(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020251
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
A41D13/11 B
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125513
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000106106
【氏名又は名称】サラヤ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】濱口 慎治
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マスクの左右縦方向縁部を肌に密着させることができるマスクを提供する。
【解決手段】マスク1は、(a)顔の左右方向に延在する上縁13及び下縁と顔の上下方向に延在する左縁15及び右縁16によって輪郭を形成されるマスク本体2と、左右上縁角部と左右下縁角部に端部が固定された紐3とを備えており、(b)マスク本体は、上縁と下縁との間にあって、左縁上の左中間点32と右縁上の右中間点33とを連結する中央線31に沿って二つ折りされ(c)二つ折りされたマスク本体は、中央線上にあって点34と点35とを結ぶ左斜め線36に沿って溶着されて左溶着ライン37が形成されるとともに、中央線上にあって右中間点から左中間点に向かって移動した点38と右中間点から上縁と下縁に向かって等しい距離だけ離れた右縁上の点39とを結ぶ右斜め線41に沿って溶着されて右溶着ライン41が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 顔に装着した状態で顔の左右方向に延在する上縁(13)及び下縁(14)と前記顔の上下方向に延在する左縁(15)及び右縁(16)によって輪郭を形成されるマスク本体(2)と、
前記上縁(13)及び前記下縁(14)と前記左縁(15)及び前記右縁(16)が交わる左右上縁角部と左右下縁角部に端部が固定された紐(3)とを備えたマスク(1)であって、
(b) 前記マスク本体(2)は、前記上縁(13)と前記下縁(14)との間にあって、前記左縁(15)上の左中間点(32)と前記右縁(16)上の右中間点(33)とを連結する中央線(31)に沿って二つ折りされており、
(c) 前記二つ折りされた前記マスク本体(2)は、
前記中央線(31)上にあって前記左中間点(32)から前記右中間点(33)に向かって移動した点(34)と前記左中間点(32)から前記上縁(13)と前記下縁(14)に向かって等しい距離だけ離れた前記左縁(15)上の点(35)とを結ぶ左斜め線(36)に沿って溶着されて左溶着ライン(37)が形成されるとともに、前記中央線(31)上にあって前記右中間点(33)から前記左中間点(32)に向かって移動した点(37)と前記右中間点(33)から前記上縁(13)と前記下縁(14)に向かって等しい距離だけ離れた前記右縁(16)上の点(38)とを結ぶ右斜め線(40)に沿って溶着されて右溶着ライン(41)が形成されている、マスク(1)。
【請求項2】
前記左溶着ライン(37)に沿って前記左溶着ライン(37)の外側に位置し且つ前記左中間点(32)を含む左角部三角形領域(42)が切除されており、
前記右溶着ライン(41)に沿って前記右溶着ライン(41)の外側に位置し且つ前記右中間点(33)を含む右角部三角形領域(43)が切除されている、請求項1に記載のマスク(1)。
【請求項3】
前記左溶着ライン(37)と前記右溶着ライン(41)はそれぞれ、真っ直ぐなラインである、請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記左溶着ライン(37)は前記左中間点(32)に向かって凸のアーチ状ラインで、前記左溶着ライン(41)は前記右中間点(33)に向かって凸のアーチ状ラインである、請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項5】
前記左溶着ライン(37)は前記左中間点(32)に向かって凹のアーチ状ラインで、前記左溶着ライン(41)は前記右中間点(33)に向かって凹のアーチ状ラインである、請求項1又は2に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
感染症を防止するためには、マスクは隙間が出来ないように、マスクの周囲を顔にフィットさせることが重要である。そのために、今日市販されている多くの不織布マスクでは、例えばマスク上縁に沿ってノーズワイヤを埋め込み、装着時にノーズワイヤを鼻の形に添って変形させることで、鼻の左右及び左右の目の下でマスクと肌との間に隙間ができないような工夫がなされている。しかし、マスク左右の縦方向縁部について見ると、例えば耳掛け紐を耳に掛けた状態で、マスクの縦方向上端部と下端部にはそれらを互いに接近させる上下方向の力が作用するため、縦縁のちょうど中間部分が顔面から浮き上がり、そこに隙間を生じ易い。そこで、装着時にマスクの左右縦縁を肌に密着させて隙間を無くすために、特許文献1には、左右縦縁の略中間部分に折曲誘導部(例えば、一つの実施形態では、縦縁から内側に向かって次第に細くなる略V字形状の切り欠き)を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特許文献1に提案された発明とは異なる構成によって、装着時、特にマスクの左右縦縁を肌に密着させて肌との間に隙間ができるのを防止する新たなマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その目的を達成するために、本発明に係るマスクの実施形態は、
(a) 顔に装着した状態で顔の左右方向に延在する上縁(13)及び下縁(14)と前記顔の上下方向に延在する左縁(15)及び右縁(16)によって輪郭を形成されるマスク本体(2)と、
前記上縁(13)及び前記下縁(14)と前記左縁(15)及び前記右縁(16)が交わる左右上縁角部と左右下縁角部に端部が固定された紐(3)とを備えたマスク(1)であって、
(b) 前記マスク本体(2)は、前記上縁(13)と前記下縁(14)との間にあって、前記左縁(15)上の左中間点(32)と前記右縁(16)上の右中間点(33)とを連結する中央線(31)に沿って二つ折りされており、
(c) 前記二つ折りされた前記マスク本体(2)は、
前記中央線(31)上にあって前記左中間点(32)から前記右中間点(33)に向かって移動した点(34)と前記左中間点(32)から前記上縁(13)と前記下縁(14)に向かって等しい距離だけ離れた前記左縁(15)上の点(35)とを結ぶ左斜め線(36)に沿って溶着されて左溶着ライン(37)が形成されるとともに、前記中央線(31)上にあって前記右中間点(33)から前記左中間点(32)に向かって移動した点(37)と前記右中間点(33)から前記上縁(13)と前記下縁(14)に向かって等しい距離だけ離れた前記右縁(16)上の点(38)とを結ぶ右斜め線(40)に沿って溶着されて右溶着ライン(41)が形成されている。
【発明の効果】
【0006】
このように構成された実施形態のマスクによれば、マスク本体(2)は、中央線(31)に沿って二つ折りされた左右の縁(15,16)付近に左右の溶着ライン(37,41)が存在するため、顔に装着した状態において、前記溶着ライン部分が補強リブのような役割を果たす。これにより、展開されたマスク1は全体的に前方(肌から離れる方向)に向かって凸の立体形状となることで口鼻周辺の空間を確保できるだけでなく、マスク本体(2)の左右の縁(15,16)が肌(50)に密着し、肌(50)とマスク本体(2)の縁との間に隙間を形成することがない。したがって、従来のマスクのように、サイズを大きくすることもなく、かつ装着時のマスクが口鼻に接することによる蒸れや不快感、マスクと肌の隙間から感染源となるウィルスの侵入や拡散が確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係るマスクの装着状態を示す正面図。
【
図3】
図1,2に示すマスクを二つ折りした状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付図面を参照して本発明に係るマスクの実施形態を説明する。
【0009】
以下の説明では、顔に装着されたマスクをその正面(前方)から見た状態で、マスクの上下に表れる箇所の説明に「上」「下」の接頭辞を使用し、マスクの左右に表れる箇所の説明に「左」「右」の接頭辞を使用する。また、顔に装着された状態で、肌に接する面を「裏面」、顔肌に接しない反対側の面を「表面」という。
【0010】
[全体構成]
図1~3に示すように、実施形態に係るマスク1は、概略、マスク本体2と、マスク本体2を顔の上に保持するための紐3を有する。
【0011】
[マスク本体]
マスク本体2は、正面から見たときに、顔に装着された状態で、上下に表れて横(左右)方向に延在する上縁13及び下縁14と、左右に表れて縦(上下)方向に延在する左縁15及び右縁16によって外縁及び輪郭が形成されている。例えば、マスク本体2は、横方向の長さが約140mm~約180mm、縦方向の長さが約80mm~100mmである。
【0012】
マスク本体2は、例えば複数の不織布シートを重ねて構成されている。複数の不織布シートのうち少なくとも一つの不織布シートは熱溶着性(ヒートシール)繊維を含んでおり、上縁13、下縁、左縁及び右縁16に沿った一つ又は複数の直線又は曲線に沿って連続的に又は断続的に加熱溶着されて複数の溶着線(シールライン)が形成されている。実施形態では、マスク本体2の上縁13、下縁、左縁及び右縁16に沿ってそれぞれ上溶着線21、下溶着線22、左溶着線23及び右溶着線24が形成されている。
【0013】
実施形態のマスク本体2では、上縁13に沿って2つの上溶着線21が形成されており、これら二つの上溶着線21の間には、表面側と裏面側の不織布シートの間にノーズワイヤ25が収容されており、マスク1を顔に装着した状態で、マスク1の上縁13を鼻の形にフィットさせることができるように構成されている。
【0014】
実施形態のマスク本体2ではまた、マスク1を顔に装着した状態で、マスク1が顔の凹凸形状に沿って展開できるように、左右方向に延在する複数のプリーツ(ひだ)26が形成されている。プリーツ26は、いわゆる階段プリーツ又はオメガプリーツのいずれであってもよい。
【0015】
[紐]
マスク1を顔に保持するための紐3は、マスク本体2の左側に取り付けられた左側の紐3とマスク本体2の右側に取り付けられた右側の紐28を有する。紐3には伸縮可能なゴム紐を使用することが好ましい。
【0016】
実施形態では、左側の紐3はその一端と他端がマスク本体2の左側の上縁角部と下縁角部にそれぞれ加熱溶着されて固定され、右側の紐28はその一端と他端がマスク本体の右側の上縁角部と下縁角部にそれぞれ加熱溶着されて固定される。したがって、
図1,2に示すように、使用状態において、左側の紐3は装着者の右耳に掛けられ、右側の紐28は装着者の左耳に掛けられる。
【0017】
上述のように、実施形態では、一方の紐はその一端と他端をマスク本体2の左側上端と左側下端に固定し、他方の紐はその一端と他端をマスク本体2の右側上端と右側下端に紐両端を固定しているが、一方はその一端と他端をマスク本体の左側上端と右側上端に固定し、他方の紐はその一端と他端をマスク本体の左側下端と右側下端に固定してもよい。または、4本の紐を用意し、それぞれの紐の一端をマスク本体の四隅に固定し、それぞれの紐を対応する紐に結ぶようにしてもよい。
【0018】
[製造]
製造時、
図3に示すように、上述した構成のマスク本体2は、プリーツ26を形成し、上下左右の縁13~16に沿ってそれぞれ溶着線21~24を形成した後、装着時に肌に接しない表面が外側に表れ且つ装着時に肌に接する裏面が内側に隠れるように、左右方向に延在する中央線31に沿って二つ折り(山折り)される。以下、中央線31を「折り目」という。折り目31は、左縁15上の左中間点32と右縁16上の右中間点33を結んでいる。実施形態では、左縁15上の左中間点32は上縁13の左端と下縁の左端から等距離にあり、右縁16上の右中間点33は上縁13の右端と下縁の右端から等距離にある。ただし、左右の中間点32,33は必ずしも上縁13と下縁14から等距離にある必要はなく、上縁又は下縁に偏っていてもよい。
【0019】
次に、二つ折りされたマスク本体2は、折り目31の左右端部を含む部分が切除される。具体的には、折り目31上にあって折り目31の左端(左中間点32)から折り目31の右端(右中間点33)に向かって所定距離d1だけ離れた点34と、折り目31の左端(左中間点32)から上縁13と下縁14に向かって等しい距離d2だけ離れた左縁15上の点35とを結ぶ左斜め線36に沿って溶着されて線状又は帯状の左溶着ライン37が形成されている。同様に、折り目31上にあって折り目31の右端(右中間点33)から折り目31の左端(左中間点32)に向かって所定距離d1’だけ離れた点38と、折り目31の右端(右中間点33)から上縁13と下縁14に向かって等しい距離d2’だけ離れた右縁16上の点39とを結ぶ右斜め線40に沿って溶着されて線状又は帯状の右溶着ライン41が形成されている。
【0020】
実施形態では、左溶着ライン37に沿って該左溶着ライン37の外側の左角部三角形領域(左中間点32を含む三角形領域)42が切除され、右溶着ライン41に沿って該右溶着ライン41の外側の右角部三角形領域(右中間点33を含む三角形領域)43が切除されている。
【0021】
実施形態では、左角部三角形領域42における距離d1は距離d2よりも大きい。同様に、右角部三角形領域43における距離d1’は距離d2’よりも大きい。また、左角部三角形領域42における距離d1と距離d2はそれぞれ、右角部三角形領域43における距離d1’と距離d2’に等しい。例えば、距離d1(=d1’)は約15mm~40mm、距離d2(=d2’)は約5mm~10mmである。
【0022】
実施形態では、左右の溶着ライン37,41は真っ直ぐな線であるが、左右の中間点32,33に向かって凸のアーチ状又は凹のアーチ状の曲線であってもよい。
【0023】
なお、上述の説明では、マスク本体2を二つ折りした後に左右の角部三角形領域42,43を切除したが、二つ折りする前のマスク本体から左右の角部三角形領域に対応する箇所を切除し、その後、マスク本体を二つ折りした後に左右の溶着ライン41を形成してもよい。
【0024】
[使用]
このようにして製造された実施形態のマスク1は、使用時、二つ折りされたマスク本体2を
図1,2に示すように展開する。このとき、左右中央部分には表面側から斜めの溶着ライン37,41が形成されているため、展開されたマスク1は全体的に前方(肌から離れる方向)に向かって凸の立体形状を有する。
【0025】
したがって、展開されたマスク1を装着すると、マスク本体2と肌50、特に唇との間に十分な大きさの空間が形成される。これにより、マスク1を装着したときの不快感が改善される。また、
図2に示すように、マスク本体2の左右の縁15,16が肌50に密着し、肌50とマスク本体2との間に隙間を形成することがない。さらに、ノーズワイヤ25を鼻の形に変形することで、マスク本体上縁13を鼻の左右の肌部分に密着することができる。これにより、マスク本体2の四辺(上縁13、下縁14、左縁15及び右縁16)が肌50に密着する。そのため、従来のマスクのように、マスクと肌の隙間から感染源となるウィルスの侵入や拡散が確実に防止される。
【0026】
また、実施形態のマスク1では、
図3に示すように、左右の角部三角形領域42,43が切除されているので、装着されたマスク1は突起の無い滑らかな外観形状となる。
【0027】
さらに、使用前(展開前)及び不使用時(飲食等のために一時的に顔からマスクを外して折り畳んだ状態)、肌に接することが予定されている裏面及びすでに肌に接した裏面は、内側に隠れており、露出しない。そのため、二つ折りしたマスクを一時的にテーブル等の上に置いても、肌や鼻口に接する裏面がテーブル等に接触することがない。そのため、たとえテーブル等の上に病原菌があっても、その病原菌がマスクを介して吸引される危険が防止される。
【0028】
さらにまた、使用前(展開前)のマスクは二つ折りされたマスクは、展開されたマスクの約半分の大きさであるため、個別包装するにあたって使用する包装材料が半分で済むことから経済的であるし、携帯に便利である。
【符号の説明】
【0029】
1:マスク
2:マスク本体
3:紐
13:上縁
14:下縁
15:左縁
16:右縁
21:上溶接線
22:下溶接線
23:左溶接線
24:右溶接線
31:中央線(折り目)
32:折り目の左端(左中間点)
33:折り目の右端(右中間点)
37:左溶着ライン
41:右溶着ライン
42:左角部三角形領域
43:右角部三角形領域