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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001990
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】プラズマ源及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20221227BHJP
   H01L 21/31 20060101ALN20221227BHJP
【FI】
H05H1/46 L
H01L21/31 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102944
(22)【出願日】2021-06-22
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】茨木 満雄
【テーマコード(参考)】
2G084
5F045
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA04
2G084AA05
2G084BB21
2G084BB23
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD12
2G084DD25
2G084DD38
2G084DD55
2G084DD62
2G084DD63
2G084DD65
2G084FF22
5F045AA08
5F045AA19
5F045AB03
5F045AB32
5F045AB33
5F045AC01
5F045AC11
5F045AC12
5F045AC15
5F045AD01
5F045AE01
5F045AF07
5F045BB08
5F045CA15
5F045DP02
5F045DQ10
5F045EF02
5F045EH02
5F045EH03
5F045EH11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】真空容器の外部にアンテナを配置したプラズマ処理装置において、シール部材の変形を抑制して磁場透過窓のシール性を向上させる。
【解決手段】真空容器2の外部に設けられたアンテナに高周波電流を流して前記真空容器内にプラズマを発生させるプラズマ源であって、前記真空容器の前記アンテナに臨む位置に形成された開口を塞ぐスリット板6と、前記スリット板に形成されたスリット6xを前記真空容器の外側から塞ぐ誘電体板7と、前記スリットを取り囲むようにして前記誘電体板と前記スリット板との間に挟み込まれたシール部材8と、前記シール部材により取り囲まれる空間に設けられ、前記シール部材の内周面に接触することにより前記シール部材の変形を抑えるスペーサ部材9と、を備えているプラズマ源。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器の外部に設けられたアンテナに高周波電流を流して前記真空容器内にプラズマを発生させるプラズマ源であって、
前記真空容器の前記アンテナに臨む位置に形成された開口を塞ぐスリット板と、
前記スリット板に形成されたスリットを前記真空容器の外側から塞ぐ誘電体板と、
前記スリットを取り囲むようにして前記誘電体板と前記スリット板との間に挟み込まれたシール部材と、
前記シール部材により取り囲まれる空間に設けられ、前記シール部材の内周面に接触することにより前記シール部材の変形を抑えるスペーサ部材と、を備えているプラズマ源。
【請求項2】
前記スペーサ部材が板状を成し、前記スリットを塞ぐように設けられている請求項1に記載のプラズマ源。
【請求項3】
前記スペーサ部材が誘電体材料からなるものである請求項2に記載のプラズマ源。
【請求項4】
前記真空容器を真空排気した際に、前記誘電体板が前記スペーサ部材に接触して支持される請求項1~3のいずれか一項に記載のプラズマ源。
【請求項5】
前記誘電体板の厚みが前記スペーサ部材の厚みよりも小さい請求項4に記載のプラズマ源。
【請求項6】
平面視において、前記シール部材の内周面の形状と、当該内周面に対向する前記スペーサ部材の外周面の形状が略同一である請求項1~5のいずれか一項に記載のプラズマ源。
【請求項7】
前記スリット板が、前記アンテナ側から前記真空容器側に向かって凸形状をなすように形成された請求項1~6のいずれか一項に記載のプラズマ源
【請求項8】
真空容器と、
請求項1~7のいずれか一項に記載のプラズマ源とを具備する、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内にプラズマを発生させるためのプラズマ源、及びこのプラズマ源を備えたプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンテナに高周波電流を流し、それによって生じる誘導電界によって誘導結合型のプラズマ(略称ICP)を発生させ、この誘導結合型のプラズマを用いて基板等の被処理物に処理を施すプラズマ処理装置が従来から提案されている。
【0003】
このようなプラズマ処理装置として、特許文献1には、アンテナを真空容器の外部に配置し、真空容器の側壁の開口を塞ぐように設けた磁場透過窓を通じてアンテナから生じた高周波磁場を真空容器内に透過させることで、処理室内にプラズマを発生させるものが開示されている。このプラズマ処理装置では、複数のスリットが形成された金属板(以下、スリット板ともいう)を真空容器の開口を塞ぐように設けるとともに、この複数のスリットを真空容器の外部から塞ぐようにして誘電体板を設けることで、スリット板と誘電体板とにより磁場透過窓としての機能を担わせている。これにより、誘電体板のみに磁場透過窓としての機能を担わせる場合に比べて磁場透過窓の厚みを小さくすることができ、またアンテナから真空容器内までの距離を短くすることができ、アンテナから生じた高周波磁場を効率良く真空容器内に供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-198282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上述したプラズマ処理装置では、スリット板と誘電体板との間にOリング等のシール部材を設けて、これらの間のシール性を確保するようにしている。ここで、真空容器内を真空排気した際に、シール部材が引き込まれて変形することでシール性が低下しないように、スリット板に凹溝等を設けてシール部材を嵌めこむのが望ましいが、スリットの形状や配置によってはこのような凹溝等を加工ができない場合もある。粘着剤をスリット板と誘電体板との間にグリス等の塗布することで、Oリングや凹溝等を設けることなくシール性を確保することも考えられるが、やはり真空排気した際に真空容器内に粘着剤が吸い込まれてシール性が徐々に低下する恐れがあるため好ましくない。
【0006】
本願発明は、かかる問題を解決するべくなされたものであり、真空容器の外部にアンテナを配置したプラズマ処理装置において、シール部材の変形を抑制して磁場透過窓のシール性を向上させることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明に係るプラズマ源は、真空容器の外部に設けられたアンテナに高周波電流を流して前記真空容器内にプラズマを発生させるプラズマ源であって、前記真空容器の前記アンテナに臨む位置に形成された開口を塞ぐスリット板と、前記スリット板に形成されたスリットを前記真空容器の外側から塞ぐ誘電体板と、前記スリットを取り囲むようにして前記誘電体板と前記スリット板との間に挟み込まれたシール部材と、前記シール部材により取り囲まれる空間に設けられ、前記シール部材の内周面に接触することにより前記シール部材の変形を抑えるスペーサ部材とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
このように構成されたプラズマ源によれば、シール部材の内周面に接触することによりその変形を抑えるスペーサ部材を備えているので、真空容器を真空排気した際に、シール部材がスリットに引き込まれるように内向きに変形しようとしても、その内周面に接触するスペーサ部材により外向きに押し返すようにできる。これによりシール部材の変形を抑制でき、磁場透過窓のシール性を向上させることができる。このように、真空排気に伴うシール部材の内向きへの変形をスペーサ部材で抑えるようにしているので、スリット板や誘電体板に、シール部材を嵌めこむ凹溝等を設ける必要もない。
【0009】
前記したプラズマ処理装置では、真空容器内で発生するプラズマにシール部材が晒されることにより、シール部材の熱劣化が進むことがある。
そのため、前記プラズマ源は、前記スペーサ部材が板状を成し、前記スリットを塞ぐように設けられているのが好ましい。
このようにすれば、スリットをスペーサ部材で塞ぐことにより、シール部材がプラズマに直接晒されなくなるので、シール部材の熱劣化を抑制できる。
【0010】
また、前記スペーサ部材により前記スリットを塞ぐ場合には、前記プラズマ源は、前記スペーサ部材が誘電体材料からなるものであるのが好ましい。
このようにすれば、スペーサ部材が高周波磁場を効率よく透過させられるので、アンテナから生じた高周波磁場を真空容器内に効率よく供給することができる。
【0011】
スリット板と誘電体板との間にシール部材を設けてこれらの間のシール性を確保する場合、誘電体板におけるシール部材との接触箇所に応力が集中し、誘電体の割れが生じる恐れがある。このような誘電体の割れを予防する手段として、誘電体板を厚くすることが考えられるが、アンテナから真空容器内までの距離が長くなるため好ましくない。
そのため、前記プラズマ源は、前記真空容器を真空排気した際に、前記誘電体板が前記スペーサ部材に接触して支持されるように構成されているのが好ましい。
このようにすれば、誘電体板がシール部材のみならずスペーサ部材によっても支持されることで応力集中が低減するので、誘電体板の割れを防ぐことができ、誘電体板を薄くすることが可能となる。その結果、アンテナから真空容器内までの距離を短くすることができ、アンテナから生じた高周波磁場をより効率良く真空容器内に供給することができる。
ここで、シール性を十分に確保する観点から、大気圧状態(すなわち真空容器を真空排気していない状態)では、誘電体板とスペーサ部材とが接触していないのが好ましい。
【0012】
スペーサ部材により誘電体板を支持させる場合、誘電体板に求められる機械強度が低くなるので、その厚みを小さくできる。そのため前記プラズマ源は、前記誘電体板の厚みが前記スペーサ部材の厚みよりも小さいのが好ましい。
このようにすれば、アンテナから真空容器内までの距離を短くすることができ、アンテナから生じた高周波磁場をより効率良く真空容器内に供給することができる。
【0013】
また前記プラズマ源は、平面視において、前記シール部材の内周面の形状と、当該内周面に対向する前記スペーサ部材の外周面の形状が略同一であることが好ましい。
このような構成であれば、真空容器を真空排気した際に、シール部材の内周面の大部分に亘ってスペーサ部材を接触できるので、シール部材の変形をより効率よく抑えて、シール性を向上できる。
【0014】
前記プラズマ源は、前記スリット板が、前記アンテナ側から前記真空容器側に向かって凸形状をなすように形成されているものが好ましい。
このような構成であれば、スリット板をアンテナ側から真空容器側に向かって凸形状をなすように形なすることで、スリット板が平板状であるものに比べて、アンテナ周りのスリット板との距離を近づけることができる。これにより、平板状のスリット板を用いる場合に比べて、アンテナに直交する方向におけるプラズマ密度を高くすることができ、真空容器内に生成されるプラズマ密度の分布をブロードにすることができる。
そして、このようにスリット板が真空容器側に凸形状をなす場合には、スリット板におけるシール部材の取り付け面が凹形状をなすため、シール部材を嵌め込む凹溝や段差の加工が困難である。しかしながら、前記した本発明のプラズマ源であれば、スリット板に凹溝や段差の加工を施す必要がないので、スリット板が真空容器側に凸形状をなすものであっても、シール部材の変形を抑えてシール性を向上できる。
【0015】
また、真空容器と、上述したプラズマ源とを備えるプラズマ処理装置も本発明の1つであり、かかるプラズマ処理装置であれば、上述したプラズマ源と同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、真空容器の外部にアンテナを配置したプラズマ処理装置において、シール部材の変形を抑制して磁場透過窓のシール性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す縦断面図。
図2】同実施形態のプラズマ処理装置の構成を模式的に示す横断面図。
図3】同実施形態における真空容器の開口の周辺構造を示す断面図。
図4】同実施形態におけるスリット板、シール部材及びスペーサ部材の構成を模式的に示す平面図。
図5】その他の実施形態におけるスリット板、シール部材及びスペーサ部材の構成を模式的に示す平面図。
図6】その他の実施形態におけるスリット板、シール部材及びスペーサ部材の構成を模式的に示す平面図。
図7】その他の実施形態における真空容器の開口の周辺構造を示す断面図。
図8】その他の実施形態における真空容器の開口の周辺構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係るプラズマ源及びプラズマ処理装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
<装置構成>
本実施形態のプラズマ処理装置100は、誘導結合型のプラズマPを用いて基板Sに処理を施すものである。ここで、基板Sは、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル基板等である。また、基板Sに施す処理は、例えば、プラズマCVD法による膜形成、エッチング、アッシング、スパッタリング等である。
【0020】
なお、このプラズマ処理装置100は、プラズマCVD法によって膜形成を行う場合はプラズマCVD装置、エッチングを行う場合はプラズマエッチング装置、アッシングを行う場合はプラズマアッシング装置、スパッタリングを行う場合はスパッタリング装置とも呼ばれる。
【0021】
具体的にプラズマ処理装置100は、図1及び図2に示すように、真空排気され且つガスGが導入される真空容器1と、真空容器1の内部にプラズマを発生させるプラズマ源200とを具備してなり、プラズマ源200は、真空容器1の外部に設けられたアンテナ2と、アンテナ2に高周波を印加する高周波電源3とを備えたものである。かかる構成において、アンテナ2に高周波電源3から高周波を印加することによりアンテナ2には高周波電流IRが流れて、真空容器1内に誘導電界が発生して誘導結合型のプラズマPが生成される。
【0022】
真空容器1は、例えば金属製の容器であり、その壁(ここでは上壁1a)には、厚さ方向に貫通する開口1xが形成されている。この真空容器1は、ここでは電気的に接地されており、その内部は真空排気装置4によって真空排気される。
【0023】
また、真空容器1内には、例えば流量調整器(図示省略)や真空容器1に設けられた1又は複数のガス導入口11を経由して、ガスGが導入される。ガスGは、基板Sに施す処理内容に応じたものにすれば良い。例えば、プラズマCVD法によって基板に膜形成を行う場合には、ガスGは、原料ガス又はそれを希釈ガス(例えばH)で希釈したガスである。より具体例を挙げると、原料ガスがSiHの場合はSi膜を、SiH+NHの場合はSiN膜を、SiH+Oの場合はSiO膜を、SiF+Nの場合はSiN:F膜(フッ素化シリコン窒化膜)を、それぞれ基板上に形なすることができる。
【0024】
この真空容器1の内部には、基板Sを保持する基板ホルダ5が設けられている。この例のように、基板ホルダ5にバイアス電源Vからバイアス電圧を印加するようにしても良い。バイアス電圧は、例えば負の直流電圧、負のバイアス電圧等であるが、これに限られるものではない。このようなバイアス電圧によって、例えば、プラズマP中の正イオンが基板Sに入射する時のエネルギーを制御して、基板Sの表面に形成される膜の結晶化度の制御等を行うことができる。基板ホルダ5内に、基板Sを加熱するヒータ51を設けておいても良い。
【0025】
アンテナ2は、図1及び図2に示すように、真空容器1に形成された開口1xに臨むように配置されている。なお、アンテナ2の本数は1本に限らず、複数本のアンテナ2を設けても良い。
【0026】
アンテナ2は、図2に示すように、その一端部である給電端部2aが、整合回路31を介して高周波電源3が接続されており、他端部である終端部2bが、直接接地されている。なお、終端部2bは、コンデンサ又はコイル等を介して接地されてもよい。
【0027】
高周波電源3は、整合回路31を介してアンテナ2に高周波電流IRを流すことができる。高周波の周波数は例えば一般的な13.56MHzであるが、これに限られるものではなく適宜変更してもよい。
【0028】
ここで、本実施形態のプラズマ源200は、真空容器1の壁(上壁1a)に形成された開口1xを真空容器1の外側から塞ぐスリット板6と、スリット板6に形成されたスリット6xを真空容器1の外側から塞ぐ誘電体板7と、スリット板6と誘電体板7との間に挟み込まれたシール部材8とをさらに備えている。
【0029】
スリット板6は、その厚み方向に貫通してなるスリット6xが形成されたものであり、アンテナ2から生じた高周波磁場を真空容器1内に透過させるとともに、真空容器1の外部から真空容器1の内部への電界の入り込みを防ぐものである。
【0030】
具体的にこのスリット板6は、図3及び図4に示すように、互いに平行な複数のスリット6xが形成された平板状のものであり、後述する誘電体板よりも機械強度が高いことが好ましく、誘電体板よりも厚み寸法が大きいことが好ましい。
【0031】
より具体的に説明すると、スリット板6は、例えばCu、Al、Zn、Ni、Sn、Si、Ti、Fe、Cr、Nb、C、Mo、W又はCoを含む群から選択される1種の金属又はそれらの合金(例えばステンレス合金、アルミニウム合金等)等の金属材料を圧延加工(例えば冷間圧延や熱間圧延)などにより製造したものであり、例えば厚みが約5mmのものである。ただし、製造方法や厚みはこれに限らず仕様に応じて適宜変更して構わない。
【0032】
このスリット板6は、図3に示すように、平面視において真空容器の開口1xよりも大きいものであり、上壁1aに支持された状態で開口1xを塞いでいる。スリット板6と上壁1aとの間には、Oリングやガスケット等のシール部材Qが介在しており、これらの間は真空シールされている。
【0033】
誘電体板7は、スリット板6の外向き面(真空容器1の内部を向く内向き面の裏面)側に設けられて、スリット板6のスリット6xを塞ぐものである。
【0034】
誘電体板7は、全体が誘電体物質で構成された平板状をなすものであり、例えばアルミナ、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミックス、石英ガラス、無アルカリガラス等の無機材料、フッ素樹脂(例えばテフロン)等の樹脂材料等からなる。なお、誘電損を低減する観点から、誘電体板7を構なする材料は、誘電正接が0.01以下のものが好ましく、0.005以下のものがより好ましい。
【0035】
ここでは誘電体板7の板厚をスリット板6の板厚よりも小さくしているが、これに限定されず、例えば真空容器1を真空排気した状態において、スリット6xから受ける真空容器1の内外の差圧に耐え得る強度を備えれば良く、スリット6xの数や長さ等の仕様に応じて適宜設定されてよい。ただし、アンテナ2と真空容器1との間の距離を短くする観点からは薄い方が好ましい。
【0036】
シール部材8は、スリット板6と誘電体板7との間を封止するものであり、スリット板6及び誘電体板7の間においてスリット6xを取り囲むように設けられている。このシール部材8は、複数のスリット6xの全て、言い換えれば複数のスリット6xからなるスリット群の全体を取り囲むように設けられている。
【0037】
具体的にこのシール部材8は、ゴム等の弾性材料からなる所定の機械強度を有するものであり、例えばガスケットやOリング等である。平面視において、このシール部材8は環状(ここでは矩形環状)を成しており、その環状の内周面81によりスリット6xを取り囲んでいる。ここでは、内周面81により複数のスリット6xを取り囲むようにしている。
【0038】
またこのシール部材8を挟み込むスリット板6と誘電体板7のそれぞれの対向面(シール面ともいう)6s、7sはいずれも平坦面である。言い換えれば、この対向面6s、7sには、シール部材8が嵌まりこむ凹溝又は段差等が形成されていない。
【0039】
かかる構成により、スリット板6及び誘電体板7は、磁場を透過させる磁場透過窓Wとして機能を担う。すなわち、高周波電源3からアンテナ2に高周波を印加すると、アンテナ2から発生した高周波磁場が、スリット板6及び誘電体板7からなる磁場透過窓Wを透過して真空容器1内に形成(供給)される。これにより、真空容器1内の空間に誘導電界が発生し、誘導結合型のプラズマPが生成される。
【0040】
然して、本実施形態のプラズマ源200では、図3及び図4に示すように、スリット板6と誘電体板7との間における、シール部材8の内周面81により取り囲まれる空間8xに、シール部材8の変形を抑えるスペーサ部材9が設けられている。
【0041】
このスペーサ部材9は、スリット板6の外向き面上に載せられた平板状をなすものであり、その外周面91をシール部材8の内周面81に接触させることにより、シール面6s、7sの面内方向に沿ったシール部材8の変形を抑制するものである。このスペーサ部材9の厚み寸法は、大気圧状態(すなわち、真空容器1が真空排気されていない状態)においてシール部材9の厚み寸法よりも小さい。本実施形態では、真空容器1を真空排気した状態でも、このスペーサ部材9の厚み寸法がシール部材8の厚みよりも小さくなっている。すなわち、スペーサ部材9の厚み寸法が、誘電体板7の内向き面とスリット板6の外向き面との間の最短距離寸法よりも小さくなっており、スペーサ部材9と誘電体板7とが接触しないようになっている。
【0042】
そして平面視においてこのスペーサ部材9は、その外周面91からなる外縁の全てが、シール部材8の内周面81により取り囲まれる複数のスリット6xからなるスリット群の外縁よりも外側に位置するように(すなわち取り囲むように)構成されている。平面視において外周面91の形状は、シール部材8の内周面81の形状と略同一になっている。本実施形態では、スペーサ部材9は、大気圧状態において、その外周面91の全部がシール部材8の内周面81に接触するように設けられている。
【0043】
また本実施形態では、スペーサ部材9は、その内向き面(真空容器1の内部を向く面)によりスリット6xを塞ぐように設けられている。本実施形態のスペーサ部材9は、複数のスリット6xの全てを塞ぐように設けられている。ここでスペーサ部材9は、アンテナ2から生じた高周波磁場を真空容器1内に透過させるように、その全体が誘電体物質により構成されている。スペーサ部材9は、誘電体板7と同じ材料により構成されてもよいし、異なる材料により構成されていてもよい。
【0044】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態のプラズマ処理装置100及びプラズマ源200によれば、シール部材8の内周面に接触することによりその変形を抑えるスペーサ部材9を備えているので、真空容器1を真空排気した際に、シール部材8がスリット6xに引き込まれるように内向きに変形しようとしても、その内周面81に接触するスペーサ部材9により外向きに押し返すようにできる。これによりシール部材8の変形を抑制でき、磁場透過窓Wのシール性を向上させることができる。このように、真空排気に伴うシール部材8の内向きへの変形をスペーサ部材9で抑えるようにしているので、スリット板6や誘電体板7に、シール部材8を嵌めこむ凹溝等を設ける必要もない。さらに、スペーサ部材9が板状をなし、全てのスリット6xを塞ぐように設けられているので、シール部材8がプラズマに直接晒されなくなるので、シール部材8の熱劣化を抑制できる。
【0045】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0046】
例えば、前記実施形態のスペーサ部材9は、複数のスリット6xの全てを塞ぐ板状を成すものであったがこれに限らない。他の実施形態では、スペーサ部材9はスリット6xを塞ぐように設けられなくてもよい。例えば図5に示すように、スペーサ部材9は、中央部が開口している枠体状をなすものであり、平面視において、複数のスリット6xを取り囲むようにスリット板6上に載せられてもよい。この場合、スペーサ部材9は誘電体材料により構成されていなくてもよい。
【0047】
また、図6に示すように、シール部材8は互いに隣り合うスリット6xの間に設けられてもよい。この場合、スリット板6と誘電体板7との間には、シール部材8の内周面81により取り囲まれる空間8xが複数形成される。そして、この複数の空間8xのそれぞれに、スペーサ部材9が設けられてよい。
【0048】
また他の実施形態では、スリット板6や誘電体板7のシール面には、シール部材8が嵌まりこむ凹溝又は段差等が形成されていてもよい。
【0049】
また前記実施形態では、スペーサ部材9は、大気圧状態において、その外周面91の全部がシール部材8の内周面81に接触するように設けられていたがこれに限らない。他の実施形態では、大気圧状態において、スペーサ部材9の外周面91の全部又は一部がシール部材8の内周面81に接触していなくてもよい。真空容器1を真空排気した状態で、スペーサ部材9の外周面91の全部又は一部がシール部材8の内周面81に接触するようにすれば、前記した本発明の効果を奏することができる。
【0050】
また他の実施形態のプラズマ処理装置100は、図7に示すように、スリット板6が、アンテナ2に臨む位置において、真空容器側に向かって凸形状をなすように形成されていてもよい。より詳細に説明すると、アンテナ2の長手方向から視て、スリット板6は真空容器2側に突出し、アンテナ2の側周面の少なくとも一部を取り囲み、これを内側に収容するように概略V字形状を成している。具体的にスリット板6は、アンテナ2を挟んで対向する一対の側壁部61と、各側壁部61の下端(ここでは真空容器側の端部)を連結する底部62とを備えている。一対の側壁部61は、真空容器1側に向かって相寄るように傾斜して形成されている。各側壁部61にはスリット6xがそれぞれ形成されている。そしてこの各スリット6xを塞ぐようにして誘電体板7がそれぞれ設けられており、各誘電体板7と各側壁部61との間にはスリット6xを囲むようにしてシール部材8が挟み込まれている。そして、各シール部材8の内周面81により取り囲まれる複数の空間8xのそれぞれに、スペーサ部材9が設けられてよい。
【0051】
また前記実施形態のプラズマ処理装置100では、真空容器1を真空排気した状態で、スペーサ部材9と誘電体板7とが接触しないように構成されていたがこれに限らない。他の実施形態では、図8に示すように、真空容器1を真空排気した状態で、スペーサ部材9と誘電体板7とが接触し、誘電体板7がスペーサ部材9により支持されるように構成されてもよい。すなわち、スペーサ部材9の厚み寸法が、スリット板6と誘電体板7との間の最短距離寸法と同じであってよい。この場合、誘電体板7の厚み寸法がスペーサ部材9の厚み寸法より小さくてもよい。
【0052】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0053】
100・・・プラズマ処理装置
W ・・・基板
P ・・・誘導結合プラズマ
2 ・・・真空容器
3 ・・・アンテナ
6 ・・・スリット板
6x ・・・スリット
7 ・・・誘電体板
8 ・・・シール部材
81 ・・・内周面
9 ・・・スペーサ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8