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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020502
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】舌位置保持装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/56 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
A61F5/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125898
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】508325773
【氏名又は名称】對木 悟
(71)【出願人】
【識別番号】521337539
【氏名又は名称】福田 竜弥
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】對木 悟
(72)【発明者】
【氏名】福田 竜弥
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA02
4C098BB15
4C098BC01
4C098BD11
(57)【要約】
【課題】コストを抑えつつ、小型で高性能な舌位置保持装置を提供する。
【解決手段】舌Tの少なくとも先端部分に被せられて口腔M内に装着される湾曲した凹状のカプセル10と、一端がカプセル10に接続されて口腔Mから引き出されるチューブ20と、チューブ20の他端が接続され、舌Tに被せられたカプセル10内の空気を吸引するシリンジまたは球ポンプからなる吸引器30と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
舌の少なくとも先端部分に被せられて口腔内に装着される湾曲した凹状のカプセルと、
一端が前記カプセルに接続されて口腔から引き出されるチューブと、
前記チューブの他端が接続され、舌に被せられた前記カプセル内の空気を吸引するシリンジまたは球ポンプからなる吸引器と、
を備える、
舌位置保持装置。
【請求項2】
前記カプセルを舌に被せた状態で口唇に当接するストッパが前記カプセルに装着される、
請求項1に記載の舌位置保持装置。
【請求項3】
前記カプセルを舌に被せた状態で少なくとも前歯が係合可能なスプリントが前記カプセルに装着される、
請求項1または請求項2に記載の舌位置保持装置。
【請求項4】
前記カプセルは、複数の貫通孔を有する内カプセルが内側に嵌め込まれた二重構造とされている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の舌位置保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舌位置保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
就寝中におけるいびきや歯ぎしりを抑える、あるいは閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea:OSA)を防止する装置として、特許文献1には、ユーザの口の中に装着されてユーザの舌の前方部分をソケットに保持させることにより、咽頭気道を通る気流通路を確保して就寝中の通常の呼吸を促進する装置が示されている。
【0003】
また、特許文献2には、チューブを介して減圧ユニットが接続されたマウスピースをユーザの口に装着し、減圧ユニットによってユーザの口腔内に陰圧を発生させ、ユーザの軟口蓋及び周囲軟組織を口腔に向って引っ張るとともに、ユーザの舌を硬口蓋に向って引っ張ることにより、ユーザの咽頭気道を開放状態に維持させることが記載されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、口蓋部と舌部の両面に向けた吸着部を備えたベースを主構造部とする舌部係止具を口蓋部と舌部の間に挿入し、吸着部内の外気等を排出して舌部係止具を舌部と口蓋部間に介着させ移動を阻止することにより、舌根部が沈下して咽頭気道を塞ぐことを防止する装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4169473号公報
【特許文献2】特開2007-319680号公報
【特許文献3】特開2008-183388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、舌の前方部分を嵌め込んで保持させる特許文献1に記載のソケットでは、十分な保持力が得られず舌が外れて下がってしまうおそれがある。
【0007】
また、特許文献2,3に記載の装置のように、口腔内を陰圧にしたり、舌の表面をマウスピースに吸着させるだけでは、舌の位置が咽頭気道方向へ下がってしまい、ユーザの咽頭気道を開放状態に維持させること困難である。しかも、これらの装置では、減圧ユニットやエアーポンプなどの大がかりな装置を備えるため、装置使用時の騒音も生じ、大型化を招いてしまうとともに、コストが嵩んでしまう。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、コストを抑えつつ、小型で高性能な舌位置保持装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の舌位置保持装置は、
舌の少なくとも先端部分に被せられて口腔内に装着される湾曲した凹状のカプセルと、
一端が前記カプセルに接続されて口腔から引き出されるチューブと、
前記チューブの他端が接続され、舌に被せられた前記カプセル内の空気を吸引するシリンジまたは球ポンプからなる吸引器と、
を備える。
【0010】
この構成の舌位置保持装置によれば、カプセルを舌に被せて吸引器によってカプセル内の空気を吸引することにより、舌をカプセルに吸着させて保持することができる。これにより、就寝時における舌の落ち込みを良好に抑え、上気道閉塞が生じるOSA、上気道抵抗症候群あるいはいびきなどの睡眠呼気障害を改善させることができる。さらには、静脈内鎮静時や全身麻酔時の舌の落ち込みを良好に抑えることもできる。
また、舌をカプセルに吸着させるための吸引器として、シリンジまたは球ポンプを備えるので、制御装置によって電動ポンプの駆動を制御して吸引力をコントロールする大掛かりな吸引装置を備えるものと比べ、装置の小型化及び低コスト化を図ることができる。また、舌へのカプセルの吸着後に、シリンジまたは球ポンプからなる吸引器を胸ポケットなどに入れて収容させることができるので、装置の装着状態での動きの自由度が高められ、寝返りも可能である。
【0011】
本発明の舌位置保持装置において、
前記カプセルを舌に被せた状態で口唇に当接するストッパが前記カプセルに装着されていてもよい。
【0012】
この構成の舌位置保持装置によれば、カプセルを舌に被せた状態で、ストッパが口唇に当接されるので、口腔内におけるカプセルの移動を規制することも、カプセルを口腔外の任意の位置で固定することもでき、就寝時、静脈内鎮静時、全身麻酔時における舌の落ち込みをより良好に抑えることができる。
【0013】
本発明の舌位置保持装置において、
前記カプセルを舌に被せた状態で少なくとも前歯が係合可能なスプリントが前記カプセルに装着されていてもよい。
【0014】
この構成の舌位置保持装置によれば、カプセルを舌に被せた状態で、スプリントに歯が係合されるので、口腔内におけるカプセルの移動を規制することや、スプリントから口腔外に平板を延長してチューブを固定し、カプセルを口腔外の任意の位置で固定することもでき、就寝時、静脈内鎮静時、全身麻酔時における舌の落ち込みをより良好に抑えることができる。
【0015】
本発明の舌位置保持装置において、
前記カプセルは、複数の貫通孔を有する内カプセルが内側に嵌め込まれた二重構造とされていてもよい。
【0016】
この構成の舌位置保持装置によれば、吸引器によってカプセル内の空気を吸引すると、内カプセルの複数の貫通孔から舌との間の空気が吸引され、これにより、舌が内カプセルに吸着される。これにより、内カプセルを備えた二重構造のカプセルをより良好に広範囲の舌表面に密着させることができ、就寝時、静脈内鎮静時、全身麻酔時における舌の落ち込みを良好に抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の舌位置保持装置によれば、コストを抑えつつ、小型で高性能な舌位置保持装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る舌位置保持装置の構成図である。
図2】舌位置保持装置を構成するカプセルを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は裏面図、(d)は正面図、(e)は後面図である。
図3】舌位置保持装置の使用例を説明する模式図である。
図4】吸引器の他の例を示す吸引器の側面図である。
図5】ストッパを備えるカプセルを示す図であって、(a)はストッパが装着されたカプセルの側面図、(b)は(a)におけるA-A断面図である。
図6】ストッパを備えるカプセルの使用例を説明する模式図である。
図7】スプリントを備える舌位置保持装置を示す図であって、(a)はカプセルを後方位(舌を通常の位置で保つような位置)に配置させた状態の平面図、(b)はカプセルを前方位に配置させた状態の平面図である。
図8】スプリントを説明する図であって、(a)はスプリントの側面図、(b)はスプリントの裏面図である。
図9】スプリントを説明する図であって、(a)はスプリントの正面図、(b)はチューブ及びカプセルに装着されたスプリントの正面図である。
図10】スプリントを備える舌位置保持装置の使用例を説明する模式図である。
図11】変形例に係るカプセルを示す図であって、(a)はカプセルの平面図、(b)は、カプセル及び内カプセルの平面図、(c)はカプセルの後面図、(d)は内カプセルの後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る舌位置保持装置の構成図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る舌位置保持装置100は、カプセル10と、チューブ20と、吸引器30とを備えている。この舌位置保持装置100は、ユーザの口腔に装着したカプセル10によってユーザの舌を保持し、就寝時における舌の落ち込みを抑え、OSA、上気道抵抗症候群あるいはいびきなどの睡眠呼吸障害を改善させたり、静脈内鎮静時や全身麻酔時に生じる舌の落ち込みを防止したりする装置である。
【0021】
カプセル10には、アダプタ40を介してチューブ20の一端が接続されている。チューブ20の他端は、吸引器30に接続されている。チューブ20は、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂から形成されている。安価なポリエチレン製のチューブ20を用いることにより、舌位置保持装置100のコストを抑えることができる。カプセル10は、例えば、シリコンから形成されており、カプセル10とチューブ20とを連結するアダプタ40は、例えば、プラスチック等の合成樹脂から形成されている。
【0022】
アダプタ40は、長手方向の中間部に大径部41を有する中空の棒状に形成されている。このアダプタ40は、その両端が接続筒部42とされており、一方の接続筒部42がカプセル10に接続され、他方の接続筒部42がチューブ20の一端に接続されている。なお、アダプタ40は、大径部41があってもなくてもよい。チューブ20の他端が接続された吸引器30は、外筒31と、押子32とを有するシリンジからなるもので、外筒31に押子32が挿し込まれている。外筒31の先端には、筒先部33が形成されており、この筒先部33にチューブ20が接続されている。
【0023】
図2は、舌位置保持装置を構成するカプセルを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は裏面図、(d)は正面図、(e)は後面図である。
【0024】
図2(a)~図2(e)に示すように、カプセル10は、後部が開口された湾曲した凹状に形成され、高さよりも大きな幅を有する幅広に形成されている。カプセル10は、舌尖の外形に沿った内形を有しており、後部の開口部11からユーザの舌尖が挿し込まれる。カプセル10には、その下部に、切り込み部12が形成されている。これにより、このカプセル10に舌尖を挿し込んだ際に、舌下の舌小帯が切り込み部12に配置され、舌小帯に対してカプセル10が干渉しないようになっている。
【0025】
カプセル10は、その前部に、接続部13を有している。接続部13は、接続孔14を有する筒状に形成されている。この接続部13には、その接続孔14にアダプタ40の接続筒部42が挿し込まれて接続される。
【0026】
カプセル10には、その内面に、複数の突起15及び複数の突条16が形成されている。突条16は、接続孔14から略放射状に形成されており、これらの突条16の間に突起15が形成されている。
【0027】
次に、上記構成の舌位置保持装置100を使用する場合について説明する。
図3は、舌位置保持装置の使用例を説明する模式図である。
【0028】
図3に示すように、舌位置保持装置100のカプセル10を、切り込み部12を下側にして口腔M内に入れる。そして、カプセル10の内部に、その後部の開口部11から舌Tを挿入して口を閉じる。
【0029】
この状態で、吸引器30の押子32を外筒31から引き出す。すると、吸引器30によってカプセル10内の空気がチューブ20を介して吸引され、カプセル10にユーザの舌Tが吸着される。これにより、舌Tがカプセル10に保持され、就寝時、静脈内鎮静時、全身麻酔時などにおける舌Tの落ち込みが抑えられる。
【0030】
舌Tを保持させたカプセル10から舌Tを外すには、吸引器30の押子32を外筒31へ押し込む。これにより、吸引器30によるカプセル10内の空気の吸引を解除し、カプセル10から舌Tを容易に外すことができる。
【0031】
また、舌位置保持装置100の吸引器30は、外筒31と押子32とからなるシリンジに限らない。例えば、図4に示すように、吸引器30としては、内部が空洞な球状に形成された球ポンプ33を用いてもよい。この球ポンプ33は、例えば、ウレタンゴムから形成されている。この球ポンプ33を吸引器30として備えた舌位置保持装置100では、この球ポンプ33を握って弾性変形させた状態でカプセル10に舌Tを挿入して口を閉じ、その後、球ポンプ33から手を離す。すると、弾性変形された球ポンプ33が復元しようとすることによってカプセル10内の空気がチューブ20を介して吸引される。これにより、カプセル10にユーザの舌Tを容易に吸着させることができる。また、この状態で球ポンプ33を握って弾性変形させることにより、カプセル10内の空気の吸引を解除させ、カプセル10から舌Tを容易に外すことができる。
【0032】
このように、本実施形態に係る舌位置保持装置100によれば、カプセル10を舌Tに被せて吸引器30によってカプセル10内の空気を吸引することにより、舌をカプセルに吸着させて保持することができる。これにより、就寝時における舌Tの落ち込みを良好に抑え、上気道閉塞によって生じるOSA、上気道抵抗症候群あるいはいびきなどの睡眠呼吸障害を改善させることができる。また、静脈内鎮静時、全身麻酔時における舌Tの落ち込みを防止することができる。
【0033】
また、舌Tをカプセル10に吸着させるための吸引器30として、シリンジまたは球ポンプを備えるので、制御装置によって電動ポンプの駆動を制御して吸引力をコントロールする大掛かりな吸引装置を備えるものと比べ、装置の小型化及び低コスト化を図ることができ、騒音の心配もない。また、舌Tへのカプセル10の吸着後に、シリンジまたは球ポンプからなる吸引器30を胸ポケットなどに入れて収容させることができるので、装置の装着状態での動きの自由度が高められ、寝返りも可能である。
【0034】
また、本実施形態に係る舌位置保持装置100には、図5(a)及び図5(b)に示すように、ストッパ50が装着可能とされている。
【0035】
このストッパ50は、例えば、ポリオレフィン等の合成樹脂からなる板状の部材である。ストッパ50は、上下の口唇の形態にあわせるために、その両端に屈曲部51を形成し、それぞれ同一方向へ僅かに屈曲されていてもよい。また、ストッパ50には、その中央に装着孔(図示略)が形成されており、この装着孔の直径はアダプタ40の接続筒部42の外径よりも小さく、アダプタ40の接続筒部42が嵌合される。そして、この装着孔にアダプタ40の接続筒部42を嵌合させ、この接続筒部42をチューブ20に接続することにより、カプセル10の前端側に対して間隔をあけた位置にストッパ50が装着される。接続筒部42とストッパ50の装着孔との間に抵抗が生じるため、ストッパ50に対する接続筒部42やカプセル10の位置関係が変わることはない。なお、ストッパ50は、その屈曲部51をカプセル10側へ向けて装着させる。大径部41を持たないアダプタ40の場合、ストッパ50の装着孔の直径はチューブ20の外径よりも小さく、チューブ20が抵抗をもって嵌合される。これにより、ストッパ50は、チューブ20上の任意の位置で固定できるため、カプセル10の前後的位置も自由に設定可能である。
【0036】
図6は、ストッパを備えるカプセルの使用例を説明する模式図である。なお、図6では、大径部41がないアダプタ40を用いた場合を例示している。図6に示すように、ストッパ50を装着した舌位置保持装置100では、カプセル10を口腔M内に入れて舌Tに装着した状態で、ストッパ50が上口唇Ra及び下口唇Rbに当接される。これにより、カプセル10が口腔M内の舌Tを、通常の位置で保つように配置され、就寝時、静脈内鎮静時、全身麻酔時における舌Tの落ち込みをより良好に抑えることができる。
【0037】
次に、スプリントを装着させた舌位置保持装置100について説明する。
図7は、スプリントを備える舌位置保持装置を示す図であって、(a)はカプセルを後方位(舌を通常の位置で保つような位置)に配置させた状態の平面図、(b)はカプセルを前方位に配置させた状態の平面図である。図8は、スプリントを説明する図であって、(a)はスプリントの側面図、(b)はスプリントの裏面図である。図9は、スプリントを説明する図であって、(a)はスプリントの正面図、(b)はチューブ及びカプセルに装着されたスプリントの正面図である。図10は、スプリントを備える舌位置保持装置の使用例を説明する模式図である。
【0038】
図7(a)及び図7(b)に示すように、本実施形態に係る舌位置保持装置100には、スプリントが装着可能とされている。このスプリント60は、例えば、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂や義歯床用アクリル系レジンからなる部材である。
【0039】
図8(a)及び図8(b)に示すように、スプリント60は、複数の係合穴61を有している。これらの係合穴61は、スプリント60の表裏におけるユーザの前歯Tha,Thbや、小臼歯、大臼歯に対応する位置に形成されており、これらの係合穴61には、ユーザの前歯Tha,Thbや、小臼歯、大臼歯が係合可能とされている。なお、スプリント60の係合穴61は、表裏のいずれか一方に形成してもよい。図8(a)及び図8(b)では、スプリント60の裏面側に係合穴61を形成した場合を例示している。例えば、表面側に係合穴61を形成した場合、係合穴61にユーザの上の前歯Thaや、小臼歯、大臼歯を係合させ、裏面側に係合穴61を形成した場合、係合穴61にユーザの下の前歯Thbや、小臼歯、大臼歯を係合させる。
【0040】
このスプリント60には、スプリント60と同じ素材の平板63が設けられている。この平板63は、スプリント60から前方へ延在されており、その最前方部位は90度上方に屈曲した装着片64とされている。図9(a)及び図9(b)に示すように、装着片64には、その中央に装着孔65が形成されている。この装着孔65には、前方側からチューブ20が嵌合される。そして、装着孔65に嵌合させたチューブ20とカプセル10の接続部13とをアダプタ40を介して嵌合させることにより、スプリント60がチューブ20に装着される。
【0041】
スプリント60の平板63の屈曲部位である装着片64に形成された装着孔65の直径は、チューブ20の外径よりも小さく、チューブ20が抵抗をもって嵌合される。このため、平板63の装着片64の装着孔65にチューブ20を嵌合させた状態で、平板63の装着片64は、チューブ20における任意の位置で固定できるため、チューブ20に対するカプセル10の前後的位置も自由に設定かつ固定可能である。
【0042】
このように、スプリント60を装着した舌位置保持装置100では、図10に示すように、カプセル10を口腔M内に入れて舌Tに装着して口を閉じる際に、スプリント60の係合穴61に前歯Tha,Thbや小臼歯、大臼歯を嵌め込んで係合させる。これにより、カプセル10が口腔M内の舌Tを、通常の位置で保つように配置させ、就寝時、静脈内鎮静時、全身麻酔時における舌Tの落ち込みをより良好に抑えることができる。
【0043】
また、スプリント60の平板63の装着片64は、チューブ20における任意の位置で固定でき、チューブ20に対するカプセル10の前後的位置が自由に設定かつ固定可能である。したがって、スプリント60を装着させた舌位置保持装置100は、図7(a)に示すように、スプリント60に対してカプセル10が後方位(舌を通常の位置で保つような位置)に配置された後方位保持状態で用いることもでき、また、図7(b)に示すように、スプリント60に対してカプセル10が前方位に配置された前方位保持状態で用いることもできる。例えば、スプリント60に対してカプセル10が前方位に配置された前方位保持状態で用いれば、舌Tをより前方で保持させることができ、就寝時、静脈内鎮静時、全身麻酔時における舌Tの落ち込みの抑制効果を高めることができる。
【0044】
次に、変形例に係るカプセルについて説明する。
図11は、変形例に係るカプセルを示す図であって、(a)はカプセルの平面図、(b)は、カプセル及び内カプセルの平面図、(c)はカプセルの後面図、(d)は内カプセルの後面図である。
【0045】
図11(a)~図11(d)に示すように、変形例に係るカプセル10は、内カプセル70を備えている。内カプセル70は、カプセル10と同様に、シリコンから形成されており、後部が開口された湾曲した凹状に形成され、舌尖の外形に沿った内形を有している。内カプセル70には、複数の貫通孔72が形成されている。また、この内カプセル70にも、舌下部の舌小帯との干渉を回避するための切り込み部73が形成されている。内カプセル70は、カプセル10に対して開口部11から嵌め込まれて装着される。これにより、カプセル10は、内側に内カプセル70を有する二重構造とされる。なお、変形例では、カプセル10は、その内面に、突条16があってもよく(図11(c)参照)、突条16がなくてもよい。
【0046】
この変形例に係る二重構造のカプセル10を備えた舌位置保持装置100では、内カプセル70に形成された開口部71から舌Tを挿入して口腔M内に装着する。この状態で、吸引器30による吸引を行うと、カプセル10と内カプセル70との間にある閉鎖空間内の空気がチューブ20を介して吸引される。さらに、内カプセル70の複数の貫通孔72から舌Tとの間の空気が吸引され、ユーザの舌Tが内カプセル70に吸着される。これにより、内カプセル70を備えた二重構造のカプセル10をより良好に舌Tに密着させることができ、就寝時、静脈内鎮静時、全身麻酔時における舌Tの落ち込みを良好に抑えることができる。
【符号の説明】
【0047】
10 カプセル
20 チューブ
30 吸引器
40 アダプタ
50 ストッパ
60 スプリント
70 内カプセル
72 貫通孔
100 舌位置保持装置
M 口腔
Ra 上口唇
Rb 舌口唇
T 舌
Tha,Thb 前歯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11