(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020444
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】二酸化塩素を発生する含水タブレット、二酸化塩素発生具およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
C01B 11/02 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
C01B11/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125812
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】519106378
【氏名又は名称】京都ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今井 堯一
(57)【要約】
【課題】 二酸化塩素と水分を同時に放出する二酸化塩素発生組成物およびそれを用いた一液型且つコンパクトな二酸化塩素発生具であって、使用開始時の塩素臭が少なく、且つ二酸化塩素をより多く発生することができ、二酸化塩素の発生する期間をさらに長くした二酸化塩素発生具を提供する。
【解決手段】二酸化塩素を発生する含水タブレットであって、前記含水タブレットは、亜塩素酸塩(A)、吸水性樹脂(B)、親水性結合剤(C)を含み、
前記含水タブレット中の水分の含有量が、全体の重量に対して、3重量%以上20重量%以下であり、水分を放出しながら二酸化塩素を発生することを特徴とする含水タブレットである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化塩素を発生する含水タブレットであって、
前記含水タブレットは、亜塩素酸塩(A)、吸水性樹脂(B)、親水性結合剤(C)を含み、
前記含水タブレット中の水分の含有量が、全体の重量に対して、3重量%以上20重量%以下であり、
水分を放出しながら二酸化塩素を発生することを特徴とする含水タブレット。
【請求項2】
前記親水性結合剤(C)が、親水性有機バインダー(C1)および/または親水性無機鉱物粉体(C2)であることを特徴とする請求項1記載の二酸化塩素を発生する含水タブレット。
【請求項3】
前記親水性有機バインダー(C1)がポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体であって、その含有量が全体の重量に対して5重量%ないし45重量%であることを特徴とする請求項2記載の二酸化塩素を発生する含水タブレット。
【請求項4】
前記無機鉱物粉体(C2)がベントナイト、ゼオライト、セピオライト、珪藻土およびシラスバルーンから選ばれる1種または2種以上であり、その含有量が全体の重量に対して20重量%ないし70重量%であることを特徴とする請求項2記載の二酸化塩素の発生する含水タブレット。
【請求項5】
請求項1ないし4記載の含水タブレットを入れた気密性容器から形成される二酸化塩素発生具であって、前記気密性容器には二酸化塩素と水分が放出される穴が開いており、未使用時は塞がれて気密性が保持されることを特徴とする二酸化塩素発生具。
【請求項6】
請求項5記載の二酸化塩素発生具における気密性容器の穴を開口して二酸化塩素と水分を放出することを特徴とする二酸化塩素発生具の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化塩素と水分を発生する含水タブレット、二酸化塩素発生具およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化塩素は塩素に代わる抗菌剤として注目されている。二酸化塩素は人体に安全な気体であると言われているが、米国労働安全衛生局(U.S. OSHA)は、労働安全衛生の観点から二酸化塩素の吸入暴露について、許容暴露濃度を8時間加重平均値(PEL-TWA)で0.1ppmの基準を設定している。二酸化塩素発生具としては、上記基準の範囲内での発生量が望ましい。しかし、市中には二酸化塩素の発生量が上記基準を大幅に上回る製品が多く出回っている。上記基準の範囲内での発生量で除菌効果の高い製品が望ましい。
【0003】
一方、二酸化塩素のインフルエンザウイルスに対する効果は高湿度程効果があることが報告されている(たとえば、非特許文献1)。二酸化塩素が水分と同時に出ると二酸化塩素の周辺に水分がより多く存在するので、単に環境中に二酸化塩素が単独で存在する場合よりもより多く水分の影響を受け、その結果、より少ない発生量でも除菌効果を奏すると推定される。
このようなものとして、本出願人は、二酸化塩素を発生する水を含んだ吸水性樹脂の粒子を封入した袋入り抗菌剤(特許文献1)、および亜塩素酸塩を含んだ含水ゲルを収納した二酸化塩素発生具(特許文献2)を提案している。これらは、一液型且つコンパクトになるものであって、二酸化塩素と水を同時に放出する使用開始時の塩素臭が少なく、且つ安定的に二酸化塩素を放出する二酸化塩素発生具として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6748431号
【特許文献2】特許第6385577号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】環境感染誌 Vol.32 No.5.2017「低濃度二酸化塩素による空中浮遊インフルエンザウイルスの制御」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの技術を用いて製造した製品の、安定して二酸化塩素を発生する期間は1ケ月程度であるが、発生する期間をさらに長くして欲しいという要望がある。
【0007】
また、上記のような一液型の二酸化塩素発生組成物においては、二酸化塩素の反応性が大きく微量でも二酸化塩素が発生すると保存中に容器を腐食させる問題があるので、密閉状態ではできるだけ反応を抑制しなければならない。しかし、反応を完全に抑制することは非常に難しく、時には蓋が腐食するという問題があった。逆に反応を抑制しすぎると蓋を開けて使用するときに二酸化塩素の発生量が少ないということから消臭性が落ちるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、二酸化塩素と水分を同時に放出する二酸化塩素発生組成物およびそれを用いた一液型且つコンパクトな二酸化塩素発生具であって、使用開始時の塩素臭が少なく、且つ二酸化塩素をより多く発生することができ、二酸化塩素の発生する期間をさらに長くした二酸化塩素発生具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、鋭意検討した結果、亜塩素酸塩と水を含んだタブレットにすれば上記目的を達成できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、二酸化塩素を発生する含水タブレットであって、
前記含水タブレットは、亜塩素酸塩(A)、吸水性樹脂(B)、親水性有機バインダー(C)、無機鉱物(D)を含み、
前記含水タブレット中の水分の含有量が、全体の重量に対して3重量%ないし20重量%であり、
水分を放出しながら二酸化塩素を発生することを特徴とする含水タブレットである。
【0010】
さらに本発明は、上記親水性結合剤(C)が、親水性有機バインダー(C1)および/または親水性無機鉱物粉体(C2)であることを特徴とする。
【0011】
さらに本発明は、上記親水性有機バインダー(C1)がポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体であって、その含有量が全体の重量に対して5重量%ないし45重量%であることを特徴とする
【0012】
さらに本発明は、上記無機鉱物粉体(C2)がベントナイト、ゼオライト、セピオライト、珪藻土およびシラスバルーンから選ばれる1種または2種以上であり、その含有量が全体の重量に対して20重量%ないし70重量%であることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、上記含水タブレットを入れた気密性容器から形成される二酸化塩素発生具であって、前記気密性容器には二酸化塩素と水分が放出される穴が開いており、未使用時は塞がれて気密性が保持されることを特徴とする二酸化塩素発生具である。
【0014】
また本発明は、上記二酸化塩素発生具における気密性容器の穴を開口して二酸化塩素と水分を放出することを特徴とする二酸化塩素発生具の使用方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、二酸化塩素と水分を同時に放出する二酸化塩素発生組成物およびそれを用いた一液型且つコンパクトな二酸化塩素発生具であって、使用開始時の塩素臭が少なく、且つ二酸化塩素をより多く発生することができ、二酸化塩素の発生する期間をさらに長くした二酸化塩素発生具を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態につき、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0017】
本発明における亜塩素酸塩としては、酸と反応して二酸化塩素を生成するものであれば特に制限はないが、たとえば、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、亜塩素酸リチウムなどの亜塩素酸アルカリ金属塩、または亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸マグネシウム、亜塩素酸バリウムなどの亜塩素酸アルカリ土類金属塩などが挙げられる。これらの中で、亜塩素酸ナトリウムが入手しやすく使用上も問題がなく好ましい。
【0018】
亜塩素酸塩は水に溶解してアルカリ性を示し、pHが8.5以上であれば化学的にも安定であり、密封容器内に保存することにより、0.5年~1年程度の保存が可能である。しかし、亜塩素酸塩水溶液が酸性になると二酸化塩素を発生する。そのため固形物中でも水溶液にしたときにpHが8.5以上を示すアルカリ性でなければならない。また、二酸化塩素をアルカリ性水溶液に溶存させて安定化した水溶液である安定化二酸化塩素水溶液は、水溶液中で亜塩素酸塩と平衡関係にあり、安定化二酸化塩素水溶液も本発明における亜塩素酸塩として用いることができる。
【0019】
亜塩素酸塩の量は、含水タブレットの重量に対して、好ましくは0.1重量%以上25重量%以下である。より好ましくは0.2重量%以上15重量%以下である。0.1重量%以上であると含水タブレットは二酸化塩素を安定的に発生することができる。25重量%以下であると含水タブレットの二酸化塩素の発生量を制御することができる。
【0020】
本発明における吸水性樹脂(B)としては、天然系でも合成系でも特に限定はなく、吸水膨潤して全体をゲル化するものであればよい。たとえば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体の中和物、デンプン-アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物、イソブチレン-無水マレイン酸共重合架橋体、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、アクリル酸塩-アクリルアミド共重合架橋体、ポリビニルアルコール架橋体、変性ポリエチレンオキサイド架橋体、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸塩共重合架橋体、(メタ)アクリロイルアルカンスルホン酸塩共重合架橋体、架橋カルボキシメチルセルロース塩、カチオン性モノマーの架橋重合体などが挙げられる。これらのうち、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、およびデンプン-アクリル酸グラフト重合体の中和物が、吸水特性、安全性や経済性などが特に良好であるため好ましい。
【0021】
上記の吸水性樹脂は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。上記吸水性樹脂は粒子状であり、所定形状に造粒されていてもよく、また、不定形破砕状、球状、鱗片状、繊維状、棒状、塊状、粉末状など、形状には限定はない。
【0022】
粒子の平均粒子径について特に限定はないが、好ましくは30~850μmであり、より好ましくは60~400μmである。
吸水倍率は20~1,000g/gが好ましく、80~600g/gがより好ましい。
【0023】
吸水性樹脂の量は、タブレットの重量に対して0.4重量%以上5重量%以下である。好ましくは1.0重量%以上4重量%以下である。0.4重量%以上であると水の放出性が十分となり、5重量%以下であると含水タブレットの形状が崩れにくくなる。
【0024】
本発明における親水性結合剤(C)は、親水性有機バインダー(C1)および/または親水性無機鉱物粉体(C2)である。好ましくは親水性有機バインダー(C1)および親水性無機鉱物粉体(C2)である。
【0025】
親水性有機バインダー(C1)としては、ポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体(たとえば、そのメチル、エチルなどのアルキルカルボン酸エステル、そのメチル、エチルなどのアルキルエーテルなど)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デキストラン、プルラン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ポリアクリル酸ソーダ(SPA)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ポリエチレンオキシド(PEO)などが挙げられる。これらの中でポリエチレングリコールおよび/またはその誘導体が好ましい。
ポリエチレングリコールは分子量300ないし2万程度までのものが使用できるが、好ましくは分子量1000ないし1万程度までのものである。
【0026】
親水性有機バインダー(C1)の量としては、含水タブレットの重量に対して、5重量%以上50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは10重量%以上45重量%以下である。5重量%以上であると含水タブレットの形状が崩れにくくなり、50重量%以下であるとバインダーが遊離しにくくなる。
親水性有機バインダー(C1)の形状は粉体が好ましい。粉体であると、混合したときに含水タブレットとしやすく、含水タブレットを空気中に放置したときの含水タブレットの形状安定性を維持することができる。
【0027】
無機鉱物粉体(C2)としては、たとえば、ベントナイト、カオリン鉱物(カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロサイト等)、蛇紋石(クリソタイル、リザータイト、アンチコライト、アメサイト等)、モンモリロナイト鉱物(ナトリウムモンモリロナイト、カルシウムモンモリロナイト、マグネシウムモンモリロナイト等)、スメクタイト(サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、ハイデライト等)、パイロフィライト、タルク、蝋石、雲母(白雲母、フェンジャイト、セリサイト、イライト等)、シリカ(クリストバライト、クォーツ等)、複鎖型粘土鉱物(パリゴルスカイト、セピオライト等)、石膏等の硫酸塩鉱物、ドロマイト、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、ギプサム、ゼオライト、沸石、凝灰石、バーミキュライト、ラポナイト、軽石、珪藻土、シラスバルーンなどが挙げられる。また、アルミナバルーン、ガラスバルーン、シリカバルーン、シラスバルーン、フライアッシュバルーン(FAバルーン)、ムライトバルーンなどの中空構造粒子の無機材料も好ましく使用できる。
これらの中で、発生する二酸化塩素を含水タブレット中に多く保持できる観点から、ベントナイト、ゼオライト、セピオライト、珪藻土およびシラスバルーンから選ばれる1種または2種以上であるのが好ましい。
【0028】
無機鉱物粉体(C2)の量としては、含水タブレットの量に対して、15重量%以上70重量%以下が好ましく、さらに好ましくは20重量%以上35重量%以下である。15重量%以上であると含水しても含水タブレットの形状を保持できる。70重量%以下であると無機鉱物粉体(C2)の粉体が遊離しにくい。
無機鉱物の形状は粉体が好ましい。粉体であると、混合したときに含水タブレットとしやすく、固形物を空気中に放置したときの含水タブレットの形状安定性を維持することができる。
【0029】
無機鉱物粉体の平均粒径(体積粒径)は、通常1~100μm、好ましくは5~50μmである。かかる平均粒径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(HORIBA LA-300、堀場製作所社製)により測定することができる。
【0030】
また、無機鉱物粉体と親水性有機バインダーはそれぞれ単独で用いてもよいが、数種類組み合わせることで含水タブレットの形状安定性を制御しやすくなる。
【0031】
含水タブレット中の水分の含有量は、含水タブレット全体の重量に対して3重量%以上20重量%以下であり、好ましくは5重量%以上15重量%以下である。水分の含有量が3重量%未満であると二酸化塩素の発生量が長期間継続しない。20重量%を超えると賦形性が悪くなり含水タブレットが崩れやすく、形状安定性が不良となる。
【0032】
二酸化塩素のインフルエンザウイルスに対する効果は高湿度程効果があることが知られている。二酸化塩素が水分と同時に出ると二酸化塩素の周辺に水分がより多く存在するので、単に環境中に二酸化塩素が単独で存在する場合よりもより多く水分の影響を受け、その結果、より少ない発生量でも除菌効果を奏すると推定される。
【0033】
含水タブレットは、各成分を混合して成形する。含水タブレットの成型の方法としては、特に限定はないが、たとえば、金型法、圧縮成形法などの1個ずつ成形する方法や、この方法で最初に大型の固形物を作製しておいて、それをカットして所望の形状の含水タブレットに作成してもよい、好ましいのは圧縮成形法である。
【0034】
すなわち、好ましくは、含水タブレットは、上記材料を混合して加熱してまたは加熱しないで、分散させた造粒物を打錠成型等により圧縮成形して得られる。
【0035】
圧縮成形する際の圧力は、得られる含水タブレットに好適な機械的強度を付与するために、5kgf/cm2 以上とすることが好ましく、また二酸化塩素の発生を良好とするために、100kgf/cm2 以下、好ましくは80kgf/cm2 以下とすることが好ましい。かかる圧力を調整することにより含水タブレットの形状保持性を調整することができる。
【0036】
上記タブレット法では基本的に臼と杵とに組み合わせた圧縮装置から構成される打錠機が使用される。圧縮装置を介して、臼の中で上杵と下杵との間に圧力を加えると、臼と杵とで形成される形状の含水タブレットが形成される。このような打錠機としては、一般に知られた一錠ずつ打錠する単発式の打錠機を用いることもできるし、複数の金型を回転する円盤に沿って備えた生産効率の高いロータリー式打錠機を用いることもできる。
【0037】
上記材料の他に、さらに通常使用される成分、たとえば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、顔料などを配合してもよい。
【0038】
前記したように、含水タブレットの形は特に制限されず、たとえば、円柱形状、楕円柱形状、円盤状、ドーナツ状、球状、台形状、円錐状などが挙げられる。大きさも特に限定はないが、たとえば、円柱形状、台形状の含水タブレットの場合は、直径が通常20ないし50mm、好ましくは25ないし35mmであり、高さまたは厚さが、通常5ないし50mm、好ましくは5ないし15mmである。
【0039】
上記のように製造される含水タブレットの長期間二酸化塩素が発生し続ける理由は明確ではないが、以下の様に推定される。
含水タブレットは、圧縮されているので固体で密になっており、元々二酸化塩素が発生しにくい状態となっている。すなわち、内部で発生する二酸化塩素が含水タブレットから抜け出にくいし、抜け出ないと内部に空間ができないので次の二酸化塩素が発生することができない。また、圧縮され固体で密になっているので内部で発生する二酸化塩素が外部に出るのが遅くなる。そのためゆっくりと長期間二酸化塩素を発生させることができる。さらに、内部から水分も出ていくので、二酸化塩素の抜け出る通路も形成でき、水分と共に二酸化塩素が長期間発生し続けることができると推察される。
【0040】
本発明の含水タブレットは、従来の二酸化塩素発生具より、内部の二酸化塩素が出て行くのが遅い。従来の二酸化塩素発生具、たとえば、二酸化塩素を発生する水を含んだ吸水性樹脂の粒子を封入した袋入り抗菌剤の場合は、亜塩素酸塩を含んでいるのが粒子状であるので、表面積が大きく二酸化塩素の発生速度は速い。亜塩素酸塩を含んだ含水ゲルを収納した二酸化塩素発生具の場合は、ゲルであるのでゲル表面から二酸化塩素が発生するが、吸水性樹脂のゲルはゲル粒子の集合体であり、ゲル粒子の間には隙間があり、その隙間から比較的早く表面に出る。
【0041】
これに対して、本発明の含水タブレットは、上記の従来の二酸化塩素発生具より内部の二酸化塩素が出にくいので少しずつ出てより長期間発生することができる。そして二酸化塩素の発生量は亜塩素酸塩の含有量にも大きく影響を受けるので、含水タブレット中の亜塩素酸塩の含有量を調整して二酸化塩素の発生量を増やすことができる。
【0042】
本発明の含水タブレットは、気密性容器に入れ使用時に開封して二酸化塩素発生具として使用することができる。気密性容器としては気密になる容器であって、含水タブレットを長期に保存できる容器であれば特に限定はないが、好ましいのは気密性容器に小さい穴が開けてあり、使用しないときは閉じることができ、使用時に開口して、二酸化塩素と水分を放出できるような穴が設けられている二酸化塩素発生具である。
【0043】
容器はガス遮断性が必要である。容器を形成する材質は、プラスチック、アルミニウム基材およびこれらの積層体から選択される素材であり、プラスチックとしてはポリエステル、ポリプロピレンなどが好ましく、アルミニウム基材としては、アルミニウムフィルム、アルミニウム蒸着材料などが挙げられる。
【0044】
二酸化塩素発生具は、人が携帯して使用する場合は、コンパクトな容器にタブレットを入れるのが好ましい。含水タブレットの大きさに合わせて容器の大きさを決めるか、容器の大きさに合わせて含水タブレットの大きさを決めてもよい。容器中に含水タブレットを入れた場合に含水タブレットの容量が容器の容量の半分以上を占めるのが好ましい。たとえば、径が20mmないし50mmで厚さ8mmないし30mmの円筒状の含水タブレットを、内径が30mmないし50mmで内部の厚さ10mmないし40mmのクリームケースにいれる。クリームケースには0.5mmないし5mmの穴を1個ないし10個開けてある。未使用時には穴をポリテープで被覆しておき、使用時にテープを剥がす。テープを剥がすと徐々に二酸化塩素と水が穴から放出される。穴の大きさ、数によっても二酸化塩素の発生量を細かく調整することも可能となる。
【0045】
二酸化塩素発生具は、従来のコンパクトな用途に適用できるが、人が携帯して使用するのが好ましい。人の胸付近に付着させるか、首賭けタイプの二酸化塩素発生具の替わりに使用することもできる。
【0046】
そして、上記の二酸化塩素発生具の使用方法は、使用時に気密性容器の穴を開口して二酸化塩素と水分を放出する。気密性容器の穴を開口するまでは、気密性容器中の空間は小さいので二酸化塩素の量は少なく、容器が二酸化塩素により劣化することが殆どない。使用しないときは穴をテープなどで被覆すると一時的に二酸化塩素の発生を止めることができる。
【0047】
本発明の二酸化塩素発生具は、一液型且つコンパクトであって、二酸化塩素と水分が放出されるが、従来よりも長期間安定して二酸化塩素を発生させることができる。開封直後の塩素臭の発生も少なく、二酸化塩素発生量を多くすることができるのでタバコの消臭性も良好とすることができる。
【0048】
以下実施例にて説明するがこれに限定されない。
(実施例1)
「シルブライト25FD」(日本カーリット社製、安定化二酸化塩素、25万ppm)8重量部、
「サンフレッシュST-500D」(三洋化成工業社製、ポリアクリル酸架橋物系吸水性樹脂)1.6重量部、
「PEG-4000S」(三洋化成工業社製、ポリエチレングリコール)32重量部、
「スーパークレイ」(ホージュン社製、ベントナイト)30.4重量部、
「マールライトM-60H 」(丸中白土社製、シラスバルーン)24重量部、水4重量部をステンレスビーカーに投入し、スパイラル羽根で攪拌混合した後(このときのpHは6.5)、8.7重量部を円筒形金型に移しプレス圧50kgf/cm2で 30秒間圧縮して、含水タブレットA 約8重量部(形状は円柱形、高さ10mm、径30mm)を得た。「シルブライト25FD」中の75重量は水であり、含水タブレット中の水分は約10重量%であった。
【0049】
(実施例2ないし4、比較例1、2)
表1記載の成分を用いて実施例1と同様にして、実施例2ないし4、比較例1、2の含水タブレットBないしFを得た。表1に含水タブレットの水分含有量(%)と賦形性を記載した。
含水タブレットの賦形性は手で押さえて形状が崩れなければ良とした。形状が崩れた場合を不良とした。
【0050】
(使用原料)
シルブライト25FD:日本カーリット社製、安定化二酸化塩素、25万ppm(亜塩素酸ナトリウム 25重量%)
シルブライト 80:日本カーリット社製、安定化二酸化塩素、80万ppm
(亜塩素酸ナトリウム 80重量%)
サンフレッシュST―500D:三洋化成工業社製、ポリアクリル酸架橋物系吸水性樹脂
PEG4000S:三洋化成工業社製、ポリエチレングリコール
PEG300:三洋化成工業社製、ポリエチレングリコール
スーパークレイ:ホージュン社製、ベントナイト
マールライトM60H :丸中白土社製、シラスバルーン
ゼオライトM60P:新東北化学工業社製、ゼオライト
KOH:試薬、水酸化カリウム
【0051】
【0052】
(実施例5)
実施例1の含水タブレットAを、内径が33mmで内部の厚さ22mmのクリームケースにいれた。クリームケースには径2mmの円形の穴を5個開けてある。この穴をポリテープで被覆して本発明の二酸化塩素発生具aを作成した。
【0053】
(試験1)
二酸化塩素発生具aのテープを剥がして、二酸化塩素発生量(ppm)と重量を測定した。重量測定から水分が放出された量を求めた。その結果を表2に示した。
【0054】
【0055】
本発明の含水タブレットは、水分と共に二酸化塩素を保移出し、2ケ月後でも二酸化塩素を発生することができることを確認した。
【0056】
(実施例6ないし8、比較例3、4)
含水タブレットAに替えて含水タブレットBないしFを用いる以外は実施例5と同様にして、二酸化塩素発生具bないしd(実施例6ないし8)、および二酸化塩素発生具e、f(比較例3、4)を作成した。
【0057】
(試験2)
二酸化塩素発生具aないしd、および比較の二酸化塩素発生具eないしfについて、二酸化塩素発生量、タバコの消臭、容器の穴を開封したときの塩素臭を評価した。その結果を表3に示した。
【0058】
【0059】
(評価方法)
1.二酸化塩素発生量の測定法
二酸化塩素発生具のポリテープを剥がして10Lの気体補修用バッグに入れておき、30分後にバッグを上下に振って中の気体を均一にした後、検知管でバッグの中の二酸化塩素放出濃度(ppm)を測定した。検知管としては、二酸化塩素測定検知管No.116(光明化学工業社製)を用いた。以下同様である。
【0060】
2.タバコの消臭性
タバコの煙を15秒間封入した15Lポリ容器に、二酸化塩素発生具のポリテープを剥がして入れ、密閉して1日後にタバコ臭の有無を5人で評価した。
無・・・タバコ臭がない
有・・・タバコ臭がある
【0061】
3.塩素臭および塩素発生量
二酸化塩素発生具のポリテープを剥がして5分後に、4Lポリ容器に入れてポリ容器の蓋をした。10分静置後、容器内の塩素臭を鼻で嗅いで塩素臭の程度を5人で判定した。
塩素臭:小 塩素臭がないか、あるが気にならない程度
中 塩素臭がややある、塩素臭が気になる程度
大 塩素臭が大
【0062】
表2、3から、本発明の含水タブレットは、初期の塩素臭が少なく、水分と共に二酸化塩素を発生し、2ケ月間安定して放出することを確認した。