(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019956
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】振動抑制部材
(51)【国際特許分類】
F01N 1/00 20060101AFI20230202BHJP
F01N 1/08 20060101ALI20230202BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
F01N1/00 E
F01N1/08 K
G10K11/16 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125054
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正雄
(72)【発明者】
【氏名】市川 幸司
【テーマコード(参考)】
3G004
5D061
【Fターム(参考)】
3G004BA01
3G004CA00
3G004CA13
3G004FA03
3G004GA06
5D061EE02
5D061EE14
5D061EE24
(57)【要約】
【課題】マフラの内容積に大きな影響を与えること無く大R領域の膜振動を有効に減衰させることができる振動抑制部材を提供する。
【解決手段】本発明に係る振動抑制部材は、消音器の内部において壁面に装着される振動抑制部材であって、錯綜体と収容部材と第1固定部材とを備える振動抑制部材である。錯綜体は、互いに錯綜した線状の構成要素の集合体によって構成される部材である。収容部材は、錯綜体を収容する凹部を画定する網状の部材である。第1固定部材は、収容部材の凹部の周縁部が固定される板状の部材である。更に、本発明部材は、収容部材の凹部の周縁部が第1固定部材を介して間接的に又は第1固定部材を介さずに直接的に消音器の内部における壁面に固定されることにより当該壁面に装着される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消音器の内部において壁面に装着される振動抑制部材であって、
互いに錯綜した線状の構成要素の集合体によって構成される部材である錯綜体と、
前記錯綜体を収容する凹部を画定する網状の部材である収容部材と、
前記収容部材の前記凹部の周縁部が固定される板状の部材である第1固定部材と、
を備え、
前記収容部材の前記凹部の前記周縁部が前記第1固定部材を介して間接的に又は前記第1固定部材を介さずに直接的に前記壁面に固定されることにより前記振動抑制部材が前記壁面に装着される、
ことを特徴とする、振動抑制部材。
【請求項2】
請求項1に記載された振動抑制部材であって、
前記錯綜体を収容する複数の前記凹部が前記収容部材によって画定されており、
複数の前記凹部の周縁部が前記第1固定部材に固定されている、
ことを特徴とする、振動抑制部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された振動抑制部材であって、
前記振動抑制部材が前記壁面に装着された状態において前記収容部材と前記壁面との間において前記錯綜体が圧縮されている、
ことを特徴とする、振動抑制部材。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載された振動抑制部材であって、
前記第1固定部材とは別個の板状の部材である第2固定部材を更に備え、
前記収容部材の前記凹部の前記周縁部が前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に挟持されるように前記収容部材の前記凹部の前記周縁部が前記第2固定部材にも固定されており、
前記収容部材の前記凹部の前記周縁部が前記第1固定部材又は前記第2固定部材を介して間接的に前記壁面に固定されることにより前記振動抑制部材が前記壁面に装着される、
ことを特徴とする、振動抑制部材。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載された振動抑制部材であって、
前記収容部材が複数の網状の部材の積層体によって構成されている、
ことを特徴とする、振動抑制部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動抑制部材に関する。より具体的には、本発明は、マフラの内容積に大きな影響を与えること無く大R領域の膜振動を有効に減衰させることができる振動抑制部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される排気消音装置(マフラ)においては、本来の機能である排気音の低減のみならず、マフラを構成する部材の振動に起因する異音の低減をも図るべく、かねてより様々な対策が講じられている。例えば、特許文献1(実開平5-14517号公報)には、ステー部の一端にマス部が形成された振動吸収体のステー部の他端を自動車の消音器のエンドプレートに固定することによりエンドプレートの振動を低減する技術が開示されている。これによれば、エンドプレートの振動による異音の発生を低減することができるとされている。
【0003】
ところで、当該技術分野においては、搭載スペース面からの要求(例えば、乗車スペースの拡大に伴う低床化等)によりマフラの横断面を非円形化することによる薄型化が進んでいる。このような非円形の横断面の形状の具体例としては、例えば楕円形を挙げることができる。しかしながら、平面上の2つの定点(焦点)からの距離の和が一定となるような点の集合である真楕円形の横断面を有する筒状部材をマフラの外殻(アウターシェル)として工業的に量産することは困難であるため、疑似楕円形の横断面を有する筒状部材が多用されている。
【0004】
疑似楕円形とは、例えば
図14に示すように、異なる曲率半径を有する大小2組の互いに対向する曲線(2つの曲線C1及び2つの曲線C2)からなる疑似的な楕円形である。従って、厳密には、疑似楕円形には4箇所の変曲点(隣接する曲線が繋がる点)が存在する(図中の黒丸を参照)。尚、図中に示す黒丸は、横断面を構成する複数の曲線が隣接する他の曲線と繋がる点(変曲点)の位置を判り易く示すことを目的として描かれているのであって、黒丸の形状に対応する凸部及び/又は隆起部等が横断面に存在することを意味する訳ではない。本明細書において後に参照する図面についても同様である。
【0005】
図14に例示したような疑似楕円形の横断面を有する筒状部材においては、より大きい曲率半径を有し且つより長い曲線C2に対応する領域は、より小さい曲率半径を有し且つより短い曲線C1に対応する領域に比べて、面剛性がより低く、膜振動をより生じ易い。その結果、疑似楕円形の横断面を有する筒状部材においては、真円形の横断面を有する筒状部材に比べて、放射音(マフラ内の排気の振動に起因する膜振動によって放射される異音)が増大する傾向がある。昨今では、マフラの薄型化が更に進行しており、これに伴って筒状部材の疑似楕円形の横断面における短径と長径との差が増大しているため、上記傾向が益々顕著になっている。
【0006】
より大きい曲率半径を有し且つより長い曲線C2に対応する領域(以降、「大R領域」と称呼される場合がある。)の面剛性を増大させるための方策としては、例えば、大R領域に一体的なリブを形成したり、別体の補強部材を大R領域に取り付けたりすること等が考えられる。しかしながら、一体的なリブを形成する場合は大R領域の成形性(曲げ加工性)の悪化が、別体の補強部材を取り付ける場合は加工性の悪化に加え重量及びコストの増大が、それぞれ懸念される。
【0007】
また、上記のような方策によって大R領域の面剛性を増大させても、大R領域の膜振動そのものが解消される訳ではなく、大R領域の共振周波数がより高い周波数へと移行するので、当該周波数に対応する放射音が依然として発生する。更に、アウターシェルとしての筒状部材の内部にリブ及び/又は補強部材を設けることにより、マフラの内容積が減少する。即ち、マフラにおける消音空間が減少するため、マフラとしての消音性能の悪化が懸念される。前述したようにマフラの薄型化が益々進行している現状においてはマフラの内容積(=消音空間)が既に減少している。従って、大R領域の膜振動を低減するためとはいえ、マフラの内容積の更なる減少を招く方策は極力避けたいのが実情である。
【0008】
そこで、特許文献2(特許第6416944号公報)には、1つ以上の貫通孔を有し且つ椀状の凹みを画定する部材である抑制部材の開口部の周縁をマフラの外殻の大R領域の内面に取り付けることによりマフラからの騒音を抑制する技術が開示されている。これによれば、抑制部材を別体の補強部材として機能させることにより大R領域の面剛性を増大させて膜振動を低減させると共に大R領域の内面及び抑制部材によって画定される空間を容積部とし且つ貫通孔を首管とするヘルムホルツレゾネータを形成することにより特定の周波数の放射音を減衰させることができるとされている。
【0009】
しかしながら、この場合もまた、上述したように、大R領域の面剛性の増大により共振周波数の高周波数域への移行及び放射音の若干の減衰は起こるが、放射音そのものの発生が抑止される訳ではない。また、ヘルムホルツレゾネータとしての共鳴により特定の周波数(容積部の容量が小さいほど高い周波数)を有する放射音は減衰されるものの、全ての周波数域に亘って放射音が減衰される訳ではない。
【0010】
従って、減衰されるべき放射音が特定の周波数域に限定される場合は上記従来技術が有効であるが、減衰されるべき放射音が特定の周波数域に限定されない場合は放射音を有効に減衰させることができない。また、前者の場合、ヘルムホルツレゾネータとしての構成は減衰されるべき放射音の周波数に合わせてチューニングされる。具体的には、ヘルムホルツレゾネータの容積部及び首管の構成(例えば、容積、断面積及び長さ等)は、減衰されるべき放射音の周波数にヘルムホルツレゾネータの共振周波数(固有振動数)が合うように設計される。即ち、この場合、補強部材として要求される構成とは無関係に抑制部材の構成が定められる。現実には、ヘルムホルツレゾネータとして要求される構成と補強部材として要求される構成とは寧ろ背反する場合が多い。
【0011】
以上のように、当該技術分野においては、マフラの内容積に大きな影響を与えること無く大R領域の膜振動を有効に減衰させることができる振動抑制部材が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実開平5-14517号公報
【特許文献2】特許第6416944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述したように、当該技術分野においては、マフラの内容積に大きな影響を与えること無く大R領域の膜振動を有効に減衰させることができる振動抑制部材が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明者は、鋭意研究の結果、互いに錯綜した線状の構成要素の集合体である錯綜体を網状の部材によって消音器(マフラ)の内部の壁面に装着することにより、消音器の内容積に大きな影響を与えること無く大R領域の膜振動を有効に減衰させることができることを見出した。
【0015】
具体的には、本発明に係る振動抑制部材(以降、「本発明部材」と称呼される場合がある。)は、消音器の内部において壁面に装着される振動抑制部材であって、錯綜体と収容部材と第1固定部材とを備える振動抑制部材である。錯綜体は、互いに錯綜した線状の構成要素の集合体によって構成される部材である。収容部材は、錯綜体を収容する凹部を画定する網状の部材である。第1固定部材は、収容部材の凹部の周縁部が固定される板状の部材である。更に、本発明部材は、収容部材の凹部の周縁部が第1固定部材を介して間接的に又は第1固定部材を介さずに直接的に消音器の内部における壁面に固定されることにより当該壁面に装着される。
【発明の効果】
【0016】
本発明部材においては、第1固定部材が消音器の内部において壁面に固定される。その結果、当該壁面の面剛性が増大し、膜振動が低減される。また、本発明部材は、錯綜体と収容部材と第1固定部材とを備える。その結果、これらの構成要素を含む本発明部材が全体としてダイナミックダンパとして機能し、消音器からの放射音が低減される。従って、消音器を構成する壁面の大R領域に本発明部材を装着することにより、消音器の内容積に大きな影響を与えること無く大R領域の膜振動を有効に減衰させることができる。
【0017】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施態様に係る振動抑制部材(第1部材)の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図2】(a)は
図1に例示する第1部材を凹部の開口部側から観察した場合における模式的な分解斜視図であり、(b)は
図1に例示する第1部材の模式的な断面図である。
【
図3】第1部材が消音器の内部において壁面に装着された状態を例示する模式的な斜視図である。
【
図4】(a)は消音器の側板の内面に装着された第1部材の模式的な頂面図及び断面図であり、(b)は消音器の隔壁の表面に装着された第1部材の模式的な頂面図及び断面図である。
【
図5】(a)は板状の形状を有する第1固定部材を備える第1部材を凹部の開口部側から観察した場合における模式的な分解斜視図であり、(b)は当該第1部材の模式的な断面図である。
【
図6】(a)は環状の形状を有する第1固定部材を凹部の外面側の周縁部に備える第1部材を凹部の開口部とは反対側から観察した場合における模式的な斜視図であり、
図6の(b)は当該第1部材の凹部を通る平面による模式的な断面図である。
【
図7】空気減衰力(a)及び振動摩擦減衰力(b)の発現原理を説明するための模式図である。
【
図8】本発明の第2実施態様に係る振動抑制部材(第2部材)の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
【
図9】本発明の第4実施態様に係る振動抑制部材(第4部材)の構成の2つの例を示す模式的な断面図である。
【
図10】第4部材の構成の更に2つの例を示す模式的な断面図である。
【
図11】本発明の実施例に係る振動抑制部材(実施例部材1及び2)の外観を示す写真である。
【
図12】本発明の実施例に係る振動抑制部材(実施例部材1)が装着された消音器についてのオーバーオール分析の結果を示すグラフである。
【
図13】実施例部材1が装着された消音器についての1/3オクターブ分析の結果を示すグラフである。
【
図14】従来から使用される筒状部材(外殻)が有する異なる曲率半径を有する大小2組の互いに対向する曲線からなる疑似的な楕円形である疑似楕円形の横断面の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係る振動抑制部材(以降、「第1部材」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0020】
〈構成〉
第1部材は、消音器の内部において壁面に装着される振動抑制部材であって、錯綜体と収容部材と第1固定部材とを備える。第1部材が装着される壁面は、消音器からの放射音の低減に寄与することが可能である限り特に限定されないが、典型的には、例えば消音器の外殻(アウターシェル)の内面、側板(サイドプレート)若しくは端板(エンドプレート)の内面又は隔壁(インナープレート)の表面等、消音器の内部に存在する何等かの壁面に装着される。特に、このような面における膜振動を低減する観点からは、より大きい曲率半径を有し且つより長い曲線に対応する領域(大R領域)に第1部材を装着することが好ましい。
【0021】
錯綜体は、互いに錯綜した線状の構成要素の集合体によって構成される部材である。錯綜体を構成する線状の構成要素の材質は、高温の排気が高い流速にて流れる消音器の内部環境に耐え得る限り特に限定されない。錯綜体を構成する「互いに錯綜した線状の構成要素の集合体」の具体例としては、例えばグラスウール等の無機繊維からなる集合体並びにスチールウール及びステンレスウール等の金属繊維からなる集合体等を挙げることができる。
【0022】
収容部材は、錯綜体を収容する凹部を画定する網状の部材である。収容部材を構成する網状の部材の材質もまた、高温の排気が高い流速にて流れる消音器の内部環境に耐え得る限り特に限定されない。収容部材を構成する網状の部材の具体例としては、例えばスチールメッシュ及びステンレスメッシュ等の金属製の網状部材等を挙げることができる。また、収容部材によって画定される凹部は、その内部に錯綜体の少なくとも一部を収容することが可能な形状及び容積を有する。収容部材によって画定される凹部は、その内部に錯綜体の全体を収容することが可能な形状及び容積を有していてもよく、或いは、その内部に錯綜体の一部のみを収容することが可能な形状及び容積を有していてもよい。後者の場合は、第1固定部材(若しくは後述する第2固定部材)に凹部の周縁部を固定する過程又は消音器の内部における壁面に凹部の周縁部を固定する過程において、固定部材又は壁面と収容部材(の凹部の内面)との間の空間において錯綜体が圧縮されて錯綜体の全体が当該空間に収容される(詳しくは後述する)。
【0023】
第1固定部材は、収容部材の凹部の周縁部が固定される板状の部材である。第1固定部材を構成する板状の部材の材質もまた、高温の排気が高い流速にて流れる消音器の内部環境に耐え得る限り特に限定されない。第1固定部材を構成する板状の部材の具体例としては、例えば鋼板及びステンレス鋼板等の金属製の板状部材等を挙げることができる。また、上記のように収容部材の凹部の周縁部と第1固定部材とが固定されるが、収容部材の凹部の内面側又は外面側の何れの周縁部に第1固定部材が固定されてもよい。
【0024】
収容部材の凹部の内面側(開口部側)の周縁部に第1固定部材が固定される場合、第1固定部材は周縁部に対向する領域に存在する面と凹部に対向する領域に形成された貫通孔とを有する環状の形状を有していてもよく、或いは、少なくとも周縁部の外周によって囲まれる領域と同じか又は当該領域よりも広い面を有する板状の形状を有していてもよい。後者の場合、凹部の開口部は第1固定部材によって塞がれることとなる。一方、収容部材の凹部の外面側の周縁部に第1固定部材が固定される場合、第1固定部材は周縁部に対向する領域に存在する面と凹部に対向する領域に形成された貫通孔とを有する環状の形状を有する。
【0025】
収容部材の凹部の周縁部を第1固定部材に固定する手段もまた、高温の排気が高い流速にて流れる消音器の内部環境に耐え得る限り特に限定されない。斯かる手段の具体例としては、例えばスポット溶接等の溶接並びにネジ及びリベット等の締結部材による締結等を挙げることができる。好ましくは、収容部材の凹部の周縁部は第1固定部材に溶接によって固定される。
【0026】
更に、第1部材は、収容部材の凹部の周縁部が第1固定部材を介して間接的に又は第1固定部材を介さずに直接的に消音器の内部における壁面に固定されることにより当該壁面に装着される。上述したように、収容部材の凹部の内面側又は外面側の何れの周縁部に第1固定部材が固定されてもよい。前者の場合、収容部材の凹部の周縁部が第1固定部材を介して間接的に消音器の内部における壁面に固定されることにより、第1部材が当該壁面に装着される。一方、後者の場合、収容部材の凹部の周縁部が第1固定部材を介さずに直接的に消音器の内部における壁面に固定されることにより、第1部材が当該壁面に装着される。
【0027】
消音器の内部における壁面に第1部材を固定する手段もまた、高温の排気が高い流速にて流れる消音器の内部環境に耐え得る限り特に限定されない。斯かる手段の具体例としては、例えばスポット溶接等の溶接並びにネジ及びリベット等の締結部材による締結等を挙げることができる。
【0028】
図1は、本発明の第1実施態様に係る振動抑制部材(第1部材)の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
図2の(a)は
図1に例示する第1部材を凹部の開口部側から観察した場合における模式的な分解斜視図であり、
図2の(b)は
図1に例示する第1部材の凹部を通る平面による模式的な断面図である。
【0029】
図1及び
図2に例示する第1部材101aは、消音器の内部において壁面210に装着される振動抑制部材であって、錯綜体110と収容部材120と第1固定部材130とを備える。錯綜体110は、互いに錯綜した線状の構成要素の集合体によって構成される部材であり、この例においてはグラスウールによって構成されている。尚、
図2に例示する錯綜体110は複数(5つ)の塊に分けて描かれているが、収容部材120によって画定される凹部121に収容することが可能である限り、錯綜体110は必ずしも複数の塊に分けられている必要は無く、1つの塊であってもよい。
【0030】
収容部材120は、錯綜体110を収容する凹部を画定する網状の部材であり、この例においてはステンレス鋼線によって構成されたワイヤメッシュである。尚、
図1及び
図2に例示する収容部材120の周縁部122には網目が描かれていないが、凹部121及び周縁部122を含む収容部材120の全体がワイヤメッシュによって構成されている。第1固定部材130は、収容部材120の凹部121の周縁部122が固定される板状の部材であり、この例においてはステンレス鋼板によって構成されている。
【0031】
また、この例においては、第1固定部材130は、収容部材120の凹部121の内面側(開口部側)の周縁部122にスポット溶接によって固定されており(図中の×印を参照)、周縁部122に対向する領域に存在する面131と凹部121に対向する領域に形成された貫通孔132とを有する環状の形状を有する。従って、収容部材120の凹部121の周縁部122を全周に亘って第1固定部材130に固定した後であっても、第1固定部材130の貫通孔132を通して錯綜体110を凹部121に収容することができる。
【0032】
更に、
図2の(b)に例示するように、収容部材120の凹部121の周縁部122が第1固定部材130を介して間接的に消音器の内部において壁面210にスポット溶接によって固定される(図中の×印を参照)。これにより、振動抑制部材としての第1部材101aが消音器の内部において壁面210に装着される。尚、消音器の内部の壁面210に第1部材101aを装着するまでのハンドリング性の向上等を目的として、錯綜体110が凹部121に収容されている第1部材101aの第1固定部材130の貫通孔132を例えばフィルム等のカバーによって塞いでおき、壁面210への装着の直前に当該カバーを取り除くようにしてもよい。
【0033】
図3は、第1部材が消音器の内部において壁面に装着された状態を例示する模式的な斜視図である。但し、消音器200の内部が見えるように、消音器200の外殻(アウターシェル)220を構成する側板(サイドプレート)221及び一方の端板(エンドプレート)222が透明なものとして描かれている。
図4の(a)は消音器の側板の内面に装着された第1部材の模式的な頂面図(右側)及び凹部を通る平面A-Aによる断面図(左側)であり、
図4の(b)は消音器の隔壁の表面に装着された第1部材の模式的な頂面図(右側)及び凹部を通る平面B-Bによる断面図(左側)である。
図3及び
図4に示す例においては、消音器200の側板221の内面及び隔壁(インナープレート)230の表面に第1部材101aがそれぞれ装着されている。
【0034】
尚、上記においては、環状の形状を有する第1固定部材130の面131が収容部材120の凹部121の内面側(開口部側)の周縁部122に固定されている態様について説明した。しかしながら、前述したように、少なくとも周縁部122の外周によって囲まれる領域と同じか又は当該領域よりも広い面を有する板状の形状を有する第1固定部材130を収容部材120の凹部121の内面側の周縁部122に固定してもよい。
【0035】
図5の(a)は上記のような板状の形状を有する第1固定部材を備える第1部材を凹部の開口部側から観察した場合における模式的な分解斜視図であり、
図5の(b)は当該第1部材の凹部を通る平面による模式的な断面図である。尚、
図5の(a)においては、板状の形状を有する第1固定部材130によって覆われていて観察されない筈の錯綜体110及び収容部材120の一部が点線によって描かれている。
【0036】
図5に例示するように、第1部材101bにおいては、第1固定部材130によって凹部121の開口部が塞がれる。従って、第1部材101bにおいては、環状の形状を有する第1固定部材130を備える第1部材101aとは異なり、収容部材120の凹部121の周縁部122を全周に亘って第1固定部材130に固定した後に錯綜体110を凹部121に収容することができない。そこで、第1部材101bにおいては、収容部材120の周縁部122に第1固定部材130に固定されていない部分を残しておき、当該部分を通して、錯綜体110を凹部121の内部に収容した後に、当該部分を第1固定部材130に固定することが好ましい。また、必要とされる量の錯綜体110が1つの塊となっていると上記部分を通して凹部121に収容することが困難である場合は、必要とされる量の錯綜体110を複数の塊に分けて、上記部分を通して凹部121に収容してもよい。
【0037】
一方、前述したように、周縁部に対向する領域に存在する面と凹部に対向する領域に形成された貫通孔とを有する環状の形状を有する第1固定部材を収容部材の凹部の外面側の周縁部に固定してもよい。
【0038】
図6の(a)は上記のような環状の形状を有する第1固定部材を凹部の外面側の周縁部に備える第1部材を凹部の開口部とは反対側から観察した場合における模式的な斜視図であり、
図6の(b)は当該第1部材の凹部を通る平面による模式的な断面図である。このような構成を有する第1部材101cは、
図6の(b)に例示するように、消音器の内部の壁面210に装着された状態において、収容部材120の周縁部が第1固定部材130と壁面210との間に挟持される。この場合もまた、消音器の内部の壁面210に第1部材101cを装着するまでのハンドリング性の向上等を目的として、錯綜体110が凹部121に収容されている第1部材101cの収容部材120の凹部121の開口部を例えばフィルム等のカバーによって塞いでおき、壁面210への装着の直前に当該カバーを取り除くようにしてもよい。
【0039】
〈効果〉
第1部材においては、収容部材を介して間接的に或いは収容部材を介さずに直接的に第1固定部材が消音器の内部の壁面に固定される。その結果、当該壁面の面剛性が増大し、膜振動が低減される。また、第1部材は、錯綜体と収容部材と第1固定部材とを備える。これらの構成要素は、ダイナミックダンパにおける質量体(マス)及び/又は弾性体(バネ)としてそれぞれ機能する。従って、これらの構成要素を含む第1部材が全体としてダイナミックダンパとして機能し、消音器からの放射音が低減される。
【0040】
第1部材は、上述したような主たる効果に加えて、空気減衰力及び振動摩擦減衰力という付随的な効果をも発揮することができる。空気減衰力とは、
図7の(a)に示すように、錯綜体110を構成する互いに錯綜した線状の構成要素の間及び/又は収容部材120を構成する網状の部材の間を排気が通過する際の通気抵抗に起因する排気の流動エネルギーの減衰を意味する(図中の実線の両矢印を参照)。現実には、消音器の内部において錯綜体110を構成する互いに錯綜した線状の構成要素の間及び収容部材120を構成する網状の部材の間に流入する排気は少なく、空気減衰力による排気音の減衰効果は小さいが、僅かながらも排気音の減衰に寄与しているものと考えられる。
【0041】
振動摩擦減衰力とは、
図7の(b)に示すように、消音器の内部において伝搬する排気の脈動エネルギー(エンジンの燃焼室における燃料の爆発に起因する粗密エネルギー)による錯綜体110及び収容部材120の構成要素の間における摩擦による排気の脈動エネルギーの減衰を意味する。上述した排気の流動エネルギーとは異なり、排気の脈動エネルギーは錯綜体110及び収容部材120に伝搬し、錯綜体110及び収容部材120を揺さぶる。その結果、錯綜体110を構成する互いに錯綜した線状の構成要素同士の摩擦、収容部材120を構成する網状の部材同士の摩擦、及び/又は錯綜体110の構成要素と収容部材120の構成要素との摩擦が生じ、排気の脈動エネルギーが減衰される。従って、空気減衰力に比べて、振動摩擦減衰力による排気音の減衰効果は大きい。
【0042】
更に、
図3及び
図4に例示したように、消音器の内部空間において第1部材が占める割合は小さい。また、錯綜体、収容部材及び第1固定部材は何れも容易に入手可能な部材である。このような容易に入手可能な部材によって構成される単純な構造により、補強部材としての壁面の面剛性の増大及びダイナミックダンパとしての振動の減衰という効果を発揮することができる。その結果、消音器を構成する壁面の大R領域に第1部材を装着することにより、消音器の内容積に大きな影響を与えること無く大R領域の膜振動を有効に減衰させることができる。また、上述した付随的な効果としての振動摩擦減衰力による排気の脈動エネルギーの減衰により、排気音をも減衰させることができる。
【0043】
《第2実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第2実施形態に係る振動抑制部材(以降、「第2部材」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0044】
〈構成〉
第2部材は、上述した第1部材であって、錯綜体を収容する複数の凹部が収容部材によって画定されており、複数の凹部の周縁部が第1固定部材に固定されている、ことを特徴とする、振動抑制部材である。
【0045】
図8は、第2部材の構成の一例を示す模式的な斜視図である。
図8に例示する第2部材102においては、図示しない錯綜体を収容する2つの凹部121a及び121bが収容部材120によって画定されている。尚、
図8は凹部121a及び121bの開口部とは反対側から観察した場合における斜視図であるので、凹部121a及び121bの外観が収容部材120を構成する網状の部材によって構成される凸部として描かれている。
【0046】
更に、第2部材102においては、図中の×印によって示されているように、2つの凹部121a及び121bの周縁部が何れも第1固定部材130にスポット溶接によって固定されている。但し、2つの凹部121a及び121bの間に挟まれている部分については、手前側の凹部121aの背後に隠れているため、スポット溶接によって固定されている箇所を示す×印は描かれていない。尚、第2部材102における収容部材120と第1固定部材130との位置関係(凹部121a及び121bの内面側又は外面側の何れの周縁部122に第1固定部材130が固定されているか)及び当該位置関係に応じた第1固定部材の構成(環状又は板状の何れの形状を有するか)については、上述した第1部材と同様である。
【0047】
〈効果〉
以上のように、第2部材においては、錯綜体を収容する複数の凹部が収容部材によって画定されている。これにより、錯綜体及び収容部材と排気との接触面積が増大する。その結果、第1部材について上述した種々の効果がより有効に達成される。
【0048】
《第3実施形態》
以下、本発明の第3実施形態に係る振動抑制部材(以降、「第3部材」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0049】
〈構成〉
第3部材は、上述した第1部材又は第2部材であって、消音器の内部における壁面に第3部材が装着された状態において収容部材と壁面との間において錯綜体が圧縮されている、ことを特徴とする、振動抑制部材である。
【0050】
前述したように、収容部材によって画定される凹部は、その内部に錯綜体の全体を収容することが可能な形状及び容積を有していてもよく、或いは、その内部に錯綜体の一部のみを収容することが可能な形状及び容積を有していてもよい。後者の場合は、第1固定部材(若しくは後述する第2固定部材)に凹部の周縁部を固定する過程又は消音器の内部における壁面に凹部の周縁部を固定する過程において、固定部材又は壁面と収容部材(の凹部の内面)との間の空間において錯綜体が圧縮されて錯綜体の全体が当該空間に収容される。
【0051】
圧縮されて収容部材の凹部に収容された錯綜体の剛性は圧縮されていない錯綜体の剛性よりも高く、圧縮された錯綜体を収容する凹部を画定する収容部材の剛性もまた圧縮されていない錯綜体を収容する凹部を画定する収容部材の剛性よりも高い。従って、消音器の内部における壁面に第3部材が装着された状態において収容部材と壁面との間において錯綜体が圧縮されていることにより、第3部材全体としての剛性も高めることができる。
【0052】
一方、上述した第1部材に関する説明から明らかであるように、本発明に係る振動抑制部材(本発明部材)によって達成される補強部材としての壁面の面剛性の増大、ダイナミックダンパとしての振動の減衰及び振動摩擦減衰力による排気の脈動エネルギーの減衰という効果は、本発明部材を構成する各部材の機械的性質(例えば、剛性及び弾性率等)によって影響される。
【0053】
従って、消音器の内部における壁面に第3部材が装着された状態において収容部材と壁面との間(即ち、凹部)に収容されている錯綜体の圧縮率を適切に設定することにより、錯綜体、収容部材及び第3部材の全体の剛性を適切に高めて、第3部材による放射音の低減効果を更に高めることができる。尚、錯綜体の具体的な圧縮率は、低減しようとする放射音の周波数及び/又は強度並びに第3部材が装着される消音器の壁面の機械的性質等に応じて、例えば事前の予備実験及び/又はコンピュータによるシミュレーション等により適宜定めることができる。
【0054】
〈効果〉
以上のように、第3部材においては、消音器の内部における壁面に第3部材が装着された状態において収容部材と壁面との間において錯綜体が圧縮されている。これにより、錯綜体、収容部材及び第3部材の全体の剛性を適切に高めて、第3部材による放射音の低減効果を更に高めることができる。
【0055】
《第4実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第4実施形態に係る振動抑制部材(以降、「第4部材」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0056】
〈構成〉
第4部材は、上述した第1部材乃至第3部材の何れかであって、第1固定部材とは別個の板状の部材である第2固定部材を更に備える、振動抑制部材である。第2固定部材を構成する板状の部材の材質もまた、第1固定部材を構成する板状の部材の材質と同様に、高温の排気が高い流速にて流れる消音器の内部環境に耐え得る限り特に限定されない。第2固定部材を構成する板状の部材の具体例としては、例えば鋼板及びステンレス鋼板等の金属製の板状部材等を挙げることができる。
【0057】
更に、収容部材の凹部の周縁部が第1固定部材と第2固定部材との間に挟持されるように収容部材の凹部の周縁部が第2固定部材にも固定されている。収容部材の凹部の周縁部を第2固定部材に固定する手段もまた、高温の排気が高い流速にて流れる消音器の内部環境に耐え得る限り特に限定されない。斯かる手段の具体例としては、例えばスポット溶接等の溶接並びにネジ及びリベット等の締結部材による締結等を挙げることができる。好ましくは、収容部材の凹部の周縁部は第2固定部材に溶接によって固定される。加えて、収容部材の凹部の周縁部が第1固定部材又は第2固定部材を介して間接的に消音器の内部における壁面に固定されることにより第4部材が当該壁面に装着される。
【0058】
図9は、本発明の第4実施態様に係る振動抑制部材(第4部材)の構成の2つの例を示す模式的な断面図である。
図9の(a)に例示する第4部材104aは、収容部材120を挟んで第1固定部材130の反対側に収容部材120の周縁部に対向する領域に存在する面と凹部に対向する領域に形成された貫通孔とを有する環状の形状を有する第2固定部材140が固定されている点を除き、
図2の(b)に例示した第1部材101aと同様の構成を有する。即ち、第4部材104aにおいては、第1部材101aと同様に、収容部材120の凹部121の内面側の周縁部122に環状の形状を有する第1固定部材130が固定されており、収容部材120の凹部121の外面側の周縁部122に環状の形状を有する第2固定部材140が固定されている。
【0059】
図9の(b)に例示する第4部材104bは、収容部材120を挟んで第1固定部材130の反対側に収容部材120の周縁部に対向する領域に存在する面と凹部に対向する領域に形成された貫通孔とを有する環状の形状を有する第2固定部材140が固定されている点を除き、
図5の(b)に例示した第1部材101bと同様の構成を有する。即ち、第4部材104bにおいては、第1部材101bと同様に、収容部材120の凹部121の内面側の周縁部122に凹部121の開口部を覆う板状の形状を有する第1固定部材130が固定されており、収容部材120の凹部121の外面側の周縁部122に環状の形状を有する第2固定部材140が固定されている。
【0060】
図10は、第4部材の構成の更に2つの例を示す模式的な断面図である。
図10の(a)及び(b)にそれぞれ例示する第4部材104c及び104dは、第1固定部材130と第2固定部材140の配置が入れ替わっている点を除き、
図9の(a)及び(b)にそれぞれ例示した第4部材104a及び104bと同様の構成を有する。
図9及び
図10に例示した第4部材104a乃至104dの何れにおいても、収容部材120の凹部の周縁部が第1固定部材130と第2固定部材140との間に挟持されるように収容部材の凹部の周縁部が第1固定部材130及び第2固定部材140の両方に固定されている。従って、第4部材104a乃至104dの何れにおいても、収容部材120の凹部の周縁部が第1固定部材130又は第2固定部材140を介して間接的に消音器の内部における壁面210に固定されることにより、第4部材104a乃至104dが壁面210に装着される。
【0061】
〈効果〉
以上のように、第4部材においては、第1固定部材とは別個の板状の部材である第2固定部材と第1固定部材との間に収容部材の凹部の周縁部が挟持されるように収容部材の凹部の周縁部が第1固定部材及び第2固定部材に固定されている。従って、第2固定部材を備えない場合に比べて、収容部材をより確実に固定・保持することができる。その結果、上述した第1部材乃至第3部材によって達成される効果を更に高めることができる。
【0062】
《第5実施形態》
以下、本発明の第5実施形態に係る振動抑制部材(以降、「第5部材」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0063】
〈構成〉
第5部材は、上述した第1部材乃至第4部材の何れかであって、収容部材が複数の網状の部材の積層体によって構成されている、ことを特徴とする、振動抑制部材である。
【0064】
上記積層体を構成する複数の網状の部材は、全て同じ構成を有する部材であってもよく、或いは、例えば網状の部材を構成する線材の太さ及び/又は目開き等が異なる複数種の部材の組み合わせであってもよい。
【0065】
〈効果〉
第5部材においては、上記のように、複数の網状の部材の積層体によって収容部材が構成されている。これにより、収容部材の機械的性質(例えば、剛性及び弾性率等)が高まるので、収容部材そのものによる振動の減衰効果が高まる。加えて、前述した第3部材のように消音器の内部における壁面に第3部材が装着された状態において収容部材と壁面との間において錯綜体を圧縮する場合においては、収容部材による錯綜体の押圧力が高まる。その結果、所望の圧縮率にて錯綜体を圧縮することがより容易となり、錯綜体、収容部材及び第5部材の全体の剛性を適切に高めて、第5部材による放射音の低減効果を更に高めることができる。
【実施例0066】
以上のように説明してきた第1部材乃至第5部材を始めとする本発明の様々な実施形態に係る振動抑制部材(本発明部材)の実施例につき、以下に図面を参照しながら説明する。但し、以下に説明する実施例は単なる例示に過ぎない。
【0067】
図11は、本発明の実施例に係る振動抑制部材(以降、「実施例部材」と称呼される場合がある。)の外観を示す写真である。
図11の(a)及び(b)の左側に例示する実施例部材(実施例部材1)は、
図5に例示した第1部材101bと同様の構成を有する。一方、
図11の(b)の右側に例示する実施例部材(実施例部材2)は、
図9の(b)に例示した第4部材104bと同様の構成を有する。
【0068】
図12及び
図13は、
図3及び
図4に例示したように実施例部材1を消音器に装着し、当該消音器に接続されたエンジンを作動させて、当該消音器の近傍において放射音を測定した結果を示すグラフである。
図12はオーバーオール分析の結果を、
図13は1/3オクターブ分析の結果を、それぞれ示す。
【0069】
図12のグラフに示すように、本発明に係る振動抑制部材(実施例部材1)が装着された消音器(実線)は、加速時及び減速時の何れにおいても、エンジン回転数の全範囲に亘って、従来技術に係る消音器(破線)に比べて、より低い騒音レベルを示した。また、
図13に示すように、実施例部材1が装着された消音器(実線)は、3200rpmのエンジン回転数での加速時において、1/3オクターブ中心周波数のほぼ全域に亘って、従来技術に係る消音器(破線)に比べて、より低い音圧レベルを示した。
【0070】
図示しないが、第2固定部材を更に備える実施例部材2についても同様の結果が得られた。
【0071】
以上の結果から明らかであるように、本発明に係る振動抑制部材を消音器に装着することにより、当該消音器からの放射音を有効に減衰させることができる。
【0072】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び実施例につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び実施例に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。