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▶ 東洋製罐株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023002002
(43)【公開日】2023-01-10
(54)【発明の名称】缶胴及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/02 20060101AFI20221227BHJP
   B65D 8/04 20060101ALI20221227BHJP
   B21D 51/26 20060101ALI20221227BHJP
【FI】
B65D25/02 A
B65D8/04 G
B21D51/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102968
(22)【出願日】2021-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞仁田 清澄
【テーマコード(参考)】
3E061
3E062
【Fターム(参考)】
3E061AA16
3E061AB08
3E061AC09
3E061BA01
3E061BB07
3E061BB13
3E061DA01
3E062AA04
3E062AB02
3E062AC03
3E062DA01
3E062DA02
3E062DA05
(57)【要約】
【課題】内容物である発泡性飲料の泡を適切に発生させる缶を提供する。
【解決手段】缶胴10は、金属で形成された円筒状の筒部11と、底部18とを備え、筒部11の内壁13に、金属の変形によって形成されており、内容物である発泡性飲料の泡の発生を促進するように構成された、複数の凹凸32を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属で形成された円筒状の筒部と、底部とを備え、
前記筒部の内壁に、前記金属の変形によって形成されており、内容物である発泡性飲料の泡の発生を促進するように構成された、複数の凹凸を有する、
缶胴。
【請求項2】
前記凹凸は、前記筒部の区切られた一部分に設けられている、請求項1に記載の缶胴。
【請求項3】
前記凹凸は、前記筒部の区切られた複数部分に分割して設けられている、請求項1に記載の缶胴。
【請求項4】
前記凹凸が形成される領域は、文字又は絵柄を表す領域である、請求項1乃至3の何れかに記載の缶胴。
【請求項5】
前記筒部の外壁は平らである、請求項1乃至4の何れかに記載の缶胴。
【請求項6】
金属で形成された円筒状の筒部と底部とを備える缶胴の内側に、側面の少なくとも一部に凹凸が形成された円柱形状又は円錐台形状をした部材を有するインナーツールを挿入する工程と、
前記缶胴の外側に、円柱形状又は円錐台形状をした部材を有するアウターツールを配置する工程と、
前記インナーツールとアウターツールとで前記缶胴の前記筒部を挟み込みつつ、前記缶胴、前記インナーツール及び前記アウターツールの少なくとも何れかを回転させることで、前記インナーツールに設けられた凹凸に対応した凹凸を前記筒部の内壁に形成する工程と
を含む、缶胴の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶胴及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、飲料の容器の一種として金属缶が用いられている。ビールなどの発泡性飲料用の缶について、例えば特許文献1には、発泡性を良好にするために缶内面底部を粗面化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-180671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、内容物である発泡性飲料の泡を適切に発生させる缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、缶胴は、金属で形成された円筒状の筒部と、底部とを備え、前記筒部の内壁に、前記金属の変形によって形成されており、内容物である発泡性飲料の泡の発生を促進するように構成された、複数の凹凸を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、内容物である発泡性飲料の泡を適切に発生させる缶を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1A図1Aは、一実施形態に係る缶の構成例の概略を示す正面図である。
図1B図1Bは、一実施形態に係る缶の構成例の概略を示す平面図である。
図2図2は、一実施形態に係る缶の構成例の概略を模式的に示す縦断面図である。
図3A図3Aは、中間成形体の胴部の内壁に凹凸を形成する工程の概略を模式的に示す中間成形体の縦断面に対応する図である。
図3B図3Bは、中間成形体の胴部の内壁に凹凸を形成する工程の概略を模式的に示す中間成形体の横断面に対応する図である。
図4A図4Aは、他の例に係る缶の構成例の概略を模式的に示す縦断面図である。
図4B図4Bは、他の例に係る缶の構成例の概略を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、発泡性飲料用の缶及びその製造方法に関する。特に、本実施形態の缶は、例えばビールを内容物とすることに適している。本実施形態の缶は、いわゆるフルオープン蓋を有しており、開口部が大きく開くように構成されている。また、缶胴内面に微細な凹凸が形成されており、開封されたときに内容物において泡の発生が促進されるように、この缶は構成されている。
【0009】
[缶の構成]
図1Aは、本実施形態に係る缶1の構成例を示す正面図であり、図1Bは、本実施形態に係る缶1の構成例を示す平面図である。図2は、缶1の構成例の概略を模式的に示す縦断面図である。缶1は、円筒状の概形を有している。缶1は、いわゆるツーピース缶である。すなわち、缶1は、有底円筒状の缶胴10と、缶胴10の上部に固定される蓋50とを有する。缶胴10及び蓋50は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金などといった金属で形成されている。
【0010】
缶胴10の上下を除いて、円筒形状の部分を胴部12と称することにする。胴部12の下部に連続している底部18の側面は、胴部12の下端から最下部に向けて徐々に径が小さくなっている。底部18の底面は、内圧に抗するため、缶胴10内側にドーム型に湾曲している。
【0011】
胴部12の上部に連続している肩部16は、胴部12の上端から上部に向けて徐々に径が小さくなっている。缶胴10の上部は円形に開口しており、ここを口部17と称することにする。胴部12及び肩部16を含む缶胴10の筒状の部分を筒部11と称することにする。内容物が充填された缶1では、口部17に蓋50が二重巻締等により固定されている。
【0012】
本実施形態の缶1の蓋50は、いわゆるフルオープン蓋である。すなわち、蓋50には、全周にわたってスコア51が設けられており、その内側にタブ52が設けられている。蓋50は、タブ52を起こして引き上げることにより、蓋50の大部分を占める開口部54が開口するように構成されている。缶1については、消費者が開口部54に口をあてて缶1から直接内容物を飲むことが想定されている。したがって、安全のため、蓋50は、ダブルセーフティー蓋であることが好ましい。
【0013】
図2に示すように、缶1の胴部12の内壁13には、凹凸部30が設けられている。凹凸部30において、胴部12の内壁13は、微細な複数の凹凸32を有する。凹凸32は、缶1の胴部12を形成する例えばアルミニウム材が押圧されて窪められるなど、金属の変形によって形成されている。
【0014】
胴部12の内壁13に設けられた凹凸32により、内容物の例えばビールでは、泡の発生が促される。この凹凸32の形状、数、密度、位置などは、例えばビールといった内容物をおいしく味わうために適切な量の泡が適切なタイミングで発生する条件に調整されている。
【0015】
[缶の製造方法]
本実施形態に係る缶1の缶胴10の製造方法の一例について説明する。例えばアルミニウムの板材を、カップ形状に絞り加工し,さらに側壁を数段階のしごき加工で引延ばして、底部18及び胴部12が成形される。さらに、肩部16から口部17までを絞り、上端には、蓋50が巻締されるフランジ47が成形される。このようにして中間成形体40が成形される。
【0016】
図3Aは、中間成形体40の胴部12の内壁13に凹凸32を形成する工程の概略を模式的に示す中間成形体40の縦断面に対応する図である。図3Bは、同工程の概略を模式的に示す中間成形体40の横断面に対応する図である。図3A及び図3Bに示すように、中間成形体40に対して、インナーツール70及びアウターツール80が用いられ、凹凸部30の凹凸32が形成される。
【0017】
インナーツール70は、円柱部71とシャフト73とを有する。円柱部71の外周面は、微細な凹凸加工が施された凹凸面72となっている。この凹凸形状は、缶1の胴部12の内壁13に形成される凹凸32の形状に対応したものとなっている。円柱部71は、シャフト73を介して動力部と接続されており、円柱部71は、シャフト73と共に回転するように構成されている。アウターツール80は、円柱部81とシャフト83とを有する。円柱部81の外周面は、平らな平面82となっている。円柱部81は、シャフト83を介して動力部と接続されており、円柱部81は、シャフト83と共に回転するように構成されている。アウターツール80の円柱部81の外周面を平面82とすることで、インナーツール70の凹凸面72の構成を変更した場合にもそれに応じてアウターツール80の円柱部81を設計し直す必要等がなく、缶1の内壁13の凹凸部30の変更は容易になる。
【0018】
中間成形体40は、回転可能な載置台90に固定される。中間成形体40の内部にインナーツール70の円柱部71が挿入されて配置され、中間成形体40の外側にアウターツール80の円柱部81が配置される。インナーツール70の円柱部71は、凹凸部30が形成される中間成形体40の内壁に押し当てられる。アウターツール80の円柱部81は、中間成形体40の胴部を挟んでインナーツール70の円柱部71と反対側の中間成形体40の外壁に押し当てられる。すなわち、インナーツール70の円柱部71とアウターツール80の円柱部81とで中間成形体40の胴部が挟み込まれる。
【0019】
載置台90が回転することで中間成形体40は回転し、この回転に同期して、インナーツール70の円柱部71及びアウターツール80の円柱部81も回転する。インナーツール70の凹凸面72によって中間成形体40の内壁の例えばアルミニウム材が窪められ、そこに凹凸32が形成される。以上のようにして、内壁に凹凸32が形成された缶胴10が製造される。なお、載置台90が能動的に回転するのではなく、インナーツール70及びアウターツール80の回転に伴って、中間成形体40及びそれを支持する載置台90が受動的に回転してもよい。すなわち、インナーツール70、アウターツール80及び載置台90の少なくとも何れかが動力によって回転させられればよい。
【0020】
中間成形体40の内壁への凹凸32の形成は、インナーツール70の凹凸面72と中間成形体40の内壁との1回の接触によって形成されてもよいが、これに限らない。例えば、中間成形体40が複数回回転してその間内壁にインナーツール70の凹凸面72が押し当てられて凹凸32が形成されてもよい。インナーツール70の凹凸面72と中間成形体40の内壁との接触回数によって中間成形体40の内壁の凹凸32の数や程度などが調整されてもよい。
【0021】
なお、上述の例では、アウターツール80の円柱部81の外周面は平面82となっていると説明したが、これに限らない。円柱部81の外周面には、インナーツール70の円柱部71の凹凸面72の凹凸に対応した凹凸や、その他の凹凸形状が設けられていてもよい。これによって、中間成形体40の内壁の凹凸32の形成効率が向上することもある。
【0022】
また、アウターツール80の円柱部81は、例えば鉄といった金属で形成されていてもよいし、例えばゴムといった弾性部材によって形成されていてもよい。条件によっては、アウターツール80の円柱部81に弾性部材が用いられることで、中間成形体40の内壁に、インナーツール70の凹凸面72に対応した凹凸が形成されやすいことがある。
【0023】
なお、上述の説明では、印刷、塗装などの工程の説明は省略している。インナーツール70による凹凸32の形成工程では、中間成形体40の内面に形成された塗膜等が破損しないように調整されている。
【0024】
[凹凸部の範囲]
缶胴10において凹凸32が形成される凹凸部30の位置及び大きさ等の範囲は、種々あり得る。例えば、泡の量を多くしたい場合には、凹凸部30を広くすればよく、泡の量を少なくしたい場合には、凹凸部30を狭くすればよい。
【0025】
飲み終わりまで一定量の泡を発生させたい場合には、飲み終わりまで一定量の内溶液が凹凸32に接触するように、図4Aに模式的に示すように、胴部12の下の方に、比較的狭い凹凸部30を設ければよい。また、飲み始めだけに泡を発生させたい場合には、例えば、胴部12の上の方に、又は、図4Bに模式的に示すように肩部16に、比較的狭い凹凸部30を設ければよい。また、飲み始めには多くの泡を発生させ、その後はほどほどに泡を発生させたい場合には、例えば、胴部12の下の方と胴部12の上の方又は肩部16とに凹凸部30を設ければよい。このとき、胴部12の上の方又は肩部16に設ける凹凸部30を比較的広くし、胴部12の下の方に設ける凹凸部30を比較的狭くしてもよい。このように、凹凸32は、筒部11の区切られた一部分に設けられてもよいし、筒部11の区切られた複数部分に分割して設けられてもよい。凹凸部30を設ける位置、広さなどに応じて、泡を発生させるタイミング及び発生させる泡の量が調整され得る。また、凹凸32の形状、数、密度などに応じて、発生させる泡の量が調整され得る。
【0026】
なお、肩部16に凹凸部30を設ける場合には、インナーツール70及びアウターツール80は、円柱形状の円柱部に代えて、例えば肩部16の傾斜に応じた円錐台形状の部材を有しているとよい。インナーツール70の凹凸面は、当該円錐台形状の側面に形成され得る。
【0027】
凹凸部30の範囲は、インナーツール70の円柱部71等の大きさ及び円柱部71等が中間成形体40の内壁13に押し当てられる位置によって、容易に調整され得る。あるいは、凹凸部30の範囲は、インナーツール70の円柱部71等において凹凸面72が形成される位置及び大きさなどによって、容易に調整され得る。また、凹凸32の個々の大きさや形状、凹凸32の数、密度などは、インナーツール70に形成される凹凸面72の構成や、その凹凸面72が缶胴10の内壁13に押し付けられる回数などによって、容易に調整され得る。
【0028】
[缶の機能等]
飲料がビールである場合、缶胴10で発生する泡は、ビールが空気に触れて成分が変化することにより味が落ちる現象を防ぐ。また、泡は、炭酸ガスを逃がさない蓋の役割をする。さらに、クリーミーな泡は、舌触りがよく、ビールのおいしさを引き立たせる。本実施形態の缶1の凹凸32は、このような泡を発生させるように調整されている。本実施形態の缶1によれば、消費者は、缶1から直接飲むという飲み方で、おいしいビールを味わうことができる。
【0029】
本実施形態の缶胴10の製造方法によれば、缶胴10の内壁13に精度よく設計通りの凹凸32を形成することができる。このため、缶ごとにばらつくことなく、意図通りの泡を発生させることができる。
【0030】
また、凹凸部30の位置、大きさ等を自由に調整することができるので、製品ごとに、最適な泡の量、泡の発生タイミング等を設定することができる。
【0031】
また、凹凸32が形成される領域によって、文字又は絵柄などが表されてもよい。このようにすることで、消費者が、内容物が入っているときには視認できなかった凹凸32によって形成された文字又は絵柄を、内容物を飲み終わった後に視認できるようになる。例えば、「ありがとう」の文字を形成するように凹凸32が配置されてもよい。このような仕掛けによって、消費者に驚きを与えるなど、消費者の関心を惹くこともできる。
【0032】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1 缶
10 缶胴
11 筒部
12 胴部
13 内壁
14 外壁
16 肩部
17 口部
18 底部
30 凹凸部
32 凹凸
40 中間成形体
47 フランジ
50 蓋
51 スコア
52 タブ
54 開口部
70 インナーツール
71 円柱部
72 凹凸面
73 シャフト
80 アウターツール
81 円柱部
82 平面
83 シャフト
90 載置台

図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A
図4B