芯材1を通し、被覆用金型70Aを芯材1の周方向(
図5の点線矢印方向)に回転させながら芯材1の外表面上に被覆材料2AXを配置する。これにより、芯材1の外表面上に螺旋状の凹凸形状が形成された被覆材料2AXを配置することができる。第1,第2のリブ部71Aa,71Ab部分に由来して被覆材料2AXが配置された部分が、被覆材料2AXの凸部を形成する。第1,第2のリブ部71Aa,71Abが設けられていない被覆用穴71A部分に由来して被覆材料2AXが配置された部分が、被覆材料2AXの凹部を形成する。
【0058】
<配置工程(2B)>
配置工程(2B)では、被覆材料2AXの吐出量を周期的に変化させながら芯材1の外表面上に被覆材料2AXを配置する。これにより、芯材1の外表面上に凹凸形状が形成された被覆材料2AXを配置することができる。
【0059】
配置工程(2B)では、スタティックミキサー23から吐出される被覆材料2AXの吐出量を周期的に変化させる(脈動させる)ことにより、その周期に応じて、芯材1の外表面上に凹凸形状が形成された被覆材料2AXを配置することができる。被覆材料2AXの吐出量が多いときに被覆材料2AXが塗布された部分(被覆材料2AXの塗布量が多い部分)が、被覆材料2AXの凸部を形成する。被覆材料2AXの吐出量が少ないときに被覆材料2AXが塗布された部分(被覆材料2AXの塗布量が少ない部分)が、被覆材料2AXの凹部を形成する。
【0060】
<配置工程(2C)>
配置工程(2C)では、芯材1の送り出し速度を周期的に変化させながら芯材1の外表面上に被覆材料2AXを配置する。これにより、芯材1の外表面上に凹凸形状が形成された被覆材料2AXを配置することができる。
【0061】
配置工程(2C)では、送り機60において、芯材1の送り出し速度を周期的に変化させることにより、その周期に応じて、芯材1の外表面上に凹凸形状が形成された被覆材料2AXを配置することができる。芯材1の送り出し速度が遅いときに被覆材料2AXが塗布された部分(被覆材料2AXの塗布量が多い部分)が、被覆材料2AXの凸部を形成する。芯材1の送り出し速度が速いときに被覆材料2AXが塗布された部分(被覆材料2AXの塗布量が少ない部分)が、被覆材料2AXの凹部を形成する。
【0062】
配置工程(2B),(2C)では、被覆用金型70として、
図5に示すようなリブ部を有する被覆用穴を備える金型を用いてもよい。配置工程(2B),(2C)では、被覆用金型70として、リブ部を有さない被覆用穴を備える金型を用いてもよい。
【0063】
(加熱工程)
次に、凹凸形状が形成された被覆材料2AXを加熱により硬化させる。より具体的には、
図4に示すように、芯材1と凹凸形状が形成された被覆材料2AXとを備える構造体を、加熱炉80内で加熱して、芯材1の外表面上に配置された凹凸形状が形成された被覆材料2AXを加熱により硬化させる。このようにして、芯材1の外表面上に被覆層2Aが配置された連続繊維補強材3Aを得る。
【0064】
上記加熱工程における加熱温度は、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記加熱温度が上記下限以上及び上記上限以下であると、凹凸形状が形成された被覆材料2AXを良好に硬化させることができる。
【0065】
以下、芯材、被覆層及び連続繊維補強材の詳細を更に説明する。
【0066】
上記芯材は、引抜成形等により製造することができる。上記芯材の形状は、円柱状であってもよく、多角柱状であってもよい。また、上記芯材自体が、外表面に凹部と凸部とを有していてもよい。
【0067】
上記被覆材料は、25℃で流動性を有することが好ましい。上記被覆材料は、25℃でペースト状であることが好ましい。上記ペースト状には、液状が含まれる。
【0068】
チクソ性をより一層高める観点から、上記被覆材料の25℃及びせん断速度100(1/s)での粘度は、好ましくは10Pa・s以上、より好ましくは20Pa・s以上であり、好ましくは50Pa・s以下、より好ましくは40Pa・s以下である。また、チクソ性をより一層高める観点から、上記被覆材料の25℃及びせん断速度0.1(1/s)での粘度は、好ましくは100Pa・s以上、より好ましくは200Pa・s以上であり、好ましくは300Pa・s以下、より好ましくは250Pa・s以下である。上記被覆材料の25℃及びせん断速度100(1/s)での粘度が上記の好ましい範囲内であり、かつ、上記被覆材料の25℃及びせん断速度0.1(1/s)での粘度が上記の好ましい範囲内であると、チクソ性をより一層高めることができるので、芯材を良好に被覆することができ、作業効率を高めることができる。
【0069】
上記被覆材料の粘度は、例えば、モジュラーコンパクトレオメータMCR102(Anton Paar社製)を用いて、測定することができる。
【0070】
上記被覆層は、上記芯材の外周面上に配置される。上記芯材の外周面の表面積100%中、被覆層が配置されている部分の面積は、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、最も好ましくは100%である。上記被覆層は、上記芯材の外周面上に配置される。上記芯材の外周面の表面積100%中、被覆層が配置されている部分の面積は、100%以下であってもよく、100%未満であってもよい。上記被覆層が配置されている部分の面積が上記下限以上であると、耐アルカリ性をより一層高めることができる。
【0071】
(熱硬化性樹脂)
上記芯材は、熱硬化性樹脂の硬化物を含む。上記被覆材料は、熱硬化性樹脂を含む。上記被覆層は、熱硬化性樹脂の硬化物を含む。上記被覆材料に含まれる熱硬化性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記芯材及び上記被覆層に含まれる熱硬化性樹脂の硬化物はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0072】
上記芯材に含まれる熱硬化性樹脂の硬化物と、上記被覆層に含まれる熱硬化性樹脂の硬化物とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0073】
上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0075】
上記ビニルエステル樹脂としては、ビス系ビニルエステル樹脂、及びノボラック系ビニルエステル樹脂等が挙げられる。
【0076】
上記不飽和ポリエステル樹脂としては、α,β-不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物とグリコール類との重縮合によって得られる樹脂等が挙げられる。
【0077】
連続繊維補強材の強度をより一層高める観点からは、上記芯材の材料に含まれる熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、又は不飽和ポリエステル樹脂であることが好ましい。連続繊維補強材の強度をより一層高める観点からは、上記芯材に含まれる熱硬化性樹脂の硬化物は、エポキシ樹脂の硬化物、ビニルエステル樹脂の硬化物、又は不飽和ポリエステル樹脂の硬化物であることが好ましい。
【0078】
コンクリートとの付着力をより一層高める観点及び耐アルカリ性をより一層高める観点からは、上記被覆材料に含まれる熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、又は不飽和ポリエステル樹脂であることが好ましく、エポキシ樹脂であることがより好ましい。コンクリートとの付着力をより一層高める観点及び耐アルカリ性をより一層高める観点からは、上記被覆層に含まれる熱硬化性樹脂の硬化物は、エポキシ樹脂の硬化物、ビニルエステル樹脂の硬化物、又は不飽和ポリエステル樹脂の硬化物であることが好ましく、エポキシ樹脂の硬化物であることがより好ましい。特に、上記被覆層に含まれる熱硬化性樹脂の硬化物がエポキシ樹脂の硬化物である場合には、耐アルカリ性を更により一層高めることができるので、連続繊維補強材の強度の経時的な低下を効果的に抑えることができる。
【0079】
上記芯材100体積%中、上記熱硬化性樹脂の硬化物の含有量(上記芯材に含まれる熱硬化性樹脂の硬化物の含有量)は、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上、好ましくは70体積%以下、より好ましくは45体積%以下である。上記熱硬化性樹脂の硬化物の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、連続繊維補強材の強度をより一層高めることができる。
【0080】
上記被覆材料100重量%中、上記熱硬化性樹脂の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記熱硬化性樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、コンクリートとの付着力をより一層高めることができ、また、耐アルカリ性をより一層高めることができる。
【0081】
上記被覆材料100重量%中、上記エポキシ樹脂の含有量は、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。上記エポキシ樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、コンクリートとの付着力をより一層高めることができ、また、耐アルカリ性をより一層高めることができる。
【0082】
(無機充填材)
上記被覆材料は、無機充填材を含む。上記被覆層は、無機充填材を含む。上記無機充填材は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0083】
コンクリートとの付着力を高め、かつ耐アルカリ性を高める観点から、上記無機充填材の平均粒子径は、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。上記無機充填材の平均粒子径が上記下限以上及び上記上限以下であると、コンクリートとの付着力をより一層高めることができ、また、耐アルカリ性をより一層高めることができる。
【0084】
上記無機充填材の平均粒子径は、数平均粒子径を示す。上記無機充填材の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。
【0085】
コンクリートとの付着力を高め、かつ耐アルカリ性を高める観点から、上記無機充填材のモース硬度は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、好ましくは10以下である。上記無機充填材のモース硬度が上記下限以上及び上記上限以下であると、コンクリートとの付着力をより一層高めることができ、また、耐アルカリ性をより一層高めることができる。
【0086】
上記無機充填材は、平均粒子径が1μm以上100μm以下でありかつモース硬度が3以上10以下であることが特に好ましい。この場合には、コンクリートとの付着力をより一層高め、かつ耐アルカリ性をより一層高めることができる。
【0087】
上記無機充填材としては、炭化ケイ素、炭化窒素、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、シリカ、フライアッシュ、及びカーボンブラック等が挙げられる。
【0088】
上記無機充填材は、炭化ケイ素、炭化窒素、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、又はシリカであることが好ましく、炭化ケイ素、炭化窒素、アルミナ、水酸化アルミニウム、又はシリカであることがより好ましく、炭化ケイ素、又はアルミナであることが更に好ましい。これらの好ましい上記無機充填材を用いることにより、コンクリートとの付着力をより一層高めることができ、また、耐アルカリ性をより一層高めることができる。また、これらの好ましい上記無機充填材を用いることにより、上記被覆層の硬度をより一層高めることができ、コンクリート中で被覆層が削れたり、破損したりすることを抑えることができ、コンクリートとの付着力をより一層高めることができる。
【0089】
また、後述のシランカップリング剤により良好に表面処理される観点から、上記無機充填材は、アルミナ、水酸化アルミニウム、又はシリカであることがより好ましく、アルミナであることが特に好ましい。
【0090】
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましい。上記無機充填材は、カップリング剤による表面処理物であることが好ましく、シランカップリング剤による表面処理物であることがより好ましい。上記無機充填材が表面処理されていることにより、被覆層の耐アルカリ性をより一層高めることができる。
【0091】
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン、及びエポキシシラン等が挙げられる。上記アミノシランとしては、フェニルアミノシラン等が挙げられる。上記シランカップリング剤は、アミノシラン、メタクリルシラン、又はエポキシシランであることが好ましい。この場合には、被覆層の耐アルカリ性をより一層高めることができる。
【0092】
上記シランカップリング剤により表面処理された無機充填材は、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂と併用することで、熱硬化性樹脂と無機充填材との境界面がシランカップリング剤により結合される。結果として、熱硬化性樹脂が有する耐薬品性を低下させることなく、硬度、弾性率、及び熱伝導性を高め、熱膨張率及び材料コストを低下させることができる。
【0093】
上記被覆材料100重量%中、上記無機充填材の含有量は、好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、更に好ましくは70重量%以下である。上記無機充填材の含有量が上記下限以上であると、コンクリートとの付着力をより一層高めることができる。上記無機充填材の含有量が上記上限以下であると、耐アルカリ性をより一層高めることができる。
【0094】
(チクソトロピック剤)
上記被覆材料は、チクソトロピック剤を含む。チクソトロピック剤の使用により、塗布時の液だれを防止することでき、作業効率を高めることができる。また、被覆材料中での上記無機充填材の沈降を防止し、上記被覆材料の品質を保持することができる。上記チクソトロピック剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0095】
上記チクソトロピック剤は、化合物であってもよく、粒子であってもよい。上記チクソトロピック剤が粒子である場合に、粒子である上記チクソトロピック剤の平均粒子径は、0.1μm未満であることが好ましい。粒子である上記チクソトロピック剤の平均粒子径は、10nm以上であってもよく、50nm以上であってもよい。上記チクソトロピック剤が粒子である場合に、粒子である上記チクソトロピック剤のモース硬度は、1以上であってもよく、3未満であってもよい。
【0096】
粒子である上記チクソトロピック剤の平均粒子径は、数平均粒子径を示す。粒子である上記チクソトロピック剤の平均粒子径は、例えば、レーザー回折式粒度分布測定を行うことにより求められる。
【0097】
上記チクソトロピック剤としては、フュームドシリカ、ポリオレフィン合成パルプ、ポリエーテルリン酸エステル、有機変性ベントナイト、及びアマイド等が挙げられる。
【0098】
チクソ性を効果的に高める観点から、上記チクソトロピック剤は、フュームドシリカ、ポリオレフィン合成パルプ、ポリエーテルリン酸エステル、有機変性ベントナイト、又はアマイドであることが好ましい。
【0099】
上記被覆材料100重量%中、上記チクソトロピック剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、更に好ましくは7重量%以下である。上記チクソトロピック剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、チクソ性をより一層良好にすることができる。
【0100】
上記被覆材料において、上記無機充填材100重量部に対して、上記チクソトロピック剤の含有量は、好ましくは1.0重量部以上、より好ましくは1.5重量部以上、好ましくは4.0重量部以下、より好ましくは3.0重量部以下である。上記チクソトロピック剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、チクソ性をより一層良好にすることができる。
【0101】
(硬化剤)
上記被覆材料及び上記熱硬化性樹脂を良好に硬化させる観点から、上記被覆材料は、硬化剤を含むことが好ましい。上記硬化剤は、熱硬化性樹脂の種類に応じて、適宜選択可能である。
【0102】
上記被覆材料及び上記熱硬化性樹脂を良好に硬化させる観点から、上記被覆材料中の上記熱硬化性樹脂100重量部に対して、上記硬化剤の含有量は、好ましくは30重量部以上、より好ましくは40重量部以上、好ましくは70重量部以下、より好ましくは60重量部以下である。
【0103】
上記被覆材料及び上記熱硬化性樹脂を良好に硬化させる観点から、上記被覆材料100重量%中、上記硬化剤の含有量は、好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、好ましくは17重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。なお、上記被覆材料は、硬化剤を含んでいなくてもよい。
【0104】
(補強繊維)
上記芯材は、補強繊維を含む。上記補強繊維は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0105】
上記補強繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、及びバサルト繊維等が挙げられる。
【0106】
連続繊維補強材の強度をより一層高める観点からは、上記補強繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、又はバサルト繊維であることが好ましく、ガラス繊維、又はバサルト繊維であることがより好ましい。補強繊維としてガラス繊維又はバサルト繊維を用いた従来の連続繊維補強材では、耐アルカリ性が低いため、該補強繊維が劣化しやすく、その結果、連続繊維補強材の強度が経時的に低下しやすい。これに対して、本発明では、補強繊維としてガラス繊維又はバサルト繊維を用いた場合でも、連続繊維補強材の強度を高く維持することができる。
【0107】
上記補強繊維は、ロービングされた繊維(補強繊維束)であることが好ましい。
【0108】
上記補強繊維は、連続繊維補強材の軸方向に沿って配向していることが好ましい。上記補強繊維は、連続繊維補強材の軸方向に引き揃えられていることが好ましい。
【0109】
上記芯材100体積%中、上記補強繊維の含有量は、好ましくは30体積%以上、より好ましくは50体積%以上、好ましくは80体積%以下、より好ましくは75体積%以下である。上記補強繊維の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、連続繊維補強材の強度をより一層高めることができる。
【0110】
(その他の成分)
上記芯材、上記被覆材料、及び上記被覆層はそれぞれ、必要に応じて、各種の添加剤を含んでいてもよい。上記添加剤としては、相溶化剤、安定剤、安定化助剤、滑剤、加工助剤、耐熱向上剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料及び可塑剤等が挙げられる。上記添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【符号の説明】
【0111】
1…芯材
2,2A…被覆層
2AX,2X…被覆材料
2Y…仮硬化された被覆材料
2Z…凹凸形状が形成された被覆材料
3,3A…連続繊維補強材
11…連続繊維
12…熱硬化性樹脂
15…ガラスロービング
16…熱硬化性樹脂含浸槽
17…絞り金型
18…引抜金型
19…引取機
20…被覆用金型
21…第1のタンク
22…第2のタンク
23…スタティックミキサー
30…第1の加熱炉
40,40A…金型
41…第1の金型部
41A…第1のローラー金型部
41Aa…ローラー軸
42…第2の金型部
42A…第2のローラー金型部
42Aa…ローラー軸
43A…第3のローラー金型部
43Aa…ローラー軸
45A…通し穴
50…第2の加熱炉
60…送り機
70,70A…被覆用金型
71A…被覆用穴
71Aa…第1のリブ部
71Ab…第2のリブ部
80…加熱炉
2XA…熱硬化性樹脂と無機充填材とチクソトロピック剤との混合物
2XB…硬化剤と無機充填材とチクソトロピック剤との混合物