(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020475
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】魚の鱗取り具
(51)【国際特許分類】
A22C 25/02 20060101AFI20230202BHJP
A47J 43/28 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
A22C25/02
A47J43/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125861
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】598139184
【氏名又は名称】福山 明彦
(72)【発明者】
【氏名】福山 明彦
【テーマコード(参考)】
4B011
4B053
【Fターム(参考)】
4B011KA01
4B011KB03
4B053AA03
4B053CA30
(57)【要約】
【課題】
鱗が飛び散らないとされる連続して連なる湾曲した一枚刃を有する魚の鱗取り具において、鱗を軽快に剥ぎ取るための刃先の断面形状を有する魚の鱗取り具を提供することを課題とするものである。
【解決手段】
連続して連なる湾曲した一枚刃から成る魚の鱗取り具において、刃先の断面形状が、魚の皮を沈めて侵入する侵入面と、侵入面の一方に刃先角を成して形成されるすくい面と、侵入面の他方に刃先の面が魚の皮から逃げる方向に逃がし角度を成して形成される逃げ面を有していることにより鱗が軽快に剥がれていくものとし解決している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続して連なる湾曲した一枚刃から成る魚の鱗取り具において、刃先(4)の断面形状が、直線状から成る侵入面(4d)と、侵入面(4d)の一方端に刃先角(β)を成して形成されるすくい面(4b)と、侵入面(4d)の他方端に刃先の面が魚の皮(Wa)から逃げる方向に逃がし角度(γ)を成して形成される逃げ面(4c)とを有し、刃先(4)が把手部(2)の略中心軸上に位置していることを特徴とする魚の鱗取り具。
【請求項2】
請求項1記載の魚の鱗取り具において、把手部(2)の中心軸線とすくい面(4b)がなす角である起こし角度(α)が30度~60度とし、刃先角(β)が70度~120度とし、侵入面の幅(B)は0.3mm~1.5mmとし、逃がし角度(γ)が5度以上であることを特徴とする魚の鱗取り具。
【請求項3】
請求項1および請求項2記載の魚の鱗取り具において、すくい面(4b)を逃げ面(4c)方向に凸状の曲面として設けたことを特徴とする魚の鱗取り具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚の鱗取り具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の魚の鱗取り具は、特許文献1に記載されているように鱗取り部と把手部からなり、鱗取り部には刃部が湾曲状に形成されているようになっている。また、特許文献2によれば、鱗取り部と把手部からなり、鱗取り部の底面に魚の表皮に擦接可能な略凹球面状擦接面を有するようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-199945号公報
【特許文献2】特開2006-175085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来この種の魚の鱗取り具は、特許文献1に記載されているように鱗取り部と把手部からなり、鱗取り部には刃部が湾曲状に形成されているだけであり、魚種毎に異なる鱗と皮の結合強さや、皮の硬さ、身の柔らかさ、鱗形状の大きさ、魚体の形状があり、これらの要因の違いに適合した鱗取り具の刃先の最適な断面形状に関する考察がされておらず、魚種によって鱗取りの性能が大きく変動するという課題があった。
【0005】
また、特許文献2に記載されているように、鱗取り具は鱗取り部と把手部からなり、鱗取り部の底面に魚の表皮に擦接可能な略凹球面状の擦接面を有するようになっており、特許文献2の
図4には鱗取り具の刃先断面が擦接面と擦取面、および擦接面と擦取面の間の面から成るように記載されているが擦接面と擦取面の間の面は、擦接面が魚の表面に擦接して力を受けるため、魚の皮を押さえて擦接面と擦取面の間の面を魚の身に沈ませられるものではなかった。また、刃先が把手部の中心軸線上になく平行にオフセットされた位置に配置されていたので、刃先を押し当てて沈ませるものではなく、左官鏝のように擦接面を魚に押し当てる構造となっており、鑿のように刃先を魚の表面に当てる刃先の侵入角度を自由に微調整するものとはなっていなかった。このように、魚種毎に異なる鱗と皮の結合強さや、皮の硬さ、身の柔らかさ、鱗形状の大きさ、魚体の形状があり、これらの要因の違いに適合した鱗取り具の刃先の最適な断面形状に関する考察がされておらず、魚種によって鱗取りの性能が大きく変動するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明請求項1記載の魚の鱗取り具は連続して連なる湾曲した一枚刃から成る魚の鱗取り具において、刃先4の断面形状が、直線状から成る侵入面4dと、侵入面4dの一方端に刃先角βを成して形成されるすくい面4bと、侵入面4dの他方端に刃先の面が魚の皮Waから逃げる方向に逃がし角度γを成して形成される逃げ面4cとを有し、刃先4が把手部2の略中心軸線上に位置しているようになっている。
【0007】
また、本発明の請求項2記載の魚の鱗取り具は請求項1記載の魚の鱗取り具において、把手部2の中心軸線とすくい面がなす角である起こし角度αが30度~60度とし、刃先角βが70度~120度とし、侵入面の幅Bは0.3mm~1.5mmとし、逃がし角度γが5度以上であるようにしている。
【0008】
更に、本発明の請求項3記載の魚の鱗取り具は請求項1および請求項2記載の魚の鱗取り具において、すくい面4bを逃げ面4c方向に凸状の曲面として設けたものとなっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明請求項1記載の魚の鱗取り具は連続して連なる湾曲した一枚刃から成る魚の鱗取り具において、刃先4の断面形状が、直線状から成る侵入面4dと、侵入面4dの一方端に刃先角βを成して形成されるすくい面4bと、侵入面4dの他方端に刃先の面が魚の皮Waから逃げる方向に逃がし角度γを成して形成される逃げ面4cとを有し、刃先4が把手部2の略中心軸線上に位置しているようになっているので、把手部2を持って鱗取り具を操作する使用者は把手部2の作用する方向と刃先の作用する方向が一致している上に、侵入面を魚の皮Waに接触させながら操作角度θを小さくしたり大きくしたりすることで侵入面4dが魚の皮Waを迎える角度を調整しながら鱗を除去するように出来るので、鱗取り具の刃先4を最適な状態で操作できる。
【0010】
また、本発明の請求項2記載の魚の鱗取り具は請求項1記載の魚の鱗取り具において、把手部2の中心軸線とすくい面がなす角である起こし角度αが30度~60度とし、刃先角βが70度~120度とし、侵入面の幅Bは0.3mm~1.5mmとし、逃がし角度γが5度以上であるようにしているので、魚種毎に異なる鱗と皮の結合強さや、皮の硬さ、身の柔らかさ、鱗形状の大きさによって、これらの刃先条件を最適化することで、多くの魚種の鱗取りに適した魚の鱗取り具を提供できる。
【0011】
また、本発明の請求項3記載の魚の鱗取り具は請求項1および請求項2記載の魚の鱗取り具において、すくい面4bを逃げ面4c方向に凸状の曲面として設けているので、すくい面4bによって鱗Wbを起こすための有効なすくい角を保持したまま、刃先端4aの先端角度を鋭くすることが出来るため鱗Wbの結合部の身を裂きやすくなり軽快に鱗取りが出来るものとしている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施例の魚の鱗取り具を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施例の魚の鱗取り具の使用状態を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における魚頭部方向からから見た図である。
【
図4】本発明の第1の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における魚側面方向から見た図である。
【
図5】本発明の第1の実施例の魚の鱗取り具の全体断面図と刃先の断面拡大図である。
【
図6】本発明の第1の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における刃先の断面拡大図である。
【
図7】本発明の第2の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における刃先の断面拡大図である。
【
図8】本発明の第3の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における刃先の断面拡大図である。
【
図9】本発明の魚の鱗取り具の魚種に対する最適侵入面幅を示す散布図である。
【
図10】本発明の魚の鱗取り具でシロギスの鱗を取っている途中の様子を示す図である。
【
図11】本発明の魚の鱗取り具でシロギスの鱗を取った様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1の実施例の魚の鱗取り具を示す斜視図であり、
図2は本発明の第1の実施例の魚の鱗取り具の使用状態を示す図、
図3は本発明の第1の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における魚頭部方向からから見た図、
図4は本発明の第1の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における魚側面方向から見た図、
図5は本発明の第1の実施例の魚の鱗取り具の全体断面図と刃先の断面拡大図、
図6は本発明の第1の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における刃先の断面拡大図、
図7は本発明の第2の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における刃先の断面拡大図、
図8本発明の第3の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における刃先の断面拡大図、
図9は本発明の魚の鱗取り具の魚種に対する最適侵入面幅を示す散布図、
図10は本発明の魚の鱗取り具でシロギスの鱗を取っている途中の様子を示す図、
図11本発明の魚の鱗取り具でシロギスの鱗を取った様子を示す図である。
である。
【0014】
図1および
図5に示すように本発明第1実施例の魚の鱗取り具は、連続して連なる湾曲した一枚刃から成る魚の鱗取り具において、刃先4の断面形状が、直線状から成る侵入面4dと、侵入面4dの一方端に刃先角βを成して形成されるすくい面4bと、侵入面4dの他方端に刃先の面が魚の皮Waから逃げる方向に逃がし角度γを成して形成される逃げ面4cとを有し、刃先4が把手部2の略中心軸線上に位置している。
【0015】
また、
図3は本発明第1実施例の魚の鱗取り具の使用状態における魚頭部方向からから見た図であり、
図3に示すように被削材となる魚Wの外形に合わせて本発明第1実施例の魚の鱗取り具の刃先は連続して連なる湾曲した一枚刃の湾曲した形状を示しているものである。
【0016】
図2は、第1の実施例の使用状態における被削材である横たわった魚Wを側方から見た鱗取り具の図である。鱗取り具1の把手部2は被削材となる魚に対して、作業する上で手に力が入りやすいことが好ましく、このように把手部2の中心軸線と魚の皮Waが成す角度となる操作角度θを保つように手で保持したまま、手は把手部2の中心軸線方向に力を作用させ押し進んでいくようにしている。把手部2の略中心軸線上の延長上に刃先端4aが位置するようになっているので、その結果、刃部3の端部に連続して連なる湾曲した一枚刃とした刃先4には、把手部2の中心軸線上の方向である魚の皮Waの面に対して斜めに力の作用が入力されるものとなり、その斜めに入る力の分力は、刃先4を魚の皮Waを沈める方向の分力と、鱗Wbを剥がしながら魚の頭方向に進んでいく分力となって作用することとなる。これにより鱗取り作業において力が入りやすく軽快に鱗取りが出来るものとしている。
【0017】
図3は、第1の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における被削材の横たわった魚Wの頭部方向から見た図である。魚Wには魚種によって異なるものの大なり小なり体表に丸みがあり、刃先4は、対象とする魚種の体表の丸みに合わせて魚種毎に近似した径で湾曲した一枚刃としている。こうすることで刃先4が均一に魚の皮Waに接するものとしている。
【0018】
図4は、第1の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における被削材の横たわった魚Wを側面から見た図である。魚Wの鱗Wbは隣り合う鱗Wbとは直線的な配列となっているため、連続して連なる一枚刃の刃先4が鱗Wbの配列に対して複数枚の鱗Wbを同時に剥ぎ取る刃先形状では作業負荷が重くなるものであった。このため連続して連なる一枚刃の刃先4は刃先4の中央から鱗Wbに当たり、両端の外側に向けて、順次、タイミングをずらして刃先4が鱗Wbに当たっていくように湾曲した一枚刃としている。なお、
図4では剥がれた鱗Wbは刃先4の片側半分側のみに描いているが、実際には刃先4の全面で鱗Wbを剥がしていくものであり、
図4では刃先4の湾曲した形状が確認できるように片側半分の鱗を省いて描いているものである。
【0019】
図5は、第1の実施例の魚の鱗取り具の全体断面図と刃先の断面拡大図であり、前述で述べた連続して連なる湾曲した一枚刃における刃先4の断面形状の詳細を示すものである。刃先4の断面形状において、魚の皮Waを沈めて侵入する侵入面4dと、侵入面4dの一方端に刃先角βを成して形成されるすくい面4bと、侵入面4dの他方端に刃先4の面が魚の皮Waから逃げる方向に逃がし角度γを成して形成される逃げ面4cを有するものとしている。
【0020】
なお、刃先4を有する刃部3は棒状の柄とする把手部2の略中心軸線上の端部に連結され、その刃部3の前記略中心軸線上の端部に刃先4を有し、この略中心軸線上の刃先4の断面形状において、把手部2の中心軸線とすくい面4bが成す角度を起こし角度αとし、侵入面4dとすくい面4bが成す角度を刃先角βとし、侵入面4dの幅を侵入面の幅Bとし、侵入面4dと逃げ面4cが成す角度を逃がし角度γとしている。
【0021】
図6は、本発明の第1の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における刃先の断面拡大図である。このように侵入面4dが魚の体表面に接触し、更に魚側に侵入するようになっており、魚の皮を抑えつつ、魚の皮と鱗の結合部を刃先で剥ぎ取るようになっている。
【0022】
このように、鱗Wbを軽快に剥ぎ取るための刃先4の断面形状として、刃先角βが魚の皮Waの面に対して鱗Wbを起こすためのすくい角と侵入面4dの魚の体表面を迎える角度が合算された角度になるものとしている。その結果、鱗Wbと魚の皮Waが広げられる有効な角度は刃先角βもしくはそれ以上となり、すくい面4bの魚の体表面に対するすくい角を超える角度に広げられることが可能となり、鱗を結合している鱗の付け根部分の魚の身が広げられ引っ張られ引き裂かれやすい状態を高めることが出来るものである。
【0023】
図7は、本発明の第2の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における刃先の断面拡大図である。この第2の実施例では、侵入面4dが魚の体表面に対し平行にして、平行な面で侵入する場合となっており、侵入面4dが魚の体表面に深く侵入しないので、魚の身や皮が柔らかい場合に有効である。
【0024】
このように、鱗Wbを軽快に剥ぎ取るための刃先4の断面形状として、刃先角βは魚の皮Waの面に対して鱗Wbを起こすためのすくい角とほぼ同一角度になるものであるが、この場合、刃先端4aは魚の皮Waを沈ませて侵入しており、その結果、鱗Wbと魚の皮Waが広げられる有効な角度は、すくい面4bの魚の体表面に対するすくい角を超える角度に広げられることが可能となり、鱗を結合している鱗の付け根部分の魚の身が広げられ引っ張られ引き裂かれやすい状態を高めることが出来るものである。
【0025】
図8は、本発明の第3の実施例の魚の鱗取り具の使用状態における刃先の断面拡大図である。第1の実施例記載の魚の鱗取り具に対して、すくい面4bを逃げ面4c方向に凸状の曲面形状としたものである。
【0026】
この場合、すくい面4bの角度を示す基準線は、すくい面4bの曲面の端部となる刃先端4aの点と、もう一方の曲面の端部の点を結ぶ線としている。
【0027】
このように、鱗Wbを出来るだけ起こすとともに、刃先端4aの先端角度は鋭い角度を得ることが出来ることで軽快に鱗が剥がすことが出来るものとなっている。
【0028】
本発明の鱗取り具において、把手部2の中心軸線とすくい面がなす角である起こし角度α、および刃先角β、侵入面の幅B、逃がし角度γという鱗取り具の最適形状要素を決定すると思われる鱗と皮の結合強さや、皮の硬さ、身の柔らかさ、鱗形状の大きさ、魚体の形状に特徴がある魚種を選定し、試作したいろいろな形状での鱗取り具の試験を行った。その1例である
図9は本発明の鱗取り具の最適な侵入面の幅Bを示した図である。
【0029】
図9では試験した魚種のそれぞれの特徴でグループA、グループBとして分類している。
図9に示すように魚種によって最適な侵入面の幅Bは異なるが、侵入面の幅Bは0.3mm~1.5mmであれば、多くの魚種の鱗取り具として利用できることがわかった。
【0030】
グループAは、マダイを代表する魚のグループで魚体の形状は平たいという傾向がある。その中でも、魚種毎の鱗の要因によって、侵入面4dの魚の体表面を迎える角度が大きくなる場合には侵入面の幅Bは小さくなり、逆に侵入面4dの魚の体表面を迎える角度が小さくなる場合には侵入面の幅Bは大きくなる傾向があった。つまり魚の皮Waを沈めるために、急角度で短く沈める場合が適している魚種側と、穏やかな角度で広く沈める場合が適している魚種側が直線的に並んでいる傾向があった。
【0031】
具体的にはイシダイのように鱗と皮の結合強さは強固で、皮も強固で、身も硬い場合は、侵入面4dの魚の体表面を迎える角度を極力大きくし、鱗と皮が成す角度を大きく広げて、鱗の結合部の身が引き裂かれやすい状態を作る必要があった。その代わり侵入面の幅Bは極力小さくして刃先端4aを沈めることにより、鱗が取りにくいとされるイシダイであっても軽快に鱗を剥ぎ取ることが出来るもので第1の実施例側となるものであった。
【0032】
また、同じくグループAでもメバルのように鱗と皮の結合強さは弱く、皮は柔らかく、身は柔らかい場合は、侵入面4dの体表面を迎える角度を穏やかにし、その代わり侵入面の幅Bを広くし、刃先端4aが魚の皮Waに沈みすぎることなく、刃先4が滑るように進むことにより鱗が取りやすくなる傾向があるもので第2の実施例のような魚の鱗取り具に近いものとなる。
【0033】
グループBは、シロギスやサヨリといった魚体が丸い魚種であり、侵入面4dの魚の体表面を迎える角度は魚体が丸く刃先4により魚体が変形しやすいためか侵入面4dの魚の体表面を迎える角度は小さくすると鱗が取りやすくなる傾向があった。侵入面の幅Bについては狭い方が鱗は取りやすい傾向があった。
【0034】
以上のとおり、魚種によって、最適な刃先の侵入面の幅Bは変化するものであったが、グループAおよびグループB以外の青物と呼ばれるブリなどの魚も含め、
図9の結果から侵入面の幅Bは0.3mm~1.5mmとすることで、魚種全般で良好な鱗取り作業が可能となる魚の鱗取り具を提供できることがわかった。
【0035】
その他、本発明の魚の鱗取り具の把手部2の中心軸線とすくい面がなす角である起こし角度αおよび刃先角β、侵入面の幅B、逃がし角度γについて、出願人が同様な実験を行った結果により、起こし角度αは30度~60度が魚種全般で良好な鱗取り作業が可能となる魚の鱗取り具を提供できることがわかった。また、刃先角βは70度~120度が魚種全般で良好な鱗取り作業が可能となる魚の鱗取り具を提供できることがわかった。
【0036】
更に逃がし角度γは5度以上が魚種全般で良好な鱗取り作業が可能となる魚の鱗取り具を提供できることがわかった。
【0037】
図10、
図11にそれぞれ本発明の魚の鱗取り具でシロギスの鱗を取っている途中の様子と、シロギスの鱗を取った様子を示す。
図10、
図11からわかるように本発明の魚の鱗取り具を使って、魚の鱗を取ると本発明鱗取り具のすくい面部近傍に取り除かれた魚の鱗が塊となって集まり、飛散することなく軽快に鱗を剥ぎ取ることが出来る。なお、
図10,
図11の本発明の魚の鱗取り具の刃部3表面に縞模様の形状が見られるが、これは製造上の制約で生じたものであり、本発明の魚の鱗取り具の性能を左右するものでない。
【0038】
以上により、従来技術である鱗が飛び散らないとされる連続して連なる湾曲した一枚刃を有する魚の鱗取り具において、鱗を軽快に剥ぎ取るための刃先の断面形状を有する鱗取り具を提供することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、魚の鱗取り具において、鱗が飛び散らず、軽快に鱗取り作業が出来るものとして提供する事ができる。
【符号の説明】
【0040】
W 魚
Wa 魚の皮
Wb 鱗
1 魚の鱗取り具
2 把手部
3 刃部
4 刃先
4a 刃先端
4b すくい面
4c 逃げ面
4d 侵入面
θ 操作角度
α 起こし角度
β 刃先角
γ 逃がし角度
B 侵入面の幅