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特開2023-19960蓄電池システム、及び蓄電池保守支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019960
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】蓄電池システム、及び蓄電池保守支援方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/633 20140101AFI20230202BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230202BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230202BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230202BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20230202BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20230202BHJP
【FI】
H01M10/633
H01M10/48 301
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
H01M10/6551
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125061
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米元 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】坂口 穂南
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 健志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智晃
(72)【発明者】
【氏名】円子 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】内藤 駿弥
【テーマコード(参考)】
5H030
5H031
【Fターム(参考)】
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK01
(57)【要約】
【課題】膨大な事前評価データを取得することなしに冷却能力低下の判定が可能な蓄電池システムを提供する。
【解決手段】移動体用に冷却能力を備えた蓄電池の状態を推定して保守を支援可能な蓄電池システムであって、蓄電池に付設された温度センサで日別に最高到達温度Tmaxを検出して記録する電池温度記録部と、最高到達温度Tmaxが検出された時刻から当日の運行開始時刻まで遡った時間帯における環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxを検出して記録する環境温度記録部と、蓄電池の状態に対応付けられた対策方針が記憶された保守支援情報テーブルと、を備え、最高到達温度Tmaxと、環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxと、に基づいて冷却能力低下の程度を判定し、能力低下の判定結果に基づいて蓄電池の状態を推定し、推定された蓄電池の状態に基づいて、保守支援情報テーブルから選択された情報を出力可能とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体用に冷却能力を備えた蓄電池の状態を推定して保守を支援可能な蓄電池システムであって、
前記蓄電池に付設された温度センサで日別に最高到達温度Tmaxを検出して記録する電池温度記録部と、
前記最高到達温度Tmaxが検出された時刻から当日の運行開始時刻まで遡った時間帯における環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxを検出して記録する環境温度記録部と、
前記蓄電池の状態に対応付けられた対策方針が記憶された保守支援情報テーブルと、
を備え、
前記最高到達温度Tmaxと、前記環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxと、に基づいて冷却能力低下を判定し、
該冷却能力低下の判定結果に基づいて前記蓄電池の状態を推定し、
該推定された前記蓄電池の状態に基づいて、前記保守支援情報テーブルから選択された情報を出力可能とする、
蓄電池システム。
【請求項2】
前記蓄電池の最大温度が上限温度以内に収まる限界冷却能力低下指標を演算する冷却能力低下指標算出部と、
現在の冷却能力低下指標と、運行による冷却能力低下量予測値と、に基づいて、部品交換の適切な時期を通知する部品交換時期予測部と、
をさらに有する、
請求項1に記載の蓄電池システム。
【請求項3】
前記部品交換時期予測部は1日の運行あたりに低下する冷却能力低下量予測値に基づいて、部品交換の適切な時期を、部品交換までの残り運行可能回数として通知する、
請求項2に記載の蓄電池システム。
【請求項4】
前記部品交換時期予測部は、蓄電池の劣化率と運行情報から冷却能力低下を判定可能な限界冷却能力低下指標を演算する、
請求項3に記載の蓄電池システム。
【請求項5】
前記部品交換時期予測部は運行期間の気象条件の情報を用いて前記限界冷却能力低下指標を演算する、
請求項4に記載の蓄電池システム。
【請求項6】
前記部品交換時期予測部は、鉄道車両の定期メンテナンス計画と運行計画とを用い、冷却能力低下指標の予測値が前記限界冷却能力低下指標を超える直前の定期メンテナンスタイミングを部品交換時期として通知する、
請求項5に記載の蓄電池システム。
【請求項7】
移動体用に冷却能力を備えた蓄電池の状態をコンピュータが推定して保守を支援する蓄電池保守支援方法であって、
前記コンピュータは、
前記蓄電池の状態に対応付けられた対策方針の情報が記憶保持された保守支援情報テーブルを読み出し自在にするステップと、
前記蓄電池に付設された温度センサで日別に最高到達温度Tmaxを検出して記録するステップと、
前記最高到達温度Tmaxが検出された時刻から当日の運行開始時刻まで遡った時間帯における環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxを検出して記録するステップと、
前記最高到達温度Tmaxと、前記環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxと、に基づいて冷却能力低下を判定するステップと、
該冷却能力低下の判定結果に基づいて前記蓄電池の状態を推定するステップと、
該推定された前記蓄電池の状態に基づいて、前記保守支援情報テーブルから選択された情報を出力するステップと、
を有する、
蓄電池保守支援方法。
【請求項8】
前記蓄電池の最大温度が上限温度以内に収まる限界冷却能力低下指標を演算するステップと、
現在の冷却能力低下指標と、運行による冷却能力低下量予測値と、に基づいて、部品交換の適切な時期を予測して通知する部品交換時期予測ステップと、
をさらに有する、
請求項7に記載の蓄電池保守支援方法。
【請求項9】
前記部品交換時期予測ステップは、1日の運行あたりに低下する冷却能力低下量予測値に基づいて、部品交換の適切な時期を、部品交換までの残り運行可能回数として通知する、
請求項8に記載の蓄電池保守支援方法。
【請求項10】
前記部品交換時期予測ステップは、蓄電池の劣化率と運行情報から冷却能力低下を判定可能な限界冷却能力低下指標を演算する、
請求項9に記載の蓄電池保守支援方法。
【請求項11】
前記部品交換時期予測ステップは、運行期間の気象条件の情報を用いて前記限界冷却能力低下指標を演算する、
請求項10に記載の蓄電池保守支援方法。
【請求項12】
前記部品交換時期予測ステップは、鉄道車両の定期メンテナンス計画と運行計画を用い、冷却能力低下指標の予測値が前記限界冷却能力低下指標を超える直前の定期メンテナンスタイミングを部品交換時期として通知する、
請求項11に記載の蓄電池保守支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却能力を有する畜電池システムの健全度を判定可能な蓄電池システム、及び蓄電池保守支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池システムの安全及び安心を担保した運用のためには、電池温度を適切な範囲に収めるように管理する必要が有る。したがって、蓄電池システムの状態に応じた適切な保守を伴う運用の技術が重要となる。
【0003】
冷却機構を備えた蓄電池システムにおいて、蓄電池の最高温度到達点は、蓄電池の劣化率や内部抵抗、外気温、冷却能力とその低下率、(電力又は電流の)負荷パターン等の複合要因で決まる。したがって、蓄電池の規定を超えた過熱に対しては、その要因を分離して主要因を特定し、その主要因に応じた適切な対策を、適切なタイミングで実施する必要がある。
【0004】
そのため、要因の中でも特に冷却能力とその低下率について、検知することが重要であるが、これを流量計センサ等の追設無しに検知する技術が求められている。特許文献1では、自動車が主用途の蓄電池システムを管理対象とし、外気取込ファンを用いた冷却機構の冷却能力低下率に関する指標として、蓄電池システム内に塵埃が入ることを防ぐフィルタのフィルタ詰り量を算出し、フィルタ交換タイミングを判定する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、電池監視装置及び電池システムが開示されており、蓄電池の状態を客観評価する各種の指標値が列挙された中で、電池セルの劣化による内部抵抗値の上昇率SOHR(以下、単に「SOHR」ともいう)を求め、電池管理指標に用いられることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-177971号公報
【特許文献2】特開2021-44145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の車載電池パックの冷却システムでは、その適用対象である自動車のユーザーの行動パターンによって全く異なる条件で使用される。そのため、冷却能力低下率推定の演算を実現するためには、パラメータ同定用の膨大な事前評価データの取得が必要となる。
【0008】
これに対し、本発明者らは、特許文献2に開示されている蓄電池管理指標としてのSOHRを求め、そのSOHRを特許文献1に記載されているような冷却能力低下率推定に適用して簡素化できないものか検討した。本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、膨大な事前評価データを取得することなしに、冷却能力低下の判定が可能な蓄電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、移動体用に冷却能力を備えた蓄電池の状態を推定して保守を支援可能な蓄電池システムであって、蓄電池に付設された温度センサで日別に最高到達温度Tmaxを検出して記録する電池温度記録部と、最高到達温度Tmaxが検出された時刻から当日の運行開始時刻まで遡った時間帯における環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxを検出して記録する環境温度記録部と、蓄電池の状態に対応付けられた対策方針が記憶された保守支援情報テーブルと、を備え、最高到達温度Tmaxと、環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxと、に基づいて冷却能力低下の程度を判定し、能力低下の判定結果に基づいて蓄電池の状態を推定し、推定された蓄電池の状態に基づいて、保守支援情報テーブルから選択された情報を出力可能とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、膨大な事前評価データを取得することなしに冷却能力低下の判定が可能な蓄電池システムを提供できる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る鉄道向け蓄電池システム(以下、「本システム」ともいう)の構成を説明するための機能ブロック図である。
図2図1の本システムで、冷却能力低下の判定に用いる二次元領域を示すグラフである。
図3図1の本システムで、電池劣化度とSOHRとの相関関係を示すグラフである。
図4図2のグラフ上に、要因判定指標と、環境温度Tambと、をプロットした位置に応じて分類判定した結果に基づいて決定される対策方針の一覧表である。
図5】本発明の実施形態に係る蓄電池保守支援方法(以下、「本方法」ともいう)の概略手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<概略>
以下、図1図4を参照して本システム20(図1)について説明する。本システム20は、鉄道を主用途とする蓄電池1、及びそれに付帯する冷却機構2を含めた総合的な冷却能力を管理対象として例示している。この本システム20は、鉄道運行ダイヤに従いパターン化された負荷が繰り返される特性を利用して冷却能力低下を判定する。その結果、本システム20は、それに関する膨大な事前評価データを取得することなしに、冷却能力低下を判定する。
【0013】
本システム20は、その判定結果に基づいて、蓄電池システム20の不具合を解消するための対策を実行体(Execution body)に対して情報提供する。実行体は、本システム20から受け取った情報に基づいた対策方針(Countermeasure policy)を主体(意思決定部:Decision department)又は保守作業者等に実行させるように促す。
【0014】
なお、主体とは、人である運転士、又は運転指令のほか、運行管理システム、又は自動運転システム等のコンピュータを意味する。保守作業者等とは、蓄電池1の交換等の保守業務を実行できる者をいう。また、本システム20は、交換対象部品を特定して交換すべき寿命の到来を予告し、その部品交換を促すための情報を発報する。
【0015】
<構成>
図1は、本システム20の構成を説明するための機能ブロック図である。図1において、電池システム20は、電池群(以下、単に「蓄電池」ともいう)1、冷却機構2、電池管理装置3、電池電流記録部4、電池電圧記録部5、電池温度記録部6、及び環境温度記録部7、から構成される。
【0016】
蓄電池1は、リチウムイオン電池や、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等が挙げられるが、これらに限定されない。冷却機構2は、不図示の強制空冷方式であれば、発熱体である蓄電池1の缶体等に熱伝導可能に接続された放熱フィンと、それに送付する送風ファンが例示される。その他、不図示の液冷方式が挙げられる。何れの冷却方式による冷却機構2であっても、本システム20と組み合わせて冷却能力低下を判定することが可能である。
【0017】
電池管理装置3は、抵抗率演算部8と最高到達温度抽出部9、要因判定指標演算部10、要因判定部11から構成される。抵抗率演算部8は、抵抗率を演算する。抵抗率演算の手法としては、電流変化と電圧変化の比率から求めた抵抗値を基準抵抗値で除算する方法や、カルマンフィルタ(Kalman filter)等の方法が挙げられるが、これらに限定されない。カルマンフィルタは、離散的な誤差のある観測から、時々刻々と時間変化する量を推定するために用いられる。
【0018】
なお、蓄電池1は、適宜数量の電池セルを直並列に接続して電池群(組電池又は電池パックとも呼ばれる)を構成する。また、状態検知装置は、電池群(蓄電池)1を構成する各々の電池セルの内部抵抗値の上昇率SOHRに基づいて、電池群1全体の内部抵抗値の上昇率SOHRを求めてもよい。
【0019】
このSOHRは、一例として、下式(1)で求められるが、これ以外の方法で求めても構わない。下式(1)において、Rcは現在の電池セルの内部抵抗値であり、Roは使用開始当初の電池セルの内部抵抗値である。
SOHR=100×(Rc/Ro)・・・・(1)
【0020】
最高到達温度抽出部9は、日々の鉄道運行の中での電池最高到達温度Tmaxと、外気温最大値Tamb,maxを抽出する。要因判定指標演算部10は、抵抗率と最高到達温度Tmax、外気温最大値Tamb,maxを用いて冷却能力低下判定指標を下式(2)に示すように演算する。
(Tmax-Tamb,max)/SOHR・・・・・・(2)
【0021】
要因判定部11は、冷却能力低下判定指標と、外気温最大値Tamb,maxと、を用いて冷却能力の低下有無を判定する。その判定方法についての詳細は、図2図4も交えて以下に説明する。
【0022】
図2は、図1の本システム20で、冷却能力低下の判定に用いる二次元領域を示すグラフである。図2のグラフにおいて、横軸は外気温Tamb[℃]、縦軸は冷却能力低下判定指標であり、下式(3)に示すとおりである。
(Tmax-Tamb)/SOHR=ΔT/SOHR[K]・・・(3)
【0023】
図2のグラフ中には、右下がりの斜め破線で閾値となる境界線を示している。このグラフに日々の観測値として、最高到達温度Tmax[℃]と、外気温最大値Tamb,max[℃]と、をプロットした位置が、閾値となる境界線より下であれば冷却能力低下無し(No decrease in cooling capacity)、上であれば冷却能力低下有り(There is a decrease in cooling capacity)と判定する。
【0024】
図3は、図1の本システム20で、電池セルの劣化による内部抵抗値の上昇率SOHR[%]と、電池劣化度との相関関係を示すグラフである。図3に示すように、電池セルは、新品(Brand new)であればSOHRが小さく、電池交換を要する(Battery needs to be replaced)ような劣化品(Deteriorated product)であればSOHRが大きい。このことは、上式(1)に示したように、現在の電池セルの内部抵抗値Rcが、使用開始当初の電池セルの内部抵抗値Roよりも、劣化に伴って徐々に増加することを意味している。
【0025】
図4は、図2のグラフ上に、上式(2)の要因判定指標ΔT/SOHR[K]と、環境温度Tamb[℃]と、をプロットした位置に応じて分類判定した結果に基づいて決定される対策方針の一覧表である。この一覧表は、横方向の項目として、左から順に、温度及び対策方針を示し、縦方向の項目として、上から順に、温度逸脱無(適切な温度:Suitable temperature)、SOHR上昇(SOHR rise)、冷却能力低下(Decreased cooling capacity)、外気温上昇(Outside temperature rise,稀な猛暑日:Rare hot day)、及びダイヤの乱れ(Disturbance of operation schedule)、を示している。
【0026】
図4において、温度は、図2のグラフに日々の観測値をプロットした位置が、閾値となる境界線の上か、その逆で下か、何れであるかを示している。また、対策方針は、さらに、電池交換と、冷却交換と、制御交換と、のうち何れであるかを特定する。本システム20によれば、要因の中でも特に冷却能力とその低下率について、検知することが重要であるが、これを流量計センサ等の追設無しに検知することが可能になる。
【0027】
上述のようにプロット位置が、図2のグラフ上の位置に応じて分類判定した結果に基づいて、図4の一覧表に〇×△で示す対策方針が決定される。〇は交換不要(Unnecessary)を意味し、×は交換を要する(Necessary)を意味する。△の場合は、SOHRの[%]値が所定値より大きい場合にのみ交換を要する。したがって、△は暫定要(Temporarily required)とする。
【0028】
図4の1行目は、プロットに特徴が無く、温度逸脱無しの場合を示す。この場合、電池交換と、冷却交換と、制御交換と、の何れの対策も不要とする方針が示される。
【0029】
図4の2行目は、プロットに特徴が無く、SOHR上昇の場合を示す。この場合、環境温度Tamb[℃]の高低に関わらず電池交換を要し(Battery needs to be replaced)、制御変更(Control exchange)が暫定要(Temporarily required)とする方針が示される。
【0030】
図4の3行目は、プロットした位置が、閾値となる境界線より上に多数であるため、冷却能力低下有りの場合を示す。この場合、冷却交換(Cooling replacement)を要するほか、SOHR次第(Depends on SOHR)では電池交換も要する方針が示される。
【0031】
図4の4行目は、プロットした位置が、閾値となる境界線上で、しかも外気温上昇している場合を示している。この場合、SOHR次第で、電池交換と、制御変更(Control exchange)と、それぞれを要する方針が示される。
【0032】
図4の5行目は、プロットした位置が、閾値となる境界線より上に1点のみであり、ダイヤの乱れの場合を示している。この場合、SOHR次第で電池交換を要する方針が示される。
【0033】
<運用>
図5は、本方法の概略手順を示すフローチャートである。本方法は、本システム20を用いて、図5に示すステップ(S1~S8)により、移動体用に冷却能力を備えた蓄電池1の状態を推定して保守を支援する。なお、ステップ(S1)以前に、本システム20の利用者(設置者、管理者)は、予め、蓄電池1の状態に対応付けられた対策方針を読み出し自在に記憶保持した保守支援情報テーブルを用意しておく。ステップ(S1)以降は、本システム20によって実行される。その処理機能は、本システム20を構成する不図示のコンピュータがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。
【0034】
本方法を実行するコンピュータは、蓄電池1の状態に対応付けられた対策方針の情報が記憶保持された保守支援情報テーブルを読み出し自在にする(S1)。本システム20が、蓄電池1に付設された温度センサで日別に最高到達温度Tmaxを検出して記録する(S2)。なお、保守支援情報テーブルは、図4に示す程度の情報量であり、膨大な事前評価データではなく、簡素な一覧表程度で良い。保守支援情報は、既定のメンテナンス周期や、繁忙、天候等の状況を客観的に勘案した経験則(データベース)に基づいて、最適判断が期待できる内容であることが好ましい。
【0035】
本システム20により、最高到達温度Tmaxが検出された時刻から当日の運行開始時刻まで遡った時間帯における環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxを検出して記録する(S3)。本システム20が、最高到達温度Tmaxと、環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxと、に基づいて冷却能力低下を判定する(S4)。
【0036】
本システム20が、冷却能力低下の判定結果に基づいて蓄電池1の状態を推定する(S5)。本システム20が、推定された蓄電池1の状態に基づいて、保守支援情報テーブルから選択された情報を出力する(S6)。
【0037】
本方法では、本システム20が抵抗率演算部8により求めたSOHRを蓄電池管理指標に用いることで、簡略な計算により冷却能力低下の程度を推定できる。その結果、本方法によれば、膨大な事前評価データを取得することなしに、冷却能力低下の判定が可能となる。また、電圧、電流、温度を計測するセンサは既存の物で足りるので、それらを増設する負担は不要、又は少なくて済む。
【0038】
本システム20は、蓄電池1の最大温度が上限温度以内に収まる限界冷却能力低下指標を演算する(S7)。部品交換時期予測ステップ(S8)では、本システム20が、現在の冷却能力低下指標と、運行による冷却能力低下量予測値と、に基づいて、部品交換の適切な時期を予測して通知する。
【0039】
本方法において、交換の対象部品は、蓄電池1そのものと、冷却機構部品と、の少なくとも何れかである。何れが交換対象であるかについても、図4の一覧表に示す要領で決定された対策方針に従えば良い。
【0040】
このように、本システム20によれば、冷却能力低下について、その原因と近未来予想が可能である。したがって、本システム20は、図4に示す電池交換と、冷却(機構部品)交換と、制御変更と、の何れかに特定された原因を解消するため、最適に決定された対策を運行主体又は保守作業者等に促すことで実効性を発揮する。
【0041】
部品交換時期予測ステップ(S8)では、本システム20が、1日の運行あたりに低下する冷却能力低下量予測値に基づいて、部品交換の適切な時期を、部品交換までの残り運行可能回数として通知しても良い。つまり、本方法によれば、冷却能力低下の原因を解消するために特定された交換部品について、現状の運行頻度でそのまま運行継続するならば、この先の交換日程を明確に通知できる。
【0042】
部品交換時期予測ステップ(S8)では、本システム20が、蓄電池1の劣化率と運行情報から冷却能力低下を判定可能な限界冷却能力低下指標を演算しても良い。本方法の演算結果では、管理対象の使用頻度の情報を運行情報から取得できるので、その頻度に応じた冷却能力低下の程度を計量的に判定可能である。その結果、本方法によれば、部品不良を原因とする故障が発生する以前に、早過ぎず、遅過ぎず、適時に部品交換を運行主体又は保守作業者等に促せる。
【0043】
部品交換時期予測ステップ(S8)では、本システム20が、運行期間の気象条件の情報を用いて限界冷却能力低下指標を演算しても良い。本方法において、限界冷却能力低下指標の演算結果が、例えば猛暑であるためオーバーヒートとなれば、相応の対策方針の情報が発報される。
【0044】
部品交換時期予測ステップ(S8)では、本システム20が、鉄道車両の定期メンテナンス計画と運行計画を用い、冷却能力低下指標の予測値が限界冷却能力低下指標を超える直前の定期メンテナンスタイミングを部品交換時期として通知しても良い。そうすることで、部品不良を原因とする故障が発生する以前に、早過ぎず、遅過ぎず、適時に部品交換を運行主体又は保守作業者等に促せる。
【0045】
本システム20は、その判定結果に基づいて、管理対象である蓄電池1及びそれに付帯する冷却機構2への対策を実行できる実行体に対して情報提供する。実行体は、本システム20から受け取った情報に基づいた対策方針を主体(意思決定部)又は保守作業者等に実行させるように促すことで実効性を発揮する。
【0046】
本システム20において、抵抗率演算部8により求めたSOHRを蓄電池管理指標に用いることで、簡略な計算により冷却能力低下の程度を推定できる。その結果、本システム20は、膨大な事前評価データを取得することなしに、冷却能力低下の判定が可能である。
【0047】
本システム20は、冷却能力低下の判定結果に基づいて、蓄電池1の状態を推定し、その推定された蓄電池1の状態に基づいて、保守支援情報テーブル11から選択された保守支援情報を出力可能である。これにより、本システム20は、それに関する膨大な事前評価データを取得することなしに、冷却能力低下を判定することが可能である。
【0048】
すなわち、当日運行時間帯において検出された環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxが高いにもかかわらず、蓄電池1の最高到達温度Tmaxが上限温度を超えなければ、冷却能力が十分に機能しているので、「冷却能力低下無し」とみなせる。
【0049】
また、環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxが異常に高いときに、蓄電池1の最高到達温度Tmaxも上限温度を超えている場合は、蓄電池1及び蓄電池システム20の故障でなく、自然現象とも考えられる。想定外の猛暑日にやむを得ずオーバーヒートした場合、管理対象とする鉄道車両の運行を見合わせるように判断される。
【0050】
つまり、蓄電池1及び蓄電池システム20は、暑い最中にも蓄電池1に上限温度を超えさせない保証を得るための必要最小限度に対し、少しだけ余裕を上乗せしたところを狙って、冷却能力が設計される。また、熱くないときはもちろんのこと、猛暑日でも上限温度を超えないように、オーバーヒートさせない設計であることが前提である。
【0051】
逆に、環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxが高くないにもかかわらず、蓄電池1の最高到達温度Tmaxが異常に高くなった場合は、少なくとも、蓄電池1と、蓄電池システム20と、の何れかが故障し、冷却能力が基準を逸脱する程に低下したものと考えられる。
【0052】
この場合、本システム20は、管理対象とする鉄道車両の環境温度仕様(例えば、-15度≦気温50度)と、及び耐熱設計(例えば、-20度≦気温55度)と、の少なくとも何れかに対し、蓄電池1の最高到達温度Tmaxを照合する。照合結果に応じて、本システム20は、仕様に規定された通常使用の範囲内で発生した故障と判定する。つまり、あってはならない故障であり、その故障対策を運行主体又は保守作業者等に促すことになる。
【0053】
このような経験則を含む技術情報に基づいて、蓄電池1及び蓄電池システム20は、製造当初において、製品仕様に適合する設計であっても、その冷却能力が経年劣化することがわかっている。したがって、本システム20は、冷却能力を早期発見して、最適な保守情報を出力する。
【0054】
その目的に対し、本システム20は、膨大な事前評価データを取得することなしに、冷却能力低下を判定することが可能である。また、本システム20によれば、要因の中でも特に冷却能力とその低下率について、検知することが重要であるが、これを流量計センサ等の追設無しに、既設の電圧、電流、及び温度のセンサを用いて検知することが可能になる。
【0055】
<補足事項>
ここで例示した本システム20は、鉄道用であって、蓄電池1の冷却能力低下を検出して、対策方針を示す情報を発出する機能を備えたものである。このように、本システム20は、鉄道車両への応用について説明した。しかし、本発明の適用分野はこれに限定されない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。例えば、毎日の運行形態がパターン化された自動車、あるいは電池式フォークリフト等の蓄電池システムにも好適である。
【0056】
本システム20は、複数の電池セルを備える電池群(蓄電池)1を従来よりも有効に活用して、電池セルの交換数を可及的に削減可能にする効果が得られる。本システム20は、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)及び記憶装置(メモリ)を備えたコンピュータである。
【0057】
そのコンピュータは、ワンチップマイコンで足りるが、他用途のコンピュータの一部を兼用利用しても良く、地上設備のコンピュータと移動体との間で無線通信する構成でも構わない。その場合、図1に示した機能構成ブロックのうち、少なくとも、蓄電池1、冷却機構2、電池電流記録部4、電池電圧記録部5、電池温度記録部6、及び環境温度記録部7が車上設備として、移動体側に配設されると良い。これに対応する電池管理装置3が地上設備であるならば、その間を無線通信によりデータ転送すれば良い。
【0058】
なお、CPUは、電流センサ及び電圧センサの検知結果に基づいて算出された各々の電池セルの劣化度に基づいて、電池群1の交換の要否を判定する。また、CPUは、電池群1の交換が必要と判定した場合に、電池群1の劣化度に基づいて交換対象の電池群1を特定する。さらに、CPUは、その交換対象の電池群1と交換される新たな電池群1のパラメータ、又は交換数を新たな電池群1の許容電流値に基づいて算出することが好ましい。
【0059】
なお、冷却能力低下の程度は、定量的(quantitative)又は定性的(Qualitative)の何れでも良い。定量的とは、物事の状況や状態を数字にして表すことをいう。その逆の定性的は、物事の変化や質等を数字ではなく言葉や文字で表すことをいう。本システム20において、定量的な判定するために設定された閾値や判断基準が適切であれば、「冷却能力低下有り」又は「冷却能力低下無し」といった定性的な表現でも有益である。
【0060】
本システム20は、定量的と定性的と少なくとも何れかの表現により、管理対象とする蓄電池1又は蓄電池システム20の冷却能力低下について、その程度、原因、及び近未来予想が可能である。つまり、本システム20は、何らかの形で特定された原因を解消するため、最適に決定された対策を運行主体又は保守作業者等に促すことで実効性を発揮する。
【0061】
本システムは、つぎのように総括できる。
[1]本システム20は、移動体用に冷却能力を備えた蓄電池1の状態を推定して保守を支援するものである。本システム20は、図1に示すように、電池温度記録部5と、環境温度記録部7と、保守支援情報テーブル(11)と、を備える。
【0062】
図1に示すように、電池温度記録部6は、蓄電池1に付設された電池センサで検出された日別の最高到達温度Tmaxを記録する。環境温度記録部7は、当日の運行開始時刻から当日の最高到達温度Tmaxが検出された時刻までの時間帯を一区切りとし、その時間帯における環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxを検出して記録する。
【0063】
このような規則で検出して記録された最高到達温度Tmaxと、環境温度Tambの最高到達値Tamb,maxと、に基づいて、本システム20は、冷却能力低下の程度を判定する。なお、畜電池システム20は、それを構成する畜電池1の状態(劣化度、冷却能力)が同じであれば、その最高到達温度Tmaxは、外気温Tambで決まる環境依存の性質を有する。
【0064】
また、パターン化された同じ電力負荷が日々繰り返される移動体用途の電池において、電池システムの状態(劣化度、冷却能力)が同じ場合の最高到達温度Tmaxは外気温Tambで決まる性質を利用できる。
【0065】
また、日々の最高到達温度Tmaxと、日々の最高到達温度Tmaxを記録した時点から当日の運行開始時点まで遡った外気温の最大値Tamb,maxを差し引いてから、畜電池1の抵抗率で除算した値と、外気温の最大値Tamb,maxの2つのパラメータで決定される日々の観測値がどの位置にプロットされるかで、冷却能力低下の程度を判定できる。なお、電圧、電流、温度を計測するセンサは既存の物で足りるので、それらを増設する負担は不要、又は少なくて済む。
【0066】
[2]上記[1]の本システム20は、図2図4に示す原理に基づく、冷却能力低下指標算出部、部品交換時期予測部と、を有することが好ましい。これらは、図1の機能ブロック図の要件を備えて構成される。これらは、図1を用いて説明した機能ブロック図の名称と一致する呼称とは限らない。却能力低下指標算出部と、部品交換時期予測部と、これらについて随所に説明する機能であれば、いかなる呼称でも分散形態でも構わない。冷却能力低下指標算出部は、蓄電池1の最大温度が上限温度以内に収まる限界冷却能力低下指標を演算する。
【0067】
すなわち、冷却能力低下指標算出部は、日々の最高到達温度Tmaxと、日々の最高到達温度Tmaxを記録した時点から当日の運行開始時点まで遡った外気温の最大値Tamb,maxを差し引いたΔTを、畜電池1の抵抗率SOHRで除算した値を上式(2),(3)で規定し、冷却能力低下判定指標とする。本システム20は、図2に示すように、この冷却能力低下判定指標と、外気温の最大値Tamb,maxの2つのパラメータがどの位置にプロットされるかで、冷却能力低下の有無を判定する。
【0068】
部品交換時期予測部は、現在の冷却能力低下指標と、運行による冷却能力低下量予測値に基づいて、部品交換の適切な時期を通知することが可能である。交換の対象部品は、蓄電池1そのものと、冷却機構部品と、の少なくとも何れかである。何れが交換対象であるかについても、図4の一覧表に示す要領で決定された対策方針に従えば良い。
【0069】
このように、本システム20によれば、冷却能力低下について、その原因と近未来予想が可能であり、最適に決定された対策を運行主体又は保守作業者等に促せる。このように、本システム20は、特定された原因を解消するため、図4に例示する電池交換と、冷却(機構部品)交換と、制御変更と、何れかの支援情報を適宜に発出する。
【0070】
[3]上記[2]の本システム20において、部品交換時期予測部は、1日の運行あたりに低下する冷却能力低下量予測値に基づいて、部品交換の適切な時期を、部品交換までの残り運行可能回数として通知することが可能である。つまり、本システム20によれば、冷却能力低下の原因を解消するために特定された交換部品について、現状の運行頻度でそのまま運行継続できる限界、すなわち、この先に交換すべき期限を明確に通知できる。
【0071】
[4]上記[3]の本システム20において、部品交換時期予測部は、蓄電池1の劣化率と運行情報に基づいて、限界冷却能力低下指標を演算することが好ましい。この部品交換時期予測部は、図1の機能ブロック図の要件を備えて構成される。その部品交換時期予測部の演算結果により、冷却能力低下の程度を計量的に判定可能である。
【0072】
[5]上記[4]の本システム20において、部品交換時期予測部は運行期間の気象条件の情報を用いて限界冷却能力低下指標を演算することが好ましい。ここでも、部品交換時期予測部は、図1の機能ブロック図の要件を備えて構成される。その部品交換時期予測部が演算した限界冷却能力低下指標の結果により、冷却能力低下の程度を計量的に判定可能である。
【0073】
本方法で管理対象とする畜電池システム20は、その冷却能力について、気象条件が冷涼なときはもちろんのこと、猛暑日でも上限を超えないように設計されている。それにも関わらず、本システム20において、限界冷却能力低下指標の演算結果がオーバーヒートとなれば、相応の対策方針の情報が発報される。
【0074】
[6]上記[5]の本システム20において、部品交換時期予測部は、鉄道車両の定期メンテナンス計画と運行計画を用い、冷却能力低下指標の予測値が限界冷却能力低下指標を超える直前の定期メンテナンスタイミングを部品交換時期として通知する。
【0075】
本システム20は、鉄道用途の蓄電池システム20(蓄電池1も含む)を主な管理対象とすることに好適である。鉄道用途の蓄電池システム20は、運行ダイヤに従って、概ね同じパターンの電力負荷特性(負荷パターン)が毎日繰り返される。
【0076】
したがって、鉄道に限らず各種の搬送体のなかでも、定期運航車両のように、使用頻度が一定かつ継続的である場合、構成部品の劣化程度は、使用頻度に応じた劣化速度に経過時間を乗じれば推定できる。ここでいう、鉄道車両の定期メンテナンス計画とは、使用可能な寿命が既知である部品毎に、部品交換時期を定めたタイムチャートである。
【0077】
また、本システム20は、冷却能力低下指標の予測値が限界冷却能力低下指標を超える直前の時期を定期メンテナンスタイミングとする。本システム20は、定期メンテナンスタイミングを列車毎のタイムチャートに織り込んで、カレンダー(スケジュール)管理に供する。本システム20は、カレンダー管理を実行することにより、定期メンテナンスタイミングが保守作業者等に通知される。
【0078】
このように通知された定期メンテナンスタイミングは、冷却能力低下指標の予測値が限界冷却能力低下指標を超える直前である。このタイミングは、管理対象とする部品毎に既知である固有の寿命に対し、品質管理の技術常識に基づいて、無駄を無くして、最小限の余裕を残して設定される。その結果、本システム20は、部品不良を原因とする故障が発生する以前に、早過ぎず、遅過ぎず、適時に部品交換を運行主体又は保守作業者等に促すことで実効性を発揮する。
【0079】
一方、鉄道に限った設備装置等のなかでも、使用頻度が散発的かつ不定期である場合、構成部品の劣化程度は、必ずしも経時劣化と同じ進行速度とは限らない。この場合、本システム20は、列車の運行計画から算出された使用頻度の指標に基づいて、鉄道車両毎に設けられた定期メンテナンス計画を前後に修正することにより、最適タイミングで部品交換される。
【0080】
つまり、本システム20において、列車の運行計画が低頻度ならば、保守周期を長く伸ばす。逆に、本システム20において、列車の運行計画が高頻度ならば、保守周期を短く縮める。そうすることで、部品不良を原因とする故障が発生する以前に、早過ぎず、遅過ぎず、適時に部品交換を運行主体又は保守作業者等に促すことで実効性を発揮する。
【符号の説明】
【0081】
20…電池システム(本システム)、1…電池群(蓄電池)、2…冷却機構、3…電池管理装置、4…電池電流記録部、5…電池電圧記録部、6…電池温度記録部、7…環境温度記録部、8…抵抗率演算部、9…最高到達温度抽出部、10…要因判定指標演算部、11…要因判定部、SOHR…電池セルの劣化による内部抵抗値の上昇率、Tamb…環境温度、Tamb,max…(Tamb環境温度)の最高到達値、Tmax…最高到達温度
図1
図2
図3
図4
図5