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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020080
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】青色飲料および青色飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/56 20060101AFI20230202BHJP
   A23L 2/58 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
A23L2/56
A23L2/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125252
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】藤森 美晴
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LE10
4B117LK06
4B117LL01
4B117LL03
(57)【要約】
【課題】青色飲料の外観による食欲減退を効果的に改善できる技術を提供する。
【解決手段】本発明の青色飲料は、リモネン、テルピネン、ゲラニオール、ピネン、およびカルベオールの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分を含み、pH(20℃)が3.0~4.0である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リモネン、テルピネン、ゲラニオール、ピネン、およびカルベオールの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分を含み、pH(20℃)が3.0~4.0である、青色飲料。
【請求項2】
柑橘風味を呈する、請求項1に記載の青色飲料。
【請求項3】
前記飲料が、20℃、pH3.8の条件下において、560~750nmの間に最大吸収波長(λmax)を有し、かつ当該λmaxにおける吸光度が0.05~3である、請求項1または2に記載の青色飲料。
【請求項4】
前記香気成分は、少なくともリモネンを含む、請求項1乃至3いずれか一項に記載の青色飲料。
【請求項5】
天然色素を含む、請求項1乃至4いずれか一項に記載の青色飲料。
【請求項6】
前記天然色素は、アントシアニンを含む、請求項5に記載の青色飲料。
【請求項7】
前記リモネンを0.1~50ppm、
前記テルピネンを0.01~20ppm、
前記ゲラニオールを0.001~20ppm、
前記ピネンを0.01~50ppm、および
前記カルベオールを0.001~10ppm
の中から選ばれる1または2以上を含む、請求項1乃至6いずれか一項に記載の青色飲料。
【請求項8】
pH(20℃)が3.5~4.0である、請求項1乃至7いずれか一項に記載の青色飲料。
【請求項9】
非アルコール飲料である、請求項1乃至8いずれか一項に記載の青色飲料。
【請求項10】
容器詰めされている、請求項1乃至9いずれか一項に記載の青色飲料。
【請求項11】
前記容器は無色透明である、請求項10に記載の青色飲料。
【請求項12】
リモネン、テルピネン、ゲラニオール、ピネン、およびカルベオールの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分を配合する工程と、
pH(20℃)が3.0~4.0となるように調製する工程と、
を含む、青色飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青色飲料および青色飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青色の飲食物は、一般に食欲を減退させることが知られている。例えば、非特許文献1には、新食品の需要決定因子として色彩、形態、においが挙げられ、食品の色がもっとも重要な決定因子であることが開示されている。そして、調査の結果、食欲を減退させる色として青色、紫色が上位に挙げられたことが報告されている。
【0003】
一方、市場では青色を呈する飲料や食品は真新しく、需要者の目を惹く等の利点が挙げられる。近年、これらの研究・開発が進められており、例えば、特許文献1には、青色のアントシアニンを含むアルコール飲料が開示されている。同文献には、青色のアントシアニンを含む植物抽出物に由来するギスギス感がアルコール飲料で顕著になり、酸味料を使用することでギスギス感を緩和できることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-147633号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】奥田弘枝、田坂美央、由井明子、川染節江著「食品の色彩と味覚の関係-日本の20歳代の場合-」日本調理科学会誌、Vo1.35、No.1、2002年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、青色飲料の外観による食欲減退の課題に着目し、これを解決すべく鋭意検討を行ったところ、青色飲料に特定の香気成分を組み合わせることによって、見た目では食欲が感じられない場合であっても、飲用したときに効果的に食欲を感じられるようにできることを新たに見出した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
リモネン、テルピネン、ゲラニオール、ピネン、およびカルベオールの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分を含み、pH(20℃)が3.0~4.0である、青色飲料が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、
リモネン、テルピネン、ゲラニオール、ピネン、およびカルベオールの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分を配合する工程と、
pH(20℃)が3.0~4.0となるように調製する工程と、
を含む、青色飲料の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、青色飲料の外観による食欲減退を効果的に改善できる技術を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0011】
本実施形態において「青色飲料」とは、飲料の外観を目視したときに少なくとも青色を感じさせるものであればよく、見た目において食欲を減退させる色相を呈する飲料を意図する。例えば、「青色飲料」は、青紫色、緑青色、青緑色と呼ばれる色を感じさせるものであってもよい。
【0012】
<青色飲料>
本実施形態の青色飲料(以下、単に「飲料」ともいう。)は、リモネン、テルピネン、ゲラニオール、ピネン、およびカルベオールの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分を含み、pH(20℃)が3.0~4.0である。
本実施形態の青色飲料は、当該構成を満たすことにより、青色飲料の外観による食欲減退を効果的に回復できる。すなわち、青色飲料を飲用する前の見た目においては、青色の色相により食欲が減退してしまうにも関わらず、実際に飲料を飲用して上記の特定の香気成分の香りを口中で感じるとともに、適度な酸味によって、減退した食欲を回復し、食欲を感じられるようにすることができる。
かかる理由の詳細は明らかではないが、次のように推測される。まず、本実施形態の青色飲料に含まれるリモネン、テルピネン、ゲラニオール、ピネン、およびカルベオールといった香気成分はいずれも、爽やかで、柑橘系の香りが感じられやすいものである。そこで、青色の色彩によって印象付けられる清涼感、爽やかさ、すっきり感、さっぱり感等といったイメージと、上記の特定の香気成分の香りから想起されるイメージが合致し、これに適度な酸味が加わることで、相乗的においしさが感じられ、飲み続けたいという欲求が生じ、減退した食欲を改善できると考えられる。
【0013】
本実施形態において、飲料に含まれる香気成分は、リモネン、テルピネン、ゲラニオール、ピネン、およびカルベオールの中から選ばれる1種または2種以上を含むものであって、少なくともリモネンを含むことが好ましい。また、各香気成分の濃度は、香気成分の種類および組み合わせに応じて調整することができる。
【0014】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、3.0~4.0であり、好ましくは3.5~4.0であり、より好ましくは3.6~4.0である。これにより、適度な酸味がえられ、嗜好性を良好にできる。
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、特定酸の量を変えることや、pH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0015】
[青色色素]
本実施形態の飲料は、液色を青色とするために青色色素を含むことができる。青色色素としては、食用のものであれば特に限定されず用いることができるが、例えば、青色色素を含む植物の葉、枝、根、花等から溶媒を用いて抽出され、乾燥・粉末化された天然色素、または食品用の公知の合成着色料が挙げられる。
【0016】
青色色素としては、より具体的には、バタフライピー色素、またはクチナシ由来のクチナシ青色素等の天然色素が挙げられる。また、青色色素は、アントシアニンを含むものとしてもよい。
【0017】
また、合成着色料としては、例えば、食用青色1号、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用青色2号、及び食用青色2号アルミニウムレーキ、食用青色5号などが挙げられる。
【0018】
これら青色色素は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。
なかでも、青色色素は、天然色素を含むことが好ましい。また、天然色素としては鮮やかな青色が得られる点から、バタフライピーから得られるバタフライピー色素を含むことがより好ましい。
【0019】
上記のバタフライピー色素は、マメ科チョウマメの花弁、または萼を有する花弁より抽出された青色色素である。バタフライピー色素は、例えば、バタフライピーの花および/または花弁(乾燥させて茶葉としたものであってもよい)に水または熱水を加え一定時間そのまま放置するか、または加熱して色素成分を抽出(浸出)させた後、抽出液を濾過し、加熱や減圧等により濃縮させることができる。または、抽出液に賦形剤を添加したのち、粉末化したものであってもよい。
【0020】
[λmax]
本実施形態の飲料は、20℃、pH3.8の条件下において、560~750nmの間に最大吸収波長(λmax)を有し、かつ当該λmaxにおける吸光度が0.05~3である。
すなわち、本実施形態の飲料が、光波長560~750nmの間に最大吸収波長を有することは、青色~紫色を呈することを意図する。換言すると、本実施形態の飲料は、その外観において食欲を減退させやすい色相を呈する。
また、本実施形態の飲料において当該最大吸収波長(λmax)は、好ましくは562~700nmの間、より好ましくは565~650nmの間、さらに好ましくは565~605nmの間である。
λmaxにおける吸光度は、好ましくは0.05~2.9であり、より好ましくは0.1~2.8であり、さらに好ましくは0.5~2.7である。吸光度を上記数値範囲内とすることにより、鮮やかな青色の飲料が得られる。
本実施形態の飲料のλmax、および吸光度は、青色色素の配合量、pH等によって調整することができる。
【0021】
[柑橘風味]
本実施形態の飲料は、柑橘風味を呈することが好ましい。これにより、青色のイメージとの相乗効果を得つつ、食欲減退改善効果をより向上させることができる。また、飲料の嗜好性を良好にできる。
柑橘風味は、飲料を飲用した際に後述する柑橘類を想起させる風味であればよく、リモネン、テルピネン、ゲラニオール、ピネン、およびカルベオールの他、柑橘類果汁や柑橘類フレーバーなどを用いることによって得られてもよい。
【0022】
上記の柑橘類とは、ミカン科ミカン亜科に属する植物の果実を意味する。具体的な柑橘類としては、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、ブラッドオレンジなどのオレンジ類、うんしゅうみかん、マンダリンオレンジ、ぽんかん、紀州みかん、アンコール、ダンゼリン、コウジ、シークワーサー、タチバナ、不知火などのみかん類、ナツダイダイ、はっさく、ヒュウガナツ、サンボウカン、河内晩柑、キヌカワ、ナルトなどの雑柑類、タンカン、いよかん、マーコット、清見、オーランド、ミネオラ、セミノール等のタンゴール・タンゼロ類、メキシカンライム、タヒチライム等のライム類、リスボンレモン、ユーレカレモン、ディアマンテ、エトローグ等のレモン類、バンペイユ、土佐ブンタン等のブンタン、ダンカン、マーシュ、トムソン、ルビーレッド等のグレープフルーツ類、ゆず、カボス、スダチ、ハナユ、キズ等のユズ類、キンカン、カラタチが挙げられる。
【0023】
以下、本発明の飲料に含まれる各成分について説明する。
【0024】
[リモネン]
リモネンは、単環式モノテルペンの一種で、d体、l体の光学異性体が知られる。レモン様の香りを呈し、レモンやオレンジなどの精油に含まれる。
本実施形態の飲料において、リモネンの濃度は0.1~50ppmが好ましく、0.5~40ppmがより好ましく、1.5~30ppmがさらに好ましく、2~25ppmがことさらに好ましい。
リモネン濃度を上記下限値以上とすることにより、良好な嗜好性を得つつ、食欲減退を改善できる。一方、リモネン濃度を上記上限値以下とすることにより、良好な嗜好性と食欲減退改善効果のバランスを高度に保持できる。
【0025】
[テルピネン]
テルピネンは、モノテルペンの一種で、二重結合の位置によってα-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、およびδ-テルピネンがある。α-テルピネン、γ-テルピネンは、レモン精油に含まれる。なかでも、テルピネンとしては、γ-テルピネンであることが好ましい。
本実施形態の飲料において、テルピネンの濃度は0.01~20ppmが好ましく、0.05~10ppmがより好ましく、0.2~6ppm以下がさらに好ましい。
テルピネン濃度を上記下限値以上とすることにより、良好な嗜好性を得つつ、食欲減退を改善できる。一方、テルピネン濃度を上記上限値以下とすることにより、良好な嗜好性と食欲減退改善効果のバランスを高度に保持できる。
【0026】
[ゲラニオール]
ゲラニオールは、直鎖モノテルペノイドの一種であり、バラ様の香りを呈するものである。本実施形態において、ゲラニオールは、天然物由来のものであってもよく、合成されたものであってもよい。
本実施形態の飲料において、ゲラニオールの濃度は0.001~20ppmが好ましく、0.02~10ppmがより好ましく、0.1~5ppm以下がさらに好ましい。
ゲラニオール濃度を上記下限値以上とすることにより、良好な嗜好性を得つつ、食欲減を退改善できる。一方、ゲラニオール濃度を上記上限値以下とすることにより、良好な嗜好性と食欲減退改善効果のバランスを高度に保持できる。
【0027】
[ピネン]
ピネンは、二環性モノテルペンの一種であり、α‐,β‐の2異性体があり、またそれぞれにd‐(右旋回(+)),l‐(左旋回(-))の光学異性体がある。甘い、パイナップル様の香気を呈する。本実施形態において、ピネンは、天然物由来のものであってもよく、合成されたものであってもよい。なかでも、ピネンとしては、β‐ピネンであることが好ましく、l‐β‐ピネンであることがより好ましい。
本実施形態の飲料において、ピネンの濃度は0.01~50ppmが好ましく、0.1~35ppmがより好ましく、0.6~25ppm以下がさらに好ましい。
ピネン濃度を上記下限値以上とすることにより、良好な嗜好性を得つつ、食欲減退を改善できる。一方、ピネン濃度を上記上限値以下とすることにより、良好な嗜好性と食欲減退改善効果のバランスを高度に保持できる。
【0028】
[カルベオール]
カルベオールは、テルペノイドアルコールの一種であり、シス,トランスの幾何異性体があり、またそれぞれにd‐(右旋回(+)),l‐(左旋回(-))の光学異性体がある。スペアミント、キャラウェイ様の香気を呈する。本実施形態において、カルベオールは、スペアミント、ペパーミント、キャラウェイ、ディル、セロリシード、およびローレルなどの天然物由来のものであってもよく、合成されたものであってもよい。なかでも、カルベオールとしては、l‐カルベオールであることが好ましい。
本実施形態の飲料において、カルベオールの濃度は0.001~10ppmが好ましく、0.005~5ppmがより好ましく、0.01~3ppm以下がさらに好ましい。
カルベオール濃度を上記下限値以上とすることにより、良好な嗜好性を得つつ、食欲減退改善できる。一方、カルベオール濃度を上記上限値以下とすることにより、良好な嗜好性と食欲減退改善効果のバランスを高度に保持できる。
【0029】
本実施形態の飲料中の各香気成分の濃度は、以下に示す条件で、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)を用いた固相マイクロ抽出法(SPME)法により行うことができる。定量には、標準添加法を用いることができるが、必要に応じて絶対検量線法を用いてもよい。
(条件)
装置:GC:Agilent Technologies社製 7890A
MS:Agilent Technologies社製 5975 C MSD
HS:Gerstel社製MPS
TUBE:50/30μm DVB/CAR/PDMS
カラム:DB-WAX UI 0.25mm×30m×0.25μm
温度条件:40℃(5分)~3℃/分→180℃~20℃/分→230℃(5分)
キャリアガス流量:He 2ml/分
注入法:スプリットレス
イオン源温度:230℃
【0030】
[その他の成分]
本実施形態の飲料においては、本発明の効果が奏される限りにおいて、上記以外の他の成分を含んでもよい。具体的には、糖類や高甘味度甘味料などの甘味料、酸味料、各種果汁、上記のリモネン、テルピネン、ゲラニオール、ピネン、およびカルベオールを除く香気成分、ビタミン、着色料、食塩、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤、および増粘剤などの飲料に通常配合される成分を含有することができる。
【0031】
上記の甘味料としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類、キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、およびサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記の酸味料としては、例えば、無水クエン酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、フィチン酸、アスコルビン酸、リン酸又はそれらの塩類等が挙げられる。
【0033】
上記の果汁としては、例えば、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、リンゴ果汁、モモ果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、ブドウ果汁、およびマンゴー果汁等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。なかでも、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、およびライム果汁等の柑橘系果汁が好ましい。
【0034】
[糖度(Brix値)]
本実施形態の飲料(20℃)の糖度(Brix値)は、飲料の嗜好性に応じて適宜設定できるが、例えば、糖度1~20が好ましく、糖度5~15がより好ましい。
糖度(Brix値)は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
また、糖度は、例えば、上記の甘味料、果汁、その他の各種成分の含有量により調整することができる。
【0035】
[酸度]
本実施形態の飲料の酸度は、0.1g/100ml以上、0.5g/100ml以下であることが好ましい。酸度を、上記下限値以上とすることにより、おいしさが得られるようになる。一方、酸度を、上記上限値以下とすることにより、過度な酸味を抑制し、おいしさを両立できる。
酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができる。また酸度は、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0036】
[炭酸ガス]
また、本実施形態の飲料は、炭酸ガスを含有する炭酸飲料としてもよい。炭酸ガス圧は、嗜好性に応じて適宜調整されるが、食欲減退改善と嗜好性のバランスを良好にする観点から、炭酸ガス圧(0℃、1気圧)が2.0ガスボリューム以上であることが好ましく、2.3ガスボリューム以上であることがより好ましく、2.5ガスボリューム以上であることがさらに好ましい。一方、飲料の嗜好性を保持し、ガス抜けを抑制する観点から、炭酸ガス圧(0℃、1気圧)が4.5ガスボリューム以下であることが好ましく、3.5ガスボリューム以下であることがより好ましい。
【0037】
炭酸ガスの圧入方法は、公知の方法を用いることができる。また、炭酸飲料中のガスボリュームは公知の方法で測定することができる。例えば、市販の測定器(京都電子工業製ガスボリューム測定装置GVA-500A)を用いて測定することができる。
なお、ガスボリューム(炭酸ガス圧力)は、標準状態(1気圧、0℃)において、炭酸飲料全体の体積に対して、炭酸飲料に溶けている炭酸ガスの体積を表したものである。
【0038】
なお、本実施形態の飲料が炭酸ガスを含む場合、飲料についての上記糖度、酸度、pH、λ(max)、および香気成分濃度等の測定は、炭酸ガスを常法によって脱気した上で実施する。
【0039】
[非アルコール]
また、本実施形態の飲料は、非アルコール飲料であることが好ましい。非アルコール飲料とは、アルコールを実質的に含有しない飲料をいい、具体的にはエタノールなどのアルコールの含有量が1.0体積/体積%未満である飲料を意味する。
【0040】
[容器]
本実施形態の飲料に用いられる容器は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。飲料を外観から視認できる観点からは、容器は無色透明であることが好ましい。
飲料の容量としては、特に限定されないが、100~2000mlが好ましく、飲み切りやすい点からは、100~600mlがより好ましい。
【0041】
容器詰めされた飲料の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。
【0042】
[青色飲料の製造方法]
本実施形態の青色飲料の製造方法は、リモネン、テルピネン、ゲラニオール、ピネン、およびカルベオールの中から選ばれる1種または2種以上の香気成分を配合する工程と、pH(20℃)が3.0~4.0となるように調製する工程と、を含む。
上記の配合する工程と調製する工程は、この順に行われてもよく、順序を入れ替えてもよく、また、同時に行われてもよい。また、各工程は複数回にわたり、行われてもよい。
本実施形態の青色飲料の製造方法によれば、青色飲料の外観による食欲減退を効果的に改善できる飲料が得られる。
なお飲料に含まれる各種成分、飲料の物性などは上記飲料と同様である。
【0043】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0044】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」は「質量%」を表す。また、表中の「-」は該当するものがないことを表す。
【0045】
[吸光度の測定]
・吸光光度法(装置名「U-3900H形分光光度計」による分析を行い、最大吸光波長(λmax)および最大吸光波長での吸光度を計測した。
(測定条件)
測定モード:波長スキャン
開始波長:600nm
終了波長:550nm
スキャンスピード:120nm/min
サンプリング間隔:0.20nm
スリット:2nm
セル長:10mm
【0046】
[pHの測定]
飲料の液温を20℃とし、東亜ディーケーケー社製「HM-30R」(電極:東亜ディーケーケー社製「GST-5741C」)を用いて測定した。
【0047】
[飲料の原料]
・バタフライピーパウダー(青色色素)
・アカダイコン色素(赤色色素)
・ベニバナ色素(黄色色素)
・ベーキングシロップ(茶色色素)
・果糖ぶどう糖液糖(55%異性化糖)
・無水クエン酸
・クエン酸三ナトリウム
・ストロベリーフレーバー
・紅茶香料
・ライムフレーバー
【0048】
<実験1:飲料の色相およびイメージと食欲との相関性の検証>
表1に示す処方となるように原料と水とを混合して、糖度(Brix)8.0、pH3.80(20℃)の飲料(ベースA~E)を調製した。得られた飲料を用いて、吸光光度法による分析、および以下に示す官能評価1、2を行った。結果を表1、2に示す。
次に、各ベースA~Eを用いて、表3に示す処方となるように各香気成分を添加し、容量200mlの無色透明なペットボトル容器にホットパック充填し、容器詰め飲料を調製した。得られた飲料について、以下に示す官能評価3を行った。結果を表3に示す。
なお、上記各ベースに香気成分を添加した後の吸光光度法による分析結果は、香気成分を添加する前の数値と同等であった。
【0049】
[官能評価]
・官能評価1:見た目の食欲
熟練した技術者5名が飲料の外観を観察し、「食欲を感じない」を1点、「食欲を感じる」を7点、ベースA(無色透明・無香料)を4点として、1点~7点までの7段階で評価を行い、その平均値を評点とした。
【0050】
・官能評価2:飲用後のおいしさ
熟練した技術者5名が飲料(20℃)を試飲し、「おいしさを感じない」を1点、「おいしさを感じる」を7点として、1点~7点までの7段階で評価を行った。ベースA(無色透明・無香料)の平均値をとり、得られたベースAの平均値に対する差分の平均を各ベースの評点とした。
【0051】
・官能評価3:飲用後の食欲、飲用後のおいしさ
熟練した技術者5名が飲料(20℃)を試飲し、「食欲を感じない」「おいしさを感じない」を1点、「食欲を感じる」「おいしさを感じる」を7点、ベースA(無色透明・無香料)を4点として、1点~7点までの7段階で評価を行い、その平均値を評点とした。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
表2に示されるように、「見た目の食欲」(官能評価1)について、無色透明なベースAの評点4に対し、赤色色素を含むベースB、黄色色素を含むベースC、茶色色素を含むベースEは4より高い評点であったが、青色色素を含むベースDの評点は2.0と低かった。これより、青色飲料は外観において食欲減退傾向があることが確認された。また、表2の「飲用後のおいしさ」(官能評価2)は、香気成分が添加される前の、飲用後のおいしさを評価するものである。換言すると、飲料の外観の色によるおいしさへの影響・効果を確認するものである。その結果、青色色素を含むベースDの評点は-0.2と最も低く、青色によるおいしさに対する効果は低いことが確認された。
また、表3に示されるように、ライムフレーバー、ストロベリーフレーバー、紅茶香料をそれぞれ配合した場合、飲用後の「食欲」、「おいしさ」(官能評価3)はベースA~Dによって、すなわち飲料の色によってばらつきがあった。例えば、ライムフレーバーを配合した場合の「食欲」、「おいしさ」の評点は青色色素を含むベースDが最も高く、ストロベリーフレーバーを配合した場合の「食欲」、「おいしさ」の評点は赤色色素を含むベースBが最も高く、紅茶香料を配合した場合の「食欲」、「おいしさ」の評点は茶色色素を含むベースEが最も高かった。これより、飲料の色と、飲料に含まれる香気成分から想起されるイメージとが合致すると、飲用後の「食欲」、「おいしさ」が効果的に上昇することが確認された。
なお、ライムフレーバー、ストロベリーフレーバー、紅茶香料をそれぞれ配合した飲料は、それぞれライム風味、ストロベリー風味、紅茶風味が感じられるものであった。
【0056】
<実験2:特定の香気成分による食欲減退改善効果の検証>
実験1と同様にして、各ベースA~Eを用いて、表4に示す処方となるように各香気成分を添加し、容量200mlの無色透明なペットボトル容器にホットパック充填して、容器詰め飲料を得た。得られた飲料について官能評価を行った。結果を表4に示す。
またいずれの飲料も柑橘風味が感じられるものであった。
【0057】
【表4】
【0058】
表4より、リモネン、γ-テルピネン、ゲラニオール、(-)-β-ピネン、および(-)-カルベオールの中から選ばれ少なくとも1種を配合することにより、青色のベースDの、飲用後の「食欲」、「おいしさ」の評点はいずれも4.4以上であった。
【0059】
<実験3:飲料のpHによる影響の検証>
(1)飲料の調製
表5に示す処方となるように原料と水とを混合して、糖度(Brix)8.0、pH(20℃)が異なる調合液(ベースD-1~D-5)を調製した。
続けて、各ベースベースD-1~D-5を用いて、表6に示す処方となるように各香気成分を添加し、容量200mlの無色透明なペットボトル容器にホットパック充填して、容器詰め飲料を得た。
得られた飲料について官能評価を行った。結果を表6に示す。
またいずれの飲料も柑橘風味が感じられるものであった。
【0060】
また、各ベースD-1~D-4は、最大吸収波長(λmax)が599.2nm±3nmの間であり、λmaxにおける吸光度が0.1~1.0の範囲内であった。
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
表6より、pHの違いにより飲用後の「食欲」の評点が異なることが確認された。また、pH3.8のベースD-3と、pH3のベースD-4の飲用後の「食欲」「おいしさ」の評点はいずれも4.4以上であった。
【0064】
<実験4:香気成分の濃度を振った時の影響の検証>
実験1と同様にして、ベースDを用いて、表7~11に示す処方となるように各香気成分を添加し、容量200mlの無色透明なペットボトル容器にホットパック充填して、容器詰め飲料を得た。得られた飲料について官能評価を行った。結果を表7~11に示す。
またいずれの飲料も柑橘風味が感じられるものであった。
【0065】
【表7】
【0066】
【表8】
【0067】
【表9】
【0068】
【表10】
【0069】
【表11】