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特開2023-20182アンテナの自動追尾方法及びアンテナの自動追尾システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020182
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】アンテナの自動追尾方法及びアンテナの自動追尾システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/42 20060101AFI20230202BHJP
   H04B 7/10 20170101ALI20230202BHJP
【FI】
G01S3/42 D
H04B7/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125424
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】北原 成郎
(72)【発明者】
【氏名】古川 敦
(72)【発明者】
【氏名】天下井 哲生
(72)【発明者】
【氏名】畑本 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】飛鳥馬 翼
(72)【発明者】
【氏名】竹下 嘉人
(57)【要約】
【課題】基地局のアンテナを回転させることなく、移動局のアンテナの向きを速やかに最適な角度に制御する。
【解決手段】予め設定された運行計画に基づき、遠隔操作にて走行する運行車両10に搭載されて、当該運行車両10の車両情報を基地局(運行管理装置20)に送信するとともに、基地局から送信される車両制御信号を受信するアンテナ14の向きを、基地局に設けられたアンテナ22の方向に自動的に向けるアンテナの自動追尾システム100を、アンテナ14を搭載する回転台16と、運行計画に基づいて、運行車両10の現在位置、もしくは、運行車両10の所定時間後の位置における所定時間後のアンテナ14とアンテナ22とを結ぶ方向である、アンテナの目標回転角度αを算出する目標回転角度算出手段24と、回転台16を回転させるアンテナ回転手段17とから構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局である運行車両に搭載されたアンテナである車両側アンテナの向きを回転させ、前記移動局と交信する基地局に設けられたアンテナである基地局側アンテナの方向に自動的に向きを合わせるアンテナの自動追尾方法であって、
前記運行車両を、予め設定された運行計画に基づき走行させるとともに、
前記運行車両の現在位置、もしくは、前記運行車両の所定時間後の位置における前記車両側アンテナと前記基地局側アンテナとを結ぶ方向である、前記車両側アンテナの目標回転角度を算出し、前記された目標回転角度に基づいて、前記車両側アンテナの向きを調整することを特徴とするアンテナの自動追尾方法。
【請求項2】
前記運行車両を、遠隔操作にて走行させることを特徴とする請求項1に記載のアンテナの自動追尾方法。
【請求項3】
前記運行車両が複数台あり、前記複数台の運行車両のうちの1台の運行車両の目標回転角度の方向に他の運行車両が位置しており、かつ、前記1台の運行車両の受信信号電力が予め設定された閾値を下回る場合には、前記運行計画を変更することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアンテナの自動追尾方法。
【請求項4】
運行車両が複数台あり、前記複数台の運行車両のうちの1台の運行車両の目標回転角度の方向に他の運行車両が位置している場合には、前記目標回転角度の周辺角度範囲の中で最も受信信号電力の高い角度にアンテナの向きを調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアンテナの自動追尾方法。
【請求項5】
運行車両が複数台あり、前記複数台の運行車両のうちの1台の運行車両の目標回転角度の方向に他の運行車両が位置している場合には、アンテナ仰角の調整可能範囲の中で最も受信信号電力の高い角度にアンテナの仰角を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアンテナの自動追尾方法。
【請求項6】
移動局である運行車両に搭載されたアンテナである車両側アンテナの向きを回転させ、前記移動局と交信する基地局に設けられたアンテナである基地局側アンテナの方向に自動的に向きを合わせるアンテナの自動追尾方法であって、
前記運行車両が、予め設定された運行計画に基づき、予め設定された走行経路に沿って走行する車両であり、
前記運行車両を、予め、前記走行経路に沿って走行させて、前記基地局から送信される信号を受信したときの受信信号電力が最大になる時の前記車両側アンテナの回転角度を前記走行経路の各位置に対して求め、この求められた回転角度を前記各位置における目標回転角度とするとともに、
前記運行車両を前記運行計画に基づき走行させる際には、前記予め求めておいた目標回転角度に基づいて、前記車両側アンテナの向きを調整することを特徴とするアンテナの自動追尾方法。
【請求項7】
予め設定された運行計画に基づき走行する運行車両に搭載されて、当該運行車両の車両情報を基地局に送信するとともに、前記基地局から送信される車両制御情報を受信するアンテナである車両側アンテナの向きを、前記基地局に設けられたアンテナである基地局側アンテナの方向に自動的に向けるアンテナの自動追尾システムであって、
前記車両側アンテナを搭載する回転台と、
前記運行計画に基づいて、前記運行車両の現在位置、もしくは、前記運行車両の所定時間後の位置における前記車両側アンテナと前記基地局側アンテナとを結ぶ方向である、前記車両側アンテナの目標回転角度を算出する目標回転角度算出手段と、
前記回転台を、前記算出された目標回転角度に基づいて回転させるアンテナ回転手段と、を備えることを特徴とするアンテナの自動追尾システム。
【請求項8】
前記回転台に、前記アンテナの方位角に加えて仰角を回転させる回転機構を設けたことを特徴とする請求項7に記載のアンテナの自動追尾システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運行車両に搭載されたアンテナの向きを基地局のアンテナの方向に自動追尾させる方法、及び、そのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、60GHz帯(ミリ波帯)の無線通信システムでは、アンテナの指向性が鋭いため、移動局である車両に搭載されたアンテナの向きを、基地局のアンテナにできるだけ対向させるようにしている。
一般的には、移動局のアンテナを回転台に搭載し、機械的に360度回転させながら受信信号の電力をモニタリングし、アンテナを、受信信号の電力(以下、受信レベルという)が最も高い回転角度に設定するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、受信レベルに加えて受信レベルの変動についても逐次確認し、変動が大きい場合には、アンテナの向きが最適な角度から離れていると判定して回転速度を速くし、変動が小さい場合には、アンテナの向きが最適な角度近いと判定して回転速度を遅くすることで、回転台の回転速度が一定の場合に比較して、短時間でアンテナの向きを最適な角度に合わせることができる、としている。
また、移動局と基地局とにそれぞれ携帯電話を設定し、この携帯電話を使って移動局と基地局との位置情報を交換し、移動局側がアンテナを基地局側に向け、基地局側も移動局側にアンテナを向けることで、移動局と基地局のアンテナ同士を対向させる、アンテナ自動追尾方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭58-147663号公報
【特許文献2】特開平09-065444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、車両の移動速度が速く、基地局との位置関係の時間変化が大きい場合には、受信レベルの揺らぎが大きいため、最適な角度(方位角)に合わせることが困難であった。
また、特許文献2の方法では、移動局の現在位置に基づきアンテナの向きを制御しており、少し時間が経過した後の位置については考慮していないため、車両がカーブを通過した場合などには、アンテナの向きを適切な角度に制御することが困難であった。
また、特許文献2では、基地局側のアンテナを移動局に向けていることから、複数台の車両(移動局)を考慮していないと考えられる。また、基地局が複数台の車両(移動局)と通信する場合には、基地局のアンテナの向きの制御は実施しないことが望ましい。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、基地局のアンテナを回転させることなく、移動局のアンテナの向きを速やかに最適な角度に制御可能なアンテナの自動追尾方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、移動局である運行車両に搭載されたアンテナである車両側アンテナの向きを回転させ、前記移動局と交信する基地局に設けられたアンテナである基地局側アンテナの方向に自動的に向きを合わせるアンテナの自動追尾方法であって、前記運行車両を、予め設定された運行計画に基づき走行させるとともに、前記運行車両の現在位置、もしくは、前記運行車両の所定時間後の位置における前記車両側アンテナと前記基地局側アンテナとを結ぶ方向である、前記車両側アンテナの目標回転角度を算出し、前記された目標回転角度に基づいて、前記車両側アンテナの向きを調整することを特徴とする。
これにより、基地局のアンテナを360度分回転させることなく、移動局のアンテナの向きを速やかに最適な角度に制御することが可能となる。
なお、無線通信における受信信号の電力(受信レベル)は、周囲の物体の配置による反射・回折・散乱の影響を受けるので、基地局と移動局を結ぶ方向である目標回転角度が移動側アンテナの最適な角度であるとは限らないが、移動局のアンテナの向きを、算出された目標回転角度の回りに回転させれば、限られた角度範囲で最適な角度を見出すことができる。
請求項1に記載のアンテナの自動追尾方法を、運行車両を、遠隔操作にて予め設定された運行計画に基づき走行させる形態の運行車両に用いたので、運搬車両の位置や姿勢のみならず、車両側アンテナの向きについても適切に制御できる。
【0007】
また、前記運行車両が複数台あり、前記運行車両のうちの1台の運行車両の目標回転角度の方向に他の運行車両が位置しており、かつ、前記1台の運行車両の受信レベルが予め設定された閾値を下回る場合には、前記運行計画を変更して、目標回転角度の方向に他の運行車両が位置しないようにしたので、運行車両が複数台あった場合でも、各運行車両の通信状態を最適にすることができる。
あるいは、目標回転角度の周辺の角度範囲の中で最も受信レベルの高い角度にアンテナの向きを調整するようにしてもよい。但し、調整した受信レベルが予め設定された閾値を下回る場合には、運行計画を変更する。
また、方位角だけでなく仰角についても調節できるようにしたので、方位角が目標回転角度である方向に他の運行車両が位置した場合でも、アンテナ仰角の調整可能範囲の中で最も受信レベルの高い角度にアンテナの仰角を調整すれば、各運行車両の通信状態を最適にすることができる。
【0008】
また、本発明は、移動局である運行車両に搭載されたアンテナである車両側アンテナの向きを回転させ、前記移動局と交信する基地局に設けられたアンテナである基地局側アンテナの方向に自動的に向きを合わせるアンテナの自動追尾方法であって、前記運行車両が、予め設定された運行計画に基づき、予め設定された走行経路に沿って走行する車両であり、前記運行車両を、予め、前記走行経路に沿って走行させて、前記基地局から送信される信号を受信したときの受信信号電力が最大になる時の前記車両側アンテナの回転角度を前記走行経路の各位置に対して求め、この求められた回転角度を前記各位置における目標回転角度とする。加えて、前記運行車両を前記運行計画に基づき走行させる際には、前記予め求めておいた目標回転角度に基づいて、前記車両側アンテナの向きを調整することを特徴とする。
このように、予め運行車両を走行経路に沿って走行させて得られた目標回転角度を運行計画中に取り込んでおけば、目標回転角度の方向に基地局との交信を妨げる障害物があった場合でも、車両側アンテナの向きを基地局との交信が可能な位置に設定できる。
【0009】
また、予め設定された運行計画に基づき走行する運行車両に搭載されて、当該運行車両の車両情報を基地局に送信するとともに、前記基地局から送信される車両制御情報を受信するアンテナである車両側アンテナの向きを、前記基地局に設けられたアンテナである基地局側アンテナの方向に自動的に向けるアンテナの自動追尾システムを、前記車両側アンテナを搭載する回転台と、前記運行計画に基づいて、前記運行車両の現在位置、もしくは、前記運行車両の所定時間後の位置における前記車両側アンテナと前記基地局側アンテナとを結ぶ方向である、前記車両側アンテナの目標回転角度を算出する目標回転角度算出手段と、前記回転台を、前記算出された目標回転角度の情報に基づいて回転させるアンテナ回転手段とから構成したので、車両側アンテナの向きを速やかに受信レベルの高い角度に制御することができる。
また、前記回転台に、前記アンテナの方位角に加えて仰角を回転させる回転機構を設けたので、車両側アンテナの受信レベルを更に高めることができる。また、アンテナの仰角を変更可能としたので、例えば、運搬車両が複数台あり、かつ、一方の運搬車両の目標回転角度の方向に他の運行車両が位置した場合でも、仰角を調整することで、車両側アンテナの向きを基地局との交信が可能な向きに設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態1に係るアンテナの自動追尾システムを示す機能ブロック図である。
図2】運行車両の走行経路と基地局との位置関係の例を示す図である。
図3】本実施の形態2に係る本発明によるアンテナの自動追尾方法を示す図である。
図4】他の運行車両が通信の障害となる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1は、本実施形態1に係るアンテナの自動追尾システム100を示す図で、10は土砂等の運搬を行う運行車両、20は図示しない遠隔操作室に設置されて、運行車両10を自動走行させる運行管理装置である。運行管理装置20は、基地局として機能し、運行車両10は移動局として機能する。
運行車両10は、走行手段11と、位置情報取得手段12と、無線機13と、車両側アンテナであるアンテナ14と、自動走行制御手段15と、回転台16と、アンテナ回転手段17と、ネットワークインターフェイス18とを備え、予め設定された運行計画に基づき、遠隔操作にて定められた走行経路を走行する。
本例では、林道を整備した程度の、舗装がなされていない走行経路を安定して走行させるため、運行車両10として、走行手段11が無限軌道である不整地運搬車(クローラキャリア)等を用いている。なお、走行手段11には、当該運行車両10の走行速度(以下、車速という)を計測する車速センサー(図示せず)が取付けられている。計測された車速は無線機13に送られる。不整地運搬車の場合、車速は載積の有無にもよるが、平均時速で約4km/hrである。
位置情報取得手段12は、衛星測位装置(GNSS)と慣性測量装置(IMU)とを備え、当該運行車両10の位置情報と姿勢の情報(以下、位置情報という)とを取得し、無線機13に送る。なお、GNSSの受信アンテナについては省略した。
無線機13は、走行手段11で取得した車速と位置情報取得手段12で取得した運行車両10の位置情報とを、車両情報として、アンテナ14から基地局である運行管理装置20に送信するとともに、運行管理装置20から送られてくる車両制御情報と後述する目標回転角度のデータとをアンテナ14で受信し、これらの情報を、それぞれ、自動走行制御手段15とアンテナ回転手段17とに送る。
自動走行制御手段15は、上記送られてきた車両制御情報に基づき、走行手段11を制御して運行車両10の速度や進行方向等を変更させる。
回転台16は、アンテナ14を搭載するとともに、回転することで、アンテナ14の向きを変更する。本例では、回転台16を、アンテナ14を水平面内でのみ回転させる構成としたが、鉛直面内でも回転させることで、水平角(方位角)に加えて、仰角についても変更可能な構成としてもよい。
本例では、図2(b)の上図に示すように、アンテナ14の回転角度θを、同図の実線の矢印で示す運行車両10の進行方向と破線の矢印で示すアンテナ14の送信方向とのなす角度を、運行車両10の進行方向から反時計回りに測った角度とした。
アンテナ回転手段17は、運行管理装置20から送られてきた目標回転角度のデータである目標回転角度αに基づいて、回転台16を回転駆動して、アンテナ14の回転角度θが目標回転角度αになるように、アンテナ14の向きを変更する。
ネットワークインターフェイス18は、無線機13と、走行手段11、アンテナ14、及び、回転台16を除く各手段と無線機13との間に無線を介した通信ネットワークを構成する。
【0012】
運行管理装置20は、無線機21と、基地局側アンテナであるアンテナ22と、自動走行管理手段23と、目標回転角度算出手段24と、ネットワークインターフェイス25とを備える。
無線機21は、運行車両10の車両情報(位置、姿勢、車速)をアンテナ22で受信して、自動走行管理手段23に送るとともに、運行車両10の走行手段11を制御する車両制御情報と、目標回転角度算出手段24で算出された目標回転角度のデータを移動局である運行車両10に送信する。
自動走行管理手段23は、上記送られてきた運行車両10の車両情報から、運行車両10の走行を制御する車両制御情報を、無線機21とアンテナ22を介して、運行車両10に送るとともに、運行車両10の位置情報を目標回転角度算出手段24に送る。
目標回転角度算出手段24は、運行車両10の現在位置の情報から、目標回転角度αを算出して自動走行管理手段23に送る。
本例では、図2(a)に示すように、目標回転角度αを、現在位置における運行車両10の進行方向と、アンテナ14(車両側アンテナ)とアンテナ22(基地局側アンテナ)とを結ぶ方向との成す角度θbとした。
目標回転角度のデータは、自動走行管理手段23、無線機21を経由し、アンテナ22から移動局である運行車両10に送られる。
ネットワークインターフェイス25は、無線機21とアンテナ22とを除く各手段と無線機13との間に無線を介した通信ネットワークを構成する。
【0013】
次に、本発明のアンテナの自動追尾方法について説明する。
はじめに、運行車両10は、位置情報取得手段12で取得した位置情報である当該運行車両10の現在位置と姿勢のデータを、基地局である運行管理装置20に送信する。
運行管理装置20では、受信した位置情報から予め設定された運行計画に基づき遠隔操作にて走行させるための車両制御情報を取出すとともにと、目標回転角度αを算出し、この車両制御情報と目標回転角度のデータとを運行車両10に送信する。
運行車両10では、車両制御情報に基づき、運行車両10の走行状態を制御するとともに、目標回転角度αに基づいて、アンテナ14の向きが最適な位置(受信レベルが最大になる位置)になるように、回転台16を制御する。
アンテナ14の向きを調整する方法は、以下の通りである。
【0014】
図2(a)は、運行車両10が遠隔操作による自動運転により走行する走行経路1を示す図で、走行経路1は、車両待機場所2と土砂積載場所3とを結ぶ往路1aと、土砂積載場所3と土砂搬出場所4とを結ぶ復路1bと、土砂搬出場所4から車両待機場所2に戻る帰路1cとを有する。
車両待機場所2から出発した運行車両10は、無線土砂載積場所3にて採取した土砂を荷台に積込み、土砂搬出場所4にて、積込んだ土砂を図示しないダンプトラックに積換えた後、車両待機場所2へ戻り待機する。
ここで、便宜的に、同図の上側を北、下側を南、右側を東、左側を西とすると、基地局である運行管理装置20は南東側の管理棟5の図示しない操作室に設けられている。
また、走行経路1は、管理棟5の北側から北に向かって延びる第1の走行路L1と、第1の走行路L1の北端から西に折れる第2の走行路L2と、第2の走行路L2の西端から西方に延長する第3の走行路L3と、第3の走行路L3の西端から南に折れる第4の走行路L4と、第4の走行路L4の南端から更に南方に延長する第5の走行路L5とを有する。
図2(b)は、往路1aにおける運行車両10の位置と、車両側のアンテナ14と基地局側のアンテナ22とを結んだ方向である基地局方向との関係を示す図で、横軸は往路長の走行距離L(km)で、縦軸は運行車両10から測った基地局方向θb(deg)で、この基地局方向θbが、運行車両10が所定距離走行したときの目標回転角度αとなる。
同図からわかるように、直線路に近い走行路L1,L3,L5では、基地局方向θbは緩やかに変化する。一方、カーブを含む走行路L2,L4では基地局方向θbの変化が大きい。しかしながら、運行車両10は、運行計画に定められた走行経路を走行するので、位置情報から、運行車両10がどの走行路を走行しているかがわかる。したがって、走行路L2,L4では、回転台16の回転速度を速くし、走行路L1,L3,L5では、回転台16の回転速度を遅くすれば、従来のような、受信レベルの変動を確認する処理を行うことなく、アンテナ14の向きを迅速に基地局の方向に向けることができる。
なお、受信信号の受信レベルは、周囲の物体の配置による影響を受けるので、アンテナ14の向きを目標回転角度αの回りに回転させて、アンテナ14の向きを最適な角度に調整することが好ましい。これにより、限られた角度範囲で最適なアンテナ角度を見出すことができる。
【0015】
実施の形態2.
前記実施の形態1では、運行車両10の現在位置の情報から算出された目標回転角度αに基づいて、車両側のアンテナ14の向きを調整したが、図3に示すように、現在位置の時刻tkから所定時間Δtだけ経過した時刻における運行車両10の目標回転角度α(tk+Δtk)を算出し、このα(tk+Δtk)に基づいて車両側のアンテナ14の向きを調整すれば、走行路L2,L4のような、基地局方向θbの変化が大きい走行路であっても、アンテナ14の向きを迅速に基地局の方向に向けることができる。
すなわち、運行車両10は、運行計画に定められた走行経路を走行するので、運行車両10の現在位置の時刻tkと車速とから、所定時間Δtだけ経過した時刻t=tk+Δtにおける運行車両10の位置を求めることができる。そこで、時刻t=tkにおける運行車両10の位置からみた基地局方向θbである目標回転角度α(tk)に替えて、時刻t=tk+Δtにおける運行車両10の位置からみた基地局方向θb’を時刻t=tk+Δtにおける目標回転角度α(tk+Δt)とし、この目標回転角度α(tk+Δt)を用いて、アンテナ14を回転させれば、アンテナ14の向きを最適な角度に合わせることができる。なお、目標回転角度α(tk+Δt)の算出は、運行管理装置20の目標回転角度算出手段24にて行う。
これにより、走行路L2,L4のような、目標回転角度αの変化が大きな箇所であっても、アンテナ14の向きを迅速に基地局の方向に向けることができる。
なお、上記のΔtkとしては、運行車両10が不整地運搬車のように移動速度が遅い場合には数秒~数十秒の範囲とすることが好ましい。
また、目標回転角度αを、α={α(tk+Δt)+α(tk)}/2のように、α(tk+Δt)とα(tk)との演算値としてもよい。
【0016】
実施の形態3.
前記実施の形態1では、運行車両10の現在位置の情報から算出された目標回転角度α(tk)に基づいて車両側のアンテナ14の向きを調整したが、基地局方向θbに、建物等の電波の障害物となる物体がある場合には、車両側のアンテナ14の向きが基地局方向θbを向いていても、基地局方向θbが受信レベルが最大になる位置にならない場合がある。
そこで、運行車両10を、運行計画に設定された走行経路に沿って走行させて、基地局としての運行管理装置20から送信される信号を受信したときの受信レベルが最大になる時の車両側アンテナ14の回転角度α0を走行経路の各位置毎に予め求めるとともに、この回転角度α0のデータを、車両情報とともに、自動走行管理手段23に記憶しておき、運行車両10を運行計画に基づき走行させる際には、上記の予め求めておいた目標回転角度α0に基づいて、車両側アンテナであるアンテナ14の向きを調整するようにすれば、アンテナ14の向きを、基地局である運行管理装置20からの受信レベルが最大になる位置にすることができる。
このように、運行車両10の車両情報に、予め求めておいた目標回転角度α0を追加することで、基地局方向θbに電波の障害物があって、車両側のアンテナ14の向きを受信レベルが最大になる位置に調整できる。
【0017】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0018】
例えば、前記実施の形態では、運行車両10を1台としたが、本発明は、運行車両10が複数台である場合にも適用可能であることはいうまでもない。
なお、運行車両10が複数台のときには、例えば、図4に示すように、先行する運行車10Aの目標回転角度の方向に後発した他の運行車両10Bがいる場合がある。この場合には、運行車10Aの受信レベルが低下してしまうことがある。そこで、この場合には、受信レベルが予め設定された閾値(目標となる受信レベル)以上であるか否かを判定し、受信レベルが上記の閾値よりも下回っていた場合には、運行車両10Bの出発時間を遅らせるなど、運行計画を変更する方法を採ることが好ましい。加えて、最適角度近辺のみの角度調整を行い、調整時の角度範囲の中で最も受信レベルの高い角度に設定する方法や、運行車両10搭載されるに回転台16に、方位角に加えて仰角を回転させる回転機構を設けて、通常は0度に設定しているアンテナ14の仰角を上下に調節し、最も受信レベルの高い仰角にする方法などが挙げられる。なお、受信レベルが予め設定された閾値以上である場合には、受信レベルが低下していても、通信を継続することは言うまでもない。
これにより、運行車両10が複数台あった場合でも、各運行車両10の通信状態を最適にすることができる。
また、前記実施の形態では、運行車両10を不整地運搬車としたが、運行車両10はこれに限るものではなく、決められた走行経路を走行する資材運搬車などの、予め設定された運行計画に基づき、遠隔操作もしくはプログラムに基づく自動走行にて走行する車両であればよい
【符号の説明】
【0019】
1 走行経路、1a 往路、1b 復路、1c 帰路、2 車両待機場所、
3 土砂積載場所、4 土砂搬出場所、5 管理棟、
10 運行車両、11 走行手段、12 位置情報取得手段、13 無線機、
14 アンテナ、15 自動走行制御手段、16 回転台、17 アンテナ回転手段、
18 ネットワークインターフェイス、
20 運行管理装置、21 無線機、22 アンテナ、23 自動走行管理手段、
24 目標回転角度算出手段、25 ネットワークインターフェイス、
100 アンテナの自動追尾システム。
図1
図2
図3
図4