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特開2023-20205半導体素子封止用積層体、及び、半導体装置の製造方法
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  • 特開-半導体素子封止用積層体、及び、半導体装置の製造方法 図1
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  • 特開-半導体素子封止用積層体、及び、半導体装置の製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020205
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】半導体素子封止用積層体、及び、半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/56 20060101AFI20230202BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20230202BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20230202BHJP
【FI】
H01L21/56 R
H01L23/12 501P
C09J7/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125455
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521337218
【氏名又は名称】琳得科先進科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 聰文
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明徳
【テーマコード(参考)】
4J004
5F061
【Fターム(参考)】
4J004AA02
4J004AA05
4J004AA07
4J004AA10
4J004AA11
4J004AA14
4J004AB01
4J004AB06
4J004CA03
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004EA05
4J004FA08
5F061AA01
5F061BA07
5F061CA21
5F061CB12
5F061CB13
(57)【要約】
【課題】半導体チップに対する粘着力を自在に制御でき、半導体チップに対して高い固定能力を発揮し得る半導体素子封止用積層体を提供する。
【解決手段】熱硬化性樹脂層(X)と、熱硬化性樹脂層(X)の一方の面上に設けられた、少なくとも1層のエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)又は少なくとも1層の熱剥離性粘着剤層(Y2)を有する両面粘着性の粘着シート(Y)と、熱硬化性樹脂層(X)の他方の面上に設けられた、非硬化性粘着剤層(Z)と、を有する半導体素子封止用積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂層(X)と、
熱硬化性樹脂層(X)の一方の面上に設けられた、少なくとも1層のエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)又は少なくとも1層の熱剥離性粘着剤層(Y2)を有する両面粘着性の粘着シート(Y)と、
熱硬化性樹脂層(X)の他方の面上に設けられた、非硬化性粘着剤層(Z)と、を有する半導体素子封止用積層体。
【請求項2】
粘着シート(Y)は、基材を有していない請求項1に記載の半導体素子封止用積層体。
【請求項3】
粘着シート(Y)は、エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)又は熱剥離性粘着剤層(Y2)のみからなる、請求項1又は2に記載の半導体素子封止用積層体。
【請求項4】
粘着シート(Y)は、エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)のみからなる、請求項1~3のいずれか1項に記載の半導体素子封止用積層体。
【請求項5】
非硬化性粘着剤層(Z)は、熱硬化性の成分及びエネルギー線硬化性の成分を含有しない粘着剤組成物からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の半導体素子封止用積層体。
【請求項6】
非硬化性粘着剤層(Z)の厚さが、1~20μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の半導体素子封止用積層体。
【請求項7】
下記の工程(1)~工程(6)を含む半導体装置の製造方法。
工程(1):請求項1~6のいずれか1項に記載の半導体封止用積層体の粘着シート(Y)を支持体に貼付する工程
工程(2):前記支持体に貼付された半導体素子封止用積層体の非硬化性粘着剤層(Z)上に、半導体チップの裏面を対向させて前記半導体チップをボンディングする工程
工程(3):非硬化性粘着剤層(Z)上にボンディングされた前記半導体チップをモールド樹脂によりモールドするとともに熱硬化性樹脂層(X)を硬化する工程
工程(4):熱硬化性樹脂層(X)の硬化物と粘着シート(Y)とを分離する工程
工程(5):前記半導体チップをモールドしている前記モールド樹脂上に再配線層を形成する工程
工程(6):熱硬化性樹脂層(X)の硬化物、非硬化性粘着剤層(Z)及び前記半導体チップの裏面を研削して、熱硬化性樹脂層の硬化物(X)及び非硬化性粘着剤層(Z)を除去するとともに前記半導体チップを薄化加工する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子封止用積層体、及び、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、軽量化及び高機能化が進んでおり、半導体チップは、そのサイズに近いパッケージに実装されることがある。このようなパッケージは、CSP(Chip Scale Package)と称されることもある。CSPとしては、ウエハサイズでパッケージ最終工程まで処理して完成させるWLP(Wafer Level Package)、ウエハサイズよりも大きいパネルサイズでパッケージ最終工程まで処理して完成させるPLP(Panel Level Package)等が挙げられる。
【0003】
WLP及びPLPは、ファンイン(Fan-In)型とファンアウト(Fan-Out)型に分類される。ファンアウト型のWLP(以下、「FOWLP」ともいう)及びPLP(以下、「FOPLP」ともいう)においては、半導体チップを、チップサイズよりも大きな領域となるように封止材で覆って半導体チップの硬化封止体を形成し、再配線層及び外部電極を、半導体チップの回路面だけでなく封止材の表面領域においても形成する。
【0004】
FOWLP及びFOPLPは、例えば、複数の半導体チップを仮固定用シート上に載置する載置工程と、熱硬化性の封止材で被覆する被覆工程と、該封止材を熱硬化させて硬化封止体を得る硬化工程と、該硬化封止体と仮固定用シートとを分離する分離工程と、表出した半導体チップ側の表面に再配線層を形成する再配線層形成工程と、を経て製造される(以下、被覆工程及び硬化工程で行う加工を「封止加工」とも称する)。
【0005】
特許文献1には、硬化した熱硬化性樹脂層が最終的に封止体に残存するプロセスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-91845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているような、熱硬化性樹脂層を半導体チップに直接貼付する方法では、熱硬化前に熱硬化性樹脂層が半導体チップを固定する能力が十分でない。半導体チップの裏面を熱硬化性樹脂層に対向させてボンディングする場合には、さらに半導体チップの固定がしづらくなる傾向がある。そのため、半導体チップが小さく熱硬化性樹脂層との接触面積が小さい場合や、半導体チップ間隔の狭小化によりモールド工程における圧力が上昇した場合に、半導体チップが剥離、脱落する可能性がある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑み、半導体チップに対する粘着力を自在に制御でき、半導体チップに対して高い固定能力を発揮し得る半導体素子封止用積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、半導体素子封止用積層体を所定の層構成とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供するものである。
【0010】
[1]熱硬化性樹脂層(X)と、
熱硬化性樹脂層(X)の一方の面上に設けられた、少なくとも1層のエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)又は少なくとも1層の熱剥離性粘着剤層(Y2)を有する両面粘着性の粘着シート(Y)と、
熱硬化性樹脂層(X)の他方の面上に設けられた、非硬化性粘着剤層(Z)と、を有する半導体素子封止用積層体。
[2]粘着シート(Y)は、基材を有していない上記[1]に記載の半導体素子封止用積層体。
[3]粘着シート(Y)は、エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)又は熱剥離性粘着剤層(Y2)のみからなる、上記[1]又は[2]に記載の半導体素子封止用積層体。
[4]粘着シート(Y)は、エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)のみからなる、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載の半導体素子封止用積層体。
[5]非硬化性粘着剤層(Z)は、熱硬化性の成分及びエネルギー線硬化性の成分を含有しない粘着剤組成物からなる、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載の半導体素子封止用積層体。
[6] 非硬化性粘着剤層(Z)の厚さが、1~20μmである、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載の半導体素子封止用積層体。
[7]下記の工程(1)~工程(6)を含む半導体装置の製造方法。
工程(1):上記[1]~[6]のいずれか一つに記載の半導体封止用積層体の粘着シート(Y)を支持体に貼付する工程
工程(2):前記支持体に貼付された半導体素子封止用積層体の非硬化性粘着剤層(Z)上に、半導体チップの裏面を対向させて前記半導体チップをボンディングする工程
工程(3):非硬化性粘着剤層(Z)上にボンディングされた前記半導体チップをモールド樹脂によりモールドするとともに熱硬化性樹脂層(X)を硬化する工程
工程(4):熱硬化性樹脂層(X)の硬化物と粘着シート(Y)とを分離する工程
工程(5):前記半導体チップをモールドしている前記モールド樹脂上に再配線層を形成する工程
工程(6):熱硬化性樹脂層(X)の硬化物、非硬化性粘着剤層(Z)及び前記半導体チップの裏面を研削して、熱硬化性樹脂層の硬化物(X)及び非硬化性粘着剤層(Z)を除去するとともに前記半導体チップを薄化加工する工程
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体チップに対する粘着力を自在に制御でき、半導体チップに対して高い固定能力を発揮し得る半導体素子封止用積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の半導体素子封止用積層体の構成例を示す断面模式図である。
図2】半導体装置の製造方法の第1例の工程の一部を示す断面模式図である。
図3】半導体装置の製造方法の第1例の工程の他の一部を示す断面模式図である。
図4】半導体装置の製造方法の第2例の工程の一部を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
初めに、本明細書で用いる用語について説明する。
本明細書において、対象となる基材又は層が「非膨張性」の基材又は層であるか否かは、膨張させるための処理を3分間行った後、当該処理の前後での下記式から算出される体積変化率が5%未満である場合、当該層は「非膨張性」の基材又は層であると判断する。一方、上記体積変化率が5%以上である場合、当該層は「膨張性」の基材又は層であると判断する。
・体積変化率(%)={(処理後の前記層の体積-処理前の前記層の体積)/処理前の前記層の体積}×100
なお、「膨張させるための処理」としては、例えば、熱膨張性粒子を含む層である場合、当該熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)で3分間の加熱処理を行えばよい。
【0014】
本明細書において、「有効成分」とは、対象となる組成物に含まれる成分のうち、希釈溶媒を除いた成分を指す。
本明細書において、質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、具体的には実施例に記載の方法に基づいて測定した値である。
本明細書において、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」と「メタクリル酸」の双方を示し、他の類似用語も同様である。
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10~90、より好ましくは30~60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10~60」とすることもできる。
【0015】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
本明細書において、半導体素子用積層体を構成する各層の厚さは、実施例に記載の方法で測定することができ、走査型電子顕微鏡により半導体素子用積層体の断面を観察することによっても測定することができる。走査型電子顕微鏡としては、日立ハイテクノロジーズ社製「FE-SEM S-4700」を用いることができる。
【0016】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある)について説明する。
[半導体素子封止用積層体]
本発明の一態様に係る半導体素子封止用積層体は、熱硬化性樹脂層(X)と、熱硬化性樹脂層(X)の一方の面上に設けられた、少なくとも1層のエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)又は少なくとも1層の熱剥離性粘着剤層(Y2)を有する両面粘着性の粘着シート(Y)と、熱硬化性樹脂層(X)の他方の面上に設けられた、非硬化性粘着剤層(Z)と、を有する。なお、以下の説明において、半導体素子封止用積層体を単に「積層体」と称することがある。
【0017】
<半導体素子封止用積層体の構成>
本実施形態の半導体素子封止用積層体の構成を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第一態様及び第二態様の半導体素子封止用積層体の構成を示す断面模式図である。なお、以下の第一態様~第二態様の半導体素子封止用積層体において、支持体(図示せず)に貼付される粘着シート(Y)の粘着表面、及び、非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面には、これらの粘着表面を保護する等の観点から、さらに剥離材を積層した構成としてもよい。なお、この剥離材は、半導体素子封止用積層体の使用時には剥離されて除去される。
半導体チップの電極を露出させるための研削工程において、研削量が平面方向において不均一とならないように、半導体素子封止用積層体は、厚み精度が高いことが求められる。最終的に硬化封止体が非常に薄型化されるプロセスにおいては、より研削量の均一性が要求される。加えて、厚み精度の高い半導体素子封止用積層体を用いることで、非硬化性粘着剤層(Z)上に載置される半導体チップの高さが揃い、また、半導体チップが傾かずに水平状態を保つことができるため、硬化封止体中における半導体チップの傾きが少なく、半導体チップの位置精度が高い硬化封止体を得ることができる。ここで、半導体素子封止用積層体の厚さが厚い場合には、半導体素子封止用積層体の厚さのばらつきも大きくなりやすい。したがって、半導体素子封止用積層体の厚さは、10~175μmであることが好ましく、15~125μmであることが好ましく、20~75μmであることが更に好ましく、25~50μmであることがより更に好ましい。
【0018】
(第一態様の半導体素子封止用積層体)
本発明の第一態様の半導体素子封止用積層体としては、図1(a)に示す半導体素子封止用積層体1aが挙げられる。
積層体1aは、熱硬化性樹脂層(X)の一方の面上に設けられた、エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)からなる両面粘着性の粘着シート(Y)と、熱硬化性樹脂層(X)の他方の面上に設けられた、非硬化性粘着剤層(Z)とを備えている。非硬化性粘着剤層(Z)は熱硬化性樹脂層(X)に直接積層し、熱硬化性樹脂層(X)は粘着シート(Y)に直接積層している。
非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面は、封止対象物である半導体チップが載置されるとその粘着力によって半導体チップを固定することができる。そして、半導体チップを非硬化性粘着剤層(Z)によって固定した状態で、封止材によって半導体チップをモールドすることにより、封止材と積層体1aとで半導体チップが封止される。
以下の説明において、半導体素子封止用積層体の半導体チップが載置される側の各層の面を「第1表面」、これとは反対側の表面を「第2表面」ということがある。
【0019】
図1(a)に示す積層体1aは、エネルギー線の照射によって、エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)が硬化することにより、熱硬化性樹脂層(X)を硬化させてなる硬化樹脂層に対する粘着力が低下する。その結果、積層体1aは、硬化後のエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)と硬化樹脂層(X’)との界面Pで、わずかな力で一括して容易に分離可能となる。なお、以下の説明において、熱硬化性樹脂層(X)を硬化させて得られた層を硬化樹脂層(X’)と称する。
なお、本第一態様の半導体素子封止用積層体において、粘着シート(Y)の粘着表面は、支持体(図示せず)に貼付される。
【0020】
(第二態様の半導体素子封止用積層体)
本発明の第二態様の半導体素子封止用積層体としては、図1(b)に示す積層体1bが挙げられる。
積層体1bは、熱硬化性樹脂層(X)の一方の面上に設けられた、熱剥離性粘着剤層(Y2)からなる両面粘着性の粘着シート(Y)と、熱硬化性樹脂層(X)の他方の面上に設けられた、非硬化性粘着剤層(Z)とを備えている。非硬化性粘着剤層(Z)は熱硬化性樹脂層(X)に直接積層し、熱硬化性樹脂層(X)は粘着シート(Y)に直接積層している。
非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面は、封止対象物である半導体チップが載置されるとその粘着力によって半導体チップを固定することができる。そして、半導体チップを非硬化性粘着剤層(Z)によって固定した状態で、封止材によって半導体チップをモールドすることにより、封止材と積層体1bとで半導体チップが封止される。
なお、積層体1bにおいて、粘着シート(Y)の粘着表面は、支持体(図示せず)に貼付される。
【0021】
本第二態様の半導体素子封止用積層体においては、熱剥離性粘着剤層(Y2)が熱膨張性粒子を含有するものであることが好ましい。熱膨張性粒子を含有する熱剥離性粘着剤層(Y2)を加熱することにより、熱剥離性粘着剤層(Y2)中の熱膨張性粒子が膨張し、熱剥離性粘着剤層(Y2)の表面に凹凸が生じる。
そして、熱剥離性粘着剤層(Y2)の表面に生じた凹凸によって、熱硬化性樹脂層(X)が硬化した硬化樹脂層(X’)との接触面積が減少する。その結果、熱剥離性粘着剤層(Y2)と硬化樹脂層(X’)との界面Pで、わずかな力で一括して容易に分離可能となる。
【0022】
粘着シート(Y)は、図1(b)に示す積層体1bのように熱剥離性粘着剤層(Y2)の単層からなるものであってもよいし、熱剥離性粘着剤層(Y2)のほか、非膨張性の基材を有するものであってもよい。
粘着シート(Y)が、熱剥離性粘着剤層(Y2)の単層からなるものであれば、積層体1bの構成がシンプルになる。粘着シート(Y)が、熱剥離性粘着剤層(Y2)のほか、非膨張性の基材を有するものであれば、当該基材を、熱剥離性粘着剤層(Y2)の熱硬化性樹脂層(X)に対向するのとは反対側に配置することで、加熱時に熱硬化性樹脂層(X)に面する熱剥離性粘着剤層(Y2)の表面に凹凸を生じさせやすくなる。なお、基材の第2表面(熱剥離性粘着剤層(Y2)に対向するのとは反対側の表面)には、図示しない支持体に粘着シート(Y)を接着するための接着剤層が設けられていることが好ましい。接着剤層は、粘着剤層であってもよい。
【0023】
図1(b)に示す積層体1bは、加熱等による膨張処理によって、熱剥離性粘着剤層(Y2)に含有される膨張性粒子が膨張し、熱剥離性粘着剤層(Y2)の表面に凹凸が生じ、硬化樹脂層(X’)との接触面積が減少する。
このとき、熱剥離性粘着剤層(Y2)の粘着表面は支持体(図示せず)に貼付されている。熱剥離性粘着剤層(Y2)が支持体に十分に密着するように貼付されることで、熱剥離性粘着剤層(Y2)の粘着表面には凹凸が形成され難く、熱剥離性粘着剤層(Y2)の第1表面に凹凸が形成されやすくなる。
その結果、積層体1bは、加熱処理後の熱剥離性粘着剤層(Y2’)と硬化樹脂層(X’)との界面Pで、わずかな力で一括して容易に分離可能となる。
【0024】
[半導体素子封止用積層体の用途]
本実施形態の半導体素子封止用積層体は、非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面に封止対象物である半導体チップを載置し、この半導体チップと、この半導体チップの少なくとも周辺部の非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面とを封止材で被覆し、当該封止材を硬化させ、半導体チップを含む硬化封止体とする半導体装置の製造に用いられる。
なお、半導体素子封止用積層体を用いた半導体装置の製造に関する具体的な態様については後述する。
【0025】
上述の特許文献1に記載されるような、熱硬化性樹脂層をチップに直接貼付する半導体装置の製造方法では、熱硬化前に熱硬化性樹脂層がチップを固定する能力が十分でない。半導体チップの裏面を熱硬化性樹脂層に対向させてボンディングする場合には、さらに半導体チップの固定がしづらくなる傾向がある。また、エネルギー線硬化性の成分を含有する粘着剤組成物では、エネルギー線硬化性の成分の可塑化作用により、粘着剤層が軟化してしまうため、やはりチップの固定能力に劣るという問題がある。
これに対して、本実施形態の半導体素子封止用積層体は、熱硬化性樹脂層(X)の第1表面に非硬化性粘着剤層(Z)が設けられ、この非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面に封止対象物である半導体チップがボンディングされる。非硬化性粘着剤層(Z)は非硬化性であるが故に、半導体チップの固定能力を高くしやすく、また、粘着力も自在にコントロールしやすい。このため、封止対象物である半導体チップとの密着性が良好となり、半導体チップを非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面に配置する際に、半導体チップが傾いたり、半導体チップを配置した後に、非硬化性粘着剤層(Z)に対する半導体チップの位置が所期の位置からずれてしまったりすることが防止される。なお、非硬化性粘着剤層(Z)は熱硬化性樹脂層(X)の硬化物とともに、後述する研削工程において除去される。このため、非硬化性粘着剤層(Z)が非硬化性であっても問題は生じにくい。
【0026】
例えば、一般的なウエハマウントテープ等の粘着積層体の粘着表面に、封止対象物を載置後、封止対象物及びその周辺部の粘着表面を封止材で被覆して、封止材を熱硬化させ、硬化封止体を製造する場合を考える。この場合、封止材を熱硬化させた際、封止材は収縮しようとする応力が働くが、粘着積層体が支持体に固定されているため、封止材の応力は抑制されている。
しかしながら、支持体及び粘着積層体から分離して得られた硬化封止体は、収縮しようとする応力を抑制し難くなる。分離後の硬化封止体は、封止対象物が存在する側の表面側と、その反対の表面側とで、封止材の存在量が異なるため、収縮応力に差が生じ易い。その収縮応力の差が硬化封止体に生じる反りの原因となる。
また、生産性の観点から、加熱後の硬化封止体は、ある程度の熱を帯びた状態で、支持体及び粘着積層体から分離されることが一般的である。そのため、分離後も、封止材の硬化は進行するとともに、自然冷却に伴う収縮も生じるため、硬化封止体に反りがより生じ易い状態となる。
【0027】
一方で、本実施形態の半導体素子封止用積層体を用いる場合、以下の理由から、反りを効果的に抑制した硬化封止体を得ることができる。
つまり、本発明の一態様の半導体素子封止用積層体の熱硬化性樹脂層の表面に封止対象物である半導体チップを載置し、封止材で被覆して、封止材を熱硬化させると、同時に、熱硬化性樹脂層も熱硬化する。この際、封止材の存在量が少なく、封止材の硬化による収縮応力が小さいと考えられる半導体チップが存在する側の表面側には、熱硬化性樹脂層が設けられているため、熱硬化性樹脂層の熱硬化による収縮応力が働く。
その結果、硬化封止体の2つの表面間の収縮応力の差を小さくすることができ、反りが効果的に抑制された硬化封止体を得ることができると考えられる。
【0028】
また、硬化封止体の反りの抑制に寄与している熱硬化性樹脂層は、熱硬化することで硬化樹脂層とすることができる。
つまり、本実施形態の半導体素子封止用積層体を用いて、上述の封止工程を経ることで、同時に、硬化封止体の一方の表面上に硬化樹脂層を形成することができるため、硬化樹脂層を形成するための工程を省略することができ、生産性の向上にも寄与する。
【0029】
次に、本実施形態の半導体素子封止用積層体を構成する各層について説明する。
【0030】
<熱硬化性樹脂層(X)>
本発明の一態様の半導体素子封止用積層体は、熱硬化性樹脂層(X)を有する。
熱硬化性樹脂層(X)は硬化されることによって、封止材の硬化に伴う、硬化封止体の2つの表面間の収縮応力の差を小さくし、得られる硬化封止体に生じ得る反りの抑制に寄与する。
熱硬化性樹脂層(X)は、硬化することによって硬化樹脂層(X’)となる。硬化樹脂層(X’)は、得られる硬化封止体の一方の表面上に形成される。
【0031】
反りを抑制して平坦な表面を有する半導体装置を製造可能な半導体素子封止用積層体とする観点から、硬化樹脂層(X’)の23℃における貯蔵弾性率E’は、好ましくは1.0×10Pa以上、より好ましくは1.0×10Pa以上、さらに好ましくは1.0×10Pa以上、よりさらに好ましくは5.0×10Pa以上であり、また、好ましくは1.0×1013Pa以下、より好ましくは1.0×1012Pa以下、さらに好ましくは5.0×1011Pa以下、よりさらに好ましくは1.0×1011Pa以下である。
【0032】
硬化樹脂層(X’)の貯蔵弾性率E’は、以下の手順で測定される。
まず、熱硬化性樹脂層(X)を厚さ200μmになるように積層した後、硬化が実質的に完了した状態(示差走査熱量分析装置(TAインスツルメント社製DSCQ2000)を用いた測定において、130℃で発熱ピークが消失した時点)になるまで硬化させる。例えば、大気雰囲気下でオーブン内に入れ、樹脂の130℃で、2時間加熱して、厚さ200μmの熱硬化性樹脂層(X)を熱硬化させることにより、上記の硬化状態を得ることができる場合がある。
次に、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製,製品名「DMAQ800」)を用いて、試験開始温度0℃、試験終了温度300℃、昇温速度3℃/分、振動数11Hz、振幅20μmの条件で、23℃における、形成した硬化樹脂層の貯蔵弾性率E’を測定する。
【0033】
反りを抑制して平坦な表面を有する半導体装置を製造可能な半導体素子封止用積層体を得られ易くする観点から熱硬化性樹脂層(X)は、所定の厚さを有することが好ましく、好ましくは10~150μm、より好ましくは13~100μm、さらに好ましくは17~80μm、よりさらに好ましくは20~60μmである。
【0034】
熱硬化性樹脂層(X)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成されることが好ましい。
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、着色剤(C)、カップリング剤(D)、及び無機充填材(E)から選ばれる1種以上を含有してもよい。反りを抑制して平坦な表面を有する硬化封止体を製造可能な半導体素子封止用積層体とする観点から、少なくとも無機充填材(E)を含有することが好ましい。
【0035】
熱硬化性樹脂層(X)の硬化開始温度は、好ましくは80~200℃、より好ましくは90~160℃、さらに好ましくは100~150℃である。
熱剥離性粘着剤層(Y2)が熱膨張性粒子を含む場合には、熱硬化性樹脂層(X)として、その硬化開始温度が熱膨張性粒子の膨張開始温度より低い温度のものを用いる。熱硬化性樹脂層(X)の硬化開始温度は、熱膨張性粒子の膨張開始温度より、好ましくは5℃以下、より好ましくは10℃以下、さらに好ましくは20℃以下である。
【0036】
熱硬化性樹脂層(X)が、複数の層を含む場合、それらの厚さは、合計の厚さが熱硬化性樹脂層(X)の厚さと同様の数値範囲となるようにすればよい。この場合、これらの層の厚さがすべて同じであってもよいし、他の層と異なる厚さを有する層が存在していてもよい。
【0037】
(重合体成分(A))
熱硬化性樹脂組成物に含まれる重合体成分(A)は、質量平均分子量が2万以上であり、少なくとも1種の繰り返し単位を有する化合物を意味する。
熱硬化性樹脂組成物が、重合体成分(A)を含有することで、形成される熱硬化性樹脂層が可とう性及び保形性を有し、積層体の性状維持性を良好とすることができる。
重合体成分(A)の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは2万以上、より好ましくは2万~300万、より好ましくは5万~200万、さらに好ましくは10万~150万、よりさらに好ましくは20万~100万である。
【0038】
成分(A)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは5~50質量%、より好ましくは8~40質量%、さらに好ましくは10~30質量%である。
【0039】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル系重合体、ポリエステル、フェノキシ系樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ゴム系重合体等が挙げられる。
これらの重合体成分(A)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において、エポキシ基を有するアクリル系重合体や、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂は、熱硬化性を有しているが、これらが、質量平均分子量が2万以上であり、少なくとも1種の繰り返し単位を有する化合物であれば、重合体成分(A)の概念に含まれるものとする。
【0040】
これらの中でも、重合体成分(A)は、アクリル系重合体(A1)を含むことが好ましい。
重合体成分(A)中のアクリル系重合体(A1)の含有割合は、熱硬化性樹脂組成物に含まれる重合体成分(A)の全量(100質量%)に対して、好ましくは60~100質量%、より好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは80~100質量%、よりさらに好ましくは90~100質量%である。
【0041】
(アクリル系重合体(A1))
アクリル系重合体(A1)の質量平均分子量(Mw)は、形成される熱硬化性樹脂層に可とう性及び保形性を付与する観点から、好ましくは2万~300万、より好ましくは10万~150万、さらに好ましくは15万~120万、よりさらに好ましくは25万~100万である。
【0042】
アクリル系重合体(A1)のガラス転移温度(Tg)は、形成される熱硬化性樹脂層の表面に良好な粘着性を付与する観点、及び、半導体素子封止用積層体を用いて製造される半導体装置の信頼性を向上させる観点から、好ましくは-60~50℃、より好ましくは-50~30℃、さらに好ましくは-40~10℃、よりさらに好ましくは-35~5℃である。
【0043】
アクリル系重合体(A1)としては、アルキル(メタ)アクリレートを主成分とする重合体が挙げられ、具体的には、炭素数1~18のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート(a1’)(以下、「モノマー(a1’)」ともいう)に由来する構成単位(a1)を含むアクリル系重合体が好ましく、構成単位(a1)とともに官能基含有モノマー(a2’)(以下、「モノマー(a2’)」ともいう)に由来する構成単位(a2)を含むアクリル系共重合体がより好ましい。
アクリル系重合体(A1)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、アクリル系重合体(A1)が共重合体である場合、当該共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0044】
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数は、形成される熱硬化性樹脂層に可とう性及び保形性を付与する観点から、好ましくは1~18、より好ましくは1~12、さらに好ましくは1~8である。当該アルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
これらのモノマー(a1’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
半導体素子封止用積層体を用いて製造される半導体装置の信頼性を向上させる観点から、モノマー(a1’)が、炭素数1~3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、メチル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。
上記観点から、炭素数1~3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a11)の含有量は、アクリル系重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは1~80質量%、より好ましくは5~80質量%、さらに好ましくは10~80質量%である。
【0046】
また、モノマー(a1’)が、炭素数4以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、炭素数4~6のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含むことがより好ましく、ブチル(メタ)アクリレートを含むことがさらに好ましい。
上記観点から、炭素数4以上(好ましくは4~6、さらに好ましくは4)のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位(a12)の含有量は、アクリル系重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは1~70質量%、より好ましくは5~65質量%、さらに好ましくは10~60質量%である。
【0047】
構成単位(a1)の含有量は、アクリル系重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは50質量%以上、より好ましくは50~99質量%、さらに好ましくは55~90質量%、さらに好ましくは60~90質量%である。
【0048】
モノマー(a2’)としては、ヒドロキシ基含有モノマー及びエポキシ基含有モノマーから選ばれる1種以上が好ましい。
なお、モノマー(a2’)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
これらの中でも、ヒドロキシ基含有モノマーとしては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0050】
エポキシ含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、3-エポキシシクロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;グリシジルクロトネート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも、エポキシ含有モノマーとしては、エポキシ基含有(メタ)アクリレートが好ましく、グリシジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0051】
構成単位(a2)の含有量は、アクリル系重合体(A1)の全構成単位(100質量%)に対して、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~45質量%、さらに好ましくは10~40質量%、よりさらに好ましくは10~30質量%である。
【0052】
なお、アクリル系重合体(A1)は、本発明の効果を損なわない範囲において、上記の構成単位(a1)及び(a2)以外の他のモノマーに由来する構成単位を有していてもよい。
その他のモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、スチレン、エチレン、α-オレフィン等が挙げられる。
【0053】
(熱硬化性成分(B))
熱硬化性成分(B)は、形成される熱硬化性樹脂層を熱硬化させて、硬質の硬化樹脂層とする役割を担うものであり、質量平均分子量が2万未満の化合物である。
熱硬化性成分(B)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以下、より好ましくは100~10,000である。
【0054】
熱硬化性成分(B)としては、反りを抑制して平坦な表面を有する硬化封止体を製造可能である半導体素子封止用積層体とする観点から、エポキシ基を有する化合物であるエポキシ化合物(B1)及び熱硬化剤(B2)を含むことが好ましく、エポキシ化合物(B1)及び熱硬化剤(B2)とともに、さらに硬化促進剤(B3)を含むことがより好ましい。
【0055】
エポキシ化合物(B1)としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等の分子中に2官能以上有し、質量平均分子量が2万未満であるエポキシ化合物等が挙げられる。
エポキシ化合物(B1)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
エポキシ化合物(B1)の含有量は、反りを抑制して平坦な表面を有する半導体装置を製造可能である半導体素子封止用積層体とする観点から、熱硬化性樹脂組成物に含まれる重合体成分(A)100質量部に対して、好ましくは1~500質量部、より好ましくは3~300質量部、さらに好ましくは10~150質量部、よりさらに好ましくは20~120質量部である。
【0057】
熱硬化剤(B2)は、エポキシ化合物(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤としては、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が好ましい。
当該官能基としてはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、及び酸無水物等が挙げられる。これらの中でも、反りを抑制して平坦な表面を有する半導体装置を製造可能な粘着性積層体とする観点から、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸無水物が好ましく、フェノール性水酸基、又はアミノ基がより好ましく、アミノ基がさらに好ましい。
【0058】
フェノール基を有するフェノール系熱硬化剤としては、例えば、多官能系フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂等が挙げられる。
アミノ基を有するアミン系熱硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
これらの熱硬化剤(B2)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
熱硬化剤(B2)の含有量は、反りを抑制して平坦な表面を有する半導体装置を製造可能な半導体素子封止用積層体とする観点から、エポキシ化合物(B1)100質量部に対して、好ましくは0.1~500質量部、より好ましくは1~200質量部である。
【0060】
硬化促進剤(B3)は、形成される熱硬化性樹脂層を熱硬化させる際に、熱硬化の速度を高める機能を有する化合物である。
硬化促進剤(B3)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
これらの硬化促進剤(B3)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
硬化促進剤(B3)の含有量は、反りを抑制して平坦な表面を有する半導体装置を製造可能である半導体素子封止用積層体とする観点から、エポキシ化合物(B1)及び熱硬化剤(B2)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~6質量部、さらに好ましくは0.3~4質量部である。
【0062】
(着色剤(C))
本発明の一態様で用いる熱硬化性樹脂組成物は、さらに着色剤(C)を含有してもよい。
着色剤(C)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成した熱硬化性樹脂層は、熱硬化して硬化樹脂層とした際に、当該硬化樹脂層の貼付の有無を外観上判断しやすくする効果を付与できるほか、周囲の装置から発生する赤外線等を遮蔽して、封止対象物である半導体チップの誤作動を防止するなどの効果を付与することができる。
【0063】
着色剤(C)としては、有機又は無機の顔料及び染料を用いることができる。
染料としては、例えば、酸性染料、反応染料、直接染料、分散染料、カチオン染料等のいずれの染料であっても用いることが可能である。
また、顔料としては、特に制限されず、公知の顔料から適宜選択して用いることができる。
これらの中でも、電磁波や赤外線の遮蔽性が良好であるという観点から、黒色顔料が好ましい。
黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が挙げられるが、半導体チップの信頼性を高める観点から、カーボンブラックが好ましい。
なお、これらの着色剤(C)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0064】
ただし、本発明の一態様で用いる熱硬化性樹脂組成物において、着色剤(C)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、8質量%未満であることが好ましい。
着色剤(C)の含有量が8質量%未満であれば、半導体チップの表面のクラックの有無や、チッピングを目視でも確認可能となる半導体素子封止用積層体とすることができる。
上記観点から、本発明の一態様で用いる熱硬化性樹脂組成物において、着色剤(C)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは5質量%未満、より好ましくは2質量%未満、さらに好ましくは1質量%未満、よりさらに好ましくは0.5質量%未満である。
【0065】
また、形成される熱硬化性樹脂層を熱硬化してなる硬化樹脂層に赤外線等を遮蔽する効果を発現させる観点から、着色剤(C)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.10質量%以上、よりさらに好ましくは0.15質量%以上である。
【0066】
(カップリング剤(D))
本発明の一態様で用いる熱硬化性樹脂組成物は、さらにカップリング剤(D)を含有してもよい。
カップリング剤(D)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成した熱硬化性樹脂層は、封止対象物である半導体チップを載置する際の半導体チップとの接着性を向上させることができる。また、熱硬化性樹脂層を熱硬化させてなる硬化樹脂層は、耐熱性を損なうことなく、耐水性を向上させることもできる。
【0067】
カップリング剤(D)としては、成分(A)や成分(B)が有する官能基と反応する化合物が好ましく、具体的には、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-6-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-6-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
これらのカップリング剤(D)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
カップリング剤(D)の分子量としては、好ましくは100~15,000、より好ましくは125~10,000、より好ましくは150~5,000、さらに好ましくは175~3,000、よりさらに好ましくは200~2,000である。
【0069】
成分(D)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.05~7質量%、さらに好ましくは0.10~4質量%、よりさらに好ましくは0.15~2質量%である。
【0070】
(無機充填材(E))
本発明の一態様で用いる熱硬化性樹脂組成物は、反りを抑制して平坦な表面を有する半導体装置を製造可能である半導体素子封止用積層体とする観点から、さらに無機充填材(E)を含有することが好ましい。
無機充填材(E)を含む熱硬化性樹脂組成物から形成した熱硬化性樹脂層とすることで、封止材を熱硬化させる際に、硬化封止体の2つの表面間の収縮応力の差を小さくなるように、当該熱硬化性樹脂層の熱硬化の程度を調整することができる。その結果、反りを抑制して平坦な表面を有する半導体装置を製造することが可能となる。
また、形成される熱硬化性樹脂層を熱硬化してなる硬化樹脂層の熱膨張係数を適度な範囲に調整することでき、封止対象物である半導体チップの信頼性を向上させることができる。また、当該硬化樹脂層の吸湿率を低減させることもできる。
【0071】
無機充填材(E)としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維及びガラス繊維等の非熱膨張性粒子が挙げられる。
これらの無機充填材(E)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、反りを抑制して平坦な表面を有する半導体装置を製造可能である半導体素子封止用積層体とする観点から、シリカ、又はアルミナが好ましい。
【0072】
無機充填材(E)の平均粒子径としては、形成される熱硬化性樹脂層を熱硬化してなる硬化樹脂層のグロス値を向上させる観点から、好ましくは0.01~50μm、より好ましくは0.1~30μm、さらに好ましくは0.3~30μm、特に好ましくは0.5~10μmである。
【0073】
成分(E)の含有量は、反りを抑制して平坦な表面を有する半導体装置を製造可能である半導体素子封止用積層体とする観点から、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは25~80質量%、より好ましくは30~70質量%、さらに好ましくは40~65質量%、よりさらに好ましくは45~60質量%である。
【0074】
(その他の添加剤)
本発明の一態様で用いる熱硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、上述の成分(A)~(E)以外の他の添加剤を含有してもよい。
他の添加剤としては、例えば、架橋剤、レベリング剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤、ゲッタリング剤、連鎖移動剤等が挙げられる。
ただし、成分(A)~(E)以外の他の添加剤の合計含有量としては、熱硬化性樹脂組成物の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは0~20質量%、より好ましくは0~10質量%、さらに好ましくは0~5質量%である。
【0075】
(熱硬化性樹脂層(X)の粘着力)
本発明の一態様の積層体において、室温(23℃)における、熱硬化性樹脂層(X)単独の粘着力としては、好ましくは0.1~10.0N/25mm、より好ましくは0.2~8.0N/25mm、さらに好ましくは0.4~6.0N/25mm、よりさらに好ましくは0.5~4.0N/25mmである。
【0076】
<粘着シート(Y)>
熱硬化性樹脂層(X)の一方の面上に設けられる粘着シート(Y)は、少なくとも1層のエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)又は少なくとも1層の熱剥離性粘着剤層(Y2)を有し、かつ、両面粘着性を有する。粘着シート(Y)は、加熱やエネルギー線照射によって、熱硬化性樹脂層(X)から分離される層であり、仮固定層としての役割を担う層である。
粘着シート(Y)は、エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)のみから構成されていてもよいし、エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)と他の層とで構成されていてもよい。また、粘着シート(Y)は、熱剥離性粘着剤層(Y2)のみから構成されていてもよいし、熱剥離性粘着剤層(Y2)と他の層とで構成されていてもよい。上記他の層としては、例えば基材、プライマー層、帯電防止層等が挙げられる。
【0077】
粘着シート(Y)は基材を含んでいないことが好ましい。
半導体チップの電極を露出させるための研削工程において、研削量が平面方向において不均一とならないように、半導体素子封止用積層体の高い厚み精度を得ることが好ましく、半導体素子封止用積層体の厚さは薄いことが好ましい。粘着シート(Y)が基材を含まないことで、厚み精度の低い基材の影響により、半導体素子封止用積層体の厚み精度も低下してしまうことを回避することができる。また、半導体素子封止用積層体の使用による半導体装置の反り抑制の効果は、熱硬化性樹脂層(X)の熱硬化反応に基づくものであり、このような効果を得るために、熱硬化性樹脂層(X)は一定程度の厚さを有することが好ましい。したがって、熱硬化性樹脂層(X)の厚さを薄くすることと、反り抑制の効果は相反する特性となる。このような観点から、半導体素子封止用積層体の厚さを薄くするためには、熱硬化性樹脂層(X)以外の層の厚さを薄くすることが要求され、したがって、粘着シート(Y)は、基材を有しないことにより、厚さが減少したものであることが好ましい。
【0078】
また、粘着シート(Y)はエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)のみから構成されるか、又は、熱剥離性粘着剤層(Y2)のみから構成されることが好ましい。
粘着シート(Y)を、エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)又は熱剥離性粘着剤層(Y2)のみから形成することで、種々の構成層を積層する製造上の煩雑さを回避することができる。粘着シート(Y)は、複数のエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)を積層したものであってもよいし、複数の熱剥離性粘着剤層(Y2)を積層したものであってもよい。また、半導体素子封止用積層体全体の厚み精度を高くする観点からは、単層のエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)又は単層の熱剥離性粘着剤層(Y2)であることが好ましい。
【0079】
また、粘着シート(Y)はエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)のみからなることが好ましく、単層のエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)のみからなることがより好ましい。
典型的な熱剥離性の粘着剤である、熱膨張性粒子を含有する粘着剤は、熱膨張性粒子の膨張により剥離性を発現させる。特に、粘着シート(Y)が基材を有することで、熱膨張性粒子の膨張する方向が基材と逆側に向かい、効果的に熱剥離性を発現する。換言すれば、基材がない場合には熱膨張性粒子を含有する粘着剤の剥離性は弱い。エネルギー線硬化性粘着剤を用いて基材なしで粘着シート(Y)を構成すれば、基材がなくてもエネルギー線の照射により高い剥離性を発現させることができる。
【0080】
粘着シート(Y)の厚さは、加熱やエネルギー線照射時の剥離性及び支持体への接着性の観点から、好ましくは1~150μm、より好ましくは5~125μm、さらに好ましくは10~100μm、よりさらに好ましくは15~80μmである。粘着シート(Y)が基材を含んでいない場合には、より薄い粘着シート(Y)が得られ易いため、粘着シート(Y)の厚さは、好ましくは1~100μm、より好ましくは3~80μm、さらに好ましくは5~50μm、よりさらに好ましくは10~35μmである。
【0081】
(エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1))
粘着シート(Y)に含まれるエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)は、エネルギー線硬化型の重合体及び光重合開始剤を含有するエネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成されることが好ましい。
なお、エネルギー線としては、紫外線、電子線、放射線等が挙げられるが、硬化性樹脂組成物の入手容易性や、エネルギー線照射装置の取扱いの容易性の観点から、紫外線が好ましい。
【0082】
エネルギー線硬化型粘着剤組成物としては、所定の重合体の側鎖に、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性官能基を導入したエネルギー線硬化型の重合体を含有する組成物であってもよく、重合性官能基を有するモノマー又はオリゴマーを含有する組成物であってもよい。
なお、これらの組成物には、さらに光重合開始剤を含有することが好ましい。
【0083】
光重合開始剤としては、例えば、1-ヒドロキシ-シクロへキシル-フェニル-ケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロルニトリル、ジベンジル、ジアセチル、8-クロールアンスラキノン等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の含有量は、エネルギー線硬化型重合体100質量部もしくは重合性官能基を有するモノマー又はオリゴマー100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~5質量部、さらに好ましくは0.05~3質量部、特に好ましくは0.1~3質量部である。
【0084】
エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)の厚さは、エネルギー線照射時の剥離性及び支持体への接着性の観点から、好ましくは1~100μm、より好ましくは3~80μm、さらに好ましくは5~50μm、よりさらに好ましくは10~35μmである。
【0085】
(熱剥離性粘着剤層(Y2))
粘着シート(Y)に含まれる熱剥離性粘着剤層(Y2)は、加熱によって熱硬化性樹脂層(X)の硬化物から剥離される性質を備えている。熱剥離性粘着剤層(Y2)は、加熱によって膨張する熱膨張性粒子を含むことが好ましい。
本発明の一態様の積層体が有する熱剥離性粘着剤層(Y2)としては、熱膨張性粒子を含む粘着剤層のみからなるものや、基材及び粘着剤層を有しそれらの少なくとも一方が熱膨張性粒子を含有するものが挙げられる。
半導体素子封止用積層体の構成を簡素なものとし、その厚み精度を高くする観点からは、熱剥離性粘着剤層(Y2)が、熱膨張性粒子を含む粘着剤層のみからなるものであることが好ましい。この場合、熱膨張性粒子を含む粘着剤層は複数層からなるものであってもよいし、単層のものであってもよい。
【0086】
熱剥離性粘着剤層(Y2)が、熱膨張性粒子を含む粘着剤層のみからなるものである場合、熱膨張処理前の熱剥離性粘着剤層(Y2)の厚さは、好ましくは10~150μmである。
また、この場合、熱膨張性粒子を含む粘着剤層は、粘着剤組成物に熱膨張性粒子を分散させたものを用いることができる。粘着剤組成物としては、後述する非硬化性粘着剤層(Z)を形成するために用いる粘着剤組成物と同様のものを用いることができる。
【0087】
熱剥離性粘着剤層(Y2)が、粘着剤層及び基材を有し、粘着剤層が熱膨張性粒子を含有するものである場合、熱膨張処理前の粘着剤層の厚さは、好ましくは10~125μmである。また、基材の厚さは、好ましくは0.05~20μm、より好ましくは0.1~10μm、さらに好ましくは0.2~3μmである。
【0088】
熱剥離性粘着剤層(Y2)が、基材及び粘着剤層を有し、基材が熱膨張性粒子を含有するものである場合、熱膨張処理前の当該基材の厚さは、好ましくは10~140μm、より好ましくは20~125μmである。また、当該粘着剤層の厚さは、好ましくは3~20μm、より好ましくは5~15μmである。
【0089】
(熱膨張性粒子)
本発明の一態様で用いる熱膨張性粒子は、所定の加熱膨張処理によって膨張する熱膨張性粒子である。
本発明の一態様で用いる、熱膨張性粒子の23℃における熱膨張前の平均粒子径は、好ましくは3~100μm、より好ましくは4~70μm、さらに好ましくは6~60μm、よりさらに好ましくは10~50μmである。
なお、熱膨張性粒子の熱膨張前の平均粒子径とは、体積中位粒子径(D50)であり、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて測定した、熱膨張前の熱膨張性粒子の粒子分布において、熱膨張前の膨張性粒子の粒子径の小さい方から計算した累積体積頻度が50%に相当する粒子径を意味する。
【0090】
本発明の一態様で用いる、熱膨張性粒子の23℃における膨張前の90%粒子径(D90)としては、好ましくは10~150μm、より好ましくは20~100μm、さらに好ましくは25~90μm、よりさらに好ましくは30~80μmである。
なお、熱膨張性粒子の熱膨張前の90%粒子径(D90)とは、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、Malvern社製、製品名「マスターサイザー3000」)を用いて測定した、熱膨張前の熱膨張性粒子の粒子分布において、熱膨張前の熱膨張性粒子の粒子径の小さい方から計算した累積体積頻度が90%に相当する粒子径を意味する。
【0091】
本発明の一態様で用いる熱膨張性粒子は、封止材を硬化させる際には膨張せず、封止材の硬化温度よりも高い膨張開始温度(t)を有する粒子であればよく、具体的には、膨張開始温度(t)が60~270℃に調整された熱膨張性粒子であることが好ましい。
なお、膨張開始温度(t)は、使用する封止材の硬化温度に応じて適宜選択される。
【0092】
熱膨張性粒子としては、熱可塑性樹脂から構成された外殻と、当該外殻に内包され、かつ所定の温度まで加熱されると気化する内包成分とから構成される、マイクロカプセル化発泡剤であることが好ましい。
マイクロカプセル化発泡剤の外殻を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホン等が挙げられる。
【0093】
外殻に内包された内包成分としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、イソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、イソヘプタン、イソオクタン、イソノナン、イソデカン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、ネオペンタン、ドデカン、イソドデカン、シクロトリデカン、ヘキシルシクロヘキサン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ナノデカン、イソトリデカン、4-メチルドデカン、イソテトラデカン、イソペンタデカン、イソヘキサデカン、2,2,4,4,6,8,8-ヘプタメチルノナン、イソヘプタデカン、イソオクタデカン、イソナノデカン、2,6,10,14-テトラメチルペンタデカン、シクロトリデカン、ヘプチルシクロヘキサン、n-オクチルシクロヘキサン、シクロペンタデカン、ノニルシクロヘキサン、デシルシクロヘキサン、ペンタデシルシクロヘキサン、ヘキサデシルシクロヘキサン、ヘプタデシルシクロヘキサン、オクタデシルシクロヘキサン等が挙げられる。
これらの内包成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)は、内包成分の種類を適宜選択することで調整可能である。
【0094】
本発明の一態様で用いる熱膨張性粒子の膨張開始温度(t)以上の温度まで加熱した際の体積最大膨張率は、好ましくは1.5~100倍、より好ましくは2~80倍、さらに好ましくは2.5~60倍、よりさらに好ましくは3~40倍である。
【0095】
(熱膨張性基材)
熱剥離性粘着剤層(Y2)が、基材及び粘着剤層を有し、基材が熱膨張性粒子を含有する熱膨張性基材である場合、当該熱膨張性基材は、樹脂及び膨張性粒子を含有する樹脂組成物(y)から形成することが好ましい。
熱膨張性基材における熱膨張性粒子の含有量は、熱膨張性基材の全質量(100質量%)又は樹脂組成物(y)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~35質量%、さらに好ましくは10~30質量%、よりさらに好ましくは15~25質量%である。
【0096】
熱膨張性基材の形成材料である樹脂組成物(y)に含有される樹脂は、非粘着性樹脂であってもよく、粘着性樹脂であってもよい。
つまり、樹脂組成物(y)に含有される樹脂が粘着性樹脂であっても、樹脂組成物(y)から熱膨張性基材を形成する過程において、当該粘着性樹脂が重合性化合物と重合反応し、得られる樹脂が非粘着性樹脂となり、当該樹脂を含有する熱膨張性基材が非粘着性となればよい。
【0097】
樹脂組成物(y)に含有される上記樹脂の質量平均分子量(Mw)としては、好ましくは1,000~100万、より好ましくは1,000~70万、さらに好ましくは1,000~50万である。
【0098】
また、当該樹脂が2種以上の構成単位を有する共重合体である場合、当該共重合体の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0099】
上記樹脂の含有量は、熱膨張性基材の全質量(100質量%)又は樹脂組成物(y)の有効成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~95質量%、さらに好ましくは65~90質量%、よりさらに好ましくは70~85質量%である。
【0100】
なお、熱膨張性粒子が膨張する直前の熱膨張性基材の剛性を適度なものとする観点から、樹脂組成物(y)に含有される上記樹脂としては、アクリルウレタン系樹脂及びオレフィン系樹脂から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
また、上記アクリルウレタン系樹脂としては、ウレタンプレポリマー(UP)と、(メタ)アクリル酸エステルを含むビニル化合物とを重合してなるアクリルウレタン系樹脂(U1)が好ましい。
【0101】
(無溶剤型樹脂組成物(y1))
本発明の一態様で用いる樹脂組成物(y)として、質量平均分子量(Mw)が50,000以下のエチレン性不飽和基を有するオリゴマーと、エネルギー線重合性モノマーと、上述の膨張性粒子を配合してなり、溶剤を配合しない、無溶剤型樹脂組成物(y1)が挙げられる。
無溶剤型樹脂組成物(y1)では、溶剤を配合しないが、エネルギー線重合性モノマーが、上記オリゴマーの可塑性の向上に寄与するものである。
無溶剤型樹脂組成物(y1)から形成した塗膜に対して、エネルギー線を照射することで、上記要件(1)を満たす熱膨張性基材を形成し易い。
【0102】
(非膨張性基材)
熱剥離性粘着剤層(Y2)が、粘着剤層及び基材を有し、粘着剤層が熱膨張性粒子を含有するものである場合、当該基材は非膨張性基材であることが好ましい。非膨張性基材の形成材料としては、例えば、紙材、樹脂、金属等が挙げられ、本発明の一態様の積層体の用途に応じて適宜選択することができる。
【0103】
<非硬化性粘着剤層(Z)>
本発明の一態様で用いる非硬化性粘着剤層(Z)は、重合体成分を含有する粘着剤組成物(v)から形成することができる。
非硬化性粘着剤層(Z)は、熱硬化性の成分及びエネルギー線硬化性の成分を含有しない粘着剤組成物からなることが好ましい。
熱硬化性の成分及びエネルギー線硬化性の成分を含有しない粘着剤組成物から形成される非硬化性粘着剤層(Z)を用いることにより、半導体チップの固定能力を高くすることができ、また、粘着力も自在にコントロールすることができる。このような非硬化性粘着剤層(Z)は高い粘着力を発現し得るため、薄くすることができ、半導体素子封止用積層体の全体を薄くすること及び厚み精度の向上に寄与する。上述したとおり、半導体素子封止用積層体の厚さを薄くするために、熱硬化性樹脂層(X)以外の層の厚さを薄くすることが要求されるため、非硬化性粘着剤層(Z)の厚さを薄くすることが望ましい。さらに、非硬化性粘着剤層(Z)が熱硬化性の成分及びエネルギー線硬化性の成分を含有しない粘着剤組成物から形成されることにより、半導体装置の製造プロセスの過程で加熱された場合にもこれらの成分を含む粘着剤組成物で形成される場合に比べて硬化収縮を防止しやすいという利点もある。
上述したように、熱硬化性樹脂層をチップに直接貼付する半導体装置の製造方法では、熱硬化前に熱硬化性樹脂層がチップを固定する能力が十分でなく、半導体チップの裏面を熱硬化性樹脂層に対向させてボンディングする場合には、さらに半導体チップの固定がしづらくなる傾向がある。また、エネルギー線硬化性の成分を含有する粘着剤組成物では、エネルギー線硬化性の成分の可塑化作用で粘着剤層が軟化してしまうため、やはりチップの固定能力に劣るという問題がある。
非硬化性粘着剤層(Z)が熱硬化性の成分及びエネルギー線硬化性の成分を含有しない場合、非硬化性粘着剤層(Z)を硬化させることはできないが、後述するような、研削によって非硬化性粘着剤層(Z)が熱硬化性樹脂層(X)の硬化物とともに除去されるプロセスであれば、このことによる問題は生じにくい。
【0104】
非硬化性粘着剤層(Z)の厚さは、封止対象物である半導体チップに対する接着性の観点並びに半導体素子封止用積層体の全体の厚さを薄くすること及び厚み精度の向上の観点から、好ましくは1~20μm、より好ましくは2~15μm、さらに好ましくは3~10μmである。
【0105】
粘着剤組成物(v)は、必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤等の粘着剤用添加剤を含有してもよい。
以下、粘着剤組成物(v)に含有される各成分について説明する。
【0106】
(重合体成分)
本発明の一態様で用いる重合体成分としては、当該重合体成分単独で粘着性を有していてもよいし、例えば、粘着付与剤のような他の成分の添加により粘着性を発現する重合体成分であってもよい。重合体成分は、質量平均分子量(Mw)が1万以上の重合体成分であることが好ましい。
本発明の一態様で用いる重合体成分の質量平均分子量(Mw)としては、粘着力の向上の観点から、好ましくは1万~200万、より好ましくは2万~150万、さらに好ましくは3万~100万である。
【0107】
具体的な重合体成分としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂等のゴム系樹脂、ポリエステル系樹脂、オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。
【0108】
これらの重合体成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの重合体成分が、2種以上の構成単位を有する共重合体である場合、当該共重合体の形態は、特に限定されず、ブロック共重合体、ランダム共重合体、及びグラフト共重合体のいずれであってもよい。
特に、優れた粘着力を発現させる観点から、重合体成分は、アクリル系樹脂を含むことが好ましく、アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、あるいはその誘導体から導かれる構成単位を主モノマーとした、当該主モノマーと、他のアクリレート成分と、官能基含有モノマーとの共重合体が好ましく用いられる。
【0109】
主モノマーとしての(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、アルキル基の炭素数が1~18のものが使用可能である。これらの中でも、特に好ましくはアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸2エチルヘキシル等である。これらの主モノマーは、アクリル系共重合体を構成するモノマーとして、50~90重量%含まれていることが好ましい。
【0110】
官能基含有モノマーとしては、重合性の二重結合と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を分子内に有するモノマーであり、好ましくは、ヒドロキシル基含有化合物、カルボキシル基含有化合物等が用いられる。
【0111】
官能基含有モノマーのより具体的な例としては、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルメタクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、もしくはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有化合物等、2-アミノエチルアクリルアミド、2-アミノエチルメタクリルアミド等のアミノ基含有(メタ)アクリレート、モノメチルアミノエチルアクリルアミド、モノメチルアミノエチルメタクリルアミド等の置換アミノ基含有(メタ)アクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートが含まれる。これらの官能基含有モノマーは、アクリル系共重合体を構成するモノマーとして、1~30重量%含まれていることが好ましい。
【0112】
重合体成分中のアクリル系樹脂の含有割合としては、粘着剤組成物(v)又は非硬化性粘着剤層(Z)に含有される重合体成分の全量(100質量%)に対して、好ましくは30~100質量%、より好ましくは50~100質量%、さらに好ましくは70~100質量%、よりさらに好ましくは85~100質量%である。
【0113】
重合体成分の含有量としては、粘着剤組成物(v)の有効成分の全量(100質量%)又は非硬化性粘着剤層(Z)の全質量(100質量%)に対して、好ましくは35~100質量%、より好ましくは50~100質量%、さらに好ましくは60~98質量%、よりさらに好ましくは70~95質量%である。
【0114】
(架橋剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物(v)は、官能基を有する重合体成分を含有する場合、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
当該架橋剤は、官能基を有する重合体成分と反応して、当該官能基を架橋起点として、重合体成分同士を架橋するものである。
【0115】
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
これらの架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの架橋剤の中でも、凝集力を高めて粘着力を向上させる観点、及び入手し易さ等の観点から、イソシアネート系架橋剤が好ましい。
【0116】
架橋剤の含有量は、重合体成分が有する官能基の数により適宜調整されるものであるが、官能基を有する重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.03~7質量部、さらに好ましくは0.05~5質量部である。
【0117】
(粘着付与剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物(v)は、粘着力をより向上させる観点から、さらに粘着付与剤を含有してもよい。
本明細書において、「粘着付与剤」とは、上述の重合体成分の粘着力を補助的に向上させる成分であって、質量平均分子量(Mw)が1万未満のオリゴマーを指し、上述の重合体成分とは区別されるものである。
粘着付与剤の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは400~10,000、より好ましくは500~8,000、さらに好ましくは800~5,000である。
【0118】
粘着付与剤としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1,3-ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂、及びこれらを水素化した水素化樹脂等が挙げられる。
【0119】
粘着付与剤の軟化点は、好ましくは60~170℃、より好ましくは65~160℃、さらに好ましくは70~150℃である。
なお、本明細書において、粘着付与剤の「軟化点」は、JIS K 2531に準拠して測定した値を意味する。
粘着付与剤は、単独で用いてもよく、軟化点、構造等が異なる2種以上を併用してもよい。
そして、2種以上の複数の粘着付与剤を用いる場合、それら複数の粘着付与剤の軟化点の加重平均が、上記範囲に属することが好ましい。
【0120】
粘着付与剤の含有量は、粘着剤組成物(v)の有効成分の全量(100質量%)又は非硬化性粘着剤層(Z)の全質量(100質量%)に対して、好ましくは0.01~65質量%、より好ましくは0.1~50質量%、さらに好ましくは1~40質量%、よりさらに好ましくは2~30質量%である。
【0121】
(粘着剤用添加剤)
本発明の一態様において、粘着剤組成物(v)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の添加剤以外にも、一般的な粘着剤に使用される粘着剤用添加剤を含有していてもよい。
このような粘着剤用添加剤としては、例えば、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、防錆剤、顔料、染料、遅延剤、反応促進剤(触媒)、紫外線吸収剤、帯電防止剤等が挙げられる。
なお、これらの粘着剤用添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの粘着剤用添加剤を含有する場合、それぞれの粘着剤用添加剤の含有量は、重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.0001~20質量部、より好ましくは0.001~10質量部である。
【0122】
非硬化性粘着剤層(Z)は非膨張性でもある。したがって、非硬化性粘着剤層(Z)の形成材料である粘着剤組成物(v)は、膨張性粒子を含有しないことが好ましい。
膨張性粒子を含有する場合、その含有量は極力少ないほど好ましく、粘着剤組成物(v)の有効成分の全量(100質量%)又は粘着剤層(V)の全質量(100質量%)に対して、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、さらに好ましくは0.01質量%未満、よりさらに好ましくは0.001質量%未満である。
【0123】
(非硬化性粘着剤層(Z)のせん断力)
本発明の一態様の半導体素子封止用積層体において、半導体チップを封止する際に半導体チップを良好に保持する観点から、非硬化性粘着剤層(Z)は適切なせん断力を有していることが好ましい。具体的には、非硬化性粘着剤層(Z)の測定用被着体に対するせん断強度が、厚さ350μm、サイズ3mm×3mmのシリコンチップ(鏡面)を上記測定用被着体とし、温度70℃において、130gfで1秒間前記測定用被着体の鏡面を非硬化性粘着剤層(Z)に押圧して貼り付け、速度200μm/sで測定したときの値で、好ましくは20N/(3mm×3mm)以上であり、より好ましくは25N/(3mm×3mm)であり、さらに好ましくは30N/(3mm×3mm)以上であり、また、好ましくは100N/(3mm×3mm)以下であり、より好ましくは90N/(3mm×3mm)以下である。
非硬化性粘着剤層(Z)の測定用被着体に対するせん断強度が、20N/(3mm×3mm)以上であると、半導体チップを非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面に固定し、封止材によって半導体チップを被覆する際に、封止材の流れによって半導体チップが位置ずれや傾きを生じにくくなる。また、上記せん断強度が、100N/(3mm×3mm)以下であると、非硬化性粘着剤層(Z)の材料選定が容易となる。
【0124】
非非硬化性粘着剤層(Z)の測定用被着体に対するせん断力は、非硬化性粘着剤層(Z)を構成する粘着剤組成物の成分の種類や配合比を調整することで上記数値範囲とすることができる。粘着力やせん断力は、樹脂組成物の成分や配合比等によって変化するが、粘着力については、例えば、上述したアクリル系樹脂を重合体成分として用いることで、高い値にしやすくなる。また、せん断力については、例えば、無機充填材や架橋剤の含有量を多くすることで高い値にしやすくなる。
【0125】
[半導体素子封止用積層体の製造方法]
半導体素子封止用積層体は、以下の方法で製造することができる。
まず、剥離フィルム上に、硬化性樹脂組成物を塗布し乾燥することで熱硬化性樹脂層(X)を形成する。
熱硬化性樹脂層(X)が2つの層で構成される場合は、各熱硬化性樹脂組成物を別々の剥離フィルム上に形成し、両層が直接接するように重ねて合せて積層型の熱硬化性樹脂層を作製する。剥離フィルム上に第1の熱硬化性樹脂組成物を塗布乾燥して第1の熱硬化性樹脂層を形成し、次にこの第1の熱硬化性樹脂層上に、第2の熱硬化性樹脂層を塗布乾燥することにより、積層型の熱硬化性樹脂層を作製することもできる。
粘着シート(Y)を、上記の熱硬化性樹脂層(X)の一方の面に貼付するとともに、上記熱硬化性樹脂層(X)の他方の面に非硬化性粘着剤層(Z)を貼付することによって、半導体素子封止用積層体を得ることができる。
非硬化性粘着剤層(Z)は、剥離フィルム上に、非硬化性粘着剤組成物を塗布乾燥することにより作製することができる。
エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)を含む粘着シート(Y)は、剥離フィルム上に、エネルギー線硬化性粘着剤組成物を塗布乾燥することにより作製することができる。熱剥離性粘着剤層(Y2)を含む粘着シート(Y)は、剥離フィルム上に熱膨張性粒子を含む粘着剤組成物を塗布乾燥する方法や、剥離フィルム上に熱膨張性粒子を含む粘着剤組成物を塗布乾燥しさらに基材を貼り合わせる方法により作製することができる。
【0126】
[半導体装置の製造方法]
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、下記の工程(1)~工程(6)を含む。
工程(1):上記半導体封止用積層体の粘着シート(Y)を支持体に貼付する工程
工程(2):前記支持体に貼付された半導体素子封止用積層体の非硬化性粘着剤層(Z)上に、半導体チップの裏面を対向させて前記半導体チップをボンディングする工程
工程(3):非硬化性粘着剤層(Z)上にボンディングされた前記半導体チップをモールド樹脂によりモールドするとともに熱硬化性樹脂層(X)を硬化する工程
工程(4):熱硬化性樹脂層(X)の硬化物と粘着シート(Y)とを分離する工程
工程(5):上記半導体チップをモールドしているモールド樹脂上に再配線層を形成する工程
工程(6):熱硬化性樹脂層(X)の硬化物、非硬化性粘着剤層(Z)及び上記半導体チップの裏面を研削して、熱硬化性樹脂層(X)の硬化物及び非硬化性粘着剤層(Z)を除去するとともに上記半導体チップを薄化加工する工程。
【0127】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法によれば、熱硬化性樹脂層(X)の硬化物を研削により除去する際に、熱硬化性樹脂層(X)の硬化物及び非硬化性粘着剤層(Z)を除去して現れる半導体チップの裏面をも研削することにより、半導体チップを極めて薄く加工することができる。このため、半導体チップのボンディング工程やモールド工程において、半導体チップを厚い状態で扱うことができ、半導体チップが割れたり欠けたりする可能性を低減することができる。また、封止材をモールドする際に、非硬化性粘着剤層(Z)と半導体チップとの接触面端部に封止材が十分充填されずに空隙が発生することがあっても、研削によって空隙のない半導体チップ/封止材間の界面に到達することができる。また、本製造方法では、硬化封止体の電極形成面の研削工程や、再配線工程において、熱硬化性樹脂層(X)の硬化物が存在することにより、硬化封止体の反りの発生を防止することができる。反りの発生が抑制されることで、例えば、硬化封止体の研削を行う際に割れが発生したり、硬化封止体を装置によって搬送する際にアームによる硬化封止体の受け渡し時に不具合が発生したりすることを防ぎやすくなる。また、FOWLP、FOPLP等、パッケージサイズが大きくなった場合も硬化封止体の反りに伴う上記の問題を回避しやすくなる。
【0128】
[半導体装置の製造方法の第1例]
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の第1例を説明する。
図2は、半導体装置の製造方法の第1例のうち工程(1)~工程(4)を示す断面模式図であり、図3は、半導体装置の製造方法の第1例のうち工程(5)~工程(6)を示す断面模式図である。半導体装置の製造方法の第1例は、図1(a)に示す半導体素子封止用積層体1aを用いて半導体装置を製造するものである。以下、図2及び図3を適宜参照しながら、上述の各工程について説明する。
【0129】
<工程(1)>
工程(1)においては、図2(a)に示すように、半導体封止用積層体1aの粘着シート(Y)を構成するエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)を支持体50に貼付する。
支持体50は、エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)の粘着表面の全面に貼付されることが好ましい。したがって、支持体50は板状であることが好ましい。また、支持体50の表面の面積は、粘着シート(Y)の粘着表面の面積以上であることが好ましい。
【0130】
支持体50を構成する材質としては、エネルギー線を透過する材料で構成されるものであること、及び、封止対象物である半導体チップの種類、工程(ii)で使用する封止材の種類等に応じて、機械強度、耐熱性等の要求される特性を考慮の上、適宜選択される。
支持体50を構成する材質としては、例えば、ガラス等の非金属無機材料;エポキシ樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチック等の樹脂材料;ガラスエポキシ樹脂等の複合材料等が挙げられ、これらの中でも、ガラスが好ましい。
なお、エンジニアリングプラスチックとしては、ナイロン、ポリカーボネート(PC)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルサルフォン(PES)、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等が挙げられる。
【0131】
支持体50の厚さは、封止対象物である半導体チップの種類、工程(ii)で使用する封止材の種類等に応じて適宜選択されるが、好ましくは20μm以上50mm以下であり、より好ましくは60μm以上20mm以下である。
【0132】
<工程(2)>
工程(2)においては、図2(b)に示すように、支持体50に貼付された半導体封止用積層体1aの非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面の一部に、封止対象物である半導体チップ60の裏面を対向させて半導体チップ60を非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面にボンディングする。
【0133】
一方、非硬化性粘着剤層(Z)の表面の一部に載置される封止対象物である半導体チップとしては、例えば、シリコンチップ、化合物半導体チップ、半導体パッケージチップ等が挙げられる。
【0134】
封止対象物である半導体チップに対して本発明の一態様の積層体を用いることで、硬化樹脂層付き半導体チップを製造することができる。
半導体チップは、従来公知のものを使用することができ、その回路面には、トランジスタ、抵抗、コンデンサー等の回路素子から構成される集積回路が形成されている。
そして、半導体チップは、回路面とは反対側の裏面が、非硬化性粘着剤層(Z)の表面で覆われるように載置されることが好ましい。この場合、載置後、半導体チップの回路面が表出した状態となる。
半導体チップの載置には、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の公知の装置を用いることができる。
半導体チップの配置のレイアウト、配置数等は、目的とするパッケージの形態、生産数等に応じて適宜決定すればよい。
【0135】
本実施形態の半導体素子封止用積層体1aは、半導体チップが非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面に載置されるため、半導体チップ60のボンディングの際に、半導体チップ60が確実に固定され、位置ずれを防止することができる。特に、単純な平面方向の位置ずれに比べて判別することが難しい、半導体素子封止用積層体1aに対して垂直な方向の軸を中心に回転するようなずれ(以下、チルトずれという)も確実に防止することができる。また、上記半導体封止用積層体は、粘着シート(Y)及び非硬化性粘着剤層(Z)の少なくとも一方を薄くすることができ、厚み精度を向上させることが容易であるため、半導体チップの位置の厚み方向におけるずれがより確実に防止される。
【0136】
ここで、本発明の一態様の積層体は、FOWLP、FOPLP等のように、半導体チップをチップサイズよりも大きな領域を封止材で覆って、半導体チップの回路面だけではなく、封止材の表面領域においても再配線層を形成するパッケージに適用されることが好ましい。
そのため、半導体チップは、非硬化性粘着剤層(Z)の表面の一部に載置されるものであり、複数の半導体チップが、一定の間隔を空けて整列された状態で、当該表面に載置されることが好ましく、複数の半導体チップが、一定の間隔を空けて、複数行かつ複数列のマトリックス状に整列された状態で当該表面に載置されることがより好ましい。
半導体チップ同士の間隔は、目的とするパッケージの形態等に応じて適宜決定すればよい。
【0137】
<工程(3)>
本例において、工程(3)は、封止材で半導体チップをモールドする工程(工程(3)-1)、及び、封止材及び熱硬化性樹脂層(X)を硬化する工程(工程(3)-2)によって構成される。
【0138】
<工程(3)-1>
工程(3)-1においては、非硬化性粘着剤層(Z)上に載置された半導体チップと、当該半導体チップの少なくとも周辺部の非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面とを熱硬化性の封止材で被覆する(以下、「被覆処理」ともいう)。
被覆処理においては、まず、封止対象物である半導体チップと、非硬化性粘着剤層(Z)の表面の少なくとも半導体チップの周辺部とを封止材で被覆する。具体的には、図2(c)に示すように、支持体50上に貼付され、半導体チップ60が非硬化性粘着剤層(Z)上に載置された積層体1aが、成形型70の型内に位置するように成形型70を配置する。そして、成形型70と、積層体1a及び半導体チップ60との間に形成される成形空間72内に、注入孔71を介して封止材を注入する。
封止材は、封止対象物である半導体チップ60の表出している面全体を覆いつつ、複数の半導体チップ同士の間隙にも充填される。
封止樹脂の注入に続いて、後述する封止材を熱硬化する工程に対する予備的な熱硬化のための加熱を、通常は数分間行い、樹脂成形が完了する。そして、成形型70を外したときに、図2(d)に示すように、半導体チップ60及び非硬化性粘着剤層(Z)の表面が全て封止材80で被覆されていることが好ましい。
【0139】
なお、トランスファーモールディング法に代表される、成形型内に樹脂材料を注入するタイプの樹脂成形法を用いて、封止材80を成形空間内72内に注入する際、非硬化性粘着剤層(Z)の表面に沿う方向に封止材80の流れが生じることとなる(図2(c)の矢印を参照)。本態様の製造方法においては、半導体チップ60は非硬化性粘着剤層(Z)によって固定されているため、半導体チップ60がずれたり傾いたりすることが防止される。
【0140】
封止材は、半導体チップ及びそれに付随する要素を外部環境から保護する機能を有するものである。
本発明の一態様の製造方法で用いる封止材80は、熱硬化性樹脂を含む、熱硬化性の封止材である。
【0141】
また、封止材は、室温で、顆粒状、ペレット状、フィルム状等の固形であってもよく、組成物の形態となった液状であってもよい。作業性の観点からは、フィルム状の封止材である封止樹脂フィルムが好ましい。
【0142】
被覆方法としては、トランスファーモールディング法以外にも、従来の封止工程に適用されている方法の中から、封止材の種類に応じて適宜選択して適用することができ、例えば、ロールラミネート法、真空プレス法、真空ラミネート法、スピンコート法、ダイコート法、圧縮成形モールド法等を適用することができる。
【0143】
<工程(3)-2>
工程(3)-2においては、被覆処理を行った後の封止材を熱硬化させて、半導体チップを含む硬化封止体を形成する。また、熱硬化性樹脂層(X)も硬化させて、硬化樹脂層(X’)を形成する。
具体的には、図2(e)に示すように、封止材80を硬化させることにより、硬化した封止材81によって封止対象物である半導体チップ60が覆われた硬化封止体85を得る。これによって、半導体チップ60がレイアウトを保ったまま、硬質な材料で保護されることとなる。このとき、熱硬化性樹脂層(X)の硬化開始温度を熱硬化性の封止材80の硬化開始温度と同程度としておくことにより、あるいは、両者の硬化開始温度が異なる場合には、高い方の硬化開始温度以上に加熱することにより、一度の加熱で封止材の硬化と熱硬化性樹脂層の硬化(硬化樹脂層(X’)の生成)とを同時に進めることができる。したがって、これらの場合は、硬化のための加熱工程の回数を減らすことができ、製造工程を簡素化することができる。
【0144】
また、本態様の製造方法においては、熱硬化性樹脂層(X)が設けられていることにより、得られる硬化封止体85の2つの表面間の収縮応力の差を小さくすることができ、硬化封止体85に生じる反りを効果的に抑制することができる。特に、封止材の熱硬化と同時に熱硬化性樹脂層(X)も熱硬化することで、硬化する過程においても、硬化封止体85の2つの表面間の収縮応力の差を小さくすることができ、反りがより効果的に抑制される。
【0145】
<工程(4)>
工程(4)は、エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)にエネルギー線を照射して、該エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)を硬化させ、エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)の粘着性を減少させる工程である。工程(4)を行うことにより、硬化樹脂層(X’)と硬化されたエネルギー硬化性粘着剤層(Y1’)とを、その界面で分離して、硬化樹脂層付き硬化封止体201が得られる。
【0146】
図2(f)は、本工程にて、エネルギー透過性を有する支持体50を介してエネルギー線照射装置130によってエネルギー線を照射することにより、硬化し、粘着性が減少したエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1’)との界面で分離した状態を示している。
このような分離により、図2(f)に示すように、半導体チップ60が封止されてなる硬化封止体85と硬化樹脂層(X’)とを有する、硬化樹脂層付き硬化封止体201を得ることができる。
なお、硬化樹脂層(X’)は、硬化封止体に生じる反りを効果的に抑制し得る機能を有し、半導体チップの信頼性の向上に寄与する。
【0147】
エネルギー線の種類及び照射条件は、エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)が十分にその機能を発揮する程度に硬化される種類及び条件であれば特に限定されず、公知の方法の中から、所望するプロセスに応じて適宜選択すればよい。
エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)を構成する材料として、紫外線硬化性樹脂組成物を用いると、材料選択の幅が広く、また、組成物を硬化させるためのエネルギー線源として、入手が容易で取扱性にも優れる紫外線照射装置を使用することができる。
エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)の硬化時における、エネルギー線の照度は、4~280mW/cmであることが好ましく、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、3~1,000mJ/cmであることが好ましい。
【0148】
<工程(5)>
本例において、工程(5)は、半導体チップをモールドしている封止材を研削して半導体チップの一部を露出させる工程(工程(5)-1)、及び、露出された半導体チップ上に再配線層及び外部端子電極を形成する工程(工程(5)-2)で構成される。工程(3)において、半導体チップ60の表面が全て封止材80で被覆されず、電極の一部が硬化封止体から露出している場合には、工程(5)-1を省略してもよい。しかしながら、露出する電極の状態を簡便に制御する観点からは、工程(5)-1を行うことが好ましい。
【0149】
<工程(5)-1>
図3(g)には、工程(5)-1として、上記製造方法で得られた硬化樹脂層付き硬化封止体201をバックグラインドテープ90によって別の支持体51に固定し、硬化封止体85の硬化樹脂層(X’)とは反対側の面をグラインダー91によって一定の深さまで研削する様子が示されている。以下、この研削工程を第一の研削工程と称する。第1の研削工程においては、硬化封止体85が研削されることにより、図3(h)に示すように、研削後の硬化封止体85’を含む硬化樹脂層付き硬化封止体201’において、研削後の硬化封止体85’の研削対象面に、封止対象物である半導体チップ60の電極が露出する。
研削手段としては、特に限定されず、上記のグラインダーやその他の公知の研削装置を用いることができる。
上記の半導体素子封止用積層体は、粘着シート(Y)及び非硬化性粘着剤層(Z)の少なくとも一方を薄くすることができ、厚み精度を向上させることが容易であるため、本工程において、厚さの精度に優れる硬化封止体85’を得ることができる。
【0150】
<工程(5)-2>
図3(i)には、工程(5)-2として、研削後の硬化封止体85’の研削対象面に露出した半導体チップ60の回路面60aと電気的に接続する再配線層101及び外部端子電極100を形成する工程が示されている。
再配線層101の材質は、導電性材料であれば限定されず、金、銀、銅、アルミニウム等の金属、これらの金属を含有する合金等が挙げられる。再配線層101は、サブトラクティブ法、セミアディティブ法等の公知の方法により形成することができ、必要に応じて、1層以上の絶縁層を設けてもよい。
外部端子電極100は、再配線層101の外部電極パッドと電気的に接続される。外部端子電極101は、例えば、はんだボール等をはんだ接合することで形成することができる。
【0151】
<工程(5)-3:ダイシング工程>
必要に応じて、外部端子電極100が接続された硬化樹脂層付き硬化封止体200’をダイサーによってダイシングする工程(工程(5)-3)を設けてもよい。
ダイシング工程は、研削された面に、再配線層及び外部電極が設けられた硬化樹脂層付き硬化封止体200’を、ダイサーによって切断して複数の部分に分割する。
ダイシングは半導体チップ1個単位で行ってもよく、複数の半導体チップを含む所定の大きさでダイシングしてもよい。硬化樹脂層付き硬化封止体201’をダイシングする方法は、特に限定されず、ダイシングソー等の切断手段によって実施することができる。
【0152】
<工程(6)>
工程(6)においては、硬化封止体85の再配線層101とは反対側に配されている硬化樹脂層(X’)及び非硬化性粘着剤層(Z)を研削する。以下、この研削工程を第2の研削工程という。このとき、硬化封止体85の再配線層101側の面を、バックグラインドテープ等によって保護するとともに別の支持体に固定しておくことが好ましい。
具体的には、図3(j)に示すように、硬化封止体85の再配線層200側の面にバックグラインドテープ110を貼付し、図3(k)に示すように、バックグライドテープ110によって第3の支持体52に研削後の硬化封止体85’を固定する。そして、図3(l)に示すように、グラインダー91を用いて硬化樹脂層(X’)と非硬化性粘着剤層(Z)と半導体チップ60の裏面とを研削して除去する。こうして、図3(m)に示すように、熱硬化性樹脂層(X)の硬化物及び非硬化性粘着剤層(Z)を除去するとともに半導体チップ60が薄化加工され、再配線層101側の面がバックグラインドテープ100で保護された研削済み硬化封止体85’が得られる。そして、第3の支持体52から分離することにより、バックグラインドテープ100で再配線層101及び外部端子電極100側の面が覆われ、反対側の面に半導体チップ60の裏面が露出した半導体装置が得られる。
【0153】
このようにして得られた半導体装置は、この後、必要に応じてその他の加工が施される。
【0154】
[半導体装置の製造方法の第2例]
以下、図面を用いて本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の第2例を説明する。
図3は、半導体装置の製造方法の第2例のうち工程(1)~工程(4)を示す断面模式図である。半導体装置の製造方法の第2例のうち工程(5)~工程(6)は上記図3と同様であるため、図示及び説明を省略する。
半導体装置の製造方法の第2例は、図1(b)に示す半導体素子封止用積層体1bを用いて半導体装置を製造するものである。以下、図4を適宜参照しながら、上述の各工程について説明する。
【0155】
図4は、硬化樹脂層付き硬化封止体を製造する工程を示す断面模式図であり、より具体的には、図1(b)に示す半導体素子封止用積層体1bを用いて硬化封止体を製造する工程を示した断面模式図である。以下、図4を適宜参照しながら、上述の各工程について説明する。
【0156】
<工程(1’)>
工程(1’)においては、図4(a)に示すように、半導体封止用積層体1bの粘着シート(Y)を構成する熱剥離性粘着剤層(Y2)を支持体53に貼付する。
支持体53は、熱剥離性粘着剤層(Y2)の粘着表面の全面に貼付されることが好ましい。したがって、支持体53は板状であることが好ましい。また、支持体53の表面の面積は、粘着シート(Y)の粘着表面の面積以上であることが好ましい。
本例においては、支持体がエネルギー線透過性を有している必要はないため、支持体53としては上述したものに加えて、SUS等の金属材料を用いることもできる。支持体53の厚さは上述したものと同様にすることができる。
【0157】
<工程(2’)>
工程(2’)においては、本発明の一態様の半導体素子封止用積層体が有する非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面の一部に、封止対象物である半導体チップを載置する。
図4(b)には、非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面の一部に、半導体チップ60を載置する様子を示している。
【0158】
工程(2’)における温度条件としては、熱剥離性粘着剤層(Y2)が熱膨張性粒子を含む場合、この熱膨張性粒子が膨張しない温度で行われることが好ましく、例えば、0~80℃の環境下(但し、膨張開始温度(t)が60~80℃である場合には、膨張開始温度(t)未満の環境下)で行われることが好ましい。
【0159】
本実施形態においては、封止対象物である半導体チップが非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面に載置されるため、非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面への半導体チップのボンディングの際に、半導体チップが確実に固定され、チルトずれを含む位置ずれを防止しやすくなる。また、上記半導体封止用積層体は、粘着シート(Y)及び非硬化性粘着剤層(Z)の少なくとも一方を薄くすることができ、厚み精度を向上させることが容易であるため、半導体チップの厚み方向のずれがより確実に防止される。
【0160】
<工程(3’)>
本例において、工程(3’)は、封止材で半導体チップをモールドする工程(工程(3’)-1)、及び、封止材及び熱硬化性樹脂層(X)を硬化する工程(工程(3’)-2)によって構成される。
【0161】
<工程(3’)-1>
工程(3’)-1においては、図2(c)で説明したのと同様に、成形型(図示せず)を用いて封止材80を注入する。このとき、面方向に封止材の流れが生じるが、半導体チップ60は、非硬化性粘着剤層(Z)によって固定されているため、半導体チップ60がずれたり傾いたりすることを防止することができる。
封止樹脂の注入が完了すると、図2(d)に示すように、半導体チップ60及びその周辺の非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面が封止材80によって覆われる。
【0162】
<工程(3’)-2>
工程(3’)-2においては、被覆処理を行った後の封止材を熱硬化させて、半導体チップを含む硬化封止体を形成する。また、熱硬化性樹脂層(X)も硬化させて硬化樹脂層(X’)を形成する。
封止材80を硬化させることにより、図4(e)に示すように、硬化した封止材81によって半導体チップ60が覆われた硬化封止体85となる。このとき、熱硬化性樹脂層(X)の硬化開始温度を熱硬化性の封止材80と硬化開始温度を同程度としておくことにより、あるいは、硬化開始温度が異なっている場合には高い方の硬化開始温度以上に加熱することにより、一度の加熱で封止材の硬化と熱硬化性樹脂層の硬化とを同時に進めることができる。
【0163】
<工程(4’)>
工程(4’)においては、熱剥離性粘着剤層(Y2)を加熱することによって、例えば、熱剥離性粘着剤層(Y2)に含まれる膨張性粒子を膨張させる処理を行うことにより、硬化樹脂層(X’)と熱剥離性粘着剤層(Y2)とを、その界面で分離して、硬化樹脂層付き硬化封止体を得る。
図4(f)は、膨張性粒子を膨張させる処理によって、熱剥離性粘着剤層(Y2)は膨張した熱剥離性粘着剤層(Y1’)となり、硬化樹脂層(X’)と膨張した熱剥離性粘着剤層(Y1’)との界面で分離した状態を示している。
このような分離により、図4(f)に示すように、半導体チップ60が封止されてなる硬化封止体85と硬化樹脂層(X’)とを有する、硬化樹脂層付き硬化封止体201を得ることができる。
なお、硬化樹脂層(X’)は、硬化封止体に生じる反りを効果的に抑制し得る機能を有し、半導体チップの信頼性の向上に寄与する。
【0164】
工程(4’)での「膨張させる処理」は、熱膨張性の粒子を用いる場合は、膨張開始温度(t)以上での加熱によって、当該熱膨張性粒子を膨張させる処理であり、該処理によって硬化樹脂層(X’)側の熱剥離性粘着剤層(Y2)の表面に凹凸が生じる。その結果、界面Pでわずかな力で一括して容易に分離することができる。
膨張性粒子として熱膨張性粒子を用いる場合に、当該熱膨張性粒子を膨張させる「膨張開始温度(t)以上の温度」としては、「膨張開始温度(t)+10℃」以上「膨張開始温度(t)+60℃」以下であることが好ましく、「膨張開始温度(t)+15℃」以上「膨張開始温度(t)+40℃」以下であることがより好ましい。
なお、熱膨張性粒子を膨張させるための加熱方法としては特に限定されず、例えば、ホットプレート、オーブン、焼成炉、赤外線ランプ、熱風送風機等による加熱方法が挙げられるが、熱剥離性粘着剤層(Y2)と硬化樹脂層(X’)との界面Pで分離させ易くする観点から、加熱時の熱源を、支持体53側に設けることができる方法が好ましい。
【0165】
以上の手順で硬化封止体85が作製された後、硬化樹脂層付きの硬化封止体201に対して、図3で説明したのと同様の工程が行われて半導体装置が製造される。また、その後、必要に応じて他の加工が施される。
【実施例0166】
次に、本発明の具体的な実施例を説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、後述する製造例及び実施例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0167】
<質量平均分子量(Mw)>
ゲル浸透クロマトグラフ装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8020」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレン換算にて測定した値を用いた。
(測定条件)
・カラム:「TSK guard column HXL-L」「TSK gel G2500HXL」「TSK gel G2000HXL」「TSK gel G1000HXL」(いずれも東ソー株式会社製)を順次連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:1.0mL/min
【0168】
<各層の厚さの測定>
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて測定した。
【0169】
<封止時のチップずれ>
後述する実施例1において、製造例1で作製した非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面と、製造例2で作製した熱硬化性樹脂層(X)の表面とを貼り合せて得られる積層体を本試験の試料とした。試料の熱硬化性樹脂層(X)側の表面を、ガラス板(ユーコウ商会社製フロート板ガラス3mm(JIS R3202品))に貼付し、被ボンディング面を準備した。また、後述する比較例1を想定した試料として、製造例2で作製した熱硬化性樹脂層(X)を上記と同様のガラス板に貼付した。実施例1の試料では、被ボンディング面には非硬化性粘着剤層(Z)が露出し、比較例1の試料では、被ボンディング面には熱硬化性樹脂層(X)が露出している。
一方、Siウエハ(6インチ、350μm厚、鏡面)を2mm×2mmの大きさにダイシングすることにより、ボンディング用チップを準備した。
次に、マニュアルボンディング装置(デイジ・ジャパン社製、EDB-65)を用いて、上記ボンディング用チップを鏡面が、上記被ボンディング面に向くようにして上記被ボンディング面にボンディングした。この時、ボンディング温度を70℃、ボンディング時の押圧力を130gf、ボンディング時間を1sの条件とした。
プッシュプルゲージでチップの側面をゲージの値が340gfになるように水平方向に5s押圧した。押圧前後の水平方向におけるチップがずれた量を顕微鏡にて観察した。この操作を10個のチップに対して行い、すべてのチップのずれが0.2mm未満であった場合をAランク(合格)、それ以外の場合をCランク(不合格)と評価した。
【0170】
<硬化した熱硬化性樹脂層及び粘着剤層の厚み精度>
株式会社テクロック製の定圧厚さ測定器(型番:「PG-02J」、標準規格:JIS K6783、Z1702、Z1709に準拠)を用いて以下の手順で厚さを測定した。
12インチSiミラーウエハを測定対象物に応じた数だけ準備し、予めそれぞれのミラーウエハの面内の厚みを25点(中心点と、そこから縦方向に6点、横方向に6点、斜めの2方向に6点ずつ)測定した。
次に、測定対象となる半導体素子封止用積層体および積層体を各ミラーウエハに貼付した。ここで、実施例1の場合は非硬化性粘着剤層をミラーウエハに対向させて貼付した。比較例1の場合は熱硬化性樹脂層をミラーウエハに対向させて貼付した。
そして、加熱オーブンを用いて130℃で2時間加熱することにより熱硬化性樹脂層を硬化した。硬化後に上記25点の測定位置におけるミラーウエハと硬化樹脂層の合計の厚さを測定した。そして、上記のとおり測定したミラーウエハの厚さと、ミラーウエハと硬化樹脂層の合計の厚さの差を各測定点において算出し、その25点の測定点における厚さの差の標準偏差を測定対象のシートの硬化後の厚み精度とした。
【0171】
<製造例1:非硬化性粘着剤層(Z)の製造>
(1)非硬化性粘着剤組成物の調製
下記成分(i)の固形分100質量部に対して、下記成分(ii)を固形分換算で2.63質量部を配合してトルエンで希釈し、均一に撹拌することにより、固形分濃度25%の非硬化性粘着剤組成物の溶液を調製した。
(i)アクリル系共重合体:ブチルアクリレート(BA)/メチルメタクリレート(MMA)/アクリレート(AAc)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の質量比が86/8/1/3であり、質量平均分子量が72万のもの。
(ii)イソシアネート架橋剤:東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」、固形分濃度:75質量%
(2)非硬化性粘着剤層(Z)の形成
上記非硬化性粘着剤組成物の溶液をPET製剥離フィルム上に塗布し、100℃/60秒間乾燥することにより、厚さ5μmの非硬化性粘着剤層(Z)を形成した。
【0172】
<製造例2:熱硬化性樹脂層(X)の製造>
(1)熱硬化性樹脂組成物の調製
下記に示す種類及び配合量(いずれも「有効成分比」)の各成分を配合し、さらにメチルエチルケトンで希釈し、均一に撹拌して、固形分濃度(有効成分濃度)61質量%の熱硬化性樹脂組成物の溶液を調製した。
・アクリル系重合体:配合量=21質量部
n-ブチルアクリレート55質量部、メチルアクリレート10質量部、グリシジルメタクリレート20質量部、及び2-ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合してなるアクリル系重合体(質量平均分子量:80万、ガラス転移温度:-28℃)、上記成分(A1)に相当。
・エポキシ化合物(1):配合量=10質量部
液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本触媒社製、製品名「BPA328」、エポキシ当量=220~240g/eq)、上記成分(B1)に相当。
・エポキシ化合物(2):配合量=2.0質量部
固形ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製、製品名「エピコート1055」、エポキシ当量=800~900g/eq)、上記成分(B1)に相当。
・エポキシ化合物(3):配合量=5.6質量部
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(日本化薬社製、製品名「XD-1000L」、エポキシ当量=274~286g/eq)、上記成分(B1)に相当。
・熱硬化剤:配合量=0.5質量部
ジシアンジアミド(ADEKA社製、製品名「アデカハードナーEH-3636AS」、活性水素量=21g/eq)、上記成分(B2)に相当。
・硬化促進剤:配合量=0.5質量部
2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製、製品名「キュアゾール2PHZ」)、上記成分(B3)に相当。
・シランカップリング剤:配合量=0.4質量部
エポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤(三菱化学社製、製品名「MSEP2」)、上記成分(D)に相当。
・無機充填材(1):配合量=6質量部
球状シリカフィラー(アドマテックス社製、製品名「SC2050MA」、平均粒子径=0.5μm)、上記成分(E)に相当。
・無機充填材(2):配合量=54質量部
球状シリカフィラー(タツモリ社製、製品名「SV-10」、平均粒子径=8μm)、上記成分(E)に相当。
【0173】
(2)熱硬化性樹脂層(X)の形成
上記PET製剥離フィルムの剥離処理面上に、製造例1(1)で調製した熱硬化性樹脂組成物の溶液を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を120℃で2分間乾燥させて、厚さ25μmの熱硬化性樹脂層(X)を形成した。
上記熱硬化性樹脂層(X)は、硬化開始温度である130℃以上に加熱することで2時間以内に硬化させることができる。
【0174】
<製造例3:エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)の製造>
(1)エネルギー線硬化性粘着剤組成物の調製
下記成分(i)の固形分100質量部に対して、下記成分(ii)を固形分換算で3質量部、下記成分(iii)を固形分換算で1.20質量部配合してトルエンで希釈し、均一に撹拌することにより、固形分濃度25%のエネルギー線硬化性粘着剤組成物の溶液を調製した。
(i)メタクリロイル基を付加したアクリル系共重合体:2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)/アクリロイルモルフォリン(ACMO)/2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の質量比が60/10/30であり、質量平均分子量が80万のアクリル系共重合体に、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)をHEAに対してモル比90mol%の割合となるように添加し、HEAの水酸基にMOIのイソシアネート基を反応させてメタクリロイル基を付加したもの。
(ii)光重合開始剤:IGM Resins社製、製品名「OMNIRAD 127」
(iii)イソシアネート架橋剤:東ソー株式会社製、製品名「コロネートHX」、固形分濃度:100質量%
(2)エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)の形成
上記エネルギー線硬化性粘着剤組成物の溶液を、PET製剥離フィルム上に塗布し、100℃/60秒間乾燥することにより、厚さ20μmのエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)を形成した。
【0175】
(実施例1)
製造例1で作製した非硬化性粘着剤層(Z)の粘着表面と、製造例2で作製した熱硬化性樹脂層(X)の表面とを貼り合せた。次に、熱硬化性樹脂層(X)側の剥離フィルムを除去し、表出した熱硬化性樹脂層(X)の裏面に製造例3で作製したエネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)の表面を貼り合わせた。こうして、剥離フィルム/非硬化性粘着剤層(Z)/熱硬化性樹脂層(X)/エネルギー線硬化性粘着剤層(Y1)/剥離フィルムがこの順で積層された、剥離フィルム付き半導体封止用積層体を得た。
【0176】
(比較例1)
ポリエステルフィルム基材上の両面に、それぞれ熱剥離粘着剤層及び通常の粘着剤層が設けられた構造を有する熱剥離型積層体(日東電工社製、製品名「リバアルファ(NITTO 3195V)」)を準備した。上記の熱剥離型積層体は、熱剥離粘着剤層及び通常の粘着剤層上のそれぞれに剥離ライナーが設けられており、厚さが、両側の剥離ライナーを除いた状態で150μmを超えるものである。また、熱剥離粘着剤層は、熱膨張性粒子を含む粘着剤層であり、膨張開始温度である170℃以上に加熱されることによって熱膨張性粒子が膨張し、粘着剤層の表面に微細な凹凸形状を生じさせるものである。この熱剥離型積層体と、製造例2で作製した熱硬化性樹脂層(X)とを用いて比較例1の積層体を作製した。
具体的には上記熱剥離型積層体の熱剥離粘着剤層の表面に設けられた剥離ライナーを剥がして表出した熱剥離性粘着剤層の表面に、上記製造例2で作製した熱硬化性樹脂層(X)を貼り合わせた。こうして、剥離フィルム/熱硬化性樹脂層(X)/熱剥離型粘着剤層/ポリエステルフィルム基材/通常の粘着剤層/剥離ライナーがこの順で積層された積層体を得た。
【0177】
実施例1及び比較例1で得られた積層体を、上述した測定方法及び評価手順に従って測定及び評価した。結果を表1に示す。なお、測定及び評価に当たっては、各積層体から剥離フィルム又は剥離ライナーを除去した。
【0178】
【表1】
【0179】
表1の結果から明らかなように、非硬化性粘着剤層(Z)を設けた実施例1の半導体素子封止用積層体は、チップずれが小さく、高い厚み精度を有していることが判る。
一方、非硬化性粘着剤層(Z)を有していない比較例1の積層体は、チップずれが大きく、厚み精度が実施例1よりも劣ることが判る。
【符号の説明】
【0180】
(X):熱硬化性樹脂層
(X’):硬化した熱硬化性粘着剤層
(Y):粘着シート
(Y1):エネルギー線硬化性粘着剤層
(Y1’):硬化したエネルギー線硬化性粘着剤層
(Y2):熱剥離性粘着剤層
(Y2’):加熱処理後の熱剥離性粘着剤層
(Z):非硬化性粘着剤層
1a、1b:半導体素子封止用積層体
50:エネルギー線透過性を有する支持体
51、52、53:支持体
60:半導体チップ
70:成形型
71:注入孔
72:成形空間
80:封止材
81:硬化した封止材
85:硬化封止体
85’:研削された硬化封止体
90、110:バックグラインドテープ
91:グラインダー
100:外部端子電極
101:再配線層
130:エネルギー線照射装置
201:硬化樹脂層付き硬化封止体
201’:研削された硬化樹脂層付き硬化封止体
P:界面
図1
図2
図3
図4