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特開2023-20526丸編機用巻取装置及び同装置における駆動ローラの制御方法
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  • 特開-丸編機用巻取装置及び同装置における駆動ローラの制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020526
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】丸編機用巻取装置及び同装置における駆動ローラの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 18/16 20060101AFI20230202BHJP
   D04B 15/88 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
B65H18/16
D04B15/88 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125934
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000154510
【氏名又は名称】株式会社福原精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】松尾 健一
(72)【発明者】
【氏名】下迫田 賢
(72)【発明者】
【氏名】野村 俊輔
【テーマコード(参考)】
3F055
4L054
【Fターム(参考)】
3F055AA12
3F055CA11
3F055DA09
4L054AA01
4L054AB04
4L054GA03
(57)【要約】
【課題】伝動方式の巻取装置における駆動ローラに関して手動操作する手間を解消し、編地が下ろしやすく、またロール径の制限なくかつ部品損傷の可能性の低い伝動方式の巻取装置を実現させる。
【解決手段】 丸編機の編成部で編成された編地を収集する丸編機用巻取装置(3)であって、アーム回転軸(331)に接続されたアーム駆動装置(35)を有する。このアーム駆動装置(35)は、アーム(332)を正方向又は逆方向のどちらか切り替え可能に一定のトルクで回転させることができる。正方向に回転すると駆動ローラ(33)が巻取ローラ(32)に接近し、逆方向に回転すると巻取ローラ(32)から離れる。さらに、アーム(32)及び駆動ローラ(33)の回転軌道上に設けられ、これらに接触し、回転を止めるストッパー(37)を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸編機(1)の編成部(2)で編成された編地を収集する丸編機用巻取装置(3)であって、
前記巻取装置(3)の底部に設けられたベース(301)と、このベース(301)の両端にそれぞれ設けられたサイド部材(302,303)と、これら2つのサイド部材(302,303)の間に回転可能に設けられた巻取ローラ(32)と、前記2つのサイド部材(302,303)の対向する面にそれぞれ回転可能に接続された2つのアーム回転軸(331)と、これら2つのアーム回転軸(331)を中心として互いに平行に回転可能に設けられた2つのアーム(332)と、これら2つのアーム(332)の間に回転駆動可能に設けられた駆動ローラ(33)と、この駆動ローラ(33)を回転駆動させるローラ駆動装置(34)を有する巻取装置(3)において、
前記アーム回転軸(331)に接続されたアーム駆動装置(35)を有し、このアーム駆動装置(35)は、前記アーム回転軸(331)を駆動させるとともに、前記アーム(332)を正方向又は逆方向のどちらか切り替え可能に一定のトルクで回転させることができ、ここで、正方向は前記駆動ローラ(33)が前記巻取ローラ(32)に接近する方向、逆方向は離れる方向であり、
さらに、前記アーム(32)及び前記駆動ローラ(33)の回転軌道上に設けられた、前記アーム(32)又は前記駆動ローラ(33)に接触し、前記アーム(32)及び前記駆動ローラ(33)の回転を止めるストッパー(37)を有する
ことを特徴とする丸編機用巻取装置(3)。
【請求項2】
前記アーム駆動装置(35)は前記アーム回転軸(331)を回転させる一定のトルクの設定値が変更可能であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ストッパー(37)は前記アーム(332)の回転軌道上に設けられたゴム部材であり、前記サイド部材(302,303)の向かい合う面上に、少なくともどちらか一方に1つ取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記アーム駆動装置(35)はサイド部材(302,303)に設けられたサーボモータであり、このサーボモータと前記アーム回転軸(331)はギア(38)を介して接続され、前記サーボモータの回転方向を切り換えることで、それに応じて前記アーム(332)の回転の正方向と逆方向を切り換えることができることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
前記巻取装置(3)から見て、前記駆動ローラ(33)のある側と編地を下ろす側は逆側であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の前記巻取装置を用い、編成開始時、自動的に前記アーム駆動装置(35)を駆動させ前記アーム(332)を正方向に回転させて前記巻取ローラ(32)又はこの巻取ローラ(32)に巻き取られている編地に前記駆動ローラ(33)を押し当て、編成終了後、自動的に前記アーム駆動装置(35)を駆動させ前記アーム(332)を逆方向に回転させて編地から前記駆動ローラ(32)を離すことを特徴とする、丸編機用巻取装置における前記駆動ローラ(32)の制御方法。
【請求項7】
既定の編地編成をスタートして、自動的に前記巻取ローラ(32)に編地が巻きついた後、アーム(332)を正方向に回転させ編地に前記駆動ローラ(33)を押し当て、既定の編成終了後、自動的に編機が停止し、前記アーム(332)を逆方向に回転させて編地から前記駆動ローラ(33)を離し、自動的に編地を前記巻取装置(3)から下ろし、自動的に編地を前記丸編機(1)外部へ排出することを特徴とする、請求項6に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状編地を生産する丸編機の下部に配置され、巻取ローラに編地を巻きつけて駆動ローラを添えて送り出し収納する巻取装置における、丸編機用巻取装置及び同装置における駆動ローラの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
丸編機では編機上部に設けられた編成部で生産された筒状編地を、編機下部に配置された巻取装置で巻き取り収納することが知られている。一般に、この巻取装置では、引張ローラで筒状編地を下方へ送り出し、これを巻取ローラに巻き付けることでロール状に収集される。この巻取装置にはいくつかの種類があり、その内の1つとして駆動ローラからの摩擦などの伝動による巻取装置が知られている。これは、一方側に駆動ローラが保持されかつ逆側に回転中心軸を設けて揺動可能に巻取装置に装着されたアームを使用して、駆動ローラの自重により巻取ローラに巻き付けた編地に駆動ローラを添える巻取装置である。
【0003】
この巻取装置は、巻取ローラに巻き付けた編地に駆動ローラを当て、駆動ローラを駆動して回転させることで、その回転の伝動を受けて編地を送り出し巻取ローラごと回転させ、編地のロールを作って収集させる、伝動方式の巻取装置である。また駆動ローラの摩擦により巻取ローラを回転させることから、フリクション方式の巻取装置ともいう。この伝動方式の巻取装置は他の方式のように編地のロールの重さ、大きさに応じて駆動ローラのトルクを大きく変える必要がない。ロールの重さ、大きさの影響を大きく受けることなく、駆動ローラを一定量回転させれば一定量の編地を送り出すことができるため、安定した巻き取りが可能である。これによりロール端部の不揃いも少なく、状態が良くきれいなロールを製造しやすい。このような伝動方式の巻取装置は、例えば特許文献1や2のようなものがある。
【0004】
これら伝動方式の巻取装置は、駆動ローラが自重により巻取ローラに当接している。このため編地のロールを巻取装置から下ろすために巻取ローラを外すとき、手動で駆動ローラを持ち上げてストッパーで留める等しないと、巻取ローラを外すと駆動ローラは重力で勢いを持って下がり作業者に当たったり、部材に衝突したりして損傷の原因になるため、ロールを下ろすことができない。またロールを下ろした後、巻取ローラを再度巻取装置に装着する場合も、駆動ローラは自重で巻取ローラにもたれかかる構造であるため、手動で駆動ローラを動かす必要があり、少し手間がかかる。
【0005】
また、編地を既定の量まで編成した後、自動切断装置で自動的に編地をカットして、自動的に編地のロールを巻取装置から下ろし編機の外へ排出する、いわゆるオートドッファーの巻取装置においても、駆動ローラの自重による損傷の危険性がある。また、再度巻取ローラを取り付けるときは駆動ローラを上げる必要があり、この駆動ローラが邪魔となる。
【0006】
この点、特許文献3の巻取装置は、駆動ローラを保留突起で留めることで伝動方式の巻取装置でオートドッファーを可能としている。しかし、特許文献3では編地のロール径が保留突起の位置より大きい場合でなければ駆動ローラを留めることができない。また、編地のロールを下ろしたとき、駆動ローラは自重で自然に落下するように下り、保留突起に勢いを持って衝突する。また、保留突起を外したとき、巻取ローラに勢いを持って衝突する。このため、部材の破損や劣化を引き起こし、巻取編地の品質低下が起こりうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-11878号公報
【特許文献2】特開2007-8599号公報
【特許文献3】特開昭63-309655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、伝動方式の巻取装置における駆動ローラに関して手動操作する手間を解消し、編地が下ろしやすく、またロール径の制限なくかつ部品損傷の可能性の低い伝動方式の巻取装置を実現させることができる丸編機用巻取装置及び同装置における駆動ローラの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる丸編機用巻取装置は、丸編機の編成部で編成された編地を収集する丸編機用巻取装置であって、前記巻取装置の底部に設けられたベースと、このベースの両端にそれぞれ設けられたサイド部材と、これら2つのサイド部材の間に回転可能に設けられた巻取ローラと、前記2つのサイド部材の対向する面にそれぞれ回転可能に接続された2つのアーム回転軸と、これら2つのアーム回転軸を中心として互いに平行に回転可能に設けられた2つのアームと、これら2つのアームの間に回転駆動可能に設けられた駆動ローラと、この駆動ローラを回転駆動させるローラ駆動装置を有する巻取装置において、前記アーム回転軸に接続されたアーム駆動装置を有し、このアーム駆動装置は、前記アーム回転軸を駆動させるとともに、前記アームを正方向又は逆方向のどちらか切り替え可能に一定のトルクで回転させることができ、ここで、正方向は前記駆動ローラが前記巻取ローラに接近する方向、逆方向は離れる方向であり、さらに、前記アーム及び前記駆動ローラの回転軌道上に設けられた、前記アーム又は前記駆動ローラに接触し、前記アーム及び前記駆動ローラの回転を止めるストッパーを有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、アーム駆動装置によりアーム及び駆動ローラを正方向に回転させることで、手動によらず巻取ローラ又は巻取ローラに巻き付いた編地に駆動ローラを接触させることができ、また逆回転させることで、手動によらず巻取ローラ又は巻取ローラに巻き付いた編地から駆動ローラを離すことができ、駆動ローラを手動で操作する手間を省くことができる。そしてこのため、駆動ローラを手前側に持ってくる必要が無く、編地を下ろすときに駆動ローラが邪魔にならない。また、アーム駆動装置により自由にアーム及び駆動ローラの位置を回転させることができる。これにより、編地のロール編地から駆動ローラを外すときはアームを一定のトルクで逆回転させ、一定量回転したところでストッパーがアーム又は駆動ローラに接触することでアームの逆回転を止めることができる。このとき回転は一定のトルクでかつ重力とは逆方向への動きであるため、ストッパーとアーム又は駆動ローラは勢い無く接触するので部品への影響はごく少ないものとなる。これによりロール径の制限なくかつ部品損傷の可能性の低い伝動方式の巻取装置のオートドッファーを使用することができる。
【0011】
好ましくは、アーム駆動装置によりアーム回転軸を回転させる一定のトルクの設定値を変更可能である。
【0012】
この構成によれば、アーム駆動装置の設定を変更し、アーム回転軸に一定にかけるトルクの大きさを、自由に変更することができる。これにより、錘などの部品を使わず駆動ローラの編地への圧力の大きさを容易に変更させることができる。伝動方式の巻取装置は、駆動ローラが自重により巻取ローラ又は編地に押し当てられる構造となっている。このため、編機を高速で稼働させると巻取装置も高速回転するため、遠心力で駆動ローラが跳ね上がり編地から離れ、編地を送り出すことができず収納できなくなるような事態が起こりうる。しかし圧力を大きくし過ぎると前記の手動での跳ね上げが難しくなる。また筒状編地を二つ折りにしているため、編地両端の折れ皴が強くなる。また、駆動ローラの編地への圧力を増やすには錘となる部品が必要であり、その部品費用や着脱作業を要する。このような駆動ローラの編地への圧力の調整のための時間、労力、費用を削減することができる。なお、設定の変更はアーム駆動装置に直接又は間接的に接続された、例えばツマミやオペレーションパネルなどの設定変更装置により行うことができる。
【0013】
さらに好ましくは、ストッパーはアームの回転軌道上に設けられたゴム部材であり、サイド部材の向かい合う面上に、少なくともどちらか一方に1つ取り付けられている。
【0014】
この構成によれば、ゴム部材とアームが接触するので、アームに大きな衝撃を与えることは無く、駆動ローラは損傷させるおそれがない。また、部材との物理的な接触により回転がストップするので、誤ってそれ以上回転し、他の部品と接触したり、編地を損傷させたりすることがない。
【0015】
また好ましくは、アーム駆動装置はサイド部材に設けられたサーボモータであり、サーボモータとアーム回転軸はギアを介して接続され、サーボモータの回転方向を切り換えることで、それに応じてアームの回転の正方向と逆方向を切り換えることができる。
【0016】
この構成によれば、サーボモータからギアを連動させてアーム回転軸を回転させてアームを回転させるため、サーボモータへ指令を出すことでアームの回転方向、トルクの大きさ等を変更することができる。
【0017】
また好ましくは、巻取装置から見て、駆動ローラのある側と編地を下ろす側は逆側である。
【0018】
駆動ローラのある側と編地を下ろす側が同じであると、作業者の目の前に駆動ローラがある状態で編地を下ろす作業をしなければならず邪魔となるが、駆動ローラがある側と編地を下ろす側が逆側であれば駆動ローラが目の前に無く作業しやすい。また、駆動ローラの存在により編地を下ろすときに編地が通るスペースを狭められる、ということがない。これは作業のしやすさが向上するだけでなく、装置により編地を下ろすためにスペースを確保したいオートドッファーを使用する場合にも有効である。駆動ローラを手動で操作する必要がないため、巻取ローラに巻き付けた編地を下ろす方向と、駆動ローラがある方向を逆にすることができる。これにより編地を下ろすスペースを広く確保することができる。
【0019】
また本発明の丸編機用巻取装置における駆動ローラの制御方法は、前記巻取装置を用い、編成開始時、自動的にアーム駆動装置を駆動させアームを正方向に回転させて巻取ローラ又は巻取ローラに巻き取られている編地に駆動ローラを押し当て、編成終了後、自動的にアーム駆動装置を駆動させアームを逆方向に回転させて編地から駆動ローラを離すものである。
【0020】
この構成によれば、駆動アームを手動で操作する必要が無く、その手間を排除することができる。また、駆動ローラを手動で操作する必要がないため、編地を下ろす方向とは逆方向に駆動アームを留めることができ、駆動ローラが邪魔にならず、巻取装置から編地のロールを下ろしやすい。なお編地のロールとは巻取ローラを抜いたものに限られず、巻取ローラに巻き付いたままの編地も含む。オートドッファーを使用する場合でも、この方法を使用できる。
【0021】
また好ましくは、既定の編地編成をスタートして、自動的に巻取ローラに編地が巻きついた後、アームを正方向に回転させ編地に駆動ローラを押し当て、既定の編成終了後、自動的に編機が停止し、アームを逆方向に回転させて編地から駆動ローラを離し、自動的に編地を巻取装置から下ろし、自動的に編地を丸編機外部へ排出するものである。
【0022】
この構成によれば、既定のプログラムにより編成をスタートした後は、手動で巻取ローラに編地を巻き付けなくても、摩擦テープや爪などの部材や、空気圧や、分割した巻取ローラや巻取ローラに設けられた穴で挟むなどの方法により自動的に巻取ローラに編地が巻き付き、自動的に駆動ローラが編地に押し当てられ、駆動ローラが編地を送り、編成終了後に機械が停止し、駆動ローラが編地から離れ、編地が巻取ローラから外され下ろされるか巻取ローラごと巻取装置から下ろされ、丸編機外部へ排出され、次の編成がスタートし、といったほぼ全ての工程を自動的に行うオートドッファーを実行可能とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、伝動方式の巻取装置において、アーム駆動装置によりアームを、設定した一定のトルクをかけて回転させることで、手動によらず自動で駆動ローラを巻取ローラ又は巻取ローラに巻き付けた編地に一定の力で押し付けることができ、また駆動ローラを巻取ローラ又は巻取ローラに巻き付けた編地から手動によらず自動で離すことができるので、駆動ローラを手動で操作する手間が省け、編地を下ろしやすい。また、アーム駆動装置により編地のロール径に関係なくアームを動かすことができる。さらにアーム駆動装置による一定のトルクにより、駆動ローラは一定の速度で動くため、駆動ローラが接触する部品に大きな衝撃を与えることなく接触させることができ、部品に損傷を与える可能性が低い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例1に係る巻取装置を設置した丸編機全体の正面図である。
図2図1の巻取装置における、アームを正方向に回転させたときの駆動ローラの位置を表す図1のA-A断面図である。断面部分のハッチングを省略している。
図3図1の巻取装置における、アームを逆方向に回転させたときの駆動ローラの位置を表す巻取装置の図1のA-A断面図である。
図4図1のアーム駆動装置が取り付けられたサイド部材の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。図1は、実施例1に係る巻取装置を設置した丸編機全体の正面図である。本実施例においては、丸編機1上部の編成部2で編成された編地を、巻取装置3上部に設けられた引張ローラ31で引っ張り、巻取ローラ32に巻き付けて収集する。巻取ローラ32に編地が巻きつけられていないときは、駆動ローラ33は巻取ローラ32に当接する。巻取ローラ32に編地が巻きつけられているときは、駆動ローラ33は編地に当接する。駆動ローラ33はローラ駆動装置34から駆動を受け回転し、その回転による摩擦の伝達を受けて、巻取ローラ32の編地を一定量送り、編地ごと巻取ローラ32を回転させて、巻取ローラ32に編地を巻きつけ、編地のロール36を作ることで編地を収集する。引張ローラ31と駆動ローラ33はローラ駆動装置34により駆動されローラを回転駆動させる。このローラ駆動装置34はアーム駆動装置35とは別個のサーボモータである。
【0026】
本実施例は編成部で一般的なシングル丸編機の編成が行われる。すなわち、編成部には複数の針が収納されたシリンダが設けられ、動力の駆動を受けてシリンダが回転すると、シリンダの外周にシリンダに対向するように固定されているカムホルダに取り付けられたカムの溝に針のバットが案内され、針が上下する。このとき針の下降時に針のフックに糸が捉えられ、そのまま針が下降することで編目を形成し、それを繰り返すことで筒状編地が生産される。
【0027】
このようにして編成部により編み出される筒状編地は一般的な幅出し装置等により二重平面状に案内され、巻取装置に収集される。巻取装置は底部にベース301が設けられ、ベース301の両端にはそれぞれサイド部材302、303が設けられている。2つのサイド部材302、303の間には巻取ローラ32が回転可能に設けられている。2つのサイド部材302、303の対向する面にはそれぞれアーム回転軸331が回転可能に設けられている。
【0028】
各アーム回転軸331にはアーム332が接続されている。アーム332の長手方向における片側にアーム回転軸331が接続され、反対側に駆動ローラ33が回転駆動可能に設けられている。2つのアーム332はそれぞれアーム回転軸331を中心として互いに平行に回転可能である。駆動ローラ33はローラ駆動装置34に接続されており、これにより駆動ローラ33を回転駆動することができる。
【0029】
引張ローラ31、巻取ローラ32、駆動ローラ33は長手方向において平行にかつ水平に設けられている。一方のアーム回転軸331はアーム駆動装置35にギア38を介して接続されており、アーム駆動装置35の駆動によりアーム回転軸331を回転させることができ、それによりアーム回転軸331に接続されたアーム332、アーム332に接続された駆動ローラ33もアーム回転軸331を中心に上下に回転させることができる。
【0030】
図2図1の巻取装置における、アームを正方向に回転させたときの駆動ローラの位置を表す図1のA-A断面図である。駆動ローラ33が巻取ローラ32に接近する方向を正方向としている。
【0031】
図2においてアーム回転軸331は時計回りに回転し、それに伴いアーム332も駆動ローラ33もアーム回転軸331を中心に時計回りに回転する。アーム駆動装置35により一定のトルクでアーム332が回転するため、駆動ローラ33も一定速度で編地のロール36へ押し付けられる。そうして押し付けられた駆動ローラ33はそれ以上動けなくなり、その位置に留まる。このとき駆動ローラ33には依然としてアーム駆動装置35から伝達されたトルクが編地方向にかかっており、編地をしっかりと押さえるものとなる。アーム駆動装置35の設定値を変えることで、トルクを大きくして編地のロール36への圧力を高めたり、逆にトルクを小さくして圧力を弱めたりすることもできる。高速回転を要求されたときに遠心力により駆動ローラ33が浮き上がってくることが無いように圧力を高めたり、円形から二重平面状に折り曲げられた編地の両端の折れ目を弱くするために圧力を弱めたりといった調整を簡単に行うことができる。この調整は、本実施例ではアーム駆動装置35に電気的に接続されたオペレーションパネルで設定することができる。この方法以外にも、編機外部にツマミを設けて、これを回すことでトルクを調整するなど、色々な方法が考えられる。
【0032】
図3図1の巻取装置における、アーム332を逆方向に回転させたときの駆動ローラの位置を表す巻取装置の図1のA-A断面図である。駆動ローラ33が巻取ローラ32から離れる方向であり、この方向を「逆方向」という。図3においてアーム回転軸331は反時計回りに回転し、アーム332も駆動ローラ33もアーム回転軸331を中心に反時計回りに回転する。
【0033】
本実施例ではアーム332の回転を止める硬質ゴム製のストッパー37を設けている。ストッパー37は、アーム332の長手方向におけるアーム回転軸331から見て駆動ローラ33とは逆の方向の側部に当たるように設けられている。位置としては、一方のサイド部材303の、他方のサイド部材302と向かい合う面上に設けられており、アーム回転軸331より低い位置であって、かつアーム回転軸331から見て駆動ローラ33の方向とは逆方向の位置である。アーム332が逆方向に回転し、ストッパー37に当接すると、それ以上は回転できないためその位置で留まる。アーム332は等速度で動いてストッパー37に接触するので、加速して勢いを持って接触する場合に比べるとストッパー37に対する衝撃は小さくなる。それによりストッパー37の使用寿命は長いものとなる。
【0034】
図4図1のアーム駆動装置が取り付けられたサイド部材の側面図である。本実施例において、アーム駆動装置35はローラ駆動装置34とは別個のサーボモータであり、ローラ駆動装置34が取り付けられている側のサイド部材302ではなくその逆側のサイド部材303に取り付けられている。位置はアーム回転軸331の下方であり、いくつかのギア38を介してアーム回転軸331に接続されている。また、オペレーションパネルに電気的に接続されており、オペレーションパネルでトルクなどサーボモータの設定値を変更することができる。また、編地の要求に応じた既定の回転数を入力し、編機をスタートさせると、自動的にアーム駆動装置35の駆動によりアーム回転軸331が正方向に回転してアーム332も正方向に回転し、駆動ローラ33を編地に押し付ける。
【0035】
その後既定の回転数が終了すると、編機が停止し、自動的にアーム駆動装置35の駆動によりアーム332が逆方向に回転し、駆動ローラ33は編地から離れる。このようにすることで、駆動ローラ33を手動で操作する必要が無い。このため、巻取装置3から見て駆動ローラ33がある側と編地を下ろす側を逆にしている。従来は、丸編機内部には作業者が巻取装置の逆側へ移動するスペースが無いため、片側で巻取装置への操作を完結できるようにする必要があることから、駆動ローラ33がある側と編地を下ろす側は同じにする必要があり、その結果編地を下ろすとき駆動ローラ33の存在が作業の邪魔となっていた。編地を下ろす側と駆動ローラ33がある側を逆にすることで、駆動ローラ33が邪魔にならない。
【0036】
なお、本発明は本実施例に限定されるものでなく、例えば、巻取ローラから自動的に編地を下ろして丸編機外部へ排出するオートドッファーの巻取装置に使用することも考えられる。巻取ローラが自動で長手方向における中間位置で分かれ、両方から巻取ローラが編地から引き抜かれ、編地は搬出装置で丸編機外部へ排出され、再度巻取ローラが設置され、編機が回転し、手動で巻取ローラに編地を巻き付けなくても、摩擦テープや爪などの部材や、空気圧や、分割した巻取ローラや巻取ローラに設けられた穴で挟むなどの方法で編地が巻取ローラに自動的に巻き付き、ある程度巻き付いたら駆動ローラが自動的に編地に押し付けられ、駆動ローラにより編地を送り出して収納し、編成終了後は機械が停止し、駆動ローラが自動的に編地を離れ、巻取ローラが中間位置で分かれ、といった生産、巻取、排出などほぼ全ての工程が人の手を介さない、全自動編成作業が可能となる。
【0037】
他にも、アーム回転軸を巻取ローラより下方に設けたり、駆動ローラを編地には接するが巻取ローラには接しないようにしたりすることも考えられる。また、サーボモータを別の種類のモータに代えたり、ストッパーの硬質ゴムをセンサに代えたりといった、機能が似ているものへの変更も考えられる。また、駆動ローラのある側と編地を下ろす側が同じであっても、本発明を使用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1:丸編機
2:編成部
3:巻取装置
301:ベース
302、303:サイド部材
31:引張ローラ
32:巻取ローラ
33:駆動ローラ
331:アーム回転軸
332:アーム
331:アーム回転軸
34:ローラ駆動装置
35:アーム駆動装置
36:編地のロール
37:ストッパー
38:ギア
図1
図2
図3
図4