(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020121
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】制流弁
(51)【国際特許分類】
F16K 3/16 20060101AFI20230202BHJP
F16L 55/00 20060101ALN20230202BHJP
F16L 41/04 20060101ALN20230202BHJP
F16K 43/00 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
F16K3/16
F16L55/00 C
F16L41/04
F16K43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125316
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佳晃
【テーマコード(参考)】
3H053
3H066
【Fターム(参考)】
3H053AA25
3H053BA22
3H053DA01
3H053DA02
3H066AA03
3H066BA17
(57)【要約】
【課題】流体管内部の安定した密封状態を達成できる制流弁を提供する。
【解決手段】弾性変形可能なシール部材15を有する弁体11と、弁体11を進退移動させる進退機構13と、を備える制流弁10であって、シール部材15を支持するための支持体22,23を収納状態と展開状態とに切り替え可能に備えた支持装置17が設けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能なシール部材を具備する弁体と、前記弁体を進退移動させる進退機構と、を備える制流弁であって、
前記シール部材を支持するための支持体を収納状態と展開状態とに切り替え可能に備えた支持装置が設けられていることを特徴とする制流弁。
【請求項2】
前記支持体は、流体管の径方向に動作可能に一対に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の制流弁。
【請求項3】
前記支持装置は、前記支持体を前記収納状態から前記展開状態に切り替えるための操作体を有することを特徴とする請求項1または2に記載の制流弁。
【請求項4】
前記操作体は、前記弁体の進出方向に突出していることを特徴とする請求項3に記載の制流弁。
【請求項5】
前記支持体と前記操作体とは、リンク機構によって連結されていることを特徴とする請求項4に記載の制流弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管の内部を密封するための制流弁に関する。
【背景技術】
【0002】
水やガス等が流れる既設の管路を構成する流体管は、経年劣化や新たな分岐路を形成する際に、既設の流体管の一部を新たな流体管に変更する場合がある。このような場合、例えば、既設の流体管の管軸方向に離間して2つの制流弁を取付け、各制流弁の弁体により流体管の所定区間の流体の流れを遮断するとともに、所定区間をバイパス管で迂回して連通させ、バイパス管により流体管内の流体の流れを止めずに、所定区間の一部を新たな流体管に交換する不断流工法が一般的に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1の制流弁は、弾性変形可能なシール部材を有する弁体と、弁体を進退動作させるための進退機構と、から主に構成されている。また弁体は、流体管の管軸方向においてシール部材の上流側と下流側とに配置されている一対の板材を有している。進退機構により、弁体のシール部材及びガイド部材を流体管に形成された貫通孔を通じて挿入し、シール部材の底部が流体管の内周面に当接した後、さらに進退機構により弁体を流体管に向かって移動させることで、シール部材は弾性変形前の状態から順次押圧され、流体管の内周面に向かって外径方向に膨出するように弾性変形する。これにより、流体管の内部を密封して流路を遮断することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実願昭56-1138272号(実開昭58-44589号)のマイクロフィルム(第1頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような特許文献1の制流弁にあっては、弁体で流体管の内部を密封した状態において、流体管を流れる流体に押圧されるシール部材は、下流側の板材による支持を得て、流体圧に抗することができ、下流側への屈曲が抑制されている。近年では、このような制流弁の設置工事の小規模化が望まれており、これに応じて流体管に形成される貫通孔の小径化が求められている。しかしながら、貫通孔を通じて弁体を流体管内に挿入した後に、シール部材を流体管の内周まで膨出させて密封する必要があるが、貫通孔が小径となるほどシール部材が板材よりも外方に膨出する領域が広くなる。このような領域に対しては板材による支持が及びにくいことから、十分な密封性能を維持できない虞があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、流体管内部の安定した密封状態を達成できる制流弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の制流弁は、
弾性変形可能なシール部材を具備する弁体と、前記弁体を進退移動させる進退機構と、を備える制流弁であって、
前記シール部材を支持するための支持体を収納状態と展開状態とに切り替え可能に備えた支持装置が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、支持体を収納状態とすることで流体管の貫通孔を通じて容易に挿通させることができるとともに、支持体を展開状態とすることで流体管の内周面の近傍までシール部材を支持することができる。これにより、流体管内部の安定した密封状態を達成することができる。
【0008】
前記支持体は、流体管の径方向に動作可能に一対に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、支持体を縮径することで流体管の貫通孔に通じる収納状態とすることができ、また支持体を拡径することで容易に展開状態とすることができる。
【0009】
前記支持装置は、前記支持体を前記収納状態から前記展開状態に切り替えるための操作体を有することを特徴としている。
この特徴によれば、操作体を操作することで収納状態の支持体を展開させることができる。
【0010】
前記操作体は、前記弁体の進出方向に突出していることを特徴としている。
この特徴によれば、支持装置が流体管内に挿入されことに伴って操作体が流体管の内周面に押圧されることにより生じる反力を利用して、支持装置を容易に展開状態とすることができる。
【0011】
前記支持体と前記操作体とは、リンク機構によって連結されていることを特徴としている。
この特徴によれば、簡素な構成で支持体を展開状態に切り替え可能とすることができる。
【0012】
前記支持体は、流体管の内周面よりも曲率の大きい曲面を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、弁体を後退方向に移動させるに際し、支持体の曲面が流体管の内周面に当接することによって、該支持体を収納状態に切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例における既設の管路を構成する流体管に作業弁及び穿孔機を取り付けた状況を示す正面図である。
【
図2】実施例における流体管に作業弁、制流弁及び挿入機を取り付けた状況を示す一部断面側面図である。
【
図3】実施例における流体管内部に制流弁を挿入した状況を示す一部断面側面図である。
【
図5】制流弁の進退機構を拡大して示す一部断面側面図である。
【
図6】流体管に制流弁を固定した状況を示す一部断面側面図である。
【
図7】弁体の膨出について説明するための一部断面側面図である。
【
図8】弁体の膨出について説明するための一部断面側面図である。
【
図9】制流弁により流体管内を閉塞した状況を示す一部断面側面図である。
【
図12】支持装置の収納について説明するための一部断面側面図である。
【
図13】支持装置の収納について説明するための一部断面側面図である。
【
図14】支持装置の収納について説明するための一部断面側面図である。
【
図15】本発明の制流弁を適用可能な流体管の一例を示す一部断面正面図である。
【
図16】
図15における流体管の貫通孔の形成について説明するための一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る制流弁を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0015】
実施例に係る制流弁につき、
図1から
図16を参照して説明する。本実施例においては、例えば、既設の管路を構成する流体管1を筐体2によって密封状に外嵌し、筐体2内における流体管1の所定箇所を穿孔機5によって穿孔し、その穿孔箇所に本発明に係る制流弁10(
図2参照)を不断流状態で設置した後、この制流弁10により流体管1内を閉塞及び開放する一連の流れを説明する。
【0016】
図1に示されるように、例えば地中に埋設された流体管1の所定箇所の周囲を掘削し、流体管1の外面を清掃した後、この流体管1の後述する穿孔部分を密封するためのシール部材を介し、上方に開口して内部に連通する分岐部2aを有する上下2分割構造の筐体2を外嵌して囲繞する。尚、流体管1内の流体は、本実施例では上水であるが、例えば、工業用水、農業用水、下水等の他、水以外の液体でも良いし、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。さらに尚、筐体2は、本実施例では2分割構造であるが、他の複数分割構造であってもよく、また分割筐体同士の接合は、本実施例ではT字ボルト・ナットであるが、これに限られず、例えば溶接であってもよく、パッキンを介しボルトにより取付けても構わない。
【0017】
本実施例の流体管1は、比較的大口径(本実施例では管径400mm)のダクタイル鋳鉄管であって、断面視略円形状の直管に形成されている。本実施例では、流体管1の管路方向は略水平方向に配設されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、鋼等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。さらに尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。また、管路方向は略鉛直、若しくは斜めに配設されていてもよい。
【0018】
また、本発明の流体管は、本実施例のように直管に限られず、例えば異形管で構成されてもよい。ここで異形管とは、例えば曲管部や、分岐部、十字部、異径部、継ぎ輪部、短管部、排水部等の様々な異形部を少なくとも一部に有する管を総称するものである。
【0019】
次に、筐体2内の流体管1を穿孔機5により穿孔する工程について説明する。
図1を参照して、先ず、筐体2の開口側に位置する分岐部2aのフランジ部2bに、筐体2の開口を開閉可能な作業弁4を取付ける。作業弁4は、筐体2の分岐部2aに連通状態で密封接続される弁箱41と、この弁箱41の側方に連通状態で密封接続される弁蓋43と、これら弁箱41内と弁蓋43内とに架けてスライド可能に配設された図示しない弁体と、から主に構成されている。
【0020】
すなわち、作業弁4は、弁体が弁箱41内に配置されたときに筐体2を密封状に閉塞し、また弁体が弁蓋43内に配置されたときに筐体2を開放する構造となっている。
【0021】
また、作業弁4の上方に流体管1を穿孔するための穿孔機5を設置する。穿孔機5は、弁箱41に連通状態で密封接続され、上下方向に貫通する取付フランジ筒51と、この取付フランジ筒51内に配設されるカッタ52と、このカッタ52を上下方向に移動かつ周方向に回転駆動するための駆動機構53と、から主に構成されている。
【0022】
さらに、本実施例の穿孔機5が備えるカッタ52は、いわゆるホールソーとして構成されるものであり、流体管1よりも小径(本実施例では口径240mm)であって下端に穿孔刃を備えた円筒状部材52aと、この円筒状部材52aに同軸に配設され穿孔刃よりも先方に突出したセンタードリル52bと、からなり、円筒状部材52aとセンタードリル52bとは固定されている。
【0023】
本実施例では、後述するように流体管1に穿孔される貫通孔1aは(
図2参照)、流体管1の管径に対して有意に小径(本実施例では60%)となっているため、貫通孔1aの穿孔に必要な各器具の合計重量は、本実施例で500kgに満たない。なお、従来の制流弁を用いる場合、管径400mmの貫通孔の穿孔に必要な各器具の合計重量は約1000kgである。このように、上記した筐体2や作業弁4、穿孔機5を従来よりも小型化することができ、施工性を高めることができる。
【0024】
次に、特に図示しないが、作業弁4の弁体を弁蓋43内に退避させて分岐部2aを開放するとともに、上述した穿孔機5を用いて駆動機構53によりカッタ52を回転駆動及び下方に進行させながら流体管1の管壁の一部である管頂部を穿孔する。
【0025】
また、カッタ52により流体管1が穿孔され貫通孔1a(
図2参照)が形成されると、流体管1から分断された切片がカッタ52内に保持された状態となる。そして、カッタ52を切片とともに取付フランジ筒51の内部に引き上げ、作業弁4の弁体により分岐部2aを閉塞することで、流体管1の穿孔作業が完了する。
【0026】
次に、筐体2内の流体管1を穿孔した箇所に不断流状態で制流弁10を設置する工程について説明する。
図2を参照して、作業弁4の弁体により分岐部2aを閉塞したまま、制流弁10を接続した挿入機6を作業弁4の上部に密封状態で取り付ける。
【0027】
図2に示されるように、挿入機6は、弁箱41に連通状態で密封接続され、十字に貫通形成された十字部を有する円筒状部材61と、円筒状部材61に連通状態で密封接続され、制流弁10を上下方向に移動させるための駆動機構63と、から主に構成されている。駆動機構63は、そのロッド64に連結されている弁吊金具65が制流弁10の上部にボルトで接続されている。尚、ロッド64と制流弁10の上部とを直接接続してもよい。
【0028】
ここで、本実施例に係る制流弁10について説明する。
図2に示されるように、制流弁10は、弁体11と、弁体11の一部を収容可能なケース12と、弁体11を進退移動させるための進退機構13と、弁体11のシール部材15の膨出を誘導する誘導具14と、から主に構成されている。
【0029】
図3,4に示されるように、弁体11は、弾性変形可能であって、その膨出時に後述するように流体管1の内周面1b及び貫通孔1aを密封するシール部材15(網点部)と、シール部材15の上端が固定されているプラグ16と、シール部材15を支持するための支持装置17と、から構成されている。
【0030】
図4に示されるように、シール部材15は、ゴムで形成されている流体管1の管軸方向視で略U字状に形成された平板状であり、流体管1の幅方向中央(同図紙面左右方向)において、シール部材15の進退方向、すなわち上下方向に延びている凹部18を画成している。凹部18内には誘導具14の誘導体14aが配置されている。また、凹部18は、流体管1の管軸方向、すなわちシール部材15の厚み方向に貫通している。
【0031】
凹部18についてより詳しくは、下方から順に、誘導体14aを収納可能に卵状に形成された収納部18aと、収納部18aの上端に連続して上下方向に直線状に延び、誘導体14aを案内する案内部18bと、案内部18bの上端に連続して上下方向に直線状に延び、案内部18bよりも幅が狭い絞り部18cと、絞り部18cの上端に連続する略五角形状の拡張部18d(拡張域)と、拡張部18dの上端に連続し上下方向に直線状に延びる、最も幅が狭いロッド案内部18eと、から構成されている。
【0032】
また、シール部材15は、外力を受けて弾性変形する前の自然状態において、流体管1の内径D1(約400mm)よりも小径な内径D2(240mm)である貫通孔1aを挿通可能な幅狭に形成されているため、流体管1の内径D1と略同径の幅広の貫通孔に挿通される従来のシール部材と比較して、流体管1の内周面1bとシール部材15との隙間が広くなっている一方で、自然状態におけるシール部材15と流体管1の内周面1bとの隙間の閉塞に必要な膨出代に応じて、従来のシール部材と比較して上下方向の寸法が長尺となっている。
【0033】
図5,10に示されるように、プラグ16は、正面視下向きコ字状に形成され、シール部材15の上端を挟持して固定されており、その中央に上下方向に貫通した貫通孔16aに、誘導具14のロッド14bが挿通されている。また、プラグ16には、進退機構13のロッド13cがボルトによって固定されている。
【0034】
次に、
図3,10に示されるように、ケース12について説明する。ケース12は、本体12aと、本体12aにガスケットを介在させてボルトで固定されている蓋12bと、から主に構成されており、筐体2の分岐部2aに挿入されて貫通孔1aを密封している。
【0035】
本体12aは、筐体2の分岐部2a内に挿嵌され貫通孔1aよりも大径の大径筒状部12cと、大径筒状部12cより小径であり貫通孔1aに挿嵌される円筒状の小径筒状部12dと、小径筒状部12dの下端より下方側に延びる板材19,20(
図10参照)がシール部材15を管軸方向に挟持するように形成されている。尚、板材19は流体管1の管軸方向上流側に配置され、板材20は流体管1の管軸方向下流側に配置されている。
【0036】
また、ケース12の下端には、その軸方向視中央に、板材19,20によって画成され、さらに小径筒状部12dの下端から上方側に向かって直方体状に凹設された凹部12e(
図10参照)が形成されている。凹部12eは、シール部材15及びプラグ16を進退可能かつ収納可能に形成されており、移動時におけるシール部材15及びプラグ16の回転止めをなすとともに、その移動を案内可能となっている。
【0037】
図3に示されるように、支持装置17は、ケース12の一部である一対の板材19,20(
図10参照)と、板材20においてシール部材15が配置される側とは反対側(管軸方向の下流側)の端面に固定されているカバー21と、板材20とカバー21との間に配置されている一対の支持体22,23と、支持体22,23を収納及び展開操作するためのリンク機構24と、板材19,20それぞれの下端を連結する架設部材25と、から構成されている。
【0038】
図10に示されるように、板材20には、管軸方向下流側及び幅方向に開放して凹設された収納溝20aと、収納溝20aから下方側外方に連通する直線状のガイド溝20bが形成されている。また、カバー21には、板材20の収納溝20aに対向するように開放して凹設された収納溝21aと、収納溝21aから流体管1の幅方向外方に連通する直線状の連通溝21b,21c(
図3参照)と、収納溝21aから下方側外方に連通する直線状のガイド溝21d(
図3参照)が形成されている。収納溝20a,21aによって、支持体22,23が収納及び展開動作可能に配置される収納空間17aが形成されている。
【0039】
図6に示されるように、支持体22,23は、流体管1の幅方向に略線対称の一対の翼状に形成されており、収納状態において収納空間17a内に挿入されている。より詳しくは、支持体22,23は、直線状に延びて対向配置され収納状態において互いに当接する直線内縁部22a,23a(
図3参照)と、直線内縁部22a,23aに連続して上方側に突出し鋭角状に湾曲している小径湾曲部22c,23c(
図12参照)と、小径湾曲部22c,23cに連続して、小径湾曲部22c,23cよりも小さい曲率で湾曲している大径湾曲部22d,23d(
図13参照)と、大径湾曲部22d,23dに連続して直線状に延びる直線外縁部22b,23bを有している。尚、これらの小径湾曲部22c,23c及び大径湾曲部22d,23dの曲率は、流体管1の内周面1bの曲率よりも大きい。
【0040】
また、板材19,20及び収納状態の支持体22,23は、流体管1の幅方向(
図3における紙面左右方向)の寸法が流体管1の貫通孔1aの内径D1よりも短寸となっているため、流体管1の貫通孔1aを容易に挿通させて流体管1内に挿入可能となっている。
【0041】
次に、支持体22,23のリンク機構24について説明する。支持体22,23は、下端部に回動可能に挿通されている回動軸22e,23eによって板材20及びカバー21に回動可能に軸支されている。
【0042】
図12,13に示されるように、リンク機構24は、リンク部材24a,24bと、上下方向に延設された操作体24cが、回動軸24d,24e,24fによって接続されて構成されており、収納状態において操作体24cの下端は、シール部材15の下端よりも下方側に突出している。
【0043】
リンク機構24についてより詳しくは、回動軸24dは、支持体22における直線内縁部22a側の端部、及びリンク部材24aの一端部(紙面上方側)を軸支している。回動軸24eは、支持体23における直線内縁部23a側の端部、及びリンク部材24bの一端部(紙面上方側)を軸支している。回動軸24fは、リンク部材24a,24bの他端部(紙面下方側)、及び操作体24cの上端部を軸支している。
【0044】
また、支持体22には、リンク部材24aの厚みを許容可能に凹む窪みが形成されている。これにより、支持体22,23は略同一平面状に配置されている。
【0045】
図5に示されるように、進退機構13は、ケース12の上端部に固定されている中空の本体13aと、本体13aに挿通されている中空のスピンドル13bと、スピンドル13bの外周面に形成された雄ネジに、内周面に形成された雌ネジが螺合されている中空のロッド13cと、から主に構成されており、スピンドル13bの回転に応じて、スピンドル13bに対してロッド13cが相対的に移動可能となっている。また、進退機構13には、上下方向に貫通する貫通孔13dに、誘導具14のロッド14bが挿通されている。
【0046】
図4に示されるように、誘導具14は、下側から順に、上方に向かって直線状若しくは曲線状に漸次幅狭に形成されたテーパ辺14cを有する誘導体14aと、誘導体14aの上端に連続して上方に延設されたロッド14bと、から構成されており、後述するようにシール部材15の外径方向への膨出を誘導する機能を有する。ロッド14bは、進退機構13の貫通孔13d、プラグ16の貫通孔16a、シール部材15のロッド案内部18eに挿入され、上下方向に移動可能である。
【0047】
制流弁10を設置する工程の説明に戻って、
図2に示されるように、駆動機構63により流体管1の貫通孔1aを通過させて、流体管1内にシール部材15を挿入する。
【0048】
また、
図3に示されるように、ケース12における大径筒状部12cと小径筒状部12dとの段差部に配置されているガスケット26を流体管1の外周面に圧着させることで、ケース12と流体管1との間が密封される。
【0049】
この挿入に伴って、支持装置17は、支持体22,23が収納空間17a(
図10参照)内に収納されている収納状態から、
図6に示されるように、支持体22,23がカバー21の幅方向外側に突出している展開状態となる。すなわち、支持体22,23は、収納状態とすることで流体管1の貫通孔1aを挿通可能であり、展開状態とすることで流体管1の貫通孔1aよりも外側に張り出し、流体管1の内周面1bに近接する。
【0050】
支持装置17の支持体22,23の収納状態から展開状態への移行動作について詳しくは、
図3に示されるように、収納状態においてシール部材15の下端よりも下方側に突出している操作体24cは、制流弁10の下方への挿入に伴い、流体管1の内周面1bに接触後、さらに駆動機構63によって制流弁10が挿入されることで流体管1の内周面1bから反力を受けることにより、板材20,カバー21のガイド溝20b,21dに案内されながら板材20,カバー21に対して上方向に相対移動する。
【0051】
このように移動する操作体24cに伴い、回動軸24fに軸支されたリンク部材24a,24bが左右方向に拡開動作する。
【0052】
これに伴って、リンク部材24aの他端の回動軸24dで軸支された支持体22は、黒塗り矢印で示すように回動軸22eを軸に反時計回り方向に回動する。また同様に、リンク部材24bの他端の回動軸24eで軸支された支持体23は、黒塗り矢印で示すように回動軸23eを軸に時計回り方向に回動する。このようにして、支持体22,23は左右方向に拡開する。
【0053】
このように、支持装置17が流体管1内に挿入されることに伴って操作体24cが流体管1の内周面1bに押圧されることにより生じる反力を利用して支持体22,23は展開状態となる。すなわち、支持装置17が流体管1内に挿入される動作で支持体22,23は展開状態となるため、支持装置17を展開状態とすることが容易である。
【0054】
尚、制流弁10の挿入に伴い発生する振動、流体の流れ等の外力が作用して、収納状態にある支持体22,23が流体管1の貫通孔1aを通過する前または通過している途中に展開しても、支持体22,23の直線外縁部22b,23bが貫通孔1aの内周面に当接することによって収納方向へと案内されるため、制流弁10の挿入の妨げとなることが防止されている。
【0055】
その後、図示しない仮固定手段によりケース12の本体12aを筐体2の分岐部2aに仮固定し、挿入機6、作業弁4を取外す。続けて、
図6に示されるように、本体12aの上端部に挿通させた環状の抜け止め部材27を筐体2のフランジ部2bにボルト・ナットで固定し、仮固定を解除する。
【0056】
次に、制流弁10による流体管1内の閉塞について説明する。
図7(a)に示されるように、流体管1に制流弁10を設置した状態では、シール部材15の下端部は、
図3に示される弾性変形前の自然状態から、黒塗り矢印で示すように支持装置17の架設部材25によって内周面1bの底部に圧接されて漸次弾性変形している。
【0057】
次いで、回止部材28の上方に突出した誘導具14のロッド14bの上端部を把持し、
図7(b)にて白抜き矢印で示すように上方側へと移動させる。
【0058】
図7(b)に示されるように、誘導体14aが絞り部18cを画成する凸部15c,15cと密接する位置まで誘導具14を上方に移動させた後、スピンドル13bの上端部にて、ケース12に対して固定された回止部材28に図示しないボルトで誘導具14のロッド14bを固定する。尚、誘導具14は、上方に移動された任意の位置で、単に手や器具を用いて移動不能に支持されていてもよい。
【0059】
次いで、図示しないハンドル等を操作しスピンドル13bを回転させる。スピンドル13bの回転数に応じて、相対的に下方側へと移動するロッド13cにプラグ16が従動し、
図7(c),
図8にて白抜き矢印で示すように、シール部材15が流体管1内に圧入される。
【0060】
より詳しくは、
図7(b)に示されるスピンドル13bの無回転状態から所定数回転させると(例えば10回転)、この回転に応じてシール部材15が下方に移動し、
図7(c)に示されるように、シール部材15は初期の膨出状態となり、黒塗り矢印で示すように、シール部材15は主に斜め下方向に向かって膨出する。この間、シール部材15の凸部15c,15cは、位置固定された誘導体14aのテーパ辺14cによって互いに離間方向に誘導されながら、誘導体14aよりも相対的に下方側へと移動し、言い換えれば、誘導体14aは拡張部18d内に進出する。
【0061】
また、シール部材15において流体管1の内周面1bに圧着されているシール部材15の下端部は、流体管1の内周面1bに向かって押圧されており、芯部として機能する。これにより、流体管1の内周面1bに沿うようにシール部材15の下端部から上方に向かう弾性変形を誘導できる。
【0062】
図7(c)の状態から更に所定数回転させると、
図8(a)の状態となり、黒塗り矢印で示すように、シール部材15は流体管1の水平幅方向寄りの斜め下方向に向かって膨出する。また、
図8(a)の状態から更に所定数回転させると、
図8(b)に示されるように、シール部材15は中期の膨出の状態となり、黒塗り矢印で示すように、シール部材15は流体管1の略水平幅方向に向かって膨出する。
図8(b)の状態から更に所定数回転させると、
図8(c)に示されるように、シール部材15は後期の膨出状態となり、シール部材15の圧入が完了する。
【0063】
この間、先に圧入されたシール部材15の一部が漸次芯部として機能することに加え、拡張部18dを画成するシール部材15の薄肉部15dは、ロッド案内部18eを画成しているシール部材15の厚肉部15eよりも相対的に厚薄であり弾性変形しやすくなっているため、厚肉部15eが誘導体14aのテーパ辺14cによって誘導されやすくなっている。そのため、シール部材15は圧入方向とは逆方向の成分を含む貫通孔1a近傍の内周面1bに向かって膨出する。
【0064】
これにより、黒塗り矢印で示すように、シール部材15は流体管1の貫通孔1a近傍、すなわち斜め上方向に向かって膨出されて、流体管1の貫通孔1aの内周面及び流体管1の内周面1bに亘ってシール部材15が圧接される。
【0065】
また、
図7,
図8,及び
図10に示されるように、凹部18は、常に板材20の内側にて、シール部材15の膨出に伴って拡張される。シール部材15は、厚み方向、すなわち板材19,20に向かって膨出することに加え、流体管1内の上流側の流体の圧力によっても板材20に圧着されているため、管内流体が凹部18を通過することが防止されている。
【0066】
また、板材19は、リブ19aを介して小径筒状部12dに連結されて構造強度が高められているため、板材19,20等が管軸方向下流側に反ることや傾動することが防止されている。
【0067】
また、上述したようにシール部材15が膨出するよりも前に、支持装置17が展開状態にあるため、板材20よりも外径側に漸次膨出するシール部材15は、その背面側に配置されている板材20及び支持体22,23によって、流体管1内を流れる流体の流体圧に抗してその姿勢が支持される。これにより、シール部材15が下流側に向けて弾性変形することなく管径方向のみに膨出するため、流体管1内の密封状態を保つことができる。
【0068】
また、
図10に示されるように、制流弁10は、シール部材15よりも流体管1の上流側に連通している流体圧確認用バルブ29aと、シール部材15よりも流体管1の下流側に連通している流体圧確認用バルブ29bを有している。これにより、流体圧確認用バルブ29aを開放して制流弁10まで流体が流入しているか否かを確認することができる。また、流体圧確認用バルブ29bを開放して制流弁10によって流体管1内が閉塞されているか否かを確認することができる。
【0069】
また、
図11に示されるように、貫通孔1aの内径D2(240mm)が、流体管1の内径D1(約400mm)よりも小径である(
図4参照)ため、流体管1の外径よりも制流弁10を小さくすることができる。上述した作業弁4の取付を含め、本発明の制流弁10を使用する不断流工法では、作業に必要な機材の重量を低減して、筐体2に必要な耐荷重性能も低減することができるため、筐体2を小型化することができる。すなわち、狭小の作業空間であっても不断流工法を実施することができる。
【0070】
更に、
図11に示されるように、制流弁10の平面視の最大寸法である環状の抜け止め部材27の外径L2は、流体管1の外径L1よりも小さく、且つ流体管1を外嵌する筐体2の管軸方向の長さL3は、抜け止め部材27の外径L2よりも小さい。このようにすることで、流体管1の周辺領域の掘削等の付帯工事を小規模化することができ、当該工事に必要な機材の重量を低減することができる。更に貫通孔1aの内径D2(
図4参照)は、筐体2の管軸方向の長さL3よりも小さいため、本発明の不断流工法の施工を簡略化することができる。
【0071】
次に、制流弁10を流体管1から取外す工程について説明する。先ず、上述した制流弁10による流体管1内の閉塞時とは逆の手順で、シール部材15を弾性復帰させる。その際、誘導体14aを収納部18aに移動させるが、架設部材25によって下方への移動が規制されるため、位置決めが容易である。
【0072】
次いで、図示しない仮固定手段によりケース12の本体12aを筐体2の分岐部2aに仮固定し、抜け止め部材27を筐体2のフランジ部2bから取外し、作業弁4を筐体2に取付け、弁吊金具65を制流弁10の上部にボルトで接続して挿入機6を作業弁4に取付ける。そして、駆動機構63によって制流弁10を抜出す。
【0073】
図12に示されるように、制流弁10の抜出しにおいて、支持体22,23の大径湾曲部22d,23dが流体管1の内周面1bに当接し、反力を受けることにより、流体管1の内周面1bに案内されながら、支持体22が回動軸22eを軸に時計回り方向に回動され、支持体23が回動軸23eを軸に反時計回り方向に回動される。すなわち支持体22,23が左右方向に元の位置に縮閉される。
【0074】
また、
図13に示されるように、支持体22,23の小径湾曲部22c,23cが、制流弁10の抜出し方向に対向するように湾曲している貫通孔1a近傍の流体管1の内周面1bに当接し、この内周面1bによる反力を得て案内されるため、支持体22,23が左右方向に縮閉するように漸次回動される。
【0075】
図14に示されるように、さらに制流弁10が抜出され、流体管1の貫通孔1aに支持体22,23が挿入されると、大径湾曲部22d,23dや、支持体22,23の直線外縁部22b,23b(
図3参照)が貫通孔1aの内周面に当接することで、その展開が防止される。このように、支持装置17は、流体管1及び貫通孔1aの形状を利用して元の位置への収納動作がなされ、貫通孔1aを通過する。
【0076】
すなわち、支持体22,23は、弁体11を後退方向に移動させるに際し、支持体22,23の曲面としての小径湾曲部22c,23cや大径湾曲部22d,23dが流体管1の内周面1bに当接することによって、収納状態に切り替えることができる。
【0077】
これらのように、本実施例の支持装置17は、支持体22,23を展開状態とすることで流体管1の内周面1bの近傍までシール部材15を支持することができる。これにより、流体管1a内部の安定した密封状態を達成することができる。
【0078】
また、支持体22,23は、流体管1の径方向に動作可能に一対に設けられているため、支持体22,23を縮径することで流体管1の貫通孔1aに通じる収納状態とすることができ、また支持体22,23を拡径することで容易に展開状態とすることができる。
【0079】
また、支持装置17は、支持体22,23を収納状態から展開状態に切り替えるための操作体24cを有しているため、操作体24cを操作することで収納状態の支持体22,23を展開させることができる。
【0080】
また、操作体24cは、リンク機構24を構成しているため、簡素な構成で支持体22,23を展開状態に切り替え可能とすることができる。
【0081】
尚、本実施例では、流体管1の内径D1(約400mm)に対する貫通孔1aの内径D2(240mm)の比率は約60%となっているが、これに限られず、適宜変更されてもよい。例えば流体管の内径に対する貫通孔の内径の比率が少なくとも50%を超える所定比率であれば、シール部材15及び板材19,20の最大幅も50%を超えるように設定できるため、拡張に伴ってシール部材15が板材19,20に重複する重複代を凹部よりも外側に得て、当該シール部材15及び板材19,20によって流体漏洩なく密封することができる。このことから、流体管1の内径D1に対する貫通孔1aの内径D2とシール部材15及び板材19,20の最大幅の比率は、本実施例の約60%を含む55%以上で65%以下の範囲であることが好ましい。
【0082】
また、本実施例では、ホールソーとして構成されているカッタ52により、円状の貫通孔1aが形成される構成として説明したが、例えば
図15,16に示されるように、エンドミル152を有する穿孔機105により、流体管101の管壁の周方向に延びる長孔状の貫通孔101aを形成し、貫通孔101aを通じて、本発明の上述した制流弁を設置して、流体管101を閉塞可能としてもよい。このように、エンドミル152を適用する場合には、
図15に示されるように、流体管101の管軸周りに回動可能な筐体102を用いることが好ましい。
【0083】
尚、その他特に図示しないが、上記とは別の穿孔機で流体管を穿孔し、当該穿孔機で形成した貫通孔を通じて、本発明の上述した制流弁を設置してもよい。
【0084】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0085】
例えば、前記実施例では、シール部材15は、板状であるとして説明したが、これに限られず、例えば球根状等の別の形状であってもよい。
【0086】
また、前記実施例では、シール部材15は、スピンドル13bを回転させることにより圧入される構成として説明したが、これに限られず、各種シリンダによって圧入されてもよく、すなわち進退機構は適宜変更されてもよい。
【0087】
また、前記実施例では、凹部18が上下方向に亘って厚み方向に貫通している構成として説明したが、これに限られず、凹部18の少なくとも一部が、厚み方向に貫通していなくともよく、上下方向に亘って厚み方向に貫通していなくともよい。また、凹部が厚み方向に貫通していない場合、板材が配置されていなくてもよい。
【0088】
また、前記実施例では、支持装置17は、2つの支持体22,23を備える構成として説明したが、これに限られず、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0089】
また、前記実施例では、2つの支持体22,23は、線対称の一対の翼状である構成として説明したが、これに限られず、非線対称であってもよい。また、翼状に限られず、その形状は適宜変更されてもよいが、流体管1の内周面1bを利用して収納可能とするべく曲面を有していることが好ましい。
【0090】
また、前記実施例では、支持装置17は、リンク機構24により支持体22,23を展開することができる構成として説明したが、これに限られず、モータ等の駆動力を利用して支持体22,23を駆動させてもよく、手動であってもよく、自重であってもよく、バネであってもよく、支持装置17の駆動機構は適宜変更されてもよい。