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特開2023-19787アクリル系ゴム組成物およびゴム成形品
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  • 特開-アクリル系ゴム組成物およびゴム成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019787
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】アクリル系ゴム組成物およびゴム成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/06 20060101AFI20230202BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230202BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230202BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20230202BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20230202BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230202BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20230202BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20230202BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20230202BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
C08L33/06
C08K3/04
C08L101/00
C08K5/20
C08K5/098
C08K3/36
C08K5/17
C08K5/14
B29C45/02
B29C35/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124763
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】谷口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次
(72)【発明者】
【氏名】大西 將博
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 卓宏
【テーマコード(参考)】
4F203
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
4F203AA45A
4F203AB03
4F203AB07
4F203AB11
4F203AB18
4F203AH13
4F203AM32
4F203DA11
4F203DB01
4F203DC01
4F203DD01
4F203DF01
4F203DF02
4F203DL10
4F206AA45
4F206AB03
4F206AB07
4F206AB11
4F206AB18
4F206JA02
4F206JF01
4F206JL02
4J002BG041
4J002BG051
4J002BG061
4J002BG071
4J002CF032
4J002CF102
4J002CP032
4J002DA036
4J002DJ019
4J002EG018
4J002EG028
4J002EG038
4J002EG048
4J002EH147
4J002EK009
4J002EK019
4J002EK039
4J002EK049
4J002EK059
4J002EN018
4J002EN039
4J002EN049
4J002EN079
4J002EP018
4J002FD016
4J002FD022
4J002FD027
4J002FD149
4J002FD168
4J002GJ02
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】金型汚染や金型腐食の問題を解消するとともに、脱型や高速成形がし易く、シール性、耐久性等に優れるアクリル系ゴム組成物およびそれを用いたゴム成形品を提供する。
【解決手段】下記(A)成分を主成分とし下記(B)~(D)成分を含有するアクリル系ゴム組成物を用いる。
(A)ハロゲン系成分を含有しない、アクリル系ゴム。
(B)BET比表面積が15~100m2/gであるカーボンブラック。
(C)分子量が400~3500である可塑剤。
(D)多価第一級アミン化合物または有機過酸化物から選ばれた架橋剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分を主成分とし、下記(B)~(D)成分を含有する、アクリル系ゴム組成物。
(A)ハロゲン系成分を含有しない、アクリル系ゴム。
(B)BET比表面積が15~100m2/gであるカーボンブラック。
(C)分子量が400~3500である可塑剤。
(D)多価第一級アミン化合物または有機過酸化物から選ばれた架橋剤。
【請求項2】
前記(C)成分が、下記(α)の要件を満たす可塑剤である、請求項1記載のアクリル系ゴム組成物。
(α)|可塑剤のSP値-9.5|が2.0以下。
【請求項3】
前記(C)成分が、エステル系可塑剤である、請求項1または2記載のアクリル系ゴム組成物。
【請求項4】
さらに下記(E)成分を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のアクリル系ゴム組成物。
(E)HLB値が6.0以下または9.0以上である離型剤。
【請求項5】
前記(E)成分が、脂肪族アミン、脂肪酸アミド、金属石鹸、および石鹸からなる群から選ばれた少なくとも一つである、請求項4記載のアクリル系ゴム組成物。
【請求項6】
前記アクリル系ゴム組成物に含まれるシリカの含有量が、前記アクリル系ゴム組成物に含まれる充填材全体の15質量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のアクリル系ゴム組成物。
【請求項7】
シール部材用アクリル系ゴム組成物である、請求項1~6のいずれか一項に記載のアクリル系ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のアクリル系ゴム組成物の架橋物からなるゴム成形品。
【請求項9】
シール部材である、請求項8記載のゴム成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系ゴム組成物およびそれを用いたゴム成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリルゴムは、耐水性、150℃以上の耐熱性、耐油性を兼ね備えており、さらにフッ素ゴムに比べて安価である。そのため、オイルシール、ガスケット、Oリング等のシール部材の材料として広く用いられている。
そして、前記のような特性を有することから、自動車のエンジン周りのシール部材等の材料としても有利に用いられている。
【0003】
ところで、近年、自動車の電子化が進み、その電子部品周りのシール部材の需要が増加傾向にある。これらのシール部材には複雑で精密な形状が求められるため、その形状を再現するのに、前記シール部材を成形する際に使用する金型にも複雑で精密な形状のものが必要となる。
前記のような金型は非常に高価であるため、前記シール部材の形成材料としても、金型を汚染したり腐食させたりしないようなゴム組成物の使用が求められている。
また、前記のような形状の金型を用いた場合、前記シール部材の、脱型のし難さや、高速成形のし難さ等も問題となる。そのため、このような問題を解消することができるゴム組成物も求められている。
【0004】
ここで、一般的なアクリルゴム組成物について検討すると、例えばエポキシ架橋系のアクリルゴム組成物(アクリルゴムの架橋点モノマーにエポキシ系のモノマーを用いたもの)は架橋速度が遅いため、高速成形に向いておらず、塩素系のアクリルゴム組成物(アクリルゴムの架橋点モノマーに活性塩素系のモノマーを用いたもの)は、塩酸等の金型を腐食する物質が発生するため、金型のメンテナンス費用が膨大になる。さらに、一般的に、アクリルゴム組成物は、粘着性が強く、離型性が悪いものとして知られている。
【0005】
そのようななか、例えば、ステアリン酸等の加工助剤と黒鉛とを含有させることにより金型離型性等を改善したアクリルゴム組成物の使用が検討されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-214674号公報
【特許文献2】国際公開第2019/087788号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記特許文献1のアクリルゴム組成物からなるゴム成形品は、引張伸びが低いために、前記ゴム成形品を複雑な形状に金型成形すると、脱型時に破損しやすいといった問題がある。そのため、前記特許文献1のアクリルゴム組成物は、前記の脱型のし難さや、高速成形のし難さ等を解消するには至っていない。
【0008】
また、特許文献1のアクリルゴム組成物からなるゴム成形品は、前記のように引張伸びが低いために、高圧縮時に破損しやすいといった問題もある。さらに、自動車等の分野に使用されるゴム成形品においては、メンテナンスフリーの需要が伸びていることから、高耐久性(低圧縮永久歪み、耐熱老化性等)を示すものが求められている。
なお、エポキシ架橋系のアクリルゴム組成物や塩素系のアクリルゴム組成物は、圧縮永久歪み特性が悪く、そのため高耐久性が必要な用途への使用が難しい。
【0009】
一方、前記特許文献2には、成形・架橋後に、耐油性、耐熱性および耐加水分解性をいずれもバランスよく兼ね備えたエチレンアクリレートゴム組成物として、エチレンアクリレートゴムと、SP値が7以上の可塑剤と、脂肪族多価第一級アミンおよびその誘導体から選ばれる架橋剤とを、特定の割合で含有するエチレンアクリレートゴム組成物が開示されている。
しかしながら、このゴム組成物は、金型汚染や金型腐食の問題の克服や、脱型時の破損等の問題の克服に関しては、充分な検討がなされておらず、さらに、その実施例等において、活性基が多いシリカが多量に含まれており、離型性が悪いと考えられることから、未だ改善の余地がある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、金型汚染や金型腐食の問題を解消するとともに、脱型や高速成形がし易く、シール性、耐久性等に優れるアクリル系ゴム組成物およびそれを用いたゴム成形品の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するため、アクリル系ゴム組成物について鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、本発明者らは、金型腐食の問題を解消するとともに、架橋速度と圧縮永久歪み特性に優れたものとなるよう、架橋剤として、多価第一級アミン化合物または有機過酸化物を用い、ポリマーとして、ハロゲン系成分を含有しない、アクリル系ゴムを用いることを検討した。また、可塑剤等の使用によって、離型性、引張伸びを高めることも、併せて検討した。
しかしながら、前記検討のもと、各種実験を行ったところ、可塑剤、離型剤等がブリードしすぎて金型を汚染する等の問題が生じた。そこで、前記可塑剤として、その分子量が特定範囲内のものを用いるとともに、前記ゴム組成物にBET比表面積が特定範囲内のカーボンブラックを加えたところ、前記BET比表面積の範囲等によって可塑剤等のブリードが最適な状態に抑えられるようになることを突き止めた。さらに、前記カーボンブラックの含有により、強度と耐久性も加わった、低汚染で高離型性なゴム成形品を得ることができるようになることを見いだし、本発明に到達した。
【0012】
しかるに、本発明は、以下の[1]~[9]を、その要旨とする。
[1] 下記(A)成分を主成分とし、下記(B)~(D)成分を含有する、アクリル系ゴム組成物。
(A)ハロゲン系成分を含有しない、アクリル系ゴム。
(B)BET比表面積が15~100m2/gであるカーボンブラック。
(C)分子量が400~3500である可塑剤。
(D)多価第一級アミン化合物または有機過酸化物から選ばれた架橋剤。
[2] 前記(C)成分が、下記(α)の要件を満たす可塑剤である、[1]に記載のアクリル系ゴム組成物。
(α)|可塑剤のSP値-9.5|が2.0以下。
[3] 前記(C)成分が、エステル系可塑剤である、[1]または[2]に記載のアクリル系ゴム組成物。
[4] さらに下記(E)成分を含有する、[1]~[3]のいずれかに記載のアクリル系ゴム組成物。
(E)HLB値が6.0以下または9.0以上である離型剤。
[5] 前記(E)成分が、脂肪族アミン、脂肪酸アミド、金属石鹸、および石鹸からなる群から選ばれた少なくとも一つである、[4]に記載のアクリル系ゴム組成物。
[6] 前記アクリル系ゴム組成物に含まれるシリカの含有量が、前記アクリル系ゴム組成物に含まれる充填材全体の15質量%以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のアクリル系ゴム組成物。
[7] シール部材用アクリル系ゴム組成物である、[1]~[6]のいずれかに記載のアクリル系ゴム組成物。
[8] [1]~[6]のいずれかに記載のアクリル系ゴム組成物の架橋物からなるゴム成形品。
[9] シール部材である、[8]に記載のゴム成形品。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、そのアクリル系ゴム組成物が、ハロゲン系成分を含有しない、アクリル系ゴムを主成分とし、BET比表面積が15~100m2/gであるカーボンブラック(B)、分子量が400~3500である可塑剤(C)、および、多価第一級アミン化合物または有機過酸化物から選ばれた架橋剤(D)を含有する。そのため、金型汚染や金型腐食の問題を解消することができるとともに、脱型や高速成形がし易くなり、さらに、シール性、耐久性等にも優れた性能が得られるようになる。このことから、前記アクリル系ゴム組成物は、自動車のエンジン周りや電子部品周りのシール部材等のように、複雑で精密な形状が求められるゴム成形品の形成材料として、特に優れた性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例に使用の評価サンプルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限られるものではない。
【0016】
本発明の一実施形態であるアクリル系ゴム組成物(以下、「本ゴム組成物」という)は、下記(A)成分を主成分とし、下記(B)~(D)成分を含有するものである。ここで「主成分」とは、本ゴム組成物の特性に大きな影響を与える成分のことであり、通常は、本ゴム組成物全体の40質量%以上、好ましくは本ゴム組成物全体の40~80質量%、より好ましくは本ゴム組成物全体の40~75質量%が、下記(A)成分であるものを示す。
(A)ハロゲン系成分を含有しない、アクリル系ゴム。
(B)BET比表面積が15~100m2/gであるカーボンブラック。
(C)分子量が400~3500である可塑剤。
(D)多価第一級アミン化合物または有機過酸化物から選ばれた架橋剤。
【0017】
つぎに、本ゴム組成物を構成する各成分について説明する。
【0018】
《特定のゴム(A)》
本ゴム組成物のポリマー成分には、特定のゴム(A)、すなわち、ハロゲン系成分を含有しない、アクリル系ゴムが用いられる。アクリル系ゴムとしては、アクリル酸エステルを含む共重合体であって、アクリル酸エステル共重合体(ACM)、アクリル酸エステル-エチレン共重合体(AEM)、エチレン-カルボン酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体等が該当し、本ゴム組成物のポリマー成分として、これらは単独もしくは併せて用いられる。なお、本ゴム組成物のポリマー成分には、前記以外のポリマー成分は、不含とすることが望ましい。
ここで、「ハロゲン系成分を含有しない」とは、アクリル系ゴムの分子中に、ハロゲン(F,Cl,Br,I)を含まないことを意味する。特に、後記のようにアクリル系ゴムを合成する際の架橋点モノマーとして、ハロゲン系成分(例えば、2-クロロエチルビニルエーテル、クロロ酢酸ビニル等の、活性塩素系の架橋点モノマー等)を使用せずに合成したものを意味する。
そして、このように、ハロゲン系成分を含有しないアクリル系ゴムを用いることにより、本ゴム組成物は、金型腐食の問題を解消するとともに、良好なシール性を得ることができるようになる。
【0019】
前記AEMは、(メタ)アクリルモノマー1種以上とエチレンモノマーを共重合したものである。また、前記ACMは、エチレンモノマーを導入せず、あるいは特性に影響を与えない程度に導入(すなわち、5質量%未満で導入)し、(メタ)アクリルモノマー1種以上を共重合したものである。また、前記エチレン-カルボン酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリルモノマー1種以上、カルボン酸ビニルモノマー1種以上、エチレンモノマーを共重合したものである。本発明において、(メタ)アクリルモノマーとは、アクリルモノマーあるいはメタクリルモノマーを意味する。
【0020】
前記(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート,エチル(メタ)アクリレート,プロピル(メタ)アクリレート,n-ブチル(メタ)アクリレート,イソプロピル(メタ)アクリレート,イソブチル(メタ)アクリレート,n-ヘキシル(メタ)アクリレート,2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート,n-オクチル(メタ)アクリレート,メトキシメチル(メタ)アクリレート,メトキシエチル(メタ)アクリレート,エトキシエチル(メタ)アクリレート等が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0021】
前記カルボン酸ビニルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル等が、単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0022】
また、前記アクリル系ゴムは、前記モノマー組成を有し、架橋点モノマーと乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合等の公知の方法で共重合させたものである。前記架橋点モノマーの種類としては、先に述べたように、ハロゲン系成分を含有しない架橋点モノマーが用いられる。このような架橋点モノマーとしては、例えば、アクリル酸,メタクリル酸,クロトン酸,2-ペンテン酸,マレイン酸,フマル酸,イタコン酸,マレイン酸モノアルキルエステル,フマル酸モノアルキルエステル,イタコン酸モノアルキルエステル等のカルボキシ系のモノマー、グリシジルアクリレート,グリシジルメタクリレート,アリルグリシジルエーテル,メタアリルグリシジルエーテル等のエポキシ系のモノマー等があげられる。なかでも、高速成形性を高める観点等から、カルボキシ系のモノマーが好ましい。このようなカルボキシ系のモノマーにより、前記アクリル系ゴムは、カルボキシ基を有するようになる。
そして、これらの架橋点モノマーは、ポリマーの0.1~15質量%となるような比率で共重合させることができる。
【0023】
《特定のカーボンブラック(B)》
本ゴム組成物に用いられるカーボンブラック(B)としては、可塑剤等のブリードが最適な状態に抑えられるよう、先に述べたように、BET比表面積が15~100m2/gであるカーボンブラックが用いられる。前記の観点から、前記カーボンブラック(B)のBET比表面積は、好ましくは15~90m2/gの範囲であり、より好ましくは15~80m2/gの範囲である。
すなわち、前記BET比表面積が大きすぎると、可塑剤等のブリードの抑制効果が強くなりすぎ、逆に、前記BET比表面積が小さすぎると、所望とする可塑剤等のブリードの抑制効果が得られなくなる。
ここで、前記カーボンブラック(B)のBET比表面積は、例えば、試料を200℃で15分間脱気した後、吸着気体として混合ガス(N2:70%、He:30%)を用いて、BET比表面積測定装置(マイクロデータ社製、4232-II)により測定することができる。
なお、本ゴム組成物に用いられるカーボンブラックには、前記特定のカーボンブラック(B)以外のカーボンブラックは、不含とすることが望ましい。
【0024】
また、前記カーボンブラック(B)のDBP吸油量は、強度と耐久性の観点から、好ましくは40~165cm3/100gの範囲である。
ここで、前記カーボンブラック(B)のDBP吸油量は、JIS K 6217-4によって測定した値である。
【0025】
そして、前記カーボンブラック(B)の、BET比表面積(m2/g)×DBP吸油量(cm3/100g)の値は、優れた耐久性(低圧縮永久歪み、耐熱老化性等)が得られる観点から、好ましくは500~13000の範囲であり、より好ましくは750~10000の範囲である。
【0026】
前記カーボンブラック(B)のグレードは、特に限定されるものではないが、好ましくは、FT級、SRF級、SRF-HS級、GPF級、GPF-HS級、GPF-LS級、FEF級、FEF-HS級、FEF-LS級、MAF級、MAF-HS級、MAF-LS級、HAF級、HAF-HS級、HAF-LS級、LI-HAF級、N351級、N339級、IISAF-HS級のカーボンブラックがあげられる。なかでも、FT級、SRF級、SRF-HS級、GPF級、GPF-HS級、GPF-LS級、FEF級、FEF-HS級、FEF-LS級、MAF級、MAF-HS級、MAF-LS級、HAF級、HAF-HS級、HAF-LS級、LI-HAF級、N351級のカーボンブラックがより好ましい。
【0027】
前記カーボンブラック(B)の配合量は、シール性を損なうことなく優れた耐久性等を得る観点から、前記特定のゴム(A)100質量部に対し、15~100質量部であることが好ましく、より好ましくは20~95質量部の範囲であり、さらに好ましくは25~90質量部の範囲である。
なお、前記と同様の観点から、本ゴム組成物に含まれる充填材(フィラー)全体に対し、その85質量%以上が前記カーボンブラック(B)であることが好ましく、その90質量%以上が前記カーボンブラック(B)であることがより好ましい。特に好ましくは、本ゴム組成物に含まれる充填材が前記カーボンブラック(B)のみからなることである。
【0028】
《特定の可塑剤(C)》
本ゴム組成物に用いられる可塑剤(C)としては、離型性、引張伸び等を高め、脱型時の破損の問題を解消する観点から、先にも述べたように、分子量が400~3500である可塑剤が用いられる。同様の観点から、前記可塑剤(C)としては、分子量が400~3000の可塑剤が好ましく、分子量が500~3000の可塑剤がより好ましく、分子量が500~2500の可塑剤がさらに好ましい。
前記分子量が大きすぎると、可塑剤がブリードしすぎて、離型性を悪化させる。逆に、前記分子量が小さすぎると、可塑剤がブリードしすぎて離型性を悪化させるだけでなく、耐熱性や耐油性、圧縮永久歪みも悪化させる。
なお、前記可塑剤(C)の分子量は、その値が高いものは、質量平均分子量(Mw)の値を示したものである(後記の実施例で使用のものも同様)。ここで、前記質量平均分子量(Mw)は、標準ポリスチレン分子量換算による質量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフ(Waters社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本を直列にして用いることにより測定される。
また、本ゴム組成物に用いられる可塑剤には、前記特定の可塑剤(C)以外の可塑剤は、4質量部以下であることが望ましい。
【0029】
また、前記可塑剤(C)は、耐油性を保ちつつ、そのブリードが最適な状態に抑えられるよう、下記(α)の要件を満たす可塑剤であることが好ましい。
(α)|可塑剤のSP値-9.5|が2.0以下。
そして、同様の観点から、前記の|可塑剤のSP値-9.5|の値は1.7以下であることがより好ましく、1.4以下であることがさらに好ましい。
ここで、前記のSP値とは、溶解性パラメータとも言われ、物質の極性を示す指標(cal/cm31/2であり、下記の式(1)により求めることができる。
【0030】
【数1】
【0031】
そして、前記可塑剤(C)としては、前記特定の分子量を示す各種の可塑剤が用いられる。具体的には、前記特定の分子量を示す、エステル系可塑剤(ポリエステル系可塑剤、ポリエーテルエステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤、アジピン酸エーテルエステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、リン酸エーテルエステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エーテルエステル系可塑剤、アルキルスルホン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、テレフタル酸エステル系可塑剤、トリメリテートエステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤)、アルキルエーテル系可塑剤、ポリオキシエチレンエーテル系可塑剤、エポキシ化植物油系可塑剤、シリコーンオイル、水素添加炭化水素系可塑剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
なかでも、ポリマーであるアクリル系ゴムとの相性がより良いことから、前記可塑剤(C)が、エステル系可塑剤を含むものとすることが好ましく、より好ましくは、前記可塑剤(C)の50質量%以上をエステル系可塑剤とすることであり、さらに好ましくは、前記可塑剤(C)の70質量%以上をエステル系可塑剤とすることである。そして、前記エステル系可塑剤のなかでも、より好ましくは、ポリエステル系可塑剤、アジピン酸エーテルエステル系可塑剤、ポリエーテルエステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤、アジピン酸エステル系可塑剤等である。
【0032】
そして、前記可塑剤(C)の配合量は、離型性、引張伸び等を高める観点から、前記特定のゴム(A)100質量部に対して、5~30質量部であることが好ましく、より好ましくは5~25質量部の範囲であり、さらに好ましくは5~20質量部の範囲である。
【0033】
《特定の架橋剤(D)》
本ゴム組成物に用いられる架橋剤(D)としては、金型腐食の問題を解消し、かつ架橋速度と圧縮永久歪に優れる架橋系となるよう、先に述べたように、多価第一級アミン化合物または有機過酸化物から選ばれた架橋剤が用いられる。
ここで、前記特定のゴム(A)が、架橋基としてカルボキシ基を持ち、架橋剤として多価第一級アミン化合物が使用された場合、架橋時のアウトガスが少ないことから、より金型の低汚染を実現することができる。
【0034】
前記多価第一級アミン化合物とは、一分子内に複数の第一級アミンを有する化合物、およびその誘導体のことを言う。そして、前記多価第一級アミン化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミン-シンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミンジベンゾエート塩、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、4,4’-メチレンジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン-シンナムアルデヒド付加物、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0035】
また、前記有機過酸化物としては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート等のパーオキシケタール類や、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド類や、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m-トリオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類や、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクテート等のパーオキシエステル類や、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0036】
そして、前記架橋剤(D)として多価第一級アミン化合物を用いる場合、その配合量は、良好な架橋性が得られる等の観点から、前記特定のゴム(A)100質量部に対して、0.2~5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.25~4質量部の範囲であり、さらに好ましくは0.3~2.5質量部の範囲である。
【0037】
また、前記架橋剤(D)として有機過酸化物を用いる場合、その配合量は、良好な架橋性が得られる等の観点から、前記特定のゴム(A)100質量部に対して、0.2~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~7.5質量部の範囲であり、さらに好ましくは1~5質量部の範囲である。
なお、前記有機過酸化物として、純度100%の原体を用いない場合、原体換算した割合が前記範囲内となるよう、配合される。
【0038】
《特定の離型剤(E)》
本ゴム組成物には、必要に応じ、特定の離型剤(E)、すなわち、HLB値が6.0以下または9.0以上である離型剤が加えられる。離型剤のHLB値がこのような範囲であると、ポリマーであるアクリル系ゴムを構成する極性モノマーのHLB値(代表的な極性モノマーのHLB値は、メチルアクリレート:0.75、エチルアクリレート:0.60、ブチルアクリレート:0.43、メトキシエチルアクリレート:0.67、酢酸ビニル:0.75)から程よく離れた数値となるため、より離型性の向上に寄与することができる。
そして、前記の観点から、離型剤(E)のHLB値は、好ましくは1.0~6.0以下または10.0~20.0、より好ましくは1.5~6.0以下または11.0~19.0である。
ここで、HLBとは、親水性疎水性バランス(Hydrophile Lipophile Balance)の略であって、親水性か親油性かを知る指標となるものであり、HLB値が小さい程、親油性が強いことを示す。
本発明において、HLB値の算出は、有機概念図に用いられる無機性値、有機性値を使って、下記の式(2)により計算する。
HLB=10×無機性値/有機性値 ……(2)
【0039】
前記離型剤(E)としては、脂肪族アミン、脂肪酸アミド、金属石鹸、石鹸、オルガノシロキサン、ポリエーテル類、グリコール類、グリセリン類、アルカノールアミド等があげられ、これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。なかでも、脂肪族アミン、脂肪酸アミド、金属石鹸、石鹸に該当するものは、カーボンブラックとの相互作用により、離型性に優れ、かつ圧縮永久歪みへの悪影響が小さいため、好ましく用いられる。
また、金属石鹸、石鹸としては、電気陰性度が1.0以下の金属元素を含むものであることが、離型性等の観点からより好ましい。ここで、「電気陰性度が1.0以下の金属元素」とは、Li、Na、K、Ca、Ba等を意味する。
【0040】
前記のような脂肪族アミンとしては、例えば、ラウリルアミン、セチルアミン、ミリスチルアミン、パルミチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベヘニルアミン、ジラウリルアミン、ジミスチルアミン、ジセチルアミン、ジステアリルアミン、ジオレイルアミン、ジオクタデシルアミン、ジベヘニルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオレイルアミン、ジメチルオクタデシルアミン、ジラウリルメチルアミン、ジミリスチルメチルアミン、ジパルミチルメチルアミン、ジステアリルメチルアミン、ジオレイルメチルアミン、ジオクタデシルメチルアミン等があげられる。
【0041】
また、前記のような脂肪族アミドとしては、例えば、ステアリン酸モノアミド、ミリスチン酸モノアミド、オレイン酸モノアミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸モノアミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等があげられる。
【0042】
また、前記のような金属石鹸としては、例えば、ラウリン酸カルシウム、ミリスチン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸カルシウム、ベヘン酸カルシウム、モンタン酸カルシウム、ラウリン酸リチウム、ミリスチン酸リチウム、パルミチン酸リチウム、ステアリン酸リチウム、オレイン酸リチウム、ベヘン酸リチウム、モンタン酸リチウム、ラウリン酸バリウム、ミリスチン酸バリウム、パルミチン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、オレイン酸バリウム、ベヘン酸バリウム、モンタン酸バリウム、ラウリン酸アルミニウム、ミリスチン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、ベヘン酸アルミニウム、モンタン酸アルミニウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、モンタン酸亜鉛、ラウリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、ベヘン酸マグネシウム、モンタン酸マグネシウム等があげられる。
【0043】
また、前記のような石鹸としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、ベヘン酸カリウム、モンタン酸カリウム等があげられる。
【0044】
そして、前記離型剤(E)の配合量は、離型剤のブリードによる金型汚染等の問題を生じることなく良好な離型性を得る観点から、前記特定のゴム(A)100質量部に対して、0.1~8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3~7質量部の範囲であり、さらに好ましくは0.5~6質量部の範囲である。
【0045】
《その他の材料》
本ゴム組成物には、前記各材料の他、架橋助剤、共架橋剤、加工助剤、老化防止剤、難燃剤等が、適宜に配合される。
なお、例えば特開2019-214674号公報に開示のアクリルゴム組成物のように、黒鉛を配合すると、引張伸びが低下し、脱型時に破損しやすいといった問題が生じることから、本ゴム組成物には、黒鉛を不含とすることが好ましい。
また、本ゴム組成物に活性基を多く持つシリカが多く含まれていると、離型性が悪化するため、架橋剤や加工助剤の担持体として少量使用する程度に抑えるのが好ましい。具体的には、シリカの含有量を、充填材全体の15質量%以下にすることが好ましく、より好ましくは10質量%以下の範囲である。
【0046】
前記架橋助剤としては、例えば、グアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1,3-ジフェニルグアニジン、ジ-o-トリルグアニジン塩、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、ビスマレイミド、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0047】
そして、前記架橋助剤の配合量は、前記特定のゴム(A)100質量部に対して、0.1~6質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部の範囲である。
【0048】
前記共架橋剤としては、例えば、硫黄含有化合物、多官能性モノマー、マレイミド化合物、キノン化合物等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0049】
そして、前記共架橋剤の配合量は、前記特定のゴム(A)100質量部に対して、0.1~6質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~5質量部の範囲である。
【0050】
前記加工助剤としては、例えば、ステアリン酸などの脂肪酸、脂肪酸エステル、パラフィンオイル、ワックス、脂肪族アルコール、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0051】
そして、前記加工助剤の配合量は、前記特定のゴム(A)100質量部に対して、0.1~8質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~6質量部の範囲である。
【0052】
前記老化防止剤としては、例えば、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ベンズイミダゾール系老化防止剤等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0053】
そして、前記老化防止剤の配合量は、前記特定のゴム(A)100質量部に対して、0.1~6質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~4質量部の範囲である。
【0054】
前記難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、水酸化物等の難燃剤等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0055】
本ゴム組成物は、例えば、前記特定のゴム(A)、特定のカーボンブラック(B)を配合し、さらに、前記特定の可塑剤(C)、特定の架橋剤(D)や、その他、前記特定の離型剤(E)等を配合し、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより、調製することができる。
このようにして得られた本ゴム組成物を、金型を用いて所定形状に架橋(150~200℃で60~10分間の一次架橋、および150~180℃で60~240分間の二次架橋)することにより、目的とするゴム成形品を製造することができる。
本ゴム組成物は、ハロゲン系成分を含まないゴムを用いているため、金型を腐食しない。また、本ゴム組成物は、可塑剤や離型剤のブリード量が適正に調整されていることから、長期の金型使用後であっても、金型離型性が低下しない。これらのことから、本ゴム組成物の使用により、金型腐食や金型汚染が少なくなるため、金型関連コストが抑えられる。そして、本ゴム組成物は、架橋時に金型や治具(二次架橋時に使用の治具)に張り付くことが少なく、ゴムの引張伸びも大きいため、複雑な形状でも破損せずに脱型して成形することができる。また、本ゴム組成物の架橋物からなるゴム成形品は、製品同士の張り付きが少ない等の効果も奏する。
【0056】
本ゴム組成物は、例えば、オイルシール、ガスケット、Oリング等のシール部材の材料、ホース、オイルデフレクター、建築部材の材料等として用いることができる。特に、シール性、耐久性、耐油性等に優れることから、シール部材の材料として用いることが好ましい。そして、本ゴム組成物は、自動車のエンジン周りや電子部品周りのシール部材等のように、複雑で精密な形状が求められるゴム成形品の形成材料として、特に優れた性能を発揮することができる。
【0057】
そして、本ゴム組成物の架橋物からなるゴム成形品は、JIS K 6251に従って、引張速度500mm/minで引張試験を実施したときの引張伸びが、200%以上であることが好ましく、250%以上であることがより好ましい。
【0058】
また、本ゴム組成物の架橋物からなるゴム成形品は、JIS K 6262に従って、150℃で72時間静置した後の圧縮永久歪みが、30%未満であることが好ましく、26%未満であることがより好ましい。
【実施例0059】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、その要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
【0060】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記の各材料を準備した。なお、各材料に示される各数値(測定値等)は、先に説明した基準に従い求められた値である。
【0061】
[ポリマー]
下記の表1に示すポリマーを準備した。
【0062】
【表1】
【0063】
[カーボンブラック]
下記の表2に示すカーボンブラックを準備した。
【0064】
【表2】
【0065】
[可塑剤]
下記の表3に示す可塑剤を準備した。
【0066】
【表3】
【0067】
[架橋剤]
下記の表4に示す架橋剤を準備した。
【0068】
【表4】
【0069】
[離型剤]
下記の表5に示す離型剤を準備した。
【0070】
【表5】
【0071】
[架橋助剤]
下記の表6に示す架橋助剤を準備した。
【0072】
【表6】
【0073】
[老化防止剤]
ノンフレックスDCD(アミン系老化防止剤)、精工化学工業社製
【0074】
[加工助剤]
ステアリン酸つばき(ステアリン酸)、日油社製
【0075】
〔実施例1~12、比較例1~7〕
前記各成分を後記の表7および表8に示す割合で配合し、バンバリーミキサーおよびオープンロールを用いて混練することにより、アクリル系ゴム組成物を調製した。
【0076】
このようにして得られた実施例および比較例のアクリル系ゴム組成物に関し、下記の基準に従い、各特性の評価を行った。これらの結果を、後記の表7および表8に併せて示した。
【0077】
<金型腐食・離型性>
得られたゴム組成物を、図1に示すような略筒状の形状および寸法の架橋ゴム(サンプル)が得られるトランスファー成形用金型を用いて180℃で10分間保持することにより、前記ゴム組成物を架橋させた後、その架橋ゴム(サンプル)を脱型するといった一連の作業を繰り返し行った。そして、前記作業を1000回(1000ショット)行った後、および2000回(2000ショット)行った後の、金型腐食の状態と離型性を、下記の基準に沿って評価した。
(金型腐食)
〇:腐食無し。
×:腐食有り。
(離型性)
◎:ストレスなく脱型することができる。
〇:少しタックするが、問題無く脱型することができる。
△:脱型時に大きくタックする。
×:脱型時にサンプルに破損が生じ、ゴムが金型に残る。
【0078】
<引張伸び>
得られたゴム組成物を、所定の金型を用いて160℃で45分間保持することにより架橋し、120mm×120mm×厚み2mmのシートを作製した。また、二次架橋として、出来上がった架橋ゴムサンプルをオーブンで160℃×180分間加熱した。
このようにして得られたシートを、JIS K 6251に従い、JIS5号ダンベル形状に打ち抜き、引張評価サンプルを作製した。
そして、JIS K 6251に従って、引張評価サンプルに対し、引張速度500mm/minで引張試験を実施し、サンプルが破断した時の引張伸び(%)を測定した。なお、この試験において、本発明に要求される引張伸びは200%以上である。
【0079】
<150℃72時間圧縮永久歪み>
JIS K 6262に従い、得られたゴム組成物を、所定の金型を用いて160℃で45分間保持することにより架橋し、直径29mm、厚み12.5mmの、円形状の架橋ゴムサンプルを作製した。また、二次架橋として、出来上がった架橋ゴムサンプルをオーブンで160℃×180分間加熱した。
このようにして得られた圧縮永久歪み評価サンプルに対し、JIS K 6262に従って、25%圧縮させたまま、150℃で72時間静置し、圧縮永久歪み(%)を測定した。なお、この試験において、本発明に要求される圧縮永久歪みは30%未満である。
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【0082】
前記表7および表8に示す結果より、実施例のゴム組成物は、特殊なトランスファー成形用金型を用いて2000ショット金型成形を行った後であっても、金型腐食を生じさせず、離型性に優れていることがわかる。さらに、実施例のゴム組成物は、その架橋ゴムにおいて、引張伸びが大きいため、複雑な形状に金型成形した場合であっても脱型時に破損せず、さらに、150℃で72時間圧縮させた後の圧縮永久歪みが小さいことから、優れたシール性能等が期待される結果となった。
【0083】
これに対し、比較例1とおよび比較例6のゴム組成物は、可塑剤を一切含んでおらず、離型性に劣る結果となった。特に比較例6のゴム組成物は、引張伸びが小さく、より離型性に劣る結果となった。比較例2のゴム組成物は、分子量が小さ過ぎる可塑剤を使用しており、150℃で72時間圧縮させた後の圧縮永久歪みに劣る結果となり、離型性にも劣る結果となった。比較例3のゴム組成物は、分子量が大き過ぎる可塑剤を使用しており、離型性に劣る結果となった。比較例4のゴム組成物は、BET比表面積が大きなカーボンブラックを用いており、150℃で72時間圧縮させた後の圧縮永久歪みに劣る結果となり、離型性にも劣る結果となった。比較例5のゴム組成物は、BET比表面積が小さなカーボンブラックを用いており、2000ショット金型成形を行った後の離型性に劣る結果となった。比較例7のゴム組成物は、そのポリマーであるACMが、塩素基を有するものであるため、金型腐食および離型性の問題が生じており、さらに、150℃で72時間圧縮させた後の圧縮永久歪みにも劣る結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のアクリル系ゴム組成物は、オイルシール、ガスケット、Oリング等のシール部材の材料、ホース、オイルデフレクター、建築部材の材料等として用いることができる。特に、シール性、耐久性、耐油性等に優れることから、シール部材の材料として用いることが好ましい。そして、本ゴム組成物は、自動車のエンジン周りや電子部品周りのシール部材等のように、複雑で精密な形状が求められるゴム成形品の形成材料として、特に優れた性能を発揮することができる。
図1