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特開2023-20523冷熱回収システムおよび冷熱回収システムの起動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020523
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】冷熱回収システムおよび冷熱回収システムの起動方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 27/00 20060101AFI20230202BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20230202BHJP
   F28F 27/00 20060101ALI20230202BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20230202BHJP
   F01K 9/00 20060101ALN20230202BHJP
   F01D 25/32 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
F25B27/00 Q
B63B25/16 H
F28F27/00 511F
F25B43/00 A
F01K9/00 D
F01K9/00 F
F01D25/32 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125923
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】平戸 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 亮
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 英司
(72)【発明者】
【氏名】川波 晃
(57)【要約】      (修正有)
【課題】冷熱回収システムの起動時における熱交換器の閉塞を抑制できる冷熱回収システム、および該冷熱回収システムの起動方法を提供する。
【解決手段】冷熱回収システム1は、液化ガスから冷熱用熱媒体に冷熱エネルギーを伝達する第1の熱交換器11と、第1の熱交換器よりも下流側に設けられた冷熱用ポンプ31を含む冷熱回収サイクル3と、冷熱用ポンプと第1の熱交換器との間を流れる冷熱用熱媒体に、熱媒から熱エネルギーを伝達する第2の熱交換器14と、第1の熱交換器と冷熱用ポンプとの間に設けられ、冷熱用熱媒体を気相と液相とに分離する気液分離器5と、冷熱用ポンプと第2の熱交換器の間から気液分離器に液相の冷熱用熱媒体を戻すための液戻りライン6と、液戻りラインを介して気液分離器に戻される液相の冷熱用熱媒体、又は気液分離器の内部に存在する冷熱用熱媒体に、液化ガスの冷熱エネルギーを伝達する第3の熱交換器7と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスを貯留するように構成された液化ガス貯留装置を有する船舶又は浮体に設置される冷熱回収システムであって、
前記液化ガス貯留装置から抜き出された前記液化ガスから冷熱用熱媒体に冷熱エネルギーを伝達するように構成された第1の熱交換器と、
前記冷熱用熱媒体を循環させるように構成された冷熱回収サイクルであって、前記第1の熱交換器よりも下流側に設けられた前記冷熱用熱媒体を送るための冷熱用ポンプを少なくとも含む冷熱回収サイクルと、
前記冷熱回収サイクルにおける前記冷熱用ポンプよりも下流側且つ前記第1の熱交換器よりも上流側を流れる前記冷熱用熱媒体に、熱媒から熱エネルギーを伝達するように構成された第2の熱交換器と、
前記冷熱回収サイクルにおける前記第1の熱交換器と前記冷熱用ポンプとの間に設けられ、前記冷熱用熱媒体を気相の冷熱用熱媒体と液相の冷熱用熱媒体とに分離するように構成された気液分離器と、
前記冷熱回収サイクルにおける前記冷熱用ポンプよりも下流側且つ前記第2の熱交換器よりも上流側から前記気液分離器に前記液相の冷熱用熱媒体を戻すための液戻りラインと、
前記液戻りラインを介して前記気液分離器に戻される前記液相の冷熱用熱媒体、又は前記気液分離器の内部に存在する前記冷熱用熱媒体、の何れかに、前記液化ガス貯留装置から抜き出された前記液化ガスの冷熱エネルギーを伝達するように構成された第3の熱交換器と、を備える、冷熱回収システム。
【請求項2】
前記第3の熱交換器は、前記液戻りラインを流れる前記液相の冷熱用熱媒体に、前記液化ガス貯留装置から抜き出された前記液化ガスの冷熱エネルギーを伝達するように構成された、
請求項1に記載の冷熱回収システム。
【請求項3】
前記第3の熱交換器は、前記気液分離器の内部に存在する前記冷熱用熱媒体に、前記液化ガス貯留装置から抜き出された前記液化ガスの冷熱エネルギーを伝達するように構成された、
請求項1に記載の冷熱回収システム。
【請求項4】
前記液戻りラインは、
前記第3の熱交換器が設けられた第1の液戻りラインと、
前記第3の熱交換器を迂回する第2の液戻りラインと、を含む、
請求項2に記載の冷熱回収システム。
【請求項5】
前記第1の熱交換器で気化された前記液化ガスを前記船舶又は前記浮体の主機エンジンに供給するための燃料供給ラインと、
前記第3の熱交換器から前記液化ガス又は前記液化ガスが気化した気化ガスの少なくとも一方を前記主機エンジンとは別体から構成されたガス燃焼装置に導くための起動時ガス供給ラインと、をさらに備える、
請求項1~4の何れか1項に記載の冷熱回収システム。
【請求項6】
前記冷熱回収サイクルにおける前記液戻りラインの上流端との接続部と前記第2の熱交換器との間に設けられて、前記第2の熱交換器に導かれる前記液相の冷熱用熱媒体の流量を調整可能に構成された第1の流量調整弁をさらに備える、
請求項1~5の何れか1項に記載の冷熱回収システム。
【請求項7】
前記液化ガス貯留装置と前記第3の熱交換器とを繋ぐ液化ガス導入ラインと、
前記液化ガス導入ラインに設けられて、前記第3の熱交換器に導かれる前記液化ガスの流量を調整可能に構成された第2の流量調整弁と、
前記気液分離器内の前記冷熱用熱媒体の温度を取得可能に構成された温度取得装置と、
前記温度取得装置により取得される前記冷熱用熱媒体の温度が所定範囲内に収まるように、前記第2の流量調整弁の開度を制御する弁開度制御装置と、をさらに備える、
請求項1~6の何れか1項に記載の冷熱回収システム。
【請求項8】
液化ガスを貯留するように構成された液化ガス貯留装置を有する船舶又は浮体に設置される冷熱回収システムの起動方法であって、
前記冷熱回収システムは、
前記液化ガス貯留装置から抜き出された前記液化ガスから冷熱用熱媒体に冷熱エネルギーを伝達するように構成された第1の熱交換器と、
前記冷熱用熱媒体を循環させるように構成された冷熱回収サイクルであって、前記第1の熱交換器よりも下流側に設けられた前記冷熱用熱媒体を送るための冷熱用ポンプを少なくとも含む冷熱回収サイクルと、
前記冷熱回収サイクルにおける前記冷熱用ポンプよりも下流側且つ前記第1の熱交換器よりも上流側を流れる前記冷熱用熱媒体に、熱媒から熱エネルギーを伝達するように構成された第2の熱交換器と、を備え、
前記冷熱回収システムの起動方法は、
前記冷熱回収サイクルにおける前記第1の熱交換器と前記冷熱用ポンプとの間に設けられた気液分離器により、前記冷熱用熱媒体を気相の冷熱用熱媒体と液相の冷熱用熱媒体とに分離する気液分離ステップと、
前記冷熱用ポンプを駆動させ、前記気液分離ステップで分離した前記液相の冷熱用熱媒体を、前記冷熱回収サイクルにおける前記冷熱用ポンプよりも下流側且つ前記第2の熱交換器よりも上流側と、前記気液分離器とを接続する液戻りラインを介して、前記気液分離器に前記液相の冷熱用熱媒体を戻す循環ステップと、
前記循環ステップにおいて、前記液戻りラインを介して前記気液分離器に戻される前記液相の冷熱用熱媒体、又は前記気液分離器の内部に存在する前記冷熱用熱媒体、の何れかに、前記液化ガス貯留装置から抜き出された前記液化ガスの冷熱エネルギーを伝達して冷却する冷却ステップと、を備える、
冷熱回収システムの起動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液化ガスの冷熱エネルギーを回収するための冷熱回収システム、および該冷熱回収システムの起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化ガス(例えば、液化天然ガス)は、輸送や貯蔵を目的として液化され、都市ガスや火力発電所などの供給先に供給するに際して、海水などの熱媒体で昇温して気化させることが行われる。液化ガスを気化させる際に、液化ガスの冷熱エネルギーを海水に捨てるのではなく回収することが行われることがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、液化天然ガスの冷熱エネルギーを電力として回収する冷熱発電サイクルが開示されている。この冷熱発電サイクルとしては、二次媒体ランキンサイクル方式などが知られている(特許文献1参照)。二次媒体ランキンサイクル方式は、クローズドループ内を循環する二次媒体を、蒸発器にて海水を熱源として加熱して蒸発させ、この蒸気を冷熱発電用のタービンに導入して動力を得た後に、液化天然ガスにて冷却、凝縮させる方式である。
【0004】
液化天然ガスの供給先の夫々に対応する陸用のLNG基地を設けることは、土地の確保などに費用がかかるため困難である。このため、液化天然ガスを貯蔵するLNG貯蔵設備や、液化天然ガスを再ガス化する再ガス化設備を備える船舶を海上に係留し、該船舶により再ガス化した液化天然ガスを、パイプラインを介して陸上の供給先や海上のパワーゲージ(浮体式の発電所)などに送ることが行われることがある。
【0005】
船舶は、陸上設備に比べて拡張性に乏しいため、冷熱発電設備を搭載するためには、冷熱発電システムの小型化、特に熱交換器の小型化が重要となる。小型の熱交換器としては、例えばプリント回路熱交換器(PCHE)やプレート式熱交換器などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭61-59803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方の熱交換対象の凝固点よりも他方の熱交換対象が低温であると、熱交換器での熱交換において一方の熱交換対象が凝固して、凝固した熱交換対象が熱交換器の表面に付着して熱交換器を閉塞させる虞がある。小型の熱交換器は、大型の熱交換器(例えば、シェルチューブ式の熱交換器)に比べて、熱交換器の閉塞リスクが高いため、信頼性に課題がある。
【0008】
冷熱発電サイクルでは、熱交換器において冷熱発電サイクルを循環する二次媒体を液化天然ガスにより冷却するときに、熱交換器が凍結する虞がある。特に冷熱発電サイクルを循環する二次媒体の流量が小量である冷熱発電サイクルの起動時には、定常運転時に比べて二次媒体の温度が低下するため熱交換器が凍結する可能性が高い。熱交換器の凍結を防止するために、熱交換器に供給される液化天然ガスを予め加熱する加熱ラインを設けることが考えられるが、このような加熱ラインは、冷熱発電サイクルを備えるシステムの大型化や高価格化を招くため、好ましくはない。
【0009】
また、熱交換器の凍結を防止するために、冷熱発電サイクルの起動時に冷熱発電サイクルを循環する二次媒体の流量を増加させることが考えられる。しかしながら、冷熱発電サイクルの停止時に冷熱発電サイクルへの周辺空気からの入熱により、冷熱発電サイクルにおいて二次媒体が気化することがある。このため、冷熱発電サイクルの起動時は、冷熱発電サイクルの定常運転時に比べて、二次媒体を循環させるための循環用ポンプにおける、気相の二次媒体の占める割合が大きくなっている。二次媒体を循環させるための循環用ポンプの循環量を増加させると、冷熱発電サイクルの起動時に循環用ポンプのガス噛みにより起動不良を起こす可能性が高まるという問題がある。
【0010】
上述した事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態の目的は、冷熱回収システムの起動時における熱交換器の閉塞を抑制できる冷熱回収システム、および該冷熱回収システムの起動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムは、
液化ガスを貯留するように構成された液化ガス貯留装置を有する船舶又は浮体に設置される冷熱回収システムであって、
前記液化ガス貯留装置から抜き出された前記液化ガスから冷熱用熱媒体に冷熱エネルギーを伝達するように構成された第1の熱交換器と、
前記冷熱用熱媒体を循環させるように構成された冷熱回収サイクルであって、前記第1の熱交換器よりも下流側に設けられた前記冷熱用熱媒体を送るための冷熱用ポンプを少なくとも含む冷熱回収サイクルと、
前記冷熱回収サイクルにおける前記冷熱用ポンプよりも下流側且つ前記第1の熱交換器よりも上流側を流れる前記冷熱用熱媒体に、熱媒から熱エネルギーを伝達するように構成された第2の熱交換器と、
前記冷熱回収サイクルにおける前記第1の熱交換器と前記冷熱用ポンプとの間に設けられ、前記冷熱用熱媒体を気相の冷熱用熱媒体と液相の冷熱用熱媒体とに分離するように構成された気液分離器と、
前記冷熱回収サイクルにおける前記冷熱用ポンプよりも下流側且つ前記第2の熱交換器よりも上流側から前記気液分離器に前記液相の冷熱用熱媒体を戻すための液戻りラインと、
前記液戻りラインを介して前記気液分離器に戻される前記液相の冷熱用熱媒体、又は前記気液分離器の内部に存在する前記冷熱用熱媒体、の何れかに、前記液化ガス貯留装置から抜き出された前記液化ガスの冷熱エネルギーを伝達するように構成された第3の熱交換器と、を備える。
【0012】
本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムの起動方法は、
液化ガスを貯留するように構成された液化ガス貯留装置を有する船舶又は浮体に設置される冷熱回収システムの起動方法であって、
前記冷熱回収システムは、
前記液化ガス貯留装置から抜き出された前記液化ガスから冷熱用熱媒体に冷熱エネルギーを伝達するように構成された第1の熱交換器と、
前記冷熱用熱媒体を循環させるように構成された冷熱回収サイクルであって、前記第1の熱交換器よりも下流側に設けられた前記冷熱用熱媒体を送るための冷熱用ポンプを少なくとも含む冷熱回収サイクルと、
前記冷熱回収サイクルにおける前記冷熱用ポンプよりも下流側且つ前記第1の熱交換器よりも上流側を流れる前記冷熱用熱媒体に、熱媒から熱エネルギーを伝達するように構成された第2の熱交換器と、を備え、
前記冷熱回収システムの起動方法は、
前記冷熱回収サイクルにおける前記第1の熱交換器と前記冷熱用ポンプとの間に設けられた気液分離器により、前記冷熱用熱媒体を気相の冷熱用熱媒体と液相の冷熱用熱媒体とに分離する気液分離ステップと、
前記冷熱用ポンプを駆動させ、前記気液分離ステップで分離した前記液相の冷熱用熱媒体を、前記冷熱回収サイクルにおける前記冷熱用ポンプよりも下流側且つ前記第2の熱交換器よりも上流側と、前記気液分離器とを接続する液戻りラインを介して、前記気液分離器に前記液相の冷熱用熱媒体を戻す循環ステップと、
前記循環ステップにおいて、前記液戻りラインを介して前記気液分離器に戻される前記液相の冷熱用熱媒体、又は前記気液分離器の内部に存在する前記冷熱用熱媒体、の何れかに、前記液化ガス貯留装置から抜き出された前記液化ガスの冷熱エネルギーを伝達して冷却する冷却ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、冷熱回収システムの起動時における熱交換器の閉塞を抑制できる冷熱回収システム、および該冷熱回収システムの起動方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。
図2】本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムの起動方法のフロー図である。
図3図3は、本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムにおける制御の一例を説明するための説明図である。
図4】本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。
図5】本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。
図6】本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。
図7】本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。
図8】本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。
図9】本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムの制御装置を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0016】
(船舶、浮体)
図1は、本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システム1を備える船舶2A又は浮体2Bの構成を概略的に示す概略構成図である。幾つかの実施形態にかかる冷熱回収システム1は、図1に示されるように、船舶2Aや浮体2Bに設置される。船舶2Aや浮体2Bは、水上に浮遊可能な構造体である。船舶2Aや浮体2Bは、液化ガスを貯留するように構成された液化ガス貯留装置(例えば、液化ガスタンク)21と、冷熱回収システム1と、を有する。図示される実施形態では、船舶2Aや浮体2Bは、プロペラなどの不図示の推進器および該推進器を駆動させるように構成された不図示の推進装置を有し、該推進装置を駆動させることで自走可能に構成された構造体である。なお、本開示は、船舶2Aや浮体2Bが自走するための推進装置を有さない自走不能な構造体である場合にも適用可能である。
【0017】
(冷熱回収システム)
冷熱回収システム1は、図1に示されるように、第1の熱交換器11と、液化ガス貯留装置21から第1の熱交換器11に液化ガスを供給するための液化ガス供給ライン12と、第1の熱交換器11において液化ガスが気化することで生成された気化ガスを供給するための気化ガス供給ライン13と、第1の熱交換器11において液化ガスと熱交換された冷熱用熱媒体を循環させるように構成された冷熱回収サイクル3と、第2の熱交換器14と、気液分離器5と、を備える。
【0018】
(冷熱回収サイクル)
冷熱回収サイクル3は、冷熱用熱媒体をオーガニックランキンサイクルの下で循環させるように構成されている。以下の説明では、冷熱回収サイクル3における冷熱用熱媒体の循環方向における上流側を単に上流側と云うことがあり、上記循環方向における下流側を単に下流側と云うことがある。冷熱回収サイクル3は、冷熱用熱媒体を送るための冷熱用ポンプ31と、冷熱用熱媒体により駆動するように構成された冷熱用タービン32と、を含む。冷熱用ポンプ31は、冷熱回収サイクル3において、第1の熱交換器11よりも下流側且つ第2の熱交換器14よりも上流側に設けられている。冷熱用タービン32は、冷熱回収サイクル3において、第1の熱交換器11よりも上流側且つ第2の熱交換器14よりも下流側に設けられている。
【0019】
以下、液化ガスの供給源である液化ガス貯留装置21から供給される液化ガスの具体例として液化天然ガス(LNG)を、冷熱回収サイクル3を循環する冷熱用熱媒体の具体例としてプロパンを例に挙げて説明するが、本開示は、液化天然ガス以外の液化ガス(液化石油ガス、液体水素など)を、液化ガス貯留装置21から供給される液化ガスとした場合にも適用可能である。また、本開示は、プロパン以外の熱媒体(例えば、有機媒体)を、冷熱回収サイクル3を流れる冷熱用熱媒体とした場合にも適用可能である。なお、冷熱用熱媒体は、水よりも沸点や凝固点が低い。
【0020】
(第1の熱交換器)
第1の熱交換器(液化ガス気化器、冷熱側凝縮器)11は、液化ガス供給ライン12から送られた液化ガスと、冷熱回収サイクル3において、冷熱用タービン32よりも下流側且つ冷熱用ポンプ31よりも上流側を流れる冷熱用熱媒体と、の間で熱交換を行うように構成されている。図示される実施形態では、第1の熱交換器11は、液化ガス供給ライン12から送られた液化ガスが流れる第1の液化ガス側流路111と、冷熱回収サイクル3を循環する冷熱用熱媒体が流れる第1の冷熱側流路112と、を含む。第1の液化ガス側流路111を流れる液化ガスは、第1の冷熱側流路112を流れる冷熱用熱媒体よりも低温である。
【0021】
第1の熱交換器11では、第1の液化ガス側流路111を流れる液化ガスと第1の冷熱側流路112を流れる冷熱用熱媒体との間で熱交換が行われて、第1の液化ガス側流路111を流れる液化ガスの冷熱エネルギーが、第1の冷熱側流路112を流れる冷熱用熱媒体に伝達される。これにより、第1の液化ガス側流路111を流れる液化ガスが加熱され、気化するとともに、第1の冷熱側流路112を流れる冷熱用熱媒体が冷却され、凝縮する。
【0022】
(第2の熱交換器)
第2の熱交換器(冷熱側蒸発器)14は、冷熱回収システム1の外部から導入された外部水(熱媒)と、冷熱回収サイクル3において、冷熱用ポンプ31よりも下流側且つ冷熱用タービン32よりも上流側を流れる冷熱用熱媒体と、の間で熱交換を行うように構成されている。図示される実施形態では、第2の熱交換器14は、冷熱用熱媒体が流れる第2の冷熱側流路141と、外部水が流れる熱媒側流路142と、を含む。第2の冷熱側流路141(第2の熱交換器14)は、冷熱回収サイクル3において、冷熱用ポンプ31よりも下流側且つ冷熱用タービン32よりも上流側に設けられている。熱媒側流路142を流れる外部水は、第2の冷熱側流路141を流れる冷熱用熱媒体よりも高温である。
【0023】
第2の熱交換器14では、第2の冷熱側流路141を流れる冷熱用熱媒体と熱媒側流路142を流れる外部水との間で熱交換が行われて、熱媒側流路142を流れる外部水の熱エネルギーが、第2の冷熱側流路141を流れる冷熱用熱媒体に伝達される。これにより、第2の冷熱側流路141を流れる冷熱用熱媒体が加熱され、気化する。
【0024】
(液化ガス供給系統)
液化ガス供給ライン12の一方側(上流端)が液化ガス貯留装置21に接続され、液化ガス供給ライン12の他方側(下流端)が第1の液化ガス側流路111の上流端(第1の熱交換器11のガス入口)に接続されている。気化ガス供給ライン13の一方側(上流端)が第1の液化ガス側流路111の下流端(第1の熱交換器11のガス出口)に接続され、気化ガス供給ライン13の他方側(下流端)が気化ガスの供給先22に接続されている。なお、気化ガスの供給先22は、船舶2Aや浮体2Bの外部に設けられた設備(例えば、陸上の発電設備やガス貯蔵設備)であってもよいし、船舶2Aや浮体2Bに搭載された設備であってもよい。
【0025】
冷熱回収システム1は、液化ガス供給ライン12に設けられた液化ガス用ポンプ15をさらに備える。液化ガス用ポンプ15は、液化ガス供給ライン12に設けられた不図示の動翼を有し、この動翼を液化ガス用ポンプ15に供給された電力などにより回転させることで、液化ガス供給ライン12の下流側(第1の熱交換器11が位置する側)に液化ガスを送るように構成されている。液化ガス用ポンプ15を駆動させることで、液化ガス貯留装置21に貯留された液化ガスが液化ガス供給ライン12に抜き出されて、液化ガス供給ライン12を通じて第1の熱交換器11の第1の液化ガス側流路111に送られる。第1の熱交換器11の第1の液化ガス側流路111において液化ガスが気化することで生成された気化ガスは、液化ガス用ポンプ15により、気化ガス供給ライン13を通じてガスの供給先22に送られる。
【0026】
(外部水供給系統)
冷熱回収システム1は、外部水の供給元41から冷熱回収システム1の外部水を熱媒とする熱交換器(第2の熱交換器14)に外部水を供給するための外部水供給ライン42と、外部水を熱媒とする上記熱交換器から排出された外部水を外部水の排出先43に排出するための外部水排出ライン44と、外部水供給ライン42に設けられた外部水用ポンプ45と、をさらに備える。
【0027】
外部水供給ライン42の一方側(上流端)が外部水の供給元41に接続され、外部水供給ライン42の他方側(下流端)が熱媒側流路142の上流端(第2の熱交換器14の熱媒入口)に接続されている。外部水排出ライン44の一方側(上流端)が熱媒側流路142の下流端(第2の熱交換器14の熱媒出口)に接続され、外部水排出ライン44の他方側(下流端)が外部水の排出先43に接続されている。外部水は、熱交換器において熱媒として熱交換対象を加熱できる水(熱交換対象よりも高温の水)であればよく、常温の水であってもよい。外部水は、船舶2Aや浮体2Bにおいて入手が容易な水(例えば、海水などの船外水や船舶2Aのエンジンを冷却したエンジン冷却水など)が好ましい。
【0028】
外部水の供給元41は、船舶2Aや浮体2Bの外部から外部水(例えば、海水)を取り込むために船舶2Aや浮体2Bに設けられた取水口であってもよいし、船舶2Aや浮体2Bの内部に設けられた設備(例えば、貯水タンク)であってもよい。また、外部水の排出先43は、船舶2Aや浮体2Bの外部に外部水を排出するために船舶2Aや浮体2Bに設けられた排水口であってもよいし、船舶2Aや浮体2Bの内部に設けられた設備(例えば、排水タンク)であってもよい。
【0029】
外部水用ポンプ45は、外部水供給ライン42に設けられた不図示の動翼を有し、この動翼を外部水用ポンプ45に供給された電力などにより回転させることで、外部水供給ライン42の下流側(第2の熱交換器14が位置する側)に外部水を送るように構成されている。外部水用ポンプ45を駆動させることで、外部水が外部水の供給元41から外部水供給ライン42に抜き出されて、外部水供給ライン42を通じて上記外部水を熱媒とする熱交換器(第2の熱交換器14)に送られる。
【0030】
(冷熱用熱媒体循環系統)
冷熱回収サイクル3は、図1に示されるように、第1の接続ライン33と、第2の接続ライン34と、をさらに含む。第1の接続ライン33は、第1の冷熱側流路112の下流端(第1の熱交換器11の冷熱用熱媒体の出口)と、第2の冷熱側流路141の上流端(第2の熱交換器14の冷熱用熱媒体の入口)とを接続している。第1の接続ライン33には、上述した冷熱用ポンプ31が設けられている。第2の接続ライン34は、第2の冷熱側流路141の下流端(第2の熱交換器14の冷熱用熱媒体の出口)と、第1の冷熱側流路112の上流端(第1の熱交換器11の冷熱用熱媒体の入口)とを接続している。第2の接続ライン34には、上述した冷熱用タービン32が設けられている。
【0031】
(気液分離器)
気液分離器5は、冷熱用熱媒体を気相と液相とに分離するように構成されている。気液分離器5は、冷熱回収サイクル3において、第1の冷熱側流路112(第1の熱交換器11)よりも下流側、且つ冷熱用ポンプ31よりも上流側に設けられている。具体的には、気液分離器5は、第1の接続ライン33における冷熱用ポンプ31よりも上流側に設けられている。
【0032】
気液分離器5は、第1の接続ライン33を通じて第1の冷熱側流路112(第1の熱交換器11)から送られた冷熱用熱媒体が導入される内部空間51を内部に画定するように構成された本体部52と、内部空間51に冷熱用熱媒体を導入するための導入口53と、内部空間51から液相の冷熱用熱媒体を気液分離器5の外部に吐出するための液相吐出口54と、を含む。
【0033】
内部空間51は、液相の冷熱用熱媒体が貯留される下方側貯留空間51Bと、下方側貯留空間51Bよりも上方に、下方側貯留空間51Bに連通して設けられた気相の冷熱用熱媒体が貯留される上方側貯留空間51Aと、を含む。液相吐出口54は、下方側貯留空間51Bに連通している。
【0034】
上述した第1の接続ライン33は、第1の冷熱側流路112の下流端と導入口53とを繋ぐ第1の上段接続ライン33Aと、液相吐出口54と冷熱用ポンプ31のポンプ入口311とを繋ぐ第1の中段接続ライン33Bと、冷熱用ポンプ31のポンプ出口312と第2の冷熱側流路141の上流端とを繋ぐ第1の下段接続ライン33Cと、を含む。
【0035】
第1の熱交換器11にて冷却された冷熱用熱媒体は、第1の上段接続ライン33Aを通じて気液分離器5に導かれる。導入口53から内部空間51に流入した冷熱用熱媒体は、内部空間51において液相と気相とに分離する。
【0036】
(冷熱用ポンプ)
冷熱用ポンプ31は、冷熱回収サイクル3の下流側(第2の熱交換器14が位置する側)に冷熱用熱媒体を送るように構成されている。冷熱用ポンプ31は、第1の接続ライン33に設けられた不図示の動翼を有し、この動翼を冷熱用ポンプ31に供給された電力などにより回転させることで、第1の接続ライン33の下流側に液相の冷熱用熱媒体を送るように構成されている。
【0037】
冷熱用ポンプ31を駆動させることで、下方側貯留空間51Bに貯留された液相の冷熱用熱媒体が液相吐出口54および第1の中段接続ライン33Bを通じて、冷熱用ポンプ31に導かれて冷熱用ポンプ31により昇圧される。冷熱用ポンプ31により昇圧された液相の冷熱用熱媒体は、冷熱用ポンプ31により、第1の下段接続ライン33Cを通じて第2の冷熱側流路141(第2の熱交換器14)に送られる。
【0038】
(冷熱用ポンプ関連機器)
冷熱回収システム1は、図1に示されるように、冷熱回収サイクル3における冷熱用ポンプ31よりも下流側且つ第2の熱交換器14よりも上流側から気液分離器5に液相の冷熱用熱媒体を戻すための液戻りライン6と、冷熱回収サイクル3における液戻りライン6の上流端との接続部P1と第2の熱交換器14との間に設けられた第1の流量調整弁35と、をさらに備える。第1の流量調整弁35は、第2の熱交換器14に導かれる液相の冷熱用熱媒体の流量を調整可能に構成されている。
【0039】
図示される実施形態では、気液分離器5は、液戻りライン6から内部空間51に液相の冷熱用熱媒体を導入するための液戻り口55をさらに含む。液戻り口55は、内部空間51に連通している。液戻りライン6の一方側(上流端)が第1の下段接続ライン33Cの接続部P1に接続され、液戻りライン6の他方側(下流端)が液戻り口55に接続されている。第1の流量調整弁35は、第1の下段接続ライン33Cの接続部P1よりも下流側に設けられている。第1の流量調整弁35は、冷熱用熱媒体の流路を開閉する不図示の弁体を可動させることで、上記弁体よりも下流側(第2の熱交換器14側)に供給される冷熱用熱媒体の流量を調整可能である。なお、第1の流量調整弁35は、全閉と全開に開度調整可能な開閉弁でもよいし、全閉と全開とこれらの間の少なくとも1つの中間開度に開度調整可能な開度調整弁でもよい。
【0040】
(冷熱用タービン)
冷熱用タービン32には、冷熱用ポンプ31により昇圧され、第2の熱交換器14にて昇温された冷熱用熱媒体が作動流体として導入される。冷熱用タービン32は、回転シャフト321と、回転シャフト321に取り付けられたタービン翼322と、タービン翼322を回転可能に収容するケーシング323と、を含む。ケーシング323には、冷熱用熱媒体をケーシング323の内部に導入するための導入口324と、タービン翼322を通過した冷熱用熱媒体をケーシング323の外部に吐出するための吐出口325と、が形成されている。冷熱用タービン32は、導入口324を通じてケーシング323の内部に導入された冷熱用熱媒体のエネルギーにより、タービン翼322を回転させるように構成されている。タービン翼322を通過した冷熱用熱媒体は、吐出口325を通じてケーシング323の外部に排出される。
【0041】
冷熱回収サイクル3は、タービン翼322が発生させた回転力を動力として回収するように構成されている。図示される実施形態では、冷熱回収サイクル3は、冷熱用タービン32の駆動により発電を行うように構成された冷熱用の発電機326をさらに含む。冷熱用の発電機326は、回転シャフト321に機械的に接続されており、タービン翼322の回転力を電力に変換するように構成されている。なお、他の幾つかの実施形態では、冷熱回収サイクル3は、タービン翼322が発生させた回転力を電力に変換するのではなく、動力伝達装置(例えば、カップリングやベルト、プーリなど)によりそのまま動力として回収してもよい。
【0042】
上述した第2の接続ライン34は、第2の冷熱側流路141の下流端と冷熱用タービン32の導入口324とを繋ぐ第2の上段接続ライン34Aと、冷熱用タービン32の吐出口325と第1の冷熱側流路112の上流端とを繋ぐ第2の下段接続ライン34Bと、を含む。
【0043】
(冷熱用タービン関連機器)
冷熱回収サイクル3は、図1に示されるように、第2の接続ライン34の冷熱用タービン32よりも上流側と下流側とを冷熱用タービン32を迂回して繋ぐタービンバイパスライン36と、タービン側流量調整弁37と、タービンバイパス側流量調整弁38と、をさらに含む。
【0044】
タービンバイパスライン36の一方側(上流端)が、第2の上段接続ライン34Aの分岐部P2に接続され、タービンバイパスライン36の他方側(下流端)が、第2の下段接続ライン34Bの合流部P3に接続されている。タービン側流量調整弁37は、第2の上段接続ライン34Aの分岐部P2よりも下流側(冷熱用タービン32側)に設けられている。タービンバイパス側流量調整弁38は、タービンバイパスライン36に設けられている。タービン側流量調整弁37およびタービンバイパス側流量調整弁38の夫々は、冷熱用熱媒体の流路を開閉する不図示の弁体を可動させることで、上記弁体よりも下流側に供給される冷熱用熱媒体の流量を調整可能である。なお、タービン側流量調整弁37およびタービンバイパス側流量調整弁38の夫々は、全閉と全開に開度調整可能な開閉弁でもよいし、全閉と全開とこれらの間の少なくとも1つの中間開度に開度調整可能な開度調整弁でもよい。
【0045】
タービン側流量調整弁37を開き(全開又は中間開度)、タービンバイパス側流量調整弁38を全閉とすることで、冷熱用タービン32を経由させて第1の熱交換器11に冷熱用熱媒体を送ることができる。また。タービン側流量調整弁37を全閉とし、タービンバイパス側流量調整弁38を開く(全開又は中間開度)ことで、タービンバイパスライン36を経由させて第1の熱交換器11に冷熱用熱媒体を送ることができる。
【0046】
(第3の熱交換器)
幾つかの実施形態にかかる冷熱回収システム1は、図1に示されるように、液戻りライン6を介して気液分離器5に戻される液相の冷熱用熱媒体、又は気液分離器5の内部に存在する前記冷熱用熱媒体、の何れかに、液化ガス貯留装置21から抜き出された液化ガスの冷熱エネルギーを伝達するように構成された第3の熱交換器7をさらに備える。
【0047】
第3の熱交換器(予冷器)7は、液化ガス貯留装置21から抜き出された液化ガスと、気液分離器5や液戻りライン6を介して循環する冷熱用熱媒体と、の間で熱交換を行うように構成されている。図1に示される実施形態では、第3の熱交換器7(7A)は、液戻りライン6に設けられた冷熱用熱媒体が流れる第3の冷熱側流路71と、液化ガスが流れる第2の液化ガス側流路72と、を含む。第3の冷熱側流路71を流れる冷熱用熱媒体は、第2の液化ガス側流路72を流れる液化ガスよりも高温である。
【0048】
第3の熱交換器7(7A)では、第3の冷熱側流路71を流れる冷熱用熱媒体と第2の液化ガス側流路72を流れる液化ガスとの間で熱交換が行われて、第2の液化ガス側流路72を流れる液化ガスの冷熱エネルギーが、第3の冷熱側流路71を流れる冷熱用熱媒体に伝達される。これにより、第3の冷熱側流路71を流れる冷熱用熱媒体が冷却される。
【0049】
(予冷器用液化ガス導入系統)
冷熱回収システム1は、図1に示されるように、液化ガス貯留装置21から第3の熱交換器7に液化ガスを導くための液化ガス導入ライン81と、第3の熱交換器7から液化ガスが気化した気化ガスを導くためのガス排出ライン82と、をさらに備える。
【0050】
図1に示される実施形態では、液化ガス導入ライン81の一方側(上流端)は、液化ガス供給ライン12の液化ガス用ポンプ15よりも下流側の接続位置P4に接続されている。液化ガス導入ライン81の他方側(下流端)は、第2の液化ガス側流路72の上流端(第3の熱交換器7のガス入口)に接続されている。ガス排出ライン82(82A)の一方側(上流端)は、第2の液化ガス側流路72の下流端(第3の熱交換器7のガス出口)に接続されている。ガス排出ライン82(82A)の他方側(下流端)は、気化ガス供給ライン13の接続位置P5に接続されている。
【0051】
液化ガス用ポンプ15を駆動させることで、液化ガス貯留装置21に貯留された液化ガスが液化ガス供給ライン12に抜き出されて、液化ガス供給ライン12の接続位置P4よりも上流側の部分および液化ガス導入ライン81を通じて第3の熱交換器7の第2の液化ガス側流路72に送られる。
【0052】
第3の熱交換器7の第2の液化ガス側流路72において液化ガスが気化することで生成された気化ガスは、液化ガス用ポンプ15により、ガス排出ライン82(82A)および気化ガス供給ライン13の接続位置P5よりも下流側の部分を通じてガスの供給先22に送られる。
【0053】
図1に示される実施形態では、冷熱回収システム1は、第2の流量調整弁83と、第3の流量調整弁84と、第4の流量調整弁85と、第5の流量調整弁86と、をさらに備える。なお、第2の流量調整弁83は、全閉と全開とこれらの間の少なくとも1つの中間開度に開度調整可能な開度調整弁である。流量調整弁84、85、86の夫々は、全閉と全開に開度調整可能な開閉弁でもよいし、全閉と全開とこれらの間の少なくとも1つの中間開度に開度調整可能な開度調整弁でもよい。
【0054】
第2の流量調整弁83は、液化ガス導入ライン81に設けられ、第3の熱交換器7に導かれる液化ガスの流量を調整可能に構成されている。第3の流量調整弁84は、液化ガス供給ライン12の接続位置P4よりも下流側に設けられ、第1の熱交換器11に導かれる液化ガスの流量を調整可能に構成されている。第2の流量調整弁83を開き(全開又は中間開度)、第3の流量調整弁84を全閉とすることで、液化ガス用ポンプ15により、液化ガス貯留装置21から第3の熱交換器7に液化ガスを送ることができる。また、第2の流量調整弁83を全閉とし、第3の流量調整弁84を開く(全開又は中間開度)ことで、液化ガス用ポンプ15により、液化ガス貯留装置21から第1の熱交換器11に液化ガスを送ることができる。
【0055】
第4の流量調整弁85は、気化ガス供給ライン13の接続位置P5よりも上流側に設けられ、ガスの供給先22に導かれる気化ガスの流量を調整可能に構成されている。第5の流量調整弁86は、ガス排出ライン82に設けられ、ガスの供給先22に導かれる気化ガスの流量を調整可能に構成されている。第4の流量調整弁85を開き(全開又は中間開度)、第5の流量調整弁86を全閉とすることで、液化ガス用ポンプ15により、第1の熱交換器11からガスの供給先22に冷熱用熱媒体を送ることができる。また、第4の流量調整弁85を全閉とし、第5の流量調整弁86を開く(全開又は中間開度)ことで、液化ガス用ポンプ15により、第3の熱交換器7からガスの供給先22に冷熱用熱媒体を送ることができる。
【0056】
(冷熱回収システムの起動方法)
図2は、本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムの起動方法のフロー図である。図3は、本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムにおける制御の一例を説明するための説明図である。図2図3に示されるように、冷熱回収システム1の冷熱回収システム1の起動時から定常運転に至るまでの期間は、第1期間(予冷期間)T1と、第2期間(遷移期間)T2と、第3期間(冷熱回収期間)T3と、に区分される。第2期間T2は、第1期間T1よりも後の期間であり、第3期間T3よりも前の期間である。
【0057】
第1期間T1では、液化ガス貯留装置21から抜き出された液化ガスを第3の熱交換器7に送ることが行われる。第3期間T3では、液化ガス貯留装置21から抜き出された液化ガスを第1の熱交換器11に送ることが行われる。第2期間T2では、液化ガス貯留装置21から抜き出された液化ガスの送り先を第3の熱交換器7から第1の熱交換器11に変更することが行われる。
【0058】
図2に示されるように、幾つかの実施形態にかかる冷熱回収システム1の起動方法100は、気液分離ステップS101と、循環ステップS102と、冷却ステップS103と、を備える。
【0059】
気液分離ステップS101では、上述した気液分離器5により、冷熱用熱媒体を気相と液相とに分離することが行われる。気液分離ステップS101は、冷熱回収システム1の起動時から定常運転に至るまでの期間および定常運転時に継続して行われる。
【0060】
冷熱回収システム1の停止時における冷熱回収サイクル3や気液分離器5への周辺空気からの入熱により、冷熱回収サイクル3において冷熱用熱媒体が気化することがある。このため、冷熱回収システム1の起動時は、冷熱回収システム1の定常運転時に比べて、気液分離器5や冷熱用ポンプ31などの冷熱回収サイクル3における第1の熱交換器11よりも下流側且つ第2の熱交換器14における、気相の冷熱用熱媒体の占める割合が大きくなっている。冷熱用ポンプ31における気相の冷熱用熱媒体の占める割合が大きいと、冷熱用ポンプ31のガス噛みによる能力低下を招く虞がある。
【0061】
循環ステップS102では、冷熱用ポンプ31を駆動させ、気液分離ステップS101で分離した液相の冷熱用熱媒体を、液戻りライン6を介して、気液分離器5に液相の冷熱用熱媒体を戻すことが行われる。これにより、液相の冷熱用熱媒体が、気液分離器5、冷熱用ポンプ31および液戻りライン6を循環する。循環ステップS102は、第1期間T1に開始され、第2期間T2まで継続して行われる。
【0062】
具体的には、循環ステップS102では、第1の流量調整弁35が全閉の状態において、冷熱用ポンプ31を駆動させることで、液相吐出口54を介して気液分離器5から液相の冷熱用熱媒体が抜き出される。気液分離器5から抜き出された液相の冷熱用熱媒体は、冷熱用ポンプ31より、第1の中段接続ライン33B、冷熱用ポンプ31、第1の下段接続ライン33Cの接続部P1よりも上流側および液戻りライン6を通った後に、気液分離器5に送られる。
【0063】
冷却ステップS103では、循環ステップS102において液戻りライン6を介して気液分離器5に戻される液相の冷熱用熱媒体、又は気液分離器5の内部に存在する冷熱用熱媒体、の何れかに、液化ガス貯留装置21から抜き出された液化ガスの冷熱エネルギーを伝達して冷却する冷却ステップS103と、を備える。
【0064】
冷却ステップS103では、液化ガス貯留装置21から第3の熱交換器7に液化ガスを送り、第3の熱交換器7において冷熱用熱媒体を液化ガスにより冷却することが行われる。これにより、気液分離器5、冷熱用ポンプ31および液戻りライン6を循環する液相の冷熱用熱媒体が冷却される。図示される実施形態では、冷却ステップS103は、第1期間T1における循環ステップS102よりも後に開始される。図3に示されるように、液化ガス用ポンプ15の駆動は、冷熱用ポンプ31の駆動よりも後に行われる。
【0065】
具体的には、冷却ステップS103において、第2の流量調整弁83や第5の流量調整弁86を開き(全開又は中間開度)、第3の流量調整弁84や第4の流量調整弁85を全閉とした状態で、液化ガス用ポンプ15を駆動させることが行われる。これにより、液化ガス貯留装置21から第3の熱交換器7に液化ガスを送ることができるとともに、第3の熱交換器7からガスの供給先22に気化ガスを送ることができる。
【0066】
冷却ステップS103において、気液分離器5、冷熱用ポンプ31および液戻りライン6を循環する液相の冷熱用熱媒体が冷却されることで、気液分離器5の内部の温度を下げることができるため、気液分離器5の内部に存在する気相の冷熱用熱媒体を凝縮させることができる。これにより、気液分離器5や冷熱用ポンプ31などの冷熱回収サイクル3における第1の熱交換器11よりも下流側且つ第2の熱交換器14よりも上流側において、液相の冷熱用熱媒体の占める割合を早期に増やすことができる。冷熱用ポンプ31における液相の冷熱用熱媒体の占める割合を増やすことで、冷熱用ポンプ31のガス噛みによる能力低下を抑制できるため、冷熱用ポンプ31の能力を早期から発揮させることができる。
【0067】
図示される実施形態では、図2に示されるように、冷熱回収システム1の起動方法100は、冷却ステップS103の開始時よりも後に第1の流量調整弁35を開き(全閉から全開又は中間開度に変更する)、冷熱用ポンプ31により冷熱用熱媒体を第1の熱交換器11に送る開弁ステップS104と、開弁ステップS104よりも後に液化ガス貯留装置21から抜き出された液化ガスの送り先を第3の熱交換器7から第1の熱交換器11に変更する変更ステップS105と、変更ステップS105よりも後に冷熱用熱媒体を冷熱用タービン32に導き、冷熱用タービン32を駆動させる冷熱用タービン駆動ステップS106と、開弁ステップS104よりも前に外部水用ポンプ45を駆動させる外部水用ポンプ駆動ステップS107と、をさらに備える。
【0068】
開弁ステップS104は、例えば、気液分離器5の内部の温度が所定温度(冷熱用熱媒体が凝縮する温度)以下になったときに行われる。気液分離器5の内部の温度が所定温度以下になった後は、第2の流量調整弁83を調整することで、気液分離器5の内部の温度が上記所定温度を上限とする所定範囲内に維持される。第1の流量調整弁35を通過した液相の冷熱用熱媒体は、第2の熱交換器14にて昇温され、気化した後に第1の熱交換器11に送られる。
【0069】
具体的には、第1の流量調整弁35を通過した液相の冷熱用熱媒体は、第1の下段接続ライン33Cの第1の流量調整弁35よりも下流側、第2の冷熱側流路141(第2の熱交換器14)、第2の上段接続ライン34Aの分岐部P2よりも上流側、タービンバイパスライン36および第2の下段接続ライン34Bの合流部P3よりも下流側を通った後に、第1の冷熱側流路112(第1の熱交換器11)に送られる。図3に示されるように、第1期間T1および第2期間T2では、タービン側流量調整弁37を全閉とし、タービンバイパス側流量調整弁38を開く(全開又は中間開度)ことで、タービンバイパスライン36を経由させて第1の熱交換器11に冷熱用熱媒体が送られている。
【0070】
開弁ステップS104よりも前に、外部水用ポンプ45を駆動させることが行われ(S107)、第2の熱交換器14の熱媒側流路142に外部水が供給されている。第1の流量調整弁35を通過した液相の冷熱用熱媒体を第2の熱交換器14にて外部水(熱媒)により加熱し、気化する。変更ステップS105の実行前は、第1の熱交換器11において液化ガスと冷熱用熱媒体の熱交換が行われない。第1の熱交換器11を通過した気相の冷熱用熱媒体は、第3の熱交換器7により内部が冷却された気液分離器5にて凝縮する。
【0071】
なお、開弁ステップS104において、第1の流量調整弁35の開度を調整することで、気液分離器5の内部の液相の冷熱用熱媒体の量を安定化させることができる。
【0072】
上述した第2期間T2に、変更ステップS105を実行することで、液化ガス貯留装置21から抜き出された液化ガスの送り先を第3の熱交換器7から第1の熱交換器11に変更することが行われる。上述した第3期間T3に冷熱用タービン駆動ステップS106が行われる。すなわち、冷熱用タービン駆動ステップS106は、変更ステップS105よりも後に行われる。
【0073】
変更ステップS105は、例えば、冷熱用ポンプ31により液相の冷熱用熱媒体を循環させ、冷熱用ポンプ31により第1の熱交換器11に送ることが可能な冷熱用熱媒体の流量(下方側貯留空間51Bにおける液相の冷熱用熱媒体の貯留量)が一定量以上になったときに行われる。変更ステップS105では、図3に示されるように、第2の流量調整弁83や第5の流量調整弁86を閉じる(全開又は中間開度から全閉に変更する)ことと、第3の流量調整弁84や第4の流量調整弁85を開く(全閉から全開又は中間開度に変更する)ことが行われる。これにより、液化ガス貯留装置21から第1の熱交換器11に液化ガスを送ることができるとともに、第1の熱交換器11からガスの供給先22に気化ガスを送ることができる。変更ステップS105の実行後は、第1の熱交換器11において液化ガスと冷熱用熱媒体の熱交換が行われる。
【0074】
冷熱用タービン駆動ステップS106では、図3に示されるように、タービン側流量調整弁37を開く(全閉から全開又は中間開度に変更する)ことと、タービンバイパス側流量調整弁38を閉じる(全開又は中間開度から全閉に変更する)ことが行われる。これにより、冷熱用ポンプ31により昇圧され、第2の熱交換器14にて昇温された冷熱用熱媒体が冷熱用タービン32に導入され、冷熱用タービン32のタービン翼322が回転することで、冷熱用タービン32が駆動する。
【0075】
上記の方法によれば、気液分離器5、冷熱用ポンプ31および液戻りライン6を循環する液相の冷熱用熱媒体を、第3の熱交換器7において液化ガスにより冷却することで(冷却ステップS103)、気液分離器5や冷熱用ポンプ31などの冷熱回収サイクル3における第1の熱交換器11よりも下流側において、液相の冷熱用熱媒体の占める割合を早期に増やすことができる。冷熱用ポンプ31における液相の冷熱用熱媒体の占める割合を増やすことで、冷熱用ポンプ31のガス噛みによる能力低下を抑制できるため、冷熱用ポンプ31の能力を早期から発揮させることができる。これにより、冷熱回収システム1を定常運転に早期に移行できる。
【0076】
また、上記の方法によれば、第1の熱交換器11に供給される冷熱用熱媒体の流量が、第1の熱交換器11の閉塞を生じさせない大流量になるまで、第1の熱交換器11における熱交換が行われないので、冷熱回収システム1の起動時における第1の熱交換器11の閉塞を抑制できる。
【0077】
幾つかの実施形態にかかる冷熱回収システム1は、図1に示されるように、上述した第1の熱交換器11と、上述した第2の熱交換器14と、上述した冷熱回収サイクル3と、上述した気液分離器5と、上述した液戻りライン6と、上述した第3の熱交換器7と、を備える。
【0078】
上記の構成によれば、気液分離器5、冷熱用ポンプ31および液戻りライン6を循環する液相の冷熱用熱媒体を、第3の熱交換器7において液化ガスにより冷却することで、気液分離器5や冷熱用ポンプ31などの冷熱回収サイクル3における第1の熱交換器11よりも下流側において、液相の冷熱用熱媒体の占める割合を早期に増やすことができる。冷熱用ポンプ31における液相の冷熱用熱媒体の占める割合を増やすことで、冷熱用ポンプ31のガス噛みによる能力低下を抑制できるため、冷熱用ポンプ31の能力を早期から発揮させることができる。これにより、冷熱回収システム1を定常運転に早期に移行できる。
【0079】
また、上記の構成によれば、第1の熱交換器11に供給される冷熱用熱媒体の流量が、第1の熱交換器11の閉塞を生じさせない大流量になるまで、第1の熱交換器11における熱交換を行わないことで、冷熱回収システム1の起動時における第1の熱交換器11の閉塞を抑制できる。
【0080】
幾つかの実施形態では、図1に示されるように、上述した冷熱回収システム1は、上述した第1の流量調整弁35を備える。上記の構成によれば、第1の流量調整弁35を閉じることで、気液分離器5、冷熱用ポンプ31および液戻りライン6を含む閉回路を形成することができる。この閉回路を巡回する冷熱用熱媒体を第3の熱交換器7において液化ガスにより冷却することで、閉回路より広い冷熱回収サイクル3を巡回する冷熱用熱媒体を冷却する場合に比べて、気液分離器5の内部の温度を所定温度以下に早く下げることができる。これにより、冷熱回収システム1を定常運転に早期に移行できる。
【0081】
幾つかの実施形態では、図1に示されるように、上述した第3の熱交換器7(7A)は、液戻りライン6を流れる液相の冷熱用熱媒体に、液化ガス貯留装置21から抜き出された液化ガスの冷熱エネルギーを伝達するように構成されている。上記の構成によれば、第3の熱交換器7(7A)により、液戻りライン6を流れる冷熱用熱媒体を液化ガスにより冷却できるため、気液分離器5の内部の温度を所定温度以下に早く下げることができる。これにより、冷熱回収システム1を定常運転に早期に移行できる。
【0082】
図4図8の夫々は、本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムを備える船舶又は浮体の構成を概略的に示す概略構成図である。
幾つかの実施形態では、図4に示されるように、上述した液戻りライン6は、第3の熱交換器7が設けられた第1の液戻りライン6Aと、第3の熱交換器7を迂回する第2の液戻りライン6Bと、を含む。
【0083】
図示される実施形態では、第1の液戻りライン6Aは、その一方側(上流端)が第1の下段接続ライン33Cの接続部P1に接続され、その他方側(下流端)が液戻り口55に接続されている。第2の液戻りライン6Bは、その一方側(上流端)が第1の液戻りライン6Aの第3の熱交換器7よりも上流側に位置する分岐部P6に接続され、その他方側(下流端)が第1の液戻りライン6Aの第3の熱交換器7よりも下流側に位置する合流部P7に接続されている。
【0084】
上述した液戻りライン6は、図4に示されるように、第1の液戻りライン6Aの分岐部P6と第3の熱交換器7との間に設けられた第1の開閉弁61と、第2の液戻りライン6Bに設けられた第2の開閉弁62と、をさらに含んでもよい。第1の開閉弁61を開き、第2の開閉弁62を全閉とすることで、循環する冷熱用熱媒体が第3の熱交換器7を経由する。第1の開閉弁61を全閉とし、第2の開閉弁62を開くことで、循環する冷熱用熱媒体が第2の液戻りライン6Bを経由する(第3の熱交換器7を迂回する)。
【0085】
冷熱回収システム1の定常運転時に、冷熱用ポンプ31を定常回転速度で回転させることが行われる。開弁ステップS104の実行後にも、冷熱用熱媒体を液戻りライン6を介して循環させることが行われる。
【0086】
上記の構成によれば、第3の熱交換器7により冷熱用熱媒体の冷却を行う必要がないとき(例えば、定常運転時)は、循環する冷熱用熱媒体を第2の液戻りライン6Bを経由させる(第3の熱交換器7を迂回させる)ことで、第3の熱交換器7における圧力損失を抑制できるため、冷熱回収システム1の定常運転時に冷熱回収サイクル3の性能を効果的に発揮させることができる。
【0087】
幾つかの実施形態では、図5に示されるように、第3の熱交換器7(7B)は、気液分離器5の内部に存在する冷熱用熱媒体に、液化ガス貯留装置21から抜き出された液化ガスの冷熱エネルギーを伝達するように構成されている。
【0088】
図5に示される実施形態では、第3の熱交換器7(7B)は、気液分離器5の内部空間51に配置された液化ガスが流れる第3の液化ガス側流路73を含む。図5に示されるように、第3の液化ガス側流路73は、その内部を液化ガスが流通可能な管路であって、その外面が内部空間51に面する管路であってもよい。
【0089】
液化ガス導入ライン81の他方側(下流端)は、第3の液化ガス側流路73の上流端(第3の熱交換器7のガス入口)に接続されている。ガス排出ライン82の一方側(上流端)は、第3の液化ガス側流路73の下流端(第3の熱交換器7のガス出口)に接続されている。内部空間51に存在する冷熱用熱媒体は、第3の液化ガス側流路73を流れる液化ガスよりも高温である。
【0090】
第3の熱交換器7(7B)では、内部空間51に存在する冷熱用熱媒体と第3の液化ガス側流路73を流れる液化ガスとの間で熱交換が行われて、第3の液化ガス側流路73を流れる液化ガスを流れる液化ガスの冷熱エネルギーが、内部空間51に存在する冷熱用熱媒体に伝達される。これにより、内部空間51に存在する冷熱用熱媒体が冷却される。
【0091】
上記の構成によれば、第3の熱交換器7(7B)により、気液分離器5の内部に存在する冷熱用熱媒体を液化ガスにより冷却できるため、気液分離器5の内部の温度を所定温度以下に早く下げることができる。これにより、冷熱回収システム1を定常運転に早期に移行できる。
【0092】
幾つかの実施形態では、図1図4図6および図7に示されるように、上述したガスの供給先22は、船舶2A又は浮体2Bの主機エンジン22Aを含む。主機エンジン22Aは、供給される気化ガスのエネルギーにより、プロペラなどの不図示の推進器を駆動させる駆動力(推進力)を発生させるように構成されている。上述した気化ガス供給ライン13は、第1の熱交換器11で気化された液化ガスを船舶2A又は浮体2Bの主機エンジン22Aに供給するための燃料供給ライン13Aを含む。
【0093】
図1図4に示される実施形態では、上述したガス排出ライン82(82A)は、第3の熱交換器7から液化ガスが気化した気化ガスを主機エンジン22Aに導くための流路を含む。この場合には、第3の熱交換器7を通過した気化ガスは、ガス排出ライン82(82A)などを介して主機エンジン22Aに導かれる。
【0094】
図6図7に示される実施形態では、ガス排出ライン82は、第3の熱交換器7から液化ガスが気化した気化ガスを主機エンジン22Aとは別体から構成されたガス燃焼装置23に導くための起動時ガス供給ライン82Bを含む。ガス燃焼装置23は、供給されたガスを燃焼させるように構成されている。起動時ガス供給ライン82Bの一方側(下流端)は、ガス燃焼装置23のガス入口に接続されている。
【0095】
図6に示される実施形態では、起動時ガス供給ライン82Bの他方側(上流端)は、第2の液化ガス側流路72の下流端(第3の熱交換器7のガス出口)に接続されている。図7に示される実施形態では、起動時ガス供給ライン82Bの他方側(上流端)は、第3の液化ガス側流路73の下流端(第3の熱交換器7のガス出口)に接続されている。
【0096】
冷熱回収システム1の起動時は、冷熱回収サイクル3を循環する冷熱用熱媒体の流量が小さいので、液化ガスが十分に気化しないまま主機エンジン22Aに供給され、主機エンジン22Aの故障や作動不良を招く虞がある。図6図7に示される構成によれば、冷熱回収システム1の起動時に、気化ガスや液化ガスを、起動時ガス供給ライン82Bを介してガス燃焼装置23に導いて、ガス燃焼装置23で燃焼させることができる。これにより、液化ガスが十分に気化しないまま主機エンジン22Aに供給されるのを抑制できるため、主機エンジン22Aの故障や作動不良を抑制できる。また、図6図7に示される構成によれば、冷熱回収システム1の起動時に、第3の熱交換器7において液化ガスを完全に気化させる必要がないので、冷熱回収サイクル3や外部水用ポンプ45を早期から駆動させることができる。これにより、冷熱回収システム1を定常運転に早期に移行できる。
【0097】
(第2の熱交換器のバイパスライン)
幾つかの実施形態では、図8に示されるように、上述した冷熱回収システム1は、外部水用ポンプ45が駆動状態のときに、第2の熱交換器14における冷熱用熱媒体と外部水との間の熱交換が行わないことが可能な構成になっていてもよい。図示される実施形態では、冷熱回収システム1は、第2の熱交換器14を迂回して外部水供給ライン42と外部水排出ライン44と繋ぐ熱交換器側バイパスライン46をさらに備える。熱交換器側バイパスライン46の一方側(上流端)は、外部水供給ライン42の分岐部P8に接続されている。熱交換器側バイパスライン46の他方側(下流端)は、外部水排出ライン44の合流部P9に接続されている。
【0098】
上述した冷熱回収システム1は、外部水供給ライン42の分岐部P8よりも下流側に設けられた第1の外部水側開閉弁47と、熱交換器側バイパスライン46に設けられた第2の外部水側開閉弁48と、をさらに備えていてもよい。第1の外部水側開閉弁47を開き、第2の外部水側開閉弁48を全閉とすることで、外部水が第2の熱交換器14を経由する。第1の外部水側開閉弁47を全閉とし、第2の外部水側開閉弁48を開くことで、外部水が熱交換器側バイパスライン46を経由する(第2の熱交換器14を迂回する)。
【0099】
外部水用ポンプ45の駆動を開始してから、外部水用ポンプ45が定常状態に移行するまでに期間を要し、該期間中は第2の熱交換器14に供給される外部水の流量が安定しないため、第2の熱交換器14における冷熱用熱媒体への加熱が安定しない虞がある。外部水用ポンプ45が定常状態に移行するまでの期間、外部水を熱交換器側バイパスライン46を経由させることで、冷熱回収システム1が定常運転へ移行する際に安定した運転が可能となる。上述した冷熱回収システム1の起動方法100において、外部水用ポンプ駆動ステップS107の開始から所定期間、外部水を熱交換器側バイパスライン46を経由させることを行うようにしてもよい。上記所定期間中に、開弁ステップS104を開始してもよい。
【0100】
なお、冷熱回収システム1は、熱交換器側バイパスライン46の代わりに、第2の熱交換器14を迂回して第1の下段接続ライン33Cの接続部P1よりも下流側の部分と、第2の上段接続ライン34Aの分岐部P2よりも上流側の部分と、を繋ぐバイパスラインを備えていてもよい。
【0101】
(制御装置)
図9は、本開示の一実施形態にかかる冷熱回収システムの制御装置を説明するための説明図である。幾つかの実施形態では、冷熱回収システム1は、図9に示されるように、気液分離器5の内部の冷熱用熱媒体の温度を取得可能に構成された温度取得装置(図示例では、温度センサ)87と、温度取得装置87により取得される冷熱用熱媒体の温度が所定範囲内に収まるように、第2の流量調整弁83の開度を制御する弁開度制御装置88と、をさらに備える。弁開度制御装置88により、第2の流量調整弁83の開度を大きくすることで、第3の熱交換器7に供給される液化ガスの流量を大きくできるため、その分だけ気液分離器5の内部を冷却できる。
【0102】
図示される実施形態では、弁開度制御装置88は、冷熱回収システム1が備えるポンプの運転制御や冷熱回収システム1が備える弁の開度制御を行うように構成された制御装置9に搭載されている。冷熱回収システム1が備えるポンプ(冷熱用ポンプ31など)は、制御装置9の運転指示に応じて駆動や停止を行うように構成されている。冷熱回収システム1が備える弁(第1の流量調整弁35など)は、制御装置9の開度指示に応じてその開度を調整可能に構成されている。冷熱回収システム1は、制御装置9を備える。なお、起動方法100における幾つかのステップは、制御装置9により行われてもよい。また、起動方法100における幾つかのステップは、制御装置9以外の装置や機器を用いてもよいし、手動により行うようにしてもよい。
【0103】
制御装置9は、冷熱回収システム1を制御するための電子制御ユニットである。制御装置9は、図示しないCPU(プロセッサ)や、ROMやRAMといったメモリ、外部記憶装置などの記憶装置、I/Oインターフェース、通信インターフェースなどからなるマイクロコンピュータとして構成されている。制御装置9は、例えば上記メモリの主記憶装置にロードされたプログラムの命令に従ってCPUが動作(例えばデータの演算など)することで、弁開度制御装置88における制御を実現してもよい。
【0104】
上記の構成によれば、弁開度制御装置88により、第2の流量調整弁83の開度を制御し、温度取得装置87により取得される冷熱用熱媒体の温度を所定範囲内に維持することで、冷熱用ポンプ31のガス噛みによる能力低下を早期に抑制できるとともに、気液分離器5、冷熱用ポンプ31および液戻りライン6を含む循環サイクルや冷熱回収サイクル3を流れる冷熱用熱媒体の温度を早期に安定化させることができる。これにより、開弁ステップS104や変更ステップS105などを早期に実行できるため、冷熱回収システム1を定常運転に早期に移行できる。
【0105】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0106】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0107】
1)本開示の少なくとも一実施形態にかかる冷熱回収システム(1)は、
液化ガスを貯留するように構成された液化ガス貯留装置(21)を有する船舶(2A)又は浮体(2B)に設置される冷熱回収システム(1)であって、
前記液化ガス貯留装置(21)から抜き出された前記液化ガスから冷熱用熱媒体に冷熱エネルギーを伝達するように構成された第1の熱交換器(11)と、
前記冷熱用熱媒体を循環させるように構成された冷熱回収サイクル(3)であって、前記第1の熱交換器(11)よりも下流側に設けられた前記冷熱用熱媒体を送るための冷熱用ポンプ(31)を少なくとも含む冷熱回収サイクル(3)と、
前記冷熱回収サイクル(3)における前記冷熱用ポンプ(31)よりも下流側且つ前記第1の熱交換器(11)よりも上流側を流れる前記冷熱用熱媒体に、熱媒から熱エネルギーを伝達するように構成された第2の熱交換器(14)と、
前記冷熱回収サイクル(3)における前記第1の熱交換器(11)と前記冷熱用ポンプ(31)との間に設けられ、前記冷熱用熱媒体を気相の冷熱用熱媒体と液相の冷熱用熱媒体とに分離するように構成された気液分離器(5)と、
前記冷熱回収サイクル(3)における前記冷熱用ポンプ(31)よりも下流側且つ前記第2の熱交換器(14)よりも上流側から前記気液分離器(5)に前記液相の冷熱用熱媒体を戻すための液戻りライン(6)と、
前記液戻りライン(6)を介して前記気液分離器(5)に戻される前記液相の冷熱用熱媒体、又は前記気液分離器(5)の内部に存在する前記冷熱用熱媒体、の何れかに、前記液化ガス貯留装置(21)から抜き出された前記液化ガスの冷熱エネルギーを伝達するように構成された第3の熱交換器(7)と、を備える。
【0108】
上記1)の構成によれば、気液分離器(5)、冷熱用ポンプ(31)および液戻りライン(6)を循環する液相の冷熱用熱媒体を、第3の熱交換器(7)において液化ガスにより冷却することで、気液分離器(5)や冷熱用ポンプ(31)などの冷熱回収サイクル(3)における第1の熱交換器(11)よりも下流側において、液相の冷熱用熱媒体の占める割合を早期に増やすことができる。冷熱用ポンプ(31)における液相の冷熱用熱媒体の占める割合を増やすことで、冷熱用ポンプ(31)のガス噛みによる能力低下を抑制できるため、冷熱用ポンプ(31)の能力を早期から発揮させることができる。これにより、冷熱回収システム(1)を定常運転に早期に移行できる。
【0109】
また、上記1)の構成によれば、第1の熱交換器(11)に供給される冷熱用熱媒体の流量が、第1の熱交換器(11)の閉塞を生じさせない大流量になるまで、第1の熱交換器(11)における熱交換を行わないことで、冷熱回収システム(1)の起動時における第1の熱交換器(11)の閉塞を抑制できる。
【0110】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の冷熱回収システム(1)であって、
前記第3の熱交換器(7)は、前記液戻りライン(6)を流れる前記液相の冷熱用熱媒体に、前記液化ガス貯留装置(21)から抜き出された前記液化ガスの冷熱エネルギーを伝達するように構成された。
【0111】
上記2)の構成によれば、第3の熱交換器(7)により、液戻りライン(6)を流れる冷熱用熱媒体を液化ガスにより冷却できるため、気液分離器(5)の内部の温度を所定温度以下に早く下げることができる。これにより、冷熱回収システム(1)を定常運転に早期に移行できる。
【0112】
3)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の冷熱回収システム(1)であって、
前記第3の熱交換器(7)は、前記気液分離器(5)の内部に存在する前記冷熱用熱媒体に、前記液化ガス貯留装置(21)から抜き出された前記液化ガスの冷熱エネルギーを伝達するように構成された。
【0113】
上記3)の構成によれば、第3の熱交換器(7)により、気液分離器(5)の内部に存在する冷熱用熱媒体を液化ガスにより冷却できるため、気液分離器(5)の内部の温度を所定温度以下に早く下げることができる。これにより、冷熱回収システム(1)を定常運転に早期に移行できる。
【0114】
4)幾つかの実施形態では、上記2)に記載の冷熱回収システム(1)であって、
前記液戻りライン(6)は、
前記第3の熱交換器(7)が設けられた第1の液戻りライン(6A)と、
前記第3の熱交換器(7)を迂回する第2の液戻りライン(6B)と、を含む。
【0115】
上記4)の構成によれば、第3の熱交換器(7)により冷熱用熱媒体の冷却を行う必要がないときは、循環する冷熱用熱媒体を第2の液戻りライン(6B)を経由させる(第3の熱交換器(7)を迂回させる)ことで、第3の熱交換器(7)における圧力損失を抑制できるため、冷熱回収システム(1)の定常運転時に冷熱回収サイクル(3)の性能を効果的に発揮させることができる。
【0116】
5)幾つかの実施形態では、上記1)から上記4)までの何れかに記載の冷熱回収システム(1)であって、
前記第1の熱交換器(11)で気化された前記液化ガスを前記船舶(2A)又は前記浮体(2B)の主機エンジン(22A)に供給するための燃料供給ライン(13A)と、
前記第3の熱交換器(7)から前記液化ガスが気化した気化ガスを前記主機エンジン(22A)とは別体から構成されたガス燃焼装置(23)に導くための起動時ガス供給ライン(82B)と、をさらに備える。
【0117】
冷熱回収システム(1)の起動時は、冷熱回収サイクル(3)を循環する冷熱用熱媒体の流量が小さいので、液化ガスが十分に気化しないまま主機エンジン(22A)に供給され、主機エンジン(22A)の故障や作動不良を招く虞がある。上記5)の構成によれば、冷熱回収システム(1)の起動時に、気化ガスや液化ガスを、起動時ガス供給ライン(82B)を介してガス燃焼装置(23)に導いて、ガス燃焼装置(23)で燃焼させることができる。これにより、液化ガスが十分に気化しないまま主機エンジン(22A)に供給されるのを抑制できるため、主機エンジン(22A)の故障や作動不良を抑制できる。また、上記5)の構成によれば、冷熱回収システム(1)の起動時に、第3の熱交換器(7)において液化ガスを完全に気化させる必要がないので、冷熱回収サイクル3や外部水用ポンプ45を早期から駆動させることができる。これにより、冷熱回収システム(1)を定常運転に早期に移行できる。
【0118】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から上記5)までの何れかに記載の冷熱回収システム(1)であって、
前記冷熱回収サイクル(3)における前記液戻りライン(6)の上流端との接続部(P1)と前記第2の熱交換器(14)との間に設けられて、前記第2の熱交換器(14)に導かれる前記液相の冷熱用熱媒体の流量を調整可能に構成された第1の流量調整弁(35)をさらに備える。
【0119】
上記6)の構成によれば、第1の流量調整弁(35)を閉じることで、気液分離器(5)、冷熱用ポンプ(31)および液戻りライン(6)を含む閉回路を形成することができる。この閉回路を巡回する冷熱用熱媒体を第3の熱交換器(7)において液化ガスにより冷却することで、閉回路より広い冷熱回収サイクル(3)を巡回する冷熱用熱媒体を冷却する場合に比べて、気液分離器(5)の内部の温度を所定温度以下に早く下げることができる。これにより、冷熱回収システム(1)を定常運転に早期に移行できる。
【0120】
7)幾つかの実施形態では、上記1)から上記6)までの何れかに記載の冷熱回収システム(1)であって、
前記液化ガス貯留装置(21)と前記第3の熱交換器(7)とを繋ぐ液化ガス導入ライン(81)と、
前記液化ガス導入ライン(81)に設けられて、前記第3の熱交換器に導かれる前記液化ガスの流量を調整可能に構成された第2の流量調整弁(83)と、
前記気液分離器(5)内の前記冷熱用熱媒体の温度を取得可能に構成された温度取得装置(87)と、
前記温度取得装置(87)により取得される前記冷熱用熱媒体の温度が所定範囲内に収まるように、前記第2の流量調整弁(83)の開度を制御する弁開度制御装置(88)と、をさらに備える。
【0121】
上記7)の構成によれば、弁開度制御装置(88)により、第2の流量調整弁(83)の開度を制御し、温度取得装置(87)により取得される冷熱用熱媒体の温度を所定範囲内に維持することで、冷熱用ポンプ(31)のガス噛みによる能力低下を早期に抑制できるとともに、気液分離器(5)、冷熱用ポンプ(31)および液戻りライン(6)を含む循環サイクルや冷熱回収サイクル(3)を流れる冷熱用熱媒体の温度を早期に安定化させることができる。これにより、冷熱回収システム(1)を定常運転に早期に移行できる。
【0122】
8)本開示の少なくとも一実施形態にかかる冷熱回収システムの起動方法(100)は、
液化ガスを貯留するように構成された液化ガス貯留装置(21)を有する船舶(2A)又は浮体(2B)に設置される冷熱回収システム(1)の起動方法(100)であって、
前記冷熱回収システム(1)は、
前記液化ガス貯留装置(21)から抜き出された前記液化ガスから冷熱用熱媒体に冷熱エネルギーを伝達するように構成された第1の熱交換器(11)と、
前記冷熱用熱媒体を循環させるように構成された冷熱回収サイクル(3)であって、前記第1の熱交換器(11)よりも下流側に設けられた前記冷熱用熱媒体を送るための冷熱用ポンプ(31)を少なくとも含む冷熱回収サイクル(3)と、
前記冷熱回収サイクル(3)における前記冷熱用ポンプ(31)よりも下流側且つ前記第1の熱交換器(11)よりも上流側を流れる前記冷熱用熱媒体に、熱媒から熱エネルギーを伝達するように構成された第2の熱交換器(14)と、を備え、
前記冷熱回収システムの起動方法(100)は、
前記冷熱回収サイクル(3)における前記第1の熱交換器(11)と前記冷熱用ポンプ(31)との間に設けられた気液分離器(5)により、前記冷熱用熱媒体を気相の冷熱用熱媒体と液相の冷熱用熱媒体とに分離する気液分離ステップ(S101)と、
前記冷熱用ポンプ(31)を駆動させ、前記気液分離ステップ(S101)で分離した前記液相の冷熱用熱媒体を、前記冷熱回収サイクル(3)における前記冷熱用ポンプ(31)よりも下流側且つ前記第2の熱交換器(14)よりも上流側と、前記気液分離器(5)とを接続する液戻りライン(6)を介して、前記気液分離器(5)に前記液相の冷熱用熱媒体を戻す循環ステップ(S102)と、
前記循環ステップ(S102)において、前記液戻りライン(6)を介して前記気液分離器(5)に戻される前記液相の冷熱用熱媒体、又は前記気液分離器(5)の内部に存在する前記冷熱用熱媒体、の何れかに、前記液化ガス貯留装置(21)から抜き出された前記液化ガスの冷熱エネルギーを伝達して冷却する冷却ステップ(S103)と、を備える。
【0123】
上記8)の方法によれば、気液分離器(5)、冷熱用ポンプ(31)および液戻りライン(6)を循環する液相の冷熱用熱媒体を、液化ガスにより冷却することで(冷却ステップS103)、気液分離器(5)や冷熱用ポンプ(31)などの冷熱回収サイクル(3)における第1の熱交換器(11)よりも下流側において、液相の冷熱用熱媒体の占める割合を早期に増やすことができる。冷熱用ポンプ(31)における液相の冷熱用熱媒体の占める割合を増やすことで、冷熱用ポンプ(31)のガス噛みによる能力低下を抑制できるため、冷熱用ポンプ(31)の能力を早期から発揮させることができる。これにより、冷熱回収システム(1)を定常運転に早期に移行できる。
【0124】
また、上記8)の方法によれば、第1の熱交換器(11)に供給される冷熱用熱媒体の流量が、第1の熱交換器(11)の閉塞を生じさせない大流量になるまで、第1の熱交換器(11)における熱交換が行われないので、冷熱回収システム(1)の起動時における第1の熱交換器(11)の閉塞を抑制できる。
【符号の説明】
【0125】
1 冷熱回収システム
2A 船舶
2B 浮体
3 冷熱回収サイクル
5 気液分離器
6 液戻りライン
7 第3の熱交換器
9 制御装置
11 第1の熱交換器
12 液化ガス供給ライン
13 気化ガス供給ライン
13A 燃料供給ライン
14 第2の熱交換器
15 液化ガス用ポンプ
21 液化ガス貯留装置
22 ガスの供給先
22A 主機エンジン
31 冷熱用ポンプ
32 冷熱用タービン
33 第1の接続ライン
33A 第1の上段接続ライン
33B 第1の中段接続ライン
33C 第1の下段接続ライン
34 第2の接続ライン
34A 第2の上段接続ライン
34B 第2の下段接続ライン
35 第1の流量調整弁
36 タービンバイパスライン
37 タービン側流量調整弁
38 タービンバイパス側流量調整弁
41 外部水の供給元
42 外部水供給ライン
43 外部水の排出先
44 外部水排出ライン
45 外部水用ポンプ
46 熱交換器側バイパスライン
47 第1の外部水側開閉弁
48 第2の外部水側開閉弁
51 内部空間
51A 上方側貯留空間
51B 下方側貯留空間
52 本体部
53 導入口
54 液相吐出口
55 液戻り口
61 第1の開閉弁
62 第2の開閉弁
81 液化ガス導入ライン
82 ガス排出ライン
83 第2の流量調整弁
84 第3の流量調整弁
85 第4の流量調整弁
86 第5の流量調整弁
87 温度取得装置
88 弁開度制御装置
100 起動方法
S101 気液分離ステップ
S102 循環ステップ
S103 冷却ステップ
S104 開弁ステップ
S105 変更ステップ
S106 冷熱用タービン駆動ステップ
S107 外部水用ポンプ駆動ステップ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9