(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019898
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】懸架装置
(51)【国際特許分類】
B60G 17/00 20060101AFI20230202BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20230202BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20230202BHJP
F16F 1/06 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
B60G17/00
F16H25/22 A
F16H25/24 A
F16F1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124962
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】郡司 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 慎
(72)【発明者】
【氏名】居 超
【テーマコード(参考)】
3D301
3J059
3J062
【Fターム(参考)】
3D301AA04
3D301AA06
3D301AA48
3D301AA54
3D301DA08
3D301DA35
3D301DB50
3J059AA09
3J059BA01
3J059BB01
3J059BC02
3J059BD01
3J059DA32
3J059GA02
3J062AA01
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA25
3J062CD04
3J062CD22
3J062CD47
(57)【要約】
【課題】ボールねじ装置と電動モータとを備える懸架装置において、乗員に違和感を与えやすい周波数帯域の振動を小さく抑えることができる構造を実現する。
【解決手段】懸架装置1全体の反共振周波数が1Hz以上10Hz以下、好ましくは4Hz以上8Hz以下となるように、ボールねじ軸25の雄ボールねじ溝28のリード角を規制する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対して車輪を支持するための懸架装置であって、
外周面に雄ボールねじ溝を含み、前記車体と前記車輪を支持する部材とのうちの一方に対して軸方向の相対変位を不能に接続されるボールねじ軸と、内周面に、前記雄ボールねじ溝のリード角と同じリード角を有する雌ボールねじ溝を含み、前記車体と前記車輪を支持する部材とのうちの他方に対して軸方向の相対変位を不能に接続されるボールナットと、前記雄ボールねじ溝と前記雌ボールねじ溝との間に転動自在に配置された複数個のボールとを有するボールねじ装置と、
前記ボールねじ軸と前記ボールナットとのうちのいずれか一方を回転駆動する電動モータと、
前記車体と前記車輪を支持する部材との間に配置されるコイルスプリングと、
を備え、
前記雄ボールねじ溝のリード角は、前記懸架装置全体の反共振周波数が1Hz以上10Hz以下となるように規制されている、
懸架装置。
【請求項2】
前記雄ボールねじ溝のリード角は、前記懸架装置全体の反共振周波数が4Hz以上8Hz以下となるように規制されている、
請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
前記コイルスプリングのばね定数をKspとし、前記懸架装置全体の反共振周波数の目標値をfaとし、かつ、前記雄ボールねじ溝のリード角をφとした場合に、φ=(-0.0445Ksp+4.0771)faの関係を満たす、
請求項1または2に記載の懸架装置。
【請求項4】
筒形状を有し、前記車体に対して支持されるアッパシェルと、
前記アッパシェルの軸方向片側部分に、該アッパシェルに対する軸方向の相対変位を可能に、かつ、回転を不能に配置されるロアシェルと、を備え、
前記ボールねじ軸は、前記アッパシェルの内側に回転自在に、かつ、軸方向の相対変位を不能に支持されており、
前記ボールナットは、前記ロアシェルに対し、相対回転および軸方向の相対変位を不能に支持されており、
前記コイルスプリングは、前記アッパシェルと前記ロアシェルとの間で弾性的に圧縮された状態で挟持されている、
請求項1~3のいずれかに記載の懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪を車体に支持するための懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車輪は、懸架装置(サスペンション)により車体に対し支持される。懸架装置は、車輪を構成するタイヤの外周面を路面に押し付けつつ、車輪を介して路面から車体に伝わる振動および衝撃を緩和する機能を有する。自動車用の懸架装置として、走行状態や路面の状況などに応じて、減衰力などを制御可能なものが開発され、一部で実施されている。
【0003】
特開平4-59408号公報(特許文献1)には、通常の懸架装置(パッシブサスペンション)のショックアブソーバに代えて、油圧アクチュエータを使用することで、減衰力などを制御可能とした懸架装置(アクティブサスペンション)が記載されている。特開平4-59408号公報に記載の懸架装置は、走行状態や路面の状況などに応じて、油圧アクチュエータの油圧室への油圧の給排を制御することにより、減衰力などを制御することができる。ただし、特開平4-59408号公報に記載の懸架装置は、油圧アクチュエータを使用しているため、油圧ポンプや油圧配管などが必要となり、コストが嵩むといった問題がある。
【0004】
これに対し、特開2010-228579号公報(特許文献2)には、電磁モータ(電動モータ)を備え、該電磁モータの回転力に基づいて、ばね上部とばね下部とに対して互いに接近・離間する方向の力を付与可能とした懸架装置が記載されている。具体的には、特開2010-228579号公報に記載の懸架装置は、モータ軸の回転を、ボールねじ機構(ボールねじ装置)によりねじロッド(ボールねじ軸)の軸方向の直線運動に変換し、ばね上部とばね下部とに対して互いに接近・離間する方向の力を付与する、すなわち減衰力を調整できるように構成されている。特開2010-228579号公報に記載の懸架装置は、電磁モータを使用しているため、特開平4-59408号公報に記載の懸架装置のように、油圧アクチュエータを使用した構造と比べて、構造を単純化することができ、コストを低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4-59408号公報
【特許文献2】特開2010-228579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自動車の分野では、1Hz~10Hz程度の周波数の振動が、運転者を含む乗員にとって、特に違和感を与えやすいことが知られている。したがって、ボールねじ装置と電動モータとを備える懸架装置においても、上記範囲の周波数の振動を低減することが望まれる。
【0007】
本発明は、上述のような事情を鑑みて、ボールねじ装置と電動モータとを備える懸架装置において、乗員に違和感を与えやすい周波数帯域の振動を小さく抑えることができる構造を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決するため、ボールねじ装置と電動モータとを備える懸架装置の解析モデルを構築し、シミュレーションを行った結果、前記懸架装置は、共振周波数(共振点)に加え、反共振周波数(反共振点)を有するとの知見を得た。また、前記反共振周波数は、コイルスプリングのばね定数と、ボールねじ軸の雄ボールねじ溝のリード角(およびボールナットの雌ボールねじ溝のリード角)とを調整することにより調整できるとの知見を得た。本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
【0009】
本発明の一態様にかかる懸架装置は、車体に対して車輪を支持するためのものであって、コイルスプリングと、ボールねじ装置と、電動モータとを備える。
【0010】
前記コイルスプリングは、前記車体と、サスペンションアームやナックルなどの前記車輪を支持する部材との間に配置される。
【0011】
前記ボールねじ装置は、ボールねじ軸と、ボールナットと、複数個のボールとを有する。
【0012】
前記ボールねじ軸は、外周面に雄ボールねじ溝を含み、前記車体と前記車輪を支持する部材とのうちの一方に軸方向の相対変位を不能に接続される。
【0013】
前記ボールナットは、内周面に、前記雄ボールねじ溝のリード角と同じリード角を有する雌ボールねじ溝を含み、前記車体と前記車輪を支持する部材とのうちの他方に軸方向の相対変位を不能に接続される。
【0014】
前記複数個のボールは、前記雄ボールねじ溝と前記雌ボールねじ溝との間に転動自在に配置されている。
【0015】
前記電動モータは、前記ボールねじ軸と前記ボールナットとのうちのいずれか一方を回転駆動する。
【0016】
特に本発明の一態様にかかる懸架装置では、前記雄ボールねじ溝のリード角が、前記懸架装置全体の反共振周波数が1Hz以上10Hz以下、好ましくは4Hz以上8Hz以下となるように規制されている。
【0017】
本発明の一態様にかかる懸架装置では、前記コイルスプリングのばね定数をKspとし、前記懸架装置全体の反共振周波数の目標値をfaとし、かつ、前記雄ボールねじ溝のリード角をφとした場合に、φ=(-0.0445Ksp+4.0771)faの関係を満たすことができる。
【0018】
本発明の一態様にかかる懸架装置は、前記車体に対して支持されるアッパシェルと、前記アッパシェルの軸方向片側部分に、該アッパシェルに対する軸方向の相対変位を可能に、かつ、回転を不能に配置されるロアシェルとを備えることができる。この場合、前記ボールねじ軸を、前記アッパシェルの内側に回転自在に、かつ、軸方向の相対変位を不能に支持することができる。また、前記ボールナットを、前記ロアシェルに対し、相対回転および軸方向の相対変位を不能に支持することができる。さらに、前記コイルスプリングを、前記アッパシェルと前記ロアシェルとの間で弾性的に圧縮された状態で挟持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様にかかる懸架装置によれば、ボールねじ装置と電動モータとを備える構造において、乗員に違和感を与えやすい周波数帯域の振動を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施の形態の1例の懸架装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態の1例の懸架装置の断面図である。
【
図6】
図6は、中間組立体をアッパシェルの内側に支持し、かつ、アッパシェルに対しマウント部材を支持する様子を示す、分解斜視図である。
【
図7】
図7は、アッパシェルの周囲にコイルスプリングを配置し、かつ、アッパシェルとロアシェルとを組み合わせるとともに、ボールねじ軸に電動モータの出力軸を接続する様子を示す、分解斜視図である。
【
図8】
図8は、シミュレーション解析に用いたモデル化した懸架装置を示す図である。
【
図9】
図9は、路面から入力される振動の周波数と、ばね上加速度との関係を示す図であって、
図9(A)は、前記関係をばね上荷重ごとを示す図であり、
図9(B)は、前記関係をばね下荷重ごとを示す図であり、
図9(C)は、前記関係をばね定数ごとを示す図であり、
図9(D)は、前記関係をリード角ごとに示す図である。
【
図10】
図10は、路面から入力される振動の周波数と、ばね上加速度との関係を、リード角ごとに示す図であって、
図10(A)は、ばね定数が16.9[N/mm]である場合の前記関係を示す図であり、
図10(B)は、ばね定数が22.5[N/mm]である場合の前記関係を示す図であり、
図10(C)は、ばね定数が30[N/mm]である場合の前記関係を示す図であり、
図10(D)は、ばね定数が45[N/mm]である場合の前記関係を示す図である。
【
図11】
図11は、反共振周波数と、雄ボールねじ溝のリード角との関係を示す図である。
【
図12】
図12は、コイルスプリングのばね係数と、路面から入力される振動の周波数とばね上加速度との関係の線形近似式の傾きとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態の1例について、
図1~
図12を用いて説明する。
【0022】
本例の懸架装置1は、アッパシェル2と、ロアシェル3と、ボールねじ装置4と、電動モータ5と、コイルスプリング6とを備える。
【0023】
アッパシェル2は、後述するブラケット101を介して車体に対し支持される。アッパシェル2は、軸方向両側が開口した筒形状を有し、かつ、軸方向中間部内周面に、段部7を有する。本例では、アッパシェル2は、軸方向片側に位置する小径筒部8の軸方向他側の端部と、軸方向他側に位置する大径筒部9の軸方向片側の端部とを、軸方向他側に向かうほど直径が大きくなる円すい筒部10により接続することで、段付円筒状に構成されている。本例では、アッパシェル2は、円周方向に連続した段付円筒状に構成されている。換言すれば、アッパシェル2は、円周方向に分割されておらず、全体を一体に構成されている。大径筒部9は、軸方向片側部分の内周面に、径方向内側に向けて突出したフランジ部124を有する。本例では、段部7は、フランジ部124の軸方向他側面により構成されている。
【0024】
なお、懸架装置1に関して、軸方向片側とは、車輪側、すなわち車両に組み付けた状態での下側である、
図1および
図4~
図7の左下側、並びに、
図2および
図3の左側をいい、軸方向他側とは、車体側、すなわち車両に組み付けた状態での上側である、
図1および
図4~
図7の右上側、並びに、
図2および
図3の右側をいう。
【0025】
ロアシェル3は、アッパシェル2と同軸に配置され、かつ、筒形状を有する。ロアシェル3は、アッパシェル2の軸方向片側部分の周囲に、アッパシェル2に対する軸方向の相対変位を可能に、かつ、回転を不能に配置されている。すなわち、アッパシェル2とロアシェル3とは、全長を伸縮可能に組み合わされている。ロアシェル3は、インナチューブ63とロアブッシュ64とを介して、サスペンションアームやナックルなどの車輪を支持する部材に対して回転自在に支持される。本例では、ロアシェル3は、シェル本体11と、ロアリテーナ12とを備える。
【0026】
シェル本体11は、筒状部13と、筒状部13の軸方向片側の開口を塞ぐ底部14とを備える。
【0027】
筒状部13は、軸方向他側部分に、軸方向に伸長する長孔15を有し、かつ、軸方向中間部外周面に、雄ねじ部16を有する。
【0028】
底部14は、中央部に、非円形の開口形状を有する係合孔17を有する。具体的には、例えば、係合孔17の内周面を、互いに平行な一対の平坦面と、該一対の平坦面同士を接続する一対の凹曲面とにより構成することができる。あるいは、係合孔17を、スプライン孔、または、矩形孔などの多角形孔により構成することもできる。
【0029】
ロアリテーナ12は、筒形状を有する。ロアリテーナ12は、軸方向他側の端部に、径方向外側に向けて突出した、円輪状の外向フランジ部18を有し、かつ、軸方向中間部に、径方向に貫通するねじ孔19を有する。ロアリテーナ12は、ねじ孔19に螺合したボルト20の先端部を、シェル本体11の長孔15の内側に配置(係合)することで、シェル本体11の軸方向他側の端部の周囲に、回転を阻止した状態で支持されている。
【0030】
ロアリテーナ12は、軸方向片側の端部を、シェル本体11の雄ねじ部16に螺合された第1ロックナット21の軸方向他側の端部に突き当てている。これにより、シェル本体11に対するロアリテーナ12の軸方向片側への変位が阻止されている。本例では、第1ロックナット21の軸方向片側の端部を、シェル本体11の雄ねじ部16に螺合された第2ロックナット22の軸方向他側の端部に突き当てることにより、第1ロックナット21の緩み止めが図られている。
【0031】
ロアリテーナ12の外向フランジ部18の軸方向他側面には、弾性材製のシート23を介して、コイルスプリング6の軸方向の片側の端部が突き当てられる。これにより、シェル本体11に対するロアリテーナ12の軸方向他側への変位が規制される。
【0032】
さらに、ロアリテーナ12は、軸方向他側の端部内周面に、ダストシール24を有する。ダストシール24は、先端部をアッパシェル2の外周面に摺接させることにより、ロアシェル3の軸方向他側の端部内周面とアッパシェル2の外周面との間部分からの、泥水などの異物の侵入を防止している。
【0033】
ボールねじ装置4は、ボールねじ軸25と、ボールナット26と、複数個のボール27とを備える。
【0034】
ボールねじ軸25は、軸方向片側部分の外周面に雄ボールねじ溝28を有し、アッパシェル2の内側に回転自在に支持されている。すなわち、本例の懸架装置1では、ボールねじ軸25は、アッパシェル2とロックナット55とマウント部材102とを介して車体に対し、ボールねじ軸25の軸方向に関する相対変位を不能に接続(支持)される。雄ボールねじ溝28は、円弧形の断面形状を有し、ボールねじ軸25の外周面のうち、軸方向片側の端部からフランジ部124よりも軸方向片側に位置する部分までの範囲に、らせん状に形成されている。本例では、ボールねじ軸25は、軸方向他側部分に備えられた被支持部29を、軸受ユニット30により、アッパシェル2の大径筒部9の内周面に対し回転自在に支持している。
【0035】
被支持部29は、軸方向片側の大径部31と、軸方向他側の小径部32と、大径部31の軸方向他側の端部外周面と小径部32の軸方向片側の端部外周面とを接続する、軸方向片側を向いたロア段部33とを有する。小径部32は、軸方向片側の端部外周面に、円筒面部125を有し、かつ、軸方向他側の端部外周面に、雄ねじ部34を有する。
【0036】
軸受ユニット30は、軸受ホルダ35と、押えプレート36と、一対の転がり軸受37a、37bとを備える。
【0037】
軸受ホルダ35は、クランク形の断面形状を有する。すなわち、軸受ホルダ35は、ホルダ円筒部38と、ホルダ円筒部38の軸方向片側の端部外周面から径方向外側に折れ曲がった外向フランジ部39と、ホルダ円筒部38の軸方向他側の端部内周面から径方向内側に折れ曲がった内向フランジ部40とを備える。外向フランジ部39は、円周方向複数箇所に、軸方向に貫通するねじ孔41を有する。
【0038】
押えプレート36は、略L字形の断面形状を有する。すなわち、押えプレート36は、円輪部42と、円輪部42の径方向内側の端部から軸方向他側に向けて折れ曲がったプレート円筒部43とを備える。円輪部42は、円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する通孔44を有する。円輪部42は、アッパシェル2のフランジ部124の内径寸法よりも大きく、かつ、アッパシェル2の大径筒部9の内周面にがたつきなく内嵌可能な(大径筒部9の内径寸法よりもわずかに小さい)外径寸法を有する。プレート円筒部43は、軸受ホルダ35のホルダ円筒部38の軸方向片側の端部にがたつきなく内嵌可能な外径寸法を有する。
【0039】
一対の転がり軸受37a、37bのそれぞれは、内輪45a、45bと、外輪46a、46bと、複数個の転動体47a、47bとを備える。転がり軸受37a、37bのそれぞれは、転動体47a、47bとして玉を使用し、かつ、転動体47a、47bに接触角が付与された、アンギュラ型の玉軸受により構成されている。
【0040】
本例では、一対の転がり軸受37a、37bのそれぞれの転動体47a、47bには、正面組み合わせ(DF)型の接触角が付与されている。これにより、ボールねじ軸25の支持剛性を調整して、車輪から作用する水平方向の力に基づく、ボールねじ軸25の揺動変位をある程度許容している(背面組み合わせ(DB)型の接触角を付与した場合と比較して、ボールねじ軸25の許容揺動角度を大きくしている)。なお、一対の転がり軸受のそれぞれを、転動体として円すいころを使用した、円すいころ軸受により構成することもできる。
【0041】
一対の転がり軸受37a、37bのそれぞれの内輪45a、45bは、互いに対向する軸方向端面同士を突き当てた状態で、ボールねじ軸25の円筒面部125の軸方向片側部分に圧入により外嵌され、かつ、ロア段部33と、円筒面部125の軸方向他側部分に外嵌されたカラー48との間で軸方向に挟持されている。すなわち、軸方向片側の転がり軸受37aの内輪45aの軸方向片側の端面を、ロア段部33に突き当てており、かつ、軸方向他側の転がり軸受37bの内輪45bの軸方向他側の端面に、カラー48の軸方向片側の端面を突き当てている。これにより、軸受ユニット30は、ボールねじ軸25に対して軸方向に位置決めされている。カラー48は、含油メタルなどの低摩擦材により、全体を円筒状に構成されており、ボールねじ軸25の雄ねじ部34に螺合されたナット49により軸方向他側への変位が阻止されている。以上の構成により、ボールねじ軸25に対する内輪45a、45bの軸方向の位置決めが図られている。
【0042】
一対の転がり軸受37a、37bのそれぞれの外輪46a、46bは、互いに対向する軸方向端面同士を突き当てた状態で、軸受ホルダ35のホルダ円筒部38に圧入により内嵌され、かつ、内向フランジ部40の軸方向片側面と、押えプレート36のプレート円筒部43の軸方向他側の端面との間で軸方向に挟持されている。すなわち、軸方向片側の転がり軸受37aの外輪46aの軸方向片側の端面を、プレート円筒部43の軸方向他側の端面に突き当てており、かつ、軸方向他側の転がり軸受37bの外輪46bの軸方向他側の端面に、内向フランジ部40の軸方向片側面を突き当てている。
【0043】
軸受ホルダ35と押えプレート36とは、内向フランジ部40の軸方向片側面と、プレート円筒部43の軸方向他側の端面との間で、一対の転がり軸受37a、37bのそれぞれの外輪46a、46bを軸方向に挟持した状態で、通孔44を挿通したボルト50をねじ孔41に螺合することにより互いに結合固定されている。
【0044】
押えプレート36は、円輪部42の外周面を、アッパシェル2の大径筒部9の内周面にがたつきなく内嵌し、かつ、円輪部42の軸方向片側面の径方向外側の端部を、ストッパホルダ51を介して、アッパシェル2の段部7(フランジ部124の軸方向他側面)に突き当てている。
【0045】
軸受ホルダ35は、外向フランジ部39の外周面に係止したOリング52を、大径筒部9の内周面に弾性的に当接させることにより、大径筒部9に対する回転を阻止されている。また、軸受ホルダ35の外向フランジ部39の軸方向他側面の径方向外側の端部には、アッパシェル2の大径筒部9にがたつきなく内嵌されたスリーブ53の軸方向片側の端部が突き当てられている。スリーブ53は、大径筒部9の軸方向他側の端部内周面に備えられた雌ねじ部54に螺合されたロックナット55により、軸方向他側への変位が阻止されている。
【0046】
以上のような構成により、軸受ユニット30により、アッパシェル2の内側にボールねじ軸25が回転自在に支持されている。
【0047】
なお、軸受ホルダ35は、内向フランジ部40の内周面に、先端部をカラー48の外周面に摺接させたオイルシール56aを有し、かつ、押えプレート36は、内周面に、先端部をボールねじ軸25の大径部31の外周面に摺接させたオイルシール56bを有する。これにより、一対の転がり軸受37a、37bのそれぞれを潤滑するグリースが、内輪45a、45bと外輪46a、46bとの間の空間から漏洩することを防止している。
【0048】
ボールねじ軸25は、中心部のうち、軸方向片側の端部から軸方向中間部までの範囲に、軸方向片側の端面に開口する有底孔57を有し、かつ、軸方向中間部を径方向に貫通する径方向通気孔58と、軸方向他側の端面と径方向通気孔58とに開口する軸方向通気孔59とからなる通気路60を有する。有底孔57は、インナチューブ63の内側の空間の体積を増大させることにより、懸架装置1の全長が伸縮することに伴う、インナチューブ63の内側の空間の体積の増減による影響を抑えるために備えられている。また、通気路60は、アッパシェル2とロアシェル3との内側に存在する内部空間61の体積を増大させることにより、懸架装置1の全長が伸縮することに伴う、内部空間61の体積増減の影響を抑えるために備えられている。さらに、有底孔57および通気路60は、ボールねじ軸25の軽量化にも寄与する。
【0049】
ボールナット26は、内周面に雌ボールねじ溝62を有する。雌ボールねじ溝62は、ボールねじ軸25の雄ボールねじ溝28のリード角と同じリード角を有する。また、ボールナット26は、ボールねじ軸25のうちで外周面に雄ボールねじ溝28が形成された軸方向片側部分の周囲に、ボールねじ軸25に対する相対回転を可能に配置され、かつ、ロアシェル3に対して一体的な軸方向の変位を可能に支持されている。
【0050】
本例では、ボールナット26は、インナチューブ63とロアブッシュ64とにより、ロアシェル3に対して一体的な軸方向の変位を可能に接続されている。すなわち、本例の懸架装置1では、ボールナット26は、インナチューブ63とロアブッシュ64とを介して、車輪を支持する部材に対し、該ボールナット26の軸方向に関する相対変位を不能に接続される。
【0051】
ボールナット26は、円筒状の本体部65と、本体部65の軸方向他側の端部から径方向外側に向けて突出したナットフランジ部66とを備える。本体部65は、内周面に雌ボールねじ溝を有する。ナットフランジ部66は、円周方向複数箇所に、軸方向に貫通する通孔67を有する。
【0052】
インナチューブ63は、円筒部68と、円筒部68の軸方向他側の端部から径方向外側に向けて突出したチューブフランジ部69と、円筒部68の軸方向片側の端部から径方向内側に向けて折れ曲がった底部70と、底部70の軸方向片側面から軸方向片側に向けて突出した係合軸部71とを備える。
【0053】
チューブフランジ部69は、円周方向複数箇所に、軸方向他側面に開口するねじ孔72を有する。
【0054】
底部70は、円周方向複数箇所に、軸方向片側面の径方向外側の端部と、軸方向他側面の径方向中間部とに開口する、通気孔73を有する。通気孔73は、インナチューブ63の内側の空間と、内部空間61とを連通することで、懸架装置1の全長が伸縮することに伴う、インナチューブ63の内側の空間の体積の増減による影響を抑えるために備えられている。
【0055】
係合軸部71は、ロアシェル3の係合孔17にがたつきなく内嵌(係合)可能な、外面形状を有する。
【0056】
さらに、インナチューブ63は、底部70と係合軸部71とを軸方向に貫通するねじ孔74を有する。
【0057】
インナチューブ63は、アッパシェル2の小径筒部8の内側に、アッパシェル2に対する軸方向の相対変位を可能に配置されている。このために、小径筒部8の軸方向片側部分の内周面に、滑り軸受(ウェアリング)75が支持され、かつ、滑り軸受75の内側に、インナチューブ63が挿通(内嵌)されている。滑り軸受75は、小径筒部8に備えられた内向フランジ部76と、小径筒部8の内周面に係止された止め輪77とにより軸方向両側から挟持されている。なお、アッパシェル2は、小径筒部8の軸方向片側の端部に、先端部をインナチューブ63の外周面に摺接させたオイルシール78を有する。
【0058】
ロアブッシュ64は、円環部79と、円環部79の軸方向他側の端部から軸方向他側に向けて突出した軸部80と、軸部80の軸方向片側部分から径方向外側に突出した押えフランジ部81とを備える。軸部80は、軸方向他側の端部外周面に、雄ねじ部82を有する。
【0059】
さらに、ロアブッシュ64は、ゴムの如きエラストマー製で円環状に構成され、かつ、円環部79の内側に保持された弾性材83と、弾性材83の内側に保持された円環状の支持環部84とを備える。
【0060】
ボールナット26は、円板状のコンタクトプレート85の円周方向複数箇所に備えられた通孔86と、ナットフランジ部66の通孔67とを挿通したボルト87を、チューブフランジ部69のねじ孔72に螺合することにより、インナチューブ63に対し結合固定されている。なお、インナチューブ63は、チューブフランジ部69の軸方向片側面に、ゴムの如きエラストマーなどの弾性材製で、円環状のリバウンドストッパ88を有する。これにより、点検整備に伴い、車両をリフトアップするなどの際に、車輪の重量により、ロアシェル3が下側に引っ張られ、ボールナット26が軸方向片側に移動した場合に、ボールナット26の軸方向片側の端面が、アッパシェル2の内向フランジ部76の軸方向他側面に直接衝突(メタルコンタクト)することを防止している。
【0061】
本例では、ボールナット26とインナチューブ63とをボルト87により結合した状態で、ボールナット26とインナチューブ63とが、アッパシェル2の段部7(フランジ部124)の径方向内側を通過できるようにしている。換言すれば、ボールナット26とインナチューブ63との結合体の外接円直径Dnを、段部7(フランジ部124)の内径寸法dfよりも小さくしている(Dn<df)。また、アッパシェル2の小径筒部の内径寸法は、ボールナット26とインナチューブ63との結合体の外接円直径Dnよりも大きく、かつ、段部7の内径寸法dfよりも小さくなっている。
【0062】
インナチューブ63は、係合軸部71をロアシェル3の係合孔17にがたつきなく内嵌し、かつ、底部70の軸方向片側面を、ロアシェル3の底部14の軸方向他側面に突き当てている。この状態で、インナチューブ63のねじ孔74にロアブッシュ64の雄ねじ部82を螺合し、ロアブッシュ64の押えフランジ部81によりロアシェル3の底部14の軸方向片側面を押えつけることで、インナチューブ63がロアシェル3に対し結合固定されている。すなわち、ロアシェル3の底部14は、インナチューブ63の底部70と、ロアブッシュ64の押えフランジ部81との間で軸方向に挟持されている。
【0063】
複数個のボール27は、ボールねじ軸25の雄ボールねじ溝28と、ボールナット26の雌ボールねじ溝62の間に転動自在に配置され、かつ、図示しない循環機構により循環される。
【0064】
電動モータ5は、先端部(軸方向片側の端部)を、ボールねじ軸25の軸方向他側の端部にトルクの伝達を可能に接続された出力軸89を有し、かつ、アッパシェル2の軸方向他側の端部に支持されている。
【0065】
出力軸89は、継手90により、ボールねじ軸25の軸方向他側の端部に、トルクの伝達を可能に接続されている。
【0066】
本例では、継手90は、円筒状のカップリング91と、一対のキー92a、92bを備える。
【0067】
一対のキー92a、92bのうち、軸方向片側のキー92aは、ボールねじ軸25の軸方向他側の端部と、カップリング91との間にかけ渡されている。具体的には、軸方向片側のキー92aは、軸方向他側の端部を、カップリング91に対し結合し、かつ、軸方向片側部分を、ボールねじ軸25の軸方向他側の端部に備えられた切り欠き93aに係合している。切り欠き93aは、ボールねじ軸25の軸方向他側の端部外周面と軸方向他側の端面とに開口している。軸方向片側のキー92aは、キー92aを径方向に貫通し、かつ、先端部を、切り欠き93aの底部に係合させた、イモネジなどの結合部材94aにより、切り欠き93aからの脱落が防止されている。
【0068】
一対のキー92a、92bのうち、軸方向他側のキー92bは、電動モータ5の出力軸89の軸方向片側の端部と、カップリング91との間にかけ渡されている。具体的には、軸方向他側のキー92bは、軸方向片側の端部を、カップリング91に対し結合し、かつ、軸方向他側部分を、出力軸89の軸方向片側の端部に備えられた切り欠き93bに係合している。切り欠き93bは、出力軸89の軸方向片側の端部外周面と軸方向片側の端面とに開口している。軸方向他側のキー92bは、キー92bを径方向に貫通し、かつ、先端部を、切り欠き93bの底部に係合させた、イモネジなどの結合部材94bにより、切り欠き93bからの脱落が防止されている。
【0069】
本例では、ボールねじ軸25の軸方向他側の端部にロアカラー95を外嵌し、かつ、電動モータ5の出力軸89の軸方向他側部分にアッパカラー96を外嵌している。ロアカラー95は、軸方向他側の端部に備えられた切り欠き97を、軸方向片側のキー92aに係合し、軸方向片側の端面を、ボールねじ軸25に備えられたアッパ段部98に当接または近接対向させ、かつ、軸方向他側の端面を、カップリング91の軸方向片側面に当接または近接対向させている。アッパカラー96は、軸方向片側の端部に備えられた切り欠き99を、軸方向他側のキー92bに係合し、軸方向片側の端面を、カップリング91の軸方向他側面に当接または近接対向させ、かつ、軸方向他側の端面を、電動モータ5のケーシング100の軸方向片側面に当接または近接対向させている。これにより、結合部材94a、94bが緩んだ場合においても、カップリング91の軸方向位置がずれるのを防止している。
【0070】
なお、継手90の構造については、上述の構造に限定されず、従来から知られた種々の構造を採用することができる。
【0071】
電動モータ5は、ブラケット101により、アッパシェル2の軸方向他側の端部に支持固定されている。ブラケット101は、ロックナット55と、マウント部材102と、防振部材103とを備える。
【0072】
ロックナット55は、軸方向片側部分の外周面に雄ねじ部104を有する筒状部105と、筒状部105の軸方向他側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がった円輪部106とを備える。ロックナット55は、雄ねじ部104を、アッパシェル2の雌ねじ部54に螺合することにより、アッパシェル2に対し結合固定されている。電動モータ5は、ケーシング100を、ロックナット55の円輪部106に対しボルト止めなどにより支持固定されている。
【0073】
マウント部材102は、アッパ部材107と、ロア部材108とを備える。
【0074】
アッパ部材107は、略U字形の断面形状を有する。すなわち、アッパ部材107は、円筒部109と、円筒部109の軸方向片側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がったロア円輪部110と、円筒部109の軸方向他側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がったアッパ円輪部111とを備える。本例の懸架装置1は、アッパ円輪部111の円周方向複数箇所に備えられた通孔を軸方向片側から挿通した支持ボルト112により、車体に対し結合固定される。
【0075】
ロア部材108は、略クランク形の断面形状を有する。すなわち、ロア部材108は、円筒部113と、円筒部113の軸方向片側の端部から径方向内側に向けて折れ曲がった円輪部114と、円輪部114の径方向内側の端部から軸方向片側に向けて折れ曲がった折れ曲がり部115と、円筒部113の軸方向他側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がった外向フランジ部116とを備える。
【0076】
ロア部材108の円輪部114の軸方向片側の端面には、エンド部材117を介して、コイルスプリング6の軸方向他側の端部が突き当てられている。エンド部材117は、ゴムの如きエラストマーなどの弾性材により構成され、ロア部材108の折れ曲がり部115を包埋し、かつ、円輪部114の軸方向片側面を覆っている。
【0077】
アッパ部材107とロア部材108とは、ロア円輪部110の軸方向片側面の径方向外側の端部と、外向フランジ部116の軸方向他側面とを突き合せた状態で、互いに溶接などにより結合固定されている。
【0078】
防振部材103は、弾性部材118と、支持部材119とを備える。
【0079】
弾性部材118は、ゴムの如きエラストマーなどの弾性材により構成され、軸方向に関して対称な略菱形の断面形状を有する。弾性部材118は、ロックナット55の円輪部106の径方向外側の端部を包埋することで、ロックナット55に対し支持されている。
【0080】
支持部材119は、金属や合成樹脂など、弾性部材118を構成する弾性材よりも高い剛性を有する材料により、円筒状に構成されている。支持部材119は、内周面を、弾性部材118の径方向外側の端部に溶着することより、弾性部材118の周囲に支持されている。換言すれば、弾性部材118は、ロックナット55の円輪部106と、支持部材119との間にかけ渡すように設けられている。
【0081】
支持部材119は、ロア部材108の円筒部113に圧入により内嵌されており、かつ、弾性部材118は、アッパ部材107のロア円輪部110と、ロア部材108の円輪部114との間で軸方向に挟持されている。すなわち、弾性部材118は、軸方向片側の端部を、ロア部材108の円輪部114の軸方向他側面に弾性的に当接させ、かつ、軸方向他側の端部を、アッパ部材107のロア円輪部110の軸方向片側面に弾性的に当接させている。これにより、アッパシェル2、アッパシェル2の内側または周囲に支持された部材、および、電動モータ5は、弾性部材118の軸方向中央位置を中心とする揺動を可能に車体に対し支持される。
【0082】
電動モータ5は、ケーシング100の軸方向片側面の径方向外側部分を、ロックナット55の円輪部106の軸方向他側面の径方向内側部分に突き当てた状態で、ブラケット101に対し支持固定されている。これにより、電動モータ5は、軸方向片側部分を、マウント部材102の内側に配置し、マウント部材102よりも軸方向他側への突出量を抑えている。
【0083】
コイルスプリング6は、アッパシェル2の周囲に配置され、かつ、アッパシェル2とロアシェル3との間で軸方向に弾性的に圧縮された状態で挟持されている。具体的には、コイルスプリング6は、ロアリテーナ12の外向フランジ部18の軸方向他側面に添着などにより支持されたシート23と、アッパシェル2に対しブラケット101を介して支持されたエンド部材117との間で軸方向に弾性的に圧縮挟持されている。
【0084】
本例の懸架装置1は、ゴムやウレタンなどのエラストマー製のバンプストッパ120を備える。バンプストッパ120は、筒状に構成され、ストッパホルダ51により、アッパシェル2の円すい筒部10の内側で、かつ、ボールねじ軸25の軸方向中間部の周囲に支持されている。バンプストッパ120は、ロアシェル3の軸方向片側の端部に上向きの衝撃荷重が加わり、ロアシェル3が軸方向他側に移動することに伴って、ボールナット26が軸方向他側に向けて移動した場合に、コンタクトプレート85により押し潰される。すなわち、バンプストッパ120は、ロアシェル3に加わった衝撃荷重を吸収するとともに、コンタクトプレート85が、軸受ユニット30の軸方向片側面(押えプレート36)に直接衝突すること(メタルコンタクト)を防止するために設けられている。
【0085】
ストッパホルダ51は、鋼板などの金属板を断面L字形に曲げ成形することにより構成されている。すなわち、ストッパホルダ51は、円輪部121と、円輪部121の径方向内側の端部から軸方向片側に向けて折れ曲がった円筒部122とを備える。ストッパホルダ51は、円輪部121を、アッパシェル2のフランジ部124と、軸受ユニット30の押えプレート36との間で軸方向に挟持することにより、アッパシェル2に対し支持されている。
【0086】
バンプストッパ120は、軸方向他側の端部を、ストッパホルダ51の円筒部122に外嵌することにより、ボールねじ軸25の周囲に支持され、かつ、軸方向に押し潰された際の径方向内側への変形が規制されている。すなわち、バンプストッパ120は、軸方向に押し潰された場合でも、ボールねじ軸25の外周面に接触しないように、軸方向他側部分の内周面を円筒部122に外嵌し、かつ、軸方向片側部分の内周面形状を工夫している。
【0087】
本例では、バンプストッパ120は、フランジ部124の内径寸法以下の外径寸法、好ましくはフランジ部124の内径寸法よりもわずかに小さい外径寸法を有する。これにより、バンプストッパ120は、軸方向他側の端部外周面を、アッパシェル2のフランジ部124の内周面に当接または近接対向させて、バンプストッパ120が軸方向に押し潰された際の径方向外側への変形を規制するようにしている。
【0088】
なお、ストッパホルダ51の円筒部122は、ボールナット26の軸方向他側の端部に支持されたコンタクトプレート85の内径寸法dnよりも小さい外径寸法Dhを有する(dn<Dh)。したがって、ロアシェル3の軸方向片側の端部に上向きの衝撃荷重が加わることに基づいて、ボールナット26が軸方向他側に移動し、バンプストッパ120が押し潰される際に、コンタクトプレート85は、円筒部122の周囲まで軸方向他側に移動することができる。要するに、コンタクトプレート85の軸方向寸法分だけ、アッパシェル2に対するロアシェル3の軸方向の相対変位量を長くすることができる。
【0089】
本例の懸架装置1は、アッパシェル2の軸方向他側の端部を、マウント部材102を介して、車体に対し支持し、かつ、ロアシェル3の軸方向片側の端部に、ロアブッシュ64を介して、サスペンションアームやナックルなどの車輪を支持する部材を支持する。すなわち、懸架装置1は、アッパシェル2を上側に配置し、かつ、ロアシェル3を下側に配置した状態で、車体と車輪を支持する部材との間にかけ渡すように支持されている。
【0090】
懸架装置1は、コイルスプリング6の弾性復元力によって、ロアシェル3をアッパシェル2に対し軸方向片側(下側)に向けて押圧する方向の力に基づいて、車輪を構成するタイヤの外周面(トレッド)を路面に押し付ける。
【0091】
また、懸架装置1は、次のようにして、全長を伸縮させることにより、振動や衝撃などを吸収する。
【0092】
すなわち、懸架装置1は、路面からの振動や衝撃などに基づいて、ロアシェル3の軸方向片側の端部に上向き(突き上げる方向)の力が加わると、ロアシェル3は、コイルスプリング6を弾性的に収縮させるとともに、ボールねじ軸25と電動モータの7の出力軸89とを回転させつつ、ボールナット26を軸方向他側(上側)に向けて移動させながら、アッパシェル2に対し軸方向他側に向けて相対変位する。これにより、懸架装置1の全長が収縮する。
【0093】
振動や衝撃などに基づく上向きの力が解放されるか、または、減少すると、コイルスプリング6の弾性復元力によって、ロアシェル3をアッパシェル2に対し軸方向片側(下側)に向けて押圧する方向の力に基づいて、ロアシェル3は、コイルスプリング6を弾性的に復元させるとともに、ボールねじ軸25と電動モータの7の出力軸89とを回転させつつ、ボールナット26を軸方向片側(下側)に向けて移動させながら、アッパシェル2に対し軸方向片側に向けて相対変位する。これにより、懸架装置1の全長が伸長する。
【0094】
本例の懸架装置1は、走行状態や路面の状況などに応じて、電動モータ5への通電を制御することにより、車高や車両の姿勢、減衰力を制御することができる。
【0095】
車高や車両の姿勢を制御する場合には、電動モータ5に通電し、出力軸89を回転駆動することにより、ボールねじ軸25を回転駆動させる。ボールねじ軸25の回転に伴い、ボールナット26が軸方向に移動し、ロアシェル3がアッパシェル2に対し軸方向に相対変位することで、懸架装置1の全長が伸縮する。この結果、ロアシェル3に、ロアブッシュ64を介して支持された車輪に対する、マウント部材102を介してアッパシェル2を支持した車体の高さが調整される。
【0096】
減衰力を制御する場合には、電動モータ5への通電量を制御することで、出力軸89の回転抵抗を調整し、ボールねじ軸25の回転抵抗を調整することに基づいて、ボールナット26が軸方向に移動することに対する抵抗を調整する。これにより、路面からの振動や衝撃などに基づき懸架装置1の全長が伸縮する際に、ロアシェル3がアッパシェル2に対し軸方向に相対変位する速度を調整することにより、減衰力を調整することができる。
【0097】
特に本例の懸架装置1では、該懸架装置1全体の反共振周波数が1Hz以上10Hz以下、好ましくは4Hz以上8Hz以下となるように、ボールねじ軸25の雄ボールねじ溝28のリード角およびボールナット26の雌ボールねじ溝62のリード角を規制している。より具体的には、コイルスプリング6のばね定数をK
sp[N/m]とし、かつ、懸架装置1全体の反共振周波数をf
a[Hz]とした場合に、ボールねじ軸25の雄ボールねじ溝28のリード角(=ボールナット26の雌ボールねじ溝62のリード角)φ[rad]を、次の(1)式で求められる大きさとしている。
【数1】
なお、懸架装置1全体の反共振周波数f
aは、1Hz以上10Hz以下、好ましくは4Hz以上8Hz以下の値である。
【0098】
ボールねじ軸25の雄ボールねじ溝28のリード角およびボールナット26の雌ボールねじ溝62のリード角を規制することで、懸架装置1全体の反共振周波数を調整することができる理由について、
図8~
図12を用いて説明する。
図8は、本例の懸架装置1を、モデル化した解析モデルを示している。
【0099】
ばね下重量をm
1[kg]とし、かつ、ばね上重量をm
2[kg]とすると共に、車両の上下方向に関して、路面の位置をZ
0[m]とし、懸架装置1と、サスペンションアームやナックルなどの車輪を支持する部材との接続位置(ばね下位置)をZ
1[m]とし、かつ、懸架装置1と車体との接続位置(ばね上位置)をZ
2とした場合、次の(2)式および(3)式の関係が成立する。
【数2】
【数3】
【0100】
ここで、(2)式および(3)式中の符号の意味は、下記のとおりである。
Ct:懸架装置1のうち、ボールねじ装置4およびコイルスプリング6を除く部材の車両の上下方向に関する直動減衰係数[Ns/m]
Kbs:軸受ユニット30の軸方向(車両の上下方向)に関する剛性(ばね定数)とボールねじ軸25の軸方向に関する剛性(ばね定数)との合成値[N/m]
Zb:ボールねじ軸25に対するボールナット26の軸方向の相対変位量[m]
Kn:ボールナット26の軸方向に関する剛性(ばね定数)[N/m]
Ktire:車輪を構成するタイヤのばね定数[N/m]
【0101】
また、電動モータ5の出力軸89の回転角度をθ
m[rad]とし、ボールねじ軸25の回転角度をθ
b[rad]とし、車両の上下方向に関するボールねじ軸25の位置をZ
bとした場合、次の(4)式から(6)式の関係が成立する。
【数4】
【数5】
【数6】
【0102】
ここで、(4)式から(6)式中の符号の意味は、下記のとおりである。
jm:電動モータ5の出力軸89の慣性モーメント[kg・m2]
dm:電動モータ5の出力軸89の粘性減衰係数[Nm/(rad/s)]
Kg:カップリング91のねじり剛性[Nm/rad]
jb:ボールねじ軸25の慣性モーメント[kg・m2]
db:ボールねじ軸25の粘性減衰係数[Nm/(rad/s)]
R:ボールねじ軸25の単位回転角度当りの軸方向変位量[m/rad]
【0103】
なお、ボールねじ軸25の雄ボールねじ溝28のリード(およびボールナット26の雌ボールねじ溝62のリード)をL[m]とした場合、ボールねじ軸25の単位回転角度当りの軸方向変位量Rは、次の(7)式で表される。
【数7】
【0104】
ボールねじ軸25の雄ボールねじ溝28のリード角(ボールナット26の雌ボールねじ溝62のリード角)φ[rad]は、雄ボールねじ溝28(雌ボールねじ溝62)のボールピッチ円径をd[m]とすると、次の(8)式で表される。
【数8】
【0105】
上記(2)式から(6)式に基づいて、路面から入力される振動の周波数と、ばね上加速度(ばね上位置における、車両の上下方向に関する加速度)との関係は、
図9(A)~
図9(D)に示すようになる。
図9(A)~
図9(D)から明らかなように、本例の懸架装置1は、その周波数の振動が増幅される2つの共振周波数(ばね上共振周波数およびばね下共振周波数)に加え、その周波数の振動が抑制される反共振周波数(反共振点)を有することが分かる。また、
図9(A)~
図9(D)からは、反共振周波数f
aは、ばね下重量m
1(
図9(A)参照)やばね上重量m
2(
図9(B)参照)によってはほとんど変化せず、コイルスプリング6のばね定数K
sp(
図9(C)参照)やボールねじ軸25の雄ボールねじ溝28のリード角(=ボールナット26の雌ボールねじ溝62のリード角)φ(
図9(D)参照)に応じて変化する値であることも分かる。
【0106】
ここで、コイルスプリング6のばね定数Kspは、車高や懸架装置1のストローク長などに応じて適切な大きさに設定される。そこで、ボールねじ軸25の雄ボールねじ溝28のリード角φを規制することで、懸架装置1の反共振周波数faを、1Hz以上10Hz以下、好ましくは4Hz以上8Hz以下の範囲の値に調整することを考える。
【0107】
図10(A)~
図10(D)は、コイルスプリング6のばね定数K
spを16.9[N/mm]~45[N/mm]の範囲で変化させた場合の、路面から入力される振動の周波数とばね上加速度と関係を、雄ボールねじ溝28のリード角φごとに示している。なお、
図10(A)~
図10(D)においては、横軸(路面から入力される振動の周波数)を対数スケールで表している。
図10(A)~
図10(D)から明らかなとおり、反共振周波数f
aは、リード角φの大きさに比例して大きくなる。すなわち、反共振周波数f
aと、雄ボールねじ溝28のリード角φとの関係を、コイルスプリング6のばね定数K
spごとに求めると、
図11に示すようになる。さらに、横軸をコイルスプリング6のばね定数K
spとし、縦軸を
図11に示す関係の線形近似式の傾きとしてグラフ上にプロットすると、
図12に示すようになる。
図12に示す関係を線形近似すると、次の(9)式で表される。
【数9】
したがって、雄ボールねじ溝28のリード角φを、上記(1)式で求められる大きさとすることにより、懸架装置1全体の反共振周波数を1Hz以上10Hz以下、好ましくは4Hz以上8Hz以下とすることができる。
【0108】
本例の懸架装置1では、ボールねじ軸25の雄ボールねじ溝28のリード角φを規制することで、懸架装置1全体の反共振周波数を1Hz以上10Hz以下、好ましくは4Hz以上8Hz以下としている。このため、コイルスプリング6のばね定数Kspを、車高や懸架装置1のストローク長などに応じて適切な大きさに設定しつつ、運転者を含む乗員に違和感を与えやすい、1Hz~10Hz程度の周波数の振動を低減することができて、車両の乗り心地を良好に確保することができる。
【0109】
また、本例の懸架装置1によれば、組立作業を容易に行うことができる。
【0110】
すなわち、懸架装置1を組み立てる際には、まず、
図4に示すように、ボールねじ軸25のうち、軸方向片側部分の周囲に、複数個のボールとボールナット26とを配置し、かつ、ボールナット26にインナチューブ63を結合固定する。また、ボールねじ軸25のうち、軸方向中間部の周囲に、バンプストッパ120を配置し、かつ、軸方向他側部分の周囲に、軸受ユニット30を配置する。すなわち、ボールねじ軸25と軸受ユニット30とボールナット26とバンプストッパ120とを組み合わせて、中間組立体を得る。
【0111】
具体的には、まず、ボールねじ軸25のうち、雄ボールねじ溝28が備えられた軸方向片側部分に、ボールナット26を、複数個のボールを介して螺合する。次いで、コンタクトプレート85の通孔86と、ボールナット26の通孔67とにボルト87を挿通し、さらに、ボルト87を、チューブフランジ部69のねじ孔72にボルト87を螺合することで、ボールナット26とインナチューブ63とを結合固定する。また、ボールねじ軸25を、ストッパホルダ51に外嵌したバンプストッパ120に軸方向片側から挿入し、ボールねじ軸25の軸方向他側部分に、軸受ユニット30とカラー48とを外嵌する。さらに、ボールねじ軸25の軸方向他側の端部にナット49を螺合する。
【0112】
また、
図5に示すように、アッパシェル2の小径筒部8の内側に、滑り軸受75とオイルシール78とを支持する。
【0113】
次に、
図6に示すように、中間組立体をアッパシェル2の内側に支持し、かつ、アッパシェル2の軸方向他側の端部に、マウント部材102を支持固定する。
【0114】
具体的には、中間組立体を、アッパシェル2の内側に軸方向他側から挿入する。これにより、インナチューブ63を、アッパシェル2の軸方向片側の端部に支持された滑り軸受75に挿入(内嵌)し、かつ、ボールナット26を、段部7(フランジ部124)の内側を通過させ、小径筒部8の軸方向中間部まで移動させる。そして、軸受ユニット30の軸方向片側面の径方向外側の端部を、ストッパホルダ51を介して、段部7(フランジ部124の軸方向他側面)に突き当てることで、アッパシェル2に対する軸受ユニット30の軸方向の位置決めを図る。そして、アッパシェル2の大径筒部9にスリーブ53を内嵌し、さらに、大径筒部9の軸方向他側の端部内周面に備えられた雌ねじ部54に、マウント部材102のロックナット55を螺合する。
【0115】
図6の例では、ロックナット55の軸方向片側の端面と、スリーブ53の軸方向他側の端面との間に、シム板123を挟持している。ただし、シム板123は、省略することもできる。
【0116】
次いで、
図7に示すように、アッパシェル2の周囲にコイルスプリング6を配置した後、インナチューブ63に対しロアシェル3を、ロアブッシュ64により支持するとともに、電動モータ5の出力軸89をボールねじ軸25に接続し、かつ、ケーシング100をマウント部材102に対し支持固定する。
【0117】
すなわち、コイルスプリング6にアッパシェル2を軸方向片側から挿入し、コイルスプリング6の軸方向他側の端部を、エンド部材117に突き当てる。次いで、アッパシェル2の軸方向片側部分の周囲にロアシェル3を配置し、ロアシェル3の係合孔17とインナチューブ63の係合軸部71とをがたつきなく嵌合する。次いで、インナチューブ63のねじ孔74に、ロアブッシュ64の雄ねじ部82を螺合することで、インナチューブ63とロアシェル3とを結合する。
【0118】
また、電動モータ5の出力軸89の軸方向片側の端部を、継手90を介して、ボールねじ軸25の軸方向他側の端部に、トルクの伝達を可能に接続し、かつ、電動モータ5のケーシング100を、マウント部材102に対し、ねじ止めなどにより、支持固定する。
【0119】
上述のように、本例の懸架装置1を組み立てる際には、ボールねじ軸25と軸受ユニット30とボールナット26とインナチューブ63とバンプストッパ120とからなる中間組立体を、アッパシェル2に軸方向他側から挿入する。そして、軸受ユニット30の軸方向片側面を、アッパシェル2の段部7(フランジ部124の軸方向他側面)に、ストッパホルダ51を介して突き当てることにより、アッパシェル2に対するボールねじ軸25の軸方向の位置決めを図った状態で、ボールねじ軸25をアッパシェル2の内側に支持する。その後、電動モータ5の出力軸89を、ボールねじ軸25の軸方向他側の端部に、継手90により、トルクの伝達を可能に接続し、かつ、電動モータ5のケーシング100を、マウント部材102により、アッパシェル2の軸方向他側の端部に支持固定している。
【0120】
すなわち、重量が嵩む電動モータ5をアッパシェル2に対し支持固定する以前に、ボールねじ軸25をアッパシェル2の内側に、アッパシェル2に対するボールねじ軸25の軸方向の位置決めを図った状態で支持することができる。このため、本例の懸架装置1の組立方法によれば、組立作業を容易に行うことができる。
【0121】
これに対し、特開2010-228579号公報に記載の懸架装置では、ボールねじ機構およびインナチューブを、電磁モータのケーシングに対し支持固定し、かつ、ケーシングを、マウント部および防振ゴムを介してアッパーサポートに結合固定している。すなわち、ボールねじ機構およびインナチューブは、重量が嵩む電磁モータを介して、アッパーサポートに対し軸方向の位置決めを図った状態で支持固定されている。したがって、組立作業の際に、重量が嵩む電磁モータを、ボールねじ機構およびインナチューブと一体に(サブアセンブリとして)扱う必要があり、組立作業が面倒である。
【0122】
さらに、本例では、ボールナット26とインナチューブ63とをボルト87により結合した状態で、ボールナット26とインナチューブ63とが、アッパシェル2の段部7(フランジ部124)の径方向内側を通過できるようにしている。このため、ボールナット26を、軸受ユニット30およびバンプストッパ120とともにボールねじ軸25の周囲に配置し、中間組立体を構成した状態で、該中間組立体をアッパシェル2の内側に、前記中間組立体の軸方向片側の端部を先頭にして前記アッパシェル2の軸方向他側の開口から挿入した場合でも、ボールナット26を、アッパシェル2のフランジ部124の内側を通過させることができる。要するに、アッパシェル2の内側に支持される、ボールねじ軸25と軸受ユニット30とボールナット26とインナチューブ63とバンプストッパ120とを組み合わせて、中間組立体として一体に取り扱うことができる。この面からも、懸架装置1の組立作業の容易化を図ることができる。
【0123】
なお、上述した懸架装置1を組み立てる工程は、中間組立体を組み立てた後で、該中間組立体をアッパシェル2の内側に支持する工程を備え、かつ、矛盾を生じない限り、順番を入れ替えたり、同時に実施したりすることができる。
【0124】
本例の懸架装置1では、アッパシェル2に対し、ロアシェル3を軸方向の相対変位を可能に外嵌し、かつ、アッパシェル2の軸方向他側の端部に支持固定されたエンド部材117と、ロアシェル3の外向フランジ部18との間でコイルスプリング6を挟持している。コイルスプリング6は、懸架装置1が全長を収縮させる、すなわちアッパシェル2とロアシェル3とが互いに近づく方向に相対変位するのに伴って、弾性的に収縮する。懸架装置1は、アッパシェル2の内向フランジ部76の軸方向他側面と、ロアシェル3に支持されたボールナット26の軸方向片側の端面とが、リバウンドストッパ88を介して衝突するまで、全長を収縮させることができる。したがって、本例の懸架装置1によれば、特開2010-228579号公報に記載の懸架装置と比較して、コイルスプリング6の収縮可能量を確保しやすくできる。
【0125】
本発明の懸架装置は、本例のように、ボールねじ装置の周囲にコイルスプリングが配置されている構造に限らず、車体と、車輪を支持する部材との間に、ボールねじ装置とコイルスプリングとが並列に配置されている構造であれば、任意の構造に適用することができる。具体的には、たとえば、ボールねじ装置とコイルスプリングとを車両の進行方向に並列に配列することもできるし、車両の幅方向に並列に配置することもできる。
【符号の説明】
【0126】
1 懸架装置
2 アッパシェル
3 ロアシェル
4 ボールねじ装置
5 電動モータ
6 コイルスプリング
7 段部
8 小径筒部
9 大径筒部
10 円すい筒部
11 シェル本体
12 ロアリテーナ
13 筒状部
14 底部
15 長孔
16 雄ねじ部
17 係合孔
18 外向フランジ部
19 ねじ孔
20 ボルト
21 第1ロックナット
22 第2ロックナット
23 シート
24 ダストシール
25 ボールねじ軸
26 ボールナット
27 ボール
28 雄ボールねじ溝
29 被支持部
30 軸受ユニット
31 大径部
32 小径部
33 ロア段部
34 雄ねじ部
35 軸受ホルダ
36 押えプレート
37a、37b 転がり軸受
38 ホルダ円筒部
39 外向フランジ部
40 内向フランジ部
41 ねじ孔
42 円輪部
43 プレート円筒部
44 通孔
45a、45b 内輪
46a、46b 外輪
47a、47b 転動体
48 カラー
49 ナット
50 ボルト
51 ストッパホルダ
52 Oリング
53 スリーブ
54 雌ねじ部
55 ロックナット
56a、56b オイルシール
57 有底孔
58 径方向通気孔
59 軸方向通気孔
60 通気路
61 内部空間
62 雌ボールねじ溝
63 インナチューブ
64 ロアブッシュ
65 本体部
66 ナットフランジ部
67 通孔
68 円筒部
69 チューブフランジ部
70 底部
71 係合軸部
72 ねじ孔
73 通気孔
74 ねじ孔
75 滑り軸受
76 内向フランジ部
77 止め輪
78 オイルシール
79 円環部
80 軸部
81 押えフランジ部
82 雄ねじ部
83 弾性材
84 支持環部
85 コンタクトプレート
86 通孔
87 ボルト
88 リバウンドストッパ
89 出力軸
90 継手
91 カップリング
92a、92b キー
93a、93b 切り欠き
94a、94b 結合部材
95 ロアカラー
96 アッパカラー
97 切り欠き
98 アッパ段部
99 切り欠き
100 ケーシング
101 ブラケット
102 マウント部材
103 防振部材
104 雄ねじ部
105 筒状部
106 円輪部
107 アッパ部材
108 ロア部材
109 円筒部
110 ロア円輪部
111 アッパ円輪部
112 支持ボルト
113 円筒部
114 円輪部
115 折れ曲がり部
116 外向フランジ部
117 エンド部材
118 弾性部材
119 支持部材
120 バンプストッパ
121 円輪部
122 円筒部
123 シム板
124 フランジ部
125 円筒面部