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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020068
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】流動化処理土
(51)【国際特許分類】
   E02F 7/00 20060101AFI20230202BHJP
   C09K 17/10 20060101ALI20230202BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
E02F7/00 D
C09K17/10 P
C09K17/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125230
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】509343895
【氏名又は名称】株式会社三和
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】共田 義夫
【テーマコード(参考)】
4H026
【Fターム(参考)】
4H026CA01
4H026CA05
4H026CC02
(57)【要約】
【課題】比重1.15~1.43の流動化処理土の一軸圧縮強度を高めること、リサイクル率を高めることを課題とする。
【解決手段】水と土粒子とを含む調整泥水と、固化材とを混合した流動化処理土であり、そのリサイクル率が97%以上である。前記調整泥水の比重が1.1~1.3であり、前記調整泥水の含水率が62~85%である。前記土粒子は、75μm未満の粒径の細粒分を50~65%含み、前記固化材は、材齢28日の一軸圧縮強度が200kN/m2以上となる量の前記高炉C種セメントを含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と土粒子とを含む調整泥水と、固化材とを混合した流動化処理土において、
前記調整泥水の比重が1.1~1.3であり、
前記調整泥水の含水率が62~85%であり、
前記土粒子は、75μm未満の粒径の細粒分を50~65%含み、
前記固化材は、材齢28日の一軸圧縮強度が200kN/m2以上となる量の前記高炉C種セメントを含有してなり、
リサイクル率が97%以上であることを特徴とする流動化処理土。
【請求項2】
水と土粒子とを含む調整泥水と、固化材とを混合した流動化処理土において、
前記調整泥水の比重が1.1~1.3であり、
前記調整泥水の含水率が62%以上であり、
前記土粒子は、75μm未満の粒径の細粒分を50~65%含み、
前記固化材は、高炉スラグ60~70重量%とセメント30~40重量%とを含有するものであり、
前記流動化処理土の全量1000リットル/m3に対して、前記固化材が乾燥状態で27~85リットル/m3配合されたものであり、
以上とすると共に、
リサイクル率が97%以上であることを特徴とする流動化処理土。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動化処理土に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、本願出願人は特許文献1や特許文献2に示す流動化処理土に関する技術を提案している。
【0003】
特許文献1は、建設残土を使用することにより、配管の管内などの空間を充填するものであって、残土を収容する施設敷地と、残土が充填される空間がある現場とは、夫々異なる場所であり、上記施設敷地に少なくとも収容槽を設置し、収容槽に収容された残土に水を混合し、残土に水を混合した後、施設敷地においてセメントを混入せずに、現場まで残土を移送し、タンクとバキュームポンプとを備えるバキューム車を用い、現場において、少なくとも、ミキサーと、バキューム車と、サンドポンプとを設置しておき、移送されてきた残土をミキサーに移してセメントを加え、練り潰して、フロー300mm~450mmのスラリーモルタルを形成し、上記にて形成されたモルタルを、バキューム車のタンクに移し、バキューム車のタンクへ、サンドポンプを接続し、サンドポンプに吐出用のホースを接続し、サンドポンプとバキューム車のバキュームポンプとを作動させることにより、外部より上記の空間内に、当該モルタルを圧送する残土充填方法を開示するものである。この残土充填方法では、比重1.15の比較的多い水分量の調整汚泥に対して、比較的多量の固化材(上記調整汚泥1m3に対して上記固化材150kg)を加えることで、流動性が極めて高く、アジテータ車(コンクリートキミサー車)のみならず、バキューム車で移送できると共に、地中埋設管内で500m以上の圧送を可能としたものである。この特許文献1の方法は、上記のように地中埋設管内での圧送距離を長く伸ばすことができたが、高い一軸圧縮強度を実現することはできなかった。特に、露天の埋め戻し現場にあっては、埋め戻した後の地盤の強度が、埋め戻し現場周辺の掘削前地盤と略等しいか、それ以上となることが望ましい。
【0004】
特許文献2は、特許文献1の課題を解決するもので、第1に、汚泥に対して、セメント、セメント系固化材、セメント・石灰複合系固化材、及び石灰の中から選択した固化材を加えることにより、ブリージング率3%以下の流動化処理土を製造すると共に、製造した流動化処理土で埋め戻しを行なう方法において、上記汚泥に対して調整汚泥製造工程と混練処理工程を行なうものであり、上記調整汚泥製造工程は、汚泥に対する水分調整を行なうことで、比重1.18以上1.28未満に調整した調整汚泥を得る工程であり、上記混練処理工程は、上記調整汚泥1m3に対して上記固化材を150kg以上260kg未満の範囲で加えて混練する工程であり、さらに上記混練処理工程は、上記調整汚泥に脱水ケーキを加える脱水ケーキ添加工程を含み、上記脱水ケーキ添加工程は、予め得られていた調整汚泥に対して上記の固化材を加えてから脱水することによって脱水ケーキを製造し、この脱水ケーキを、上記調整汚泥に加えるものであり、上記の混練処理工程の終了時の流動化処理土の比重が1.25以上であり、これらの工程によって、材齢28日の一軸圧縮強度が200kN/m2以上の流動化処理土を製造すること、第2に、上記流動化処理土を、移送すると共に、ポンプによって埋め戻し空間に充填し、材齢28日の一軸圧縮強度が200kN/m2以上の埋め戻し状態を得ることを提案している。
【0005】
従来、流動化処理土におけるセメント系の固化材、特に地中埋設管内で500m以上の圧送をも可能とするような流動化処理土における固化材としては、高炉セメント(B種)が広く用いられていた。
【0006】
特許文献3や4には、高炉セメントにおける高炉スラグの配合量を変化させることが開示されている。ところがこれらの文献にて開示された技術は、比重の高い高規格流動化処理土の技術であり長距離圧送をも可能とする流動化処理土には当てはまらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許4098675号公報
【特許文献2】特許第5269235号公報
【特許文献3】特許第6124519号公報
【特許文献4】特許第6508526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、比重1.15~1.43の流動化処理土の一軸圧縮強度を高めることを課題とする。
本発明が解決しようとする課題は、比重1.15~1.43の流動化処理土のリサイクル率を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、比重1.15~1.43の流動化処理土に使用する固化材を高炉B種セメントから高炉C種セメントに変更することを提案する。
高炉B種セメントは、高炉スラグ(廃棄物)の配合量が、30%を超えて60%以下のセメントであり、高炉C種セメントは、高炉スラグ(廃棄物)の配合量が、60%を超えて70%以下のセメントである。
【0010】
(1)一軸圧縮強度の比較
高炉B種セメントと高炉C種セメントとをそれぞれ配合した流動化処理土の一軸圧縮強度を比較すると下記の通りとなる。なお、下記の例は、あくまでもひとつの具体例であり、本発明はこの具体例に限定して理解されるべきではない。
【0011】
【表1】
【0012】
上記の例に示されるように、高炉B種セメントと高炉C種セメントとの配合量を等しいもので比較すると、高炉C種セメント配合の流動化処理土の方が、一軸圧縮強度が高くなる。言い換えれば、高炉C種セメント80kg配合時の一軸圧縮強度と、高炉B種セメント150kg配合時の一軸圧縮強度が、略同等となる。
【0013】
(2)リサイクル率の比較
高炉B種セメントと高炉C種セメントとをそれぞれ配合した流動化処理土のリサイクル率(廃棄物の使用率)を比較すると下記の通りとなる。なお、下記の例は、あくまでもひとつの具体例であり、本発明はこの具体例に限定して理解されるべきではない。
【0014】
(2-1)高炉B種セメント150kg配合時のリサイクル率
高炉B種セメント150kg(49.34L)+調整泥水1200kg(1,000L)=流動化処理土1350kg(1049.34L)、比重:1.287の流動化処理土のリサイクル率
ここで調整泥水は、建設残土あるいは建設汚泥から得られたものであり、全量がリサイクル品であるとする。
【0015】
・高炉セメント中の高炉スラグのリサイクル率を考慮しない場合のリサイクル率r1は、
r1=(b/a+b)×100で求められ、88.9%である。
但し
a:高炉B種セメントの質量
b:調整泥水の質量
a+b:流動化処理土の質量
【0016】
・高炉スラグのリサイクル率を考慮した場合のリサイクル率r2は、
r2=[(b+c)/(a+b)]×100で求められ、92.2%である。
但し
a:高炉B種セメントの質量
b:調整泥水の質量
a+b:流動化処理土の質量
a:高炉B種セメントの質量
c:高炉B種セメント中の高炉スラグの質量
なお、高炉B種セメント中の高炉スラグの配合量は30質量%とし、その全量がリサイクル品であるとする。
【0017】
(2-2)高炉C種セメント80kg配合時のリサイクル率
上記の高炉B種セメント150kg配合時と同等の一軸圧縮強度を得るには、高炉C種セメント80kg配合を配合すれば足る。よって、
高炉C種セメント80kg(27.03L)+調整泥水1200kg(1,000L)=流動化処理土1280kg(1023.03L)、比重:1.251
ここで調整泥水は、建設残土から得られたものであり、全量がリサイクル品であるとする。
【0018】
・高炉セメント中の高炉スラグのリサイクル率を考慮しない場合のリサイクル率r1は、
r1=(b/a+b)×100で求められ、93.8%である。
但し
a:高炉B種セメントの質量
b:調整泥水の質量
a+b:流動化処理土の質量
【0019】
・高炉スラグのリサイクル率を考慮した場合のリサイクル率r2は、
r2=[(b+c)/(a+b)]×100で求められ、97.5%である。
但し
a:高炉B種セメントの質量
b:調整泥水の質量
a+b:流動化処理土の質量
a:高炉C種セメントの質量
c:高炉C種セメント中の高炉スラグの質量
なお、高炉C種セメント中の高炉スラグの配合量は60質量%とし、その全量がリサイクル品であるとする。
【0020】
上記のように、従来の一般的な要求強度で比較した場合、高炉C種セメントを配合した流動化処理土の方が高炉B種セメントを配合した流動化処理土よりもリサイクル率が高い。
【0021】
以上から流動化処理土に使用するセメントを高炉C種セメントに変更することで「高強度流動化処理土」「高リサイクル流動化処理土」を提供することができたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、比重1.15~1.43の流動化処理土の一軸圧縮強度を高めることができたものである。
本発明が解決しようとする課題は、比重1.15~1.43の流動化処理土のリサイクル率を高めることができたものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の実施の形態にかかる流動化処理土は、調整泥水と、固化材とを混合した
【0024】
ものであって、地中空間の埋め戻し主として用いることができる。特に比重が1.15~1.43であり、ポンプによる長距離圧送にも対応できるものであることが望ましい。この流動化処理土に使用する固化材としてのセメントを高炉C種セメントに変更することで「高強度流動化処理土」「高リサイクル流動化処理土」とすることができるものである。
【0025】
(調整泥水)
調整泥水の比重は1.1~1.3であり、特に1.12~1.30であることが適当である。
調整泥水の含水率は62~85であり、特に65~75ことが適当である。
【0026】
(土粒子)
75μm未満の粒径の細粒分を50~65%含むものであることが、適当な流動性を得る点で好ましい。
細粒分(< 0.075mm)は、粘土(< 0.005mm)とシルト(0.005~<0.075mm)とを含み、これより大きな粗粒分(0.075 - 75mm)には砂(0.075 - 2mm)と礫(2 - 75mm)とが含まれるが、本発明の土粒子には礫を含まないものであることが好ましい。
【0027】
(水)
この調整泥水の含水率は62~85%であり、特に65~75%とすることが適当である。
【0028】
(固化材)
固化材には、高炉C種セメントを用いる。高炉セメントはポルトランドセメントに高炉スラグ微粉末を所定量混合して製造されたセメントであり、高炉スラグ微粉末の配合量により、A種(5を超え30%以下)、B種(30を超え60%以下)、C種(60を超え70%以下)の3種類に分類されているが、一般的にはB種が最も広く使用されている。
【0029】
高炉スラグは、高炉で鉄鉱石に含まれる鉄以外の成分と、副原料の石灰石やコークス中の灰分が一緒に溶融分離回収されたサイクル品であり、高炉スラグの量が多くなるほどセメントのリサイクル率が高くなる。高炉スラグの量が多くなるほどまた、一軸圧縮強度が高くなる。
【0030】
(調整泥水と固化材)
流動化処理土は、上記の調整泥水に上記の固化材を常法により添加して均一に混合することによって製造される。
本発明は、材齢28日の一軸圧縮強度が200kN/m2以上となる量の高炉C種セメントを配合した流動化処理土を提供する。
また本発明は、流動化処理土の全量1000リットル/m3に対して、固化材が乾燥状態で27~85リットル/m3配合された流動化処理土を提供したものである。
【0031】
(流動化処理土のリサイクル率)
本発明の流動化処理土は、そのリサイクル率が97%以上である。なお、本発明におけるリサイクル率とは、流動化処理土の配合原料中におけるリサイクル品が占める質量比率を言う。
調整泥水1200kg(1,000L)と高炉C種セメント80kg(27.03L)とを含有する流動化処理土1280kg(1023.03L)にあっては、調整泥水は全量がリサイクル品であり、高炉C種セメントは、そのうちの高炉スラグがリサイクル品である。
よって、流動化処理土のリサイクル率は、
(調整泥水の全質量+高炉スラグの全質量)/流動化処理土の全質量
で求められる。
ここで、高炉C種セメント80kg中の高炉スラグの配合量が60%であるとすると、リサイクル率は、
[(1200+80×0.6)/1280]×100=97.5%となる。
【実施例0032】
以下本発明の実施例を比較例と共に示すが、本発明はこの実施例に限定して理解されるべきではない。
調整泥水1~5を表2に記載の通り用意した。
【0033】
【表2】
【0034】
調整泥水1~51,000L(1200kg)に対して、固化材(EMC:高炉C種セメント 高炉スラグの配合量は60%超)を実施例1~5の固化材配合量の配合量で添加して流動化処理土を作成した。例えば、実施例1は、70 kg の固化材を調整泥水1~5に対して配合したものであり、配合した調整泥水は1~5までの5種類がある。そのため実施例1は、調整泥水の種類に伴い5種類が存在することになり、実施例1~5について調整泥水1~5の全25種類を作成し、それぞれについて材齢28日の一軸圧縮強度を測定し、その結果を表3に示した。
【0035】
【表3】
【0036】
同様に比較例についても、調整泥水1~5に対して、固化材(BB:高炉B種セメント 高炉スラグの配合量は30%超)を比較例1~5の固化材配合量の配合量で添加して流動化処理土を全25種類作成し、それぞれについて材齢28日の一軸圧縮強度を測定し、その結果を表4に示した。
【0037】
【表4】
以上、いずれの実施例にあっても、比較に比べて流動化処理土の一軸圧縮強度を高めることができたことが確認された。
【0038】
また、同等の一軸圧縮強度のものを比べると、比較例よりも実施例の方が固化材の配合量が少なくて済み、且つセメント中の高炉スラグの配合率が高くなるため、流動化処理土のリサイクル率を高めることができたものである。