(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020462
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20230202BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20230202BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230202BHJP
A61K 8/85 20060101ALI20230202BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230202BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/31
A61K8/73
A61K8/85
A61K8/36
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125847
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横木 亜矢子
(72)【発明者】
【氏名】松井 和弘
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AB432
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC231
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC392
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC482
4C083AD051
4C083AD052
4C083AD281
4C083AD282
4C083AD351
4C083AD352
4C083BB01
4C083BB36
4C083BB49
4C083CC02
4C083DD08
4C083EE06
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】高配合された液化ガスとの乳化が容易であり、さらには、エアゾール組成物をパチパチと破泡音が生じるフォームを形成するものとした場合は、吐出した際により大きな破泡音の得られるエアゾール組成物を提供する。
【解決手段】水性原液と液化ガスとが乳化しているエアゾール組成物であり、水性原液は、水溶性高分子と、界面活性剤と、有機酸またはその塩のうち少なくともいずれか一方とを含み、水性原液と液化ガスとの配合比は、60/40~15/85(質量比)である、エアゾール組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性原液と液化ガスとが乳化しているエアゾール組成物であり、
前記水性原液は、水溶性高分子と、界面活性剤と、有機酸またはその塩のうち少なくともいずれか一方とを含み、
前記水性原液と前記液化ガスとの配合比は、60/40~15/85(質量比)である、エアゾール組成物。
【請求項2】
前記水性原液は、有機酸およびその塩を含む、請求項1記載のエアゾール組成物。
【請求項3】
前記有機酸またはその塩の含有量は、水性原液中0.005~0.5質量%である、請求項1または2記載のエアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール組成物に関する。より詳細には、本発明は、高配合された液化ガスとの乳化が容易であるエアゾール組成物に関し、エアゾール組成物をパチパチと破泡音が生じるフォームを形成するものとした場合は、吐出した際に大きな破泡音の得られるエアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吐出した際にパチパチという破泡音が生じ、弾ける泡による心地よい感触の得られるエアゾール組成物が開発されている(たとえば、特許文献1)。一方、水性原液と液化ガスとが乳化したエアゾール組成物が開発されている(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-173613号公報
【特許文献2】特開2020-40938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明は、特定のIOB値を有する油性基材を添加することによって、吐出した際に大きな破泡音が得られる。しかしながら、特許文献1に記載の発明は、製造工程において、原液と液化ガスとを乳化させにくく、製造に多くの時間を要する。これに対し、特許文献2に記載の発明は、セルロースナノファイバーを配合することにより、原液と液化ガスとを乳化させやすくしている。しかしながら、特許文献2に記載の発明は、吐出した際の破泡音が小さく、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、高配合された液化ガスとの乳化が容易であり、さらには、エアゾール組成物をパチパチと破泡音が生じるフォームを形成するものとした場合は、吐出した際により大きな破泡音の得られるエアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)水性原液と液化ガスとが乳化しているエアゾール組成物であり、前記水性原液は、水溶性高分子と、界面活性剤と、有機酸またはその塩のうち少なくともいずれか一方とを含み、前記水性原液と前記液化ガスとの配合比は、60/40~15/85(質量比)である、エアゾール組成物。
【0008】
このような構成によれば、水溶性高分子および界面活性剤を含む水性原液は、さらに有機酸またはその塩のうち少なくともいずれか一方を含む。これにより、エアゾール組成物は、水性原液と高配合した液化ガスとの乳化が容易になる。また、エアゾール組成物は、エアゾール組成物をパチパチと破泡音が生じるフォームを形成するものとした場合は、吐出物の破泡音がより大きくなる。
【0009】
(2)前記水性原液は、有機酸およびその塩を含む、(1)記載のエアゾール組成物。
【0010】
このような構成によれば、水溶性高分子および界面活性剤を含む水性原液は、さらに有機酸およびその塩を含む。これにより、エアゾール組成物は、水性原液と高配合した液化ガスとの乳化がより容易になる。また、エアゾール組成物は、エアゾール組成物をパチパチと破泡音が生じるフォームを形成するものとした場合は、吐出物の破泡音がより大きくなる。
【0011】
(3)前記有機酸またはその塩の含有量は、水性原液中0.005~0.5質量%である、(1)または(2)記載のエアゾール組成物。
【0012】
このような構成によれば、有機酸またはその塩の含有量は、水性原液中0.005~0.5質量%である。これにより、エアゾール組成物は、水性原液と高配合した液化ガスとの乳化がより容易になる。また、エアゾール組成物は、エアゾール組成物をパチパチと破泡音が生じるフォームを形成するものとした場合は、吐出物の破泡音がより大きくなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高配合された液化ガスとの乳化が容易であり、また、エアゾール組成物をパチパチと破泡音が生じるフォームを形成するものとした場合は、吐出した際により大きな破泡音の得られるエアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<エアゾール組成物>
本発明の一実施形態のエアゾール組成物は、水性原液と液化ガスとが乳化しているエアゾール組成物である。水性原液は、水溶性高分子と、界面活性剤と、有機酸またはその塩のうち少なくともいずれか一方とを含む。水性原液と液化ガスとの配合比は、60/40~15/85(質量比)である。これにより、本実施形態のエアゾール組成物は、高配合された液化ガスとの乳化が容易になる。さらに、エアゾール組成物をパチパチと破泡音が生じるフォームを形成するものとした場合は、エアゾール組成物は、吐出した際に大きな破泡音が得られる。以下、それぞれについて説明する。なお、本実施形態のエアゾール組成物は、吐出物の形態によっては、破泡するための泡を形成しない態様のものも含み得る。そのような態様のものは、たとえば、エアゾール組成物を霧状に噴射して対象物上で吐出物が凍るシャーベットスプレーや、独立した多数のシャボン玉状の泡を噴射するシャボン玉スプレーなどがあり、元々、破泡しないため、破泡音を大きくする効果は得られなくてもよい。
【0015】
(水性原液)
水性原液は、水溶性高分子と、界面活性剤と、有機酸またはその塩のうち少なくともいずれか一方とを含む。
【0016】
・水溶性高分子
水溶性高分子は、吐出物に粘性を付与することにより液化ガスを長く保持し、吐出物に剪断が加わるなどして破泡したときにパチパチと大きな破泡音を発する、泡のはじけによる心地良い感触を得るなどの目的で用いられる。
【0017】
水溶性高分子は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子は、セルロースナノファイバー、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース系高分子、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガムなどのガム質、デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー等である。
【0018】
水溶性高分子の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子の含有量は、水性原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましい。また、水溶性高分子の含有量は、水性原液中、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、大きな破泡音が得られやすく、泡のはじけによる心地良い感触を得られやすい。
【0019】
・界面活性剤
界面活性剤は、エアゾール容器内では水性原液と液化ガスとを乳化させ、エアゾール組成物が外部に吐出されたときは液化ガスの気化により吐出物をゆっくりと発泡させ、破泡によりパチパチと破泡音を発するなどの目的で用いられる。また、エアゾール組成物をシャーベットスプレーとする場合は、界面活性剤は、液化ガスの気化熱を原液に効率よく付与して吐出物を凍らせるなどの目的で用いられる。
【0020】
界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤は、たとえば、POE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、モノヤシ油脂肪酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノステアリン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEイソステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸ペンタグリセリル、モノミリスチン酸ペンタグリセリル、モノオレイン酸ペンタグリセリル、モノステアリン酸ペンタグリセリル、モノラウリン酸デカグルセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、モノオレイン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ヤシ油脂肪酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノイソステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸POEソルビット、テトラステアリン酸POEソルビット、テトラオレイン酸POEソルビットなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミドなどの脂肪酸アルカノールアミドなどの非イオン系界面活性剤;ミリスチン酸やステアリン酸などの脂肪酸とトリエタノールアミンやカリウムなどのアルカリのケン化物、ラウリルリン酸カリウム、ラウリルリン酸ナトリウムなどのアルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、スルホン酸塩などのアニオン性界面活性剤;N-アシルグルタミン酸塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルアラニン塩、アシルアラニン塩などのアミノ酸型アニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリオキシプロピレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・メチルポリシロキサン共重合体などのシリコーン系界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(ラウリルベタイン)、ステアリルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(コカミドプロピルベタイン)などの両性界面活性剤等である。
【0021】
界面活性剤の含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤の含有量は、水性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、水性原液中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、水性原液と液化ガスとが乳化しやすく、大きな破泡音を発しやすい。
【0022】
・有機酸またはその塩
有機酸またはその塩は、水性原液と液化ガスを容易に乳化させる、破泡音を大きくするなどの目的で用いられる。
【0023】
有機酸は特に限定されない。一例を挙げると、有機酸は、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、フマル酸等である。水性原液に有機酸が配合されることにより、エアゾール組成物は、特に、水性原液と液化ガスとの乳化が容易となりやすい。
【0024】
有機酸塩は、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、グルコン酸カリウム等である。水性原液に有機酸塩が配合されることにより、エアゾール組成物は、特に、吐出物の破泡音が大きくなりやすい。
【0025】
本実施形態のエアゾール組成物は、有機酸およびその塩の両方が配合されていることが好ましい。これにより、エアゾール組成物は、水性原液と高配合した液化ガスとの乳化がより容易あり、かつ、吐出物の破泡音がより大きくなる。
【0026】
有機酸またはその塩の含有量(両方が含まれる場合は、合計含有量)は、特に限定されない。一例を挙げると、有機酸またはその塩の含有量は、水性原液中、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましい。また、有機酸またはその塩の含有量は、水性原液中、0.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。有機酸またはその塩の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、水性原液と液化ガスとが乳化しやすく、また、長期静置されて水性原液と液化ガスが分離しても、消費者がエアゾール製品を降ることにより再乳化しやすい。また、エアゾール組成物は、エアゾール組成物をパチパチと破泡音が生じるフォームを形成するものとした場合は、吐出物の破泡音がより大きくなる。
【0027】
・水
水性原液は、水を含む。水は、水性原液の主溶媒であり、水溶性高分子、界面活性剤、有機酸またはその塩を含み、液化ガスと乳化する。
【0028】
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、海洋深層水等である。
【0029】
水の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、水は、水性原液中、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、水は、水性原液中、98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、水性原液と液化ガスとが乳化しやすく、吐出物は大きな破泡音が得られやすい。また、エアゾール組成物をシャーベットスプレーとする場合は、吐出物は、凍りやすい。
【0030】
・任意成分
水性原液は、上記した水溶性高分子、界面活性剤、有機酸またはその塩、水以外にも、有効成分、アルコール類、油分、パウダー等の任意成分を含んでもよい。
【0031】
有効成分は、l-メントール、カンフルなどの清涼剤、クロロヒドロキシアルミニウム、イソプロピルメチルフェノールなどの制汗剤、酸化亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、クエン酸などの収斂剤、アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、アズレンなどの抗炎症剤、クロタミトン、d-カンフルなどの鎮痒剤、サリチル酸メチル、インドメタシン、ピロキシカム、フェルビナク、ケトプロフェンなどの消炎鎮痛剤、オキシコナゾール、クロトリマゾール、スルコナゾール、ビフォナゾール、ミコナゾール、イソコナゾール、エコナゾール、チオコナゾール、ブテナフィンおよびこれらの塩酸塩、硝酸塩、酢酸塩などの塩などの抗真菌剤、塩酸ジブカイン、塩酸テトラカイン、リドカイン、塩酸リドカインなどの局所麻酔剤、ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンなどの抗ヒスタミン剤、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジンなどの殺菌・消毒剤、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl-ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、レシチン、尿素などの保湿剤、ラウリル酸メタクリレート、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジルなどの消臭剤、N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)、カプリル酸ジエチルアミドなどの害虫忌避剤、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、エチルヘキシルトリアゾン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノンなどの紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタンなどの紫外線散乱剤、レチノール、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、dl-α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、トコフェロールおよびこれらの混合物などのビタミン類、アスコルビン酸、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエンなどの酸化防止剤、シャクヤクエキス、ヘチマエキス、バラエキス、レモンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、セージエキス、茶エキス、海藻エキス、プラセンタエキス、シルク抽出液などの抽出液、アルブチン、コウジ酸などの美白剤、天然香料、合成香料などの各種香料等である。
【0032】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量(ただし、上記した収斂剤としてのクエン酸を除く)は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分の含有量は、水性原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、水性原液中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、水性原液と液化ガスとの乳化が阻害されることなく、吐出物から大きな破泡音が得られ、有効成分を配合することによる効果が得られやすい。
【0033】
また、収斂剤としてクエン酸が含まれる場合、クエン酸の含有量は、水性原液中、0.6質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、クエン酸の含有量は、水性原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。クエン酸の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、収斂効果が得られやすい。このように、従来の有効成分(収斂剤)としてのクエン酸の含有量は、本実施形態において水性原液と液化ガスとの乳化効果を向上させたり、吐出物の破泡音を大きくする効果を向上させたりするために有機酸として配合される場合のクエン酸の含有量よりも多い。
【0034】
アルコール類は、水に溶解しにくい有効成分や界面活性剤などを溶解するための溶媒として、また吐出物を塗布したときの乾燥性や使用感を調整するなどの目的で好適に配合される。
【0035】
アルコール類は特に限定されない。一例を挙げると、アルコール類は、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数が2~3個の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどの2~3価のポリオール等である。
【0036】
アルコール類が配合される場合、アルコール類の含有量は、特に限定されない。一例を挙げると、アルコール類の含有量は、水性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、アルコール類の含有量は、水性原液中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。アルコール類の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、水性原液と液化ガスとの乳化が阻害されることなく、吐出物から大きな破泡音が得られ、アルコール類を配合することによる効果が得られやすい。
【0037】
油分は、皮膚や頭髪に艶や潤いを与える、乾燥を抑制する、などの目的で好適に配合される。
【0038】
油分は特に限定されない。一例を挙げると、油分は、ジメチコン、メチルポリシロキサン、シクロペンタシロキサン、シクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーンオイル、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、オクタデカン、流動パラフィン、イソパラフィン、スクワラン、スクワレンなどの炭化水素油、ジネオペンタン酸メチルペンタンジオール、ジネオペンタン酸ジエチルペンタンジオール、ジ-2-エチルへキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジラウリン酸プロピレングリコール、ジステアリン酸エチレングリコール、ジラウリン酸ジエチレングリコール、ジステアリン酸ジエチレングリコール、ジイソステアリン酸ジエチレングリコール、ジオレイン酸ジエチレングリコール、ジラウリン酸トリエチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコール、ジイソステアリン酸トリエチレングリコール、ジオレイン酸トリエチレングリコール、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、トリ2-エチルへキサン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソオクタン酸セチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ヒドロシキシステアリン酸エチルヘキシルなどのエステル油;オリーブ油、ツバキ油、トウモロコシ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヤシ油などの油脂、イソステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸、オレイルアルコール、イソステアリルアルコールなどの高級アルコール等である。
【0039】
油分が配合される場合、油分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、油分の含有量は、水性原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましい。また、油分の含有量は、水性原液中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。油分の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、水性原液と液化ガスとの乳化が阻害されることなく、吐出物から大きな破泡音が得られ、油分を配合する効果が得られやすい。
【0040】
パウダーは、水性原液と液化ガスとを乳化しやすくするための乳化補助剤として、または、サラサラ感を得るなどの目的で好適に配合される。
【0041】
パウダーは特に限定されない。一例を挙げると、パウダーは、タルク、シリカ、ゼオライト、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等である。
【0042】
パウダーが配合される場合、パウダーの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、パウダーの含有量は、水性原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、パウダーの含有量は、水性原液中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。パウダーの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、容器底部でケーキングすることなく、パウダーを配合することによる効果が得られやすい。
【0043】
水性原液の調製方法は特に限定されない。水性原液は、従来公知の方法により調製することができる。たとえば、水性原液は、水に水溶性高分子、界面活性剤、有機酸またはその塩、有効成分などを添加して混合することにより調製することができる。
【0044】
水性原液の含有量は、エアゾール組成物中、15質量%以上であればよく、20質量%以上であることが好ましい。また、水性原液の含有量は、エアゾール組成物中、60質量%以下であればよく、55質量%以下であることが好ましい。水性原液の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、水性原液と液化ガスとが乳化しやすく、吐出物から大きな破泡音が得られやすい。また、エアゾール組成物をシャーベットスプレーとする場合は、吐出物は、液化ガスの気化熱により凍りやすく、優れた冷却効果が得られる。
【0045】
(液化ガス)
液化ガスは、エアゾール容器内では蒸気圧を有する液体であり、水性原液と乳化して乳化物を形成する。液化ガスは、外部に吐出されると気化して吐出物を冷やすと共に発泡させ、破泡するときに破泡音を発し、泡のはじけによる心地良い感触が得られる。また、エアゾール組成物をシャーベットスプレーとする場合は、吐出物は、気化熱により凍りやすく、優れた冷却効果が得られる。
【0046】
液化ガスは特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスは、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、ジメチルエーテル、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンなどのハイドロフルオロオレフィン、およびこれらの混合物等である。
【0047】
液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、40質量%以上であればよく、45質量%以上であることが好ましい。また、液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、85質量%以下であればよく、80質量%以下であることが好ましい。液化ガスの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、水性原液と液化ガスとが乳化しやすく、吐出物から大きな破泡音が得られやすく、泡のはじけによる心地良い感触が得られやすい。また、エアゾール組成物をシャーベットスプレーとする場合は、吐出物は、凍りやすく、優れた冷却効果が得られやすい。
【0048】
すなわち、本実施形態のエアゾール組成物は、水性原液と液化ガスとの配合比が、60/40~15/85(質量比)であればよく、55/45~20/80であることが好ましい。
【0049】
エアゾール組成物の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール組成物は、耐圧容器に水性原液を充填し、耐圧容器にエアゾールバルブを固着してエアゾール容器を密封し、次いで、バルブから液化ガスを充填し、エアゾール容器内で水性原液と液化ガスを乳化させることにより調製することができる。なお、液化ガスはエアゾールバルブを固着する前に耐圧容器に充填することもできる。
【0050】
耐圧容器は、エアゾール組成物が充填される容器であり、有底筒状である。容器本体の開口部には、バルブが取り付けられる。
【0051】
耐圧容器の材質は特に限定されない。一例を挙げると、耐圧容器の材質は、アルミニウム、ブリキ等の金属、各種合成樹脂、耐圧ガラス等である。
【0052】
バルブは、耐圧容器の開口部を閉止して密封するための部材である。また、バルブは、耐圧容器の開口部に装着されるマウンティングカップに保持されるハウジングと、耐圧容器の内外を連通するステム孔が形成されたステムと、ステム孔の周囲に取り付けられ、ステム孔を閉止するためのステムラバーとを主に備える。ハウジングは、ステムと、ステムラバーと、ステムを上方に付勢するスプリングとを収容する。ステムの上端には、エアゾール組成物を噴霧するための噴射部材が取り付けられる。
【0053】
噴射部材は、バルブの開閉を操作してエアゾール組成物を噴射するための部材であり、ステムの上端に取り付けられる。噴射部材は、噴射孔が形成されたノズル部と、使用者が指等により操作する操作部とを主に備える。噴射孔からは、エアゾール組成物が噴射される。噴射孔の数および形状は特に限定されない。噴射孔は、複数であってもよい。また、噴射孔の形状は、略円形状、略角形状等であってもよい。
【0054】
本実施形態のエアゾール製品は、噴射部材が押し下げられると、バルブのステムが下方に押し下げられる。これにより、ステムラバーが下方に撓み、ステム孔が開放される。その結果、耐圧容器内と外部とが連通する。耐圧容器内と外部とが連通すると、耐圧容器内の圧力と外部との圧力差によって、エアゾール組成物がハウジング内に取り込まれ、次いで、ステム孔、ステム内通路を通過し、噴射部材に送られ、その後、噴射孔から噴射される。吐出されたエアゾール組成物は、対象面(たとえば腕など)において発泡し、フォームを形成する。
【0055】
吐出物は、剪断等が加えられることにより破泡し、パチパチと大きな破泡音を発する。この際、吐出物は、泡のはじけによる心地良い感触を皮膚等の吐出面に付与し得る。
【0056】
なお、水性原液と液化ガスとは、エアゾール組成物を充填したエアゾール容器を振盪機などで振盪することにより乳化させることができる。
【0057】
本実施形態のエアゾール組成物は、店頭や家庭で長期間静置されて分離した場合であっても、消費者が噴射する前に数回振る程度の振盪で容易に再乳化する。そのため、エアゾール組成物は、均一な組成で噴射することができ、安定した性能の吐出物が得られやすい。
【実施例0058】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0059】
(実施例1)
以下の表1に示される処方に従って水性原液Aを調製した。この水性原液A24g(40質量%)をアルミニウム性耐圧容器に充填し、耐圧容器の口部にバルブを固着した。バルブから液化石油ガス36g(60質量%)を充填し、水性原液と液化石油ガスとを乳化させてエアゾール組成物を調製した。
【0060】
【0061】
(実施例2)
水性原液Aに代えて、表1に記載の水性原液Bを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製した。
【0062】
(実施例3)
水性原液Aに代えて、表1に記載の水性原液Cを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製した。
【0063】
(実施例4)
水性原液Aに代えて、表1に記載の水性原液Dを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製した。
【0064】
(実施例5)
水性原液Aに代えて、表1に記載の水性原液Eを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製した。
【0065】
(実施例6)
水性原液Aに代えて、表1に記載の水性原液Fを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製した。
【0066】
(比較例1)
水性原液Aに代えて、表1に記載の水性原液Gを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール組成物を調製した。
【0067】
実施例1~6、比較例1で得られたエアゾール組成物について、以下の評価方法により、初期乳化、破泡音を評価した。結果を表2に示す。
【0068】
1.初期乳化
液化ガスをバルブから充填した後、エアゾール容器を手にとって上下に30cm振り、1往復を1回として乳化するまでの回数を数え、以下の評価基準にしたがって初期乳化を評価した。
(評価基準)
◎:乳化するまでの回数は、10回以下であった。
○:乳化するまでの回数は、11~15回であった。
×:乳化するまでの回数は、16回以上であった。
【0069】
2.破泡音
エアゾール容器を、25℃に調整した恒温水槽中に30分間浸漬し、エアゾール組成物の温度を25℃に調整した。エアゾール組成物を手のひらに吐出し、手のひら同士をこすり合わせたときの破泡音を、以下の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
◎:破泡音は、比較例1よりも大きく、非常に大きな破泡音であった。
○:破泡音は、比較例1よりやや大きく、大きな破泡音であった。
×:破泡音は、比較例1よりも小さかった。
【0070】
【0071】
表2に示されるように、本発明の実施例1~6のエアゾール組成物は、液化ガスが高配合されていたにもかかわらず、水性原液と液化ガスとが乳化されやすく、かつ、得られた吐出物の破泡音が大きかった。
【0072】
(実施例7)
以下の表3に示される処方に従って水性原液Hを調製した。この水性原液H15g(30質量%)をアルミニウム性耐圧容器に充填し、耐圧容器の口部にバルブを固着した。バルブから液化石油ガス35g(70質量%)を充填し、水性原液と液化石油ガスとを乳化させてエアゾール組成物(シャーベットスプレー)を調製した。
【0073】
(実施例8)
以下の表3に示される処方に従って水性原液Iを調製した。この水性原液H12.5g(25質量%)をアルミニウム性耐圧容器に充填し、耐圧容器の口部にバルブを固着した。バルブから液化石油ガス37.5g(75質量%)を充填し、水性原液と液化石油ガスとを乳化させてエアゾール組成物(シャーベットスプレー)を調製した。
【0074】
【0075】
【0076】
表4に示されるように、本発明の実施例7~8のエアゾール組成物は、液化ガスが高配合されていたにもかかわらず、水性原液と液化ガスとが乳化されやすかった。なお、実施例7~8のエアゾール組成物は、ハンドタオルに噴射すると吐出物が凍り、優れた冷却効果が得られた。