(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020568
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20230202BHJP
A61L 101/22 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
A61L2/20
A61L101:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021125992
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】392022064
【氏名又は名称】キヤノンメドテックサプライ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花田 康史
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058BB07
4C058CC02
4C058EE26
4C058JJ12
4C058JJ28
(57)【要約】
【課題】殺菌剤が流れる流路に殺菌剤に含まれる不純物や安定剤等の要素が堆積することを抑制することができる新規な構成の殺菌装置を得る。
【解決手段】殺菌装置は、殺菌庫11と、殺菌剤供給部と、加熱部25と、を備える。殺菌庫11には、被殺菌物を収容する殺菌室が内部に設けられている。殺菌剤供給部には、殺菌室と通じる流路70が設けられている。加熱部25は、流路70の一部分35aを加熱する。一部分35aは、殺菌剤の流れ方向と直交する当該一部分35a、の断面の面積が上流側よりも下流側の方が大きい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被殺菌物を収容する殺菌室が内部に設けられた殺菌庫と、
前記殺菌室と通じる流路が設けられ、前記流路を流れる殺菌剤を前記流路から前記殺菌室に供給する殺菌剤供給部と、
前記流路の一部分であって前記殺菌剤の流れ方向と直交する前記一部分の断面の面積が上流側よりも下流側の方が大きい前記一部分を、局所的に加熱する加熱部と、
を備えた殺菌装置。
【請求項2】
前記殺菌剤供給部は、前記一部分が設けられ前記殺菌剤供給部の一部を構成する構成要素を有し、
前記加熱部は、前記構成要素を加熱することにより前記一部分を局所的に加熱する、請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記殺菌庫は、外面を有し、
前記構成要素は、前記殺菌庫の外側に配置されるとともに前記外面と熱的に接続され、
前記加熱部は、前記外面に配置され、前記殺菌室を前記殺菌庫の外側から加熱するとともに前記殺菌庫を介して前記構成要素を加熱する、請求項2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記構成要素は、前記外面と接触した、請求項3に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記構成要素と前記外面との間に介在し、前記構成要素と前記外面とを熱的に接続した伝熱部材を備えた、請求項3または4に記載の殺菌装置。
【請求項6】
前記殺菌剤供給部は、前記構成要素であり、前記一部分に含まれる上流側流路と、前記一部分に含まれ前記上流側流路の下流側に設けられ前記上流側流路から分岐しそれぞれが前記殺菌室と通じる複数の分岐路と、が設けられた分配器を有し、
前記複数の分岐路のそれぞれの前記断面の面積の合計が、前記上流側流路の前記断面の面積よりも大きい、請求項2~5のうちいずれか一つに記載の殺菌装置。
【請求項7】
前記殺菌剤供給部は、前記構成要素であり、前記流路を開閉する弁装置を有した、請求項2~6のうちいずれか一つに記載の殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等に開示の実施形態は、殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、殺菌庫内の殺菌室を減圧して、過酸化水素水溶液等の殺菌剤を殺菌室に吸引しつつ当該殺菌剤を気化させて、殺菌室に収容された被殺菌物を気化された殺菌剤によって殺菌する殺菌装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の殺菌装置では、殺菌剤が流れる流路に殺菌剤に含まれる不純物や安定剤等の要素が堆積することを抑制することができる新規な構成が得られれば有益である。本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、殺菌剤が流れる流路に殺菌剤に含まれる不純物や安定剤等の要素が堆積することを抑制することができる新規な構成の殺菌装置を得ることである。ただし、本明細書等に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を、本明細書等に開示の実施形態が解決する他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の殺菌装置は、被殺菌物を収容する殺菌室が内部に設けられた殺菌庫と、前記殺菌室と通じる流路が設けられ、前記流路を流れる殺菌剤を前記流路から前記殺菌室に供給する殺菌剤供給部と、前記流路の一部分であって前記殺菌剤の流れ方向と直交する前記一部分の断面の面積が上流側よりも下流側の方が大きい前記一部分を、局所的に加熱する加熱部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態の殺菌装置の構成を例示的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態の殺菌装置における分配器を含む一部を例示的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態の殺菌装置の分配器を例示的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の殺菌装置における弁装置を含む一部を例示的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0009】
図1は、実施形態の殺菌装置1の構成を例示的に示す図である。
図1に示されるように、殺菌装置1は、殺菌処理部2と、制御装置3と、を備える。殺菌処理部2は、液体状の殺菌剤を気化させて、気化させた殺菌剤によって被殺菌物100を殺菌する。すなわち、殺菌処理部2は、菌を殺すことができる。換言すると、殺菌処理部2は、滅菌する。すなわち、殺菌処理部2は、菌を減らすことができる。液体状の殺菌剤は、例えば過酸化水素水溶液である。また、被殺菌物100は、例えば、内視鏡や内視鏡ビデオ、医療用ブラスチック製品等の医療用機器であるが、他の物であってもよい。制御装置3は、殺菌処理部2を制御する。殺菌装置1は、滅菌装置とも称される。
【0010】
殺菌処理部(滅菌処理部)2は、殺菌庫(滅菌庫)11と、殺菌剤供給部(滅菌剤供給部)12と、を備える。殺菌庫11の内部には、被殺菌物(被滅菌物)100を収容する殺菌室(滅菌室)11aが設けられており、殺菌剤供給部12は、殺菌室11aに殺菌剤を供給する。殺菌室11aは、チャンバーとも称される。
【0011】
また、本実施形態では、便宜上、互いに直交する三方向が定義されている。X方向は、殺菌庫11の前後方向(奥行方向)の後方と一致し、Y方向は、殺菌庫11の幅方向に沿い、Z方向は、殺菌庫11の上下方向(高さ方向)の上方と一致する。なお、以後では、殺菌庫11の幅方向を左右方向とも称する。
【0012】
殺菌剤供給部12は、カートリッジ31と、液相ポンプ32と、濃縮器33と、電磁弁34と、分配器35と、加熱・気化ユニット36と、真空ポンプ37と、電磁弁38と、真空ゲージ39と、を備える。カートリッジ31と、液相ポンプ32と、濃縮器33と、電磁弁34と、分配器35と、加熱・気化ユニット36とは、流体回路を構成している。
【0013】
真空ポンプ37は、殺菌庫11内すなわち殺菌室11a、加熱・気化ユニット36内、分配器35内の気体を吸引して、それぞれの空間内を減圧し真空状態(大気圧より低い圧力である陰圧の気体で満たされた空間内の状態)にする。真空状態は、陰圧状態とも称される。
【0014】
カートリッジ31は、液体状の殺菌剤(原液)を収容している。液相ポンプ32は、カートリッジ31から液体状の殺菌剤を吸引して、吸引した液体状の殺菌剤を濃縮器33へ吐出すなわち供給する。液相ポンプ32は、殺菌剤の吸引量および吐出量を計量可能なチューブポンプである。
【0015】
濃縮器33は、液体状の殺菌剤を加熱して液体状の殺菌剤を濃縮する。具体的には、濃縮器33は、過酸化水素水溶液中の水を熱により気化させて、過酸化水素水溶液中の過酸化水素の濃度を上げる。
【0016】
電磁弁34は、濃縮器33と殺菌室11aとの間に設けられている。電磁弁34が開くと、殺菌室11aが陰圧となっている場合には、濃縮器33からの殺菌剤が殺菌室11aに供給される。
【0017】
分配器35は、濃縮器33と殺菌室11aとの間に設けられている。分配器35は、陰圧によって電磁弁34から流入した液体状の殺菌剤を、パスカルの法則により四分割して、後述の四つの気化器42に等量で分配する。
【0018】
四つの気化器42は、液体状の殺菌剤を気化させて、気体状の殺菌剤を殺菌室11a内に供給する。
【0019】
電磁弁38は、殺菌室11aの内と外とを連通する開弁状態と殺菌室11aの内と外とを遮断する閉弁状態とに変化可能である。電磁弁38が開弁状態になると、殺菌室11aが減圧状態から大気圧状態に戻る。真空ゲージ39は、殺菌室11aの真空度を測定する。
【0020】
殺菌庫11の内部には、殺菌室11aが設けられている。殺菌室11aに被殺菌物100が収容される。
【0021】
殺菌庫11は、前後方向を長手方向とし幅方向を短手方向とする略直方体状の箱形である。殺菌庫11は、本体21と、扉22と、を有する。なお、殺菌庫11は、筐体とも称される。
【0022】
本体21は、上壁21aと、下壁21bと、右壁21cと、左壁(不図示)と、後壁21eと、を有する。上壁21aおよび下壁21bは、いずれも上下方向と直交する方向に延びており、上下方向に間隔を空けて互いに平行に設けられている。右壁21cおよび左壁は、いずれも幅方向と直交する方向に延びており、幅方向に間隔を空けて互いに平行に設けられている。後壁21eは、前後方向と直交する方向に延びており、上壁21a、下壁21b、右壁21c、および左壁のそれぞれの後端部を接続している。上壁21a、下壁21b、右壁21c、左壁、および後壁21eは、それぞれ、外面11bと内面とを有する。
【0023】
本体21の内部に殺菌室11aが設けられている。殺菌室11aは、上壁21a、下壁21b、右壁21c、左壁、および後壁21eによって囲まれている。
【0024】
扉22は、上壁21a、下壁21b、右壁21cまたは左壁の前端部に回転可能に支持され、本体21に対して開閉可能である。扉22は、閉められた状態では、前後方向と直交する方向に延びており、上壁21a、下壁21b、右壁21c、および左壁のそれぞれの前端部と重なり、殺菌室11aを閉塞する。扉22が開かれると、殺菌室11aが前方に開放される。なお、後壁21eが、扉22と同様に開閉可能な扉として構成されていてもよい。すなわち、扉22と後壁21eとが、両方とも開閉可能であってもよい。
【0025】
また、扉22、上壁21a、下壁21b、右壁21c、左壁、および後壁21eのそれぞれの外面11bには、外側ヒータ25が重ねられている。なお、
図1では、上記の外側ヒータ25のうち一部だけが示されている。外側ヒータ25は、殺菌庫11の外側から殺菌庫11の内部すなわち殺菌室11aを加熱する。外側ヒータ25は、殺菌室11aの温度が例えば50℃~60℃になるように殺菌室11aを加熱する。外側ヒータ25は、シートヒータ等の熱源を有する。以下、この殺菌室11aの殺菌時(滅菌時)の温度を殺菌温度(滅菌温度)と称することがある。
【0026】
殺菌室11aには、二つの棚23と、二つの加熱・気化ユニット36と、が収容されている。なお、棚23と加熱・気化ユニット36の数は、上記に限定されない。
【0027】
二つの棚23は、上下方向に間隔を空けて並べられている。各棚23は、右壁21cと左壁とに設けられた支持部(不図示)によって着脱可能に支持されている。二つの棚23は、殺菌庫11に対して前後方向にスライド可能である。二つの棚23は、それぞれ、被殺菌物100の載置が可能である。棚23は、複数の開口部が設けられた網状である。棚23の下側には、ネット26が重ねられている。例えば、ネット26は、棚23に溶接され、棚23と一体化されている。ネット26の比熱は、棚23の比熱よりも低い。ネット26には、複数の開口部が設けられている。なお、ネット26は設けられていなくてもよい。
【0028】
二つの加熱・気化ユニット36は、それぞれ、二つの棚23の下側に配置されている。詳細には、二つの加熱・気化ユニット36は、それぞれ、二つの棚23のそれぞれの直下に配置されている。直下とは、加熱・気化ユニット36に含まれる内側ヒータ43の上端と棚23の上端との間の上下方向の距離が、当該棚23上の被殺菌物100を収容可能な空間(以後、棚上収容空間とも称する)の上下方向の高さの半分以下のことをいう。
【0029】
二つの加熱・気化ユニット36のうち上側の加熱・気化ユニット36は、右壁21cと左壁(不図示)とに設けられた支持部によって着脱可能に支持されている。また、二つの加熱・気化ユニット36のうち下側の加熱・気化ユニット36は、下壁21bcに着脱可能に支持されている。
【0030】
加熱・気化ユニット36は、ケース41と、二つの気化器42と、内側ヒータ43と、を有する。
【0031】
ケース41は、例えば、アルミニウムによって構成されている。
【0032】
二つの気化器42は、上下方向と交差する方向である前後方向に間隔を空けてケース41に配置されている。各気化器42は、二つの板45,46を有する。したがって、二つの板45,46の組47が二つ設けられており、これらの組47は、前後方向に間隔を空けてケース41に配置されている。なお、組47の数は、上記に限定されない。例えば、組47は、一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。
【0033】
二つの板45,46は、殺菌室11aにおいて棚23の下側に配置されている。板45,46は、平板状である。二つの板45,46は、いずれも上下方向と直交する方向に延びて、上下方向に間隔を空けて互いに平行に設けられている。二つの板45,46は、平行平板とも称される。板46は、板45の下側に配置されている。また、気化器42には、供給口と出口とが設けられている。供給口は、板46の略中央部に設けられている。供給口には、流路70を介して分配器35から液体状の殺菌剤が供給される。供給口は、液体状の殺菌剤を二つの板45,46の間の隙間に供給する。隙間は、殺菌剤の流路(通路)である。出口は、二つの板45,46の間の隙間における二つの板45,46の外部に開放された外縁部によって構成されている。出口から、二つの板45,46の間の殺菌剤が二つの板45,46の間の隙間の外に流出する。
【0034】
内側ヒータ43は、殺菌室11aにおいて棚23の下側に配置されている。内側ヒータ43は、二つの組47のそれぞれの二つの板45,46の周囲に設けられている。内側ヒータ43は、折り曲げ加工された一つのシーズヒータである。
【0035】
また、殺菌剤供給部12には、殺菌室11aと通じる流路70が設けられ、殺菌剤供給部12は、流路70を流れる殺菌剤を流路70から殺菌室11aに供給する。流路70は、例えば、カートリッジ31から気化器42に至る。換言すると、流路70は、カートリッジ31と気化器42との間に設けられ、カートリッジ31と気化器42とを接続している。流路70における殺菌剤の流れ方向と直交する断面は、流路70の部位によって異なる。以後、特に言及しない限り、流路70の断面は、流路70における殺菌剤の流れ方向と直交する断面である。また、断面の面積を断面積とも称する。
【0036】
制御装置3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を有する。すなわち、制御装置3は、コンピュータである。CPUは、ROM等に記憶されたプログラムを読み出して実行する。RAMは、CPUがプログラムを実行して種々の演算処理を実行する際に用いられる各種データを一時的に記憶する。また、制御装置3は、外側ヒータ25、液相ポンプ32、濃縮器33、電磁弁34、内側ヒータ43、真空ポンプ37、および電磁弁38等を制御する。また、制御装置3には、真空ゲージ39等が接続されている。
【0037】
次に、分配器35について詳細に説明する。
図2は、実施形態の殺菌装置1における分配器35を含む一部を例示的に示す断面図である。詳細には、
図2は、X-Z平面での断面図である。
図3は、実施形態の殺菌装置の分配器35を例示的に示す平面図である。
【0038】
図2に示されるように、分配器35は、殺菌庫11の外側に配置されている。
図2および
図3に示されるように、分配器35は、Z方向に扁平な直方体状に形成されている。分配器35は、例えば、アルミニウム等の比較的熱伝導性の高い金属材料によって構成されている。分配器35は、殺菌剤供給部12の一部を構成する構成要素の一例である。
【0039】
分配器35には、分配流路35aが設けられている。分配流路35aは、流路70の一部分である。分配流路35aは、上流側流路35bと、複数の分岐路35cと、を有する。上流側流路35bは、配管71を介して電磁弁34と通じている。配管71には、流路70に含まれる流路71aが設けられている。複数の分岐路35cは、上流側流路35bの下流側に設けられて、上流側流路35bから分岐している。複数の分岐路35cは、それぞれ、配管72および気化器42を介して殺菌室11aと通じている。配管72には、流路70に含まれる流路72aが設けられている。また、上流側流路35bに対して各分岐路35cが異なる方向に延びている。すなわち、上流側流路35bと分岐路35cとの間に屈曲部が設けられている。屈曲部は、角部や湾曲部、曲がり角とも称される。複数の分岐路35cのそれぞれの断面の面積の合計は、上流側流路35bの断面の面積よりも大きい。例えば、複数の分岐路35cのそれぞれの断面の面積の合計は、上流側流路35bの断面の面積の四倍である。なお、分配流路35aおよび配管71,72内にチューブが挿入されていてもよい。また、配管71,72同士が接続されて、配管71,72内の流路70a,72aが分配流路35aを構成してもよい。
【0040】
図2に示されるように、分配器35は、殺菌庫11の上壁21aの外面11bにネジ等の結合具によって固定され、当該外面11bと接触している。なお、
図1では、便宜上、分配器35が外面11bと離間した状態が示されている。分配器35は、殺菌庫11を介して、各外側ヒータ25と熱的に接続されている。したがって、分配器35には、外側ヒータ25の熱が殺菌庫11を介して伝わる。換言すると、外側ヒータ25は、殺菌庫11を介して分配器35を加熱する。外側ヒータ25は、分配器35を加熱することにより分配流路35aを加熱する。すなわち、外側ヒータ25は、流路70において少なくとも分配流路35aを局所的(部分的)に加熱する。外側ヒータ25は、加熱部の一例である。
【0041】
次に、電磁弁34について詳細に説明する。
図4は、実施形態の殺菌装置1における弁装置80を含む一部を例示的に示す断面図である。詳細には、
図4は、X-Z平面での断面図である。
図5は、
図4のV-V線に沿った断面図である。
【0042】
図4に示されるように、電磁弁34は、殺菌庫11の上壁21aの外側に配置されている。
図4および
図5に示されるように、電磁弁34には、二つのニップル81,82が接続されており、電磁弁34と二つのニップル81,82は、弁装置80を構成している。
【0043】
図4に示されるように、電磁弁34は、ケース34aと、コイル34bと、スプール34cと、弁部34dと、ダイアフラム膜34eと、流路部材34fと、を有する。コイル34bは、筒状に形成され、ケース34aに収容されている。スプール34cは、コイル34bの筒内に往復動可能に設けられている。スプール34cは、コイルばね(不図示)によってケース34aから出る方向に押されている。スプール34cにおけるケース34aから突出した先端部には、弁部34dが設けられている。ダイアフラム膜34eは、スプール34cにおけるケース34aから突出した部分とケース34aとの間に亘って設けられている。
【0044】
流路部材34fは、弁座34gを有する。弁座34gに、コイルばねによってスプール34cの弁部34dが押し付けられる。流路部材34fには、弁流路34hが設けられている。弁流路34h、流路70の一部を構成する。弁流路34hは、入口部34iと、中間部34jと、出口部34kと、を有する。入口部34iは、弁座34gの上流側に設けられている。入口部34iは、ニップル81内の流路81aと接続されている。入口部34iは、ニップル81を介して濃縮器33(大気圧側)に接続されている。中間部34jは、弁座34gの下流側に設けられており、中間部34j内に弁部34dが収容されている。出口部34kは、中間部34jの下流側に設けられている。出口部34kは、ニップル82内の流路82aと接続されている。出口部34kは、ニップル82を介して分配器35(真空圧側)に接続されている。入口部34iと出口部34kとは、弁部34dの一部が設けられた壁34mによって仕切られている。ニップル81,82は、例えば、合成樹脂材料によって構成されている。
【0045】
出口部34kは、詳細には、第1領域34pと、第2領域34qと、第3領域34rと、第4領域34sと、を有する。第1領域34pは、中間部34jの下流側に位置して中間部34jと接続されている。第2領域34qは、第1領域34pの下流側に位置して第1領域34pと接続されている。第2領域34qは、第1領域34pの延び方向と異なる方向に延びている。すなわち、第1領域34pと第2領域34qとの間に屈曲部が設けられている。第3領域34rは、第3領域34rの下流側に位置して第3領域34rと接続されている。第3領域34rは、下流に向かうにつれて断面積が大きくなる。第4領域34sは、第3領域34rの下流側に位置して第3領域34rと接続されている。第4領域34sは、下流側に向かうにつれて断面積が大きくなる。第1領域34pの断面積と第2領域34qの断面積は、略同じである。第3領域34rの断面積は、第1領域34pと第2領域34qのいずれの断面積よりも大きい。第4領域34sの断面積は、第3領域34rの断面積よりも大きい。すなわち、出口部34kは、上流側よりも下流側の方が断面積が大きい。
【0046】
上記構成の電磁弁34は、流路70(弁流路34h)を開閉する。詳細には、非通電時には、コイルばねの弾性力によって弁部34dが弁座34gに押し付けられ、弁部34dと弁座34gが密着する。この状態は、流路70(弁流路34h)を遮断する閉弁状態である。一方、電磁弁34のコイル34bに通電がされると、スプール34cがコイルばねの弾性力に抗して弁座34gから離間する方向に移動して、弁部34dが弁座34gから離間する。この状態は、流路70(弁流路34h)を開放する開弁状態である。開弁状態では、濃縮器33側(大気圧側)から分配器35側(真空圧側)に液体状の殺菌剤が圧力差に引かれて移動する。
【0047】
図4に示されるように、弁装置80は、殺菌庫11の上壁21aの外面11bに伝熱部材83を介して固定されている。伝熱部材83は、二つの壁83a,83bを有する。壁83aは、殺菌庫11の上壁21aの外面11bに接触した状態で外面11bに固定されている。壁83bは、壁83aから上方に延びている。壁83bに、弁装置80の流路部材34fが固定されている。伝熱部材83は、例えば、アルミニウム等の金属材料によって構成されている。伝熱部材83は、弁装置80と上壁21aの外面11bとを熱的に接続している。
【0048】
弁装置80は、殺菌庫11の上壁21aおよび伝熱部材83を介して、外側ヒータ25と熱的に接続されている。したがって、弁装置80には、外側ヒータ25の熱が殺菌庫11および伝熱部材83を介して伝わる。換言すると、外側ヒータ25は、殺菌庫11および伝熱部材83を介して弁装置80を加熱する。外側ヒータ25は、弁装置80を加熱することにより弁流路34hを加熱する。すなわち、外側ヒータ25は、流路70において少なくとも弁流路34hを局所的(部分的)に加熱する。
【0049】
次に、殺菌装置1の動作を説明する。以下の動作の制御は、制御装置3によって行われる。また、以下の動作においては、外側ヒータ25が動作しており、外側ヒータ25が殺菌室11aを殺菌室11aの外側から加熱している。殺菌装置1は、電磁弁34を閉じた状態で、真空ポンプ37によって殺菌室11aおよび殺菌室11aから電磁弁34までの間の流体回路中の流路70(空間)の圧力を減圧する。殺菌装置1は、殺菌室11aの圧力が規定の圧力まで下がった場合に、電磁弁34を開く。これにより、濃縮器33から出た殺菌剤が、殺菌室11aに向かって進み、分配器35によって、各加熱・気化ユニット36に流入する。殺菌剤は、各加熱・気化ユニット36において、供給口から二つの板45,46の間に進み、二つの板45,46の間で内側ヒータ43によって加熱される。これにより、殺菌剤は、二つの板45,46の間を熱膨張しながら、真空に引かれて、同心円状に広がり、二つの板45,46との接触面積が瞬時に増大する。このとき、内側ヒータ43は、加熱に殺菌剤を加熱することにより殺菌剤の気化を促進している。これにより、殺菌剤が二つの板45,46の間で瞬時に飽和水蒸気圧まで蒸発する。すなわち、殺菌剤が、二つの板45,46の間で気化する。よって、過酸化水素水溶液中の水分子の気化と過酸化水素分子の気化とに時間差が生じるのが抑制される。ここで、気化した殺菌剤(ガス)における過酸化水素と水との割合は、過酸化水素が60%で水が40%となるかそれに近い値となる。
【0050】
気体状の殺菌剤は、二つの板45,46の出口から二つの板45,46の外側の殺菌室11aに流出する。殺菌室11aに入った気体状の殺菌剤は、上方に流れて、棚23に載置された被殺菌物100に接触する。これにより、被殺菌物100が殺菌される。このように、棚23の直下の気化器42で殺菌剤が気化して、気化した殺菌剤が棚23上の被殺菌物100に到達する。よって、気化器42で気化した殺菌剤が比較的短時間および短距離で被殺菌物100に到達することができる。したがって、被殺菌物100に到達したガスにおける過酸化水素と水との割合が、過酸化水素が60%で水が40%となるか近い値に維持されやすい。
【0051】
このとき、内側ヒータ43は、被殺菌物100を加熱(加温)する。すなわち、内側ヒータ43は、殺菌剤供給部12によって殺菌室11aへ殺菌剤の供給が行われている場合に、被殺菌物100を加熱する。具体的には、内側ヒータ43は、被殺菌物100を輻射熱で加熱(加温)する。内側ヒータ43は、温度センサ(不図示)が検出するケース41内の温度が所定の温度に維持されるように制御装置3によって制御される。一例として、内側ヒータ43は、殺菌工程時または加熱(加温)時にはケース41の温度が80℃なるように制御され、待機時(被殺菌時)にはケース41の温度が55℃となるように制御される。この待機時の温度は、殺菌室11a内であってケース41から比較的離れた場所の温度と同じである。
【0052】
ここで、流路70において断面積が広がる部分、例えば、分配器35の分配流路35aや弁装置80の出口部34kでは、殺菌剤に含まれる不純物や安定剤等の要素が凝結や固結して堆積する虞がある。分配流路35aでは、例えば、分配流路35aの分岐点の上流側すなわち上流側流路35bにおいて殺菌剤の要素が堆積する虞がある。弁装置80では、例えば、出口部34kの第1領域34pおよび第2領域34qで殺菌剤の要素が堆積する虞がある。要素の堆積物は、例えば白色である、要素の堆積物は付着物や異物とも称される。このような現象は、流路70の断面積が拡大することにより生じる。真空を用いて滅菌剤を吸引することにより、滅菌剤が液体状(液相)であっても、流路70の断面積(容積)が拡大した瞬間に若干であるが滅菌剤が陰圧により気化する。この気化に伴って冷却が起こり、気化による冷却の効果で滅菌剤の運動エネルギーが低下する。これにより、滅菌剤中の質量の比較的重い分子が流路70を形成する面に付着し、凝結や固結する。以後、凝結や固結を凝結・固結とも表記する。
【0053】
上記の滅菌剤の凝結や固結の現象は、加熱によって抑制することができる。凝結や固結する箇所を周囲から加熱することにより間接的に分子の運動エネルギーの低下を補い凝結・固結現象を抑制することができる。この場合の加熱対象の加熱後の温度は、殺菌装置1全体が50~60℃の温度環境下で稼働しているので50~60℃であれば十分である。そこで、本実施形態では、外側ヒータ25によって、流路70の一部分である分配流路35aおよび出口部34kを局所的に加熱する。これにより、分配流路35aおよび出口部34kやその周辺で滅菌剤の要素が凝結や固結するのを抑制できひいてはその要素が堆積するのを抑制することができる。
【0054】
なお、弁装置80では、弁装置80が閉弁状態から開弁状態弁となると、ダイアフラム膜34eの変形により中間部34jの断面積が入口部34iの下流端部の断面積よりも大きくなる。したがって、中間部34jやその周囲でも滅菌剤の凝結・固結が生じる虞があるが、この凝結・固結も外側ヒータ25による弁装置80の加熱によって抑制される。
【0055】
以上、説明したように、本実施形態では、殺菌装置1は、殺菌庫11と、殺菌剤供給部12と、外側ヒータ25(加熱部)と、を備える。殺菌庫11には、被殺菌物100を収容する殺菌室11aが内部に設けられている。殺菌剤供給部12には、殺菌室11aと通じる流路70が設けられ、殺菌剤供給部12は、流路70を流れる殺菌剤を流路70から殺菌室11aに供給する。外側ヒータ25は、流路70の一部分(分配流路35a、出口部34k)を、局所的に加熱する。上記一部分(分配流路35a、出口部34k)は、それぞれ、流路70の一部分(分配流路35a、出口部34k)であって殺菌剤の流れ方向と直交する当該一部分(分配流路35a、出口部34k)の断面の面積が上流側よりも下流側の方が大きい。
【0056】
このような構成によれば、外側ヒータ25が、流路70の一部分(分配流路35a、出口部34k)を加熱するので、流路70の一部分(分配流路35a、出口部34k)やその周囲で、殺菌剤に含まれる要素が凝結や固結して堆積することを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、殺菌剤供給部12は、流路70の一部分(分配流路35a、出口部34k)が設けられ殺菌剤供給部12の一部を構成する構成要素(分配器35、弁装置80)を有する。外側ヒータ25は、構成要素(分配器35、弁装置80)を加熱することにより上記一部分(分配流路35a、出口部34k)を局所的に加熱する。
【0058】
このような構成によれば、流路70の外側から流路70の一部分(分配流路35a、出口部34k)を加熱することができる。
【0059】
また、本実施形態では、殺菌庫11は、外面11bを有する。構成要素(分配器35、弁装置80)は、殺菌庫11の外側に配置されるとともに外面11bと熱的に接続されている。外側ヒータ25は、外面11bに配置され、殺菌室11aを殺菌庫11の外側から加熱するとともに殺菌庫11を介して構成要素(分配器35、弁装置80)を加熱する。
【0060】
このような構成によれば、外側ヒータ25が殺菌室11aの加熱と構成要素(分配器35、弁装置80)の加熱との両方を行うので、それらの加熱を別個の加熱部で行う構成に比べて、殺菌装置1の構成を簡素化しやすい。
【0061】
また、本実施形態では、構成要素(分配器35)は、外面11bと接触している。
【0062】
このような構成によれば、構成要素(分配器35)を比較的高温にしやすい。ここで、一例として、分配器35は、一辺が50mm程度であり、殺菌室11aは、約300mm×450mm×750mmほどの体積を有する剛体で肉厚も3mm程度である。よって、それらの比熱から考えると分配器35を十分に加熱することができる。
【0063】
また、本実施形態では、殺菌装置1は、構成要素(弁装置80)と外面11bとの間に介在し、構成要素(弁装置80)と外面11bとを熱的に接続した伝熱部材83を備える。
【0064】
このような構成によれば、構成要素(弁装置80)が高温になりすぎるのを抑制しやすい。ここで、弁装置80には、例えば比較的耐熱性の低い部品(例えば、ニップル81,82やダイアフラム膜34e等)が含まれるので、弁装置80と比較して熱に弱い。このため、本実施形態では、弁装置80を、伝熱部材83を介して外面11bに熱的に接続している。ここで、一例として、弁装置80が40℃以下となるように伝熱部材83が構成されていてよい。
【0065】
また、本実施形態では、殺菌剤供給部12は、構成要素である分配器35を有する。分配器35には、一部分である分配流路35aに含まれる上流側流路35bと、分配流路35aに含まれ上流側流路35bの下流側に設けられ上流側流路35bから分岐しそれぞれが殺菌室11aと通じる複数の分岐路35cと、が設けられている。複数の分岐路35cのそれぞれの断面の面積の合計が、上流側流路35bの断面の面積よりも大きい。
【0066】
このような構成によれば、分配器35において殺菌剤に含まれる要素が凝結や固結して堆積することを抑制することができる。
【0067】
また、本実施形態では、殺菌剤供給部12は、構成要素であり、流路70を開閉する弁装置80を有する。
【0068】
このような構成によれば、弁装置80において殺菌剤に含まれる要素が凝結や固結して堆積することを抑制することができる。
【0069】
なお、上記実施形態では、分配器35および弁装置80を加熱する加熱部として、殺菌室11aを加熱する外側ヒータ25の例が示されたが、これに限定されない。例えば、加熱部は、分配器35および弁装置80すなわち構成要素専用のものが設けられていてもよい。このとき、構成要素専用の加熱部は、構成要素ごとに設けられていてもよいし、複数の構成要素に対して設けられていてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、分配器35が殺菌庫11の外側に位置して殺菌庫11の外面11bに固定された例が示されたが、これに限定されない。例えば、分配器35が殺菌庫11の内部すなわち殺菌室11a内において内側ヒータ43の近傍(例えば、直上)に配置されて、分配器35が内側ヒータ43によって加熱されてもよい。また、分配器35は、殺菌庫11に伝熱部材83を介して固定されていてもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、弁装置80が伝熱部材83を介して殺菌庫11に固定された例が示されたが、これに限定されない。例えば、弁装置80は、殺菌庫11に接触した状態で固定されていてもよい。
【0072】
発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0073】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、殺菌剤が流れる流路70に殺菌剤に含まれる不純物や安定剤等の要素が堆積することを抑制することができる新規な構成の殺菌装置1を得ることができる。
【符号の説明】
【0074】
1…殺菌装置、11…殺菌庫、11a…殺菌室、11b…外面、12…殺菌剤供給部、34k…出口部(一部分)、25…外側ヒータ(加熱部)、35…分配器(構成要素)、35a…分配流路(一部分)、35b…上流側流路、35c…分岐路、80…弁装置(構成要素)、83…伝熱部材、70…流路、100…被殺菌物。