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特開2023-19788ハードコートフィルムおよびその製造方法、ハードコートフィルムを含むディスプレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019788
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ハードコートフィルムおよびその製造方法、ハードコートフィルムを含むディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20230202BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20230202BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20230202BHJP
【FI】
G02B1/14
C08G59/32
C08J7/046 CEP
C08J7/046 CEY
C08J7/046 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124766
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】田口 祐介
(72)【発明者】
【氏名】石黒 文康
(72)【発明者】
【氏名】高麗 寛人
【テーマコード(参考)】
2K009
4F006
4J036
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009BB14
2K009BB24
2K009BB28
2K009CC33
2K009CC42
2K009DD02
2K009DD05
4F006AA02
4F006AA22
4F006AA36
4F006AB34
4F006AB39
4F006AB66
4F006BA02
4F006DA04
4F006EA03
4F006EA05
4J036AB20
4J036AK17
4J036GA26
4J036JA01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の目的は、折れ曲がり復元性、低位相差に優れ、硬度と柔軟性を兼ね備えたフレキシブルハードコートフィルムを提供することである。また、該ハードコートフィルムの製造方法と、該ハードコートフィルムを含むディスプレイを提供することである。
【解決手段】透明樹脂フィルム層とハードコート層を有し、厚さ20~80μmの透明樹脂フィルム層の少なくとも一方の面に、厚さ3~49μmの分子内に脂環式エポキシ基を有するシラン化合物を含む縮合物の組成物の硬化物であるハードコート層を有し、正面位相差が0~20nmであり、60℃90%RH環境で半径3mmで24時間折り曲げた後に負荷を取り除いて測定される、折れ曲がり復元角度が70~180°であることを特徴とするハードコートフィルムにより上記課題を解決できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂フィルム層とハードコート層を有するハードコートフィルムであって、
厚さ20~80μmの透明樹脂フィルム層の少なくとも一方の面に、
厚さ3~49μmの下記一般式(1)で表される分子内に脂環式エポキシ基を有するシラン化合物を含む縮合物の組成物の硬化物であるハードコート層を有し、
正面位相差が0~20nmであり
60℃90%RH環境で半径3mmで24時間折り曲げた後に負荷を取り除いて測定される、折れ曲がり復元角度が70~180°であることを特徴とするハードコートフィルム。
(但し、式(1)中、Rは脂環式エポキシ基を含有する基であり、Rは、水素原子またはアルキル基であり、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基、xは1~3の整数である)
【化1】
【請求項2】
透明樹脂フィルム層単独での折れ曲がり復元角度に対する、透明樹脂フィルム層にハードコート層形成後のハードコートフィルムとしての折れ曲がり復元角度の比が1.20以上であることを特徴とする請求項1に記載のハードコートフィルム
【請求項3】
分子内に脂環式エポキシ基を有するシラン化合物に加え、一般式(2)で表されるシラン化合物を含む縮合物の組成物の硬化物であるハードコート層を有するハードコートフィルムであり、
前記縮合物の[一般式(1)で表される構成単位]/([一般式(1)で表される構成単位]+[一般式(2)で表される構成単位])が0.5以上1.0以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のハードコートフィルム。
(但し、一般式(2)で表されるシラン化合物は、一般式(1)で表されるシラン化合物と異なるシラン化合物であり、一般式(2)中のRは脂環式エポキシ基を含有せず、置換もしくは無置換の二重結合を含有する基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基を含有する基、置換もしくは無置換の芳香環を含有する基、置換もしくは無置換のアルキル基、グリシジル基を有する基、オキセタニル基を有する基、または水素原子である。)
【化2】
【請求項4】
前記シラン化合物の縮合物に含まれる下記式(3)で表される構成単位と、下記式(4)で表される構成単位のモル比[式(3)で表される構成単位]/[式(4)で表される構成単位]が0.8以上5未満であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のハードコートフィルム。
(但し、式(3)中、Raは式(1)中のR1及び式(2)中のRと同じであり、式(4)中、Rは式(1)中のR1及び式(2)中のRと同じであり、Zはヒドロキシル基または、アルキル基を有するアルコキシ基である 。)
【化3】
【化4】
【請求項5】
全光線透過率が90%以上であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項6】
YI値が2.0以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項7】
ハードコート層を内面にして、JIS-K5600に準拠したマンドレル屈曲試験で半径1mm以下で折曲げが可能であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項8】
ハードコート層を外面にして、JIS-K5600に準拠したマンドレル屈曲試験で半径5mm以下で折曲げが可能であることを特徴とする請求項1~7のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項9】
半径2.5mmで5万回以上の繰り返し曲げが可能であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項10】
JIS-K5600に準拠した鉛筆硬度試験において6B以上の硬度を有することを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項11】
光軸が平行な2枚の直線偏光板の間に配置された時に、白色光源の透過光に虹ムラを生じないことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項12】
前記透明樹脂フィルムが(メタ)アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルムから選ばれる1種類であることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【請求項13】
透明樹脂フィルム上に縮合物と光カチオン開始剤を含む組成物を塗工する工程の後に、活性エネルギー線を照射する工程とを実施することを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載のハードコートフィルムの製造方法。
【請求項14】
請求項1~12いずれかに記載のハードコートフィルムを含むことを特徴とするディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルムおよびその製造方法に関する。また、そのハードコートフィルムを含むディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイのフレキシブル化が求められており、ディスプレイのカバーウインドウや基板等に用いられてきたガラス材料を、柔軟性に優れたプラスチックフィルム材料に置き換える検討がなされている。このようなフレキシブルディスプレイの中でも、折り畳み可能なディスプレイ(フォルダブルディスプレイ)、巻取可能なディスプレイ(ローラブルディスプレイ)に用いられるカバーウィンドウや基板においては、透明性、硬度、耐屈曲性が求められる。特に、未使用時に折り曲げられた状態で保持されるフォルダブルディスプレイや、未使用時にロール状に巻き取られた状態で保持されるローラブルディスプレイのようなフレキシブルディスプレイは、使用時には平面に近い形状で用いられることが多いため、折り曲げや巻き取り状態で保持された時の変形が、平面に戻した時に解消する性質である、折れ曲がり復元性が強く求められる。
【0003】
カバーウィンドウや基板のガラス代替材料として、脂環式エポキシ基を含有するシロキサン化合物をベースとする組成物の硬化物からなるハードコート層を、未延伸でフィルム化した透明ポリイミドフィルムに積層したハードコートフィルムがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-70800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シロキサン化合物を用いたハードコート層はUV硬化時の材料の硬化収縮が比較的小さく、ハードコートフィルムのカールや、ある程度厚いハードコート層形成時のハードコート層のクラックが生じにくいものの、透明ポリイミドフィルムの場合は未延伸でも位相差が大きく、ハードコートフィルムに大きな位相差が生じ、ディスプレイ部材として用いた際に偏光サングラスなど偏光子を通して視認した画像が見えにくくなる問題が生じる場合があった。
したがって、本発明の目的は、折れ曲がり復元性、低位相差に優れ、硬度と柔軟性を兼ね備えたフレキシブルハードコートフィルムを提供することである。また、該ハードコートフィルムの製造方法と、該ハードコートフィルムを含むディスプレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑み鋭意検討の結果、分子内に脂環式エポキシ基を有するシラン化合物を含む縮合物の組成物の硬化物であるハードコート層に、従来は知られていなかった折れ曲がり復元性の大幅な向上効果があることを見出した。これにより、分子内に脂環式エポキシ基を有するシラン化合物を含む縮合物の組成物の硬化物であるハードコート層を透明樹脂フィルム層に形成することで、折れ曲がり復元性が大幅に改善し、折れ曲がり復元性、低位相差に優れ、硬度と柔軟性を兼ね備えたフレキシブルハードコートフィルムが得られることを見出した。本発明を、以下に示す。
【0007】
1).透明樹脂フィルム層とハードコート層を有するハードコートフィルムであって、
厚さ20~80μmの透明樹脂フィルム層の少なくとも一方の面に、
厚さ3~49μmの下記一般式(1)で表される分子内に脂環式エポキシ基を有するシラン化合物を含む縮合物の組成物の硬化物であるハードコート層を有し、
正面位相差が0~20nmであり
60℃90%RH環境で半径3mmで24時間折り曲げた後に負荷を取り除いて測定される、折れ曲がり復元角度が70~180°であることを特徴とするハードコートフィルム。(但し、式(1)中、Rは脂環式エポキシ基を含有する基であり、Rは、水素原子またはアルキル基であり、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基、xは1~3の整数である)
【化1】
【0008】
2).透明樹脂フィルム層単独での折れ曲がり復元角度に対する、透明樹脂フィルム層にハードコート層形成後のハードコートフィルムとしての折れ曲がり復元角度の比が1.20以上であることを特徴とする1)に記載のハードコートフィルム
【0009】
3).分子内に脂環式エポキシ基を有するシラン化合物に加え、一般式(2)で表されるシラン化合物を含む縮合物の組成物の硬化物であるハードコート層を有するハードコートフィルムであり、
前記縮合物の[一般式(1)で表される構成単位]/([一般式(1)で表される構成単位]+[一般式(2)で表される構成単位])が0.5以上1.0以下であることを特徴とする1)または2)に記載のハードコートフィルム。
(但し、一般式(2)で表されるシラン化合物は、一般式(1)で表されるシラン化合物と異なるシラン化合物であり、一般式(2)中の式(2)中、Rは脂環式エポキシ基を含有せず、置換もしくは無置換の二重結合を含有する基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基を含有する基、置換もしくは無置換の芳香環を含有する基、置換もしくは無置換のアルキル基、グリシジル基を有する基、オキセタニル基を有する基、または水素原子である。)
【化2】
【0010】
4).前記縮合物に含まれる下記式(3)で表される構成単位と、下記式(4)で表される構成単位のモル比[式(3)で表される構成単位]/[式(4)で表される構成単位]が0.8以上5未満であることを特徴とする1)から3)のいずれかに記載のハードコートフィルム。(但し、式(3)中、Rは式(1)中のR及び式(2)中のRと同じであり、式(4)中、Rは式(1)中のR及び式(2)中のRと同じであり、Zはヒドロキシル基または、アルキル基を有するアルコキシ基である 。)
【化3】
【化4】
【0011】
5).全光線透過率が90%以上であることを特徴とする1)から4)のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【0012】
6).YI値が2.0以下であることを特徴とする1)から5)のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【0013】
7).ハードコート層を内面にして、JIS-K5600に準拠したマンドレル屈曲試験で半径1mm以下で折曲げが可能であることを特徴とする1)~6)のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【0014】
8).ハードコート層を外面にして、JIS-K5600に準拠したマンドレル屈曲試験で半径5mm以下で折曲げが可能であることを特徴とする1)~7)のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【0015】
9).半径2.5mmで5万回以上の繰り返し曲げが可能であることを特徴とする1)~8)のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【0016】
10).JIS-K5600に準拠した鉛筆硬度試験において6B以上の硬度を有することを特徴とする1)~9)のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【0017】
11).光軸が平行な2枚の直線偏光板の間に配置された時に、白色光源の透過光に虹ムラを生じないことを特徴とする1)~10)のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【0018】
12).前記透明樹脂フィルムが(メタ)アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルムから選ばれる1種類であることを特徴とする1)~11)のいずれかに記載のハードコートフィルム。
【0019】
13).透明樹脂フィルム上に縮合物と光カチオン開始剤を含む組成物を塗工する工程の後に、活性エネルギー線を照射する工程とを実施することを特徴とする、1)~12)のいずれかに記載のハードコートフィルムの製造方法。
【0020】
14).1)~12)いずれかに記載のハードコートフィルムを含むことを特徴とするディスプレイ。
【発明の効果】
【0021】
本件発明により、折れ曲がり復元性、低位相差に優れ、硬度と柔軟性を兼ね備えたフレキシブルハードコートフィルムを提供することである。また、該ハードコートフィルムの製造方法と、該ハードコートフィルムを含むディスプレイを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本件発明のハードコートフィルムは、透明樹脂フィルム層とハードコート層を有し、
厚さ20~80μmの透明樹脂フィルム層の少なくとも一方の面に、
厚さ3~49μmの下記一般式(1)で表される分子内に脂環式エポキシ基を有するシラン化合物を含む縮合物の組成物の硬化物であるハードコート層を有し、
正面位相差が0~20nmであり、
60℃90%RH環境で半径3mmで24時間折り曲げた後に負荷を取り除いて測定される、折れ曲がり復元角度が70~180°であることを特徴とする。(但し、式(1)中、Rは脂環式エポキシ基を含有する基であり、Rは、水素原子またはアルキル基であり、Rは水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基、xは1~3の整数である)
【化1】
【0023】
本件発明の一般式(1)で表される分子内に脂環式エポキシ基を有するシラン化合物を含む縮合物は、縮合物またはシルセスキオキサン化合物とも表現する。
【0024】
[シルセスキオキサン化合物]
本発明のハードコートフィルムに用いられるハードコート組成物は、シルセスキオキサン化合物を必須成分として含有する。
シルセスキオキサン化合物は下記一般式(1)で表されるシラン化合物を含む縮合物であり、一般式(1)中、Rは脂環式エポキシ基を含有する基を表す。脂環式エポキシ基を含有する基とは例えば、脂環式エポキシ基や、脂環式エポキシ基を置換基として有するアルキル基や、脂環式エポキシ基を置換基として有するエチレングリコール基などが挙げられる。耐熱性や耐屈曲性の観点から、脂環式エポキシ基を置換基として有するアルキル基が好ましい。このような脂環式エポキシ基を置換基として有するアルキル基の具体例としては例えば、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル基、4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチル基、5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチル基、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシル基、7-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘプチル基、8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチル基、9-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ノニル基、10-(3,4-エポキシシクロヘキシル)デシル基、11-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ウンデシル基、12-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ドデシル基、13-(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリデシル基、14-(3,4-エポキシシクロヘキシル)テトラデシル基、15-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンタデシル基、16-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキサデシル基、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)イソプロピル基、3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)イソブチル基、6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0025】
一般式(1)中、Rは水素原子または炭素数1~10のアルキル基を示す。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、エチルヘキシル基等が挙げられる。加水分解性シリル基を有するシラン化合物を加水分解および縮合させやすいという観点から、Rのアルキル基はメチル基、エチル基またはプロピル基が好ましく、最も好ましくはメチル基である。
【0026】
一般式(1)中、Rは水素原子または炭素数1~16のアルキル基、炭素数6~25のアリール基および炭素数7~12のアラルキル基から選択される1価の炭化水素基を示す。このような炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、エチルヘキシル基、ベンジル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0027】
一般式(1)のxは、1~3の整数であり、ハードコートに要求される諸物性に応じて適宜選択される。
【0028】
シラン化合物(1)の具体例としては、例えば、(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルジメトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシル)ジメチルメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルジエトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)ジメチルエトキシシラン、{(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル}トリメトキシシラン、{(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル}メチルジメトキシシラン、{(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル}ジメチルメトキシシラン、{(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル}トリエトキシシラン、{(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル}メチルジエトキシシラン、{(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル}ジメチルエトキシシラン、{2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル}トリメトキシシラン、{2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル}メチルジメトキシシラン、{2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル}ジメチルメトキシシラン、{2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル}トリエトキシシラン、{2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル}メチルジエトキシシラン、{2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル}ジメチルエトキシシラン、{3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル}トリメトキシシラン、{3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル}メチルジメトキシシラン、{3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル}ジメチルメトキシシラン、{3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル}トリエトキシシラン、{3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル}メチルジエトキシシラン、{3-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピル}ジメチルエトキシシラン、{4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチル}トリメトキシシラン、{4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチル}メチルジメトキシシラン、{4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチル}ジメチルメトキシシラン、{4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチル}トリエトキシシラン、{4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチル}メチルジエトキシシラン、{4-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ブチル}ジメチルエトキシシラン、{5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチル}トリメトキシシラン、{5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチル}メチルジメトキシシラン、{5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチル}ジメチルメトキシシラン、{5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチル}トリエトキシシラン、{5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチル}メチルジエトキシシラン、{5-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ペンチル}ジメチルエトキシシラン、{6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシル}トリメトキシシラン、{6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシル}メチルジメトキシシラン、{6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシル}ジメチルメトキシシラン、{6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシル}トリエトキシシラン、{6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシル}メチルジエトキシシラン、{6-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキシル}ジメチルエトキシシラン、{8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチル}トリメトキシシラン、{8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチル}メチルジメトキシシラン、{8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチル}ジメチルメトキシシラン、{8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチル}トリエトキシシラン、{8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチル}メチルジエトキシシラン、{8-(3,4-エポキシシクロヘキシル)オクチル}ジメチルエトキシシラン、{10-(3,4-エポキシシクロヘキシル)デシル}トリメトキシシラン、{10-(3,4-エポキシシクロヘキシル)デシル}メチルジメトキシシラン、{10-(3,4-エポキシシクロヘキシル)デシル}ジメチルメトキシシラン、{10-(3,4-エポキシシクロヘキシル)デシル}トリエトキシシラン、{10-(3,4-エポキシシクロヘキシル)デシル}メチルジエトキシシラン、{10-(3,4-エポキシシクロヘキシル)デシル}ジメチルエトキシシラン、{12-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ドデシル}トリメトキシシラン、{12-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ドデシル}メチルジメトキシシラン、{12-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ドデシル}ジメチルメトキシシラン、{12-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ドデシル}トリエトキシシラン、{12-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ドデシル}メチルジエトキシシラン、{12-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ドデシル}ジメチルエトキシシラン、{14-(3,4-エポキシシクロヘキシル)テトラデシル}トリメトキシシラン、{14-(3,4-エポキシシクロヘキシル)テトラデシル}メチルジメトキシシラン、{14-(3,4-エポキシシクロヘキシル)テトラデシル}ジメチルメトキシシラン、{14-(3,4-エポキシシクロヘキシル)テトラデシル}トリエトキシシラン、{14-(3,4-エポキシシクロヘキシル)テトラデシル}メチルジエトキシシラン、{14-(3,4-エポキシシクロヘキシル)テトラデシル}ジメチルエトキシシラン、{16-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキサデシル}トリメトキシシラン、{16-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキサデシル}メチルジメトキシシラン、{16-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキサデシル}ジメチルメトキシシラン、{16-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキサデシル}トリエトキシシラン、{16-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキサデシル}メチルジエトキシシラン、{16-(3,4-エポキシシクロヘキシル)ヘキサデシル}ジメチルエトキシシラン、等の脂環式エポキシ基含有シランが挙げられる。
【0029】
シラン化合物の縮合物は一般式(1)で表されるシラン化合物以外に、一般式(1)で表されるシラン化合物と異なる一般式(2)で表されるシラン化合物を共縮合することができる。共縮合される場合は、[一般式(1)で表される構成単位]/([一般式(1)で表される構成単位]+[一般式(2)で表される構成単位])が0.5以上1.0以下であることが好ましい。この範囲であれば、ハードコートフィルムの硬度、耐屈曲性が良好となる傾向がある。
【化2】
【0030】
一般式(2)中、Rは、脂環式エポキシ基を含有せず、置換もしくは無置換の二重結合を含有する基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基を含有する基、置換もしくは無置換の芳香環を含有する基、置換もしくは無置換のアルキル基、グリシジル基を有する基、オキセタニル基を有する基、または水素原子である。これらの中でも、一般式(1)であらわされるシラン化合物との反応性や、透明樹脂フィルム層との密着性の観点から、グリシジル基を有する基が好ましい場合がある。
【0031】
上記置換もしくは無置換の二重結合を含有する基としては例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、(メタ)アクリロイル基等が挙げられる。上記置換もしくは無置換のシクロアルキル基を含有する基としては例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロブチルエチル基、シクロペンチルエチル基、シクロヘキシルエチル基等が挙げられる。上記置換もしくは無置換の芳香環を含有する基としては例えば、フェニル基、4-メチルフェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。上記置換もしくは無置換のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、エチルヘキシル基等が挙げられる。前記グリシジル基を有する基としては例えば、グリシジルオキシメチル基、2-グリシジルオキシエチル基、3-グリシジルオキシプロピル基、4-グリシジルオキシブチル基、5-グリシジルオキシペンチル基、6-グリシジルオキシヘキシル基、7-グリシジルオキシヘプチル基、8-グリシジルオキシオクチル基、9-グリシジルオキシノニル基、10-グリシジルオキシデシル基、11-グリシジルオキシウンデシル基、12-グリシジルオキシドデシル基、14-グリシジルオキシテトラデシル基、16-グリシジルオキシヘキサデシル基等が挙げられる。オキセタニル基を有する基としては例えば、オキセタニルメチル基、3-メチル-3-オキセタニルメトキシメチル基、3-エチル-3-オキセタニルメトキシメチル基等が挙げられる。
【0032】
一般式(2)としては、特に限定されないが、Rがアルケニル基である化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
が(メタ)アクリロイル基置換アルキル基である化合物としては、1-(メタ)アクリロイルオキシメチルトリメトキシシラン、1-(メタ)アクリロイルオキシメチルメチルジメトキシシラン、1-(メタ)アクリロイルオキシメチルトリエトキシシラン、1-(メタ)アクリロイルオキシメチルメチルジエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルトリメトキシシラン、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルメチルジメトキシシラン、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルトリエトキシシラン、4-(メタ)アクリロイルオキシブチルメチルジエトキシシラン、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリメトキシシラン、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルトリエトキシシラン、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシルメチルジエトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルトリエトキシシラン、8-(メタ)アクリロイルオキシオクチルメチルジエトキシシラン、等が挙げられる。添加剤などとの反応性の観点で、(メタ)アクリロイル基置換アルキル基はアクリロイル基置換アルキル基である方が好ましい場合がある。
【0034】
がシクロヘキシル基置換アルキル基である化合物としては、シクロヘキシルメチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルトリエトキシシラン、2-シクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、2-シクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、3-シクロヘキシルプロピルトリメトキシシラン、3-シクロヘキシルプロピルトリエトキシシラン、4-シクロヘキシルブチルトリメトキシシラン、4-シクロヘキシルブチルトリエトキシシラン、5-シクロヘキシルペンチルトリメトキシシラン、5-シクロヘキシルペンチルトリエトキシシラン、6-シクロヘキシルヘキシルトリメトキシシラン、6-シクロヘキシルヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0035】
がフェニル基置換アルキル基である化合物としては、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、2-フェニルエチルトリメトキシシラン、2-フェニルエチルトリエトキシシラン、3-フェニルプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルプロピルトリエトキシシラン、4-フェニルブチルトリメトキシシラン、4-フェニルブチルトリエトキシシラン、5-フェニルペンチルトリメトキシシラン、5-フェニルペンチルトリエトキシシラン、6-フェニルヘキシルトリメトキシシラン、6-フェニルヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
が置換アリール基である化合物としては、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、等が挙げられる。
【0037】
が非置換のアルキル基であるものとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルメチルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルメチルジエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルメチルジメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルメチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルメチルジエトキシシラン、オキチルトリメトキシシラン、オキチルメチルジメトキシシラン、オキチルトリエトキシシラン、オキチルメチルジエトキシシラン、等が挙げられる。
【0038】
がグリシジル基であるものとしては、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-グリシジルオキシブチルトリメトキシシラン、4-グリシジルオキシブチルメチルジメトキシシラン、4-グリシジルオキシブチルトリエトキシシラン、4-グリシジルオキシブチルメチルジエトキシシラン、5-グリシジルオキシペンチルトリメトキシシラン、5-グリシジルオキシペンチルメチルジメトキシシラン、5-グリシジルオキシペンチルトリエトキシシラン、5-グリシジルオキシペンチルメチルジエトキシシラン、6-グリシジルオキシヘキシルトリメトキシシラン、6-グリシジルオキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6-グリシジルオキシヘキシルトリエトキシシラン、6-グリシジルオキシヘキシルメチルジエトキシシラン、7-グリシジルオキシヘプチルトリメトキシシラン、7-グリシジルオキシヘプチルメチルジメトキシシラン、7-グリシジルオキシヘプチルトリエトキシシラン、7-グリシジルオキシヘプチルメチルジエトキシシラン、8-グリシジルオキシオクチルトリメトキシシラン、8-グリシジルオキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-グリシジルオキシオクチルトリエトキシシラン、8-グリシジルオキシオクチルメチルジエトキシシラン、9-グリシジルオキシノニルトリメトキシシラン、9-グリシジルオキシノニルメチルジメトキシシラン、9-グリシジルオキシノニルトリエトキシシラン、9-グリシジルオキシノニルメチルジエトキシシラン、10-グリシジルオキシデシルトリメトキシシラン、10-グリシジルオキシデシルメチルジメトキシシラン、10-グリシジルオキシデシルトリエトキシシラン、10-グリシジルオキシデシルメチルジエトキシシラン、11-グリシジルオキシウンデシルトリメトキシシラン、11-グリシジルオキシウンデシルメチルジメトキシシラン、11-グリシジルオキシウンデシルトリエトキシシラン、11-グリシジルオキシウンデシルメチルジエトキシシラン、12-グリシジルオキシドデシルトリメトキシシラン、12-グリシジルオキシドデシルメチルジメトキシシラン、12-グリシジルオキシドデシルトリエトキシシラン、12-グリシジルオキシドデシルメチルジエトキシシラン、13-グリシジルオキシトリデシルトリメトキシシラン、13-グリシジルオキシトリデシルメチルジメトキシシラン、13-グリシジルオキシトリデシルトリエトキシシラン、13-グリシジルオキシトリデシルメチルジエトキシシラン、14-グリシジルオキシテトラデシルトリメトキシシラン、14-グリシジルオキシテトラデシルメチルジメトキシシラン、14-グリシジルオキシテトラデシルトリエトキシシラン、14-グリシジルオキシテトラデシルメチルジエトキシシラン、15-グリシジルオキシペンタデシルトリメトキシシラン、15-グリシジルオキシペンタデシルメチルジメトキシシラン、15-グリシジルオキシペンタデシルトリエトキシシラン、15-グリシジルオキシペンタデシルメチルジエトキシシラン、16-グリシジルオキシヘキサデシルトリメトキシシラン、16-グリシジルオキシヘキサデシルメチルジメトキシシラン、16-グリシジルオキシヘキサデシルトリエトキシシラン、16-グリシジルオキシヘキサデシルメチルジエトキシシラン、等が挙げられる。グリシジル基は縮合物の脂環式エポキシ基との反応性の観点で好ましい場合がある。
【0039】
がオキセタニル基であるものとしては、1-オキセタニルオキシメチルトリメトキシシラン、1-オキセタニルオキシメチルメチルジメトキシシラン、1-オキセタニルオキシメチルトリエトキシシラン、1-オキセタニルオキシメチルメチルジエトキシシラン、2-オキセタニルオキシエチルトリメトキシシラン、2-オキセタニルオキシエチルメチルジメトキシシラン、2-オキセタニルオキシエチルトリエトキシシラン、2-オキセタニルオキシエチルメチルジエトキシシラン、3-オキセタニルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-オキセタニルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-オキセタニルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-オキセタニルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、4-オキセタニルオキシブチルトリメトキシシラン、4-オキセタニルオキシブチルメチルジメトキシシラン、4-オキセタニルオキシブチルトリエトキシシラン、4-オキセタニルオキシブチルメチルジエトキシシラン、6-オキセタニルオキシヘキシルトリメトキシシラン、6-オキセタニルオキシヘキシルメチルジメトキシシラン、6-オキセタニルオキシヘキシルトリエトキシシラン、6-オキセタニルオキシヘキシルメチルジエトキシシラン、8-オキセタニルオキシオクチルトリメトキシシラン、8-オキセタニルオキシオクチルメチルジメトキシシラン、8-オキセタニルオキシオクチルトリエトキシシラン、8-オキセタニルオキシオクチルメチルジエトキシシラン、等が挙げられる。
【0040】
本発明のシルセスキオキサン化合物の数平均分子量は、特限定されないが、硬化物の硬度を高める観点から500以上が好ましい。また、シロキサン化合物の揮発を抑制する観点からも、シロキサン化合物の数平均分子量は500以上であることが好ましい。一方、分子量が過度に大きいと、他の組成物との相溶性の低下等に起因して白濁が生じる場合がある。そのため、シロキサン化合物の数平均分子量は20000以下が好ましい。
【0041】
なお、本発明のシルセスキオキサン化合物の数平均分子量は、反応に用いる水の量、触媒の種類および量を適切に選択することにより、制御することができる。例えば、最初に仕込む水の量を増やすことにより、数平均分子量を高くすることができる。
【0042】
一般式(1)で表されるシラン化合物に含まれる、SiO3/2(一般式(1)においてx=3に相当)、SiO2/2(一般式(1)においてx=2に相当)、SiO1/2構造(一般式(1)においてx=1に相当)をそれぞれ、T構造、D構造、M構造とした時に、[T構造]+[D構造]+[M構造]に対する[T構造]の比率は特に限定されないが、0.2以上1.0以下が好ましく、0.4以上1.0以下がより好ましく、0.6以上1.0以下が更に好ましい。[T構造]の比率が0.2より小さい場合、十分な鉛筆硬度が得られない恐れがある。
架橋点密度を高めて、硬化物の硬度を向上させるとの観点から、一般式(1)で表されるシラン化合物の加水分解および縮合により得られるシルセスキオキサン化合物におけるエポキシ構造の残存率は、高い方が好ましい。
【0043】
シラン化合物の縮合物に一般式(2)で表されるシラン化合物が共縮合される場合においても同様であり、シラン化合物に含まれる、SiO3/2(一般式(1)及び(2)においてx=3に相当)、SiO2/2(一般式(1)及び(2)においてx=2に相当)、SiO1/2構造(一般式(1)及び(2)においてx=1に相当)をそれぞれ、T構造、D構造、M構造とした時に、[T構造]+[D構造]+[M構造]に対する[T構造]の比率は特に限定されないが、0.2以上1.0以下が好ましく、0.4以上1.0以下がより好ましく、0.6以上1.0以下が更に好ましい。[T構造]の比率が0.2より小さい場合、十分な鉛筆硬度が得られない恐れがある。
架橋点密度を高めて、硬化物の硬度を向上させるとの観点から、一般式(1)及び一般式(2)で表されるシラン化合物の加水分解および縮合により得られるシルセスキオキサン化合物におけるエポキシ構造の残存率は、高い方が好ましい。
【0044】
本発明のシルセスキオキサン化合物は、一般式(1)で表されるシラン化合物の加水分解および縮合反応により形成され、一般式(3)または一般式(4)で表される構成単位を含む。式(3)で表される構成単位(一般式(1)及び(2)中、x=3であるT単位構造を有するシラン化合物の有する3つのアルコキシシランが、全て縮合反応しSi-O-Si構造を取っている構造。以下[T3体]と記載)と、式(4)で表される構成単位(一般式(1)及び(2)中、x=3であるT単位構造を有するシラン化合物の有する3つのアルコキシシランの内、2つが縮合反応しSi-O-Si構造を取っている構造。以下[T2体]と記載)の割合[T3体]/[T2体]は、0.8以上5未満であることが好ましく、1以上4未満であることがより好ましく、1.5以上3未満であることがさらに好ましい。T3体とT2体の割合[T3体]/[T2体]を5未満とすることにより、本発明のシルセスキオキサン化合物の硬化物を有するハードコート層を有するハードコートフィルムは、優れた耐屈曲性を示す場合がある。縮合物中のT3体の含有量が多くなり、[T3体]/[T2体]が5以上となると、得られる縮合物は緻密な構造をとり、柔軟性が低下するため、ハードコートフィルムとしたときの耐屈曲性が低下する場合がある。
【化3】
【化4】
【0045】
一般式(3)及び一般式(4)中、Rは式(1)中のRと同じである。
【0046】
一般式(3)及び一般式(4)中、Zはヒドロキシル基または炭素数1~10のアルキル基を有するアルコキシ基を示す。このようなアルキル基を有するアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等が挙げられる。
【0047】
本発明のシルセスキオキサン化合物におけるT3体およびT2体の含有量や割合は、例えば、29Si-NMR測定により算出することができる。29Si-NMR測定において、T3体におけるケイ素原子の化学シフトと、T2体におけるケイ素原子の化学シフトは異なり、スペクトルの異なる位置にシグナルを示すため、それぞれのシグナルの積分値を算出することにより、上記割合[T3体]/[T2体]を求めることができる。
【0048】
シラン化合物の縮合物に一般式(2)で表されるシラン化合物が共縮合される場合においても同様であり、シルセスキオキサン化合物は、一般式(1)及び一般式(2)で表されるシラン化合物の加水分解および縮合反応により形成され、一般式(3)または一般式(4)で表される構成単位を含む。式(3)で表される構成単位(一般式(1)及び(2)中、x=3であるT単位構造を有するシラン化合物の有する3つのアルコキシシランが、全て縮合反応しSi-O-Si構造を取っている構造。以下[T3体]と記載)と、式(4)で表される構成単位(一般式(1)及び(2)中、x=3であるT単位構造を有するシラン化合物の有する3つのアルコキシシランの内、2つが縮合反応しSi-O-Si構造を取っている構造。以下[T2体]と記載)の割合[T3体]/[T2体]は、0.8以上5未満であることが好ましく、1以上4未満であることがより好ましく、1.5以上3未満であることがさらに好ましい。T3体とT2体の割合[T3体]/[T2体]を5未満とすることにより、本発明のシルセスキオキサン化合物の硬化物を有するハードコート層を有するハードコートフィルムは、優れた耐屈曲性を示す場合がある。縮合物中のT3体の含有量が多くなり、[T3体]/[T2体]が5以上となると、得られる縮合物は緻密な構造をとり、柔軟性が低下するため、ハードコートフィルムとしたときの耐屈曲性が低下する場合がある。
【0049】
一般式(3)及び一般式(4)中、Rは式(1)中のR及び式(2)中のRと同じである。
【0050】
なお、本発明のシルセスキオキサン化合物におけるT3体とT2体の割合[T3体]/[T2体]は、反応に用いる水の量、触媒の種類および量を適切に選択することにより、制御することができる。例えば、最初に仕込む触媒の量を増やすことにより、上記割合[T3体]/[T2体]を大きくすることができる。また、中性塩触媒を用いるとT3体とT2体の割合[T3体]/[T2体]を0.8以上5未満にコントロールすることが容易にできる。
【0051】
加水分解および縮合反応に必要な水の量は、ケイ素原子に直接結合したOR基(一般式(1)及び一般式(2)中のOR基)1当量に対して0.3~3当量が好ましく、0.5~2当量がより好ましい。水の量が0.3当量未満ではOR基の加水分解が十分に進行せず、ハードコートフィルムの表面硬度を低下させることがある。3当量を超えると、加水分解および縮合反応の反応速度が大きすぎて高分子量の縮合物が生成し、硬化膜の物性や透明性を低下させることがある。
【0052】
上記エポキシ構造の残存率、すなわち、原料であるシラン化合物(1)が有するエポキシ構造のモル数に対する、縮合により得られるシルセスキオキサン化合物におけるエポキシ構造のモル数の割合は、20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。ここで、エポキシ構造の残存率は、H-NMR測定によって算出することができる。
【0053】
本発明においては、加水分解および縮合反応は、公知の方法にて、塩基性触媒、酸性触媒、中性塩触媒の存在下いずれでも実施できる。なかでも、中性塩触媒を用いることが好ましい。加水分解および縮合反応を中性塩触媒の存在下で実施することにより、加水分解および縮合反応の前後および貯蔵中に、エポキシ基を失活させることなく、シルセスキオキサン化合物を得ることができる。
【0054】
また、中性塩触媒自身が製造容器や保管容器を侵すことがないため、製造・保管設備の材質に制約を受けることなく使用することができる。これは、一般に、酸触媒や塩基触媒では、触媒自身が、種々の物質と求電子的・求核的に反応することや、反応溶液中の水素イオン濃度または水酸化物イオン濃度を変化させることにより、それらのイオンが反応に寄与するのに対し、中性塩では、上記のような反応活性が極端に低いことに起因する。
【0055】
また、加水分解および縮合反応において酸触媒や塩基触媒を用いる場合には、上記理由により、酸・塩基の除去工程や中和工程を経る必要がある。これらの工程は煩雑であったり、収率を低下させたりするため、好ましくない。これらの問題に対しても、中性塩触媒を用いることは、これらの工程を必要としないため好ましい。
【0056】
本発明で用いられる中性塩とは、強酸と強塩基からなる正塩のことであり、カチオンとして第一族元素イオンおよび第二族元素イオンからなる群より選ばれるいずれかと、アニオンとして塩化物イオン、臭化物イオンおよびヨウ化物イオンからなる群より選ばれるいずれかとの組合せからなる塩のことである。
【0057】
本発明における中性塩の具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化ベリリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化ベリリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ベリリウム、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウム等が挙げられる。
【0058】
本発明においては、中性塩の使用量が多いほど、シラン化合物の加水分解および縮合反応は促進されるが、縮合物の透明性や精製工程などを考慮した際には、添加量は少ないほど良い。
【0059】
本発明における中性塩の使用量は、シラン化合物の加水分解性シリル基1モルに対して、0.000001モル以上0.1モル以下が好ましく、0.000005モル以上0.01モル以下が特に好ましい。シルセスキオキサン化合中に残存する中性塩の量は、1ppm~10000ppmであることが好ましく、50ppm~5000ppmがより好ましく、100ppm~1000ppmであることがさらに好ましい。
本発明のシルセスキオキサン化合物の製造においては、製造上の安全性を考慮し、希釈溶剤、加水分解により発生するアルコール等を還流しながら製造を行うことが好ましい。
【0060】
本発明のシルセスキオキサン化合物の製造において用いられる希釈溶剤は、水溶性のアルコールまたはエーテル化合物であることが好ましい。
【0061】
上記の理由としては、本発明において用いるシラン化合物(1)は、中性塩や加水分解に用いる水との相溶性が低いものが多いため、反応を円滑に進める上で、反応溶液としては相溶していることが好ましいためである。
【0062】
本発明のシルセスキオキサン化合物の製造において用いられる希釈溶剤の沸点としては、40℃以上200℃以下が好ましく、50℃以上200℃以下がより好ましく、60℃以上200℃以下がさらに好ましい。
【0063】
希釈溶剤の沸点が40℃未満では、低温で希釈溶剤が還流状態となり、反応速度が低くなる。希釈溶剤の沸点が200℃超では、沸点が高すぎて反応後に希釈溶剤を除去することが困難になるため、分液抽出等の煩雑な工程を組み込むことが必要となる場合がある。
【0064】
本発明のシルセスキオキサン化合物の製造に用いられる希釈溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。これらの希釈剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0065】
本発明のシルセスキオキサン化合物の製造における反応温度は、40~200℃の範囲が好ましく、50~200℃の範囲がより好ましく、60~200℃の範囲がさらに好ましい。
【0066】
反応温度が40℃よりも低いと中性塩の触媒活性が低下し、反応時間が大幅に増加してしまう傾向があり、反応温度が200℃超の場合には、有機官能基が副反応を起こして失活してしまう懸念がある。
【0067】
シラン化合物の縮合物に一般式(2)で表されるシラン化合物が共縮合される場合において、硬化物の機械強度を向上する観点から、シルセスキオキサン化合物の1分子中に含まれるエポキシ基の数は多いほど好ましい。シラン化合物の反応に際して、一般式(1)で表されるシラン化合物に対する、一般式(2)で表されるシラン化合物のモル比が1以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。一般式(1)で表されるシラン化合物に対する、一般式(2)で表されるシラン化合物のモル比が高すぎる場合、得られるハードコート層の表面硬度が低下することがある。一般式(1)で表されるシラン化合物に対する、一般式(2)で表されるシラン化合物のモル比は、0でもよい。
【0068】
[ハードコート組成物]
本発明のハードコートフィルムのハードコート組成物は、上記の本発明のシルセスキオキサン化合物を必須成分として含有するハードコート組成物である。本発明のハードコートフィルムのハードコート組成物は、さらに、光カチオン開始剤や表面調整剤、表面改質剤等のその他の成分を含んでいてもよい。
機械強度に優れるハードコート硬化膜を形成する観点から、ハードコート組成物中の上記シルセスキオキサン化合物の含有量は、固形分の合計100重量部に対して40重量部以上が好ましく、50重量部以上がより好ましく、60重量部以上がさらに好ましい。
【0069】
<硬化触媒>
ハードコート組成物は、硬化触媒として、熱カチオン重合開始剤または光カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。熱カチオン重合開始剤は、加熱により酸を発生する化合物(熱酸発生剤)であり、光カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線の照射により酸を発生する化合物(光酸発生剤)である。熱及び光酸発生剤から生成した酸により、上記のシルセスキオキサン化合物が含有するエポキシ基の開環反応および重合反応が進行し、分子間架橋が形成されハードコート材料が硬化する。
【0070】
光酸発生剤としては、六フッ化アンチモン、四フッ化ホウ素、六フッ化リン、フルオロアルキルフッ化リン、フルオロアルキルフッ化ガリウム等のアニオン(強酸)と、スルホニウム、アンモニウム、ホスホニウム、ヨードニウム、セレニウム等のカチオンを組み合わせたオニウム塩類;鉄-アレン錯体類;シラノール-金属キレート錯体類;ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、イミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類等のスルホン酸誘導体;有機ハロゲン化合物類等が挙げられる。
【0071】
上記の光酸発生剤の中で、カチオンとしては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン化合物を含有するハードコート組成物における安定性が高いことから、芳香族スルホニウムまたは芳香族ヨードニウムが好ましい。上記の光酸発生剤の中で、アニオンとしては、酸強度が強いために、表面硬度や樹脂基材との密着性に優れるハードコート層が得られやすいことから、フルオロアンチモネート系アニオン、フルオロボレート系アニオン、フルオロフォスフェート系アニオン、フルオロガリウム系アニオン等が好ましい。
【0072】
中でも、環境負荷が低く、環境や人体への安全性が高いカウンターアニオンとして、フルオロフォスフェート系アニオンやフルオロボレート系アニオンやフルオロガリウム系アニオン等がより好ましい。
【0073】
上記の様な光酸発生剤の具体例として、サンアプロ社製のCPI-100P、CPI101A、CPI200K、CPI210S、CPI310B、CPI310FG、CPI410S、IK-1や、富士フィルム和光純薬社製のWPI-113、WPI-116、WPI-170、WPI-124や、荒川化学社製のブルーシルPI2074、シリコリースUVCATA243等が挙げられるが、当該メーカーの製品に限定されるものではない。
【0074】
ハードコート組成物中の光カチオン重合開始剤の含有量は、上記のシルセスキオキサン化合物100重量部に対して、0.05~10重量部が好ましく、0.1~5重量部がより好ましく、0.2~2重量部がさらに好ましい。
【0075】
<レベリング剤>
本発明のハードコートフィルムのハードコート組成物は、さらに、レベリング剤として、シリコーン系レベリング剤及びまたはフッ素系レベリング剤を含んでいても良い。レベリング剤を含むことで、硬化性組成物の表面張力を低下させたり、表面平滑性を向上させたり、滑り性を向上させたり、防指紋性を向上させたり、耐擦傷性を向上させたりすることができる。レベリング剤は、エポキシ基と反応性を有する基及びまたは加水分解縮合性基を有することが好ましい。エポキシ基と反応性を有する基及びまたは加水分解縮合性基を有することで、より耐擦傷性に優れたハードコート層を得ることができる。
【0076】
上記シリコーン系レベリング剤としては、特に限定されないが、ポリオルガノシロキサン骨格を有するレベリング剤等が挙げられる。上記ポリオルガノシロキサン骨格としては、上記カチオン硬化性シリコーン樹脂と同様に、M単位、D単位、T単位、Q単位で形成されたポリオルガノシロキサンが挙げられるが、通常はD単位で形成されたポリオルガノシロキサンが使用される。ポリオルガノシロキサン中のケイ素原子(シロキサン結合を形成するケイ素原子)に結合した基としては、アルキル基、アリール基等が挙げられる。上記ケイ素原子に結合した基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、シロキサン単位の繰り返し数(重合度)は、特に限定されないが、2~3000が好ましく、より好ましくは3~2000、さらに好ましくは5~1000である。
【0077】
上記フッ素系レベリング剤としては、特に限定されないが、フルオロ脂肪族炭化水素骨格を有するレベリング剤等が挙げられる。上記フルオロ脂肪族炭化水素骨格としては、特に限定されないが、例えば、フルオロメタン、フルオロエタン、フルオロプロパン、フルオロイソプロパン、フルオロブタン、フルオロイソブタン、フルオロt-ブタン、フルオロペンタン、フルオロヘキサン等のフルオロC 1-10アルカン等が挙げられる。
【0078】
上記フルオロ脂肪族炭化水素骨格は、少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されていれば良い。ハードコート層の耐擦傷性、滑り性、及び防指紋性を向上できる観点からは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロ脂肪族炭化水素骨格であることがより好ましい。
【0079】
また、前記シリコーン系レベリング剤がフルオロ脂肪族炭化水素基を有していてもよく、前記フッ素系レベリング剤がポリオルガノシロキサン基を有していてもよい。
上記レベリング剤は、各種の機能性を付与する観点から、加水分解縮合性基、エポキシ
基と反応性を有する基、ラジカル重合性基、ポリエーテル基、ポリエステル基、ポリウレ
タン基等の機能性官能基を有していてもよい。特に、加水分解縮合性基あるいはエポキシ基を有するレベリング剤を使用することで、ハードコート組成物中の加水分解縮合性基あるいはエポキシ基と反応し、耐擦傷性の一層の向上が期待できる。
【0080】
上記シリコーン系レベリング剤としては、市販のシリコーン系レベリング剤を使用できる。市販のシリコーン系レベリング剤としては、例えば、商品名「BYK-300」、「BYK-301/302」、「BYK-306」、「BYK-307」、「BYK-310」、「BYK-315」、「BYK-313」、「BYK-320」、「BYK-322」、「BYK-323」、「BYK-325」、「BYK-330」、「BYK-331」、「BYK-333」、「BYK-337」、「BYK-341」、「BYK-344」、「BYK-345/346」、「BYK-347」、「BYK-348」、「BYK-349」、「BYK-370」、「BYK-375」、「BYK-377」、「BYK-378」、「BYK-UV3500」、「BYK-UV3510」、「BYK-UV3570」、「BYK-UV3575」、「BYK-3550」、「BYK-3565」、「BYK-3566」、「BYK-SILCLEAN3700」、「BYK-SILCLEAN3701」、「BYK-SILCLEAN3720」(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、商品名「AC FS 180」、「AC FS 360」、「AC S 20」(以上、Algin Chemie製)、商品名「ポリフローKL-400X」、「ポリフローKL-400HF」、「ポリフローKL-401」、「ポリフローKL-402」、「ポリフローKL-403」、「ポリフローKL-404」(以上、共栄社化学(株)製)、商品名「KP-323」、「KP-326」、「KP-341」、「KP-104」、「KP-110」、「KP-112」(以上、信越化学工業(株)製)、商品名「LP-7001」、「LP-7002」、「8032 ADDITIVE」、「57 ADDITIVE」、「L-7604」、「FZ-2110」、「FZ-2105」、「67 ADDITIVE」、「8618 ADDITIVE」、「3 ADDITIVE」、「56 ADDITIVE」(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)等が挙げられる。
【0081】
上記フッ素系レベリング剤としては、市販のフッ素系レベリング剤を使用できる。市販のフッ素系レベリング剤としては、例えば、化合物名「Hexafluoroepoxypropane」、「3-Perfluorobutyl-1,2-epoxypropane」、「3-Perfluorohexyl-1,2-epoxypropane」、「1,4-Bis(2‘,3’-epoxypropyl)-perfluoro-n-butane」、「1,6-Bis(2‘,3’-epoxypropyl)-perfluoro-n-hexane」、商品名「オプツール DSX」、「オプツール DAC-HP」(以上、ダイキン工業(株)製)、商品名「SZ-20」、「MM-RVSD」、「サーフロン S-242」、「サーフロン S-243」、「サーフロン S-386」、「サーフロン S-420」、「サーフロン S-431」、「サーフロン S-611」、「サーフロン S-647」、「サーフロン S-651」、「サーフロン S-653」、「サーフロン S-656」、「サーフロン S-658」、「サーフロン S-693」、「サーフロン S-CFJ」、(以上、AGCセイミケミカル(株)製)、商品名「ルミフロン LF200」、「ルミフロン LF200MEK」、「ルミフロン LF400」、「ルミフロン LF552」、「ルミフロン LF600X」、「ルミフロン LF800」、「ルミフロン LF810」、「ルミフロン LF910LM」、「ルミフロン LF936」、「ルミフロン LF9010」、「ルミフロン LF9716」、「ルミフロン LF9721」、(以上、AGC(株)製)、商品名「BYK-340」(ビックケミー・ジャパン(株)製)、商品名「AC 110a」、「AC 100a」(以上、Algin Chemie製)、商品名「メガファックF-114」、「メガファックF-410」、「メガファックF-444」、「メガファックEXP TP-2066」、「メガファックF-430」、「メガファックF-472SF」、「メガファックF-477」、「メガファックF-552」、「メガファックF-553」、「メガファックF-554」、「メガファックF-555」、「メガファックF-556」、「メガファックF-558」、「メガファックF-559」、「メガファックF-561」、「メガファックF-562」、「メガファックF-563」、「メガファックF-565」、「メガファックF-568」、「メガファックF-570」、「メガファックF-571」、「メガファックF-572」、「メガファックR-40」、「メガファックR-94」、「メガファックRS-21」、「メガファックRS-56」、「メガファックRS-58」、「メガファックRS-75」、「メガファックRS-75-A」、「メガファックRS-78」、「メガファックRS-90」、「メガファックRS-7054」、「メガファックRS-7097」、「メガファックRS-7101」、「メガファックRS-72-K」、「メガファックRS-76-NS」、「メガファックEXP TF-1367」、「メガファックEXP TF-1437」、「メガファックEXP TF-1537」(以上、DIC(株)製)、商品名「FC-4430」、「FC-4432」(以上、住友スリーエム(株)製)、商品名「フタージェント 100」、「フタージェント 100C」、「フタージェント 110」、「フタージェント 150」、「フタージェント 150CH」、「フタージェント 208G」、「フタージェント FTX-218」、「フタージェント 222F」、「フタージェント 250」、「フタージェント 251」、「フタージェント 300」、「フタージェント 310」、「フタージェント 400SW」「フタージェント 501」、「フタージェント 602A」、「フタージェント 602ADH2」、「フタージェント 650AC」、「フタージェント 710FL」、「フタージェント A-K」(以上、(株)ネオス製)、商品名「PF-136A」、「PF-156A」、「PF-151N」、「PF-636」、「PF-6320」、「PF-656」、「PF-6520」、「PF-651」、「PF-652」、「PF-3320」(以上、北村化学産業(株)製)、商品名「F8261」(エボニックジャパン(株)製)、商品名「モディパー F206」、「モディパー F246」、「モディパー F606」、「モディパー F730」、「モディパー F3636」(以上、日油(株)製)、商品名「8FS-001」、「8FS-009」(以上、大成ファインケミカル(株)製)、商品名「フロロサーフ FS-7031」、「フロロサーフ FS-7032」(以上、(株)フロロテクノロジー製)、商品名「エフクリア KD3510UV」、「エフクリア KD3900UV」、「エフクリア KD5010UV」(以上、関東電化工業(株)製);
商品名「フルオロリンク A10P」、「フルオロリンク AD1700」、「フルオロリンク E10H」、「フルオロリンク F10」、「フルオロリンク MD700」、「フルオロリンク P54」、「フルオロリンク P56」、「フルオロリンク S10」、「フォンブリン M03」、「フォンブリン M07」、「フォンブリン M15」、「フォンブリン M30」、「フォンブリン M60」、「フォンブリン M100」、「フォンブリン W150」、「フォンブリン W500」、「フォンブリン W800」、「フォンブリン Y04」、「フォンブリン Y06」、「フォンブリン Y15」、「フォンブリン Y25」、「フォンブリン Y45」、「フォンブリン YU700」、「フォンブリン YR」、「フォンブリン YPL1500」、「フォンブリン YR1800」、「フォンブリン Z03」、「フォンブリン Z15」、「フォンブリン Z25」、「フォンブリン Z60」(以上、ソルベイスペシャルティポリマーズジャパン(株)製)等が挙げられる。
【0082】
本発明のハードコートフィルムのハードコート組成物におけるレベリング剤の含有量は、上記のシルセスキオキサン化合物100重量部に対して、0.001~10重量部が好ましく、0.01~5重量部がより好ましく、0.05~1重量部以下が更に好ましい。
本発明のレベリング剤を含むハードコート層中で、全レベリング剤添加量中の30%以上がハードコート層表面100nmに偏析していることが好ましく、50%以上がハードコート層表面100nmに偏析していることがより好ましく、80%以上がハードコート層表面100nmに偏析していることが更に好ましい。レベリング剤が表面に偏析することで、表面の接触角が大きくなり、また防指紋性が向上する効果が得られる。
【0083】
<反応性添加剤>
本発明のハードコートフィルムのハードコート組成物は、さらに、反応性添加剤として、本発明のシルセスキオキサン化合物以外のカチオン硬化性化合物を含んでいてもよい。光カチオン重合の反応性添加剤としては、カチオン重合性官能基を有する化合物が用いられる。反応性添加剤のカチオン重合性官能基としては、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタニル基、およびアルコキシシリル基が挙げられる。本発明のシルセスキオキサン化合物との相溶性や反応性の観点からは、エポキシ基を有するものが好ましい。反応速度の速さと得られる硬化物の表面硬度の観点からは、ビニルエーテルを有するものが好ましい。最終的な反応率の高さの観点からは、オキセタニル基を有するものが好ましい。なお、本発明のハードコート組成物において、反応性添加剤としてその他のカチオン硬化性化合物は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0084】
具体的には、グリシジル基を有する反応性添加剤としては例えば、2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン等のビスフェノールA型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールA型エポキシ化合物);ビス[o,o-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[o,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[p,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン等のビスフェノールF型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールF型エポキシ化合物);水素化ビフェノール型エポキシ化合物;水素化フェノールノボラック型エポキシ化合物;水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;ビスフェノールAの水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;水素化ナフタレン型エポキシ化合物;トリスフェノールメタンから得られるエポキシ化合物の水素化エポキシ化合物;下記芳香族エポキシ化合物の水素化エポキシ化合物等が挙げられる。
【0085】
芳香族エポキシ系の反応性添加剤としては例えば、ビスフェノール類[例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール等]と、エピハロヒドリンとの縮合反応により得られるエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;これらのエピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を上記ビスフェノール類とさらに付加反応させることにより得られる高分子量エピビスタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フェノール類[例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等]とアルデヒド[例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等]とを縮合反応させて得られる多価アルコール類を、さらにエピハロヒドリンと縮合反応させることにより得られるノボラック・アルキルタイプグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;フルオレン環の9位に2つのフェノール骨格が結合し、かつこれらフェノール骨格のヒドロキシ基から水素原子を除いた酸素原子に、それぞれ、直接又はアルキレンオキシ基を介してグリシジル基が結合しているエポキシ化合物等が挙げられる。
【0086】
脂肪族エポキシ系の反応性添加剤としては例えば、デナコールEX-121、デナコールEX-171、デナコールEX-192、デナコールEX-211、デナコールEX-212、デナコールEX-313、デナコールEX-314、デナコールEX-321、デナコールEX-411、デナコールEX-421、デナコールEX-512、デナコールEX-521、デナコールEX-611、デナコールEX-612、デナコールEX-614、デナコールEX-622、デナコールEX-810、デナコールEX-811、デナコールEX-850、デナコールEX-851、デナコールEX-821、デナコールEX-830、デナコールEX-832、デナコールEX-841、デナコールEX-861、デナコールEX-911、デナコールEX-941、デナコールEX-920、デナコールEX-931(ナガセケムテックス社製);エポライトM-1230、エポライト40E、エポライト100E、エポライト200E、エポライト400E、エポライト70P、エポライト200P、エポライト400P、エポライト1500NP、エポライト1600、エポライト80MF、エポライト100MF(共栄社化学社製)、アデカグリシロールED-503、アデカグリシロールED-503G、アデカグリシロールED-506、アデカグリシロールED-523T(ADEKA社製)、官能基としてエポキシ基のみを有するアクリルゴムとして、テイサンレジンSG-P3、テイサンレジンSG-80H、テイサンレジンSG-28GL(ナガセケムテックス製、エポキシ基含有アクリルゴム)等が挙げられる。
【0087】
脂環式エポキシ系の反応性添加剤としては例えば、3,4,3',4'-ジエポキシビシクロヘキサン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)エタン、2,3-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)オキシラン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル製「セロキサイド2021P」)、ε-カプロラクトン変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル製「セロキサイド2081」)、ε-カプロラクトン二量体変性3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル製セロキサイド2083、またはJIANGSU TETRA NEW MATERIAL TECHNOLOGY製「TTA2083」)、ダイセル製セロキサイド2085、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(JIANGSU TETRA NEW MATERIAL TECHNOLOGY製「TTA26」)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)等]、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルアクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチルメタクリレート、エポキシ変性鎖状シロキサン化合物(信越化学製「X-40-2669」)、およびエポキシ変性環状シロキサン化合物(信越化学製「KR-470」)等が挙げられる。
【0088】
ビニルエーテル系の反応性添加剤としては、分子内に1つ以上のビニルエーテル基を有する化合物であれば特に制限はないが、例えば、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2-ヒドロキシイソプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシブチルビニルエーテル、3-ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2-ヒドロキシイソブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、1-メチル-3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1-メチル-2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、1-ヒドロキシメチルプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールモノビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,8-オクタンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,3-シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,3-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,2-シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、1,2-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、p-キシレングリコールモノビニルエーテル、p-キシレングリコールジビニルエーテル、m-キシレングリコールモノビニルエーテル、m-キシレングリコールジビニルエーテル、o-キシレングリコールモノビニルエーテル、o-キシレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールモノビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエチレングリコールモノビニルエーテル、ペンタエチレングリコールジビニルエーテル、オリゴエチレングリコールモノビニルエーテル、オリゴエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールモノビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールモノビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、テトラプロピレングリコールモノビニルエーテル、テトラプロピレングリコールジビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールモノビニルエーテル、ペンタプロピレングリコールジビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールモノビニルエーテル、オリゴプロピレングリコールジビニルエーテル、ポリプロピレングリコールモノビニルエーテル、ポリプロピレングリコールジビニルエーテル、イソソルバイドジビニルエーテル、オキサノルボルネンジビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、ヒドロキシオキサノルボルナンメタノールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも特に、1分子中に、ヒドロキシ基とビニルエーテル基の両方を持つ化合物を用いることで、耐屈曲性を損なうことなく、反応速度の向上や表面硬度の向上の効果が得られる。
【0089】
オキセタン系の反応性添加剤としては、分子内に1つ以上のオキセタニル基を有する化合物であれば特に制限はないが、例えば、3,3-ビス(ビニルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-[(フェノキシ)メチル]オキセタン、3-エチル-3-(ヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(クロロメチル)オキセタン、3,3-ビス(クロロメチル)オキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1-エチル(3-オキセタニル)]メチル}エーテル、4,4'-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビシクロヘキシル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]シクロヘキサン、1,4-ビス{〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ〕メチル}ベンゼン、3-エチル-3-{〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕メチル)}オキセタン、キシリレンビスオキセタン、3-エチル-3-{[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、オキセタニルシルセスキオキサン、フェノールノボラックオキセタン等が挙げられる。
【0090】
本発明のハードコートフィルムのハードコート組成物における反応性添加剤の含有量は、上記のシルセスキオキサン化合物100重量部に対して、150重量部以下が好ましく、100重量部以下がより好ましく、50重量部以下が更に好ましい。
【0091】
<光増感剤>
本発明のハードコートフィルムのハードコート組成物において、光酸発生剤の感光性を向上させる目的で、光増感剤を使用してもよい。光増感剤としては、使用する光酸発生剤では吸収できない波長域の光を吸収することで光酸発生剤の感光性を向上させるタイプと、光酸発生剤と吸収する波長域に大きな差異はないものの光酸発生剤の感光性を向上させるタイプのいずれを用いても良い。使用する光酸発生剤では吸収できない波長域の光を吸収するタイプを用いる場合には、光酸発生剤の吸収波長域とは異なる波長域に強い吸収を持つものが好ましい。
【0092】
光増感剤としては、特に限定されないが、例えば、アントラセン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、アントラキノン誘導体、ベンゾイル誘導体、ナフタレン誘導体等が挙げられる。具体的には、アントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、1,4-ジメトキシアントラセン、9-メチルアントラセン、2-エチルアントラセン、2-tert-ブチルアントラセン、2,6-ジ-tert-ブチルアントラセン、9,10-ジフェニル-2,6-ジ-tert-ブチルアントラセン、9,10-ビス(イソプロポキシカルボニルメトキシ)アントラセン、9,10-ジオクタノイロキシアントラセン、1,4-ジエトキシナフタレン、1,4-ジメトキシナフタレン、1,4-ジプロポキシナフタレン、1,4-ジブトキシナフタレン、ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、アンスラキノン、2-メチルアンスラキノン、2-エチルアンスラキノン、3-アセチルクマリン、3-アセチル-7-ジエチルアミノクマリン、3-ベンゾイルクマリン、3-ベンゾイル-7-ジエチルアミノクマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシクマリン、3,3’-カルボニルビスクマリン、3,3’-カルボニルビス(7-メトキシクマリン)、3,3’-カルボニルビス(5,7-ジメトキシクマリン)等が挙げられる。
【0093】
本発明のハードコートフィルムのハードコート組成物における光増感剤の含有量は、上記の光酸発生剤100重量部に対して500重量部以下が好ましく、100重量部以下がより好ましく、50重量部以下がさらに好ましい。
【0094】
<粒子>
本発明のハードコートフィルムのハードコート組成物は、膜特性(表面硬度や耐屈曲性)の調整や、硬化収縮の抑制等を目的として粒子を含んでいてもよい。粒子としては、有機粒子、無機粒子、有機無機複合粒子等を適宜選択して用いればよい。有機粒子の材料としては、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、架橋ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、架橋スチレン、ナイロン、シリコーン、架橋シリコーン、架橋ウレタン、架橋ブタジエン等が挙げられる。無機粒子の材料としては、シリカ、チタニア、アルミナ、酸化スズ、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化アンチモン等の金属酸化物;窒化珪素、窒化ホウ素等の金属窒素化物、炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム等の金属塩等が挙げられる。有機無機複合フィラーとしては、有機粒子の表面に無機物層を形成したものや、無機粒子の表面に有機物層または有機微粒子を形成したものが挙げられる。
【0095】
粒子の形状としては、球状、粉状、繊維状、針状、鱗片状等が挙げられる。球状粒子は異方性がなく応力が偏在し難いことから、歪みの発生が抑えられ、硬化収縮等に起因するフィルムの反りの抑制に寄与し得る。
【0096】
粒子の平均粒子径は、例えば5nm~10μm程度である。ハードコート層の透明性を高める観点から、平均粒子径は1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましく、300nm以下がさらに好ましく、100nm以下が特に好ましい。粒子径は、レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置により測定でき、体積基準のメジアン径を平均粒子径とする。
【0097】
ハードコート組成物は、表面修飾された粒子を含んでいてもよい。粒子が表面修飾されることにより、シロキサン化合物中での粒子の分散性が向上する傾向がある。また、粒子表面がエポキシ基と反応可能な重合性官能基により修飾されている場合は、粒子表面の官能基と本発明のシルセスキオキサン化合物のエポキシ基とが反応して化学架橋が形成されるため、膜強度や耐屈曲性の向上が期待できる。
【0098】
エポキシ基と反応可能な重合性官能基としては、ビニル基、(メタ)アクリル基、水酸基、フェノール性水酸基、カルボキシ基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基、オキセタン基等が挙げられる。中でも、エポキシ基が好ましい。特に、光カチオン重合によるハードコート組成物の硬化の際に、粒子とシロキサン化合物との間に化学架橋を形成できることから、エポキシ基で表面修飾された粒子が好ましい。
【0099】
表面に反応性官能基を有する粒子としては、例えば、表面修飾された無機粒子や、コアシェルポリマー粒子が挙げられる。これらの粒子は単独で使用してもよいし、両方を含んでいてもよい。
【0100】
<溶媒>
本発明のハードコートフィルムのハードコート組成物は、溶媒を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。溶媒を含む場合には、樹脂基材を溶解させないものが好ましい。溶媒の含有量としては、本発明のシルセスキオキサン化合物100重量部に対して500重量部以下が好ましく、300重量部以下がより好ましく、100重量部以下がさらに好ましい。
【0101】
<添加剤>
本発明のハードコートフィルムのハードコート組成物は、無機顔料や有機顔料、ラジカル重合開始剤、表面調整剤、表面改質剤、可塑剤、分散剤、湿潤剤、増粘剤、消泡剤等の添加剤を含んでいてもよい。また、ハードコート組成物は、上記のシルセスキオキサン化合物以外の熱可塑性または熱硬化性の樹脂材料を含んでいてもよい。
【0102】
[ハードコートフィルム]
本発明のハードコートフィルムは、透明樹脂フィルム層と、該透明樹脂フィルム層の少なくとも一方の表面に形成された一般式(1)で表される分子内に脂環式エポキシ基を有するシラン化合物を含む縮合物の組成物の硬化物であるハードコート層とを有するフィルムであることを特徴としている。
【0103】
本発明のハードコートフィルムにおけるハードコート層は、上記透明樹脂フィルム層の一方の表面(片面)のみに形成されていてもよいし、両方の表面(両面)に形成されていてもよい。
【0104】
本発明のハードコートフィルムは、透明樹脂フィルム層上にハードコート組成物を塗布し、必要に応じて溶媒を乾燥除去した後、活性エネルギー線を照射することにより、もしくは加熱により、ハードコート組成物を硬化することで得られる。なかでも、透明樹脂フィルム上にシラン化合物の縮合物と光カチオン開始剤を含む組成物を塗工する工程の後に、活性エネルギー線を照射する工程とを含む方法が生産性の観点から好ましい。ハードコート組成物を塗布する方法としては特に限定されず、バーコート、グラビアコート、コンマコート等のロールコート、スロットダイコート、ファウンテンダイコート等のダイコート、スピンコート、スプレーコート、ディップコートなどの既存の塗布方法を使用できる。
【0105】
ハードコート層を塗布する前に、基材となる透明樹脂フィルム層の表面に、コロナ処理やプラズマ処理等の表面処理を行ってもよい。コロナ処理やプラズマ処理を行うことで、透明樹脂フィルム層とハードコート層の密着性が向上し、耐屈曲性が向上する効果が得られる。また、透明樹脂フィルム層の表面に易接着層(プライマー層)等を設けてもよい。なお、本発明のハードコート層は、透明樹脂フィルム層に対する高い密着性を示すため、易接着層等を設けなくてもよい。すなわち、本発明のハードコートフィルムは、透明樹脂フィルム層とハードコート層とが接していてもよい。
【0106】
ハードコート組成物に活性エネルギー線を照射することにより、もしくは加熱することにより、カチオン重合開始剤から酸が生成し、シルセスキオキサン化合物のエポキシ基が開環およびカチオン重合することにより、硬化が進行する。ハードコート組成物が反応性添加剤を含んでいる場合は、シロキサン化合物同士の重合反応に加えて、シロキサン化合物のエポキシ基と反応性添加剤との重合反応も生じる。また、ハードコート組成物が表面に反応性官能基を有する粒子を含有する場合は、粒子表面の官能基とシロキサン化合物のエポキシ基が反応して化学架橋が形成される。
【0107】
光硬化の際に照射する活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等が挙げられる。硬化反応速度が高くエネルギー効率に優れることから、活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。活性エネルギー線の積算照射量は、例えば50~10000mJ/cm程度であり、光カチオン重合開始剤の種類および配合量、ハードコート層の厚み等に応じて設定すればよい。硬化温度は特に限定されないが、通常150℃以下である。
【0108】
前述のように、硬化の際に、カチオン重合開始剤(光酸発生剤)から酸が生成して光硬化が進行する。そのため、硬化後のハードコート層には、光酸発生剤のカウンターアニオンが残存している。ハードコート層は、前述の光酸発生剤のカウンターアニオンとして、フルオロフォスフェート系アニオン、テトラキスペンタフルオロフェニルボレート系アニオン、フルオロガリウム系アニオン、またはそれらの塩を含んでいてもよい。
【0109】
本発明のハードコートフィルムにおける透明樹脂フィルム層は、位相差が0~20nmであることが好ましい。位相差がこの範囲を超えると、ディスプレイに組み込んだ際に偏光サングラスなど偏光子を通して視認時の視認性低下を引き起こす傾向があるため好ましくない。
【0110】
透明樹脂フィルム層としては特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート(PC)、環状ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の(メタ)アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、等の樹脂材料からなる基材が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル樹脂とは、メタアクリレートおよびアクリレートの重合体及び共重合体を意味し、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル-スチレン共重合体等が挙げられる。また、メタアクリレートおよびアクリレートの重合体及び共重合体のすべてまたは一部の(メタ)アクリル酸構造が酸無水物構造やイミド環構造に変性されたものであってもよい。
【0111】
上記樹脂基材を構成する樹脂は1種類の単量体から構成されるものであっても、2種以上の単量体から構成されるものであってもよく、本発明のハードコートフィルムの特徴を満たす範囲で適宜調整することができる。上記樹脂は他の樹脂に分類される単量体を0~49wt%含んでいてもよく、0~20wt%含んでいることがより好ましく、0~5wt%含んでいることがさらに好ましい場合がある。なお、上記樹脂基材は1種のみの樹脂材料により構成されたものであってもよいし、2種以上の樹脂材料より構成されたものであってもよい。さらに、それらの積層体であってもよい。
【0112】
上記透明樹脂フィルム層は、ハードコート層を形成した際の折れ曲がり復元性の観点からはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)がより好ましい。ハードコート層を形成した際の硬度の観点からはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の(メタ)アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂がより好ましい。折れ曲がり復元性と硬度のバランスの観点から、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の(メタ)アクリル樹脂が特に好ましい。
【0113】
上記透明樹脂フィルム層は、単層の構成であってもよいし、多層の構成であってもよく、その構成は特に限定されない。例えば、上記透明樹脂フィルム層は、少なくとも一方の表面に本発明のハードコート層以外の層が形成された、積層構造を有する透明樹脂フィルム層であってもよい。本発明のハードコート層以外の層としては、例えば、本発明のハードコート層以外のハードコート層等が挙げられる。
【0114】
上記透明樹脂フィルム層の厚みは、20~80μmである。この範囲から適宜選択することができ、好ましくは20~70μm、より好ましくは、20~60μm、さらに好ましくは20~50μm、特に好ましくは30~45μmである。透明樹脂フィルム層が厚いと硬度が良好となる傾向があり、20μmより薄くなると硬度が不足する。透明樹脂フィルム層が薄いと折れ曲がり復元性や耐屈曲性が良好となる傾向があり、80μmより厚くなると折れ曲がり復元性や耐屈曲性が不足する。
【0115】
本発明のハードコート層の厚みは、3~49μmである。この範囲から適宜選択することができ、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましく、48μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。ハードコート層が厚いと折れ曲がり復元性、硬度、耐衝撃性が良好となる傾向があり、3μmより薄くなると折れ曲がり復元性、硬度、耐衝撃性が不足する場合がある。ここで、耐衝撃性とは、本発明のハードコートフィルムをディスプレイに組み込んだ際に、ディスプレイに加えられた衝撃に対する耐性を意味しており、ハードコート層が厚いと耐衝撃性が向上する。ハードコート層が薄いと耐屈曲性が良好となる傾向があり、49μmより厚くなると耐屈曲性が不足する。さらに、ハードコート層が49μm以上に厚くなると、折れ曲がり復元性も低下する場合がある。
【0116】
本発明のハードコートフィルムの総厚みは、23~129μmの範囲から適宜選択することができ、好ましくは55~100μmである。総厚みが23μm未満では硬度が不足する場合がある。総厚みが129μmを超えると耐屈曲性が不足する場合がある。
【0117】
本発明のハードコートフィルムにおける、ハードコート層の厚みと透明樹脂フィルム層の厚みとの比率(ハードコート層厚み/透明樹脂フィルム層厚み)は特に限定されず、例えば、49/20~3/80の間から適宜選択すればよい。
【0118】
[ハードコートフィルムの特性]
本発明のハードコートフィルムは、低位相差であることを特徴としており、ディスプレイに用いた際の視認性に優れる。本発明のハードコートフィルムはハードコート層、透明樹脂フィルム層いずれもが低位相差にコントロールされており、ディスプレイから発せられた光の偏光状態を変化させることがほとんどないため、偏光子を通してディスプレイを見た時の画像の変色や光量変化が起こらず、良好な画質が得られる効果がある。本発明のハードコートフィルムの正面位相差は0~20nmであり、0~10nmが好ましく、0~5nmがより好ましく、0~3nmがさらに好ましい。本発明のハードコートフィルムを平行に配置された直線偏光板の間に配置した時に、画像の変色および光量変化に起因する虹ムラが起こらないことが好ましい。
【0119】
本発明のハードコートフィルムは、上記のように低位相差であり、かつ折れ曲がり復元性にも優れることを特徴としている。折れ曲がり復元性は、ハードコートフィルムを60℃90%RH環境で半径3mmに折り曲げた状態で24時間保持した後に、折り曲げ負荷を取り除いて23℃50%RH環境に20分保持した後に測定される、フィルムの折れ曲がった部分のなす挟角を測定することで得られる角度で定義される、折れ曲がり復元角度である。フォルダブルディスプレイやローラブルディスプレイに代表されるフレキシブルディスプレイは、未使用時に折り曲げられた状態や巻き取られた状態で保持されるが、使用時には平面に近い形状で用いられることが多いため、折り曲げや巻き取り状態で保持された時の変形が、平面に戻した時に解消する性質である、折れ曲がり復元性が強く求められる。しかし、位相差の低い透明樹脂フィルムは折れ曲がり復元性が必ずしも高くなく、フレキシブルディスプレイに用いる際に折れ曲がり復元性が不足することがあった。本発明のハードコートフィルムは、一般式(1)で表される分子内に脂環式エポキシ基を有するシラン化合物を含む縮合物の組成物の硬化物であるハードコート層が、シラン化合物の縮合に基づく3次元のシロキサン結合とエポキシ基の硬化反応に基づくエーテル結合を有しており高度架橋しているため、折り曲げ負荷をかけられた際のハードコート層のクリープ現象が起こりにくく、折れ曲がり復元性に優れている。そのため、このハードコート層を有する透明樹脂フィルム層の折れ曲がり復元性を大幅に向上させることが可能である。折れ曲がり復元性はハードコート層が厚いと向上する傾向がある。本発明のハードコートフィルムの折れ曲がり復元角度は70~180°であり、90~180°が好ましく、130~180°がより好ましい。本発明のハードコートフィルムは高い折れ曲がり復元性を有するため、カバーウィンドウの最表層以外の必ずしも硬度が求められないフレキシブルディスプレイの部材に用いることも可能である。
【0120】
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層を透明樹脂フィルム層に積層することで折れ曲がり復元性を大幅に改善できる。ハードコート層が形成されたハードコートフィルムの折れ曲がり復元角度を、ハードコート層を形成していない透明樹脂フィルム層単独の折れ曲がり復元角度で除した値で定義される、透明樹脂フィルム層単独での折れ曲がり復元角度に対する、透明樹脂フィルム層にハードコート層形成後のハードコートフィルムとしての折れ曲がり復元角度の比は1.20以上が好ましく、5.0以上がより好ましく、24.00以上がさらに好ましい。透明樹脂フィルム層単独での折れ曲がり復元角度に対する、透明樹脂フィルム層にハードコート層形成後のハードコートフィルムとしての折れ曲がり復元角度の比が大きいことは、ハードコート層による折れ曲がり復元角度の向上効果が大きいことを意味する。
【0121】
本発明のハードコートフィルムは、全光線透過率が90%以上であることが好ましい。全光線透過率が高いことで、ディスプレイの視認性を向上させたり、省電力化させたりすることが可能となる。全光線透過率は91%以上がより好ましく、92%以上であることがさらに好ましい。
【0122】
本発明のハードコートフィルムは、YIが2.0以下であることが好ましい。YIが低いことで、ディスプレイの視認性を向上させたり、色調を良好にさせたりすることが可能となる。YIは1.5以下がより好ましい。
【0123】
本発明のハードコートフィルムは、一般式(1)で表される分子内に脂環式エポキシ基を有するシラン化合物を含む縮合物の組成物の硬化物であるハードコート層が、エポキシ基を有することで透明樹脂フィルム層との密着性が向上し、折り曲げた際の透明樹脂フィルム層との剥離が生じにくいため、耐屈曲性に優れている。本発明のハードコートフィルムはハードコート層を内面にして、JIS-K5600に準拠したマンドレル屈曲試験で半径1mm以下で折曲げが可能であることが好ましい。
【0124】
本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層を外面にして、JIS-K5600に準拠したマンドレル屈曲試験で半径5mm以下で折曲げが可能であることが好ましく、半径2.0mm以下で折曲げ可能であることがさらに好ましく、半径1.5mm以下で折曲げ可能であることが特に好ましい。
【0125】
本発明のハードコートフィルムはハードコート層を内面にして、半径2.5mmで5万回以上の繰り返し曲げが可能であることが好ましく、10万回以上の繰り返し曲げが可能であることがさらに好ましい。
【0126】
本発明のハードコートフィルムはJIS-K5600に準拠した鉛筆硬度試験において6B以上の硬度を有することが好ましい。鉛筆硬度は、3B以上であることがより好ましく、HB以上であることがさらに好ましく、H以上であることが特に好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0127】
[ハードコートフィルムの応用]
ハードコートフィルムは、ハードコート層上、または透明樹脂フィルム層のハードコート層非形成面には、各種の機能層を設けてもよい。機能層としては、反射防止層、防眩層、帯電防止層、透明電極等が挙げられる。また、ハードコートフィルムには、透明粘着剤層が付設されてもよい。
【0128】
本発明のハードコートフィルムは、透明性が高く、機械強度に優れるため、画像表示パネルの表面に設けられるカバーウインドウや、ディスプレイ用透明基板、タッチパネル用透明基板、太陽電池用基板等に好適に用いることができる。本発明のハードコートフィルムはさらに、低位相差であり、折れ曲がり復元性に特に優れるため、特に、曲面ディスプレイやフレキシブルディスプレイ等のカバーウインドウや基板フィルムとして好適に使用できる。本発明のハードコートフィルムは、従来は折れ曲がり復元性が不足するためにフレキシブルディスプレイに使用困難であった低位相差の透明樹脂フィルム単独に比べて、折れ曲がり復元性が優れており、低位相差フィルムのフレキシブルディスプレイへの適用が可能になる。
【実施例0129】
以下、実施例および比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、以下の合成例にて得られる縮合物の評価方法は、次の通りである。
【0130】
<数平均分子量Mnの測定>
数平均分子量は、GPCにより測定した。東ソー社製GPC装置HLC-8220GPC(カラム:TSKgel GMHXL×2本、TSKgel G3000HXL,TSKgel G2000HXL)を用い、溶媒としてTHFを用い、ポリスチレン換算で算出した。
【0131】
<T2体に対するT3体の割合[T3体]/[T2体]の算出>
アジレント社製600MHz-NMRを用いて、29Si-NMR測定を実施することにより、T3体とT2体の含有量およびその割合[T3体]/[T2体]をそれぞれ算出した。
【0132】
<エポキシ基の残存率評価>
ブルカー社製400MHz-NMRを用いて、重アセトンを溶媒としてH-NMR測定を実施することにより、反応後に得られた縮合物のエポキシ基の残存量を算出した。
【0133】
[シルセスキオキサン化合物(シラン化合物の縮合物)の合成]
(合成例1)
温度計、撹拌装置、還流冷却管を取り付けた200mLフラスコの反応容器に、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製;SILQUEST A-186)(66.5g;270mmol)および1-メトキシ-2-プロパノール(PGME)(16.5g)を仕込み、均一に撹拌した。この混合液に、水(9.7g;539mmol)およびメタノール(5.8g)の混合液に溶解した塩化マグネシウム(0.039g;0.405mmol)溶液を5分かけて滴下し、均一になるまで撹拌した。その後、80℃に昇温し、撹拌しながら6時間重縮合反応を行った。反応終了後、ロータリーエバポレーターを用いて減圧脱揮および濃縮を行い、縮合物中のメタノールおよび水を除去した。
得られた縮合物を分析したところ、数平均分子量Mnは1700、29Si-NMR測定により算出されるT3体とT2体の割合[T3体]/[T2体]は2.3であった。また、上記仕込み重量に基づいて算出した塩化マグネシウム(中性塩触媒)の含有量は814ppmであった。
【0134】
[透明ポリイミドフィルム1の作製]
(ポリアミド酸溶液1の調製)
セパラブルフラスコに、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(4.48g;14.0mmol)、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(1.49g;6.0mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)(64.6g)を投入し、窒素雰囲気下で攪拌してジアミン溶液を得た。そこに、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)(2.29g;5.0mmol)、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(4.44g;10.0mmol)、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(1.47g;5.0mmol)を加え、12時間攪拌してポリアミド酸溶液1を得た。
【0135】
(イミド化およびポリイミド樹脂の単離)
上記のポリアミド酸溶液1に、DMF28.9g、およびイミド化触媒としてピリジン(4.75g;60.0mmol)を添加し完全に分散させた後、無水酢酸(6.13g;60.0mmol)を添加し、80℃で4時間攪拌した。室温まで冷却した溶液を攪拌しながら、2-プロピルアルコール(IPA)を400g添加し、30分程度撹拌後、桐山ロートを使用して吸引ろ過を行った。得られた固体を100gのIPAで洗浄した。洗浄作業を6回繰り返した後、120℃に設定した真空オーブンで8時間乾燥させて、ポリイミド樹脂1を得た。
【0136】
(透明ポリイミドフィルム1の作製)
上記のポリイミド樹脂1をジクロロメタンに溶解し、固形分濃度10重量%のポリイミド溶液を得た。バーコーターを用いて、ポリイミド溶液を無アルカリガラス板に塗布し、40℃で60分、80℃で30分、150℃で30分、170℃で30分間、大気雰囲気下で加熱して溶媒を除去して、厚み50μmの透明ポリイミドフィルム1を得た。
【0137】
[透明ポリイミドフィルム2の作製]
(ポリアミド酸溶液2の調製)
反応容器に、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を383重量部投入し、窒素雰囲気下で攪拌した。そこに、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン:36.3重量部、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン:12.0重量部、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物:15.8重量部、および2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物:35.9重量部を順次添加し、窒素雰囲気下で攪拌してポリアミド酸溶液2を得た。
【0138】
(イミド化およびポリイミド樹脂の単離)
ポリイミド酸溶液2(ポリアミド酸の固形分100重量部)に、イミド化触媒としてピリジン38.4重量部を添加し、攪拌した後、無水酢酸49.5重量部を添加し、120℃で2時間攪拌後、室温まで冷却してポリイミド溶液を得た。溶液を攪拌しながら、1Lのイソプロピルアルコールを滴下して、ポリイミド樹脂を析出させた。その後、濾別したポリイミド樹脂をIPAで3回洗浄した後、120℃で12時間乾燥させて白色のポリイミド樹脂2を得た。
【0139】
(透明ポリイミドフィルム2の作製)
ポリイミド樹脂2をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度17%のポリイミド溶液を得た。コーターを用いて、ポリイミド溶液を無アルカリガラス板上に塗布し、40℃で10分、80℃で30分、150℃で30分、170℃で1時間、大気雰囲気下で乾燥した後、無アルカリガラス板から剥離して、厚み80μmの透明ポリイミドフィルム2を得た。
【0140】
ハードコート組成物の調製方法及びハードコートフィルムの作製方法については、以下の通りである。
【0141】
[ハードコート組成物の調製及びハードコートフィルムの作製]
(実施例1:ハードコートフィルム1の作製)
合成例1にて得られたシルセスキオキサン化合物100重量部に対して、光カチオン重合開始剤としてジフェニル(4-フェニルチオフェニル)・SbF6塩(サンアプロ社製:CPI-101A)のプロピレンカーボネート50%溶液を固形分にして2重量部、レベリング剤としてシリコーン系レベリング剤(ビックケミージャパン社製:BYK-300)を固形分にして0.25重量部配合して、ハードコート組成物1を得た。
【0142】
透明樹脂フィルム層として用いた厚さ40μmのポリメチルメタクリレートフィルムの主面に、ハードコート組成物1を乾燥膜厚が20μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、120℃で10分間加熱した。その後、60℃まで徐冷してから高圧水銀ランプを用いて、UVAの積算光量が400mJ/cm2となるように紫外線を照射し、ハードコート組成物を硬化させて、ハードコートフィルム1を得た。
【0143】
(実施例2)
透明樹脂フィルム層として厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルムを用いた以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルム2を得た。
【0144】
(実施例3)
透明樹脂フィルム層として厚さ60μmのトリアセチルセルロースフィルムを用いた以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルム3を得た。
【0145】
(実施例4)
透明樹脂フィルム層として厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムを用いた以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルム4を得た。
【0146】
(実施例5)
透明樹脂フィルム層として厚さ45μmのポリカーボネートフィルムを用いた以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルム5を得た。
【0147】
(実施例6)
透明樹脂フィルム層として厚さ66μmのポリカーボネートフィルムを用いた以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルム6を得た。
【0148】
(実施例7)
ハードコート組成物1の乾燥膜厚が10μmとなるようにした以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルム7を得た。
【0149】
(実施例8)
ハードコート組成物1の乾燥膜厚が5μmとなるようにした以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルム8を得た。
【0150】
(比較例1)
透明樹脂フィルム層として厚さ50μmの透明ポリイミドフィルム1を用いた以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルム9を得た。
【0151】
(比較例2)
透明樹脂フィルム層として厚さ80μmの透明ポリイミドフィルム2を用いた以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルム10を得た。
【0152】
(比較例3)
透明樹脂フィルム層として厚さ50μmのポリエチレンナフタレートフィルムを用いた以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルム11を得た。
【0153】
(比較例4)
透明樹脂フィルム層として厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルム12を得た。
【0154】
(比較例5)
透明樹脂フィルム層として厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルム13を得た。
【0155】
(比較例6)
透明樹脂フィルム層として厚さ160μmのポリメチルメタクリレートフィルムを用いた以外実施例1と同様にして、ハードコートフィルム14を得た。
【0156】
実施例および比較例で得られたハードコートフィルムに対する物性評価は、以下の通りである。また、各実施例、各比較例の評価結果を表1および2に示す。
【0157】
<折れ曲がり復元性(折れ曲がり復元角度)>
ハードコートフィルムまたはハードコート層を形成していない透明樹脂フィルム層単独を半径3mmに折り曲げた状態で、60℃90%RH環境で24時間保持した後に、折り曲げ負荷を取り除いて23℃50%RH環境に20分保持してから、フィルムの折れ曲がった部分のなす挟角を測定し、折れ曲がり復元角度とした。この値が大きいほど、折れ曲がり復元性が高いことを意味する。ハードコートフィルムについてはハードコート層を内側にして折り曲げて試験を行った。
【0158】
<折れ曲がり復元性(折れ曲がり復元角度比率)>
ハードコート層が形成されたハードコートフィルムの折れ曲がり復元角度を、ハードコート層を形成していない透明樹脂フィルム層単独の折れ曲がり復元角度で除した値とした。この値が大きいほど、ハードコート層の折曲がり復元性の向上効果が大きいことを意味する。
【0159】
<耐屈曲性(円筒マドレル(半径))>
JIS K5600に従い、樹脂基材上に形成されたハードコート層を外側として、タイプ1の試験機を用いて円筒型マンドレル試験を行った。マンドレルの径が小さいほど、耐屈曲性に優れることを示す。
【0160】
<耐屈曲性(繰り返し曲げ試験(半径))>
ハードコートフィルムをユアサシステム機器製U字屈曲耐久性試験機DMLHBにセットし、屈曲半径2.5mmで1回/秒の速度で繰り返し曲げ試験し、所定回数でクラックや破断の有無を確認した。試験は温度23℃、湿度55%に設定された恒温恒湿環境で行った。多くの繰り返し曲げ回数後でもクラックや破断がなければ耐屈曲性に優れることを示す。10万回の繰り返し曲げ後にもクラックが破断が無かったものは10万回以上と表記した。試験はハードコート層が内側に曲がるようにセットして行った。
【0161】
<表面硬度(鉛筆硬度)>
JIS K5600に従い、750gの荷重にてハードコート層形成面の鉛筆硬度を測定し、表面硬度の評価を行った。
【0162】
<虹ムラ>
液晶ディスプレイ上にハードコートフィルム、直線偏光板をこの順に積層し、白画面にて色むらの有無を確認した。色むらがあるものを×、色むらが無いものを○とした。液晶ディスプレイの偏光板とハードコートフィルム上の直線偏光板は光軸が揃うように配置した。色むらが無いことが視認性に優れていることを示す。
【0163】
<(正面)位相差>
シ ン テ ッ ク 社製位相差測定装置O P T I P R O ( M O D E L 2 1 - 2 5 5 M A )でハードコートフィルムの位相差を測定した。位相差の値が小さいほど視認性に優れていることを示す。
【0164】
<全光線透過率およびヘイズ>
スガ試験機製ヘイズメーターHZ-V3を用いて、JIS K7361-1:1999およびJIS K7136:2000に記載の方法により測定した。なお、測定にはD65光源を用い、全光線透過率は、フィルムへの平行入射光束に対する全透過光束(平行光線成分および拡散光線成分)の割合として算出した。
【0165】
<YI>
スガ試験機製測色計SC-Pを用いて透過モードで測定した。測定にはD65光源を用いた。YIが0に近いほど無色性に優れることを示す。
【表1】
【表2】
表中、透明樹脂フィルム層の材質は以下の略号で表記した
ポリメチルメタクリレート:PMMA
トリアセチルセルロース:TAC
ポリカーボネート:PC
ポリイミド:PI
ポリエチレンナフタレート:PEN
ポリエチレンテレフタレート:PET
【0166】
実施例1~8のハードコートフィルムは位相差が低く虹ムラがないため光学特性に優れており、かつ透明樹脂フィルム単独に比べて大幅に折れ曲がり復元性に優れている。そのため、フレキシブルディスプレイのカバーウィンドウや基板として好適に使用できる。ハードコート層の厚さに着目すると、ハードコート層が厚い実施例1が最も折れ曲がり復元性が良好であり、ハードコート層が薄くなるにつれて折れ曲がり復元性が低くなる傾向がみられた。
【0167】
比較例1~5のハードコートフィルムは位相差が大きく、虹ムラが生じており、ディスプレイに使用した際に視認性が問題になる可能性がある。また、比較例4と5の比較から、透明樹脂フィルム層が厚くなりすぎると折れ曲がり復元性が悪化する傾向があることがわかる。比較例6のハードコートフィルムは位相差が低く虹ムラがないため光学特性は良好であったが、透明樹脂フィルム層が厚すぎて折れ曲がり復元試験時にハードコートフィルムが破断してしまい、耐屈曲性が実施例に比べて劣っていた。