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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020320
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】ケーブル終端接続部
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/064 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
H02G15/064
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125615
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】306013120
【氏名又は名称】昭和電線ケーブルシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 一輝
(72)【発明者】
【氏名】今西 晋
(72)【発明者】
【氏名】阿部 成将
【テーマコード(参考)】
5G375
【Fターム(参考)】
5G375AA02
5G375BA23
5G375CB05
5G375CB10
5G375CB15
5G375CB27
5G375CB36
5G375CB38
5G375DA32
5G375DA33
(57)【要約】
【課題】超高圧の電力ケーブルの気中終端接続部として好適なケーブル終端接続部を提供する。
【解決手段】ケーブル終端接続部は、碍管と、先端側の小径部及び後端側の大径部を有し碍管内に配置される絶縁ユニットと、小径部の外周面に取り付けられる電界緩和部と、碍管の後端側に配置される固定金具と、碍管と絶縁ユニットとの間に封入される絶縁性媒体と、大径部の後端側に接続されるケーブル端末部と、を備える。絶縁ユニットは、軸方向に延在する内部導体と、内部導体の外周面に配置される硬質の絶縁筒と、先端が電界緩和部の導電部と接続されるように絶縁筒の外周面に形成される遮へい部と、を有する。内部導体は、碍管の上部金具を貫通して外部へ突出する導体引出棒に電気的に接続される。遮へい部は、絶縁ユニットの大径部から小径部の中間位置にわたって形成され、大径部は、碍管の後端側の端部から突出している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に笠部が形成されている碍管本体、前記碍管本体の先端側に配置される上部金具、及び前記碍管本体の後端側に配置される下部金具を有する碍管と、
先端側の直胴状に形成された小径部、前記小径部から後端側に向けて拡径する傾斜部及び前記傾斜部の後端側に連設され前記小径部よりも外径の大きい大径部を有し、前記碍管内に配置される絶縁ユニットと、
前記小径部の外周面に取り付けられ、絶縁部と前記絶縁部の後端側に連設される導電部とが一体的に形成された弾性体からなる電界緩和部と、
前記碍管の後端側に配置される固定金具と、
前記碍管と絶縁ユニットとの間に封入される絶縁性媒体と、
前記大径部の後端側に接続されるケーブル端末部と、を備え、
前記絶縁ユニットは、軸方向に延在する内部導体と、前記内部導体の外周面に配置される硬質の絶縁筒と、先端が前記電界緩和部の前記導電部と接続されるように前記絶縁筒の外周面に形成される遮へい部と、を有し、
前記内部導体は、前記上部金具を貫通して前記碍管の内部から外部へ突出する導体引出棒に電気的に接続され、
前記遮へい部は、前記絶縁ユニットの前記大径部から前記小径部の中間位置にわたって形成され、
前記大径部は、前記碍管の後端側の端部から突出している、
ケーブル終端接続部。
【請求項2】
前記ケーブル端末部は、前記大径部の後端側に設けられたケーブル受容部に、プラグイン接続により装着される、
請求項1に記載のケーブル終端接続部。
【請求項3】
前記固定金具と前記大径部との間にシール部材が介在している、
請求項1又は2に記載のケーブル終端接続部。
【請求項4】
前記電界緩和部は、前記碍管本体の後端側の端部から前記導電部の先端位置までの距離が、前記碍管本体の長さの10~27%となる位置に配置されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のケーブル終端接続部。
【請求項5】
前記電界緩和部は、前記碍管本体の後端側の端部から前記導電部の先端位置までの距離が、前記碍管本体の長さの11~18%または20~24%となる位置に配置されている、
請求項4に記載のケーブル終端接続部。
【請求項6】
前記導体引出棒は、前記碍管内に配置される部分の少なくとも一部が、ケーブルで形成されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載のケーブル終端接続部。
【請求項7】
前記固定金具は、前記碍管の内部に前記絶縁性媒体を注入可能な流路を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載のケーブル終端接続部。
【請求項8】
前記流路は、前記碍管の内部への導出口が、前記傾斜部の外周に位置するように設けられている、
請求項7に記載のケーブル終端接続部。
【請求項9】
前記固定金具における前記導出口の周囲には、座ぐりが形成されている、
請求項8に記載のケーブル終端接続部。
【請求項10】
前記絶縁ユニットは、前記傾斜部において、前記大径部から前記小径部に向かって緩やかに細くなるように、R形状に形成されている、
請求項1から9いずれか一項に記載のケーブル終端接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブル終端接続部に関し、特に、超高圧の電力ケーブルの気中終端接続部として好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力ケーブルの終端に設けられるケーブル終端接続部として、碍管により気中絶縁を行う気中終端接続部が知られており(例えば、特許文献1乃至4参照)、構成として主に、プレハブ形、ゴムブロック形、ダイレクトモールド形に分類される。
【0003】
特許文献1に開示のケーブル終端接続部では、碍管内において、碍管の先端側に露出する導体引出棒が電力ケーブルのケーブル導体の端部に圧縮接続されている、また、段剥ぎして露出されたケーブル絶縁体上には、予め工場で製造された電界緩和用のストレスコーン(プレモールド絶縁体とも呼ばれる)が、施工現場で電力ケーブルに装着されることにより、ケーブル外部半導電層の端部近傍における電界緩和が実現されている。ストレスコーンは、碍管内の下方に挿入固定されたエポキシ座に対して圧縮装置により押圧固定されている。このような構造の気中終端接続部は、プレハブ形と呼ばれる。プレハブ形の気中終端接続部では、一般に、碍管内に絶縁油(例えばシリコーンオイル)等の絶縁性媒体が封入される。
【0004】
特許文献2、3に開示のケーブル終端接続部では、碍管内において、碍管の先端側に露出する導体引出棒が電力ケーブルのケーブル導体の端部に圧縮接続されている。また、段剥ぎして露出されたケーブル絶縁体上には、予め工場で製造された常温収縮型のゴムブロックが、施工現場で電力ケーブルに装着されることにより、ケーブル外部半導電層の端部近傍における電界緩和が実現されている。このタイプの気中終端接続部は、上記プレハブ形の気中終端接続部のようなエポキシ座及びストレスコーンを押圧するための圧縮装置を碍管内に設けず、常温収縮型のゴムブロックを碍管内の特定の位置に配置した状態で電界を緩和する構造であることから、ゴムブロック形と呼ばれる。ゴムブロック形の気中終端接続部に使用される碍管は、磁器碍管(特許文献3参照)、ポリマー碍管(複合碍管とも呼ばれる、特許文献2参照)のいずれでもよく、一般に、碍管内には絶縁油(例えば、シリコーンオイル)等の絶縁性媒体が封入される。
【0005】
特許文献4に開示のケーブル終端接続部は、内部導体、絶縁筒及びポリマー被覆体が一体的に形成されており、上記プレハブ形気中終端接続部やゴムブロック形気中終端接続部のように絶縁のための油やガスを一切使用しない。このような完全乾式の固体絶縁構造の気中終端接続部は、ダイレクトモールド形と呼ばれる。特許文献4に記載のダイレクトモールド形の気中終端接続部は、絶縁筒の後端部のケーブル受容部に、導体接続端子等の接続材料が取り付けられたケーブル端末部をプラグイン接続により装着するプラグイン構造を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-261948号公報
【特許文献2】特許第5804948号公報
【特許文献3】特許第4685908号公報
【特許文献4】特開2017-184458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した碍管により気中絶縁を行う気中終端接続部においては、雷インパルス耐電圧などの絶縁性能が確保されるように、絶縁有効長(笠部が形成されている碍管本体の長さ)が設定されている。そのため、超高圧の電力ケーブルに対応する場合、碍管の長大化が必要となる。例えば、275kV級の超高圧ケーブルの場合、3500mm以上の長さの碍管が必要となる。
【0008】
しかしながら、プレハブ形またはゴムブロック形の気中終端接続部の場合、施工現場で、碍管とほぼ同じ長さのケーブル端末処理を行う必要があるため、碍管の長大化に伴い、ケーブル端末処理に要する時間も長くなり、施工時間が長くなる。また、ダイレクトモールド形の気中終端接続部の場合、超高圧に求められる絶縁有効長を満たすため注型品である絶縁筒が長大化し、製造工程で絶縁筒に生じる残留応力が増大し、ヒケ(表面に生じる歪みや凹みなどの成形不良)が生じるなどして、品質が低下する虞がある。このように、従来の気中終端接続部では、超高圧の電力ケーブルへの対応が困難である。
【0009】
本発明の目的は、超高圧の電力ケーブルの気中終端接続部として好適なケーブル終端接続部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るケーブル終端接続部は、
外周面に笠部が形成されている碍管本体、前記碍管本体の先端側に配置される上部金具、及び前記碍管本体の後端側に配置される下部金具を有する碍管と、
先端側の直胴状に形成された小径部、前記小径部から後端側に向けて拡径する傾斜部及び前記傾斜部の後端側に連設され前記小径部よりも外径の大きい大径部を有し、前記碍管内に配置される絶縁ユニットと、
前記小径部の外周面に取り付けられ、絶縁部と前記絶縁部の後端側に連設される導電部とが一体的に形成された弾性体からなる電界緩和部と、
前記碍管の後端側に配置される固定金具と、
前記碍管と絶縁ユニットとの間に封入される絶縁性媒体と、
前記大径部の後端側に接続されるケーブル端末部と、を備え、
前記絶縁ユニットは、軸方向に延在する内部導体と、前記内部導体の外周面に配置される硬質の絶縁筒と、先端が前記電界緩和部の前記導電部と接続されるように前記絶縁筒の外周面に形成される遮へい部と、を有し、
前記内部導体は、前記上部金具を貫通して前記碍管の内部から外部へ突出する導体引出棒に電気的に接続され、
前記遮へい部は、前記絶縁ユニットの前記大径部から前記小径部の中間位置にわたって形成され、
前記大径部は、前記碍管の後端側の端部から突出している。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、超高圧の電力ケーブルの気中終端接続部として好適なケーブル終端接続部が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るケーブル接続部を示す断面図である。
図2図2は、ケーブル受容部周辺の拡大図である。
図3図3は、電界緩和部の位置と雷インパルス耐電圧の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るケーブル終端接続部1を示す断面図である。図2は、ケーブル終端接続部1におけるケーブル受容部24の周辺の拡大図である。
【0015】
図1図2に示すように、ケーブル終端接続部1は、碍管10、絶縁ユニット20、電界緩和部30、固定金具41、端末取付金具42、絶縁性媒体43、導体引出棒44、及びケーブル端末部50等を備える。以下において、導体引出棒44が引き出される側を「先端側」、ケーブル端末部50が装着される側を「後端側」として説明する。
【0016】
碍管10は、外周面に笠部11aが形成されている碍管本体11と、碍管本体11の先端側に配置される上部金具12と、碍管本体11の後端側に配置される下部金具13と、を有する。碍管本体11は、例えば、磁器碍管であってもよいし、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)からなる筒体の外側に、シリコーンゴム等の高分子絶縁材料からなるポリマー被覆体を一体的に形成したポリマー碍管(複合碍管とも呼ばれる)であってもよい。ケーブル終端接続部1に要求される雷インパルス耐電圧を満たすように、碍管本体11の長さ、すなわち、絶縁有効長が設定される。
【0017】
絶縁ユニット20は、軸方向に延在する内部導体21と、内部導体21の外周面に配置される絶縁筒22と、絶縁筒22の外周面に形成される遮へい部23と、を有し、ケーブル終端接続部1の補強絶縁部として機能する。内部導体21及び絶縁筒22は、モールド成型により一体的に形成される。遮へい部23は、例えば、絶縁筒22の外周面に、導電性塗料を塗布することにより形成される。なお、絶縁筒22の外周面に塗布された導電塗料により形成される遮へい部23を、図1では太線、図2では破線で表している。図2では、他の線と重なって見辛くなることを避けるため、説明の便宜上、遮へい部23(導電塗料)を表す破線を、絶縁筒22を表す実線の内側に表示している。
【0018】
絶縁ユニット20は、先端側の直胴状に形成された小径部20Aと、小径部20Aから後端側に向けて拡径する傾斜部20Bと、傾斜部20Bの後端側に連設され直胴状に形成された大径部20Cに区画される。大径部20Cは、小径部20Aよりも外径が大きい。絶縁ユニット20は、小径部20Aが碍管10の内部、大径部20Cが碍管10の外部となるように配置される。本実施の形態では、絶縁ユニット20は、碍管10の後端部に傾斜部20Bの後端側が位置するように配置されている。また、本実施の形態では、小径部20Aの先端側は、先端側に向かって縮径する形状を有している。これにより、後述する円筒状の弾性体にて形成される電界緩和部30を、絶縁ユニット20に挿入しやすくなる。
【0019】
内部導体21は、例えば銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性材料で形成される。絶縁ユニット20の大径部20Cに配置される内部導体21の後端側の内周面は、絶縁筒22から露出しており、ケーブル導体511を電気的に接続するための導体挿入部21aが設けられている。内部導体21の先端側の端部は、絶縁筒22を貫通して、導体引出棒44に接続されている。
【0020】
絶縁筒22は、機械的強度の高い硬質プラスチック樹脂材料(例えば、エポキシ樹脂やFRP)で形成される。絶縁ユニット20の大径部20Cに配置される絶縁筒22の後端側には、ケーブル端末部50を受け入れるコーン状の端末挿入部22aが設けられている。端末挿入部22aは、内部導体21の導体挿入部21aに連通する。導体挿入部21a及び端末挿入部22aにより、ケーブル端末部50が装着されるケーブル受容部24が形成される。
【0021】
本実施の形態では、絶縁ユニット20の大径部20Cの外径(遮へい部23の厚さは1mm未満であるため、実質、大径部20Cに位置する絶縁筒22の後端側の外径)は、碍管10の内径とほぼ同じに設定されているが、碍管10の内径よりも大きくてもよい。ケーブル受容部24が形成される絶縁ユニット20の大径部20Cは、電界設計上、外径が大きい方が有利である。絶縁ユニット20の大径部20Cは、碍管10の外部に配置されるので、碍管10の内径に制限されることなく、電界設計上適切な外径に設計することができる。
【0022】
また、絶縁筒22は、絶縁ユニット20の傾斜部20Bにおいて、大径部20Cから小径部20Aに向かって緩やかに細くなるように、R形状に形成されている。すなわち、絶縁筒22の外形形状は、電界集中を誘発する電気的突起のない形状となっている。これにより、絶縁ユニット20の傾斜部20Bにおいて、絶縁筒22の外周面に遮へい部23を形成した場合でも、内部導体21と遮へい部23との間で電界が集中することなく、絶縁筒22の内部電界を均一にすることができる。
【0023】
遮へい部23は、絶縁筒22の外周面に、絶縁ユニット20の大径部20Cの後端から小径部20Aの中間位置にわたって形成される。中間位置とは小径部20Aの長手方向の途中の位置であれば、特に位置は限定されない。遮へい部23を設けることにより、内部導体21と遮へい部23との間で電界が集中することなく、絶縁筒22の内部電界が均一化され、電気特性の安定化が図られる。
【0024】
電界緩和部30は、先端側の絶縁部31と、後端側の導電部32と、を有する円筒状の弾性体にて形成される。絶縁部31は、後端側が導電部32と同心状に連設され、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)等の絶縁性ゴム材料で円筒状に形成される。導電部32は、先端側の端部に、先端側端部近傍の内周部から先端側に向かって緩やかに拡径するベルマウス状に湾曲した形状を有する。また、導電部32は、例えば、半導電性のEPゴム等の半導電性ゴム材料で円筒状に形成されており、内周部の先端側の部分と、外周部の先端側から後端側近傍にかけての部分とで絶縁部31と連設されている。導電部32の内周部は、絶縁部31と一体化した先端側の部分以外は電界緩和部30の内周面として露出し、絶縁部31の内周面と連通している。絶縁部31と導電部32は、モールド成型により一体的に形成される。図1の実施の形態では、電界緩和部30の外形は、導電部32の後端側が露出した円筒形状であるが、外形形状は特に限定されない。
【0025】
電界緩和部30は、絶縁ユニット20の小径部20Aの外周面に配置される。具体的には、電界緩和部30は、導電部32の内周面と遮へい部23が導通するように重なり、かつ、遮へい部23の先端が導電部32の内周面からはみでないように配置される。電界緩和部30は、遮へい部23の先端における電界集中を抑制し、絶縁筒22にかかる電気的なストレスを緩和する。
【0026】
ここで、軸方向における導電部32の先端位置が変化すると、碍管10の表面に出てくる電界が変化し表面閃絡に影響することになるため、電界緩和部30は、適切な位置に配置される必要がある。本実施の形態では、導電部32の先端位置は、碍管本体11の後端側の端部からの距離が、碍管本体11の絶縁有効長の10~27%となるように設定されている。図3に示すように、導電部32の先端位置に応じて、雷インパルス耐電圧が変化する。具体的には、碍管本体11の後端側の端部から導電部32の先端位置までの距離が、碍管本体11の長さの約21%であるときの雷インパルス耐電圧を基準として、碍管本体11の後端側の端部から導電部32の先端位置までの距離が増減するに伴い、雷インパルス耐電圧は低下する。図3より、碍管本体11の後端側の端部から導電部32の先端位置までの距離が、碍管本体11の絶縁有効長の10~27%である場合に、雷インパルス耐電圧の低下率を10%以下に抑制できることが分かる。また、碍管本体11の後端側の端部から導電部32の先端位置までの距離が、碍管本体11の絶縁有効長の11~18%または20~24%である場合、雷インパルス耐電圧の低下率を5%以下に抑制でき、より好ましいことが分かる。具体的には、碍管本体11の後端側の端部から導電部32の先端位置までの距離が碍管本体11の絶縁有効長の11~18%である場合、雷インパルス耐電圧の低下率を1~5%の間で抑制でき、碍管本体11の絶縁有効長の20~24%である場合、雷インパルス耐電圧の低下率を0~5%の間で抑制できることが分かる。本実施の形態では、碍管本体11の後端側の端部から導電部32の先端位置までの距離が碍管本体11の絶縁有効長の約21%の場合が最も雷インパルス耐電圧性能がよく、最も好ましい。遮へい部23の先端側の位置は、電界緩和部30の導電部32との重なりを維持した状態で前記の範囲において適宜設定される。
【0027】
固定金具41は、絶縁ユニット20の大径部20Cと同等の開口を有するフランジ状の部材である。固定金具41は、碍管10の後端側に配置され、例えば、ボルト止めにより、碍管10の下部金具13と締結される。また、固定金具41の後端側には、支持碍子45が配置され、例えば、ボルト止めにより締結される。
【0028】
端末取付金具42は、絶縁ユニット20の大径部20Cと同等の内径を有する有底円筒状の部材である。端末取付金具42の底部42aには、ケーブル端末部50を挿入するための開口42bが設けられている。端末取付金具42は、固定金具41の後端側に配置され、例えば、ボルト止めにより、固定金具41及び絶縁ユニット20と締結される。
【0029】
固定金具41及び端末取付金具42の内径は、絶縁ユニット20の大径部20Cの外径と略同径に形成され、固定金具41と絶縁ユニット20との間には、Oリング等のシール部材46が配置されている。シール部材46は、軸方向において所定間隔で複数設けられるのが好ましい。これにより、碍管10の内部を気密または液密に保持して絶縁性媒体43が漏出するのを防止できるとともに、碍管10に発生する曲げ応力を緩和することができる。
【0030】
絶縁性媒体43は、碍管10と絶縁ユニット20との間の空間に封入され、ケーブル終端接続部1の主絶縁部として機能する。絶縁性媒体43は、シリコーンオイル等の液状絶縁媒体で形成される。なお、絶縁性媒体43は、碍管10の内部への注入時に流動性を有していればよく、シリコーンゲル又はシリコーンゴム等、注入後に硬化する絶縁材料でもよい。
【0031】
絶縁性媒体43は、例えば、固定金具41に設けられた流路41aを介して、碍管10の内部に注入される。この場合、固定金具41において、流路41aの導出口の周囲には、座ぐり41bを設けることが好ましい。また、流路41aの導出口の近傍における絶縁ユニット20の外径は、碍管10の内径に対して十分細いことが好ましい。これにより、流路41aを介して注入される絶縁性媒体43の流れが阻害されることなく、碍管10の内部に十分な流量で絶縁性媒体43を注入することができる。
【0032】
導体引出棒44の後端側の端部は、絶縁ユニット20の内部導体21に接続され、先端側の端部は、碍管10の上部金具12を貫通して外部に引き出されている。言い換えれば、上部金具12を貫通して碍管10の内部から外部へ突出する導体引出棒44に内部導体21が電気的に接続されている。導体引出棒44は、例えば、適切な導体接続部材を介して、絶縁ユニット20の内部導体21と連結される。また、導体引出棒44の碍管10内に配置される部分は、ケーブルの様な可とう性を有した導体でも良い。この場合、ケーブルの先端側が、上部金具12を貫通して外部に引き出される導体棒の後端側に接続され、碍管10内に配置されるケーブルと導体棒を含む複数の部材で導体引出棒44が形成される。導体引出棒44の碍管10内に配置される部分をケーブルで構成することにより、碍管10に発生する曲げ応力を可とう性のあるケーブルが吸収し、内部の絶縁ユニット20に過剰な応力を生じさせないようにすることができる。また、絶縁被覆を被ったケーブルを適用することで、導体引出棒44の表面に生じる電界を抑制することができる。
【0033】
ここで、「上部金具を貫通して碍管の内部から外部へ突出する導体引出棒に内部導体が電気的に接続されている」とは、導体引出棒44と内部導体21が、本実施の形態のような別部材で形成される場合だけでなく、内部導体を長尺化することで導体引出棒を同一部材で形成する場合を含む。すなわち、内部導体21を長尺に形成して、内部導体21が上部金具12から引き出されるように構成されてもよい。この場合、内部導体21と導体引出棒44とが同一部材で形成されることとなり、内部導体21とは別部材としての導体引出棒44は不要となるが、内部導体が導体引出棒としても機能する。
【0034】
ケーブル端末部50は、電力ケーブル51の先端部に、導体接続端子52、ストレスコーン53、及び圧縮装置54等の接続材料が取り付けられて構成される。
【0035】
電力ケーブル51は、例えば、ゴム又はプラスチックで絶縁された275kV級の超高圧の電力ケーブルである。電力ケーブル51は、中心から順に、ケーブル導体511、ケーブル絶縁体512、ケーブル外部半導電層513、ケーブル遮へい層514及びケーブルシース515等を有する。ケーブル端末部50においては、電力ケーブル51の先端部から所定長で段剥ぎすることにより各層が露出される。
【0036】
ケーブル導体511の先端部には、圧縮により導体接続端子52が接続される。導体接続端子52は、例えば、銅、アルミニウム、銅合金又はアルミニウム合金等からなる通電に適した導電性材料で形成される。ケーブル絶縁体512からケーブル外部半導電層513の先端部にわたる外周面にはストレスコーン53が装着される。
【0037】
ストレスコーン53は、紡錘状に形成され、電界緩和部30と同様に、先端側の絶縁部(符号略)と、後端側の導電部(符号略)と、を有する。絶縁部は、例えば、EPゴム等の絶縁性ゴム材料で筒状に形成され、導電部は、例えば、半導電性のEPゴム等の半導電性ゴム材料で筒状に形成される。絶縁部と導電部は、モールド成型により一体的に形成される。
【0038】
ストレスコーン53の後端部(半導電部)は、電力ケーブル51のケーブル外部半導電層513に接続される。「電力ケーブル51のケーブル外部半導電層513に接続される」とは、ケーブル終端接続部として所定の性能を有する限り、ケーブル外部半導電層513に直接接続される場合、ケーブル外部半導電層513の端部にモールドや導電塗料で再生した外部半導電層の端部を介して接続される場合、いずれの場合も意味する。ストレスコーン53の先端部(絶縁部)は、絶縁ユニット20のケーブル受容部24に対応する形状を有する。ストレスコーン53の後端側には、圧縮装置54及び保護金具55が装着される。
【0039】
圧縮装置54は、ストレスコーン53に当接する押し金具(符号略)と、ストレスコーン53に向けて押し金具を付勢するコイルスプリング(符号略)と、押し金具及びコイルスプリングを支持する押し金具フランジ(符号略)と、を有する。
【0040】
電力ケーブル51の先端部を段剥ぎした後、保護金具55、圧縮装置54、ストレスコーン53が電力ケーブル51に挿通され、ケーブル導体511に導体接続端子52が取り付けられる。そして、ケーブル端末部50の先端部を絶縁ユニット20のケーブル受容部24に挿入し、圧縮装置54のコイルスプリングを圧縮させながら、押し金具フランジを端末取付金具42の底部42aにボルト止めし、保護金具55を押し金具フランジにボルト止めすることにより、ケーブル受容部24にケーブル端末部50が装着される。
ストレスコーン53の先端部は絶縁筒22の内面に押し付けられ、導体接続端子52は内部導体21の導体挿入部21aと電気的に接続される。また、保護金具55の後端部には、防水のための防食層(符号略)が配置される。このように、ケーブル終端接続部1は、プラグイン接続により、比較的簡単な作業で組み立てることができる。
【0041】
このように、ケーブル終端接続部1は、外周面に笠部11aが形成されている碍管本体11、碍管本体11の先端側に配置される上部金具12、及び碍管本体11の後端側に配置される下部金具13を有する碍管10と、先端側の直胴状に形成された小径部20A、小径部20Aから後端側に向けて拡径する傾斜部20B及び傾斜部20Bの後端側に連設され小径部20Aよりも外径の大きい大径部20Cを有し、碍管10内に配置される絶縁ユニット20と、小径部20Aの外周面に取り付けられ、絶縁部31と絶縁部31の後端側に連設される導電部32とが一体的に形成された弾性体からなる電界緩和部30と、碍管10の後端側に配置される固定金具41と、碍管10と絶縁ユニット20との間に封入される絶縁性媒体43と、大径部20Cの後端側に接続されるケーブル端末部50と、を備える。絶縁ユニット20は、軸方向に延在する内部導体21と、内部導体21の外周面に配置される硬質の絶縁筒22と、先端が電界緩和部30の導電部32と接続されるように絶縁筒22の外周面に形成される遮へい部23と、を有する。内部導体21は、上部金具12を貫通して碍管10の内部から外部へ突出する導体引出棒44に電気的に接続される。遮へい部23は、絶縁ユニット20の大径部20Cから小径部20Aの中間位置にわたって形成され、大径部20Cは、碍管10の後端側の端部から突出している。
【0042】
ケーブル終端接続部1によれば、主絶縁部である絶縁性媒体43と、補強絶縁部である絶縁ユニット20により、ケーブル終端における絶縁性能を確保する構成となっており、絶縁ユニット20のサイズを変更することなく碍管10を長大化することができるので、碍管10の長大化に伴い、注型品である絶縁筒22の品質が低下することはない。また、絶縁ユニット20は工場で製造されるため、現地での施工時間を短縮できる。さらに、ケーブル端末部50と絶縁ユニット20との接続位置を碍管10の後端側の端部から突出した位置に設けたので、碍管10を長大化しても電力ケーブル51の端末処理長を長くする必要がない。したがって、ケーブル終端接続部1は、電力ケーブル51の超高圧化に容易に対応することができ、超高圧の電力ケーブル用の気中終端接続部として好適である。
【0043】
また、ケーブル終端接続部1において、ケーブル端末部50は、大径部20Cの後端側に設けられたケーブル受容部24に、プラグイン接続により装着される。
ケーブル端末部50をプラグイン接続により絶縁ユニット20に接続する構造とすることで、工場で碍管10内部に絶縁性媒体43を予め注入することができ、現地では絶縁性媒体43の量を所定量に調整するだけで済むため、現地で絶縁性媒体43を一から注入する必要がなく、現地での施工時間を大幅に短縮できる。
【0044】
また、ケーブル終端接続部1において、電界緩和部30は、碍管本体11の後端側の端部から導電部32の先端位置までの距離が、碍管本体11の長さ(絶縁有効長)の10~27%となる位置に配置されている。好ましくは、電界緩和部30は、碍管本体11の後端側の端部から導電部32の先端位置までの距離が、碍管本体11の長さの11~18%又は20~24%となる位置に配置される。
これにより、ケーブル終端接続部1に要求される雷インパルス耐電圧を満たすように碍管10の長さが設計された場合に、電界緩和部30の導電部32の先端位置によって雷インパルス耐電圧特性が著しく低下するのを抑制でき、所期の絶縁性能を確保することができる。
【0045】
また、ケーブル終端接続部1において、固定金具41と大径部20Cとの間にシール部材46が介在している。具体的には、シール部材46は、軸方向に沿って複数配置されている。
これにより、碍管10の内部を気密または液密に保持して絶縁性媒体43が漏出するのを防止できるとともに、碍管10に発生する曲げ応力を吸収することができる。
【0046】
また、ケーブル終端接続部1において、導体引出棒44は、碍管10内に配置される部分の少なくとも一部が、ケーブルで形成されている。
これにより、碍管10に発生する曲げ応力を可とう性のあるケーブルが吸収し、内部の絶縁ユニット20に過剰な応力を生じさせないようにすることができる。また、絶縁被覆を被ったケーブルを適用することで、導体引出棒44の表面に生じる電界を抑制することができる。
【0047】
また、ケーブル終端接続部1において、固定金具41は、碍管10の内部に絶縁性媒体43を注入可能な流路41aを有する。具体的には、流路41aは、碍管10の内部に連通する導出口が、絶縁ユニット20の傾斜部20Bに対応する位置に設けられており、実施の形態では、傾斜部20Bの後端側の近傍、言い換えれば、小径部20Aに向かって大径部20Cからの遷移部分の近傍に位置するように設けられている。
これにより、碍管10内に流路41aを介して絶縁性媒体43を注入することができるとともに、絶縁性媒体43を工場で予め注入しておき、施工現場で適量を抜いて所定量に設定することもできる。この流路41aを固定金具41に設けない場合は、碍管10の上部から絶縁性媒体43を注入することから、施工現場の高所作業における足場確保のための部材が必要になり、施工性、安全性の点で問題が生じる。固定金具41に流路41aを設けたことにより、施工現場では簡単にかつ安全にケーブル終端接続部1を据え付けた状態で絶縁性媒体43を適量に設定することができる。
【0048】
また、ケーブル終端接続部1において、固定金具41における導出口の周囲には、座ぐり41bが形成されている。
これにより、流路41aを介して注入される絶縁性媒体43の流れが阻害されることなく、碍管10の内部に十分な流量で絶縁性媒体43を注入することができる。
【0049】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0050】
例えば、本実施の形態では、絶縁性媒体43は、液状絶縁媒体で形成される場合について説明したが、絶縁ガスで形成されてもよい。この場合も上記と同様の効果が得られる。
また、本実施の形態では、ケーブル端末部をストレスコーン及び圧縮装置等を有するインナーコーンタイプでプラグイン接続する場合について説明したが、ケーブル端末部と絶縁ユニットをゴムブロックで接続するアウターコーンタイプで接続してもよい。この場合、絶縁ユニット20の固定金具41に対応する位置には、本実施の形態と同様、大径部20Cが形成されるが、絶縁筒の後端側にはゴムブロックが接続される。そのため、絶縁筒の後端部は、インナーコーンタイプのようなケーブル受容口ではなく、絶縁筒が突出する形状となり内部導体が絶縁筒後端部から突出する構造となる。
【0051】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 ケーブル終端接続部
10 碍管
11 碍管本体
12 上部金具
13 下部金具
20 絶縁ユニット
20A 小径部
20B 傾斜部
20C 大径部
21 内部導体
22 絶縁筒
23 遮へい部
24 ケーブル受容部
30 電界緩和部
31 絶縁部
32 導電部
41 固定金具
42 端末取付金具
43 絶縁性媒体
44 導体引出棒
50 ケーブル端末部
図1
図2
図3