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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020294
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】電動ショベル
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20230202BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
E02F9/00 M
E02F9/00 N
E02F9/00 C
E02F9/20 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125573
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 昌保
(72)【発明者】
【氏名】北川 剛士
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA04
2D015CA02
2D015CA03
(57)【要約】
【課題】油圧機器から熱が伝わることによるバッテリの加熱を抑制可能な電動ショベルを提供する。
【解決手段】外装カバー9は、左右方向に互いに対向する左側板9Lおよび右側板9Rと、左側板9Lに設けられた通気口VLと、右側板9Rに設けられた通気口VRとを有する。バッテリ31は、左側板9Lと右側板9Rとの間に配置され、電動モータに電力を供給する。油圧機器32、33は、バッテリ31の前方に配置されている。クーリング装置40は、冷却ファン40aを有し、平面視においてバッテリ31および油圧機器32、33に挟まれる領域と左右方向に対向するように配置されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に対向する第1側板および第2側板と、前記第1側板に設けられた第1通気口と、前記第2側板に設けられた第2通気口とを有する外装カバーと、
前記第1側板と前記第2側板との間に配置され、動力源に電力を供給するバッテリと、
前記バッテリの前方に配置された油圧機器と、
冷却ファンを有し、平面視において前記バッテリおよび前記油圧機器に挟まれる領域と前記左右方向に対向するように配置されたクーリング装置と、を備える、電動ショベル。
【請求項2】
前記クーリング装置は、前記冷却ファンの駆動により前記第1通気口から取り入れた空気が前記バッテリと前記油圧機器との間を通過して前記第2通気口から排出する、請求項1に記載の電動ショベル。
【請求項3】
前記バッテリと前記油圧機器との間に配置された仕切り部材をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の電動ショベル。
【請求項4】
前記クーリング装置は、前記仕切り部材に対する前記バッテリ側の領域と、前記仕切り部材に対する前記油圧機器側の領域との各々に空気を送るように配置されている、請求項3に記載の電動ショベル。
【請求項5】
前記クーリング装置の少なくとも一部は、前記冷却ファンの回転軸が延びる方向において前記油圧機器と対向する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動ショベル。
【請求項6】
前記クーリング装置の少なくとも一部は、前記冷却ファンの回転軸が延びる方向において前記バッテリと対向する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動ショベル。
【請求項7】
前記冷却ファンの回転軸が延びている方向において前記油圧機器と対向するオイルクーラと、
前記冷却ファンの回転軸が延びている方向において前記バッテリと対向するラジエータと、をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動ショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
小型の電動ショベルにおいてバッテリを冷却する技術は、たとえば特開2012-1933号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1においては、バッテリ収納構造体の上面および側面を覆う覆いシートの上面にダクトの一方端が連結されている。ダクトの他方端は、冷却ファンにより強制排気される機械室に連結されている。機械室には、油圧ポンプ、電動モータ、オイルタンク、熱交換器、オイルクーラなどが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-1933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中型または大型の電動ショベルではバッテリが大型化し、外装カバー内におけるバッテリの占有スペースが大きくなる。このため油圧機器(作動油タンク、メインバルブ)、電動モータなどのコンポーネントの配置を見直す必要がある。その結果、バッテリの近くに油圧機器が配置される可能性がある。
【0005】
バッテリが安定して機能するための許容温度が低いのに対し、作動油タンク、メインバルブなどの油圧機器は稼働中の発熱量が多く,周囲温度が高くなる。このためバッテリの近くに油圧機器が配置された場合、油圧機器からバッテリに熱が伝わることにより、バッテリが許容温度以上に加熱され、バッテリが安定して機能しなくなるおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、油圧機器から熱が伝わることによるバッテリの加熱を抑制可能な電動ショベルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電動ショベルは、外装カバーと、バッテリと、油圧機器と、クーリング装置とを備える。外装カバーは、左右方向に互いに対向する第1側板および第2側板と、第1側板に設けられた第1通気口と、第2側板に設けられた第2通気口とを有する。バッテリは、第1側板と第2側板との間に配置され、動力源に電力を供給する。油圧機器は、バッテリの前方に配置されている。クーリング装置は、冷却ファンを有し、平面視においてバッテリおよび油圧機器に挟まれる領域と左右方向に対向するように配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、油圧機器から熱が伝わることによるバッテリの加熱を抑制可能な電動ショベルを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の一実施形態における電動ショベルの構成を概略的に示す斜視図である。
図2図1に示す電動ショベルにおける機械室内の状態を示す第1斜視図である。
図3図1に示す電動ショベルにおける機械室内の状態を示す第2斜視図である。
図4図1に示す電動ショベルにおける機械室内の状態を示す平面図である。
図5】ファンの回転軸方向が左右方向に対して傾斜した状態を示す概略平面図である。
図6】左右方向に通気孔、ファン、オイルクーラ(またはラジエータ)、バッテリの順で配置された状態を示す概略平面図である。
図7図1に示す電動ショベルにおける機械室内の状態の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
【0011】
明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、実施の形態と変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0012】
以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」とは、図1に示す運転室4内の運転席4Sに着座したオペレータを基準とした方向である。
【0013】
<電動ショベルの構成>
まず本実施形態の電動ショベルの構成を図1を用いて説明する。
【0014】
図1は、本開示の一実施形態における電動ショベルの構成を概略的に示す斜視図である。図1に示されるように、電動ショベル100は、本体1と、油圧により作動する作業機2とを有している。本体1は、旋回体3と、走行体5とを有している。
【0015】
走行体5は、一対の履帯5Crと、走行モータ5Mとを有している。電動ショベル100は、履帯5Crの回転により走行可能である。走行モータ5Mは、走行体5の駆動源として設けられている。走行モータ5Mは、油圧により作動する油圧モータである。なお、走行体5は車輪(タイヤ)を有していてもよい。
【0016】
旋回体3は、走行体5の上に配置され、かつ走行体5により支持されている。旋回体3は、旋回モータ(図示せず)により旋回軸RXを中心として走行体5に対して旋回可能である。旋回モータは、油圧により作動する油圧モータである。旋回軸RXは、旋回体3の旋回中心となる仮想の直線である。なお走行モータ5Mあるいは旋回モータは電動モータであってもよい。
【0017】
旋回体3は、運転室4(キャブ)を有している。運転室4内には、オペレータが着座する運転席4Sが設けられている。オペレータ(乗員)は、運転室4に搭乗して、作業機2の操作、走行体5に対する旋回体3の旋回操作、および走行体5による電動ショベル100の走行操作が可能である。旋回体3は、外装カバー9を有している。外装カバー9は、機械室を覆っている。電動ショベルは、遠隔操作されるものでもよい。
【0018】
作業機2は、旋回体3に支持されている。作業機2は、ブーム6と、アーム7と、バケット8とを有している。作業機2は、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12とをさらに有している。
【0019】
ブーム6は、本体1に回動可能に接続されている。具体的にはブーム6の基端部は、ブームフートピン13を支点として旋回体3に回動可能に接続されている。アーム7は、ブーム6に回動可能に接続されている。具体的にはアーム7の基端部は、ブームトップピン14を支点としてブーム6の先端部に回動可能に接続されている。バケット8は、アーム7に回転可能に接続されている。具体的にはバケット8の基端部は、アームトップピン15を支点としてアーム7の先端部に回動可能に接続されている。
【0020】
ブームシリンダ10の一端は旋回体3に接続され、他端はブーム6に接続されている。ブーム6は、ブームシリンダ10により本体1に対して駆動可能である。この駆動により、ブーム6は、ブームフートピン13を支点として旋回体3に対して上下方向に回動可能である。
【0021】
アームシリンダ11の一端はブーム6に接続され、他端はアーム7に接続されている。アーム7は、アームシリンダ11によりブーム6に対して駆動可能である。この駆動により、アーム7は、ブームトップピン14を支点としてブーム6に対して上下方向または前後方向に回動可能である。
【0022】
バケットシリンダ12の一端はアーム7に接続され、他端はバケットリンク17に接続されている。バケット8は、バケットシリンダ12によりアーム7に対して駆動可能である。この駆動により、バケット8は、アームトップピン15を支点としてアーム7に対して上下方向に回動可能である。
【0023】
ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12の各々は、油圧シリンダであり、油圧により駆動する。
【0024】
<外装カバーの側板と機械室内におけるコンポーネントの配置>
次に、図1に示す電動ショベルにおける外装カバーの側板と機械室内のコンポーネントの配置とについて図2図7を用いて説明する。なお図2および図3においては、外装カバー9の一部を破断して示している。
【0025】
図2および図3のそれぞれは、図1に示す電動ショベルにおける機械室内の状態を示す斜視図である。図4は、図1に示す電動ショベルにおける機械室内の状態を示す平面図である。図2に示されるように、旋回体3(図1)は、旋回フレーム20を有している。旋回フレーム20は、旋回軸RXを中心として走行体5(図1)に対して旋回する。
【0026】
旋回フレーム20は、センターフレームCFと、左デッキDLと、右デッキDRとを有している。センターフレームCFは、旋回フレーム20の左右方向におけるほぼ中央に位置している。左デッキDLは、センターフレームCFの左側に配置されている。右デッキDRは、センターフレームCFの右側に配置されている。
【0027】
センターフレームCFは、1対のセンタービームCBを有している。1対のセンタービームCBは、互いに左右方向に間隔を空けて対向するように配置されている。1対のセンタービームCBは、作業機2(図1)を支持している。これによりセンターフレームCFは作業機2を支持している。
【0028】
1対のセンタービームCBの各々は、貫通孔TH1、TH2を有している。貫通孔TH1には、ブームフートピン13(図1)が挿通されている。ブームフートピン13によりブーム6(図1)が1対のセンタービームCBに回転可能に支持されている。
【0029】
貫通孔TH2には、ブームシリンダ10(図1)を支持するピン(図示せず)が挿通されている。このピンによりブームシリンダ10がセンタービームCBに回転可能に支持されている。
【0030】
図3に示されるように、旋回フレーム20には、バッテリ31、作動油タンク32、切替バルブ33(メインバルブ)、仕切り部材34、クーリング装置40、オイルクーラ41、ラジエータ42、運転室4(図1)などの搭載物が支持されている。バッテリ31、作動油タンク32、切替バルブ33、クーリング装置40などは、外装カバー9(図1)により覆われる機械室内に配置されている。
【0031】
クーリング装置40は、たとえば4つの冷却ファン40aを有している。上下方向に2つの冷却ファン40aが配置され、前後方向に2つの冷却ファン40aが配置されることにより、合計4つの冷却ファン40aが配置されている。
【0032】
バッテリ31は、たとえば複数のバッテリモジュールを含み、複数のバッテリモジュールの各々はバッテリセルを有している。バッテリ31は、電源であり、外部電源から得た電気エネルギーを蓄える。バッテリ31は、蓄えた電気エネルギーを起電力として取り出す。バッテリ31は、インバータ(図示せず)を介在して電動モータ(図示せず)に電力を供給する。バッテリ31は、リチウムイオン、電気二重層キャパシタ、鉛蓄電池などである。バッテリ31は充電池(蓄電池)である。
【0033】
バッテリ31は、1対のセンタービームCB上にブラケット(図示せず)を介在して配置されている。本実施形態の電動ショベル100は、カウンタウエイトを有しておらず、バッテリ31がカウンタウエイトの役割を果たしている。このためバッテリ31は、旋回体3の後部に配置されている。
【0034】
図4に示されるように、左デッキDLの後端RLおよび右デッキDRの後端RRの各々よりも後方の領域は、本来、カウンタウエイトが配置される領域である。バッテリ31はカウンタウエイトの役割を果たすべく、平面視において左デッキDLの後端RLおよび右デッキDRの後端RRの各々よりも後方に位置する部分を有している。このため、バッテリ31の後端31Rは平面視において左デッキDLの後端RLおよび右デッキDRの後端RRの各々よりも後方に位置している。本明細書における平面視とは、旋回フレーム20の底板BPに直交する方向(上下方向)において上から下を見る視点を意味する。
【0035】
中型または大型の電動ショベルにおいては稼働させるためのエネルギー量が多くなるため、バッテリ31も大型化する。バッテリ31の高さを高くすると、運転席4Sに着座したオペレータの後方視界性が悪くなる。そこでバッテリ31の高さを抑えると、バッテリ31の平面占有面積が大きくなる。このためバッテリ31は、平面視においてカウンタウエイトの配置領域に収まりきらず、機械室内にはみ出す。これにより平面視においてバッテリ31の前端31Fは、左デッキDLの後端RLおよび右デッキDRの後端RRの各々よりも前方に位置している。このようにバッテリ31が機械室内にはみ出すことにより、バッテリ31以外の搭載物の配置に制約が生じる。
【0036】
なお機械室とは、左デッキDLの後端RLおよび右デッキDRの後端RRの各々よりも前方に位置する空間であって、外装カバー9に覆われた空間を意味する。
【0037】
バッテリ31の前方には、油圧機器(作動油タンク32、切替バルブ33、油圧ポンプ(図示せず)など)が配置されている。またバッテリ31の前方には、インバータ、電動モータなども配置されている。
【0038】
バッテリ31は、動力源としての電動モータ(図示せず)に電力を供給する。具体的にはバッテリ31は、電気配線を通じてインバータに電力を供給する。インバータは、バッテリ31の出力である直流電力を、周波数などを制御した交流電力に変換する。インバータは、電気配線を通じて電動モータに交流電力を供給する。これにより電動モータは、バッテリ31を電源として、インバータから供給された交流電力により駆動する。
【0039】
電動モータと油圧ポンプとは機械的に連結されている。電動モータの駆動力が油圧ポンプに伝達されることにより油圧ポンプが駆動する。油圧ポンプは、駆動することにより、作動油タンク32から作動油を汲み出す。油圧ポンプは、作動油タンク32から汲み出した作動油を切替バルブ33を通じて各油圧アクチュエータ(走行モータ5M、旋回モータ、各油圧シリンダ10~12)に供給する。
【0040】
切替バルブ33は、多数の制御弁、パイロット弁などの集合体として構成されている。切替バルブ33は、油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間の油路(油圧配管)に配置されている。切替バルブ33は、作動油タンク32から油圧ポンプにより汲み出された作動油を、油圧アクチュエータに給排する。切替バルブ33からの作動油の給排により各油圧アクチュエータが作動する。
【0041】
オペレータの運転操作に応じて切替バルブ33における各弁の開閉が制御される。これにより運転室4に搭乗したオペレータの運転操作に応じて、電動ショベル100の本体1および作業機2を作動させることができる。具体的にはオペレータは、油圧シリンダ10~12を作動させることにより作業機2を操作でき、旋回モータを作動させることにより旋回体3の旋回を操作でき、走行モータ5Mを作動させることにより電動ショベル100の走行を操作できる。
【0042】
図2に示されるように、外装カバー9は左側板9L(第1側板)を有している。左側板9Lには通気口VL(第1通気口)が設けられている。通気口VLは左側板9Lに設けられた貫通孔であり、たとえばネットが取り付けられた矩形の貫通孔である。通気口VLは、たとえばパンチングメタルのように、金属などの素材を打ち抜き加工することにより形成された複数の貫通孔であってもよい。
【0043】
図3に示されるように、外装カバー9は右側板9R(第2側板)を有している。右側板9Rには通気口VR(第2通気口)が設けられている。通気口VRは右側板9Rに設けられた貫通孔である。通気口VRは、たとえばパンチングメタルのように、金属などの素材を打ち抜き加工することにより形成された複数の貫通孔である。
【0044】
図4に示されるように、外装カバー9の左側板9Lと右側板9Rとは、左右方向に互いに対向している。また左側板9Lに設けられた通気口VLと右側板9Rに設けられた通気口VRとは、左右方向に互いに対向している。
【0045】
平面視において左側板9Lと右側板9Rとの間には、バッテリ31と、油圧機器(作動油タンク32、切替バルブ33)と、仕切り部材34と、クーリング装置40と、オイルクーラ41と、ラジエータ42とが配置されている。クーリング装置40、オイルクーラ41およびラジエータ42の各々は、通気口VLと通気口VRとを直線状に繋ぐ領域内に配置されている。またバッテリ31および油圧機器32、33に挟まれる領域が、通気口VLと通気口VRとを直線状に繋ぐ領域内に配置されている。また作動油タンク32および切替バルブ33の各々が、通気口VLと通気口VRとを直線状に繋ぐ領域内に配置されていてもよい。またバッテリ31の一部が、通気口VLと通気口VRとを直線状に繋ぐ領域内に配置されていてもよい。
【0046】
作動油タンク32は、たとえば右デッキDRに配置されている。作動油タンク32は、バッテリ31との間に隙間をあけてバッテリ31の前方に配置されている。切替バルブ33はセンターフレームCFに配置されている。切替バルブ33は、バッテリ31との間に隙間をあけてバッテリ31の前方に配置されている。
【0047】
作動油タンク32および切替バルブ33の各々は、センターフレームCFに設けられた開口部21よりも後方に配置されている。開口部21は、たとえばスイベルジョイント(図示せず)が挿通される貫通穴であり、旋回フレーム20の旋回中心となる。開口部21は、センターフレームCFの底板BPに設けられている。
【0048】
クーリング装置40、オイルクーラ41およびラジエータ42の各々は、たとえば左デッキDLに配置されている。オイルクーラ41およびラジエータ42の各々は、クーリング装置40と左右方向に並んで配置されている。クーリング装置40は、平面視において、バッテリ31および油圧機器32、33に挟まれる領域と左右方向に対向するように配置されている。なおクーリング装置40、オイルクーラ41およびラジエータ42の各々は、たとえば右デッキDRに配置されていてもよい。
【0049】
クーリング装置40は、複数の冷却ファン40aを有している。クーリング装置40は、複数の冷却ファン40aの駆動により、通気口VLと通気口VRとの間で空気を流す。クーリング装置40は、複数の冷却ファン40aの駆動により、たとえば図4中に矢印A1、A2で示すように、通気口VLにおいて機械室の外部から内部へ取り入れた空気を、バッテリ31と油圧機器32、33との間に通した後に、通気口VRにおいて機械室の内部から外部へ排出する。これにより通気口VLにおいて機械室の外部から内部へ取り入れられた空気は、バッテリ31の前面と油圧機器32、33の後面とに挟まれた空間を通過して、通気口VRにおいて機械室の内部から外部へ排出される。
【0050】
またクーリング装置40は、複数の冷却ファン40aの駆動により、たとえば、通気口VRにおいて機械室の外部から内部へ取り入れた空気を、バッテリ31と油圧機器32、33との間に通した後に、通気口VLにおいて機械室の内部から外部へ排出してもよい。この場合、空気を機械室に取り入れる通気口VRが第1通気口となり、空気を機械室から排出する通気口VLが第2通気口となる。また通気口VRが設けられた右側板9Rが第1側板となり、通気口VLが設けられた左側板9Lが第2側板となる。
【0051】
仕切り部材34は、たとえば鋼板よりなる板状部材である。仕切り部材34は、左右方向に延びている。仕切り部材34は、バッテリ31と油圧機器32、33との間に配置されている。具体的には仕切り部材34は、クーリング装置40の付近からバッテリ31および切替バルブ33の間と、バッテリ31および作動油タンク32の間とを通って右側板9Rの付近まで延びている。仕切り部材34は、左デッキDLからセンターフレームCFを横断して右デッキDRまで延びている。
【0052】
仕切り部材34は、第1部分34Fと、第2部分34Sと、第3部分34Tとを有している。第1部分34Fは、第3部分34Tの左側端部(一方端部)に接続され、その左側端部から左右方向に沿って直線状に延びている。第2部分34Sは、第3部分34Tの右側端部(他方端部)に接続され、その右側端部から左右方向に沿って直線状に延びている。第1部分34Fと第2部分34Sとは、平面視においてたとえば互いに平行な方向に延びている。第3部分34Tは、平面視において第1部分34Fおよび第2部分34Sの各々に対して傾斜するように直線状に延びている。
【0053】
第3部分34Tの左側端部は、第3部分34Tの右側端部よりも前方に位置している。第3部分34Tは、左側端部から右側端部へ向かうほど後方に位置するように左右方向に対して傾斜している。
【0054】
平面視においてバッテリ31と仕切り部材34との間には隙間(空間)が設けられている。バッテリ31の前面と仕切り部材34の後面との各々は隙間に面している。バッテリ31の前面と仕切り部材34の後面とは、互いに前後方向に隙間を挟んで対向している。
【0055】
また平面視において仕切り部材34と作動油タンク32との間および仕切り部材34と切替バルブ33との間には隙間が設けられている。作動油タンク32の後面と、切替バルブ33の後面と、仕切り部材34の前面との各々は隙間に面している。作動油タンク32の後面と仕切り部材34の前面とは、互いに前後方向に隙間を挟んで対向している。また切替バルブ33の後面と仕切り部材34の前面とは、互いに前後方向に隙間を挟んで対向している。
【0056】
クーリング装置40は、矢印A1に示すように仕切り部材34に対するバッテリ31側の領域に空気を送る。またクーリング装置40は、矢印A2に示すように仕切り部材34に対する油圧機器32、33側の領域に空気を送る。矢印A1で示す空気は、仕切り部材34の後面とバッテリ31の前面との間の隙間内に流れる。また矢印A2で示す空気は、仕切り部材34の前面と切替バルブ33の後面との間の隙間内と、仕切り部材34の前面と作動油タンク32の後面との間の隙間内との各々に流れる。
【0057】
クーリング装置40は、通気口VLと通気口VRとを直線状に繋ぐ領域内に配置されている。クーリング装置40における冷却ファン40aの回転軸AXは、通気口VLと通気口VRとを直線状に繋ぐ方向(通気口VLから通気口VRへ向かう方向)に延びている。回転軸AXは、たとえば左右方向に沿って延びている。
【0058】
クーリング装置40の少なくとも一部は、障害物を間に挟まずに通気口VRと対向している。これによりクーリング装置40から送出された空気の少なくとも一部が障害物に衝突することなく直線状に流れて通気口VRに達し、通気口VRから排出される。
【0059】
クーリング装置40における前列の冷却ファン40aは、左右方向において切替バルブ33および作動油タンク32の各々と対向するように配置されている。これによりクーリング装置40から送出された空気の一部がクーリング装置40から直線状に流れて油圧機器32、33に直接当たる。
【0060】
クーリング装置40における後列の冷却ファン40aは、左右方向においてバッテリ31と対向するように配置されている。これによりクーリング装置40から送出された空気の一部がクーリング装置40から直線状に流れてバッテリ31に直接当たる。
【0061】
オイルクーラ41は、たとえば油圧アクチュエータ(走行モータ5M、旋回モータ、各油圧シリンダ10~12)の作動に用いられる作動油を冷却するための装置である。オイルクーラ41は、たとえば作動油を通すチューブと、チューブに取り付けたフィンとを有している。
【0062】
ラジエータ42は、たとえばバッテリ31、電動モータ、インバータなどの冷却用の冷却媒体(たとえば冷却水)を冷却するための装置である。ラジエータ42は、たとえば冷却媒体を通すチューブと、チューブに取り付けられたフィンとを有している。
【0063】
オイルクーラ41とラジエータ42とは、互いに前後方向に並んでいる。オイルクーラ41はラジエータ42の前方に位置している。オイルクーラ41は、冷却ファン40aの回転軸AXが延びる方向において油圧機器32、33と対向し、油圧機器32、33と左右方向に並んで配置されている。オイルクーラ41は、たとえばクーリング装置40における前列の冷却ファン40aと左右方向に対向するように配置されている。
【0064】
ラジエータ42は、冷却ファン40aの回転軸AXが延びる方向においてバッテリ31と対向し、バッテリ31と左右方向に並んで配置されている。ラジエータ42は、たとえばクーリング装置40における後列の冷却ファン40aと左右方向に対向するように配置されている。
【0065】
仕切り部材34における左端の前後方向における位置は、たとえば前後方向の2つの冷却ファン40aの間に位置している。これにより前後方向の後列に配置された冷却ファン40aは、仕切り部材34に対するバッテリ31側の領域に空気を送る。また前後方向の前列に配置された冷却ファン40aは、仕切り部材34に対する油圧機器32、33側の領域との各々に空気を送る。
【0066】
図3に示されるように、仕切り部材34の上端は、作動油タンク32の上面および切替バルブ33の上端より上方に位置している。これにより作動油タンク32および切替バルブ33から吹き出た油がバッテリ31に掛かることが効果的に防止される。
【0067】
クーリング装置40における冷却ファン40aの回転軸AXは、平面視において左右方向(前後方向に直交する方向)に延びている。ただし図5に示されるように、冷却ファン40aの回転軸AXは、平面視において左右方向に対して傾斜していてもよい。具体的には、平面視において、回転軸AXは、左右方向の左側から右側へ向かうにつれて前方から後方へ位置するように傾斜していてもよい。また左右方向の一方(たとえば左側)から他方(たとえば右側)へ向かうにつれて後方から前方へ位置するように傾斜していてもよい。回転軸AXの仮想の延長線は、バッテリ31および油圧機器32、33に挟まれる領域に延びる。
【0068】
図6に示されるように、オイルクーラ41とラジエータ42との各々は、クーリング装置40に対して左側板9Lの反対側に配置されていてもよい。つまりクーリング装置40の左右方向の一方側(たとえば左側)には通気口VLが配置されており、クーリング装置40の左右方向の他方側(たとえば右側)にはオイルクーラ41とラジエータ42とが配置されていてもよい。
【0069】
また仕切り部材34は、平面視において図4に示すような傾斜部となる第3部分34Tを有さずに、左側端部から右側端部までの左右方向の全体において一直線状に延びていてもよい。
【0070】
また上記実施形態においては仕切り部材34を設けた構成について説明したが、仕切り部材34は省略されてもよい。この場合、バッテリ31の前面と油圧機器32、33の各々の後面とは隙間を挟んで互いに前後方向に対向する。
【0071】
また機械室内におけるコンポーネントの配置は、図4の配置に限定されるものではなく、たとえば図7に示す変形例のような配置であってもよい。図7に示される変形例の配置では、バッテリ31の前方に、電動モータ35、インバータ36および作動油タンク32が、この順で右デッキDRに配置されている。具体的にはバッテリ31の前方に電動モータ35が配置され、電動モータ35の前方にインバータ36が配置され、インバータ36の前方に作動油タンク32が配置されている。インバータ36の下方には油圧ポンプ(図示せず)が配置されている。
【0072】
このような配置においては、仕切り部材34は少なくともバッテリ31と切替バルブ33との間に配置されていればよい。本変形例においては、仕切り部材34はクーリング装置40の付近からバッテリ31および切替バルブ33の間付近まで左右方向に延びている。本実施形態では、電動モータ35とバッテリ31との間にケーブルがあるため、仕切り部材34は切替バルブ34付近まで延びているが、図4と同様に右側端部まで延びていてもよい。
【0073】
なお上記以外の図7の構成は図4の構成とほぼ同じであるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0074】
<効果>
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0075】
図4に示されるように、中型または大型の電動ショベル100ではバッテリ31が大型化し、外装カバー9内におけるバッテリ31の占有スペースが大きくなる。このため外装カバー9内において、バッテリ31の近くに油圧機器(作動油タンク32、切替バルブ33)が配置される可能性がある。
【0076】
バッテリ31の許容温度が60℃前後と低いのに対し、油圧機器32、33の放熱温度は100℃程度と高い。このためバッテリ31の近くに油圧機器32、33が配置された場合、油圧機器32、33からバッテリ31に熱が伝わることにより、バッテリ31が許容温度以上に加熱され、安定して機能しなくなる。
【0077】
そこで本実施形態においては図4に示されるように、クーリング装置40は、平面視においてバッテリ31および油圧機器32、33に挟まれる領域と左右方向に対向するように配置されている。これにより図4の矢印A1、A2で示されるように、クーリング装置40により、通気口VLから取り入れた空気がバッテリ31と油圧機器32、33との間に通された後に通気口VRから排出される。これにより機械室内において通気口VLから通気口VRまで左右方向に直線状に空気を流すことができ、空気の流れに抵抗が生じにくくなる。このため油圧機器32、33からバッテリ31への熱の伝わりを効果的に遮断できるとともに、油圧機器32、33の熱を効果的に機械室外へ排出することができる。これらにより油圧機器32、33から熱が伝わることによるバッテリ31の加熱を抑制することが可能となる。
【0078】
なお冷却ファン40aの駆動により、通気口VRから取り入れた空気がバッテリ31と油圧機器32、33との間に通された後に通気口VLから排出されてもよい。
【0079】
また本実施形態においては図4に示されるように、仕切り部材34がバッテリ31と油圧機器32、33との間に配置されている。仕切り部材34により油圧機器32、33から吹き出た油がバッテリ31に掛かることが防止され、バッテリ31または重電機器の損傷が防止される。また仕切り部材34により油圧機器32、33からバッテリ31への熱の伝わりを遮断することもできる。
【0080】
また本実施形態においては図4の矢印A1、A2で示されるように、クーリング装置40は、仕切り部材34に対するバッテリ31側の領域と、仕切り部材34に対する油圧機器32、33側の領域との各々に空気を送る。矢印A2で示されるように、仕切り部材34に対する油圧機器32、33側の領域に空気が送られることにより、油圧機器32、33から仕切り部材34への熱の伝わりを抑制することができる。また矢印A1で示されるように、仕切り部材34に対するバッテリ31側の領域に空気が送られることにより仕切り部材34からバッテリ31への熱の伝わりが抑制される。これにより油圧機器32、33から仕切り部材34を介在してバッテリ31へ熱が伝わることが抑制される。
【0081】
また本実施形態においては図4に示されるように、クーリング装置40の少なくとも一部は、冷却ファン40aの回転軸AXが延びる方向において油圧機器32、33と対向する。これによりクーリング装置40から送出された空気が直線状に流れて油圧機器32、33へ向かう。このためクーリング装置40から送出された空気により、油圧機器32、33自体の冷却が可能となる。
【0082】
またクーリング装置40と油圧機器32、33とが回転軸AX方向に対向する領域において、クーリング装置40と油圧機器32、33との間に障害物がなくてもよい。この場合、クーリング装置40から送出された空気が油圧機器32、33に直接当たるため、油圧機器32、33をより効果的に冷却することができる。
【0083】
また本実施形態においては図4に示されるように、クーリング装置40の少なくとも一部は、冷却ファン40aの回転軸AXが延びる方向においてバッテリ31と対向する。これによりクーリング装置40から送出された比較的低温(MAX65℃以下)の空気が直線状に流れてバッテリ31へ向かう。このためクーリング装置40から送出された空気により、バッテリ31自体の冷却が可能となる。
【0084】
またクーリング装置40とバッテリ31とが回転軸AX方向に対向する領域において、クーリング装置40とバッテリ31との間には障害物がなくてもよい。この場合、クーリング装置40から送出された空気がバッテリ31に直接当たるため、バッテリ31をより効果的に冷却することができる。
【0085】
また本実施形態においては図4に示されるように、オイルクーラ41は、冷却ファン40aの回転軸AXが延びる方向において油圧機器32、33と対向し、また油圧機器32、33と左右方向に並んで配置されている。ラジエータ42は、冷却ファン40aの回転軸AXが延びる方向においてバッテリ31と対向し、またバッテリ31と左右方向に並んで配置されている。これによりクーリング装置40によってオイルクーラ41およびラジエータ42の各々も冷却することが可能となる。
【0086】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 本体、2 作業機、3 旋回体、4 運転室、4S 運転席、5 走行体、5Cr 履帯、5M 走行モータ、6 ブーム、7 アーム、8 バケット、9 外装カバー、9L 左側板、9R 右側板、10 ブームシリンダ、11 アームシリンダ、12 バケットシリンダ、13 ブームフートピン、14 ブームトップピン、15 アームトップピン、17 バケットリンク、20 旋回フレーム、21 開口部、31 バッテリ、31F 前端、31R,RL,RR 後端、32 作動油タンク、33 切替バルブ、34 仕切り部材、34T 第3部分、34F 第1部分、34S 第2部分、35 電動モータ、36 インバータ、40 クーリング装置、40a 冷却ファン、41 オイルクーラ、42 ラジエータ、100 電動ショベル、AX 回転軸、BP 底板、CB センタービーム、CF センターフレーム、DL 左デッキ、DR 右デッキ、RX 旋回軸、TH1,TH2 貫通孔、VL,VR 通気口。
図1
図2
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図5
図6
図7