(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019811
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】水洗トイレ用シート
(51)【国際特許分類】
E03D 9/00 20060101AFI20230202BHJP
A47K 17/02 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
E03D9/00 F
A47K17/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124809
(22)【出願日】2021-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】521335546
【氏名又は名称】吉山 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】吉山 武志
【テーマコード(参考)】
2D037
2D038
【Fターム(参考)】
2D037BA23
2D038ZA02
(57)【要約】
【課題】水たまりが貯留される開口部に設置しやすく、かつ、上手く跳ね返りを防ぐことを可能とする水洗トイレ用シートを提供することである。
【解決手段】水洗トイレ用シート30は、汚物を受けるために開口された天井部23を有し、臭いの逆流を防ぐための水たまりが貯留する開口部28を有する便鉢部22と、便鉢部22の23天井部に対して起立又は倒伏するように回動する便座部15と、を備える水洗式大便器1に用いられる水洗トイレ用シート30であって、水跳ねが起きにくい柔らかさと厚みを有し、水洗式大便器で流せる素材で構成され、開口部28より開口面積よりも大きい面積を有する円形の便受け止め部32を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚物を受けるために開口された天井部を有し、臭いの逆流を防ぐための水たまりを貯留する開口部を有する便鉢部と、
前記便鉢部の前記天井部に対して起立又は倒伏するように回動する便座部と、を備える水洗式大便器に用いられる水洗トイレ用シートであって、
水跳ねが起きにくい柔らかさと厚みを有し、水洗式大便器で流せる素材で構成され、前記開口部より開口面積よりも大きい面積を有する円形の便受け止め部を備えることを特徴とする水洗トイレ用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の水洗トイレ用シートにおいて、
前記便受け止め部は、重畳する2枚の円形シートを有しており、
前記2枚の円形シートは、径方向の外側端部で周方向に沿って接着されていることを特徴とする水洗トイレ用シート。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の水洗トイレ用シートにおいて、
前記便受け止め部は、円中心部に手で摘まむための摘まみ部が設けられていることを特徴とする水洗トイレ用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗トイレ用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水洗トイレには、臭いの逆流を防ぐために、便鉢部内に水が貯留されている。本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、大便や小便をする前に、水洗トイレ用の便器内に溜まっている水の表面に、(やわらかい紙・ティシュー)などのような物質を浮かべることにより、大便や小便が水の表面に当たった邀撃で水を跳ね上げる力を、水の上に浮かんでいる(やわらかい紙・ティシュー)などが壁となり、水の跳ね上がる力を押さえることを特徴とする水洗トイレ用水跳ね防止シートが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、水洗トイレに使用できる紙を用い、大きめの紙をピンポン玉くらいの大きさに丸く圧縮した紙のボール球が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-36004号公報
【特許文献2】特開2001-303643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
弁座に座って排便すると、水たまりに向かって便が落下した際に便鉢部に便が付着して汚れてしまうという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、便鉢部に便が付着して汚れてしまうことを防ぐことを可能とする水洗トイレ用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る水洗トイレ用シートは、汚物を受けるために開口された天井部を有し、臭いの逆流を防ぐための水たまりを貯留する開口部を有する便鉢部と、前記便鉢部の前記天井部に対して起立又は倒伏するように回動する便座部と、を備える水洗式大便器に用いられる水洗トイレ用シートであって、水跳ねが起きにくい柔らかさと厚みを有し、水洗式大便器で流せる素材で構成され、前記開口部より開口面積よりも大きい面積を有する円形の便受け止め部を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る水洗トイレ用シートにおいて、前記便受け止め部は、重畳する2枚の円形シートを有しており、前記2枚の円形シートは、径方向の外側端部で周方向に沿って接着されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る水洗トイレ用シートにおいて、前記便受け止め部は、円中心部に手で摘まむための摘まみ部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水たまりが貯留される開口部に設置しやすく、かつ、上手く跳ね返りを防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る水洗トイレ用シートを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る水洗トイレ用シートを水洗式大便器に設置して排便している様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る水洗トイレ用シート30を示す図である。
図2は、本発明の実施形態に係る水洗トイレ用シート30を水洗式大便器1に設置して排便している様子を示す図である。
【0014】
水洗トイレ用シート30は、水洗式大便器1に設置することで、便鉢部22が汚れることなく、水の跳ね返りを防いで排便することを可能とするシートである。最初に、水洗トイレ用シート30を設置する対象である水洗式大便器1について説明し、その後、水洗トイレ用シート30について説明する。
【0015】
水洗式大便器1は、便座蓋10と、便鉢部22と、タンク部26とを備えている。水洗式大便器1は、ユーザ2が座って用を足すための水洗式の便器である。
【0016】
便鉢部22は、汚物を受けるために開口された天井部23を有するボウル形状の部材である。便鉢部22は、適度な強度を有する材質、例えば、樹脂や陶器などを用いて構成することが出来る。
【0017】
便鉢部22は、水たまりを貯留する開口部28と、汚物を水とともに排出させるための排水路部29とを備えている。水たまり部において、常に水をためておくことで便鉢部22の内側面への汚物付着を防ぐほか、下水管から上がってくる臭いを防ぐ効果がある。
【0018】
排水路部29は、断面形状が略S字形状を有している。便鉢部22内に水をためておくため、排水路部29は、上方にせり上がっている。このせり上がった部分は、「せき」と呼ばれている。
【0019】
便鉢部22内の汚物を流しきり、かつ、水たまりの水位を保つように、1回分の流れる水量が綿密に設定されている。
【0020】
タンク部26は、レバーを回すと便鉢部22内に水を流して汚物を排水路部29に流す機能を有している。タンク部26は、ボールタップと、オーバーフロー管と、フロートバルブと、止水栓とを含んで構成される。
【0021】
ボールタップは、タンク部26内の真ん中に浮いている球体である浮き玉と、それを支える指示棒とを含んで構成される。ボールタップは、タンク部26内の給水を司る部位であり、指示棒の付け根はタンク部26外から水を取り入れる給水管と通じている。浮き玉の上下運動によってタンク部26内の水位が測られ、低い位置にあるときは給水し、上がってくると水が止まる仕組みになっている。
【0022】
オーバーフロー管は、タンク部26の中央部に立っている管であり、何らかの理由でタンク部26内の給水が止まらなくなったとき、タンク部26から水が漏れ出すのを防ぐため、溢れた水がこの管の中を通って便鉢部22内へ逃げられるようになっている。
【0023】
フロートバルブは、タンク部26の底にある黒いゴム製の弁である。フロートバルブは、タンク部26から便鉢部22への排水機能を担う部位で、鎖を通じてレバーと連結されている。フロートバルブは、通常、バルブ本体がタンク底部の排水弁を塞いでおり、レバーが回ると持ち上げられて排水弁が開くようになっている。
【0024】
止水栓は、タンク部26の側面からは給水管が伸びており、その管が壁や床に接するところに設けられている。止水栓は、タンク部26に水を供給するための蛇口のようなもので、閉めれば給水が止まる仕組みとなっており、止水栓の開け具合で水の勢いが調節できるようになっている。
【0025】
便座蓋10は、蓋部12と、便座部15とを含んで構成される。便座蓋10は、便鉢部22に装着することが出来る。
【0026】
便座部15は、便鉢部22の天井部に対して起立又は倒伏するように回動し、所定の厚みを有し、かつ、略O字状の貫通孔が形成された部材である。便座部15は、適度な強度を有する材質、例えば、樹脂や陶器などを用いて構成することが出来る。
【0027】
便座部15は、ユーザ2が大便をする際に倒伏され、ユーザ2が座ることが可能な略O字状の部材である。便座部15は、寒い冬場に座った際に快適に用を足すことができるように内部にヒーターを設けてもよい。
【0028】
蓋部12は、便座部15とは独立して起立又は倒伏するように回動可能なように設けられている。蓋部12は、便座部15に形成される貫通孔から匂いが漏れないように塞ぐための蓋部材である。
【0029】
次に、水洗トイレ用シート30について説明する。
図1に示されるように、水洗トイレ用シート30は、水跳ねが起きにくい柔らかさと厚みを有し、水洗式大便器で流せる素材で構成され、開口部28より開口面積よりも大きい面積を有する円形の便受け止め部32を備える。
【0030】
便受け止め部32は、直径が28cmの円形部材であるものとして説明するが、もちろん、直径は適宜変更可能である。便受け止め部32は、マツやスギなど針葉樹からなるN材と、ユーカリやブナなど広葉樹からなるL材の2種類のパルプで構成されているトイレットペーパーと同じ材質を用いることができるが、もちろん、その他の材質を用いてもよい。
【0031】
便受け止め部32は、重畳する2枚の円形シート32a,32bを有している。各円形シート部32a,32bは、厚みが約1mmのシートで構成されている。そして、各円形シート32a,32bは、径方向の外側端部で周方向に沿って接着されいる。
【0032】
各円形シート部32a,32bは、径方向の外側端部のみを周方向に沿って熱溶着することで接触することができるが、トイレに流すことが可能な素材であれば、その他の接着手段を用いることは可能である。
【0033】
また、便受け止め部32を構成する2枚の円形シート32a,32bのうち、円形シート32aの中心には、手で摘まむための摘まみ部34を備えている。摘まみ部34は、適度な大きさを有する略円錐形状を有しており、2枚の円形シート32a,32bと同じ材質で形成されている。
【0034】
ユーザ2が摘まみ部34を摘まむと、円形シート部32a,32bは、径方向の外側端部のみを周方向に沿って熱溶着されているため、
図1(b)に示されるように、円形シート部32a,32bの端部同士が接触し、中央部に向けて徐々に離間する距離が広がる。すなわち、便受け止め部32は、円盤のような形状を形成する。
【0035】
続いて、上記構成の水洗トイレ用シート30の作用について説明する。従来、ユーザ2が水洗式の大便器で排便しようとすると、便の大きさや形状によって、水たまりに向かって落下した際には、便鉢部22に便が付着して汚れてしまうという課題がある。また、跳ね返ってきた水がユーザ2のお尻にくっつくことがあり、不快な気持ちになるという付随的な課題がある。このような課題に対し、水洗トイレ用シート30は顕著な効果を発揮する。
【0036】
最初に、ユーザ2は、水洗トイレ用シート30を準備し、蓋部12を
図2(b)に示されるように起立させて、水洗トイレ用シート30の摘まみ部34を摘まんで持つ。
【0037】
ユーザ2が摘まみ部34を摘まむと、径方向の外側端部のみが接着された円形シート部32a,32bは、重力によって、
図1(b)に示されるように円盤形状に変形される。
【0038】
ユーザ2は、この状態で、便鉢部22内に水洗トイレ用シート30を入れて開口部28上に位置合わせを行い、摘まみ部34を離すと、水洗トイレ用シート30が落下して開口部28を覆うように位置する。
【0039】
水洗トイレ用シート30は、上記のように円盤形状を有しているため、底面部の先端が水たまりに浸かった際に、摘まみ部34を離すと、そのまま開口部28の全体を覆うことが出来る。
【0040】
また、水洗トイレ用シート30によれば、便受け止め部32は円形であるため、矩形などのように配置する方向によっては開口部28との間に隙間が形成されてしまう虞もなく、開口部28全体をカバーすることが出来るという利点がある。
【0041】
以上のように、水洗トイレ用シート30を用いることで、ユーザ2は簡便に開口部28に配置することが出来る。そして、
図2(c)に示されるように、ユーザ2が便座部15座って排便するときに、大便が便受け止め部32によって受け止められるため、便を包んだ状態で流すことができ、便鉢部22が便で汚れてしまうことを防止しつつ、水が跳ね返ることを防止することが出来るという顕著な効果を奏する。その後は、通常と同様にレバーを開いて水を流すだけでよい。
【0042】
ここでは、水洗トイレ用シート30は、摘まみ部34を設けるものとして説明したが、摘まみ部34を設けない場合であっても、円形シート32aの中央部を摘まむことで同様の効果を生じさせることが可能である。
【0043】
なお、上記の例では、洋式トイレを例に説明したが、和式トイレでも、もちろん、適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 水洗式大便器、2 ユーザ、10 便座蓋、12 蓋部、15 便座部、22 便鉢部、23 天井部、26 タンク部、28 開口部、29 排水路部、30 水洗トイレ用シート、32 便受け止め部、32a,32b 円形シート、34 摘まみ部。