(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020118
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】建設機械のブーム制御装置
(51)【国際特許分類】
B66C 13/18 20060101AFI20230202BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20230202BHJP
B66C 23/90 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
B66C13/18
B66C15/00 E
B66C15/00 F
B66C23/90 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125313
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】丸山 幸治
【テーマコード(参考)】
3F204
3F205
【Fターム(参考)】
3F204AA04
3F204FB13
3F204FD06
3F205AA05
3F205AC02
3F205CA03
3F205CB02
(57)【要約】
【課題】後方側部分から分離可能な前方側部分が後方側部分に取付けられているか否かに対応させて、多段ブームの伸縮を含む多段ブームの作動を適切かつ安全に制御する建設機械のブーム制御装置を提供すること。
【解決手段】多段ブームは、伸縮可能であり、多段ブームでは、前方側部分が後方側部分に対して分離可能に取付けられる。ブーム制御装置のコードは、後方側部分から延設され、前方側部分にコードの延設端が接続可能である。ブーム制御装置のコントローラは、コードの延設端が前方側部分に接続されていることに基づいて、前方側部分が後方側部分に取付けられていると判定し、コードの延設端が前方側部分に接続されていないことに少なくとも基づいて、前方側部分が後方側部分から分離されていると判定する。コントローラは、後方側部分に前方側部分が取付けられているか否かの判定結果に基づいて、多段ブームの作動を制御する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に伸縮可能であり、かつ、前方側部分が後方側部分に対して分離可能に取付けられる多段ブームの作動を制御するブーム制御装置であって、
前記後方側部分から延設され、前記前方側部分に延設端が接続可能なコードと、
前記コードの前記延設端が前記前方側部分に接続されていることに基づいて、前記前方側部分が前記後方側部分に取付けられていると判定するとともに、前記コードの前記延設端が前記前方側部分に接続されていないことに少なくとも基づいて、前記前方側部分が前記後方側部分から分離されていると判定するコントローラであって、前記後方側部分に前記前方側部分が取付けられているか否かの判定結果に基づいて、前記多段ブームの伸縮を含む前記多段ブームの前記作動を制御するコントローラと、
を具備する、建設機械のブーム制御装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記コードの前記延設端が前記前方側部分に接続されていないことに加えて、前記コードの前記延設端が前記後方側部分に接続されていることに基づいて、前記前方側部分が前記後方側部分から分離されていると判定する、請求項1のブーム制御装置。
【請求項3】
前記後方側部分には、互いに対して異なる複数種類の前方側部分のいずれか1種類を選択的に取付け可能であり、
前記コードの前記延設端は、前記複数種類の前方側部分のいずれか1種類に選択的に接続可能であり、
前記コントローラは、前記後方側部分に前記前方側部分が取付けられていると判定した場合は、前記コードの前記延設端の接続先に基づいて、前記複数種類の前方側部分のいずれの種類が前記後方側部分に取付けられているかを判定し、前記後方側部分に取付けられている前方側部分の種類についての判定結果に基づいて、前記多段ブームの前記伸縮を含む前記多段ブームの前記作動を制御する、
請求項1又は2のブーム制御装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記コードの前記延設端が前記前方側部分に接続された状態において、前記前方側部分に装着される機器と通信可能であり、
前記コントローラは、前記コードを介して伝達される信号の有無、前記コードを介して伝達される機器のアドレス、及び、前記コードを通して伝達される信号の前記コードにおける伝達経路のいずれかに基づいて、前記コードの前記延設端の接続について判定する、
請求項1乃至3のいずれか1項のブーム制御装置。
【請求項5】
前記多段ブームは、最も後方段のベースブーム部材と、前記ベースブーム部材に対して前記長手方向に伸縮可能な複数の伸縮ブーム部材と、を備え、
前記後方側部分は、前記ベースブーム部材及び1つ以上の前記伸縮ブーム部材を備え、
前記前方側部分は、1つ以上の前記伸縮ブーム部材を備え、
前記コードは、最も前方段の前記伸縮ブーム部材に前記延設端が接続されるとともに、前記延設端の接続先に対応して前記後方側部分からの延設長が変化し、
前記ブーム制御装置は、前記後方側部分から前記延設端までの前記コードの前記延設長に基づいて、前記長手方向についての前記多段ブームの長さを計測するブーム長計測部をさらに具備し、
前記コントローラは、前記ブーム長計測部での前記多段ブームの前記長さについての計測結果、及び、前記後方側部分の前記伸縮ブーム部材及び前記後方側部分に取付けられた前記前方側部分の前記伸縮ブーム部材のそれぞれの伸縮についての履歴に基づいて、前記コードの前記延設端の接続について判定する、
請求項1乃至3のいずれか1項のブーム制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械において長手方向に伸縮可能な多段ブームの作動を制御するブーム制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、長手方向に伸縮可能な多段ブームを備える建設機械として、クレーンが開示されている。このクレーンでは、多段ブームは、上部旋回体に取付けられる後方側部分と、後方側部分に分離可能に取付けられる前方側部分と、を備える。このように多段ブームにおいて後方側部分から前方側部分が分離可能なクレーンでは、前方側部分が後方側部分に取付けられている状態と前方側部分が後方側部分から分離された状態との間で、多段ブームの段数が異なる。また、多段ブームにおいて後方側部分から前方側部分が分離可能なクレーンでは、前方側部分は、後方側部分から分離された状態で、作業現場等へ搬送される。そして、作業現場において、前方側部分が後方側部分に取付けられ、前方側部分が後方側部分に取付けられた多段ブームを用いて、作業等が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1のように多段ブームにおいて後方側部分から前方側部分が分離可能な建設機械では、前方側部分が後方側部分に取付けられているか否かに対応して多段ブームの段数が異なるため、前方側部分が後方側部分に取付けられているか否かに対応して、多段ブームの重量及び多段ブームの長手方向についての長さ等が異なる。このため、前方側部分が後方側部分に取付けられているか否かに対応させて、多段ブームを伸縮させるブーム伸縮シリンダーの伸縮を適切に制御し、安全かつ適切に多段ブームの伸縮を制御することが、求められている。そして、前方側部分が後方側部分に取付けられているか否かに対応させて、多段ブームのリアルタイムの作業半径、多段ブームにリアルタイムで掛かっている荷重(実荷重)、及び、多段ブームに掛かる荷重についての限界値(上限値)等を適切に算出し、算出結果に基づいて多段ブームの作動を安全かつ適切に制御することが、求められている。
【0005】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、後方側部分から分離可能な前方側部分が後方側部分に取付けられているか否かに対応させて、多段ブームの伸縮を含む多段ブームの作動を適切かつ安全に制御する建設機械のブーム制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明のある態様は、長手方向に伸縮可能であり、かつ、前方側部分が後方側部分に対して分離可能に取付けられる多段ブームの作動を制御するブーム制御装置であって、前記後方側部分から延設され、前記前方側部分に延設端が接続可能なコードと、前記コードの前記延設端が前記前方側部分に接続されていることに基づいて、前記前方側部分が前記後方側部分に取付けられていると判定するとともに、前記コードの前記延設端が前記前方側部分に接続されていないことに少なくとも基づいて、前記前方側部分が前記後方側部分から分離されていると判定するコントローラであって、前記後方側部分に前記前方側部分が取付けられているか否かの判定結果に基づいて、前記多段ブームの伸縮を含む前記多段ブームの前記作動を制御するコントローラと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、後方側部分から分離可能な前方側部分が後方側部分に取付けられているか否かに対応させて、多段ブームの伸縮を含む多段ブームの作動を適切かつ安全に制御する建設機械のブーム制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る多段ブームにおいて、(a)は前方側部分(第1の前方側部分)が後方側部分に取付けられた状態を、(b)は前方側部分(第2の前方側部分)が後方側部分に取付けられた状態を、(c)は前方側部分のいずれもが後方側部分から分離された状態を、それぞれ示す概略図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る多段ブームにおいて、(a)は前方側部分(第1の前方側部分)が後方側部分に取付けられ、かつ、ブーム部材(伸縮ブーム部材)のそれぞれを最も収縮した状態になる状態を、(b)は(a)から4段目のブーム部材を最も伸長した状態まで伸長させた状態を、(c)は(b)から伸縮シリンダーのシリンダーチューブを3段目のブーム部材に連結させた状態を、(d)は(c)から3段目のブーム部材を所定の伸縮状態まで伸長した状態を、(e)は(d)から3段目のブーム部材への4段目のブーム部材の接続を解除し、かつ、前方側部分(第1の前方側部分)を吊上げた状態を、(f)は(e)から3段目のブーム部材を収縮し、かつ、前方側部分(第1の前方側部分)を後方側部分から分離した状態を、(g)は(f)から3段目のブーム部材を最も収縮した状態まで収縮させた状態を、それぞれ示す概略図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態において、多段ブームの作動を制御するブーム制御装置が設けられるシステムを示す概略図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態において、コントローラによるコードのコネクタの接続についての判定の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態において、コントローラによるコードのコネクタの接続についての判定の
図4とは別の一例を示す概略図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態において、コントローラによる前方側部分のそれぞれと後方側部分との間の取付け状態の判定処理の一例を概略的に示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、ある変形例において、多段ブームの作動を制御するブーム制御装置が設けられるシステムを示す概略図である。
【
図8】
図8は、
図7の変形例において、コントローラによるコードの延設端の接続についての判定の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、実施形態の1つである第1の実施形態について、説明する。
図1(a)~(c)は、第1の実施形態の多段ブーム1の構成を示す。
図1(a)~(c)に示すように、多段ブーム1は、長手方向に沿って延設される。ここで、多段ブーム1では、長手方向の一方側が後方側(矢印C1側)となり、後方側とは反対側が前方側(矢印C2側)となる。
図1のような多段ブーム1が設けられるクレーンでは、走行車体(図示しない)上に旋回体(図示しない)が設けられ、旋回体に多段ブーム1の後方端部が取付けられる。多段ブーム1は、旋回体に対して起伏可能であるとともに、旋回体と一緒に走行車体に対して旋回可能である。また、多段ブーム1の前方端部には、ジブ等のアタッチメント(図示しない)を取付け可能である。
【0011】
本実施形態では、多段ブーム1は、後方側部分2及び2種類の前方側部分3A,3Bを備える。前方側部分3A,3Bのそれぞれは、後方側部分2に対して分離可能に取付けられる。前方側部分3A,3Bは、互いに対して種類が異なり、後方側部分2には、前方側部分3A,3Bのいずれか一方を選択的に取付け可能である。したがって、後方側部分2には、互いに対して異なる複数種類の前方側部分3A,3Bのいずれか1種類を選択的に取付け可能である。前述のような構成であるため、多段ブーム1では、
図1(a)に示す前方側部分(第1の前方側部分)3Aが後方側部分2に取付けられた状態、
図1(b)に示す前方側部分(第2の前方側部分)3Bが後方側部分2に取付けられた状態、及び、
図1(c)に示す前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離された状態の3つの状態の間で、前方側部分3A,3Bのそれぞれと後方側部分2との間の取付け状態(連結状態)が変化する。
【0012】
本実施形態の多段ブーム1では、後方側部分2は、複数(本実施形態では3つ)のブーム部材B1~B3を備える。ここで、ブーム部材Bi(i=1,2,3)のiは、多段ブーム1における段番を示す。ブーム部材Biのそれぞれは、多段ブーム1の長手方向に沿って延設される。多段ブーム1では、後方側部分2のブーム部材B1の後方端部が旋回体に取付けられる。そして、多段ブーム1では、ブーム部材B1が、最も後方段のベースブーム部材となり、後方側部分2のブーム部材B1が、初段(1段目)となる。そして、多段ブーム1では、後方側部分2のブーム部材B2,B3が、それぞれ2段目、3段目となる。また、後方側部分2では、ブーム部材B2,B3のそれぞれは、ベースブーム部材であるブーム部材B1に対して多段ブーム1の長手方向に伸縮可能な伸縮ブームとなる。ブーム部材B2,B3のいずれかが長手方向について伸長又は収縮することにより、多段ブーム1の長手方向に沿った後方側部分2の寸法が変化する。
【0013】
後方側部分2のブーム部材Biの中では、初段のブーム部材B1が最も外側に配置され、ブーム部材B3が最も内側に配置される。そして、後方側部分のブーム部材Biの中では、段番が大きいほど、内側に配置される。また、多段ブーム1では、初段のブーム部材(ベースブーム部材)B1によって後方端が形成される。そして、後方側部分2では、ブーム部材B3によって前方端が形成される。そして、後方側部分2のブーム部材Biの中では、段番が大きいほど、前方端が前方側に位置する。前述のような構成であるため、後方側部分2では、ブーム部材B1は、ブーム部材B2に対して1段だけ後方段となり、ブーム部材B3は、ブーム部材B2に対して1段だけ前方段となる。また、本実施形態では、ブーム部材B3は、後方側部分2において最も前方段のブーム部材Bαとなる。前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離された状態では、多段ブーム1において、ブーム部材B3が最も前方段(最終段)となり、ブーム部材B3が多段ブーム1の前方端を形成する。したがって、前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離された状態では、多段ブーム1の段数は3段となる。
【0014】
また、本実施形態の多段ブーム1では、前方側部分(第1の前方側部分)3Aは、複数(本実施形態では3つ)のブーム部材Ba4~Ba6を備える。ここで、ブーム部材Baj(j=4,5,6)のjは、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1における段番を示す。前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた状態では、ブーム部材Bajのそれぞれは、多段ブーム1の長手方向に沿って延設される。前方側部分3Aは、ブーム部材Ba4の後方端部が後方側部分2のブーム部材B3に接続されることにより、後方側部分2に取付けられる。前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、ブーム部材Ba4~Ba6が、それぞれ4段目、5段目、6段目となる。また、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、ブーム部材Bajのそれぞれは、ベースブーム部材であるブーム部材B1に対して多段ブーム1の長手方向に伸縮可能な伸縮ブームとなる。このため、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、ブーム部材B2,B3,Bajのいずれかが長手方向について伸長又は収縮することにより、長手方向に沿った多段ブーム1の寸法が変化する。また、前方側部分3Aでは、ブーム部材Ba6の前方端部にブームヘッド5Aが設けられる。
【0015】
前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、ブーム部材Bi,Bajの中で、初段のブーム部材B1が最も外側に配置され、ブーム部材Ba6が最も内側に配置される。そして、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた状態では、ブーム部材Bi,Bajの中で、段番が大きいほど、内側に配置される。また、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、ブーム部材Ba6のブームヘッド5Aによって前方端が形成される。そして、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた状態では、ブーム部材Bi,Bajの中で、段番が大きいほど、前方端が前方側に位置する。前述のような構成であるため、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、ブーム部材B3は、ブーム部材Ba4に対して1段だけ後方段となり、ブーム部材Ba5は、ブーム部材Ba4に対して1段だけ前方段となる。また、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた状態では、ブーム部材Ba6は、ブーム部材Ba5に対して1段だけ前方段となり、多段ブーム1(前方側部分3A)において最も前方段(最終段)のブーム部材Baγとなる。したがって、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた状態では、多段ブーム1の段数は6段となる。また、後方側部分2に取付けられた前方側部分3Aのブーム部材Bajの中では、ブーム部材Ba4が最も後方段のブーム部材Baβとなる。
【0016】
また、本実施形態の多段ブーム1では、前方側部分(第2の前方側部分)3Bは、1つ以上(本実施形態では1つ)のブーム部材Bb4を備える。ここで、ブーム部材Bbk(k=4)のkは、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1における段番を示す。本実施形態では、前方側部分3Bに設けられるブーム部材Bbkの数は、前方側部分3Aに設けられるブーム部材Bajの数とは異なる。前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた状態では、ブーム部材Bb4は、多段ブーム1の長手方向に沿って延設される。前方側部分3Bは、ブーム部材Bb4の後方端部が後方側部分2のブーム部材B3に接続されることにより、後方側部分2に取付けられる。前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、ブーム部材Bb4が、4段目となる。また、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、ブーム部材Bb4は、ベースブーム部材であるブーム部材B1に対して多段ブーム1の長手方向に伸縮可能な伸縮ブームとなる。このため、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、ブーム部材B2,B3,Bb4のいずれかが長手方向について伸長又は収縮することにより、長手方向に沿った多段ブーム1の寸法が変化する。また、前方側部分3Bでは、ブーム部材Bb4の前方端部にブームヘッド5Bが設けられる。
【0017】
前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、ブーム部材Bi,Bbkの中で、初段のブーム部材B1が最も外側に配置され、ブーム部材Bb4が最も内側に配置される。そして、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた状態では、ブーム部材Bi,Bbkの中で、段番が大きいほど、内側に配置される。また、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、ブーム部材Bb4のブームヘッド5Bによって前方端が形成される。そして、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた状態では、ブーム部材Bi,Bbkの中で、段番が大きいほど、前方端が前方側に位置する。前述のような構成であるため、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、ブーム部材Bb4は、ブーム部材B3に対して1段だけ前方段となる。また、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた状態では、ブーム部材Bb4は、多段ブーム1(前方側部分3B)において最も前方段(最終段)のブーム部材Bbγとなる。したがって、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた状態では、多段ブーム1の段数は4段となる。また、後方側部分2に取付けられた前方側部分3Bのブーム部材Bbkの中では、ブーム部材Bb4が最も後方段のブーム部材Bbβとなる。
【0018】
多段ブーム1の内部には、伸縮シリンダー(ブーム伸縮シリンダー)10が配置される。伸縮シリンダー10は、シリンダーロッド11及びシリンダーチューブ12を備える。シリンダーロッド11は、連結ピン等の連結部材15を介して、ベースブーム部材である初段のブーム部材B1に連結される。シリンダーチューブ12がシリンダーロッド11に対して多段ブーム1の長手方向に沿って移動することにより、伸縮シリンダー10が多段ブーム1の長手方向について伸長又は収縮する。また、シリンダーチューブ12においてシリンダーロッド11側の端部、すなわち、シリンダーチューブ12の後方端部には、グリップピン等の連結部材16が設けられる。伸縮シリンダー10が伸長又は収縮することにより、連結部材16は、シリンダーチューブ12と一緒に、シリンダーロッド11及び連結部材15に対して、多段ブーム1の長手方向に沿って移動可能である。
【0019】
前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた状態では、シリンダーチューブ12は、連結部材16を間に介して、後方側部分2のブーム部材(伸縮ブーム部材)B2,B3及び前方側部分3Aのブーム部材(伸縮ブーム部材)Bajのいずれか1つに選択的に連結可能である。そして、シリンダーチューブ12がブーム部材B2,B3,Bajのいずれか1つに連結された状態で伸縮シリンダー10を伸長又は収縮することにより、シリンダーチューブ12が連結されたブーム部材(B2,B3,Bajの対応する1つ)が、ブーム部材B1に対して多段ブーム1の長手方向について伸長又は収縮する。これにより、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1において、長手方向についての多段ブーム1の長さ(寸法)が、変化する。ここで、
図1(a)の状態では、シリンダーチューブ12は、ブーム部材Ba6に連結され、伸縮シリンダー10が伸長又は収縮することにより、ブーム部材Ba6がブーム部材B1に対して伸縮可能となる。なお、ブーム部材B2,B3,Bajのいずれか1つを伸長又は収縮する際には、伸長又は収縮するブーム部材(B2,B3,Bajの対応する1つ)にシリンダーチューブ12を前述のように連結するとともに、伸長又は収縮するブーム部材(B2,B3,Bajの対応する1つ)の1段後方のブーム部材に対するロックピン(図示しない)による接続を解除する。
【0020】
前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた状態では、シリンダーチューブ12は、連結部材16を間に介して、後方側部分2のブーム部材(伸縮ブーム部材)B2,B3及び前方側部分3Bのブーム部材(伸縮ブーム部材)Bb4のいずれか1つに選択的に連結可能である。そして、シリンダーチューブ12がブーム部材B2,B3,Bb4のいずれか1つに連結された状態で伸縮シリンダー10を伸長又は収縮することにより、シリンダーチューブ12が連結されたブーム部材(B2,B3,Bb4の対応する1つ)が、ブーム部材B1に対して多段ブーム1の長手方向について伸長又は収縮する。これにより、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1において、長手方向についての多段ブーム1の長さ(寸法)が、変化する。ここで、
図1(b)の状態では、シリンダーチューブ12は、ブーム部材Bb4に連結され、伸縮シリンダー10が伸長又は収縮することにより、ブーム部材Bb4がブーム部材B1に対して伸縮可能となる。なお、ブーム部材B2,B3,Bb4のいずれか1つを伸長又は収縮する際には、伸長又は収縮するブーム部材(B2,B3,Bb4の対応する1つ)にシリンダーチューブ12を前述のように連結するとともに、伸長又は収縮するブーム部材(B2,B3,Bb4の対応する1つ)の1段後方のブーム部材に対するロックピンによる接続を解除する。
【0021】
前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離された状態では、シリンダーチューブ12は、連結部材16を間に介して、後方側部分2のブーム部材(伸縮ブーム部材)B2,B3のいずれか1つに選択的に連結可能である。そして、シリンダーチューブ12がブーム部材B2,B3のいずれか1つに連結された状態で伸縮シリンダー10を伸長又は収縮することにより、シリンダーチューブ12が連結されたブーム部材(B2,B3の対応する1つ)が、ブーム部材B1に対して多段ブーム1の長手方向について伸長又は収縮する。これにより、後方側部分2のみから形成される多段ブーム1において、長手方向についての多段ブーム1の長さ(寸法)が、変化する。ここで、
図1(c)の状態では、シリンダーチューブ12は、ブーム部材B3に連結され、伸縮シリンダー10が伸長又は収縮することにより、ブーム部材B3がブーム部材B1に対して伸縮可能となる。なお、ブーム部材B2,B3のいずれか1つを伸長又は収縮する際には、伸長又は収縮するブーム部材(B2,B3の対応する1つ)にシリンダーチューブ12を前述のように連結するとともに、伸長又は収縮するブーム部材(B2,B3の対応する1つ)の1段後方のブーム部材に対するロックピンによる接続を解除する。
【0022】
なお、
図1(a)は、ブーム部材(伸縮ブーム部材)B2,B3,Bajのそれぞれが最も収縮した状態(伸長率0%の状態)を示す。そして、
図1(b)は、ブーム部材(伸縮ブーム部材)B2,B3,Bb4のそれぞれが最も収縮した状態(伸長率0%の状態)を示し、
図1(c)は、ブーム部材(伸縮ブーム部材)B2,B3のそれぞれが最も収縮した状態(伸長率0%の状態)を示す。
【0023】
本実施形態では、後方側部分2のブーム部材(ベースブーム部材)B1にリール21が設置される。多段ブーム1では、後方側部分2のリール21から前方側へ向かって、コード22が延設される。コード22では、リール21から延設端に、すなわち、リール21に対して遠位端に、コネクタ23が設けられる。前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、コード22のコネクタ23(延設端)は、前方側部分3Aのブーム部材Ba6のブームヘッド5Aに接続可能である。また、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、コード22のコネクタ23(延設端)は、前方側部分3Bのブーム部材Bb4のブームヘッド5Bに接続可能である。このため、コードの22のコネクタ23は、複数種類の前方側部分3A,3Bのいずれか1種類に選択的に接続可能である。また、前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離された多段ブーム1では、コード22のコネクタ23(延設端)は、後方側部分2のブーム部材B3に接続可能である。なお、前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離された多段ブーム1では、後方側部分2において、コード22のコネクタ23が、ブーム部材B3の代わりに、ブーム部材B1,B2のいずれか一方に接続可能であってもよい。
【0024】
次に、後方側部分2から前方側部分3Aを分離する作業について、
図2(a)~(g)を用いて説明する。後方側部分2から前方側部分3Aを分離する作業では、まず、
図2(a)に示すように、ブーム部材(伸縮ブーム部材)B2,B3,Bajのそれぞれを、最も収縮した状態(伸長率0%の状態)にする。この際、コード22のコネクタ23(延設端)は、前方側部分3Aにおいて最も前方段のブーム部材Baγであるブーム部材Ba6に接続される。そして、伸縮シリンダー10のシリンダーチューブ12を、前方側部分3Aにおいて最も後方段のブーム部材Baβであるブーム部材Ba4に、連結部材16を間に介して連結する。そして、
図2(b)に示すように、シリンダーチューブ12がブーム部材Ba4に連結された状態で伸縮シリンダー10を伸長し、ブーム部材Ba4を最も伸長した状態(伸長率100%の状態)まで伸長する。そして、ブーム部材Ba4が最も伸長した状態になると、ブーム部材Ba4へのシリンダーチューブ12の連結を解除する。そして、
図2(c)に示すように、シリンダーチューブ12がブーム部材B2,B3,Bajのいずれとも連結していない状態でシリンダーチューブ12を収縮させた後、伸縮シリンダー10のシリンダーチューブ12を、後方側部分2において最も前方段のブーム部材Bαであるブーム部材B3に、連結部材16を間に介して連結する。
【0025】
そして、
図2(d)に示すように、シリンダーチューブ12がブーム部材B3に連結された状態で伸縮シリンダー10を伸長し、ブーム部材B3を伸長率50%の状態等の所定の伸縮状態まで伸長する。これにより、前方側部分3Aにおいて最も後方段のブーム部材Baβであるブーム部材Ba4は、最も伸長した状態になり、後方側部分2において最も前方段のブーム部材Bαであるブーム部材B3は、所定の伸縮状態になる。ブーム部材B3が所定の伸縮状態になることにより、ブーム部材B3の前方端部において、ブーム部材Ba4をブーム部材B3に接続するロックピン(図示しない)が露出する。そして、ブーム部材B3,Ba4のそれぞれが
図2(d)に示す伸縮状態になる状態において、コード22のコネクタ23(延設端)を、前方側部分3Aのブーム部材Ba6から取外すとともに、後方側部分2のブーム部材B3等に接続する。すなわち、コネクタ23を、
図2(d)の実線で示す位置から取外し、
図2(d)の破線で示す位置に接続する。そして、
図2(e)に示すように、ブーム部材B3,Ba4のそれぞれが
図2(d)に示す伸縮状態になる状態において、ブーム部材B3へのブーム部材Ba4のロックピン(図示しない)による接続を強制的に解除するとともに、多段ブーム1が設けられるクレーンとは別のクレーンで、前方側部分3A(ブーム部材Baj)を鉛直上側へ吊上げる。
【0026】
そして、
図2(f)に示すように、前方側部分3Aが吊上げられた状態で、伸縮シリンダー10を収縮する。この際、シリンダーチューブ12がブーム部材B3に連結されているため、伸縮シリンダー10の収縮に対応して、ブーム部材B3が所定の伸縮状態(例えば伸長率50%の状態)から収縮する。ブーム部材B3が所定の伸縮状態から収縮することにより、前方側部分3Aが後方側部分2から分離される。なお、
図2(f)では、ブーム部材B3は、所定の収縮状態から収縮した状態で示され、例えば、伸長率が15%の状態で示される。そして、
図2(g)に示すように、伸縮シリンダー10をさらに収縮させ、ブーム部材B3を最も収縮した状態(伸長率0%の状態)まで収縮することにより、前方側部分3Aを後方側部分2から分離する作業が完了する。
【0027】
なお、後方側部分2へ前方側部分3Aを取付ける作業は、後方側部分2から前方側部分3Aを分離する作業とは逆の手順で行われる。すなわち、後方側部分2から前方側部分3Aを分離する作業では、
図2(a),
図2(b),…,
図2(f),
図2(g)の順に多段ブーム1の状態が変化するのに対し、後方側部分2へ前方側部分3Aを取付ける作業では、
図2(g),
図2(f),…,
図2(b),
図2(a)の順に多段ブーム1の状態が変化する。また、後方側部分2から前方側部分3Bを分離する作業は、後方側部分2から前方側部分3Aを分離する作業と同様にして、行われる。そして、後方側部分2に前方側部分3Bを取付ける作業は、後方側部分2に前方側部分3Aを取付ける作業と同様にして、行われる。
【0028】
図3は、多段ブーム1の伸縮を含む多段ブーム1の作動を制御するブーム制御装置20が設けられるシステムを示す。
図3に示すように、ブーム制御装置20は、リール21からの延設端(遠位端)にコネクタ23が設けられるコード22を備える。また、ブーム制御装置20は、コントローラ25を備える。コントローラ25は、プロセッサ及び記憶媒体を備え、プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application specific integrated circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等を備える集積回路又は回路構成(circuitry)等である。プロセッサは、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。プロセッサでの処理は、プロセッサ又は記憶媒体に記憶されたプログラムに従って行われる。また、記憶媒体には、プロセッサで用いられる処理プログラム、及び、プロセッサでの演算で用いられるパラメータ、関数及びテーブル等が記憶される。
【0029】
コントローラ25は、多段ブーム1を構成している伸縮ブーム部材のそれぞれの伸縮についての履歴を示す情報を、取得する。例えば、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた状態では、コントローラ25は、ブーム部材(伸縮ブーム部材)B2,B3,Bajのそれぞれの伸縮についての履歴を取得し、ブーム部材B2,B3,Bajのそれぞれのリアルタイムの伸縮状態(伸長率等)を示す情報を取得する。同様に、前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離された状態では、コントローラ25は、ブーム部材(伸縮ブーム部材)B2,B3のそれぞれの伸縮についての履歴を取得し、ブーム部材B2,B3のそれぞれのリアルタイムの伸縮状態(伸長率等)を示す情報を取得する。伸縮ブーム部材のそれぞれの伸縮についての履歴は、伸縮ブーム部材のそれぞれとの伸縮シリンダー10のシリンダーチューブ12の連結状態についての履歴、長手方向についての多段ブーム1の長さについての履歴、及び、伸縮シリンダー10の伸縮についての履歴等に基づいて、算出可能である。また、ユーザインタフェース(図示しない)等では、多段ブーム1の伸縮を含む多段ブーム1の作動に関する操作指令が、作業者等によって入力可能である。コントローラ25は、ユーザインタフェース等で入力された操作指令を取得する。
【0030】
また、コントローラ25は、コネクタ23の接続先に装着される機器と通信可能であり、コネクタ23の接続先に装着される機器に関連する情報を、機器からコード22を介して伝達される信号等に基づいて、取得する。例えば、コネクタ23(延設端)が前方側部分3Aに接続された状態では、コントローラ25は、ブーム部材Ba6(Baγ)のブームヘッド5Aに装着される機器と通信可能となり、コネクタ23(延設端)が前方側部分3Bに接続された状態では、コントローラ25は、ブーム部材Bb4(Bbγ)のブームヘッド5Bに装着される機器と通信可能となる。ブームヘッド5A,5Bに装着される機器としては、ブームヘッド5A,5Bのそれぞれからフックを吊下げるロープの過巻きを検知するスイッチ、及び、ブームヘッド5A,5Bのそれぞれの対地角等の多段ブーム1に関連するパラメータを検知するセンサ等が、挙げられる。
【0031】
コントローラ25は、コード22を介して伝達される信号等を含むコード22を通して伝達される情報等に基づいて、コード22のコネクタ23(延設端)の接続について判定する。
図4は、コントローラ25によるコード22のコネクタ23の接続についての判定の一例を示す。
図4の一例では、コネクタ23が前方側部分3Aに接続された状態、コネクタ23が前方側部分3Bに接続された状態、及び、コネクタ23が後方側部分2に接続された状態のそれぞれにおいて、コネクタ23の接続先に装着される機器のアドレスが、CAN(controller area network)規格の通信等のシリアル通信によって、コード22を介して伝達される。前方側部分3Aに装着される機器、前方側部分3Bに装着される機器、及び、後方側部分2に装着される機器では、互いに対して異なる固有のアドレスが、設定される。
図4の一例では、コントローラ25は、機器のアドレスとして“1111”を取得した場合は、コード22のコネクタ23(延設端)の接続先が前方側部分3A(ブーム部材Ba6)であると判定し、機器のアドレスとして“2222”を取得した場合は、コード22のコネクタ23(延設端)の接続先が前方側部分3B(ブーム部材Bb4)であると判定する。そして、機器のアドレスとして“3333”を取得した場合は、コントローラ25は、前方側部分3A,3Bのいずれにもコード22のコネクタ23が接続されていないと判定し、コード22のコネクタ23(延設端)の接続先が後方側部分2(ブーム部材B3)であると判定する。また、コード22を介して信号が伝達されず、機器のアドレスが取得されない場合は、コントローラ25は、コード22の断線又は機器の故障等が発生したと判定し、コード22の接続先について検出不良が発生したと判定する。
【0032】
なお、ある一例では、後方側部分2に前述した機器は装着されず、コード22のコネクタ23が後方側部分2に接続された状態では、コントローラ25は、コード22を介しての通信は行わない。本一例では、コード22を介して信号が伝達されず、機器のアドレスが取得されない場合に、コントローラ25は、前方側部分3A,3Bのいずれにもコード22のコネクタ23が接続されていないと判定し、コード22のコネクタ23(延設端)の接続先が後方側部分2(ブーム部材B3)であると判定する。
【0033】
図5は、コントローラ25によるコード22のコネクタ23の接続についての判定の
図4とは別の一例を示す。
図5の一例では、コード22のコネクタ23は、1番の端子、2番の端子及び3番の端子の3つの端子を少なくとも備える。1番の端子が通電し、コード22において1番の端子を介して機器からの信号等が伝達される場合は、コントローラ25は、コード22のコネクタ23(延設端)の接続先が前方側部分3A(ブーム部材Ba6)であると判定する。また、2番の端子が通電し、コード22において2番の端子を介して機器からの信号等が伝達される場合は、コントローラ25は、コード22のコネクタ23(延設端)の接続先が前方側部分3B(ブーム部材Bb4)であると判定する。そして、3番の端子が通電し、コード22において3番の端子を介して信号等が伝達される場合は、コントローラ25は、前方側部分3A,3Bのいずれにもコード22のコネクタ23が接続されていないと判定し、例えば、コード22のコネクタ23(延設端)の接続先が後方側部分2(ブーム部材B3)であると判定する。また、1番~3番の端子のいずれも通電せず、1番~3番の端子のいずれを介しても信号等が伝達されない場合は、コントローラ25は、コード22の断線又は機器の故障等の発生が発生したと判定し、コード22の接続先について検出不良が発生したと判定する。
【0034】
なお、ある一例では、コネクタ23に、3番の端子が設けられず、1番の端子及び2番の端子のみが設けられる。この場合も、
図5の一例と同様にして、コントローラ25は、コネクタ23の接続先が前方側部分3Aであると判定するとともに、コネクタ23の接続先が前方側部分3Bであると判定する。ただし、本一例では、1番及び2番の端子の両方が通電したこと、又は、1番及び2番の端子の両方が通電していないことに基づいて、コントローラ25は、前方側部分3A,3Bのいずれにもコネクタ23が接続されていないと判定し、例えば、コード22のコネクタ23(延設端)の接続先が後方側部分2であると判定する。前述のように、
図4の一例及び
図5の一例を含む本実施形態では、コントローラ25は、コード22を介して伝達される信号の有無、コード22を介して伝達される機器のアドレス、及び、コード22を通して伝達される信号のコード22における伝達経路のいずれかに基づいて、コード22のコネクタ23(延設端)の接続(接続先)について判定する。
【0035】
コントローラ25は、コード22のコネクタ23の接続(接続先)についての判定結果に基づいて、前方側部分3A,3Bのそれぞれと後方側部分2との間の取付け状態(連結状態)について判定する。本実施形態では、
図1(a)~(c)の3つの取付け状態のいずれであるかについて、コントローラ25が判定する。
図6は、コントローラ25による前方側部分3A,3Bのそれぞれと後方側部分2との間の取付け状態の判定処理の一例を示す。
図6の判定処理は、コントローラ25が多段ブーム1の作動を制御している間において、経時的に繰返し行われる。
図6の判定処理を開始すると、コントローラ25は、コード22のコネクタ23(延設端)が前方側部分3A,3Bのいずれかに接続されているか否かを判定する(S101)。コネクタ23の接続先については、前述した例のいずれかと同様にして、判定される。コネクタ23が前方側部分3A,3Bのいずれにも接続されていない場合は(S101-No)、コントローラ25は、コード22のコネクタ23(延設端)が後方側部分2に接続されているか否かを判定する(S102)。コネクタ23が後方側部分2に接続されている場合は(S102-Yes)、前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離されていると判定する(S103)。したがって、多段ブーム1の段数が3段であると、判定される。一方、コネクタ23が後方側部分2に接続されていない場合は(S102-No)、コード22のコネクタ23の接続先について検出不良が発生したと判定する(S104)。
【0036】
S101においてコネクタ23が前方側部分3A,3Bのいずれかに接続されている場合は(S101-Yes)、コントローラ25は、前方側部分3A,3Bのいずれか1つ(一方)が後方側部分2に取付けられていると判定する。そして、コントローラ25は、コード22のコネクタ23(延設端)の接続先が前方側部分3Aであるか否かを判定する(S105)。コネクタ23の接続先が前方側部分3Aである場合は(S105-Yes)、コントローラ25は、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられていると判定する(S106)。この場合、多段ブーム1の段数が6段であると、判定される。一方、コネクタ23の接続先が前方側部分3Aでない場合は(S105-No)、コントローラ25は、コネクタ23の接続先が前方側部分3Bであると判定し、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられていると判定する(S107)。この場合、多段ブーム1の段数が4段であると、判定される。したがって、後方側部分2に前方側部分3A,3Bのいずれかが取付けられていると判定した場合は、コントローラ25は、コード22のコネクタ23(延設端)の接続先に基づいて、複数種類の前方側部分3A,3Bのいずれの種類が後方側部分2に取付けられているかを判定する。
【0037】
なお、別のある一例では、S101においてコネクタ23が前方側部分3A,3Bのいずれにも接続されていない場合に(S101-No)、コントローラ25は、S102の処理を行わない。本一例では、S101においてコネクタ23が前方側部分3A,3Bのいずれにも接続されていない場合は(S101-No)、コントローラ25は、前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離されていると判定する。
【0038】
コントローラ25は、後方側部分2に前方側部分3A,3Bのいずれかが取付けられているか否かの判定結果、すなわち、前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離されているか否かの判定結果に基づいて、多段ブーム1の伸縮を含む多段ブーム1の作動を制御する。そして、コントローラ25は、後方側部分2に前方側部分3A,3Bのいずれかが取付けられている場合は、後方側部分2に取付けられている前方側部分(3A又は3B)の種類についての判定結果、すなわち、前方側部分3A,3Bのいずれが後方側部分2に取付けられているかについての判定結果に基づいて、多段ブーム1の伸縮を含む多段ブーム1の作動を制御する。ここで、後方側部分2への前方側部分3A,3Bのそれぞれの取付け状態(連結状態)に対応して前述のように多段ブーム1の段数が異なるため、後方側部分2への前方側部分3A,3Bのそれぞれの取付け状態に対応して、多段ブーム1の重量及び多段ブーム1の長手方向についての長さ等が異なる。このため、コントローラ25は、後方側部分2への前方側部分3A,3Bのそれぞれのリアルタイムの取付け状態に対応させて、多段ブーム1の伸縮を含む多段ブーム1の作動を制御する。なお、多段ブーム1の作動の制御は、後方側部分2への前方側部分3A,3Bのそれぞれの取付け状態の判定結果に加え、伸縮ブーム部材のそれぞれの伸縮についての履歴を示す情報、及び、多段ブーム1の作動に関する操作指令等に基づいて、行われる。
【0039】
図3等に示すように、コントローラ25は、伸縮シリンダー10の伸縮、すなわち、伸縮シリンダー10の作動等を制御することにより、多段ブーム1の伸縮を制御する。コントローラ25は、伸縮シリンダー10の作動の制御、すなわち、多段ブーム1の伸縮の制御において、後方側部分2への前方側部分3A,3Bのそれぞれのリアルタイムの取付け状態に対応させて、伸縮シリンダー10を伸縮させる伸縮範囲を設定する。そして、コントローラ25は、設定した伸縮範囲の範囲内でのみ伸縮シリンダー10が伸縮する状態に、伸縮シリンダー10の作動を制御する。設定される伸縮シリンダー10の伸縮範囲は、後方側部分2への前方側部分3A,3Bのそれぞれの取付け状態に対応して、異なる。すなわち、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた状態、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた状態、及び、前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離された状態では、設定される伸縮シリンダー10の伸縮範囲が、互いに対して異なる。
【0040】
前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられる場合、シリンダーチューブ12(連結部材16)がブーム部材B2,B3,Bajのいずれにも連結されていない状態では、伸縮シリンダー10の伸縮範囲、すなわち、連結部材16が多段ブーム1の長手方向に移動可能な範囲として、シリンダーチューブ12がブーム部材B2に連結可能な位置とシリンダーチューブ12がブーム部材Ba6に連結可能な位置との間の範囲が、設定される。例えば、
図1(a)のようにブーム部材(伸縮ブーム部材)B2,B3,Bajのそれぞれが最も収縮した状態(伸長率0%の状態)では、シリンダーチューブ12がブーム部材B2,B3,Bajのいずれにも連結されていない状態での伸縮シリンダー10の伸縮範囲として、範囲δaが設定される。また、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられる場合、シリンダーチューブ12(連結部材16)がブーム部材B2,B3,Bb4のいずれにも連結されていない状態では、伸縮シリンダー10の伸縮範囲(連結部材16が多段ブーム1の長手方向に移動可能な範囲)として、シリンダーチューブ12がブーム部材B2に連結可能な位置とシリンダーチューブ12がブーム部材Bb4に連結可能な位置との間の範囲が、設定される。例えば、
図1(b)のようにブーム部材(伸縮ブーム部材)B2,B3,Bb4のそれぞれが最も収縮した状態では、シリンダーチューブ12がブーム部材B2,B3,Bb4のいずれにも連結されていない状態での伸縮シリンダー10の伸縮範囲として、範囲δbが設定される。そして、前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離される場合、シリンダーチューブ12(連結部材16)がブーム部材B2,B3のいずれにも連結されていない状態では、伸縮シリンダー10の伸縮範囲として、シリンダーチューブ12がブーム部材B2に連結可能な位置とシリンダーチューブ12がブーム部材B3に連結可能な位置との間の範囲が、設定される。例えば、
図1(c)のようにブーム部材(伸縮ブーム部材)B2,B3のそれぞれが最も収縮した状態では、シリンダーチューブ12がブーム部材B2,B3のいずれにも連結されていない状態での伸縮シリンダー10の伸縮範囲として、範囲δcが設定される。
【0041】
また、
図3等に示すように、多段ブーム1の作動を制御するコントローラ25は、ブーム起伏シリンダー(デリックシリンダー)の作動を制御することにより、多段ブーム1の起伏を制御する。多段ブーム1の伸縮及び起伏等を含む多段ブーム1の作動の制御においては、コントローラ25は、多段ブーム1のリアルタイムの作業半径を算出し、多段ブーム1がクレーンの周辺の障害物と干渉しない状態に多段ブーム1の伸縮及び起伏等を制御する。また、コントローラ25は、吊荷等によって多段ブーム1にリアルタイムで掛かっている荷重(実荷重)等を算出するとともに、多段ブーム1に掛かる荷重についての限界値(上限値)を算出及び設定する。そして、コントローラ25は、リアルタイムの荷重と限界値との差が閾値以下になると警告等をするとともに、リアルタイムの荷重が限界値を超えると多段ブーム1の伸縮及び起伏等を含む多段ブーム1の作動を強制停止させる。
【0042】
ここで、多段ブーム1のリアルタイムの作業半径は、長手方向についての多段ブーム1の長さ等に基づいて算出され、多段ブーム1にリアルタイムで掛かっている荷重(実荷重)、及び、多段ブーム1に掛かる荷重の限界値は、長手方向についての多段ブーム1の長さ、及び、多段ブーム1の重量等に基づいて算出される。このため、算出される多段ブーム1のリアルタイムの作業半径及び荷重(実荷重)、及び、設定される多段ブーム1の荷重についての限界値は、後方側部分2への前方側部分3A,3Bのそれぞれの取付け状態に対応して、異なる。すなわち、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた状態、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた状態、及び、前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離された状態では、多段ブーム1のリアルタイムの作業半径及び荷重のそれぞれについての算出結果が、互いに対して異なる。そして、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた状態、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた状態、及び、前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離された状態では、設定される多段ブーム1の荷重についての限界値も、互いに対して異なる。
【0043】
本実施形態では、コントローラ25は、コード22の延設端(コネクタ23)が前方側部分3A,3Bのいずれかに接続されていることに基づいて、前方側部分3A,3Bが後方側部分2に取付けられていると判定する。そして、コントローラ25は、コード22の延設端が前方側部分3A,3Bのいずれにも接続されていないことに少なくとも基づいて、前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離されていると判定する。そして、コントローラ25は、後方側部分2に前方側部分3A,3Bのいずれかが取付けられているか否かの判定結果に基づいて、多段ブーム1の伸縮を含む多段ブーム1の作動を制御する。前述のように判定が行われるため、後方側部分2に前方側部分3A,3Bのいずれかが取付けられているか否かが適切に判定される。そして、適切に判定された判定結果に基づいて多段ブーム1の作動が制御されるため、前方側部分3A,3Bのいずれがかが後方側部分2に取付けられているか否かに対応させて、多段ブーム1の作動が適切かつ安全に制御される。
【0044】
また、本実施形態では、コントローラ25は、コード22の延設端(コネクタ23)が前方側部分3A,3Bのいずれにも接続されていないことに加えて、コード22の延設端が後方側部分2に接続されていることに基づいて、前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離されていると判定する。これにより、コード22の延設端の接続先についての検出不良の発生が、適切に判定される。
【0045】
また、本実施形態では、後方側部分2に前方側部分3A,3Bのいずれかが取付けられていると判定した場合は、コントローラ25は、コード22の延設端の接続先に基づいて、複数種類の前方側部分3A,3Bのいずれの種類が後方側部分2に取付けられているかを判定する。そして、コントローラ25は、後方側部分2に取付けられている前方側部分(3A又は3B)の種類についての判定結果に基づいて、多段ブーム1の作動を制御する。前述のように判定が行われるため、後方側部分2に前方側部分3A,3Bのいずれの種類が取付けられているかが適切に判定される。そして、適切に判定された判定結果に基づいて多段ブーム1の作動が制御されるため、後方側部分2に取付けられている前方側部分(3A又は3B)の種類に対応させて、多段ブーム1の作動が適切かつ安全に制御される。
【0046】
前述のように本実施形態では、コントローラ25は、コード22の延設端の接続についての判定結果に基づいて、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2への取付け状態を判定する。したがって、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2への取付け状態が、適切に判定される。そして、適切に判定された判定結果に基づいて多段ブーム1の作動が制御されるため、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2へのリアルタイムの取付け状態に対応させて、多段ブーム1の作動が適切に制御される。例えば、コントローラ25は、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2への取付け状態の判定結果に基づいて、前述した伸縮シリンダー10の伸縮範囲を設定する。これにより、伸縮シリンダー10の伸縮範囲として、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2へのリアルタイムの取付け状態に対応した範囲が、適切に設定される。このため、設定された伸縮範囲の範囲内で伸縮シリンダー10が伸縮する状態に伸縮シリンダー10の作動が制御されることにより、伸縮シリンダー10の作動が適切に制御され、多段ブーム1の伸縮が適切に制御される。伸縮シリンダー10の作動及び多段ブーム1の伸縮が適切に制御されることにより、伸縮シリンダー10が適正な伸縮範囲を超えて過度に伸長すること等が有効に防止される。これにより、シリンダーチューブ12がシリンダーガイドから抜けたり、シリンダーチューブ12の前方端がブームヘッド(5A又は5B)と干渉したりすることが、有効に防止される。
【0047】
また、コントローラ25は、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2への取付け状態の判定結果に基づいて、長手方向についての多段ブーム1の長さ、及び、多段ブーム1の重量等を取得し、多段ブーム1のリアルタイムの作業半径、多段ブーム1にリアルタイムで掛かっている荷重(実荷重)、及び、多段ブーム1に掛かる荷重についての限界値(上限値)を算出する。このため、多段ブーム1の作業半径、多段ブーム1の荷重(実荷重)、及び、多段ブーム1の荷重についての限界値として、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2へのリアルタイムの取付け状態に対応した値が、適切に算出される。このため、算出した多段ブーム1の作業半径に基づいて多段ブーム1の伸縮及び起伏等を制御することにより、クレーンの周辺の障害物との多段ブーム1の干渉が、有効に防止される。また、算出した多段ブーム1の荷重、及び、多段ブーム1の荷重についての限界値に基づいて多段ブーム1の作動を制御することにより、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2へのリアルタイムの取付け状態に対応させて、適切に警告が行われ、多段ブーム1の作動が適切に強制停止される。これにより、クレーンが転倒し易い姿勢になること等が、有効に防止される。
【0048】
また、コード22の延設端の接続先等に基づいて前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2への取付け状態が判定され、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2への取付け状態を示す情報がユーザインタフェース等で作業者等によって入力される構成ではない。このため、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2への取付け状態を示す情報の誤入力に起因して多段ブーム1が誤作動すること等が、有効に防止される。また、コントローラ25は、コード22を介して伝達される信号の有無、コード22を介して伝達される機器のアドレス、及び、コード22を通して伝達される信号のコード22における伝達経路のいずれかに基づいて、コード22の延設端の接続について判定する。これにより、コード22の延設端の接続先が適切に判定され、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2への取付け状態がさらに適切に判定される。
【0049】
(変形例)
図7に示すある変形例では、多段ブーム1の作動を制御するブーム制御装置20は、長手方向についての多段ブーム1の長さを計測するブーム長計測部26を備える。ブーム長計測部26は、センサ及びプロセッサ等を含む計測器から形成される。本変形例でも、後方側部分2のブーム部材(ベースブーム部材)B1にリール21が設置され、リール21からコード22が、多段ブーム1の前方側へ向かって延設される。ただし、本変形例では、初段のブーム部材B1の後方端部に、リール21が設定される。本変形例では、コード22のリール21からの延設端(遠位端)は、旋回体に取付けられる多段ブーム1において最も前方段のブーム部材(伸縮ブーム部材)に、接続される。このため、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、コード22のリール21からの延設端(遠位端)は、前方側部分3Aのブーム部材Ba6のブームヘッド5Aに接続され、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、コード22の延設端は、前方側部分3Bのブーム部材Bb4のブームヘッド5Bに接続される。また、前方側部分3A,3Bのいずれもが後方側部分2から分離された多段ブーム1では、コード22の延設端は、後方側部分2のブーム部材B3の前端に接続される。
【0050】
コード22では、リール21からの延設端(遠位端)の接続先に対応して、後方側部分2に設置されるリール21から延設端までの延設長が、変化する。すなわち、コード22の延設端が前方側部分3A,3B及び後方側部分2のいずれに接続されるかに対応して、コード22の延設長が変化する。本変形例では、ブーム長計測部26は、後方側部分2(リール21)から延設端までのコード22の延設長に基づいて、長手方向についての多段ブーム1の長さを計測する。コントローラ25は、多段ブーム1の長さについてのブーム長計測部26での計測結果を取得する。本変形例でも前述の実施形態等と同様に、コントローラ25は、多段ブーム1を構成している伸縮ブーム部材のそれぞれの伸縮についての履歴を示す情報を、取得するとともに、ユーザインタフェース等で入力された操作指令を取得する。したがって、コントローラ25は、伸縮ブーム部材のそれぞれについて、すなわち、2段目及び2段目より前方段のブーム部材のそれぞれについて、伸長率の履歴等の伸縮の履歴を示す情報を取得する。なお、前述したように、伸縮ブーム部材のそれぞれの伸縮についての履歴は、伸縮ブーム部材のそれぞれとの伸縮シリンダー10のシリンダーチューブ12の連結状態についての履歴、長手方向についての多段ブーム1の長さについての履歴、及び、伸縮シリンダー10の伸縮についての履歴等に基づいて、算出可能である。
【0051】
本変形例では、コントローラ25は、ブーム長計測部26での多段ブーム1の長さについての計測結果、及び、後方側部分2のブーム部材(伸縮ブーム部材)B2,B3及び後方側部分2に取付けられた前方側部分(3A又は3B)のブーム部材(伸縮ブーム部材)のそれぞれの伸縮について履歴に基づいて、コード22の延設端の接続について判定する。すなわち、多段ブーム1の長さ、及び、2段目及び2段目より前方段のブーム部材のそれぞれの伸縮の履歴(例えば伸長率の履歴)に基づいて、コード22の延設端の接続先について、判定される。
図8は、本変形例のコントローラ25によるコード22の延設端の接続についての判定の一例を示す。ここで、多段ブーム1の長さとして、値L1~L5を規定し、L1<L2<L3<L4<L5が成立するものとする。
【0052】
図8の一例において、ブーム部材(伸縮ブーム部材)のそれぞれの伸縮の履歴として、3段目の伸長率が50%、4段目の伸長率が100%、かつ、3段目及び4段目以外の段番の伸長率が0%であることを示す情報を、コントローラ25が取得したとする。この際、多段ブーム1の長さの計測値が値L5と同一又は略同一である場合は、コントローラ25は、コード22の延設端の接続先が前方側部分3A(ブーム部材Ba6)であると判定し、多段ブーム1の長さの計測値が値L4と同一又は略同一である場合は、コントローラ25は、コード22の延設端の接続先が前方側部分3B(ブーム部材Bb4)であると判定する。なお、
図2(d)等の状態において、多段ブーム1の長さが、値L5と同一又は略同一になる。そして、多段ブーム1の長さの計測値が値L1と同一又は略同一である場合は、コントローラ25は、コード22の延設端の接続先が後方側部分2(ブーム部材B3)であると判定する。また、多段ブーム1の長さの計測値が値L1と同一又は略同一である場合は、コントローラ25は、前方側部分3A,3Bの対応する一方が後方側部分2から分離された直後の段階であると判定する。例えば、
図2(a),
図2(b),
図2(c),
図2(d)の順に状態が変化し、前方側部分3Aが後方側部分2から取外された直後の段階であると判定される。
【0053】
また、
図8の一例において、ブーム部材(伸縮ブーム部材)のそれぞれの伸縮の履歴として、3段目の伸長率が50%、かつ、3段目以外の段番の伸長率が0%であることを示す情報を、コントローラ25が取得したとする。この際、多段ブーム1の長さの計測値が値L1と同一又は略同一である場合は、コントローラ25は、コード22の延設端の接続先が後方側部分2(ブーム部材B3)であると判定する。なお、
図2(e)等の状態において、後方側部分2の長さが、値L1と同一又は略同一になる。そして、多段ブーム1の長さの計測値が値L3と同一又は略同一である場合は、コントローラ25は、コード22の延設端の接続先が前方側部分3A(ブーム部材Ba6)であると判定し、多段ブーム1の長さの計測値が値L2と同一又は略同一である場合は、コントローラ25は、コード22の延設端の接続先が前方側部分3B(ブーム部材Bb4)であると判定する。
【0054】
また、多段ブーム1の長さの計測値が値L5と同一又は略同一である場合も、コントローラ25は、コード22の延設端の接続先が前方側部分3A(ブーム部材Ba6)であると判定する。ただし、多段ブーム1の長さの計測値が値L5と同一又は略同一である場合は、コントローラ25は、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた直後の段階であると判定する。すなわち、
図2(g),
図2(f),
図2(e),
図2(d)の順に状態が変化し、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた直後の段階であると判定される。そして、多段ブーム1の長さの計測値が値L4と同一又は略同一である場合も、コントローラ25は、コード22の延設端の接続先が前方側部分3B(ブーム部材Bb4)であると判定する。ただし、多段ブーム1の長さの計測値が値L4と同一又は略同一である場合は、コントローラ25は、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた直後の段階であると判定する。なお、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた直後では、4段目及び4段目より前方段のブーム部材(伸縮ブーム部材)のそれぞれの伸縮の履歴を示す情報は、コントローラ25によって取得されていない。このため、3段目の伸長率が50%、かつ、3段目以外の段番の伸長率が0%であることを示す情報、及び、多段ブーム1の長さに基づいて、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた直後の段階であるか否かが判定される。同様に、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた直後では、4段目のブーム部材(伸縮ブーム部材)の伸縮の履歴を示す情報は、コントローラ25によって取得されていない。このため、3段目の伸長率が50%、かつ、3段目以外の段番の伸長率が0%であることを示す情報、及び、多段ブーム1の長さに基づいて、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた直後の段階であるか否かが判定される。
【0055】
また、ブーム部材(伸縮ブーム部材)のそれぞれの伸縮の履歴として
図8で示す情報とは異なる情報をコントローラ25が取得した場合も、前述した例と同様にして、コントローラ25は、多段ブーム1の長さの計測結果に基づいて、コード22の延設端の接続(接続先)について判定する。本変形例でも、コントローラ25は、コード22の延設端の接続(接続先)についての判定結果に基づいて、前方側部分3A,3Bのそれぞれと後方側部分2との間の取付け状態(連結状態)について判定する。したがって、
図6に示す判定処理によって、前方側部分3A,3Bのそれぞれと後方側部分2との間の取付け状態について判定される。本変形例でも、コントローラ25は、後方側部分2に前方側部分3A,3Bのいずれかが取付けられているか否かの判定結果に基づいて、多段ブーム1の伸縮を含む多段ブーム1の作動を制御する。そして、本変形例でも、コントローラ25は、後方側部分2に前方側部分3A,3Bのいずれかが取付けられている場合は、後方側部分2に取付けられている前方側部分(3A又は3B)の種類についての判定結果に基づいて、多段ブーム1の伸縮を含む多段ブーム1の作動を制御する。
【0056】
前述のように本変形例でも、コントローラ25は、コード22の延設端の接続についての判定結果に基づいて、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2への取付け状態を判定する。このため、本変形例でも、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2への取付け状態が、適切に判定される。そして、適切に判定された判定結果に基づいて多段ブーム1の作動が制御されるため、本変形例でも、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2へのリアルタイムの取付け状態に対応させて、多段ブーム1の作動が適切に制御される。
【0057】
また、本変形例では、コントローラ25は、ブーム長計測部26での多段ブーム1の長さについての計測結果、及び、後方側部分2のブーム部材(伸縮ブーム部材)B2,B3及び後方側部分2に取付けられた前方側部分(3A又は3B)のブーム部材(伸縮ブーム部材)のそれぞれの伸縮についての履歴に基づいて、コード22の延設端の接続について判定する。これにより、コード22の延設端の接続先が適切に判定され、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2への取付け状態がさらに適切に判定される。
【0058】
なお、ある変形例では、コントローラ25は、コード22の延設端の接続(接続先)について、第1の実施形態等で前述した判定、及び、
図7及び
図8の変形例等で前述した判定の両方を行ってもよい。この場合、2つの判定について、判定結果の優先順位が設定される。そして、2つの判定において判定結果が異なる場合は、コントローラ25は、判定結果の優先順位が高い一方の判定結果を、コード22の延設端の接続(接続先)についての判定結果として用いて、前方側部分3A,3Bのそれぞれと後方側部分2との間の取付け状態の判定等を実施する。また、2つの判定が行われることにより、2つの判定の一方においてコード22の延設端の接続先について検出不良が発生しても、2つの判定の他方によって、コード22の延設端の接続先が適切に判定される。このため、2つの判定の一方においてコード22の延設端の接続先について検出不良が発生しても、前方側部分3A,3Bのそれぞれと後方側部分2との間の取付け状態を適切に判定可能になる。
【0059】
また、前述の実施形態等では、後方側部分2は、1つのベースブーム部材(B1)及び2つの伸縮ブーム部材(B2,B3)から形成されるが、後方側部分2は、1つのベースブーム部材及び1つ以上の伸縮ブーム部材を備えればよい。また、前述の実施形態等では、前方側部分3Aが3つの伸縮ブーム部材(Ba4~Ba6)から形成され、前方側部分3Bが1つの伸縮ブーム部材(Bb4)から形成されるが、前方側部分3A,3Bのそれぞれは、1つ以上の伸縮ブーム部材を備えればよい。これらの場合も、前述の実施形態等と同様にして、前方側部分3A,3Bのそれぞれと後方側部分2との間の取付け状態(連結状態)が、判定される。すなわち、コード22の延設端の接続についての判定結果に基づいて、前方側部分3A,3Bのそれぞれの後方側部分2への取付け状態が適切に判定される。
【0060】
また、前述の実施形態等では、前方側部分3Bに設けられるブーム部材Bbkの数が前方側部分3Aに設けられるブーム部材Bajの数とは異なるが、前方側部分3A,3Bが互いに対して種類が異なるものであれば、前方側部分3A,3Bに設けられるブーム部材の数は互いに対して同一であってもよい。この場合、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1の段数は、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1の段数と同一になる。ただし、前方側部分3Bが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1では、前方側部分3Aが後方側部分2に取付けられた多段ブーム1に対して、長手方向についての長さ及び重量等の1つ以上が異なる。この場合も、前述の実施形態等と同様にして、前方側部分3A,3Bのそれぞれと後方側部分2との間の取付け状態(連結状態)が、判定される。
【0061】
また、前述の実施形態では、2種類の前方側部分3A,3Bのいずれか1種類を後方側部分2に選択的に取付け可能であるが、3種類以上の前方側部分のいずれか1種類が後方側部分2に選択的に取付け可能であってもよい。この場合も、前述の実施形態等と同様にして、3種類以上の前方側部分のいずれの種類が後方側部分に取付けられているかが判定され、3種類以上の前方側部分のそれぞれと後方側部分2との間の取付け状態(連結状態)が判定される。また、1種類の前方側部分のみが後方側部分に取付け可能であってもよい。この場合も、前述の実施形態等と同様にして、前方側部分が後方側部分に取付けられているか否かが判定され、前方側部分と後方側部分との間の取付け状態が判定される。
【0062】
なお、本願発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【符号の説明】
【0063】
1…多段ブーム、2…後方側部分、3A,3B…前方側部分、10…伸縮シリンダー、20…ブーム制御装置、22…コード、23…コネクタ、25…コントローラ、26…ブーム長計測部、Bi,Baj,Bbk…ブーム部材。