(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020286
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】鉛蓄電池用セパレータおよび鉛蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/463 20210101AFI20230202BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20230202BHJP
H01M 10/06 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H01M50/463 B
H01M50/489
H01M10/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125559
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505458359
【氏名又は名称】ダラミック エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】趙 博
(72)【発明者】
【氏名】五島 寛文
(72)【発明者】
【氏名】三宅 直人
【テーマコード(参考)】
5H021
5H028
【Fターム(参考)】
5H021CC05
5H021CC09
5H021HH00
5H021HH03
5H021HH10
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC10
5H028HH00
5H028HH05
(57)【要約】
【課題】本発明は、電極への耐圧縮性および電池内部での低抵抗性を両立できる新規液式鉛蓄電池用セパレータを提供することを目的とする。
【解決手段】多孔質ベース部及びリブを有する液式型鉛蓄電池用セパレータであって、前記多孔質ベース部は、幅方向の両端に配置された側端部と、前記側端部に挟まれた中央部とを有し、前記中央部に第1リブが配置され、前記第1リブの少なくとも半数以上は断続線状リブであり、前記側端部に第2リブが配置され、前記第2リブの少なくとも半数以上は連続線状リブであり、かつ前記側端部の透気度が前記中央部の透気度より30秒/100cm
3~350秒/100cm
3低い、液式型鉛蓄電池用セパレータが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質ベース部及びリブを有する液式型鉛蓄電池用セパレータであって、
前記多孔質ベース部は、幅方向の両端に配置された側端部と、前記側端部に挟まれた中央部とを有し、
前記中央部に第1リブが配置され、前記第1リブの少なくとも半数以上は断続線状リブであり、
前記側端部に第2リブが配置され、前記第2リブの少なくとも半数以上は連続線状リブであり、かつ
前記側端部の透気度が前記中央部の透気度より30秒/100cm3~350秒/100cm3低い、液式型鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項2】
前記中央部における任意の1.0cm2の正方形内に第1リブが存在し、
前記側端部における任意の1.0cm2の正方形内に第2リブが存在する、
請求項1に記載の液式型鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項3】
隣接する最近接の第1リブ間距離は15mm以下であり、
かつ、隣接する最近接の第2リブ間距離は5mm以下である、
請求項1又は2に記載の液式型鉛蓄電池用電池セパレータ。
【請求項4】
両側の前記側端部の幅の和に対する、前記中央部の幅の比が1以上、8以下である、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液式型鉛蓄電池用電池セパレータ。
【請求項5】
前記第1リブの前記断続線状リブの付設パターンが、長手方向及び/又は幅方向に完全に対称的ではない、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の液式型鉛蓄電池用電池セパレータ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液式型鉛蓄電池用電池セパレータを備える鉛蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池用セパレータおよび鉛蓄電池について、電極への耐圧縮性が優れ、低い内部抵抗を維持するうえ、長い電池寿命を提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛蓄電池の使用中に充放電を繰り返すと、電池性能は次第に低下する。具体例として、例えば電極の変形または活物質の脱落が挙げられる。電極間にセパレータを有する鉛蓄電池については、電極の変形によって、電極は容易にセパレータのベース部に当たり、浸透短絡を加速してしまうケースが多く知られている。また、活物質が脱落してしまうと、電極板の有効表面積(すなわち、充放電に寄与できる活物質量)が減り、必要な電気を提供できなくなってしまう。いずれの状態も外部から修復することが不可能であり、電池が使用できなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに対して特許文献1では、セパレータにリブが満遍なく存在するように設計され、電極とセパレータの間に十分な支点を設けることができた。その結果、数多くのリブが電極を支えて電極との距離を保つことができ、電極の変形または活物質の脱落を抑制できたと考えられている。従って、特許文献1に記載のセパレータは、長い電池寿命に期待できる設計である。しかし、特許文献1に記載の数多くの支点によってセパレータ単体の抵抗と電池の内部抵抗が上がり、実際に使用できる電池容量が低下してしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記のような事情を勘案して完成されたものであり、電極への耐圧縮性および電池内部での低抵抗性を両立させることができる液式型鉛蓄電池用セパレータ、並びに優れた電池寿命の液式型鉛蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための技術的手段を以下に例示する。
<1>
多孔質ベース部及びリブを有する液式型鉛蓄電池用セパレータであって、
前記多孔質ベース部は、幅方向の両端に配置された側端部と、前記側端部に挟まれた中央部とを有し、
前記中央部に第1リブが配置され、前記第1リブの少なくとも半数以上は断続線状リブであり、
前記側端部に第2リブが配置され、前記第2リブの少なくとも半数以上は連続線状リブであり、かつ
前記側端部の透気度が前記中央部の透気度より30秒/100cm3~350秒/100cm3低い、液式型鉛蓄電池用セパレータ。
<2>
前記中央部における任意の1.0cm2の正方形内に第1リブが存在し、
前記側端部における任意の1.0cm2の正方形内に第2リブが存在する、
項目1に記載の液式型鉛蓄電池用セパレータ。
<3>
隣接する最近接の第1リブ間距離は15mm以下であり、
かつ、隣接する最近接の第2リブ間距離は5mm以下である、
項目1又は2に記載の液式型鉛蓄電池用電池セパレータ。
<4>
両側の前記側端部の幅の和に対する、前記中央部の幅の比が1以上、8以下である、
項目1乃至3のいずれか一項に記載の液式型鉛蓄電池用電池セパレータ。
<5>
前記第1リブの前記断続線状リブの付設パターンが、長手方向及び/又は幅方向に完全に対称的ではない、
項目1乃至4のいずれか一項に記載の液式型鉛蓄電池用電池セパレータ。
<6>
項目1乃至5のいずれか一項に記載の液式型鉛蓄電池用電池セパレータを備える鉛蓄電池。
【発明の効果】
【0007】
本明細書により開示される液式型鉛蓄電池用セパレータを備える液式鉛蓄電池によれば、電極への耐圧縮性および電池内部での低抵抗性を両立でき、良好な電池寿命を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液式型鉛蓄電池用セパレータにおけるリブの付設パターン(1)を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る液式型鉛蓄電池用セパレータにおけるリブの付設パターン(2)を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る液式型鉛蓄電池用セパレータにおけるリブの付設パターン(3)を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る液式型鉛蓄電池用セパレータにおけるリブの付設パターン(4)を示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る液式型鉛蓄電池用セパレータにおけるリブの付設パターン(5)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本実施形態の概要)
初めに、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という)の鉛蓄電池用セパレータ(以下、「セパレータ」と略記することがある)の概要について説明する。本明細書により開示される液式型鉛蓄電池用セパレータは、多孔質ベース部とリブを有し、前記多孔質ベース部は、幅方向の両端に配置された側端部と、前記側端部に挟まれた中央部とを有し、前記中央部に第1リブが配置され、前記第1リブの少なくとも半数以上は断続線状リブであり、前記側端部に第2リブが配置され、前記第2リブの少なくとも半数以上は連続線状リブであり、かつ前記側端部の透気度が前記中央部の透気度より30秒/100cm3~350秒/100cm3低いという特徴を有する。
【0010】
本発明者らは、セパレータのリブパターンによる電池内部抵抗の減少について改善検討を試みた。本発明者らは、様々なリブパターンを組み合わせて電極の脱落抑制に効くことを発見したが、セパレータ表面全体に複雑なリブパターンを組み合わせようとすると、電池に使用される際の内部抵抗が上がってしまう背反があった。そこで、セパレータの中央部および中央部の両側にある側端部について、それぞれ異なる役割を果たすようなリブ設計の検討を行った。その結果、本実施形態によれば、セパレータ単体としての内部抵抗が低下した結果が得られ、初期性能における低い内部抵抗を維持できることが見出された。
【0011】
具体的には、液式型鉛蓄電池の内部は、電解液中のイオンの移動抵抗が大きいため、イオンが透過し易い膜構造の構築が内部抵抗減少の鍵となる。そこで、本実施形態では、膜構造の評価に透気度というパラメータを使った。透気度とは、空気の通り易さの指標であり、透気度が低いほど、イオンが移動し易くなると考えられる。
【0012】
電池の中で、電極を積み重ねていくと共にセパレータの中央部に掛かる圧力が上がる。更に、電解液は、袋状セパレータの中では、側端部と比べて、中央部により多く存在することで、化学反応が集中しているとも言える。そのため、中央部に配置されるリブの主な役割として、電極の変形と活物質の脱落を防ぐことが最も重要だと考えられる。リブの形態として、背の高くかつ頑丈であることが必要である。そこで、前述した形態のような断続線状リブに連続線状リブを加えると、電極をサポートできる支点を十分に確保できる。電池設計に合わせて連続リブと断続リブの割合を変えると透気度の改善も見られる。
【0013】
他方、セパレータの端に袋状成型のためシールされる。側端部の端ではセパレータと電極の間に隙間が生じる。従って、側端部のほうが中央部と比べて圧力が緩和され、中央部と同等のような背の高くかつ頑丈なリブが必ずしも必須ではない。本来、セパレータを成型する際、抽出工程で可塑剤であるオイルを抜くが、セパレータのベース部とリブ部にあるオイルは抜ける速度の違いによって、ベース部と比べてリブ部にオイルが多くなることが判明されている。そのため、オイルを持つリブが多くなると内部抵抗に影響を与える。そこで、側端部にイオンが通り易いような背の低くかつ細い連続また断続リブを成型することで、セパレータ単体の高イオン透気性を構築できる。
【0014】
本発明の特徴として、発明者らは、セパレータの中央部、側端部のリブ形状を組み合わせることによって電池全体の内部抵抗の改善を突き止めたため、本発明への着想に至った。
【0015】
以上から、発明者らは、電池内部構成の各部位について求められている特性に合わせて中央部と側端部のリブパターンを変えることで、内部抵抗と耐圧縮性のバランスを測り取ることができた。リブ形状の成型方法として、たとえば、ロールに所定の溝を刻設した一対の成形ロール間を通し、更に所定の厚みになるようにリブを圧縮する方法が考えられる。本発明で得られたセパレータは、電極への耐圧縮性が著しく改善されただけでなく、何より実用上のセパレータによる内部抵抗の上昇を極限に減らすことができた。
【0016】
(本実施形態の詳細)
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るセパレータの構成要素について説明する。なお、本明細書では、長手方向は、シート若しくはセパレータ成形時または抄紙時の機械方向(MD)を意味し、そして幅方向または横手方向は、MDに対して90℃で横断する方向(CMD)を意味する。
【0017】
(リブの付設パターン)
セパレータの多孔質ベース部において、中央部に配置された第1リブの少なくとも半数以上は断続線状リブであり、かつ側端部に配置された第2リブの少なくとも半数以上は連続線状リブである。
【0018】
上記で説明されたとおり、内部抵抗と耐圧縮性の観点から、中央部に配置された第1リブの少なくとも半数以上は断続線状リブであり、第1リブの付設パターンの総数を基準として、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上が断続線状リブであることが好ましく、例えば第1リブの全てが断続線状リブでよい。同様の観点から、側端部に配置された第2リブの少なくとも半数以上は連続線状リブであり、第2リブの付設パターンの総数を基準として、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上が連続線状リブであることが好ましく、例えば第1リブの全てが連続線状リブでよい。
【0019】
図1~
図5には、セパレータにおけるリブの付設パターン(1)~(5)が例示される。なお、
図1~
図5は、模式的なものであるため、本発明は付設パターン(1)~(5)に限定されるものではない。
【0020】
図1の付設パターン(1)では、中央部に配置された第1リブの全てが断続線状リブであり、側端部に配置された第2リブの全てが連続線状リブであり、かつ第1及び第2リブは、MDに沿って付設パターンが平行である。
【0021】
図2の付設パターン(2)では、中央部に配置された第1リブの全てが断続線状リブであり、側端部に配置された第2リブの付設パターンの総数(ただし、側端辺を含まない)を基準として、71%以上が連続線状リブであり、かつ第1及び第2リブは、MDに沿って付設パターンが平行である。
【0022】
図3の付設パターン(3)では、中央部に配置された第1リブの付設パターンの総数(MDに沿って、3つの実線パターン+8つのジグザグ断続線パターン=計11)を基準として、72%以上が断続線状リブであり、側端部に配置された第2リブの全てが連続線状リブであり、かつ第1リブの実線部及び第2リブは、MDに沿って付設パターンが平行である。
【0023】
図4の付設パターン(4)では、中央部に配置された第1リブの全てが断続線状リブであり、側端部に配置された第2リブの全てが連続線状リブであり、第1リブはMDと平行であり、かつ第2リブはMDに対して斜めに付設されている。
【0024】
図5の付設パターン(5)では、中央部に配置された第1リブの付設パターンの総数(MDに沿って、3つの実線パターン+8つのジグザグ断続線パターン=計11)を基準として、72%以上が断続線状リブであり、側端部に配置された第2リブの全てが連続線状リブであり、第1リブの実線部とMDであり、かつ第2リブはCMDと平行である。
【0025】
(透気度)
本実施形態では、前記側端部の透気度が前記中央部の透気度より30秒/100cm3以上であるようにすることで、セパレータ全体の内部抵抗を下げ、結果としてセパレータによる容量降下が改善される。一方、場所によって透気度の差が余りにも大きくなると、イオンが透気度の高い場所に集中しがちになる恐れがある。その場合、逆にイオンが通り難くなり、電気の提供が付いていけなくなるため、前記透気度の差は350秒/100cm3以下であるとよい。このような観点から、前記側端部の透気度が前記中央部の透気度より低く、両者の差が、40秒/100cm3以上、340秒/100cm3以下であると好ましく、50秒/100cm3以上、330秒/100cm3以下であるとより好ましく、60秒/100cm3以上、320秒/100cm3以下であると更に好ましく、70秒/100cm3以上、300秒/100cm3以下であると最も好ましい。
【0026】
(第1リブと第2リブ)
本実施形態に係るセパレータにおいて電極をサポートできる支点を十分に確保し、かつ電池設計に応じて上記のとおり透気度も改善するという観点から、中央部における任意の1.0cm2の正方形内に第1リブが存在することが好ましく、かつ側端部における任意の1.0cm2の正方形内に第2リブが存在することが好ましい。ここで、「任意の」1.0cm2の正方形は、中央部または側端部の大部分が、1.0cm2の正方形内に第1または第2リブが存在するという条件を満たせばよいことを意味するので、中央部または側端部の一角にのみ、リブを有しないものの本発明と同等または均等の構成を有するものは、本実施態様に含まれるものとする。
【0027】
電極の支点の十分な確保および電池設計に適した透気度の改善の観点から、中央部の全ての領域において1.0cm2の正方形内に第1リブが存在することがより好ましく、かつ/または側端部の全ての領域において1.0cm2の正方形内に第2リブが存在することがより好ましい。
【0028】
セパレータでは、隣接する最近接の第1リブ間距離は15mm以下であり、かつ隣接する最近接の第2リブ間距離は5mm以下であることが好ましい。ここで、「隣接する最近接の」リブ間距離は、第1リブの大部分について満たせばよく、より詳細には標準偏差が0~5.2、好ましくは0~3.5、より好ましくは0~2.6のように、15mm以下の第1リブ間距離の条件を満たせばよく、または第2リブの大部分について満たせばよく、より詳細には標準偏差が0~3.0、好ましくは0~2.5、より好ましくは0~2.0のように、5mm以下の第2リブ間距離の条件を満たせばよいことを意味する。したがって、中央部または側端部の一部分のリブ間距離が異なるものの本発明と同等または均等の構成を有するものは、本実施態様に含まれるものとし、また本実施形態では中央部または側端部の全ての領域において、上記の条件を満たすことがより好ましい。
【0029】
前記第1リブは、隣接する最近接のリブ間距離、例えば横手方向(CMD)に配置された第1リブ同士までのリブ間距離が、15mm以下であり、かつ、前記第2リブは、隣接する最近接のリブ間距離、例えば隣に配置された第2リブ同士までのリブ間距離が、5mm以下であるようにすることで、電極を支えるには非常に効果があると判明された。ただし、支点となるリブが過剰に存在すると、内部抵抗増加の原因となるため、断続線リブと連続線リブの割合を調整してよい。一方、支点となるリブが十分にないと、電極への耐圧縮性に欠けるにもかかわらず、従来のセパレータより抵抗が高くなり、マイナス効果になってしまう。
【0030】
上記で説明された利点と不利点の観点から、隣接する最近接の第1リブ間距離は12mm以下であり、かつ、隣接する最近接の第2リブ間距離は4mm以下であると更に好ましく、隣接する最近接の第1リブ間距離は11mm以下であり、かつ、隣接する最近接の第2リブ間距離は3mm以下であるとより更に好ましい。
【0031】
第1リブの断続線状リブの付設パターンは、長手方向及び/又は幅方向に完全に対称的ではないことが好ましい。断続部分の線分は同じラインで揃うと、断続線状リブのないベース部に電極を支えない領域を生じるため、多孔質ベース部は電極に接触し易くなると考えられる。そのため、断続部分の線分は、長手方向及び/又は幅方向に完全に対称的ではないことが好ましく、隣り合う断続部分の線分と上下中央揃えしないことがより好ましい。
【0032】
第1リブの断続線状リブの付設パターンが長手方向及び/又は幅方向に完全に対称的ではないことの具体例としては、下記(a)~(j)などが挙げられる:
(a)一定方向から観察したときに、断続線状リブの付設パターンにランダム性があるか、または断続線状リブの付設パターンが2つ以上ある;
(b)一定方向から観察したときに、断続線状リブの付設パターン同士が、完全な平行ではない;
(c)断続線状リブの付設パターンの2つ以上については、断続線中の実線部分が、同一長さではない;
(d)断続線状リブの付設パターンの2つ以上については、断続線中の実線部分が、同一長さであるとしても完全な平行には位置決めされていない;
(e)断続線状リブの付設パターンの2つ以上については、実線部分と非実線部分の繰り返しパターンが揃わない;
(f)一定方向から観察すると、断続線状リブの付設パターンの2つ以上について、始点と終点が一致するようには位置決めされてない;
(g)
図1及び
図2に示されるように、平行に引かれた断続線パターン同士について、一方を垂直方向にスライドさせたときにパターンが重ならない(すなわち、完全一致しない);
(h)一定方向から観察すると、必ず1つは第1リブがある;
(i)断続線状リブのパターン同士をズラして付設する;
(j)断続線状リブが斜めパターンである。
【0033】
(多孔質ベース部)
多孔質ベース部については、両側の側端部の幅の和に対する、前記中央部の幅の比が、1以上、8以下であることが好ましい。中央部には背の高くかつ頑丈なリブが存在し、電極への耐圧縮機能を担っている。側端部にはイオンが通り易いような背の低くかつ細い小型リブが存在し、イオン移動のラッシュを緩和する役割がある。そのため、中央部の幅が広いと耐圧縮性が高くなるが電池での内部抵抗が悪くなる一方、側端部の幅が広いと電池での内部抵抗が下がるが耐圧縮性に欠けていく。このような観点から、両側の側端部の幅に対する中央部の幅の比が1以上、8以下であるようにすることで、セパレータの耐圧縮性と透過性が良いバランスを取れる。さらに良好なバランスを取るという観点からは、両側端部の幅の和に対する前記中央部の幅の比が、1.1以上、7.5以下であるとより好ましく、1.2以上、7.0以下であるとさらに好ましい。
【0034】
(含有成分)
本実施形態に係るセパレータは、ポリオレフィン系樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ゴム、合成木材パルプ(SWP)、ガラス繊維、セルロース系材料(例えば、セルロース、又はセルロース誘導体等から構成され、繊維の形態でよい)、またはそれらの組合せなどの天然または合成材料を含むことが好ましい。これにより、セパレータ全体に均一かつ微細で複雑に入り組んだ複雑な経路を有する無数の連通孔が形成され得る。セパレータ全体における均一かつ微細な連通孔の形成の観点から、セパレータは、ポリオレフィン系樹脂、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ゴム、セルロース、及びセルロース誘導体の何れかまたは2種以上を含むことが、より好ましい。
【0035】
(鉛蓄電池用セパレータの製造方法)
本実施形態に係る鉛蓄電池用セパレータの具体的な製造方法の一例を以下に示す。
所定量のポリオレフィン樹脂、充填材、可塑剤に、各種添加剤(酸化防止剤等)を加えた原材料を混合機により攪拌・混合し、原料混合物を得る。次に、この混合物を二軸押出機を用いて加熱溶融・混練しながらシート状に押し出す。この押出シートは少なくとも一方のロールに所定の溝を刻設した一対の成形ロール間を通すことで、平板状シートの少なくとも片面に所定形状のリブを一体に成形したフィルム状物を得る。次に、このフィルム状物を、適当な溶剤中に浸漬し、可塑剤の所定量を抽出除去し乾燥する。これにより目的の微多孔質フィルムが得られる。
【0036】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等の単独重合体または共重合体およびこれらの混合物が使用できる。中でも、成形性や経済性の面で、ポリエチレンを主体とすることが好ましい。更に超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)がより好ましい。実施形態によっては、1以上の超高分子量ポリエチレンが利用される。超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、シリカとの混合性が良好で、微多孔質フィルムにあってシリカ微粉の骨格を接着機能材料として結合させながら強度を維持するとともに、化学的に安定であり安全性が高い。
【0037】
セパレータを得る方法においては、好ましくは、上記ポリオレフィン系樹脂、フェノール樹脂、PVC、ゴム、合成木材パルプ(SWP)、ガラス繊維、セルロース系繊維、またはそれらの組合せなどの天然または合成材料に、充填材と可塑剤を添加して原料組成物を溶融混練して製膜後可塑剤の一部または全部を除去する。これにより、セパレータ全体に均一かつ微細で複雑に入り組んだ複雑な経路を有する無数の連通孔が形成された微多孔質フィルムが得られる。
【0038】
前記充填材は、シリカ、雲母、モンモリロナイト、カオリナイト、アスベスト、タルク、ケイソウ土、バーミキュライト、天然及び合成ゼオライト、セメント、ケイ酸カルシウム、クレー、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸アルミニウムナトリウム、アルミニウムポリシリケート、アルミナシリカゲル、ガラス粒子、カーボンブラック、活性炭、炭素繊維、炭、黒鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化亜鉛、酸化鉛、タングステン、酸化アンチモン、ジルコニア、マグネシア、アルミナ、二硫化モリブデン、硫化亜鉛、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、など、またはそれらの組合せなど使用できる。中でも、シリカが好ましく、粒子径、比表面積等の各種粉体特性の選択範囲が広く、比較的安価で入手し易く、不純物が少ない。
【0039】
前記可塑剤としては、再利用がし易い点で鉱物オイルが好ましい。可塑剤はポリマー、充填材、可塑剤の混合物から最も取り除き易い成分であるため、セパレータに多孔度を付与するのに役立つ。微多孔質フィルム製セパレータ中の可塑剤の含有量はゼロであっても構わないが、液式鉛蓄電池用セパレータにおいては、鉱物オイルのような可塑剤を適量含有させておくことで、耐酸化性の向上に寄与させることができる。このような場合、セパレータ中の可塑剤の含有量は5~30重量%とすることが好ましい。但し、可塑剤の含有量を多くすると、微多孔質フィルムの空隙率が低下し、微多孔質フィルム製セパレータの電気抵抗が悪化するため、このような観点からは、可塑剤の含有量は20重量%以下であることがより好ましい。
【0040】
前記可塑剤を抽出除去するために用いる溶剤としては、有機塩素化合物、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等の飽和炭化水素系の有機溶剤を使用することができる。
【0041】
前記原料組成物または前記微多孔質フィルムには必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、潤滑剤、抗菌剤、着色剤等の添加剤を添加または含有させてもよい。
前記界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、アルキルアリールスルホネート塩、アルキルフェノール-アルキレンオキシド付加生成物、せっけん、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩のジアルキルエステル、第四級アミン、エチレンオキシド及び酸化プロピレンのブロック共重合体、及びモノ及びジアルキルホスフェートエステルの塩等の界面活性剤を含む。添加剤は、ポリオール脂肪酸エステル、ポリエトキシル化エステル、ポリエトキシル化脂肪アルコール、アルキルポリグリコシド及びそのブレンド等のアルキル多糖類、アミンエトキシレート、ソルビタン脂肪酸エステルエトキシレート、オルガノシリコーン系界面活性剤、エチレンビニルアセテートターポリマー、エトキシル化アルキルアリールリン酸エステル及びショ糖脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤を使用することができる。
【0042】
(セパレータの形態及び寸法)
前記セパレータは、直径5μm未満、好ましくは1μm未満の平均細孔サイズを有する。好ましくは、細孔の50%より多くは、直径0.5μm以下である。細孔の少なくとも90%は0.9μm未満の径を有するのが好ましい。場合によっては、セパレータは、0.01~0.3μmの範囲内の平均細孔サイズを有するのが好ましい。
【0043】
細孔サイズは、場合によっては、リッター、H.L.、及びドレイク、L.C.、産業・技術化学分析17版、787(1945)に記載の水銀圧入方法を使用して測定される。当該方法によれば、ポロシメーター(ポロシメーターモデル2000、カルロ・エルバ社)を用いて水銀に掛かる圧力を変化させることにより、水銀を異なるサイズの細孔へ入れる。細孔サイズは、ポロシメーターを用いる水銀圧入方法により測定するが、細孔分布は、MILESTONE200ソフトウェアでの未分析データの評価により決定されてもよい。
【0044】
前記セパレータの総厚は、好ましくは0.1mmより大きく、5.0mm以下である。セパレータの総厚は、0.15~2.5mm、0.25~2.25mm、0.5~2.0mm、0.5~1.5mm、又は0.75~1.5mmの範囲内とすることができる。中央部総厚は、中央部ベース厚だけでなく、リブ高さも含むものとし、中央部ベース厚とリブ高さが最も大きくなる中央部において測定するものとする。場合によっては、セパレータは、約0.8mm又は1.1mmの厚さであり得る。
【0045】
前記セパレータのベース厚みとしては、約0.05mm~約0.500mm(例えば、特定の実施形態においては、約0.20mm)が好ましい。
【0046】
本発明のリブ厚さは、成型ロールの設計に準じて決めることができる。
【0047】
前記セパレータのリブ形状として、少なくとも片面に、必要に応じて、縦または横の連続また不連続の直線リブ、セレーテッドリブ、ディンプルリブ、突起など、またはそれらの組合せなど設けられることができる。中でも好ましくは、0.008mm~1mmの高さで、0.001mm~20mm離れて置かれる。実施形態によっては、リブは相互の関係が0~90度である。
【0048】
(液式鉛蓄電池)
本発明のセパレータを用いた液式鉛蓄電池の一実施形態として、以下の構成が好ましい。セパレータは、袋状をしており、必要に応じて正極板または負極板を収容している。
【0049】
液式鉛蓄電池の正極板、負極板、電解液、蓋、及び電槽としては、本技術分野において既知の構造を有するものを使用してよい。例えば、電解液の入った電槽に正負極板が挿入されて蓋がされたベント型鉛蓄電池に、本実施形態に係る液式型鉛蓄電池用セパレータを組み込んでよい。
【0050】
正極板を収容するセパレータに正極リブを設け、実施形態によっては負極板を収容するセパレータに負極リブを設けてもよい。
【実施例0051】
次に、本発明の実施例について、比較例とともに詳細に説明する。
【0052】
(実施例1)
ポリオレフィン系樹脂として重量平均分子量が280万の超高分子量ポリエチレン樹脂粉体30質量%と、シリカ粉体70質量%と、可塑剤としてパラフィン系鉱物オイルをミキサーにて混合してから界面活性剤を外割で2質量%を添加し、この原料組成物を先端にTダイを取り付けた二軸押出機を用い加熱溶融混練しながらシート状に押し出す。この押出シートは一方のロールに極板当接用主リブのための所定の溝を刻設した一対の成形ロールの間を通し、平板状シートの一方の面に所定形状の極板当接用主リブを一体に成形加工したフィルム状物を得た。次に、このフィルム状物をトリクロロエチレン中に浸漬し、パラフィン系鉱物オイルの所定量を抽出除去して乾燥させ、中央部のベース厚さが0.20mmの微多孔質フィルムを得た。これを実施例1の液式鉛蓄電池用セパレータとした。なお、実施例1で得られるセパレータのリブ付設パターンは、
図1に例示されるとおりである。
【0053】
(鉛蓄電池の作製)
未化成の負極板を、袋状成型にしたセパレータに収容し、セル当たり未化成の負極板7枚と未化成の正極板6枚とで極板群を形成した。極板の耳同士を溶接した後、極板群を電槽に挿入し、電解液の硫酸水溶液を注液し、電槽内で化成を実施する。化成後の電解液の20℃における比重は1.285である。
【0054】
(実施例2)
成形ロールが異なる以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0055】
(実施例3)
成形ロールが異なる以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。なお、実施例3で得られるセパレータのリブ付設パターンは、
図2に例示されるとおりである。
【0056】
(実施例4)
成形ロールが異なる以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0057】
(実施例5)
成形ロールが異なる以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。なお、実施例5で得られるセパレータのリブ付設パターンは、
図3に例示されるとおりである。
【0058】
(実施例6)
成形ロールが異なる以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0059】
(比較例1)
成形ロールが異なる以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0060】
(比較例2)
成形ロールが異なる以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0061】
(比較例3)
成形ロールが異なる以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0062】
(比較例4)
成形ロールが異なる以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0063】
(比較例5)
成形ロールが異なる以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0064】
次に、上記にて得られた実施例1~6、および比較例1~5の各セパレータについて、以下の方法により、各種特性評価を行った。結果を表1に示す。表1中、「第1リブの断続部分の線分は隣り合う断続部分の線分と上下中央揃えしないパターンの有無」について、そのようなパターンを有する場合を「〇」として示し、そのようなパターンが無い場合を「×」として示す。
【0065】
<透気度>
旭精工株式会社の王研式透気度測定機(測定部の直径30mmφ)を用い、中央部と側端部の透気度をそれぞれ測る。中央部を測定する際、中央部の中央1点と左端から15mmの位置、および右端から15mmの位置の計3点の透気度を測定し、3点の平均を取って透気度の値とする。側端部を測定する際、側端部の中央1点を測定し、透気度の値とする。
測定するサンプルの幅に応じ、測定部の直径が13mmφであるノズルを用いて同様に透気度を測定する。
【0066】
<寿命試験>
電池寿命については、欧州規格(EN規格)のEN 50342-6:2015に記載の17.5%DOD寿命試験により評価した。すなわち、下記の(1)、(2)、(3)の操作を複数サイクル繰り返し、電圧が10Vになったら寿命に達したと判定し、それまで行ったサイクル数を電池寿命とする。
(1)充電状態(SOC)を50%に調整する。
(2)放電深度(DOD)17.5%の充放電を85回繰り返す。
(3)満充電にして20HR容量試験を実施する。容量試験終了後、再び満充電を実施する。
寿命試験の評価基準については、サイクル数が1100を超えると◎(著しく良好)、800~1100であると〇(良好)、800未満であると×(不良)と評価する。
【0067】
<内部抵抗>
内部抵抗の評価は、上記85サイクル後の測定値で行い、その値が3.75mΩ以下であると◎(著しく良好)、3.76mΩ~3.80mΩであると〇(良好)、3.81mΩ~3.85mΩであると△(許容)、3.86mΩ以上である×(不良)と評価する。
【0068】
本発明に係る液式鉛蓄電池用セパレータは、例えば、自動車若しくはバイク、またはアイドリングストップ(ISS)車用の鉛蓄電池として適している。更に、本発明に係る液式鉛蓄電池用セパレータは、フォークリフト等の電動車両の蓄電装置としても好適に利用できる。