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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019909
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 17/06 20060101AFI20230202BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
F25D17/06 315
F25D17/06 313
F25D11/00 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021124977
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】町田 典正
(72)【発明者】
【氏名】片桐 賢宏
(72)【発明者】
【氏名】塚原 紘也
【テーマコード(参考)】
3L045
3L345
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045AA03
3L045AA05
3L045AA06
3L045BA01
3L045CA08
3L045EA01
3L045LA05
3L045LA09
3L045LA14
3L045MA02
3L045NA07
3L045NA09
3L045PA01
3L045PA02
3L045PA03
3L045PA04
3L345DD62
3L345FF06
3L345FF37
3L345KK05
(57)【要約】
【課題】効果的に小冷蔵室の低温化および恒温化を達成できる冷蔵庫を提供する。
【解決手段】本発明の冷蔵庫10は、冷蔵室12と、冷蔵室12の内部で区画された小冷蔵室20と、小冷蔵室20の庫内温度を計測する小冷蔵室温度センサ22と、小冷蔵室20に送風される空気を冷却器により冷却する冷却室115と、加熱により冷却器を除霜するように構成された加熱部117と、空気を冷却室115から冷蔵室12に送風する送風機25と、演算制御部26と、を具備する。また、演算制御部26は、小冷蔵室温度センサ22で計測した小冷蔵室20の庫内温度が、第1上限温度以下であり且つ第1下限温度以上となるように、冷却器および送風機25を運転する冷却サイクルを実行し、除霜運転の直前における冷却サイクルでは、第1下限温度を引き下げる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵室と、
前記冷蔵室の内部で区画された小冷蔵室と、
前記小冷蔵室の庫内温度を計測する小冷蔵室温度センサと、
前記小冷蔵室に送風される空気を冷却器により冷却する冷却室と、
加熱により前記冷却器を除霜する加熱部と、
前記空気を前記冷却室から前記冷蔵室に送風する送風機と、
演算制御部と、を具備し、
前記演算制御部は、
前記小冷蔵室温度センサで計測した前記小冷蔵室の庫内温度が、第1上限温度以下であり且つ第1下限温度以上となるように、前記冷却器および前記送風機を運転する冷却サイクルを実行し、
除霜運転の直前における前記冷却サイクルでは、前記第1下限温度の設定値を引き下げることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
冷凍室と、
前記冷凍室の庫内温度を計測する冷凍室温度センサと、を更に具備し、
前記演算制御部は、
前記冷凍室温度センサで計測した前記冷凍室の庫内温度が、第2上限温度以下であり且つ第2下限温度以上となるように、前記冷凍室を冷却し、
前記除霜運転の直前における前記冷却サイクルでは、前記冷凍室温度センサで計測した前記冷凍室の庫内温度が前記第2下限温度以下であり、且つ、前記小冷蔵室温度センサで計測した前記小冷蔵室の庫内温度が前記第1下限温度以下の場合に、前記除霜運転を実行することを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記冷却室と前記小冷蔵室とを繋ぐ送風路に設けられるダンパを、更に具備し、
前記演算制御部は、前記除霜運転を実行する前に、前記ダンパを開いた状態で前記送風機を運転することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記小冷蔵室を優先的に冷却するモードを選択可能に構成され、
前記演算制御部は、前記小冷蔵室を優先的に冷却するモードが選択された場合に、前記除霜運転の直前における前記冷却サイクルにおいて、前記第1下限温度の設定値を引き下げることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の冷蔵庫。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関し、特に、冷蔵室の内部に小冷蔵室を備えた冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に記載されたような、冷蔵室の内部に収納容器が配置された冷蔵庫が知られている。ここでは、冷蔵室の最下部にチルド容器が収納される。送風機が送風した空気は、冷蔵室の後方側に形成された送風路を経由して冷蔵室に供給される一方、送風路に送風された空気の一部は、冷蔵室を経由せずに、チルド容器に送風され、肉等の被収容物に直接冷風が供給される。このようにすることで、チルド容器の容器内温度は、冷蔵室の庫内温度よりも低くされ、例えば0℃程度とされる。よって、チルド容器に収納された肉等の食品を保存することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-44687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した特許文献1に記載された冷蔵庫では、小冷蔵室の低温化および恒温化の観点から改善の余地があった。
【0005】
図5のグラフを参照して、係る課題を詳述する。このグラフでは、横軸は時間経過を示し、縦軸は温度を示している。また、冷蔵室の庫内温度を実線で示し、チルド室の庫内温度を点線で示し、冷凍室の庫内温度を一点鎖線で示している。このグラフを参照して、除霜行程においては、全ての貯蔵室の庫内温度が上昇している。このようになる理由は、除霜行程においては、蒸発器による冷却は行われず、更に、除霜ヒータにより冷却室の内部が昇温されるためである。この場合、チルド室の庫内温度が0℃以上となると、チルド室に収納された肉や魚が一時的に溶融してしまい、これらの鮮度が落ちてしまう課題が発生する。
【0006】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、効果的に小冷蔵室の低温化および恒温化を達成できる冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の冷蔵庫は、冷蔵室と、前記冷蔵室の内部で区画された小冷蔵室と、前記小冷蔵室の庫内温度を計測する小冷蔵室温度センサと、前記小冷蔵室に送風される空気を冷却器により冷却する冷却室と、加熱により前記冷却器を除霜する加熱部と、前記空気を前記冷却室から前記冷蔵室に送風する送風機と、演算制御部と、を具備し、前記演算制御部は、
前記小冷蔵室温度センサで計測した前記小冷蔵室の庫内温度が、第1上限温度以下であり且つ第1下限温度以上となるように、前記冷却器および前記送風機を運転する冷却サイクルを実行し、除霜運転の直前における前記冷却サイクルでは、前記第1下限温度の設定値を引き下げることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の冷蔵庫では、冷凍室と、前記冷凍室の庫内温度を計測する冷凍室温度センサと、を更に具備し、前記演算制御部は、前記冷凍室温度センサで計測した前記冷凍室の庫内温度が、第2上限温度以下であり且つ第2下限温度以上となるように、前記冷凍室を冷却し、前記除霜運転の直前における前記冷却サイクルでは、前記冷凍室温度センサで計測した前記冷凍室の庫内温度が前記第2下限温度以下であり、且つ、前記小冷蔵室温度センサで計測した前記小冷蔵室の庫内温度が前記第1下限温度以下の場合に、前記除霜運転を実行することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の冷蔵庫では、前記冷却室と前記小冷蔵室とを繋ぐ送風路に設けられるダンパを、更に具備し、前記演算制御部は、前記除霜運転を実行する前に、前記ダンパを開いた状態で前記送風機を運転することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の冷蔵庫では、前記小冷蔵室を優先的に冷却するモードを選択可能に構成され、前記演算制御部は、前記小冷蔵室を優先的に冷却するモードが選択された場合に、前記除霜運転の直前における前記冷却サイクルにおいて、前記第1下限温度の設定値を引き下げることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の冷蔵庫は、冷蔵室と、前記冷蔵室の内部で区画された小冷蔵室と、前記小冷蔵室の庫内温度を計測する小冷蔵室温度センサと、前記小冷蔵室に送風される空気を冷却器により冷却する冷却室と、加熱により前記冷却器を除霜する加熱部と、前記空気を前記冷却室から前記冷蔵室に送風する送風機と、演算制御部と、を具備し、前記演算制御部は、
前記小冷蔵室温度センサで計測した前記小冷蔵室の庫内温度が、第1上限温度以下であり且つ第1下限温度以上となるように、前記冷却器および前記送風機を運転する冷却サイクルを実行し、除霜運転の直前における前記冷却サイクルでは、前記第1下限温度の設定値を引き下げることを特徴とする。本発明の冷蔵庫によれば、効果的に小冷蔵室の低温化および恒温化を達成できる。具体的には、除霜運転の直前における冷却サイクルで下限温度を引き下げることで、除霜運転の直前における小冷蔵室の庫内温度を引き下げることができる。よって、除霜運転により冷蔵室の温度が上昇したとしても、小冷蔵室の庫内温度が過度に上昇することを抑制でき、小冷蔵室に貯蔵された食品の鮮度を保持できる。
【0012】
また、本発明の冷蔵庫では、冷凍室と、前記冷凍室の庫内温度を計測する冷凍室温度センサと、を更に具備し、前記演算制御部は、前記冷凍室温度センサで計測した前記冷凍室の庫内温度が、第2上限温度以下であり且つ第2下限温度以上となるように、前記冷凍室を冷却し、前記除霜運転の直前における前記冷却サイクルでは、前記冷凍室温度センサで計測した前記冷凍室の庫内温度が前記第2下限温度以下であり、且つ、前記小冷蔵室温度センサで計測した前記小冷蔵室の庫内温度が前記第1下限温度以下の場合に、前記除霜運転を実行することを特徴とする。本発明の冷蔵庫によれば、冷凍室が第2下限温度以下であり、且つ、小冷蔵室の両方が第1下限温度以下の場合に、除霜運転を開始するので、小冷蔵室の庫内温度が一定以上に上昇することを抑止できる。
【0013】
また、本発明の冷蔵庫では、前記冷却室と前記小冷蔵室とを繋ぐ送風路に設けられるダンパを、更に具備し、前記演算制御部は、前記除霜運転を実行する前に、前記ダンパを開いた状態で前記送風機を運転することを特徴とする。本発明の冷蔵庫によれば、除霜運転を実行する前に、ダンパを開状態にしたまま送風機を運転することで、小冷蔵室を更に冷却し、除霜運転における小冷蔵室の庫内温度の上昇を抑制できる。
【0014】
また、本発明の冷蔵庫では、前記小冷蔵室を優先的に冷却するモードを選択可能に構成され、前記演算制御部は、前記小冷蔵室を優先的に冷却するモードが選択された場合に、前記除霜運転の直前における前記冷却サイクルにおいて、前記第1下限温度の設定値を引き下げることを特徴とする。本発明の冷蔵庫によれば、ユーザが小冷蔵室を優先的に冷却するモードを選択した場合に、除霜運転の直前における前記冷却サイクルにおいて、下限温度を引き下げることで、ユーザの要求に応じて小冷蔵室を好適に冷却でき、更に、冷却に必要とされるエネルギを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の内部構成を示す側方断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の接続構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の冷却方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の温度変化を示すグラフである。
図5】背景技術に係る冷蔵庫の温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る冷蔵庫10を図面に基づき詳細に説明する。本実施形態の説明では、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0017】
図1は、冷蔵庫10の側方断面図である。
【0018】
冷蔵庫10の本体部を構成する断熱箱体11は、所定形状に曲折加工された鋼板から成る外箱111と、外箱111と離間した内側に配置された合成樹脂板から成る内箱112と、外箱111と内箱112との間に充填された断熱材113とから構成される。
【0019】
断熱箱体11の内部の冷蔵室は、上方から、冷蔵室12および冷凍室13に区画される。冷蔵室12と冷凍室13とは断熱壁17で区画される。また、冷蔵室12の前面開口は断熱扉18で閉鎖され、冷凍室13の前面開口は断熱扉19で閉鎖される。
【0020】
小冷蔵室20は、冷蔵室12の内部下方において、冷蔵室12の他領域と区画された冷蔵室である。小冷蔵室20は、冷蔵室12の他領域よりも低温、例えば、-3℃程度にその内部が冷却されるチルド室である。小冷蔵室20は、上面が開口する合成樹脂製の収納容器21の内部に形成される。収納容器21は、前方に引き出し可能に配置される。小冷蔵室20の内部では、例えば肉または魚である被貯蔵物23が、半冷凍状態で貯蔵される。
【0021】
冷却室115は、冷凍室13の奥側に形成される。冷却室115の内部には、冷却器である蒸発器116が配設される。冷蔵庫10の下端側後方には機械室14が区画形成され、機械室14には圧縮機15が配置される。蒸発器116および圧縮機15は、ここでは図示しない凝縮器および膨張手段と共に、蒸気圧縮冷凍サイクルを形成している。蒸気圧縮冷凍サイクルを運転することで、蒸発器116により冷却室115の内部の空気を冷却し、この空気を各冷蔵室に送風することで、各冷蔵室の庫内温度が所定の冷却温度帯域となる。
【0022】
送風機25は、冷却室115の内部に於いて、蒸発器116の上方側に配置される。送風機25は、軸流送風機または遠心送風機であり、蒸発器116が冷却した蒸発器116の内部の空気を、冷蔵室12および冷凍室13に向けて送風する。
【0023】
加熱部117は、蒸発器116の内部であって、蒸発器116の下方に配置される。加熱部117は、例えば、通電により発熱するヒータである。
【0024】
送風路118は、冷却室115から上方に向かって形成される。送風路118の上方部分には、空気を冷蔵室12に吹き出すための開口である送風口16が形成される。また、蒸発器116により冷却された空気の一部は、冷凍室13にも送風される。更に、蒸発器116により冷却された空気の一部は、送風路118および吹出口30を経由して、小冷蔵室20の室内にも送付される。
【0025】
ダンパ28は送風路118に介装された開閉手段である。ダンパ28を開状態とすることで、冷却室115から冷蔵室12および小冷蔵室20に空気を送風することができる。一方、ダンパ28を閉状態とすることで送風路118が閉鎖される。また、ダンパ28は、冷蔵室12につながる送風路118、および、小冷蔵室20につながる送風路118の両方を個別に開閉することができるマルチダンパである。
【0026】
小冷蔵室温度センサ22は、小冷蔵室20の庫内温度を計測するセンサである。冷凍室温度センサ27は、冷凍室13の庫内温度を計測するセンサである。除霜センサ29は、冷却室115の内部であって蒸発器116の近傍に配置された温度センサである。後述するように、除霜センサ29は、蒸発器116を除霜する除霜行程で用いられる。
【0027】
図2は、冷蔵庫10の接続構成を示すブロック図である。
【0028】
演算制御部26は、CPU、RAMおよびROM等からなり、入力側端子から入力される情報に基づいて所定の演算処理を実行し、この処理により生成された出力信号を出力端子側から出力する。演算制御部26の入力側端子には、小冷蔵室温度センサ22、冷凍室温度センサ27、タイマ24および除霜センサ29が接続される。演算制御部26の出力側端子には、圧縮機15、送風機25および加熱部117が接続される。
【0029】
小冷蔵室温度センサ22は、前述した小冷蔵室20の庫内温度を計測し、この温度を示す情報を演算制御部26に入力する。
【0030】
冷凍室温度センサ27は、前述した冷凍室13の庫内温度を計測し、この温度を示す情報を演算制御部26に入力する。
【0031】
タイマ24は、時刻または時間を計測し、これらを示す情報を演算制御部26に入力する。
【0032】
除霜センサ29は、後述するように、除霜行程において冷却室115の内部温度を計測し、この温度を示す情報を演算制御部26に入力する。
【0033】
圧縮機15は、演算制御部26から出力される情報に基づいて、前述した冷凍サイクルで用いられる冷媒を圧縮する。
【0034】
送風機25は、演算制御部26から出力される情報に基づいて、冷却室115の空気を、冷蔵室12および冷凍室13に送風する。
【0035】
加熱部117は、演算制御部26から出力される情報に基づいて発熱することで、冷却室115の内部を昇温し、蒸発器116に付着した霜を除霜する。
【0036】
前述した構成を有する冷蔵庫10の基本動作を以下に説明する。
【0037】
冷却運転が実行される際には、演算制御部26は、圧縮機15を運転することで蒸発器116により冷却室115の内部の空気を冷却する。更に、演算制御部26は、送風機25を運転することで、冷却室115の内部の空気を送風する。送風された空気は、送風路118および送風口16を経由して冷蔵室12に送風され、これにより冷蔵室12の庫内が冷却される。また、送風された空気の一部は、小冷蔵室20の内部に送風され、これにより小冷蔵室20の庫内も冷却される。更に、送風された空気の一部は、冷凍室13に送風され、これにより冷凍室13の庫内も所定の冷凍温度帯域に冷却される。また、各貯蔵室を冷却した空気は、ここでは図示しない帰還風路を経由し、冷却室115に帰還する。
【0038】
冷却運転は、冷凍室13の庫内温度が所定の温度帯域となるように行われる。具体的には、冷凍室温度センサ27で検知した冷凍室13の庫内温度が上限温度(第2上限温度)以上に達したときに、演算制御部26は、圧縮機15および送風機25を運転し、冷凍室13の庫内を冷却する。その後、冷凍室温度センサ27で検知した冷凍室13の庫内温度が下限温度(第2下限温度)以下に達したら、演算制御部26は、圧縮機15および送風機25を停止し、冷凍室13の冷却を停止する。例えば、冷凍室13の上限温度は-18℃であり、下限温度は-22℃である。ここで、上限温度はON点と称され、下限温度はOFF点とも称される。
【0039】
このような、圧縮機15および送風機25の稼働が開始されて停止し、次に稼働が開始されるまでの行程を、1つの冷凍サイクルと称する。
【0040】
小冷蔵室20も同様に、庫内温度が所定の温度帯域となるように温度制御される。具体的には、小冷蔵室温度センサ22で検知した小冷蔵室20の庫内温度が、上限温度(第1上限温度)以上に達したときに、演算制御部26は、小冷蔵室20の内部に冷却室115からの空気を導入する。また、小冷蔵室20の庫内温度が下限温度(第1下限温度)以下に達したら、演算制御部26は、小冷蔵室20の冷却を停止する。例えば、小冷蔵室20の上限温度は-2℃であり、下限温度は-4℃である。
【0041】
更に、演算制御部26は、冷蔵室12も同様に、庫内温度が所定の温度帯域、例えば、+2℃以上+5℃以下となるように温度制御を行う。
【0042】
除霜運転は、蒸発器116の表面に付着した霜を溶融する運転である。具体的には、蒸気圧縮冷凍サイクルの運転に伴い、蒸発器116の表面に厚い着霜が生じ、そのままの状態で冷却運転を続行すると、霜により伝熱および送風が阻害される。このため、除霜運転では、演算制御部26は、圧縮機15および送風機25を停止し、ダンパ28を閉状態とし、加熱部117を通電して加熱することで、霜を溶融除去する除霜運転を行う。
【0043】
図3のフローチャートを参照して、ユーザが「鮮度保持チルドモード」を選択した際に、小冷蔵室20の内部の庫内温度の上昇を抑止しつつ、除霜運転を行う方法を説明する。
【0044】
ステップS10では、演算制御部26は、通常の冷却運転を実行している。即ち、前述したように、演算制御部26は、冷凍室温度センサ27で検知した冷凍室13の庫内温度が、上限温度および下限温度で規定される温度帯域となるように、圧縮機15および送風機25を運転する。
【0045】
ステップS11では、ここでは図示しない操作パネルをユーザが操作することで、演算制御部26は、鮮度保持チルドモードを実行する。鮮度保持チルドモードでは、後述するように、除霜行程を実行する前に、通常の冷却サイクルよりも、小冷蔵室20の庫内温度を低下させる。よって、除霜行程において小冷蔵室20の庫内温度が0℃以上となることを抑制し、小冷蔵室20に収納された被貯蔵物23の鮮度を良好に保持できる。
【0046】
ステップS12では、演算制御部26は、小冷蔵室20の小冷蔵室温度センサ22の下限温度を、通常運転に対して、例えば、2℃ないし3℃の範囲で引き下げ、小冷蔵室20を全体的に冷却する。
【0047】
ここで、通常運転とは、鮮度保持チルドモード等のモードが選択されていない運転である。通常運転では、消費エネルギを低減して電気代を節約するために、演算制御部26は、小貯蔵室20の庫内温度を、例えば0度程度に冷却される。一方、鮮度保持チルドモードでは、演算制御部26は、当該下限温度を-3℃程度に引き下げる。
【0048】
ステップS13では、演算制御部26は、圧縮機15の運転積算時間が一定時間後に、鮮度保持チルドモードにおける除霜制御に入るようにする。
【0049】
ステップS14では、演算制御部26は、タイマ24により、圧縮機15の運転積算時間が所定時間に達したか否かを確認する。ここで、所定時間とは、蒸発器116における除霜が必要に達する時間であり、例えば88時間である。
【0050】
ステップS14においてYESの場合、即ち、圧縮機15の運転積算時間が所定時間に達した場合、演算制御部26は、ステップS15に移行する。
【0051】
ステップS14においてNOの場合、即ち、圧縮機15の運転積算時間が所定時間に達していない場合、演算制御部26は、ステップS13に戻る。
【0052】
ステップS15では、演算制御部26は、冷凍室温度センサ27で計測した冷凍室13の庫内温度が、冷凍室下限温度(第2下限温度)以下に到達しているか否かを判断する。ここで、冷凍室下限温度は、例えば、-22℃である。
【0053】
ステップS15においてYESの場合、即ち、冷凍室13の庫内温度が、冷凍室下限温度以下に到達していれば、演算制御部26は、ステップS16に移行する。
【0054】
ステップS15においてNOの場合、即ち、冷凍室13の庫内温度が、冷凍室下限温度以下に到達していなければ、演算制御部26は、ステップS13に戻る。
【0055】
ステップS16では、演算制御部26は、除霜運転の直前の冷却サイクルにおいて、小貯蔵室20の庫内を更に冷却する。具体的には、演算制御部26は、冷凍室温度センサ27で計測した小冷蔵室20の庫内温度が、小貯蔵室下限温度(第1下限温度)以下に到達しているか否かを判断する。ここで、小貯蔵室下限温度は、例えば、-4℃であり、通常の鮮度保持チルドモードにおける小貯蔵室下限温度よりも、更に低い温度である。
【0056】
ステップS16においてYESの場合、即ち、小冷蔵室20の庫内温度が、小貯蔵室下限温度以下に到達していれば、小冷蔵室20が充分に冷却されているので、演算制御部26は、ステップS17に移行する。
【0057】
ステップS16においてNOの場合、即ち、小冷蔵室20の庫内温度が、小貯蔵室下限温度以下に到達していない場合、演算制御部26は、ステップS13に戻る。
【0058】
ステップS17では、演算制御部26は、圧縮機15を停止することで、蒸発器116による冷却室115の冷却を停止する。
【0059】
ステップS18では、演算制御部26は、圧縮機15を停止した後、ダンパ28を、小冷蔵室20のみに送風する状態にし、送風機25を所定時間に渡り運転する。このようにすることで、除霜行程に先行し、冷風を小冷蔵室20の庫内のみに供給し、小冷蔵室20の庫内温度を更に低下させることができる。
【0060】
ステップS19では、演算制御部26は、送風機25を停止し、ダンパ28を閉じる。ダンパ28を閉じることで、除霜運転において、加熱部117により温められた暖気が小冷蔵室20および冷蔵室12に進入することを抑制できる。
【0061】
ステップS20では、演算制御部26は、除霜行程を開始する。具体的には、演算制御部26は、加熱部117に通電することで、冷却室115の内部を昇温し、蒸発器116に付着した霜を溶融する。
【0062】
ステップS21では、演算制御部26は、除霜センサ29で検知した温度が、上限温度に到達したか否かを判断する。
【0063】
ステップS21においてYESの場合、即ち、除霜センサ29で検知した温度が、上限温度に到達したら、演算制御部26は、ステップS22に移行する。即ち、加熱部117への通電を停止する。
【0064】
ステップS21においてNOの場合、即ち、除霜センサ29で検知した温度が、上限温度に到達していなければ、演算制御部26は、ステップS20に移行する。
【0065】
ステップS22では、演算制御部26は、数分間程度のセーフティ時間が経過するまで待機した後、圧縮機15を運転し、蒸発器116により冷却室115の内部における空気を冷却する。
【0066】
ステップS23では、演算制御部26は、送風機25を稼働すると共にダンパ28を開状態にする。このようにすることで、蒸発器116により冷却された冷却室115の内部の空気を、冷蔵室12、冷凍室13および小冷蔵室20に送風する。
【0067】
ステップS24では、演算制御部26は、除霜行程を終了し、通常の冷却運転または鮮度保持チルドモードに戻る。
【0068】
以上が、本実施形態にかかる冷蔵庫10による除霜運転に関する説明である。
【0069】
図4のグラフを参照して、上記した冷蔵庫10の運転における小冷蔵室20等の温度変化を説明する。このグラフの横軸は経過時間を示し、縦軸は庫内温度を示している。更にこのグラフでは、冷蔵室12の庫内温度を実線で示し、小冷蔵室20の庫内温度を点線で示し、冷凍室13の庫内温度を一点鎖線で示している。
【0070】
このグラフを参照して、除霜行程の直前の冷却サイクルにおいて、小冷蔵室20の庫内温度は-5℃まで低下している。係る温度低下は、前述したステップS12において下限温度を引き下げることで行われる。
【0071】
また、除霜行程においては、冷凍サイクルが停止しており、更に加熱部117による加熱を行っていることから、冷蔵室12、小冷蔵室20および冷凍室13の庫内温度は徐々に上昇する。しかしながら、小冷蔵室20は除霜行程に先行して庫内温度を引き下げているため、小冷蔵室20の最高温度は-1℃程度となっており、小冷蔵室20の庫内温度が0℃を上回ることは無い。よって、小冷蔵室20に収納された被貯蔵物23が溶融することがなく、その鮮度を良好に保持することができる。
【0072】
本実施形態によれば、以下に記載する主要な効果を奏することができる。
【0073】
即ち、除霜運転の直前における冷却サイクルで下限温度を引き下げることで、除霜運転の直前における小冷蔵室20の庫内温度を引き下げることができる。よって、除霜運転により冷蔵室12の温度が上昇したとしても、小冷蔵室20の庫内温度が0℃以上に上昇することを抑制でき、小冷蔵室20に貯蔵された食品の鮮度を保持できる。例えば、本実施形態によれば、小冷蔵室20の庫内温度を-2℃ないし-4℃の範囲にすることができ、小冷蔵室20の内部において半冷凍状態で貯蔵される被貯蔵物23の鮮度を、一例として、10日間以上に渡り維持することができる。
【0074】
また、冷凍室13が下限温度以下であり、且つ、小冷蔵室20の両方が下限温度以下の場合に、除霜運転を開始する。具体的には、演算制御部26は、霜取り直前に、冷凍室13および小冷蔵室20の庫内温度を下限温度まで低下させた後に圧縮機15を停止し、除霜運転を実行する。よって、除霜運転において、小冷蔵室20の庫内温度が一定以上に上昇することを抑止できる。
【0075】
更に、除霜運転を実行する前に、小冷蔵室20ダンパを開状態にしたまま送風機25を運転することで、小冷蔵室20を更に冷却し、除霜運転における小冷蔵室20の庫内温度の上昇を抑制できる。
【0076】
更に、ユーザが小冷蔵室20を優先的に冷却するモードを選択した場合に、除霜運転の直前における冷却サイクルにおいて、下限温度を引き下げることで、ユーザの要求に応じて小冷蔵室20を好適に冷却でき、更に、冷却に必要とされるエネルギを低減できる。
【0077】
本発明は、前述実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。また、前述した各形態は相互に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 冷蔵庫
11 断熱箱体
111 外箱
112 内箱
113 断熱材
115 冷却室
116 蒸発器
117 加熱部
118 送風路
12 冷蔵室
13 冷凍室
14 機械室
15 圧縮機
16 送風口
17 断熱壁
18 断熱扉
19 断熱扉
20 小冷蔵室
21 収納容器
22 小冷蔵室温度センサ
23 被貯蔵物
24 タイマ
25 送風機
26 演算制御部
27 冷凍室温度センサ
28 ダンパ
29 除霜センサ
図1
図2
図3
図4
図5