(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001997
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】油冷式スクリュー圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/16 20060101AFI20221227BHJP
F04C 29/02 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
F04C18/16 A
F04C29/02 351D
F04C29/02 361Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102955
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】太田 尚博
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】角 知之
(72)【発明者】
【氏名】原島 寿和
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129AA16
3H129AA18
3H129AA21
3H129AB03
3H129BB03
3H129BB04
3H129BB48
3H129CC09
3H129CC42
(57)【要約】
【課題】
圧縮機本体で発生する主要な加振である、ロータ軸方向の加振、ロータ回転方向の加振、脈動による加振で油分離容器が振動することを低減できる油冷式スクリュー圧縮機を提供する。
【解決手段】
ケーシング内に雌雄一対のロータを有する圧縮機本体と、圧縮機本体を駆動する電動機と、圧縮機本体から吐出された圧縮ガスから油を分離するための油分離容器が一体となっており、圧縮機本体を中心に電動機と油分離容器が逆L字もしくはT字に配置されている油冷式スクリュー圧縮機であって、油分離容器の内部に、貯蔵されている油の油面よりも低い位置に、ロータの軸方向の第1のリブとロータの径方向の第2のリブを設け、圧縮機本体から吐出された圧縮ガスが油分離容器の内壁側面に衝突する位置の円周上に第3のリブを設けた構成とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に雌雄一対のロータを有する圧縮機本体と、該圧縮機本体を駆動する電動機と、前記圧縮機本体から吐出された圧縮ガスから油を分離するための油分離容器が一体となっており、前記圧縮機本体を中心に前記電動機と前記油分離容器が逆L字もしくはT字に配置されている油冷式スクリュー圧縮機であって、
前記油分離容器の内部に、貯蔵されている油の油面よりも低い位置に、前記ロータの軸方向の第1のリブと前記ロータの径方向の第2のリブを設け、前記圧縮機本体から吐出された圧縮ガスが前記油分離容器の内壁側面に衝突する位置の円周上に第3のリブを設けたことを特徴とする油冷式スクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の油冷式スクリュー圧縮機において、
前記第1のリブと前記第2のリブは高さが異なることを特徴とする油冷式スクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載の油冷式スクリュー圧縮機において、
前記第1のリブと前記第2のリブは高さ方向に傾斜を有することを特徴とする油冷式スクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項1に記載の油冷式スクリュー圧縮機において、
前記第1のリブ及び前記第2のリブと前記油分離容器の底面の間に空洞を設けることを特徴とする油冷式スクリュー圧縮機。
【請求項5】
請求項1に記載の油冷式スクリュー圧縮機において、
前記油分離容器の内部に設けた前記第1のリブと前記第2のリブの少なくとも一つの延長線上にある前記油分離容器の外側に第4のリブを設けたことを特徴とする油冷式スクリュー圧縮機。
【請求項6】
請求項1または5に記載の油冷式スクリュー圧縮機において、
前記油分離容器の内部に設けた前記第1のリブと前記第2のリブの少なくとも一方に、中央が上方向に盛り上がっている突出部を設けたことを特徴とする油冷式スクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油冷式スクリュー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の油分離容器を有する油冷式スクリュー圧縮機としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1では、圧縮機本体から吐出された圧縮ガスから油を分離するための油分離容器が一体化されるように固定される。また、電動機の固定子側は圧縮機本体のケーシングに固定され、電動機の回転子側は雄雌一対のロータのうちの何れかに一体化される。そして、このようにして一体化された圧縮機本体、電動機及び油分離容器を、圧縮機本体を中心に逆L字形若しくはT字形に配置した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、設置スペースの低減及び低コスト化を図り、メンテナンス性に優れた油冷式スクリュー圧縮機について述べている。しかしながら、加振源である圧縮機本体と電動機が油分離容器と一体化しているため、油分離容器の振動が大きくなりやすいという点について考慮されていない。また、近年の油冷式スクリュー圧縮機では、機器を大型化せずに圧縮したガスの吐出量を増加させるためロータの回転数を従来機よりも増加することがあり、この場合は回転数の増加に伴い発生する振動がさらに大きくなりやすい傾向にある。
【0005】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、油分離容器で発生する、圧縮機本体が加振源である振動を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、その一例を挙げるならば、ケーシング内に雌雄一対のロータを有する圧縮機本体と、圧縮機本体を駆動する電動機と、圧縮機本体から吐出された圧縮ガスから油を分離するための油分離容器が一体となっており、圧縮機本体を中心に電動機と油分離容器が逆L字もしくはT字に配置されている油冷式スクリュー圧縮機であって、油分離容器の内部に、貯蔵されている油の油面よりも低い位置に、ロータの軸方向の第1のリブとロータの径方向の第2のリブを設け、圧縮機本体から吐出された圧縮ガスが油分離容器の内壁側面に衝突する位置の円周上に第3のリブを設けた構成とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、圧縮機本体で発生する主要な加振である、ロータ軸方向の加振、ロータ回転方向の加振、脈動による加振で油分離容器が振動することを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1における油冷式スクリュー圧縮機の断面図である。
【
図2】実施例1における油冷式スクリュー圧縮機の圧縮機本体、油分離容器、電動機以外を省略した斜視図である。
【
図3】実施例1における油分離容器内部における油の流れを示した図である。
【
図4】実施例2における油分離容器の断面図である。
【
図5】実施例3における油分離容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施例について、以下に図を用いて説明する。
【実施例0010】
図1は、本実施例における圧縮機本体と油分離容器が一体である状態でパッケージ内に収納された油冷式スクリュー圧縮機の断面図である。
【0011】
図1において、パッケージ1は油冷式スクリュー圧縮機の各構成部品を納める。構成部品は、圧縮機本体2、油分離容器3、サクションフィルタ4、サクションフィルタ4と圧縮機本体2を接続する配管5、セパレータエレメント6、ファン7、ファン電動機8、熱交換器9、ベース10である。このうちパッケージ1内に収められた圧縮機本体2は、サクションフィルタ4から吸気しガスの圧縮を行う。圧縮機本体2は、ケーシング内に雌雄一対のロータを有している。油分離容器3は、圧縮ガスから油を分離するための容器である。
【0012】
圧縮ガスは油分離容器3で油と一時分離された後、セパレータエレメント6内にあるフィルタでさらに油と分離し、熱交換器9で冷却され、パッケージ1の外部へ放出される。ただし
図1ではセパレータエレメント6と熱交換器9の間の配管、および熱交換器9からパッケージ1外部への配管は省略している。
【0013】
図2は、
図1の紙面右側面から見た、油冷式スクリュー圧縮機の圧縮機本体2、油分離容器3、電動機30以外を省略した斜視図である。なお、電動機30は、圧縮機本体2の内部にあるロータ11と直結し圧縮機本体2を駆動する。また、圧縮機本体2、油分離容器3は断面図を示している。
【0014】
図2において、油冷式スクリュー圧縮機は、圧縮機本体2を中心に、電動機30と油分離容器3が逆L字もしくはT字に配置されている。油分離容器3の内部には、圧縮機本体2で発生する振動を低減するために、リブ12、リブ13、リブ14を有する。
【0015】
リブ12は、油分離容器3の下側にあり、ロータ11の軸方向に沿った向きに取付けられている。リブ12の目的は、ロータ11のスラスト荷重による軸方向の振動を低減することである。
【0016】
リブ13は、ロータ11の径方向に沿った向きに取付けられている。リブ13の目的は、ロータ11の回転によって発生する振動を低減することである。油分離容器3内の旋回分離を阻害しないよう、これらリブ12、リブ13は油分離容器3の内部に貯蔵されている油の油面よりも低い位置に設けている。
【0017】
続いて、油分離容器3の内壁側面の円周上にあるリブ14について説明する。
図3は油分離容器3のロータ11の軸を含む平面での縦断面図であり、内部における油の流れを示した図である。
【0018】
図3において、圧縮機本体2から吐き出された圧縮ガスと油の流れ15、16が油分離容器3の内壁側面に衝突するとき脈動によって油分離容器3が振動する。この衝突する箇所17付近の内壁側面の円周上にリブ14を設ける。リブ14を設けることで、油分離容器3の壁面を厚くすることができ、脈動による振動を防止する。なお、衝突する箇所17は、吐出量や容器形状による流れの解析を行うことで算出可能である。
【0019】
このように、リブ12、リブ13、リブ14によって、ロータ11の回転方向の振動、ロータ11の軸方向の振動、圧縮ガスの脈動といった、油冷式スクリュー圧縮機において圧縮機本体2が加振源である主要な振動による油分離容器3の振動を低減することができる。
【0020】
また、
図2、
図3に示すように、リブ12、リブ13と油分離容器3の底面の間に空洞18を設けることで排油性と重心の安定性を確保できる。
【0021】
また、リブ12、13、14は
図2、
図3では単一であるが、複数あってもよい。例えば、リブ12、13と交差し、リブ12、13と45度の角度をなすリブを追加してもよい。また、リブ14の上、または下の円周上のリブを追加してもよい。リブの本数を増やすことで振動低減効果をアップできる。
【0022】
また、リブ12とリブ13の高さを変え、高さ方向に傾斜を有することで油分離容器3を鋳造する際に型を抜きやすくすることができる。また、リブ14に関しては、表面に突起を設けることで衝突分離を起こすことができ、油分離容器3の分離効率が向上する。
【0023】
以上のように、本実施例によれば、圧縮機本体で発生する主要な加振である、ロータ軸方向の加振、ロータ回転方向の加振、脈動による加振で油分離容器が振動することを低減できる。
なお、リブ12の延長線上にリブを設けてもリブ19、リブ20と同様の効果を得ることができる。さらに言えば、油分離容器3外側のリブは、油分離容器3内側のリブ12、リブ13、リブ14の少なくとも一つの延長線上にある何れかでもよい。