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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020478
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】障害物検出装置および移動体
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/30 20060101AFI20230202BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20230202BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230202BHJP
   G05D 1/02 20200101ALN20230202BHJP
【FI】
G01B11/30 W
G01B11/24 A
G06T7/00 C
G05D1/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125864
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真也
【テーマコード(参考)】
2F065
5H301
5L096
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA25
2F065AA49
2F065AA53
2F065BB01
2F065CC11
2F065DD03
2F065FF05
2F065FF09
2F065FF11
2F065FF67
2F065GG04
2F065MM00
2F065QQ33
2F065QQ38
2F065QQ53
2F065SS09
5H301AA01
5H301CC03
5H301CC06
5H301GG08
5H301GG09
5L096AA09
5L096CA05
5L096CA18
5L096DA02
5L096FA70
5L096JA11
(57)【要約】
【課題】 正確に障害物を検出することが可能な障害物検出装置を提供する。
【解決手段】 本発明の障害物検出装置200は、LiDAR_1、LiDAR_2の出力を合成するLiDAR出力合成部210、SLAM220、凸型障害物検出部230、凹型障害物検出部240、障害物マップ生成部250を含んで構成される。凸型障害物検出部230は、点群の法線ベクトルを特徴量に用いて凸型障害物を検出し、凹型障害物検出部240は、点群の数を特徴量に用いて凹型障害物を検出する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元測位された点群データを利用した障害物検出装置であって、
自己移動量を元に複数フレーム分の点群データを合成する合成手段と、
合成された点群データに基づき点群の法線ベクトルを算出する算出手段と、
前記法線ベクトルに基づき凸型障害物を識別する識別手段と、
を有する障害物検出装置。
【請求項2】
前記識別手段は、前記法線ベクトルが地面に対して平行となる関係にあるとき、点群を凸型障害物と識別し、前記法線ベクトルが地面に対して垂直となる関係にあるとき、フリースペースと識別する、請求項1に記載の障害物検出装置。
【請求項3】
前記識別手段は、前記法線ベクトルのXY平面のベクトル>前記法線ベクトルのZ方向のベクトルの絶対値のとき凸型障害物と識別し、前記法線ベクトルのXY平面のベクトル≦前記法線ベクトルのZ方向のベクトルの絶対値のときフリースペースと識別する、請求項1または2に記載の障害物検出装置。
【請求項4】
前記識別手段はさらに、前記合成された点群データを複数のグリッドに分割し、グリッド内の凸型障害物の点群の数とフリースペースの点群の数とを比較し、点群の数の多い方によってグリッドを凸型障害物またはフリースペースと識別する、請求項1ないし3いずれか1つに記載の障害物検出装置。
【請求項5】
前記識別手段は、複数のフレーム間のグリッドにおいて発生頻度の少ない凸型障害物のグリッドが除去されるようにグリッドのフィルタリングを行う、請求項4に記載の障害物検出装置。
【請求項6】
前記フィルタリングは、ローパスフィルタのアルゴリズムを用いる、請求項5に記載の障害物検出装置。
【請求項7】
3次元測位された点群データを利用した障害物検出装置であって、
自己移動量を元に複数フレーム分の点群データを合成する合成手段と、
合成された点群データを複数の格子状のグリッドに分割し、グリッド内の点群の数を算出する算出手段と、
算出された点群の数に基づき凹型障害物のグリッドを識別する識別手段と、
を有する障害物検出装置。
【請求項8】
前記識別手段は、周囲のグリッドの点群の数よりも相対的に点群の数が少ないグリッドを凹型障害物のグリッドと識別する、請求項7に記載の障害物検出装置。
【請求項9】
前記識別手段は、周囲のグリッドの点群の数の中央値から閾値を算出し、当該閾値よりも点群の数が少ないグリッドを凹型障害物と識別する、請求項7または8に記載の障害物検出装置。
【請求項10】
前記識別手段は、複数のフレーム間のグリッドにおいて発生頻度の少ない凹型障害物のグリッドが除去されるようにグリッドのフィルタリングを行う、請求項7ないし9いずれか1つに記載の障害物検出装置。
【請求項11】
前記フィルタリングは、ローパスフィルタのアルゴリズムを用いる、請求項10に記載の障害物検出装置。
【請求項12】
前記自己移動量は、SLAMによる自己位置推定を利用する、請求項1または7に記載の障害物検出装置。
【請求項13】
3次元測位された点群データを利用した障害物検出装置であって、
自己移動量を元に複数フレーム分の点群データを合成する合成手段と、
合成された点群データに基づき点群の法線ベクトルを算出する第1の算出手段と、
合成された点群データを複数の格子状のグリッドに分割し、グリッド内の点群の数を算出する第2の算出手段と、
前記法線ベクトルに基づき凸型障害物を識別し、前記第2の算出手段によって算出された点群の数に基づき凹型障害物のグリッドを識別する識別手段と、
を有する障害物検出装置。
【請求項14】
請求項1ないし13いずれか1つに記載の障害物検出装置を搭載する移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障害物検出装置およびこれを搭載した電動カート等の移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動走行を実現するには、障害物を回避するために障害物を検知する必要がある。障害物には、地面より高い位置にある凸障害物と地面より低い位置にある凹障害物がある。従来技術として、地面を平面として検出し、凸障害物や凹障害物を検知する技術がある(例えば、特許文献1)。特許文献1の検出システムは、3次元測位によって得られた点群データから路面の平面検出を行い、点群データが存在しない領域を凹障害物候補として抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-197388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の障害物検出システムには、次のような課題がある。点群データから平面(路面)を検出し、点群データから平面を取り除いた領域を障害物として検出するため、平面を正しく検出できないと、障害物を正しく検出することができない。また、3次元測位により得られた1フレーム分の点群データで路面や障害物を検出すると、遠方の点群データが少なくなるため、障害物の検出距離が短くなってしまう。さらに溝等の凹型障害物は、LiDAR等のレーザー光が照射され難くなるので、比較的大きな溝しか検出することができないという課題がある。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決し、正確に障害物を検出することが可能な障害物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る障害物検出装置は、3次元測位された点群データを利用したものであって、自己移動量を元に複数フレーム分の点群データを合成する合成手段と、合成された点群データに基づき点群の法線ベクトルを算出する算出手段と、前記法線ベクトルに基づき凸型障害物を識別する識別手段とを有する。
【0007】
ある態様では、前記識別手段は、前記法線ベクトルが地面に対して平行となる関係にあるとき、点群を凸型障害物と識別し、前記法線ベクトルが地面に対して垂直となる関係にあるとき、フリースペースと識別する。ある態様では、前記識別手段は、前記法線ベクトルのXY平面のベクトル>前記法線ベクトルのZ方向のベクトルの絶対値のとき凸型障害物と識別し、前記法線ベクトルのXY平面のベクトル≦前記法線ベクトルのZ方向のベクトルの絶対値のときフリースペースと識別する。ある態様では、前記識別手段はさらに、前記合成された点群データを複数のグリッドに分割し、グリッド内の凸型障害物の点群の数とフリースペースの点群の数とを比較し、点群の数の多い方によってグリッドを凸型障害物またはフリースペースと識別する。ある態様では、前記識別手段は、複数のフレーム間のグリッドにおいて発生頻度の少ない凸型障害物のグリッドが除去されるようにグリッドのフィルタリングを行う。ある態様では、前記フィルタリングは、ローパスフィルタのアルゴリズムを用いる。
【0008】
本発明に係る障害物検出装置は、3次元測位された点群データを利用したものであって、自己移動量を元に複数フレーム分の点群データを合成する合成手段と、合成された点群データを複数の格子状のグリッドに分割し、グリッド内の点群の数を算出する算出手段と、算出された点群の数に基づき凹型障害物のグリッドを識別する識別手段とを有する。
【0009】
ある態様では、前記識別手段は、周囲のグリッドの点群の数よりも相対的に点群の数が少ないグリッドを凹型障害物のグリッドと識別する。ある態様では、前記識別手段は、周囲のグリッドの点群の数の中央値から閾値を算出し、当該閾値よりも点群の数が少ないグリッドを凹型障害物と識別する。ある態様では、前記識別手段は、複数のフレーム間のグリッドにおいて発生頻度の少ない凹型障害物のグリッドが除去されるようにグリッドのフィルタリングを行う。ある態様では、前記フィルタリングは、ローパスフィルタのアルゴリズムを用いる。ある態様では、前記自己移動量は、SLAMによる自己位置推定を利用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、点群の法線ベクトルを特徴量に用いることで凸型障害物を正確に検出することができる。また、本発明によれば、点群の数を特徴量に用いることで凹型障害物を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係る電動カートの概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施例に係る障害物検出装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施例に係る凸型障害物の検出動作を示すフローである。
図4】本発明の実施例に係る凹型障害物の検出動作を示すフローである。
図5】本発明の実施例に係るフレームの合成例を示す図である。
図6】本発明の実施例に係る法線ベクトルの生成例を示す図である。
図7】本発明の実施例に係るグリッド毎に凸型障害物またはフリースペースを判定する例を示す図である。
図8】本発明の実施例に係る凸型障害物の検出範囲の一例を示す図である。
図9】本発明の実施例に係るグリッド単位の凸型障害物と路面の判定例を示す図である。
図10】溝を検出するときの誤検出例を示す図である。
図11】本発明の実施例に係るグリッド単位で凹型障害物を判定する例を示す図である。
図12】本発明の実施例による障害物の影による誤判定を除去する例を示す図である。
図13】本実施例による溝の検出例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る障害物検出装置は、移動体に搭載され、移動体の進行方向に存在する障害物を検出し、検出した障害物に関する情報をユーザーに提示する。移動体は、特に限定されないが、例えば、電動カート、自動車、二輪車等の車両である。障害物検出装置は、例えば、LiDAR(Light Detection And Ranging)、ステレオカメラ、デプスカメラなどの3次元測位センサーを含み、3次元測位センサーから取得された点群データを用いて障害物を検出する。
【実施例0013】
次に、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。小型モビリティの自動運転には、障害物を回避するために障害物の位置を示したマップが必要である。障害物には、立体物などの凸型の障害物だけでなく、溝や段差などの凹型の障害物がある。障害物の有無だけでなく障害物の位置も正確であることが重要である。本実施例は、凸型の障害物や凹型の障害物にかかわらず、障害物を正確に検出し、障害物の位置を正確に示した障害物マップを生成することを可能にする。
【0014】
図1は、本発明の実施例に係る電動カートの一例を示す側面図である。電動カート100は、バッテリーを動力源として走行する車両であり、前輪102、後輪104、ハンドル106などを備える。ハンドル106は、軸108に回転可能に取り付けられ、ハンドル106を回転させることで前輪102の舵を切ることができ、後輪104には、バッテリーで駆動されるモータが接続される。また、ハンドル106には、前輪102および後輪104を制動するためのブレーキレバーが取り付けられている。こうした電動カート100は、低速走行が可能であり、歩行者と同様に歩道を走行することが許される。
【0015】
電動カート100には、前方の障害物を検出するための障害物検出装置が搭載される。障害物検出装置は、障害物を含む3次元マップを作成し、この3次元マップは、電動カート100の自動運転の制御あるいはそのアシストの制御に利用されたり、あるいは、ユーザー(運転者)がマニュアル運転を行うとき、走行上の安全を確保するための警告に利用される。
【0016】
障害物検出装置は、3次元測位センサーとしてのLiDAR、GPS信号の測位により位置検出を行うGNSSモジュール、および演算処理モジュール等を含む。本例では、電動カート100に3つのLiDAR_1、LiDAR_2、LiDAR_3(総称するときはLiDAR)が取り付けられる。LiDAR_1、LiDAR2は、地上から一定の高さに(例えば、60cm)、かつ水平方向に対して下を向く角度(例えば、下向き5度)に、軸108の左右に対称の位置に取付けられる。LiDAR_1、LiDAR_2の水平方向の間隔は、適宜設定される。LiDAT_1、LiDAR_2は、後述するように電動カート100の前方の路面に存在する凸型障害物の検出に利用される。
【0017】
LiDAR_3は、LiDAR_1、LiDAR_2よりも高い位置(例えば、90cm)に、かつより下を向く角度(例えば、下向き20度)となるように、例えば、ハンドル106の上部に取り付けられる。LiDAR_3は、後述するように電動カート100の前方の路面に存在する凹型障害物の検出に利用される。GNSSモジュールは、GPS信号を受信するためのアンテナと、受信したGPS信号に基づき電動カート100の現在位置を算出する処理回路等とを含む。
【0018】
図2は、本発明の実施例に係る障害物処理装置の全体構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施例の障害物検出装置200は、LiDAR_1~LiDAR_3、GNSSモジュール、LiDAR出力合成部210、SLAM220、凸型障害物検出部230、凹型障害物検出部240、障害物マップ生成部250を含んで構成される。なお、破線のブロックは、自己位置データ、3D点群データを示している。
【0019】
LiDARは、レーザー光を対象に照射して反射して返ってくる散乱光を検出し、その反射時間から距離を算出し、対象までの距離、位置、形状を3次元測位する技術である。LiDARは、図1に示すように電動カート100の前方を一定の範囲で測位(スキャン)し、その測位結果は、点群データとして出力される。点群データは、測位した地点の3次元座標値と色の情報(R、G、B)などを含む点の集合である。ここでは、LiDARの1回の測位(スキャン)によって出力される点群データを1フレームの点群データと称する。LiDARは、1秒間に、例えば数十フレームを出力する。
【0020】
LiDAR出力合成部210は、LiDAR_1、LiDAR_2から出力されるフレームの点群データの位置合わせを行い、左右の点群データを合成する。左右の異なる方向からスキャンした点群データを合成することで点群データの密度を増加させ、障害物の検出精度を向上させる。LiDAR出力合成部210によって合成された点群データは、SLAM220および凸型障害物検出部230に提供される。
【0021】
SLAM200は、自己位置推定部222、GNSS補正部224および3Dマップ生成部226を含み、3D点群データを利用して3Dマップを生成しつつ電動カート100の自己位置推定を行う。自己位置推定部222は、LiDAR出力合成部210から順次出力される各フレームを受け取り、各フレームの点群データをマッチングさせるために必要な移動量から自己位置を推定する。GNSS補正部224は、自己位置推定部222で推定された自己位置をGNSSモジュールで算出されて現在位置によって補正する。3Dマップ生成部226は、補正された自己位置に基づき点群データを処理することで3Dマップを生成する。
【0022】
凸型障害物検出部230は、LiDAR出力合成部210からの点群データとGNSS補正部224からの自己位置データとを受け取り、電動カート100の前方の凸型障害物を検出する。凹型障害物検出部240は、LiDAR_3からの点群データとGNSS補正部224からの自己位置データとを受け取り、電動カート100の前方の凹型障害物を検出する。障害物マップ生成部250は、凸型障害物検出部230の検出結果および凹型障害物検出部240の検出結果を受け取り障害物のマップを生成する。
【0023】
次に、凸型障害物検出部230の検出動作について図3のフローを参照して説明する。凸型障害物検出部230は、GNSS補正部224で算出された自己移動量を元に複数フレームの点群データを重ね合わせる(ステップ1)。言い換えれば、SLAM200の自己位置推定の結果を利用して時系列的に連続する複数フレーム分の点群データを合成する。
【0024】
図5の左側の図は1フレームの点群データを示し、右側の図は10フレームの点群データを示している。LiDARの1フレーム分の出力では、点群の密度が疎であり、かつ遠方の障害物を正確に検出できないおそれがある。複数フレーム分の点群を合成することで点群の密度が高まり、遠方の障害物を正確に検出することが可能になる。また、SLAM200の自己位置推定の結果を利用するため、電動カート100が移動している最中でも複数フレームの点群データの合成が可能である。
【0025】
次に、凸型障害物検出部230は、合成された点群データから点群の法線ベクトルを計算し、法線ベクトルに基づき点群の識別または分類を行う(ステップ2)。図6に法線ベクトルの算出方法を示す。図中の矢印は法線ベクトルを示し、円形は、法線ベクトルを算出するための点群の範囲を示している。ここでは、点群の範囲を円形にしているが、これは一例であり点群の範囲は、矩形状等の他の形状であってもよい。また、点群の範囲は、例えば、LiDARの検出範囲等に応じて適宜決定される。
【0026】
凸型障害物検出部230は、円形の範囲で規定する点群を抽出し、抽出した点群が属する平面を算出し、この平面の法線ベクトルを算出する。凸型障害物検出部230は、法線ベクトルが地面(水平面)に対し平行であれば、当該法線ベクトルの平面を構成する点群を障害物と識別し、法線ベクトルが地面(水平面)に対し垂直であれば、当該法線ベクトルの平面を構成する点群をフリースペース(路面)と識別する。なお、「平行」、「垂直」は、一定の幅を持つことが可能であり、例えば、地面に対して±α度の範囲の関係にあれば平行と見做し、地面に対して±β度の範囲の関係にあれば垂直と見做すようにしてもよい。
【0027】
一つの態様として、凸型障害物検出部230は、法線ベクトルに基づく点群の識別を次のように行っても良い。
法線のXY平面のベクトル>法線のZ方向のベクトルの絶対値⇒凸型障害物
法線のXY平面のベクトル≦法線のZ方向のベクトルの絶対値⇒フリースペース(路面)
【0028】
従来のように凸型障害物の高さを特徴量として障害物を検出する場合、自己位置推定に誤差が含まれ、さらに実際の路面は波打ち完全な平坦な面ではないため、障害物の位置の高さ方向には誤差が含まれ、この誤差が一定の割合を超えると障害物を正確に検出することができなくなる。これに対し、本実施例は、障害物の高さ方向の面の点群の法線を特徴量とするため、障害物の高さ方向の面がLiDARに対して垂直であれば、障害物の位置が高さ方向に多少ずれていてもつまり高さ方向の誤差に影響されずに障害物を検出することができる。
【0029】
自己位置推定を失敗したとき、障害物が存在しない場所に障害物を誤検出してしまうことがある。これを防ぐため、凸型障害物検出部230は、3DマップのXY平面を格子状のグリッドに分割し、そこに含まれる点群を種類別に数える(ステップ3)。具体的には、LiDARに合わせた検出範囲を設定し、検出範囲を、例えば、10cmの間隔で格子状に分割し、各グリッドの中に含まれる凸型障害物と判定された点群とフリースペース(路面)と判定された点群の数をカウントする。
【0030】
次いで、凸型障害物検出部230は、点群の数に基づきグリッドを凸型障害物またはフリースペースに分類する(ステップ4)。具体的には、次の判定式により分類する。
凸型障害物と判定された点群の数>フリースペースの点群の数⇒凸型障害物のグリッド
凸型障害物と判定された点群の数≦フリースペースの点群の数⇒フリースペースのグリッド
【0031】
図7に、ステップ3、ステップ4の処理例を示す。左側の図は、検出範囲を10cm間隔のグリッドに分割した例を示し、中央の図は、グリッドに含まれる点群を種類別にカウントする例を示し、右側の図において、濃い色で示された矩形領域が凸型障害物であり、それ以外の領域がフリーススペースである。
【0032】
次に、凸型障害物検出部230は、2Dマップの障害物コストをローパスフィルタを使って計算する(ステップ5)。すなわち、時系列的な複数フレーム間のグリッドの周波数フィルタリングを行い、発生頻度の少ない凸型障害物のグリッドが凸型障害物として検出され難くする。例えば、一度限りの凸型障害物のグリッドが障害物として検出されないようにすることで誤検出の影響を除去する。ある態様では、凸型障害物検出部230は、グリッドの障害物コストを計算し、障害物コストが低い障害物を除去する。障害物コストの算出方法の一例を以下に示す。
障害物コスト(0~254)=前回の障害物コスト×K+障害物の障害物コスト(254)×(1-K) K:ローパスフィルタの係数
【0033】
さらに凸型障害物検出部230は、フリースペースの検知結果を使って、誤検知した障害物をクリアする(ステップ6)。この算出方法の一例を以下に示す。
障害物コスト(0~254)=前回の障害物コスト×K+フリースペースの障害物コスト(0)×(1-K) K:ローパスフィルタの係数
凸型障害物検出部230は、算出された障害物コストを参照し、グリッドの障害物コストが閾値以上であれば、そのグリッドを凸型障害物と判定し、閾値未満であればフリースペースと判定する。凸型障害物検出部230は、凸型障害物とフリースペースの点群を生成し、これを障害物マップ生成部250に提供する。
【0034】
図8は、凸型障害物の検出範囲の一例を示している。障害物の検出範囲は、電動カートを中心に±40度、検出距離は50mの扇状の範囲である。扇状の範囲外の点群密度が低い領域は、誤検出が多いため検出範囲から除外される。図9は、グリッド単位の領域で凸型障害物とフリースペース(路面)の判定例を示す図である。
【0035】
このように本実施例によれば、凸型障害物検出部230がステップ1~6の処理を行うことで、移動体から遠くにある小さな凸障害物を誤検出することなく正確に検出することができる。例えば、電動カートから10m先にある高さ8cmの障害物について、障害物の高さを特徴量にする場合には、誤差によって障害物を正確に検出することができないおそれがあるが、本実施例のように点群の法線を特徴量にする場合には、小さな凸型障害物を正確に検出することができる。
【0036】
次に、本実施例の凹型障害物検出部240の検出動作について図4のフローを参照して説明する。溝などの凹型障害物は、凸型障害物と異なり、LiDARのレーザーの死角が存在し、レーザーを直接照射することができないおそれがある。さらに、溝の境界線上でLiDARの誤検出が発生し、溝であるはずの場所に点群が出現し、溝の検出を難しくしている。図10は、溝を検出するときの誤検出例を示している。
【0037】
凹型障害物検出部240は、LiDAR_3から出力される3D点群データを受け取り、凸型障害物検出部230と同様に、SLAM200の自己位置推定の結果を用いてLiDAR_3の複数フレームの点群データを合成する(ステップ11)。この合成により、点群の密度が高まり、溝の検出が容易になる。また、LiDAR_3が低い位置に取り付けられていると、溝の内部で点群の誤検出が発生するため、本実施例では、LiDAR_3は、図1に示すように、LiDAR_1、LiDAR_2よりも高所に取り付け、かつ下向きに深い角度とすることで溝の検出を容易にしている。
【0038】
次に、凹型障害物検出部240は、3DマップのXY平面を10cm間隔の格子状のグリッドに分割し、グリッドに含まれる点群の数を数える(ステップ12)。凹型障害物が存在する場所は、点群の密度が低くなる。この特性を利用し、凹型障害物検出部240は、点群の密度を特徴量とする。凹型障害物検出部240は、各グリッドの点群の数をカウントし、その数が閾値より少なければ、当該グリッドを凹型障害物と識別し、閾値以上であれば、当該グリッドをフリースペースと識別する。
【0039】
閾値は、対象のグリッドの周囲の複数のグリッドの点群の数に基づき設定する。例えば、周囲の複数のグリッドのそれぞれの点群の数をカウントし、そこから点群の数の中央値や平均値を算出し、この中央値や平均値から閾値を設定する。具体的な閾値の設定例について説明する。対象のグリッドの点群の数をカウントし、次いで、その周囲9×9のグリッドの点群の数をカウントし、その中央値に係数(0.0~1.0)を掛けたものを閾値とする(ステップ13)。閾値より少ない点群の数のグリッドを凹型障害物と識別し、閾値以上の点群の数のグリッドをフリースペースと識別する(ステップ14)。
【0040】
図11は、グリッド単位で凹型障害物を識別する例を示している。左側から順に、グリッドに分割する図、グリッドの点群の数をカウントする図、注目領域(対象のターゲット)の周囲の点群の数の中央値に係数を掛けたものを閾値とする図、点群の数が閾値より少ないグリッドを凹型障害物と識別する図である。なお、閾値を設定する手順として、最初にフレーム内の全てのグリッドの点群の数を数えてから、各グリッドの閾値を設定するようにしてもよい。
【0041】
凸型障害物の影の影響で点群を検出することができないエリアを凹型障害物と誤判定することがある。これを回避するため、次のような処理を行うことが望ましい。
(1)LiDARを基準として、YAW角を10度刻み、距離20cm刻みの扇形のグリッドを作成する。
(2)扇形のグリッドに、前述の10cm間隔のグリッドをその位置を基準に対応付けをする。
(3)扇形のグリッドを電動カートから近い方向から検索して、凸型障害物を見つけたら、後ろのグリッドの凹型障害物の判定結果をすべて無効にする。
図12は、障害物の影による誤判定を除去する例を示している。左側の図は、扇形のグリッド内に凸型障害物が検出された例を示し、右側の図は、凸型障害物の後方の凹型障害物をクリアする例を示している。
【0042】
凹型障害物検出部240は、2Dマップの障害物コストをローパスフィルタを使って計算し(ステップ15)、フリースペースの検出結果を用いて誤検出した障害物をクリアする(ステップ16)。ステップ15、16の処理は、凸型障害物検出部230のステップ5、6と同様であるので説明を省略する。
【0043】
凹型障害物検出部240は、凹型障害物とフリースペースの点群を生成し、これを障害物マップ生成部250に提供する。障害物マップ生成部240は、凸川障害物検出部230の検出結果と凹型障害物検出部240の検出結果を合成し、電動カートの前方の凸障害物と凹障害物とが示されたマップを生成する。
【0044】
本実施例によれば、凹型障害物検出部240がステップ11~16の処理を行い、点群の密度を特徴量に用いることで、浅い段差の溝や幅の狭い溝をより正確に検出することができる。図13の上側の図は、溝の検出例であり、左から順に、検知距離が4.2mの位置に幅70cmの溝を検出した例を示し、中央の図は、検知距離が4.7mの位置に幅50cmの溝を検出した例を示し、右側の図は、検知距離が4.6mの位置に幅40cmの溝を検出した例を示している。図13の下側の図は、左側から順に幅70、幅50、幅40、幅30cm、幅25cmの溝の検知結果を示し、幅70、幅50、幅40の溝が正確に検出できたことを示している(判定○)。
【0045】
このように本実施例によれば、凸型、凹型にかかわらず障害物を正確に検出し、正確な障害物マップを生成することができる。特に、遠方に存在する凸型障害物や幅の狭い凹型障害物を誤検出することなく正確に検出することができる。なお、本実施例では、障害物検出装置が電動カートに搭載する例を示したが、障害物検出装置は、他の移動体に搭載されるようにしてもよい。また、点群データを測位するセンサーとしてLiDARを例示したが、ステレオカメラやデプスカメラを用いて点群データを測位するようにしてもよい。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
100:電動カート 102:前輪
104:後輪 106:ハンドル
108:軸 200:障害物検出装置
210:LiDAR出力合成部 220:SLAM
230:凸型障害物検出部 240:凹型障害物検出部
250:障害物マップ生成部
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