(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020157
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】サポートデバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 25/01 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
A61M25/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125380
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】柴山 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】野村 徳宏
(72)【発明者】
【氏名】重松 正明
(72)【発明者】
【氏名】中川 雄太
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267BB19
4C267HH03
(57)【要約】
【課題】生体管腔内に挿入された医療用デバイスを抜去することなく、医療用デバイスに対してバックアップ力を付与することが可能なサポートデバイスを提供する。
【解決手段】医療用デバイスを支持するサポートデバイスは、長尺状の外形を有するシャフト部と、シャフト部の先端に設けられた長尺状の外形を有するコイル体と、コイル体の外周面のうち、長手方向の少なくとも一部の区間を被覆する被覆部と、を備える。被覆部は、先端に設けられた先端側開口と、基端に設けられた基端側開口とを有し、被覆部の側面には、先端側開口と基端側開口とを結ぶと共に、被覆部の内外を連通するスリットであって、コイル体の間隙に沿って延びるスリットが設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用デバイスを支持するサポートデバイスであって、
長尺状の外形を有するシャフト部と、
前記シャフト部の先端に設けられた長尺状の外形を有するコイル体と、
前記コイル体の外周面のうち、長手方向の少なくとも一部の区間を被覆する被覆部と、
を備え、
前記被覆部は、
先端に設けられた先端側開口と、基端に設けられた基端側開口とを有し、
前記被覆部の側面には、前記先端側開口と前記基端側開口とを結ぶと共に、前記被覆部の内外を連通するスリットであって、前記コイル体の間隙に沿って延びるスリットが設けられている、サポートデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のサポートデバイスであって、
前記コイル体は平板状の部材が巻き回されており、
前記被覆部は、前記コイル体の基端部を被覆する基端側被覆部を含んでおり、
前記基端側被覆部は、前記コイル体の外周面に加えてさらに、前記コイル体の内周面を被覆しており、前記外周面を覆う部分と、前記内周面を覆う部分とが、前記コイル体の基端部において接続されている、サポートデバイス。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のサポートデバイスであって、
前記被覆部は、前記コイル体の先端部を被覆する先端側被覆部を含んでおり、
前記先端側被覆部の先端は、コイル体の先端よりも先端側に位置している、サポートデバイス。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のサポートデバイスであって、
前記被覆部は、前記コイル体の先端部を被覆する先端側被覆部を含んでおり、
前記先端側被覆部の先端部には、先端チップが固定され、
前記先端チップは、筒形状に湾曲した板部材であって、前記板部材の周方向の両端部が互いに重なり合っており、前記両端部の隙間を拡張することで、前記先端チップ内へと医療デバイスを出し入れ可能な、サポートデバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のサポートデバイスであって、
前記先端側被覆部の前記スリットの先端と、前記先端チップの前記両端部のうち一方の端部の基端とは、周方向における位置が同じである、サポートデバイス。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のサポートデバイスであって、
前記シャフト部は、
長手方向に沿って延びる本体部と、
前記本体部の先端部に設けられ、前記コイル体を把持する把持部であって、前記コイル体の外周面側と内周面側との両側から前記コイル体を挟み込んで前記コイル体を把持する把持部と、
を備える、サポートデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用デバイスを支持するサポートデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓の冠状動脈の狭窄、閉塞病変に対して、血管の内側から狭窄病変を拡張する手技(以降「PCI(経皮的冠動脈形成術)」とも呼ぶ)が知られている。PCIでは、例えば、拡縮可能なバルーンを備えるバルーンカテーテルを用いて狭窄部を拡張し、血流を確保する。このような手技において、バルーンカテーテルのバックアップ力不足のためにバルーンが血管分岐部でスタックしてしまい、バルーンを狭窄部までデリバリできない場合があった。例えば、特許文献1及び特許文献2には、バルーンカテーテルを内側に収容して用いることで、バルーンカテーテルのバックアップ力を補うことが可能なガイドエクステンションカテーテルが開示されている。また、特許文献3には、カテーテルの内側に挿入して使用される子カテーテルが開示されている。特許文献4には、体内に挿入されたガイドワイヤの基端側に取り付けることで、ガイドワイヤを延長することが可能なワイヤガイドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2015-524737号公報
【特許文献2】特表2018-531660号公報
【特許文献3】特開2015-173914号公報
【特許文献4】特表2009-525134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、バルーンカテーテルの基端部には通常、術者が把持もしくは薬剤や併用デバイスを挿入するための太径のコネクタが設けられている。このため、特許文献1及び特許文献2に記載のガイドエクステンションカテーテルを用いて、一旦体内に挿入して狭窄部近傍までデリバリしたバルーンカテーテルにバックアップ力を付与するには、バルーンカテーテルを体外まで取り出す必要があり、手間と時間を要するという課題があった。特許文献3に記載の子カテーテルについても同様に、バルーンカテーテルにバックアップ力を付与するには、バルーンカテーテルを体外まで取り出す必要があり、手間と時間を要するという課題があった。また、特許文献4に記載のワイヤガイドでは、バルーンカテーテルにバックアップ力を付与することについて何ら考慮されていない。
【0005】
なお、このような課題は、バルーンカテーテルを用いたPCIに限らず、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に挿入して使用される医療用デバイスに対して、後からバックアップ力を付与したい場合の全般に共通する課題であった。
【0006】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、生体管腔内に挿入された医療用デバイスを抜去することなく、医療用デバイスに対してバックアップ力を付与することが可能なサポートデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、医療用デバイスを支持するサポートデバイスが提供される。このサポートデバイスは、長尺状の外形を有するシャフト部と、前記シャフト部の先端に設けられた長尺状の外形を有するコイル体と、前記コイル体の外周面のうち、長手方向の少なくとも一部の区間を被覆する被覆部と、を備え、前記被覆部は、先端に設けられた先端側開口と、基端に設けられた基端側開口とを有し、前記被覆部の側面には、前記先端側開口と前記基端側開口とを結ぶと共に、前記被覆部の内外を連通するスリットであって、前記コイル体の間隙に沿って延びるスリットが設けられている。
【0009】
この構成によれば、サポートデバイスは、長尺状の外形を有するコイル体を備える。このため、コイル体の内側(内腔)にバルーンカテーテル等の医療用デバイスを収容することで、コイル体によって医療用デバイスを支えることができ、医療用デバイスにバックアップ力を付与できる。また、コイル体の長手方向の少なくとも一部の区間は被覆部によって被覆されており、被覆部の側面には、先端側開口と基端側開口とを結ぶと共に、被覆部の内外を連通するスリットであって、コイル体の間隙に沿って延びるスリットが設けられている。このため、医療用デバイスが既に生体管腔内に挿入された状態であっても、コイル体の間隙とスリットとを介して、医療用デバイスをコイル体の内側に収容できる。すなわち、本構成によれば、生体管腔内に挿入された医療用デバイスを抜去することなく、医療用デバイスに対してバックアップ力を付与することが可能なサポートデバイスを提供することができる。この結果、手技に掛かる手間と時間とを削減でき、手技の効率化を図ることができる。さらに、被覆部が設けられている区間においては、幅細のスリットによって、コイル体の間隙から医療用デバイスが外れることを抑制できる。
【0010】
(2)上記形態のサポートデバイスにおいて、前記コイル体は平板状の部材が巻き回されており、前記被覆部は、前記コイル体の基端部を被覆する基端側被覆部を含んでおり、前記基端側被覆部は、前記コイル体の外周面に加えてさらに、前記コイル体の内周面を被覆しており、前記外周面を覆う部分と、前記内周面を覆う部分とが、前記コイル体の基端部において接続されていてもよい。
この構成によれば、コイル体の基端部を被覆する基端側被覆部は、コイル体の外周面と内周面とをそれぞれ被覆しており、外周面を覆う部分と内周面を覆う部分とが、コイル体の基端部において接続されている。すなわち、コイル体の基端が基端側被覆部によって覆われている。このため、コイル体の基端側からコイル体の内側(内腔)へとバルーンカテーテル等の医療用デバイスを差し込む場合に、コイル体の基端が露出している構成と比較して、コイル体の基端と医療用デバイスが接触することによる医療用デバイスの破損を抑制できる。
【0011】
(3)上記形態のサポートデバイスにおいて、前記被覆部は、前記コイル体の先端部を被覆する先端側被覆部を含んでおり、前記先端側被覆部の先端は、コイル体の先端よりも先端側に位置していてもよい。
この構成によれば、先端側被覆部の先端は、コイル体の先端よりも先端側に位置している。すなわち、先端側被覆部の先端側には、コイル体を内包していない区間を含んでいる。このため、先端側被覆部の先端側をより柔軟に構成することができ、サポートデバイスの安全性を向上できる。
【0012】
(4)上記形態のサポートデバイスにおいて、前記被覆部は、前記コイル体の先端部を被覆する先端側被覆部を含んでおり、前記先端側被覆部の先端部には、先端チップが固定され、前記先端チップは、筒形状に湾曲した板部材であって、前記板部材の周方向の両端部が互いに重なり合っており、前記両端部の隙間を拡張することで、前記先端チップ内へと医療デバイスを出し入れ可能であってもよい。
この構成によれば、先端側被覆部の先端部には先端チップが固定されているため、先端側被覆部の先端部をより柔軟に構成することができ、サポートデバイスの安全性を向上できる。また、先端チップは、筒形状に湾曲した板部材であって、板部材の周方向の両端部が互いに重なり合っているため、内側(内腔)に挿通された医療用デバイスが外れることをより一層抑制できる。また、板部材の両端部の隙間を拡張することで、簡単に、先端チップ内へと医療デバイスを出し入れできる。
【0013】
(5)上記形態のサポートデバイスにおいて、前記先端側被覆部の前記スリットの先端と、前記先端チップの前記両端部のうち一方の端部の基端とは、周方向における位置が同じであってもよい。
この構成によれば、先端側被覆部のスリットの先端と、先端チップの両端部のうち一方の端部の基端とは、周方向における位置が同じであるため、先端チップ内へと医療デバイスを出し入れする作業をより簡単に、素早く行うことができる。
【0014】
(6)上記形態のサポートデバイスにおいて、前記シャフト部は、長手方向に沿って延びる本体部と、前記本体部の先端部に設けられ、前記コイル体を把持する把持部であって、前記コイル体の外周面側と内周面側との両側から前記コイル体を挟み込んで前記コイル体を把持する把持部と、を備えていてもよい。
この構成によれば、シャフト部は、コイル体の外周面側と内周面側との両側からコイル体を挟み込んでコイル体を把持する把持部を備える。このため、コイル体と本体部とを単に接合する場合と比較して、簡単な構造で、コイル体と本体部とを確実に固定できる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、医療用デバイスを支持するサポートデバイス、サポートデバイス用のシャフト部やコイル体、サポートデバイスを備えるカテーテルシステム、サポートデバイスの製造方法などの形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態のサポートデバイスの構成を例示した説明図である。
【
図2】サポートデバイスのA-A線(
図1)における横断面図である。
【
図3】冠状動脈に対してバルーンカテーテルを挿入する様子を示す図である。
【
図4】バルーンカテーテルにサポートデバイスを取り付ける様子を示す図である。
【
図5】サポートデバイスによるバックアップ力の付与について説明する図である。
【
図6】先端側被覆部の効果例について説明する図である。
【
図7】基端側被覆部の効果例について説明する図である。
【
図8】第2実施形態のサポートデバイスの先端側の拡大図である。
【
図9】第3実施形態のサポートデバイスの先端チップの構成を例示した説明図である。
【
図10】第3実施形態のサポートデバイスの先端チップの構成を例示した説明図である。
【
図11】第4実施形態のサポートデバイスの構成を例示した説明図である。
【
図12】第5実施形態のサポートデバイスの構成を例示した説明図である。
【
図13】第6実施形態のサポートデバイスの構成を例示した説明図である。
【
図14】第7実施形態のサポートデバイスのA-A線(
図1)における横断面図である。
【
図15】第8実施形態のサポートデバイスの構成を例示した説明図である。
【
図16】第9実施形態のサポートデバイスの構成を例示した説明図である。
【
図18】第10実施形態の把持部の構成を例示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態のサポートデバイス1の構成を例示した説明図である。サポートデバイス1は、心臓の冠状動脈の狭窄、閉塞病変に対して、血管の内側から狭窄病変を拡張する手技(以降「PCI(経皮的冠動脈形成術)」とも呼ぶ)において、バルーンカテーテルを内側に収容して用いることで、バルーンカテーテルのバックアップ力を補うデバイスである。なお、PCIはあくまで一例であり、サポートデバイス1は、血管系、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官といった、生体管腔内に挿入して使用される医療用デバイスに対して、後からバックアップ力を付与したい場合の全般に使用可能である。
【0018】
図1に示すように、サポートデバイス1は、シャフト部10と、コイル体20と、先端側被覆部40と、基端側被覆部50とを備えている。なお、先端側被覆部40と基端側被覆部50とを総称して「被覆部40,50」とも呼ぶ。
図1では、シャフト部10の中心を通る軸を軸線O1で表し、コイル体20の中心を通る軸を軸線O2で表す。
図1に示すように、軸線O1と軸線O2とは、交わらず、平行に延びている。また、
図1では、コイル体20のうち、先端側被覆部40及び基端側被覆部50に覆われた部分を、破線で図示する。
【0019】
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。X軸は、サポートデバイス1の長手方向に対応し、Y軸は、サポートデバイス1の高さ方向に対応し、Z軸は、サポートデバイス1の幅方向に対応する。
図1の左側(-X軸方向)をサポートデバイス1及び各構成部材の「先端側」と呼び、
図1の右側(+X軸方向)をサポートデバイス1及び各構成部材の「基端側」と呼ぶ。サポートデバイス1及び各構成部材について、先端側に位置する端部を「先端」と呼び、先端及びその近傍を「先端部」と呼ぶ。また、基端側に位置する端部を「基端」と呼び、基端及びその近傍を「基端部」と呼ぶ。先端側は生体内部へ挿入され、基端側は医師等の術者により操作される。これらの点は、
図1以降においても共通する。
【0020】
シャフト部10は、サポートデバイス1の基端側に設けられた長尺状の外形を有する部材である。シャフト部10は、先端から基端まで略一定の外径を有する、中実の略円柱形状の部材である。なお、シャフト部10の全体、または、少なくとも一部分には、基端から先端に向かって外径が縮径した縮径部が設けられてもよい。シャフト部10の基端部は、術者によって把持されて操作される。シャフト部10の先端部は、コイル体20の基端部に固定されている。図示の例では、シャフト部10はコイル体20の外周面に固定されているが、シャフト部10はコイル体20の内周面に固定されていてもよい。シャフト部10とコイル体20とは、融接、圧接、ろう接といった冶金的接合や、任意の接着剤を用いた接着剤接合を利用して固定できる。なお、シャフト部10の先端部は、コイル体20との接合面積を増やすために、偏平な形状に加工(例えばプレス加工等)されていてもよい。シャフト部10の外径及び長さは、任意に決定できる。
【0021】
図1に示すように、コイル体20は、シャフト部10の先端に設けられており、長尺状の外形を有している。本実施形態のコイル体20は、複数本の素線21を多条に巻回して形成された多条コイルである。換言すれば、コイル体20は、平板状に束ねた複数本の素線21が巻き回されることにより形成されている。コイル体20は、螺旋状の間隙22を有している。この間隙22は、生体管腔内に挿入済の医療用デバイスを、コイル体20の内側に収容するために用いられる。詳細は後述する。また、コイル体20の内側は、医療用デバイスを挿通させるためのデバイスルーメン20Lとして機能する。
【0022】
このようなコイル体20は、例えば、次のようにして作製できる。まず、長尺な芯金から径方向外側に所定距離だけ離間した位置において、素線21が別々に巻回された複数のボビンを、芯金の周方向に沿って所定間隔で配置する。次に、芯金をその軸方向に移動させながら、複数のボビンを芯金の周方向に沿って回転させることによって、複数のボビンそれぞれから引き出した素線21を芯金に巻回していく。このとき、例えば、複数のボビンの回転速度を所定期間毎に2段階で変化させることによって、螺旋状の間隙22を有するコイル体20を作製できる。なお、複数のボビンの回転速度を変化させることに代えて、芯金の移動速度を所定期間毎に2段階で変化させてもよい。また、例えば、複数のボビンの一部を空(ボビンに素線21がセットされていない状態)にすることで、螺旋状の間隙22を形成してもよい。巻回された素線21同士は、形状維持及びトルク伝達性向上のために、例えばレーザ溶接等によって互いに接合されていてもよい。コイル体20の外径、内径、及び長さと、素線21の巻き方向とは、任意に決定できる。
【0023】
図2は、サポートデバイス1のA-A線(
図1)における横断面図である。なお、
図2では、コイル体20の各素線21の中心を通る円を破線で図示している。
図1に示すように、先端側被覆部40は、コイル体20の先端28を含む、コイル体20の先端部を被覆する部材である。先端側被覆部40は、先端に先端側開口40aを有し、基端に基端側開口40bを有する略円筒形状(管状)であり、
図2に示すように、コイル体20の外周面を被覆している。先端側被覆部40の側面には、先端側開口40aと基端側開口40bとを結ぶと共に、先端側被覆部40の内外を連通するスリット41が設けられている。
図1に示すように、スリット41は、コイル体20の間隙22に沿って螺旋状に延びている。
図2に示すスリット41の開口長さL41は、任意に決定できる。以降、スリット41の開口長さL41を「スリット41の幅」とも呼ぶ。コイル体20に挿通された医療用デバイスが外れることを抑制するという観点から、スリット41の開口長さL41は、医療用デバイスの外径よりも小さくてもよい。
【0024】
また、先端側被覆部40の先端は、コイル体20の先端28よりも先端側に位置している。このため、先端側被覆部40の先端側には、内側にコイル体20を内包していない区間42を含んでいる。先端側被覆部40のうち、コイル体20を内包していない区間42におけるスリット41の形状は、コイル体20の間隙22に沿う螺旋状でなく、任意の形状とできる。例えば、区間42におけるスリット41の形状は、先端側被覆部40の長手方向(X軸方向)に沿った直線状であってもよい。先端側被覆部40の長手方向(X軸方向)の長さL40は、任意に決定できる。デバイス保護の観点から、先端側被覆部40の長さL40は、コイル体20の1ピッチ分の長さ以上としてもよい。また、先端側被覆部40の長さL40を、コイル体20の5~6ピッチ分の長さ以上とすれば、コイル体20に挿通された医療用デバイスが外れることを、効果的に抑制できる。
【0025】
基端側被覆部50は、コイル体20の基端29を含む、コイル体20の基端部を被覆する部材である。基端側被覆部50は、先端に先端側開口50aを有し、基端に基端側開口50bを有する略円筒形状(管状)であり、コイル体20の外周面を被覆している。基端側被覆部50の側面には、先端側開口50aと基端側開口50bとを結ぶと共に、基端側被覆部50の内外を連通するスリット51が設けられている。
図1に示すように、スリット51は、コイル体20の間隙22に沿って螺旋状に延びている。スリット51の開口長さは、
図2に示すスリット41の開口長さL41と同様に、任意に決定できる。
【0026】
また、基端側被覆部50は、コイル体20の内周面を被覆する内側被覆部52を有している。基端側被覆部50のうち、外周面を覆う部分と、内周面を覆う部分(内側被覆部52)とは、コイル体20の基端29において接続されている。換言すれば、本実施形態のサポートデバイス1では、コイル体20の基端29は、基端側被覆部50によって覆われている。基端側被覆部50の長手方向(X軸方向)の長さL50は、任意に決定できる。デバイス保護の観点から、基端側被覆部50の長さL50は、コイル体20の1ピッチ分の長さ以上としてもよい。また、基端側被覆部50の長さL50を、コイル体20の5~6ピッチ分の長さ以上とすれば、コイル体20に挿通された医療用デバイスが外れることを、効果的に抑制できる。基端側被覆部50の長さL50と、先端側被覆部40の長さL40とは、一致してもよく、相違してもよい。
【0027】
シャフト部10は、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有することが好ましく、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス合金、NiTi合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金等の放射線透過性合金、金、白金、タングステン、これらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)等の放射線不透過性合金で形成できる。シャフト部10は、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、シリコン、フッ素、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂材料により形成してもよい。シャフト部10は、特に、ポリカーボネートや、ポリプロピレンにより形成されることが好ましい。
【0028】
コイル体20の素線21は、抗血栓性、可撓性、生体適合性を有することが好ましく、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス合金、NiTi合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金等の放射線透過性合金、金、白金、タングステン、これらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)等の放射線不透過性合金で形成できる。
【0029】
先端側被覆部40及び基端側被覆部50は、柔軟性を有することが好ましく、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、シリコン、フッ素、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂材料により形成できる。先端側被覆部40及び基端側被覆部50は、特に、ポリアミドや、ポリウレタンにより形成されることが好ましい。なお、シャフト部10、コイル体20、先端側被覆部40、及び基端側被覆部50は、上記以外の公知の材料によって形成されてもよい。
【0030】
図3は、冠状動脈91に対してバルーンカテーテル3を挿入する様子を示す図である。
図3では、大動脈90から延びた冠状動脈91と、冠状動脈91の第1枝92及び第2枝93を図示している。第2枝93の遠位部には、血管内腔が狭窄した狭窄部99が形成されている。以降、バルーンカテーテル3を用いて狭窄部99を拡張する手技(PCI)において、バルーンカテーテル3に対して、サポートデバイス1を用いて後からバックアップ力を付与する方法について説明する。
【0031】
まず、術者は、大動脈90から冠状動脈91の入口まで、ガイディングカテーテル4を挿入する。術者は、ガイドワイヤ2を、ガイディングカテーテル4の先端から第1枝92内に突出させて、ガイドワイヤ2を、第1枝92から第2枝93の遠位部まで押し進める。次に術者は、ガイドワイヤ2を内側に収容した状態のバルーンカテーテル3を、ガイドワイヤ2に沿わせて第1枝92から第2枝93へと押し進める。ここで、第1枝92と第2枝93との分岐部Bの形状や、第1枝92及び第2枝93の太さ等に起因して、バルーンカテーテル3の先端部が、分岐部Bの近傍でスタックしてしまい、バルーンカテーテル3の先端部を狭窄部99までデリバリできない場合がある(
図3)。
【0032】
図4は、バルーンカテーテル3にサポートデバイス1を取り付ける様子を示す図である。
図4では、患者の体外に配置されているガイドワイヤ2及びバルーンカテーテル3の基端側の一部分と、サポートデバイス1のコイル体20の先端側の一部分とを図示している。また、
図4では、コイル体20のうち先端側被覆部40に覆われた部分について、コイル体20の輪郭のみを破線で図示している。
図3で説明したように、バルーンカテーテル3が冠状動脈91の分岐部Bでスタックした場合、術者は、バルーンカテーテル3に対してサポートデバイス1を取り付ける。
【0033】
具体的には、
図4上段に示すように、術者は、患者の体外のガイドワイヤ2及びバルーンカテーテル3を把持して1つにまとめ、ガイドワイヤ2及びバルーンカテーテル3を、サポートデバイス1のコイル体20の間隙22に挿入する。この状態で、術者は、コイル体20の先端側(
図4上段:破線枠部分)を、ガイドワイヤ2及びバルーンカテーテル3に巻き付けるように回転させる。これにより、ガイドワイヤ2及びバルーンカテーテル3の一部分を、コイル体20の螺旋状の間隙22と、先端側被覆部40の螺旋状のスリット41とを介して、コイル体20の内側(デバイスルーメン20L)に収容する。この際、術者は、コイル体20を少なくとも2回転させることで、ガイドワイヤ2及びバルーンカテーテル3の一部分を、コイル体20の少なくとも2ピッチ分の内側に収容する。そうすれば、コイル体20の軸線O2と、ガイドワイヤ2及びバルーンカテーテル3の軸方向とを平行にできる。
【0034】
次に術者は、コイル体20を回転させて、コイル体20及び先端側被覆部40の内側に、ガイドワイヤ2及びバルーンカテーテル3の一部分が収容された状態とする。この際、先端側被覆部40が設けられている区間においては、先端側被覆部40のスリット41を介して、ガイドワイヤ2及びバルーンカテーテル3を、先端側被覆部40の内側に挿通する。次に術者は、コイル体20を逆方向に回転させて、ガイドワイヤ2及びバルーンカテーテル3の全体を、コイル体20及び基端側被覆部50の内側に収容する。この際、基端側被覆部50が設けられている区間においては、基端側被覆部50のスリット51を介して、ガイドワイヤ2及びバルーンカテーテル3を、基端側被覆部50の内側に挿通する。その後、術者は、
図4下段に示すように、サポートデバイス1のコイル体20を先端側に向かって摺動させる。これにより、ガイドワイヤ2及びバルーンカテーテル3が、コイル体20の内側(デバイスルーメン20L)に全て収容される。この状態で術者は、サポートデバイス1のシャフト部10を先端側に向かって押し込むことで、コイル体20の内側にガイドワイヤ2及びバルーンカテーテル3を収容した状態で、サポートデバイス1をデリバリできる。
【0035】
図5は、サポートデバイス1によるバックアップ力の付与について説明する図である。
図5では、
図3と同様に、大動脈90、冠状動脈91、第1枝92、第2枝93、及び狭窄部99を図示している。
図4で説明した方法によってバルーンカテーテル3にサポートデバイス1を取り付けた後、術者は、サポートデバイス1のシャフト部10を先端側に向かって押し込むことで、ガイディングカテーテル4の内側において、サポートデバイス1をデリバリする。その後、術者は、サポートデバイス1のコイル体20の先端側を、ガイディングカテーテル4の先端から第1枝92内に突出させて、第1枝92と第2枝93との分岐部B近傍に配置する。この状態で、術者は、スタックしているバルーンカテーテル3を、第2枝93へと押し進める。ここで、バルーンカテーテル3の周囲は、サポートデバイス1のコイル体20及び先端側被覆部40によって支えられているため、バルーンカテーテル3は、分岐部Bから第2枝93に向かって進行できる(
図5)。
【0036】
なお、術者は、サポートデバイス1のシャフト部10を回転操作することで、コイル体20を回転させて、バルーンカテーテル3のスタックを解除してもよい。また、術者は、コイル体20が第1枝92や第2枝93でスタックした場合には、サポートデバイス1のシャフト部10を逆方向に回転操作することで、コイル体20のスタックを解除してもよい。さらに術者は、バルーンカテーテル3に追従させて、サポートデバイス1のコイル体20を、第2枝93の狭窄部99近傍まで押し進めてもよい。コイル体20を狭窄部99の近傍まで押し進めれば、コイル体20を用いて、バルーンカテーテル3の剛性が相対的に低い部分をサポートできる。また、バルーンカテーテル3を抜去して他の医療用デバイスを挿入する場合にも、コイル体20によって狭窄部99までの経路が確保された状態とできる。このため、手技の効率化を図ることができる。なお、サポートデバイス1は、内視鏡下で用いられてもよい。
【0037】
図6は、先端側被覆部40の効果例について説明する図である。
図6では、コイル体20のうち先端側被覆部40に覆われた部分について、コイル体20の輪郭のみを破線で図示している。
図6に示すように、本実施形態のサポートデバイス1は、サポートデバイス1の先端部が大動脈90の分岐部Bに位置し、バルーンカテーテル3が大きく湾曲した状態となっても、先端側被覆部40によって、バルーンカテーテル3がサポートデバイス1から外れることを抑制できる。このようなバルーンカテーテル3の外れは、目的枝までのデリバリやスタック解除のために、サポートデバイス1を回転操作した場合に、特に生じやすい。
【0038】
図7は、基端側被覆部50の効果例について説明する図である。なお、
図7では、コイル体20のうち基端側被覆部50に覆われた部分について、コイル体20の輪郭のみを破線で図示している。
図3~
図6では、大動脈90にバルーンカテーテル3を挿入した後に、サポートデバイス1を用いる場合について例示した。しかし、手技の進め方によっては、大動脈90にサポートデバイス1を挿入した後に、バルーンカテーテル3を用いる場合もある。この場合、
図7に示すように術者は、バルーンカテーテル3を、サポートデバイス1のコイル体20の基端側(換言すれば、基端側被覆部50の基端側開口50b)から、デバイスルーメン20Lへと挿入する。本実施形態のサポートデバイス1では、コイル体20の基端29が基端側被覆部50によって覆われているため、コイル体20の基端29が露出している構成と比較して、コイル体20の基端29にバルーン301が接触することによる、バルーンカテーテル3の破損を抑制できる。
【0039】
以上説明した通り、第1実施形態のサポートデバイス1は、長尺状の外形を有するコイル体20を備える。このため、コイル体20の内側(デバイスルーメン20L)にバルーンカテーテル3等の医療用デバイスを収容することで、コイル体20によって医療用デバイスを支えることができ、医療用デバイスにバックアップ力を付与できる。また、コイル体20の長手方向の少なくとも一部の区間は被覆部40,50によって被覆されており、被覆部40,50の側面には、先端側開口40a,50aと基端側開口40b,50bとを結ぶと共に、被覆部40,50の内外を連通するスリット41,51であって、コイル体20の間隙22に沿って延びるスリット41,51が設けられている。このため、医療用デバイスが既に大動脈90(生体管腔)内に挿入された状態であっても、コイル体20の間隙22とスリット41,51とを介して、医療用デバイスをコイル体20の内側に収容できる。すなわち、第1実施形態のサポートデバイス1によれば、大動脈90内に挿入された医療用デバイスを抜去することなく、医療用デバイスに対してバックアップ力を付与することが可能なサポートデバイス1を提供することができる。この結果、手技に掛かる手間と時間とを削減でき、手技の効率化を図ることができる。さらに、
図6に示すように、被覆部40,50が設けられている区間においては、幅細のスリット41によって、コイル体20の間隙22から医療用デバイスが外れることを抑制できる。
【0040】
また、第1実施形態のサポートデバイス1によれば、コイル体20の基端部を被覆する基端側被覆部50は、コイル体20の外周面と内周面とをそれぞれ被覆しており、外周面を覆う部分と内周面を覆う部分(内側被覆部52)とが、コイル体20の基端部において接続されている。すなわち、コイル体20の基端29が基端側被覆部50の基端側によって覆われている。このため、
図7に示すように、コイル体20の基端側からコイル体20の内側(デバイスルーメン20L)へとバルーンカテーテル3等の医療用デバイスを差し込む場合に、コイル体20の基端29が露出している構成と比較して、コイル体20の基端29と医療用デバイスが接触することによる医療用デバイスの破損を抑制できる。
【0041】
さらに、第1実施形態のサポートデバイス1によれば、先端側被覆部40の先端は、コイル体20の先端28よりも先端側に位置している。すなわち、先端側被覆部40の先端側には、コイル体20を内包していない区間42を含んでいる。このため、コイル体20を内包していない区間42を有さない構成と比較して、先端側被覆部40の先端側をより柔軟に構成することができ、サポートデバイス1の安全性を向上できる。
【0042】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態のサポートデバイス1Aの先端側の拡大図である。
図8下段にはサポートデバイス1Aの構成を図示し、
図8上段(吹き出し内)には先端チップ43の構成を図示する。第2実施形態のサポートデバイス1Aは、第1実施形態の構成において、先端側被覆部40に代えて先端側被覆部40Aを備えると共に、さらに、先端チップ43を備えている。先端側被覆部40Aは、第1実施形態で説明した区間42(内側にコイル体20を内包していない区間)を有しておらず、先端部に先端チップ43が固定されている点を除いて、第1実施形態と同様の構成を有する。先端側被覆部40と先端チップ43とは、融接、圧接、ろう接といった冶金的接合や、任意の接合剤を用いた接着剤接合を利用して固定できる。
【0043】
図8上段(吹き出し内)に示すように、先端チップ43は、筒形状に湾曲した板部材であって、周方向の端部431と端部432とが互いに重なり合っている(破線丸枠)。術者は、端部431,432の間の隙間433を、指やバルーンカテーテル3等の医療用デバイスで押し開いて拡張することにより、隙間433を介して、先端チップ43内へと医療用デバイスを出し入れできる。また、先端チップ43を構成する板部材は、端部431と端部432とが互いに重なり合うように付勢されている(黒矢印)。このため、指により拡張された隙間433は、指が離れるにつれて閉じる。先端チップ43は、柔軟性を有することが好ましく、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、シリコン、フッ素、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂材料により形成できる。先端チップ43は、特に、ポリアミドや、ポリウレタンにより形成されることが好ましい。先端チップ43と先端側被覆部40Aとは、同一の材料により形成されてもよく、異なる材料により形成されてもよい。先端チップ43の長手方向(X軸方向)の長さL43は、任意に決定できる。
【0044】
このように、サポートデバイス1Aの構成は種々の変更が可能であり、先端側被覆部40Aの先端側に、さらに先端チップ43を設けてもよい。
図8で説明した先端チップ43の構成はあくまで一例であり、種々の変更ができる。例えば、先端チップ43を構成する板部材は付勢されていなくてもよい。このような第2実施形態のサポートデバイス1Aによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第2実施形態のサポートデバイス1Aによれば、先端側被覆部40Aの先端部には先端チップ43が固定されているため、先端側被覆部40Aの先端部をより柔軟に構成することができ、サポートデバイス1Aの安全性を向上できる。また、先端チップ43は、筒形状に湾曲した板部材であって、板部材の周方向の両端部431,432が互いに重なり合っているため、内側(内腔)に挿通された医療用デバイスが外れることをより一層抑制できる。また、板部材の両端部431,432の隙間433を拡張することで、簡単に、先端チップ43内へと医療デバイスを出し入れできる。
【0045】
<第3実施形態>
図9及び
図10は、第3実施形態のサポートデバイス1Bの先端チップ43B1~43B5の構成を例示した説明図である。第3実施形態では、第2実施形態で説明した先端チップ43の変形について説明する。第3実施形態のサポートデバイス1Bは、第2実施形態の構成において、先端チップ43に代えて、
図9及び
図10に示す先端チップ43B1~43B5のいずれかを備えている。
【0046】
図9(A)は、先端チップ43B1の構成を例示した説明図である。先端チップ43B1は、先端側被覆部40のスリット41(一点鎖線)と略同一の方向に、緩やかに傾斜した端部431B1及び端部432B1を有している。また、両端部431B1,432B1のうち一方の端部(図示の例では、端部432B1)の基端は、先端側被覆部40のスリット41の先端と、周方向における位置が同じである。このため、
図9(A)の先端チップ43B1によれば、先端チップ43B1内へと医療デバイスを出し入れする作業をより簡単に、素早く行うことができる。なお、本実施形態において「同じ」及び「同一」とは、厳密に一致する場合に限らず、製造誤差等に起因した相違を許容する意味である。
【0047】
図9(B)は、先端チップ43B2の構成を例示した説明図である。先端チップ43B2は、周方向に切れ込み434が形成された端部431B2及び端部432B2を有している。このため、
図9(B)の先端チップ43B2によれば、切れ込み434を用いることで、先端チップ43B2内へと医療デバイスを出し入れする作業をより簡単に、素早く行うことができる。
【0048】
図9(C)は、先端チップ43B3の構成を例示した説明図である。先端チップ43B3は、波状の端部431B3及び端部432B3を有している。このため、
図9(C)の先端チップ43B3によれば、直線状の端部431,432を設ける場合と比較して、術者が指で端部431B3及び端部432B3を把持しやすいため、先端チップ43B3内へと医療デバイスを出し入れする作業をより簡単に、素早く行うことができる。
【0049】
図10(A)は、先端チップ43B4の構成を例示した説明図である。先端チップ43B4は、U字状の端部431B4及び端部432B4を有している。このため、
図10(A)の先端チップ43B4によれば、直線状の端部431,432を設ける場合と比較して、端部431B4,432B4に形成される角部を減らすことができるため、先端チップ43B4の安全性を向上できる。また、直線状の端部431,432を設ける場合と比較して、術者が指で端部431B4及び端部432B4を把持しやすいため、先端チップ43B4内へと医療デバイスを出し入れする作業をより簡単に、素早く行うことができる。
【0050】
図10(B)は、先端チップ43B5の構成を例示した説明図である。先端チップ43B5は、V字状の端部431B5及び端部432B5を有している。このため、
図10(B)の先端チップ43B5によれば、直線状の端部431,432を設ける場合と比較して、術者が指で端部431B5及び端部432B5を把持しやすいため、先端チップ43B5内へと医療デバイスを出し入れする作業をより簡単に、素早く行うことができる。
【0051】
このように、先端チップ43B1~43B5の構成は種々の変更が可能であり、端部431B1~B5,432B1~B5は、種々の形状とされてよい。上述の例では、先端チップ43B1~43B5について、板部材の一方の端部と、他方の端部の形状は、それぞれ同じとした。しかし、板部材の一方の端部と、他方の端部の形状は、相違してもよい。例えば、一方の端部が波状であり、他方の端部が直線状であってもよい。また、
図9(B),(C)及び
図10(A),(B)で説明した先端チップ43B2~43B5においても、
図9(A)で説明した先端チップ43B1と同様に、先端側被覆部40のスリット41の先端と、先端チップ43B2~43B5の一方の端部の基端とについて、周方向における位置を同じにしてもよい。このような第3実施形態のサポートデバイス1Bによっても、上述した第1及び第2実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0052】
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態のサポートデバイス1Cの構成を例示した説明図である。第4実施形態のサポートデバイス1Cは、第1実施形態の構成において、基端側被覆部50を備えていない。このように、サポートデバイス1Cの構成は種々の変更が可能であり、基端側被覆部50を省略して、コイル体20の先端部のみが被覆部(先端側被覆部40)によって覆われた構成としてもよい。このような第4実施形態のサポートデバイス1Cによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、被覆部(先端側被覆部40)が設けられている区間においては、コイル体20の間隙22から医療用デバイスが外れることを抑制できる。
【0053】
<第5実施形態>
図12は、第5実施形態のサポートデバイス1Dの構成を例示した説明図である。第5実施形態のサポートデバイス1Dは、第1実施形態の構成において、先端側被覆部40を備えていない。このように、サポートデバイス1Dの構成は種々の変更が可能であり、先端側被覆部40を省略して、コイル体20の基端部のみが被覆部(基端側被覆部50)によって覆われた構成としてもよい。このような第5実施形態のサポートデバイス1Dによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、被覆部(基端側被覆部50)が設けられている区間においては、コイル体20の間隙22から医療用デバイスが外れることを抑制できる。
【0054】
<第6実施形態>
図13は、第6実施形態のサポートデバイス1Eの構成を例示した説明図である。第6実施形態のサポートデバイス1Eは、第1実施形態の構成において、先端側被覆部40及び基端側被覆部50に代えて、被覆部60を備えている。
【0055】
被覆部60は、コイル体20の外周面のうち、長手方向の全ての区間を被覆する部材である。被覆部60は、先端に先端側開口60aを有し、基端に基端側開口60bを有する略円筒形状(管状)である。被覆部60の側面には、先端側開口60aと基端側開口60bとを結ぶと共に、被覆部60の内外を連通するスリット61が設けられている。スリット61は、コイル体20の間隙22に沿って螺旋状に延びている。被覆部60の先端は、コイル体20の先端28よりも先端側に位置しており、被覆部60の先端側には、内側にコイル体20を内包していない区間62を含んでいる。被覆部60は、基端部において、コイル体20の内周面を被覆する内側被覆部63を有している。被覆部60のうち、外周面を覆う部分と、内周面を覆う部分(内側被覆部63)とは、コイル体20の基端29において接続されている。なお、被覆部60の長手方向(X軸方向)の長さL60は、コイル体20の長さよりも長い限りにおいて、任意に決定できる。被覆部60は、柔軟性を有することが好ましく、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、シリコン、フッ素、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂材料により形成できる。被覆部60は、特に、ポリアミドや、ポリウレタンにより形成されることが好ましい。
【0056】
このように、サポートデバイス1Eの構成は種々の変更が可能であり、コイル体20の長手方向の全ての区間を被覆する被覆部60を有する構成としてもよい。
図13で例示した被覆部60の構成はあくまで一例であり、例えば、内側被覆部63や、コイル体20を内包していない区間62を省略してもよい。このような第6実施形態のサポートデバイス1Eによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第6実施形態のサポートデバイス1Eによれば、コイル体20の長手方向の全ての区間において、コイル体20の間隙22から医療用デバイスが外れることを抑制できる。
【0057】
<第7実施形態>
図14は、第7実施形態のサポートデバイス1FのA-A線(
図1)における横断面図である。第7実施形態のサポートデバイス1Fは、第1実施形態の構成において、先端側被覆部40に代えて先端側被覆部40Fを備えている。先端側被覆部40Fは、コイル体20の外周面を覆う外側被覆部401と、コイル体20の内周面を覆う内側被覆部402と、を有している。先端側被覆部40Fの側面には、先端側開口40aと基端側開口40b(
図1参照)とを結ぶと共に、先端側被覆部40Fの内外を連通するスリット41が設けられている。
図14に示すように、スリット41は、外側被覆部401と内側被覆部402の両方に対して、同じ位置に設けられている。
【0058】
このように、サポートデバイス1Fの構成は種々の変更が可能であり、コイル体20の外周面を覆う外側被覆部401と、コイル体20の内周面を覆う内側被覆部402とを有する先端側被覆部40Fを備えてもよい。このような構成とすれば、内側被覆部402によって、デバイスルーメン20Lに挿通された医療用デバイスを保護することができるため、医療用デバイスの損傷をより一層抑制できる。なお、
図14では、外側被覆部401と内側被覆部402との間に空隙403が設けられる構成を例示した。しかし、この空隙403は無くてもよい。例えば、先端側被覆部40Fの内側にコイル体20が内包されていない部分については、外側被覆部401と内側被覆部402とが互いに接触していてもよい。また、
図14の例では、先端側被覆部40Fについて説明したが、基端側被覆部50についても同様に、コイル体20の外周面を覆う外側被覆部と、コイル体20の内周面を覆う内側被覆部とを有する構成としてもよい。
【0059】
<第8実施形態>
図15は、第8実施形態のサポートデバイス1Gの構成を例示した説明図である。第8実施形態のサポートデバイス1Gは、第1実施形態の構成において、コイル体20に代えてコイル体20Gを備えている。コイル体20Gは、1本の素線21を単条に巻回して形成された単条コイルである。コイル体20Gの外径、内径、及び長さと、素線21の巻き方向とは、任意に決定できる。
【0060】
このように、コイル体20Gの構成は種々の変更が可能であり、第1実施形態で説明した多条コイルに代えて、
図15に示す単条コイルを用いてもよい。また、コイル体20Gは、複数本の素線を撚り合せた撚線を単条に巻回して形成される単条撚線コイルとしてもよく、複数本の素線を撚り合せた撚線を複数用い、各撚線を多条に巻回して形成される多条撚線コイルとしてもよい。さらに、コイル体20Gのコイルピッチは、一定でなくてもよい。例えば、基端側のコイルピッチを、先端側のコイルピッチと比べて大きくすれば、コイル体20Gの基端側の剛性を、先端側と比べて高くできる。なお、第1実施形態で説明した多条コイル(コイル体20)においても同様に、コイルピッチを一定にしなくてもよい。このような第8実施形態のサポートデバイス1Gによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0061】
<第9実施形態>
図16は、第9実施形態のサポートデバイス1Hの構成を例示した説明図である。第9実施形態のサポートデバイス1Hは、第1実施形態の構成において、シャフト部10に代えてシャフト部10Hを備える。シャフト部10Hは、本体部11と、把持部30とを有している。本体部11は、長手方向(X軸方向)に沿って延びており、先端から基端まで略一定の外径を有する、中空の略円筒形状の部材である。なお、本体部11の全体、または、少なくとも一部分には、基端から先端に向かって外径が縮径した縮径部が設けられてもよい。本体部11の先端部には、把持部30の湾曲部32が挿入された状態で、固定されている。本体部11と把持部30とは、融接、圧接、ろう接といった冶金的接合や、任意の接着剤を用いた接着剤接合を利用して固定できる。また、本体部11は、中実の略円柱形状であってもよい。この場合、本体部11の外周面に対して、把持部30の湾曲部32が接合されてもよい。
【0062】
図17は、把持部30の構成を例示した説明図である。
図17(A)は、
図16と同じ方向から見た把持部30の構成を示す。
図17(B)は、
図16の+Y方向から見た把持部30の構成を示す。把持部30は、本体部11とコイル体20との間であって、シャフト部10Hの先端部に設けられた部材である。把持部30は、把持体31と、湾曲部32とを有している。把持体31は、サポートデバイス1Hの長手方向(X軸方向)に沿って延びる一対の板状の部分である。
図17(A)に示すように、把持体31は、間隙30aの方向(白抜き矢印の方向)に向かってそれぞれ付勢されている。湾曲部32は、一の把持体31と他の把持体31とを接続すると共に、湾曲形状とされた部分である。把持部30は、間隙30aに差し込まれたコイル体20を把持する。具体的には、
図16に示すように、コイル体20の外周面側と内周面側との両側から、把持体31によってコイル体20を挟み込むことにより、コイル体20を把持する。なお、把持部30のX軸方向及びZ軸方向の長さは、任意に決定できる。
【0063】
このように、サポートデバイス1Hの構成は種々の変更が可能であり、本体部11と把持部30から構成されたシャフト部10Hを用いてもよい。このような第9実施形態のサポートデバイス1Hによっても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第9実施形態のサポートデバイス1Hによれば、シャフト部10Hは、コイル体20の外周面側と内周面側との両側からコイル体20を挟み込んでコイル体20を把持する把持部30を備える。このため、コイル体20とシャフト部10Hとを単に接合する場合と比較して、簡単な構造で、コイル体20とシャフト部10Hとを確実に固定できる。
【0064】
<第10実施形態>
図18は、第10実施形態の把持部30の構成を例示した説明図である。第10実施形態のサポートデバイス1Iは、第9実施形態で説明した構成において、
図17で説明した把持部30に代えて、
図18に示す把持部30Iを備える。
図18(A)は、
図16と同じ方向から見た把持部30Iの構成を示す。
図18(B)は、
図16の+Y方向から見た把持部30Iの構成を示す。
図18(C)は、把持部30Iに、コイル体20が把持されている様子を、
図16の+Y方向から見た図を示す。なお、
図18(C)では、図示の便宜上、コイル体20の一部分を湾曲板状に簡略化して表している。
【0065】
図18(B)に示すように、把持部30Iは、把持体31Iと、本体部32Iとを有している。把持体31Iは、複数(
図18の例では3つ)の板状部材が、所定の空隙を開けてZ軸方向に並んで配置された部分である。本体部32Iは、先端から基端まで略一定の外径を有する、中実の略円柱形状の部材である。
図18(C)に示すように、把持体31Iは、複数の板状部材を用いてコイル体20を挟み込むことにより、コイル体20を把持する。具体的には、
図18(C)に示すように、把持体31Iを構成する複数の板状部材のうち、一部の板状部材(図示の例では+Z軸方向から見て奇数番目の板状部材)がコイル体20の外周面側に位置し、残余の板状部材(図示の例では+Z軸方向から見て偶数番目の板状部材)がコイル体20の内周面側に位置するように配置されることで、把持体31Iはコイル体20を把持する。
【0066】
このように、把持部30Iの構成は種々の変更が可能であり、
図17で説明した構成とは異なる構成とされてもよい。このような把持部30Iを備える第10実施形態のサポートデバイス1Iによっても、上述した第1及び第9実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第10実施形態の把持部30Iによれば、第9実施形態で説明した湾曲部32を設ける必要がないため、把持部30Iの基端側(すなわち本体部32I)を細径化できる。
【0067】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0068】
[変形例1]
上記第1~10実施形態では、サポートデバイス1,1A~1Iの構成を例示した。しかし、サポートデバイス1の構成は種々の変更が可能である。例えば、第9,10実施形態において、本体部11と把持部30,30Iとは、一体的に形成されていてもよい。例えば、サポートデバイス1の先端部(コイル体20の先端部や、先端側被覆部40の先端部)には、放射線不透過性を有するマーカー部が設けられてもよい。例えば、サポートデバイス1の基端部(すなわち、シャフト部10の基端部)には、術者がサポートデバイス1を把持するためのコネクタが設けられてもよい。例えば、シャフト部10、コイル体20、先端側被覆部40、及び基端側被覆部50のうち、少なくとも一部の部材の表面には、親水性樹脂または疎水性樹脂を用いたコーティングがされていてもよい。
【0069】
[変形例2]
上記第1~10実施形態のサポートデバイス1,1A~1Iの構成、及び上記変形例1の各構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第4,6~10実施形態で説明した構成を有するサポートデバイス1において、第2,3実施形態で説明した先端チップ43を採用してもよい。例えば、第2~7,9,10実施形態で説明した構成を有するサポートデバイス1において、第8実施形態で説明したコイル体20Gを採用してもよい。例えば、第2~8実施形態で説明した構成を有するサポートデバイス1において、第9実施形態で説明したシャフト部10Hを採用してもよい。
【0070】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0071】
1,1A~1I…サポートデバイス
2…ガイドワイヤ
3…バルーンカテーテル
4…ガイディングカテーテル
10,10H…シャフト部
11…本体部
20,20G…コイル体
21…素線
22…間隙
30,30I…把持部
31,31I…把持体
32…湾曲部
32I…本体部
40,40A,40F…先端側被覆部(被覆部)
40a…先端側開口
40b…基端側開口
41…スリット
43,43B1,43B2,43B3,43B4,43B5…先端チップ
50…基端側被覆部(被覆部)
50a…先端側開口
50b…基端側開口
51…スリット
52…内側被覆部
60…被覆部
60a…先端側開口
60b…基端側開口
61…スリット
63…内側被覆部
90…大動脈
91…冠状動脈
92…第1枝
93…第2枝
99…狭窄部
301…バルーン
401…外側被覆部
402…内側被覆部
403…空隙
431,431B1,431B2,431B3,431B4,431B5,432,432B1,432B2,432B3,432B4,432B5…端部
433…隙間