(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019779
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20230202BHJP
C08L 33/16 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L33/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124752
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】吉田 沙和
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BG082
4J002CG011
4J002GG00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GP00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 撥油性に優れ、かつ、透明性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、および、前記樹脂組成物から得られた成形品の提供。
【解決手段】 式(1)で表される構成単位を全構成単位の0~90モル%、および、式(2)で表される構成単位を全構成単位の100~10モル%を含むポリカーボネート樹脂と含フッ素重合体とを含む、樹脂組成物であって、含フッ素重合体は、フッ素原子と、CH
2=CH-C(=O)-またはCH
2=C(CH
3)-C(=O)-を含む化合物F由来の構成単位を含み、ポリカーボネート樹脂と前記含フッ素重合体の合計質量に対して、前記含フッ素重合体を0.1~5.0質量%含む、樹脂組成物。
式(1)および式(2)
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される構成単位を全構成単位の0~90モル%、および、式(2)で表される構成単位を全構成単位の100~10モル%を含むポリカーボネート樹脂と含フッ素重合体とを含む、樹脂組成物であって、
前記含フッ素重合体は、フッ素原子と、CH
2=CH-C(=O)-またはCH
2=C(CH
3)-C(=O)-を含む化合物F由来の構成単位を含み、
前記ポリカーボネート樹脂と前記含フッ素重合体の合計質量に対して、前記含フッ素重合体を0.1~5.0質量%含む、
樹脂組成物。
式(1)
【化1】
(式(1)中、X
1は下記のいずれかの式を表し、
【化2】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(2)
【化3】
(式(2)中、R
1はメチル基を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表し、X
2は下記のいずれかの式を表し、
【化4】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
【請求項2】
前記含フッ素重合体は、さらに、環状構造を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記環状構造は、芳香環を含む、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記化合物Fは、炭素数1~6のポリフルオロアルキル基および/または炭素数1~6のポリフルオロエーテル基を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物から形成される試験片のISO-15184に従って測定した鉛筆硬度がHBまたはそれより硬い、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品の表面に撥油性を付与するため、表面にフッ素処理を施す技術は従来から知られており、例えば、成形品の表面に対する浸漬処理および塗布処理が挙げられる。
しかしながら、成形品の表面にフッ素処理を施す方法では、撥油機能の持続性が弱く、繰り返し使用することにより撥油機能が低下するという問題があった。
そこで、撥油機能付与する方法として、熱可塑性樹脂に含フッ素重合体を配合することが検討されている(特許文献1および特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-037085号公報
【特許文献2】特開2020-100780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、発明者が検討を行ったところ、ポリカーボネート樹脂に含フッ素重合体を配合した場合、成形品の透明性が劣ってしまう場合があることが分かった。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物であって、撥油性に優れ、かつ、透明性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、および、前記樹脂組成物から得られた成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、特定のポリカーボネート樹脂と特定の含フッ素重合体を併用することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>式(1)で表される構成単位を全構成単位の0~90モル%、および、式(2)で表される構成単位を全構成単位の100~10モル%を含むポリカーボネート樹脂と含フッ素重合体とを含む、樹脂組成物であって、前記含フッ素重合体は、フッ素原子と、CH
2=CH-C(=O)-またはCH
2=C(CH
3)-C(=O)-を含む化合物F由来の構成単位を含み、前記ポリカーボネート樹脂と前記含フッ素重合体の合計質量に対して、前記含フッ素重合体を0.1~5.0質量%含む、樹脂組成物。
式(1)
【化1】
(式(1)中、X
1は下記のいずれかの式を表し、
【化2】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(2)
【化3】
(式(2)中、R
1はメチル基を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表し、X
2は下記のいずれかの式を表し、
【化4】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
<2>前記含フッ素重合体は、さらに、環状構造を有する、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記環状構造は、芳香環を含む、<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記化合物Fは、炭素数1~6のポリフルオロアルキル基および/または炭素数1~6のポリフルオロエーテル基を有する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<5>前記樹脂組成物から形成される試験片のISO-15184に従って測定した鉛筆硬度がHBまたはそれより硬い、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6><1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、ポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物であって、撥油性に優れ、かつ、透明性に優れた成形品を提供可能な樹脂組成物、および、前記樹脂組成物から得られた成形品を提供可能になった。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格が年度によって、測定方法等が異なる場合、特に述べない限り、2021年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0008】
本実施形態の樹脂組成物は、式(1)で表される構成単位を全構成単位の0~90モル%、および、式(2)で表される構成単位を全構成単位の100~10モル%を含むポリカーボネート樹脂と含フッ素重合体とを含む、樹脂組成物であって、前記含フッ素重合体は、フッ素原子と、CH2=CH-C(=O)-またはCH2=C(CH3)-C(=O)-を含む化合物F由来の構成単位を含み、前記ポリカーボネート樹脂と前記含フッ素重合体の合計質量に対して、前記含フッ素重合体を0.1~5.0質量%含むことを特徴とする。
汎用ポリカーボネート樹脂にフッ素系添加剤を配合すると、撥油性は相対的に向上するが、透明性が劣ってしまう場合がある。本実施形態では、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と所定の含フッ素重合体を用いることにより、透明性を高めている。
特に、含フッ素重合体中のフッ素原子の部分が撥油性を向上させる。特に、含フッ素重合体中は、フッ素原子と、CH2=CH-C(=O)-またはCH2=C(CH3)-C(=O)-を含む化合物F由来の構成単位を含む重合体であるため、含フッ素重合体中にフッ素原子が凝集せずに分散しており、撥油性を効果的に向上させると推測される。また、CH2=CH-C(=O)-またはCH2=C(CH3)-C(=O)-を含む化合物F由来の構成単位であるため、耐熱性の高い重合体となり、ポリカーボネート樹脂と共に溶融混練しても分解しにくい。そのため、得られる成形品の透明性を向上させると推測される。また、含フッ素重合体の配合量を調整することによって、透明性が劣ってしまうことを抑制していると推測される。
【0009】
<ポリカーボネート樹脂>
本実施形態の樹脂組成物は、式(1)で表される構成単位を全構成単位の0~90モル%、および、式(2)で表される構成単位を全構成単位の100~10モル%を含むポリカーボネート樹脂を含む。
式(1)で表される構成単位を含むことにより、樹脂組成物の耐衝撃性と耐熱性を向上させることができる。また、式(2)で表される構成単位を含むことにより、成形品の透明性や表面硬度を向上させることができる。
式(1)
【化5】
(式(1)中、X
1は下記のいずれかの式を表し、
【化6】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(2)
【化7】
(式(2)中、R
1はメチル基を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表し、X
2は下記のいずれかの式を表し、
【化8】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
【0010】
<<式(1)で表される構成単位>>
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位を含むことが好ましい。
式(1)
【化9】
(式(1)中、X
1は下記のいずれかの式を表し、
【化10】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
【0011】
ZがCと結合して形成される脂環式炭化水素としては、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。ZがCと結合して形成される置換基を有する脂環式炭化水素としては、上述した脂環式炭化水素基のメチル置換体、エチル置換体などが挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シクロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
【0012】
式(1)中、X
1は、
【化11】
である場合、R
3およびR
4は、少なくとも一方がメチル基であることが好ましく、両方がメチル基であることがより好ましい。
またX
1が、
【化12】
の場合、Zは、上記式(1)中の2個のフェニル基と結合する炭素Cと結合して、炭素数6~12の2価の脂環式炭化水素基を形成するが、2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
式(1)中、X
1は下記構造が好ましい。
【化13】
【0013】
上記式(1)で表される構成単位の好ましい具体例としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわち、ビスフェノールAから構成される構成単位(カーボネート構成単位)である。
【0014】
本実施形態において、ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位を含まなくてもよいし、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0015】
<<式(2)で表される構成単位>>
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、式(2)で表される構成単位を含むことが好ましい。
式(2)
【化14】
(式(2)中、R
1はメチル基を表し、R
2は水素原子またはメチル基を表し、X
2は下記のいずれかの式を表し、
【化15】
R
3およびR
4は、それぞれ独立に、水素原子またはメチル基を表し、ZはCと結合して炭素数6~12の、置換基を有していてもよい脂環式炭化水素を形成する基を表す。)
式(2)中の2つのR
2は、それぞれ同一でも、異なっていてもよく、好ましくは同一である。R
2は水素原子であることが好ましい。
【0016】
式(2)中、X
2は、
【化16】
である場合、R
3およびR
4は、少なくとも一方がメチル基であることが好ましく、両方がメチル基であることがより好ましい。
またX
2が、
【化17】
の場合、Zは、上記式(2)中の2個のフェニル基と結合する炭素Cと結合して、炭素数6~12の2価の脂環式炭化水素基を形成するが、2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、シキロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロドデシリデン基、アダマンチリデン基、シクロドデシリデン基等のシクロアルキリデン基が挙げられる。置換されたものとしては、これらのメチル置換基、エチル置換基を有するもの等が挙げられる。これらの中でも、シクロヘキシリデン基、シキロヘキシリデン基のメチル置換体(好ましくは3,3,5-トリメチル置換体)、シクロドデシリデン基が好ましい。
式(2)中、X
2は下記構造が好ましい。
【化18】
【0017】
本実施形態では、ポリカーボネート樹脂は、式(2)で表される構成単位を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0018】
本実施形態において、ポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位以外の他の構成単位を含んでいてもよい。他の構成単位としては、以下に示すジヒドロキシ化合物由来の構成単位が例示される。
【0019】
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルエチル)フェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-(1-メチルプロピル)フェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、4,4'-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、4,4'-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4'-ジヒドロキシフェニルエーテル、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-6-メチル-3-tert-ブチルフェニル)ブタン。
【0020】
また、他の構成単位の一実施形態として、国際公開第2017/099226号の段落0008に記載の式(2)で表される構成単位、国際公開第2017/099226号の段落0043~0052の記載、特開2011-046769号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0021】
また、上述の通り、本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、式(1)で表される構成単位を全構成単位の0~90モル%、および、式(2)で表される構成単位を全構成単位の100~10モル%を含む。
前記全構成単位における式(1)で表される構成単位の割合は、好ましくは10モル%以上であり、さらに好ましくは20モル%以上であり、一層好ましくは30モル%以上であり、より一層好ましくは40モル%以上である。前記全構成単位における式(1)で表される構成単位の割合の上限値は、80モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがさらに好ましく、60モル%以下であることが一層好ましい。
また、前記全構成単位における式(2)で表される構成単位の割合は、好ましくは20モル%以上であり、より好ましくは30モル%以上であり、一層好ましくは40モル%以上である。また、前記全構成単位における式(2)で表される構成単位の割合の下限値は、90モル%以下であることがより好ましく、80モル%以下であることがさらに好ましく、70モル%以下であることが一層好ましく、60モル%以下であることがより一層好ましい。
【0022】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂における、上記式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位の合計は、全構成単位の90モル%以上を占めることが好ましく、95モル%以上を占めることがより好ましく、97モル%以上を占めることがさらに好ましい。前記合計の上限としては、100モル%以下である。
【0023】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂は、以下の形態が好ましい。本実施形態では、(A1)または(A2)が好ましく、(A1)がより好ましい。
(A1)式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(A2)式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂
(A3)式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(A4)式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(A5)式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂と、式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂のブレンド物
(A6)上記(A1)~(A5)において、ポリカーボネート樹脂またはそのブレンド物を構成するポリカーボネート樹脂が式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位以外の他の構成単位を含むポリカーボネート樹脂
(A7)上記(A1)~(A6)のポリカーボネート樹脂またはブレンド物と、他の構成単位とからなるポリカーボネート樹脂とのブレンド物
【0024】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、下限値が5,000以上であることが好ましく、8,000以上であることがより好ましく、10,000以上であることがさらに好ましく、12,000以上であることが一層好ましい。また、Mvの上限値は、32,000以下であることが好ましく、30,000以下であることがより好ましく、29,000以下であることがさらに好ましく、27,000以下であることが一層好ましく、25,000以下であることがより一層好ましい。
2種以上のポリカーボネート樹脂を含む場合は、各ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量に質量分率をかけた値の合計とする。
粘度平均分子量を上記下限値以上とすることにより、成形性が向上し、かつ、機械的強度の高い成形品が得られる。また、上記上限値以下とすることにより、成形品の流動性が向上し、薄肉の成形品なども効率的に製造することができる。
特に、式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、20,000~30,000であることが好ましく、20,000~25,000であることがより好ましい。また、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、12,000~28,000であることが好ましく、18,000~27,000であることがより好ましい。
粘度平均分子量(Mv)は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0025】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂(式(1)で表される構成単位と式(2)で表される構成単位を含む全ポリカーボネート樹脂)は、ISO-15184に従って測定した鉛筆硬度が3B~2Hであることが例示され、2B~2Hが好ましい。鉛筆硬度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
特に、式(1)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度は、2B~HBであることが好ましく、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度は、H~2Hであることが好ましい。
【0026】
本実施形態で用いるポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されないが、例えば、特開2014-065901号公報の段落0027~0043および実施例の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0027】
本実施形態の樹脂組成物におけるポリカーボネート樹脂の含有量は、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、94質量%以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、樹脂組成物から形成された成形品の衝撃強度および耐熱性がより向上する傾向にある。また、99質量%以下であることが好ましい。前記上限値以下とすることにより、樹脂組成物から形成された成形品の表面硬度、および、樹脂組成物の流動性が向上する傾向にある。
【0028】
<含フッ素重合体>
本実施形態の樹脂組成物は、含フッ素重合体を含む。含フッ素重合体は、フッ素原子と、CH2=CH-C(=O)-またはCH2=C(CH3)-C(=O)-とを含む化合物F由来の構成単位を含む。このような含フッ素重合体を含むことにより、ポリカーボネート樹脂が本来的に有する高い透明性を維持しつつ、撥油性を達成することができる。この理由は、CH2=CH-C(=O)-またはCH2=C(CH3)-C(=O)-が重合した重合体とすることにより、含フッ素重合体の耐熱性が向上し、ポリカーボネート樹脂の成形時にも含フッ素重合体の分解を抑制できると考えられる。そのため、ポリカーボネート樹脂との相溶性を維持でき、白濁してしまうことを効果的に抑制できると推測される。また、含フッ素重合体において、側鎖にフッ素原子が満遍なく存在することにより、撥油性を効果的に達成することができると推測される。
【0029】
本実施形態で用いる含フッ素重合体は、さらに、環状構造を有することが好ましく、芳香環を含むことがより好ましい。環状構造を含むことにより、ポリカーボネート樹脂との相溶性が向上し、得られる成形品の透明性がより向上する傾向にある。特に、ポリカーボネート樹脂として芳香族ポリカーボネート樹脂を用いた時にその効果は顕著である。
前記環状構造としては、5員環または6員環の単環または、5員環または6員環の単環が2つ以上(好ましくは2つまたは3つ、より好ましくは2つ)縮合した縮合環であり、6員環の単環が好ましい。具体的には、シクロヘキサン環およびベンゼン環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。
【0030】
本実施形態においては、前記化合物Fは、含フッ素基を含むことが好ましく、炭素数1~6のポリフルオロアルキル基および/または炭素数1~6のポリフルオロエーテル基を有することがより好ましい。このような含フッ素基は、ポリカーボネート樹脂中で良好に分散し、また、得られる成形品の撥水性を阻害しにくく、撥油性を効果的に達成することができる。
【0031】
本実施形態においては、前記化合物Fは、式(F)で表されることが好ましい。
式(F)
Xf-Lf-Ar-Lf-Rf
(式(F)中、XfはCH2=CH-C(=O)-またはCH2=C(CH3)-C(=O)-であり、Lfは、それぞれ独立に、2価の連結基であり、Arは、芳香環であり、Rfは炭素数1~6のポリフルオロアルキル基または炭素数1~6のポリフルオロエーテル基である。)
Lfは、ヘテロ原子、または、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基、あるいは、これらの組み合わせからなる基であることが好ましい。また、Arはベンゼン環であることが好ましい。
化合物Fの分子量は、200~500であることが好ましい。
【0032】
本実施形態で用いる含フッ素重合体における化合物F由来の構成単位の割合は、全構成単位の、例えば、50質量%以上であり、90質量%以上であってもよい。
【0033】
本実施形態において、前記含フッ素重合体の含有量は、ポリカーボネート樹脂と含フッ素重合体の合計質量に対して、0.1~5.0質量%である。前記下限値以上とすることにより、撥油性が向上する。また、前記上限値以下とすることにより、ポリカーボネートの透明性を維持できる。前記下限値は、0.2質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.4質量%以上であることがさらに好ましい。また、前記上限値は、4.0質量%以下であることが好ましく、3.0質量%以下であることがより好ましく、2.0質量%以下であることがさらに好ましく、1.5質量%以下であることが一層好ましく、0.8質量%以下であることがより一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、含フッ素重合体を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0034】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、所望の諸物性を著しく損なわない限り、必要に応じて、上記以外の他成分を含有していてもよい。その他の成分の例を挙げると、上記したポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂(例えば、アクリル樹脂等)、各種樹脂添加剤などが挙げられる。
樹脂添加剤としては、例えば、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤等)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、染料、顔料、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
帯電防止剤としては、特開2016-216534号公報の段落0063~0067の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
難燃剤としては、特開2016-216534号公報の段落0068~0075の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0035】
<<安定剤>>
安定剤としては、熱安定剤や酸化防止剤が挙げられる。
安定剤としては、フェノール系安定剤、アミン系安定剤、リン系安定剤、チオエーテル系安定剤などが挙げられる。中でも本実施形態においては、リン系安定剤およびフェノール系安定剤が好ましい。
リン系安定剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜リン酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族または第2B族金属のリン酸塩;有機ホスフェート化合物、有機ホスファイト化合物、有機ホスホナイト化合物などが挙げられるが、有機ホスファイト化合物が特に好ましい。
【0036】
有機ホスファイト化合物としては、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には、例えば、ADEKA社製「アデカスタブ(登録商標。以下同じ)1178」、「アデカスタブ2112」、「アデカスタブHP-10」、城北化学工業社製「JP-351」、「JP-360」、「JP-3CP」、BASF社製「イルガフォス(登録商標。以下同じ)168」等が挙げられる。
【0037】
フェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が好ましく用いられる。ヒンダードフェノール系安定剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N'-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナミド]、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフェート、3,3',3'',5,5',5''-ヘキサ-tert-ブチル-a,a',a''-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-4,6-ジ-tert-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0038】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなヒンダードフェノール系安定剤としては、具体的には、例えば、BASF社製「Irganox(登録商標。以下同じ)1010」、「Irganox1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-50」、「アデカスタブAO-60」等が挙げられる。
【0039】
本実施形態の樹脂組成物における安定剤の含有量は、ポリカーボネート樹脂100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.005質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、また、通常1質量部以下、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.3質量部以下である。安定剤の含有量を前記範囲とすることにより、安定剤の添加効果がより効果的に発揮される。
本実施形態の樹脂組成物は、安定剤を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0040】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂、および、含フッ素重合体、ならびに、必要に応じて配合されるその他の成分の合計が100質量%となるように調整される。
本実施形態の樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂、および、含フッ素重合体の合計が樹脂組成物の95質量%以上を占めることが好ましく、98質量%以上を占めることがより好ましい。上限値としては、100質量%であってもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、ポリカーボネート樹脂、含フッ素重合体、および、安定剤の合計が樹脂組成物の96質量%以上を占めることが好ましく、99質量%以上を占めることがより好ましい。上限値としては、100質量%であってもよい。
【0041】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の樹脂組成物は、透明性に優れていることが好ましい。
具体的には、前記樹脂組成物から形成される2mmの厚さの試験片のJIS K-7105に従って測定したヘイズが50.0%以下であることが好ましく、40.0%以下であることがより好ましく、30.0%以下であることがさらに好ましく、20.0%以下であることが一層好ましく、10.0%以下であることがより一層好ましく、6.0%以下であることがさらに一層好ましく3.0%以下であることが特に一層好ましく、1.0%以下であることがより特に一層好ましい。前記ヘイズの下限値は、0%が理想であるが、0.1%以上が実際的である。
また、前記樹脂組成物から形成される2mmの厚さの試験片のJIS K-7105に従って測定した全光線透過率が70%以上であることが好ましく、76%以上であることがより好ましく80%以上であることがより好ましく、83%以上であることがさらに好ましく、85%以上であることが一層好ましく、87%以上であることがより一層好ましい。前記全光線透過率の上限値は、100%が理想であるが、99%以下が実際的である。
このような高い透明性は、例えば、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂を用いること、所定の含フッ素重合体を用いること、所定の含フッ素重合体や他の成分の配合量を調整すること等によって達成される。
【0042】
本実施形態の樹脂組成物を用いて得られる成形品は、油接触角が大きいことが好ましい。前記樹脂組成物を2mmの厚さの平板に成形したときの油接触角は、9°以上であることが好ましく、10°以上がより好ましく、13°以上がさらに好ましく、17°以上が一層好ましい。油接触角の上限値としては、特に限定はないが40°以下とすることができ、33°以下とすることもできる。
このような高い油接触角は、所定の含フッ素重合体を所定量用いることによって達成される。
【0043】
本実施形態の樹脂組成物は、成形品としたときの表面硬度が高いことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を平板状試験片(150mm×100mm×2mm厚)に成形し、ISO-15184に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度がHBまたはそれより硬いことが好ましく、Fまたはそれより硬いことがより好ましい。前記鉛筆硬度の硬さの上限は、例えば、3Hまたはそれより柔らかいことが挙げられ、2H以下であってもよい。
このような高い鉛筆硬度は、式(2)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂を用いることによって達成される。
【0044】
前記各種物性値は、後述する実施例の記載に従って測定される。
本実施形態の樹脂組成物は、上記物性値のうち少なくとも2つを満たすことが好ましく、少なくとも3つを満たすことがより好ましく、上記物性値のすべてを満たすことがさらに好ましい。
【0045】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物の製造方法に制限はなく、公知の樹脂組成物の製造方法を広く採用でき、ポリカーボネート樹脂、および、含フッ素重合体、ならびに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。なお、溶融混練の温度は特に制限されないが、通常240~320℃の範囲である。
【0046】
<成形品>
上記した樹脂組成物(例えば、ペレット)は、各種の成形法で成形して成形品とされる。すなわち、本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物から成形される。成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルム状、ロッド状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状、ボタン状のもの等が挙げられる。中でも、フィルム状、枠状、パネル状、ボタン状のものが好ましく、厚さは例えば、枠状、パネル状の場合1mm~5mm程度である。
【0047】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコ-ティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。特に、本実施形態の樹脂組成物は、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法で得られる成形品に適している。しかしながら、本実施形態の樹脂組成物がこれらで得られた成形品に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0048】
本実施形態の成形品は、電気電子機器、OA機器、携帯情報端末、機械部品、家電製品、車輌部品、各種容器、照明機器、ディスプレイ等の部品等に好適に用いられる。これらの中でも、特に、ディスプレイ用部品、携帯情報端末部品、家庭用電気製品用部品または室内調度品用部品などに好ましく用いられ、ディスプレイ用部品としてより好ましく用いられる。ディスプレイ用部品としては、車載内装用、スマートフォン用などが挙げられる。
【実施例0049】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0050】
1.原料
下記表1および表2に示す原料を用いた。
【表1】
【表2】
【0051】
<製造例1>
ビスフェノールC(BPC)26.14モル(6.75kg)と、ジフェニルカーボネート26.79モル(5.74kg)を、撹拌機および留出凝縮装置付きのアルミ(SUS)製反応器(内容積10リットル)内に入れ、反応器内を窒素ガスで置換後、窒素ガス雰囲気下で220℃まで30分間かけて昇温した。
次いで、反応器内の反応液を撹拌し、溶融状態下の反応液にエステル交換反応触媒として炭酸セシウム(Cs2CO3)を、BPC1モルに対し1.5×10-6モルとなるように加え、窒素ガス雰囲気下、220℃で30分間、反応液を撹拌醸成した。次に、同温度下で反応器内の圧力を40分かけて100Torrに減圧し、さらに、100分間反応させ、フェノールを留出させた。
次に、反応器内の温度を60分かけて284℃まで上げるとともに3Torrまで減圧し、留出理論量のほぼ全量に相当するフェノールを留出させた。次に、同温度下で反応器内の圧力を1Torr未満に保ち、さらに60分間反応を続け、重縮合反応を終了させた。このとき、撹拌機の撹拌回転数は38回転/分であり、反応終了直前の反応液温度は289℃、撹拌動力は0.60kWであった。
次に、溶融状態のままの反応液を二軸押出機に送入し、炭酸セシウムに対して4倍モル量のp-トルエンスルホン酸ブチルを二軸押出機の第1供給口から供給し、反応液と混練し、その後、反応液を二軸押出機のダイを通してストランド状に押し出し、カッターで切断してポリカーボネート樹脂A1のペレットを得た。
【0052】
<ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)の測定>
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度(η)(単位:dL/g)を求め、以下のSchnellの粘度式から算出した。
η=1.23×10-4Mv0.83
【0053】
<ポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度の測定>
ポリカーボネート樹脂ペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機((株)日本製鋼所製「J55-60H」)を用い、シリンダー設定温度280℃、金型温度80℃にて、スクリュー回転数100rpm、射出速度100mm/sの条件下にて、平板状試験片(90mm×50mm×2mm厚)を射出成形した。
上記で得られた平板状試験片(90mm×50mm×2mm厚)について、ISO-15184に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
鉛筆硬度試験機は、東洋精機(株)製のものを用いた。
【0054】
実施例1~12、比較例1~5
<樹脂組成物ペレットの製造>
上記表1または表2に記載した各成分を、下記の表3~表5に示す割合(質量部にて表示)にて配合し、タンブラーミキサーにて均一に混合した後、1ベントを二軸押出機(芝浦機械株式会社製、TEM26SX)に上流のフィーダーより供給し、シリンダー設定温度260℃、スクリュー回転数250rpm、吐出量25kg/hrにて、溶融混練して樹脂組成物ペレットを得た。
【0055】
<HAZE(一般金型、80℃)および全光線透過率>
上記で得られた樹脂組成物ペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機((株)日本製鋼所製「J55-60H」)を用い、シリンダー設定温度280℃、金型温度80℃にて、スクリュー回転数100rpm、射出速度100mm/sの条件下にて、平板状試験片(90mm×50mm×2mm厚)を射出成形した。
上記で得られた平板状試験片について、JIS K-7105に準じ、ヘイズメーターを用いて、23℃におけるHAZE(ヘイズ)および全光線透過率を測定した。
ヘイズメーターは、日本電色工業(株)製のNDH-2000型ヘイズメーターを用いた。
HAZEおよび全光線透過率の単位は、%で示した。
【0056】
<撥油性>
ポリカーボネート樹脂ペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機((株)日本製鋼所製「J55-60H」)を用い、シリンダー設定温度280℃、金型温度70℃にて、スクリュー回転数100rpm、射出速度25mm/sの条件下にて、3段型プレート(90mm×50mm×厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm))を射出成形した。
得られた3段型プレートの厚み2mmについて、静電気除去したのち、マイクロシリンジを用いて、液滴直径0.5mmのオレイン酸(東京化成工業社製、品番:O0180)を滴下し、接触角(単位:度)を測定した。
測定装置には、協和界面科学製固液界面解析装置DropMaster 300を用いた。油接触角が5度以下のものは、測定不可と示した。
【0057】
<樹脂組成物ペレットの鉛筆硬度の測定>
樹脂組成物ペレットを100℃で5時間乾燥した後、射出成形機((株)日本製鋼所製「J55-60H」)を用い、シリンダー設定温度280℃、金型温度80℃にて、スクリュー回転数100rpm、射出速度100mm/sの条件下にて、平板状試験片(90mm×50mm×2mm厚)を射出成形した。
上記で得られた平板状試験片(90mm×50mm×2mm厚)について、ISO-15184に準拠し、鉛筆硬度試験機を用いて、750g荷重にて測定した鉛筆硬度を求めた。
鉛筆硬度試験機は、東洋精機(株)製のものを用いた。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物から形成された成形品は、撥油性に優れ、かつ、透明性に優れていた。さらに、成形品の表面硬度も高かった。