IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社安藤・間の特許一覧

<>
  • 特開-プレキャストコンクリート基礎梁構造 図1
  • 特開-プレキャストコンクリート基礎梁構造 図2
  • 特開-プレキャストコンクリート基礎梁構造 図3
  • 特開-プレキャストコンクリート基礎梁構造 図4
  • 特開-プレキャストコンクリート基礎梁構造 図5
  • 特開-プレキャストコンクリート基礎梁構造 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023019966
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート基礎梁構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
E02D27/01 101C
E02D27/01 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125067
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【弁理士】
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100208269
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 雅士
(72)【発明者】
【氏名】松浦 恒久
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA26
2D046BA27
2D046BA32
(57)【要約】
【課題】 プレキャストコンクリート基礎梁において、現場への搬入が容易で、現場での杭頭部への接合や梁完成も容易に行える基礎梁構造を提供することにある。
【解決手段】 基礎梁5と杭頭部基礎8とが接合された基礎梁構造1であって、基礎梁5の長軸方向に梁主筋14が突出し、梁主筋14を囲むように基礎梁5の梁幅方向に第1のスターラップ筋15の一部が突出した1対のプレキャストコンクリート梁部材10、10を、梁幅方向に第1の接合空間S1を形成するように対向させて、底盤上に載置し、1対のプレキャストコンクリート梁部材10,10と杭頭部基礎8との間の第2の接合空間S2に1対の梁主筋15を囲むように第2のスターラップ筋21が配筋され、第1の接合空間S1および第2の接合空間S2に現場コンクリートが打設され、全体が一体化されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎梁と杭頭部基礎との基礎梁構造であって、
前記基礎梁の長軸方向に梁主筋が突出し、前記梁主筋を囲むように前記基礎梁の梁幅方向に第1のスターラップ筋の一部が突出した1対のプレキャストコンクリート梁部材を、前記梁幅方向に第1の接合空間を形成するように対向させて、底盤上に載置され、
前記1対のプレキャストコンクリート梁部材と前記杭頭部基礎との間の第2の接合空間に1対の前記梁主筋を囲むように第2のスターラップ筋が配筋され、
前記第1の接合空間および前記第2の接合空間にコンクリートが打設された、
ことを特徴とするプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項2】

前記1対のプレキャストコンクリート梁部材の重量は、前記杭頭部基礎の上面に配置されるプレキャストコンクリート柱部材の重量以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項3】
前記1対のプレキャストコンクリート梁部材のそれぞれの梁幅は、前記第1の接合空間に打設されたコンクリートの前記梁幅方向の幅よりも広い、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項4】
前記基礎梁は、軽量盛土材上に載置支持された、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【請求項5】
前記1対のプレキャストコンクリート梁部材は、それぞれ前記長軸方向の中央に第3の接合空間を介して対向する1対の小割りプレキャストコンクリート梁部材からなり、
前記第3の接合空間には、前記1対の小割りプレキャストコンクリート梁部材からそれぞれ梁主筋が突出し、コンクリートが打設された、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のプレキャストコンクリート基礎梁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート基礎梁構造に係り、特に、プレキャストコンクリート基礎梁を複数のハーフプレキャストコンクリート部材を用いて形成する基礎梁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の基礎梁構造は、在来工法で施工されることが多い。しかし、在来工法によると、施工手間や工期が増大するので、プレキャストコンクリートを上部構造だけでなく下部構造である基礎梁構造にも採用する場合がある。
【0003】
基礎梁構造にプレキャストコンクリートを使用する場合、マンションやビル等の大型建築物では基礎梁の梁成、梁スパンが大きくなるので、プレキャストコンクリート製の基礎梁はプレキャストコンクリート製の柱に比べてかなり重量が重くなる。このため、現場で使用する揚重機は基礎梁の重さに対応した大型のものが必要になり、建設コスト増などの要因になってしまう。
【0004】
これらの問題に対応するために、特許文献1には、基礎梁を2つのプレキャストコンクリート梁部材を現場打ちコンクリートで一体化させることにより形成することで、プレキャストコンクリート梁部材1つあたりの重量を軽量化させた基礎構造の施工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-145575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、基礎梁を構成する2つのプレキャストコンクリート梁部材の間に先組鉄筋を配筋し、また、2つの梁部材の間隔を保持する保持部材を基礎梁の上下端に設けるので、基礎梁の施工手間や施工コストが嵩んでしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、プレキャストコンクリートを使用した基礎梁において、容易に施工可能な基礎梁構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、基礎梁と杭頭部基礎との基礎梁構造であって、 前記基礎梁の長軸方向に梁主筋が突出し、前記梁主筋を囲むように前記基礎梁の梁幅方向に第1のスターラップ筋の一部が突出した1対のプレキャストコンクリート梁部材を、前記梁幅方向に第1の接合空間を形成するように対向させて、底盤上に載置され、前記1対のプレキャストコンクリート梁部材と前記杭頭部基礎との間の第2の接合空間に1対の前記梁主筋を囲むように第2のスターラップ筋が配筋され、前記第1の接合空間および前記第2の接合空間にコンクリートが打設されたことを特徴とする。
【0009】
前記1対のプレキャストコンクリート梁部材の重量は、前記杭頭部基礎の上面に配置されるプレキャストコンクリート柱部材の重量以下であることが好ましい。
【0010】
前記1対のプレキャストコンクリート梁部材のそれぞれの梁幅は、前記第1の接合空間に打設されたコンクリートの前記梁幅方向の幅よりも広いことが好ましい。
【0011】
前記基礎梁は、軽量盛土材上に載置支持されることが好ましい。
【0012】
前記1対のプレキャストコンクリート梁部材は、それぞれ前記長軸方向の中央に第3の接合空間を介して対向する1対の小割りプレキャストコンクリート梁部材からなり、前記第3の接合空間には、前記1対の小割りプレキャストコンクリート梁部材からそれぞれ梁主筋が突出し、コンクリートが打設されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、プレキャストコンクリートを使用した基礎梁において、容易に施工可能な基礎梁構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は、本発明の実施形態に係る基礎梁構造の正面図、(b)は、(a)の平面図、(c)は、(a)のA部分を拡大した梁断面図である。(d)は、1d-1d断面線で示した接合空間S2での梁断面図である。
図2】(a)は、本発明の実施形態に係るハーフプレキャストコンクリート基礎梁部材の側面断面図、(b)は、(a)の背面図である。
図3】(a)は、本発明の変形例に係る基礎梁構造の正面図、(b)は、(a)の基礎梁の側面断面図である。
図4】(a)は、本発明の他の変形例に係る基礎梁構造の正面図、(b)は、(a)の平面図である。
図5】(a)は、本発明の変形例に係るハーフプレキャストコンクリート基礎梁部材の背面図、(b)は、(a)のVb-Vb断面線で示した側面断面図である。
図6】(a)は、本発明の他の変形例に係るハーフプレキャストコンクリート基礎梁部材の背面図、(b)は、(a)のVIb-VIb断面線で示した側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の基礎梁構造について、以下、添付図面を参照して説明する。なお、同一の構成要素には、同一の符号を付す。
【0016】
図1(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態に係る基礎梁と杭頭部基礎との基礎梁構造1を示している。基礎梁構造1は、所定の間隔を空けて互いの主面が対向するように設置されたハーフプレキャストコンクリート基礎梁部材10,10(以下、プレキャスト梁部材10とする。)の間に現場打ちコンクリート20を打設されたことで一体化されて形成された基礎梁5と、基礎梁5の両端と既製杭Pの頭部に接続されている杭頭部基礎8と、の間に現場打ちコンクリート20を打設することで一体化されることにより構成されている。本実施形態では、柱スパンS=10m、柱6を構成するプレキャストコンクリート柱部材7(以下、プレキャスト柱部材7とする。)1つあたりの重量は約10t、断面は1200mm×1200mmである。また、既製杭Pとして、たとえばφ=1000mmの外殻鋼管コンクリート杭(SC杭)等が打設されている。
【0017】
基礎梁5は、梁成H=2000mm、長さL=5250mm、梁幅W1=370mm、重量約9.7tのプレキャスト梁部材10,10を構成要素として備えた梁幅W=1000mmの梁である。図2(a)、(b)に示すように、プレキャスト梁部材10は、梁コンクリート11の長軸方向の端面12,13から、梁主筋14が突出するように配筋されている。梁主筋14は、梁コンクリート11内部および外部において、梁コンクリート11の内面16から梁幅方向に一部が突出するように配筋されたスターラップ筋15に囲まれている。一部の梁主筋14は、梁コンクリート11内でなく、突出したスターラップ筋15に結束されて配筋されている。プレキャスト梁部材10の、他方のプレキャスト梁部材10と対向する内面16は、プレキャスト版製造時のコンクリート打設面に相当する面であり、製造時の表面の凹凸がそのまま残されており、現場打ちコンクリート20に対する付着力を高めている。
【0018】
(梁幅方向の接合構造)
基礎梁5は、地盤を掘削して形成されたトレンチ(図示せず)の底盤の均しコンクリート上の所定位置に、プレキャスト梁部材10,10を、図1(c)に示すように、突出したスターラップ筋15を内側(互いのプレキャスト梁部材10側)に向けるようにして260mm(図1(c)のW2)の間隔の接合空間S1を空けて対向させて載置され、接合空間S1に現場打ちコンクリート20を打設されていることにより、プレキャスト梁部材10,10と現場打ちコンクリート20とを一体化させて形成されている。
【0019】
(梁長手方向の接合構造)
また、図1(a)、(b)、(d)に示すように、接合空間S2では、プレキャスト梁部材10の軸方向の両端面12,13から突出している梁主筋14と杭頭部基礎8の側面から突出するように配筋された梁主筋接合筋9とが機械式継手30を介して接合されている。さらにその接合部位において、梁主筋14および梁主筋接合筋9を囲むように梁断面内でずらして2本をセットとして配置されたスターラップ筋21(図1(d))が、梁長手方向に所定の配筋ピッチで配筋されている。接合空間S2に現場打ちコンクリート20が打設され、基礎梁5と杭頭部基礎8とが一体化されている。また、杭頭部基礎8の上面から突出するように配筋された柱主筋(図示無し)とプレキャスト柱部材7の下端の機械式継手(図示無し)とが接合されている。なお、プレキャスト柱部材7および杭頭部基礎8には、図示しない所定の構造筋、組立筋が配筋されており、必要な強度および耐力が保持されている。
【0020】
以上のように、基礎梁5と杭頭部基礎8とが一体化され、基礎梁構造1が形成されている。
【0021】
本実施形態の基礎梁構造1によれば、基礎梁5を構成するプレキャスト梁部材10の1本当たりの重量を、柱6を構成するプレキャスト柱部材7の1本当たりの重量以下におさえることができ、基礎梁構造にプレキャスト基礎梁を採用しながらも、基礎梁構造を在来工法で構築する場合と同等の能力の小型の揚重機で施工することができる。さらに、プレキャスト梁部材10,10間(接合空間S1)には鉄筋の配筋が不要である。また、プレキャスト梁部材10は接合空間S1に打設された現場打ちコンクリート20よりも重量があるので、プレキャスト梁部材10の背面には型枠支保工を省略でき、セパレータ等も不要である。従って、施工手間や施工コストを削減でき、基礎梁構造1を容易に施工できる。
【0022】
(変形例)
上記実施形態では、基礎梁5は、均しコンクリート上に設置されていたが、軟弱地盤の敷地では、例えば、図3(a)、(b)に示すように、大型のEPS(Expanded Poly-Styrol;発泡スチロール)ブロック40を用いて構築された軽量盛土材上に載置、支持されていてもよい。
【0023】
また、上記実施形態では、基礎梁5は、構成要素としてプレキャスト梁部材10を2枚備えていたが、例えば、プレキャスト梁部材1つあたりの重量に応じて、図4(a)、(b)に示すように、基礎梁5Aは、梁主筋14,14を柱スパンの中間の接合空間S3内で現場打ちコンクリート20により接合された4枚に小割りしたプレキャスト梁部材10Aを構成要素としてもよいし、4枚以上のプレキャスト梁部材を構成要素とする基礎梁であってもよい。
【0024】
上記実施形態では、プレキャスト梁部材10の内面16は、表面に凹凸が残されていたが、例えば、図5(a)、(b)に示すように、長軸方向に延設されたV字状溝17や、図6(a)、(b)に示すように、多数の矩形状のコッター18を形成することにより現場打ちコンクリートへの付着力を高めてもよい。
【0025】
また、上記実施形態では、基礎梁5のプレキャスト梁部材10,10間に現場打ちコンクリート20が打設されていたが、スターラップ筋がプレキャスト梁部材から突出していないプレキャスト梁部材を2枚梁幅方向に並設することにより基礎梁が形成されていてもよい。プレキャスト梁部材の厚さや長さ、間隔も上記実施形態の数値に限られない。
【0026】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に示した範囲内での種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲内で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1,2,3 基礎梁構造
5,5A 基礎梁
6 柱
7 プレキャストコンクリート柱部材(プレキャスト柱部材)
8 杭頭部基礎
9 梁主筋接合筋
10,10A,10B,10C ハーフプレキャストコンクリート基礎梁部材(プレキャスト梁部材)
11 梁コンクリート
12,12A,13,13A 端面
14 梁主筋
15,21 スターラップ筋
16 内面
17 V字状溝
18 コッター
20 現場打ちコンクリート
30 機械式継手
40 軽量盛土材(EPSブロック)
P 既製杭
S1,S2,S3 接合空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6