(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020572
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】保護回路及びスイッチ制御装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/0812 20060101AFI20230202BHJP
H03K 17/60 20060101ALI20230202BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H03K17/0812
H03K17/60 A
H02H7/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126000
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 清貴
【テーマコード(参考)】
5G053
5J055
【Fターム(参考)】
5G053AA14
5G053BA06
5G053CA01
5J055AX44
5J055BX16
5J055DX07
5J055DX61
5J055EY04
5J055EY16
5J055EZ03
5J055GX01
5J055GX06
(57)【要約】
【課題】シンプルな回路構成で過加熱を防止できる保護回路を提供する。
【解決手段】保護回路30は、入力及び出力の少なくともいずれか一方を複数とした入出力端子(I
1、I
2、O
1)と、複数の入出力端子(I
1、I
2、O
1)のいずれか一方に接続されて、第1抵抗温度係数をもつ抵抗を含む第1抵抗回路31а、32аと、複数の入出力端子(I
1、I
2、O
1)のいずれか他方に接続されて、第1抵抗温度係数と温度特性が異なる第2抵抗温度係数をもつ抵抗を含む第2抵抗回路31b、32bとを有する。保護回路30は、メインスイッチQ27の制御端子(ゲート端子)に電気的に接続され、メインスイッチQ27の温度が所定温度(電流遮断温度)以上の場合に、メインスイッチQ27の通過電流を遮断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチを保護する保護回路であって、
入力及び出力の少なくともいずれか一方を複数とした入出力端子と、
前記複数の入出力端子のいずれか一方に接続されて、第1抵抗温度係数をもつ抵抗を含む第1抵抗回路と、
前記複数の入出力端子のいずれか他方に接続されて、前記第1抵抗温度係数と温度特性が異なる第2抵抗温度係数をもつ抵抗を含む第2抵抗回路とを有し、
前記保護回路は
前記半導体スイッチの制御端子に電気的に接続され、
前記半導体スイッチの温度が所定温度以上の場合に、前記半導体スイッチの通過電流を遮断する保護回路。
【請求項2】
請求項1記載の保護回路であって、
前記第1抵抗温度係数及び前記第2抵抗温度係数の特性は、温度に対する抵抗の特性で、正、負、及びフラットのいずれかの特性となり、かつ、互いに異なる特性である保護回路。
【請求項3】
請求項1又は2記載の保護回路であって、
前記第1抵抗回路は、第1負荷抵抗と第1電流源用抵抗を有し、
前記第2抵抗回路は、第2負荷抵抗と第2電流源用抵抗を有し、
前記第1負荷抵抗、前記第1電流源用抵抗、前記第2負荷抵抗、及び前記第2電流源用抵抗のうち、一の抵抗がもつ抵抗温度係数は、他の抵抗がもつ抵抗温度係数と異なる保護回路。
【請求項4】
請求項3に記載の保護回路であって、
前記第1抵抗回路及び前記第2抵抗回路に含まれるスイッチング素子は化合物半導体で形成され、
前記一の抵抗及び前記他の抵抗のいずれか一方の抵抗は窒化材料で形成されている保護回路。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の保護回路であって、
前記第1抵抗回路の出力電圧と前記第2抵抗回路の出力電圧との電圧差は温度に応じて変化する保護回路。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の保護回路を有するスイッチ制御装置であって、
前記半導体スイッチのオン、オフを切り替えるための閾値電圧を選択する電圧選択回路を有し、
前記保護回路は前記電圧選択回路に接続され、
前記電圧選択回路は、前記半導体スイッチの温度が前記所定温度以上の場合に、前記スイッチ制御装置の入力電圧の大きさに関わらずに、前記半導体スイッチがオフになるように前記閾値電圧を設定するスイッチ制御装置。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の保護回路を有するスイッチ制御装置であって、
前記所定温度を調整するための可変抵抗を有するスイッチ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体スイッチを保護する保護回路及びスイッチ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、高電圧GaNパワーHEMT(High Electron Mobility Transistors)用に提案されたPTATベースの温度遮断回路が知られている(例えば非特許文献1)。例えば、非特許文献1記載の温度遮断回路は、GaNパワーHEMTの温度を感知し、温度を反映させた電圧を生成して出力する。GaNパワーHEMTで生成された、温度に応じた電圧はコンパレータに入力されて、入力電圧と固定の基準電圧と比較して、所定の温度条件に達したときにフラグを立て、GaNパワーHEMTを遮断させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】D. Risbud, K. Pedrotti, "Analog and digital cell library in high voltage GaN-on-Si Schottky power semiconductor technology", WiPD.4, Fayetteville, AR, USA, (2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記温度遮断回路を基板に実装した場合には、回路構造が複雑で、基板上における温度遮断回路の専有面積が大きいという問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、シンプルな回路構成で過加熱を防止できる保護回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明に係る保護回路は、半導体スイッチを保護する保護回路であって、入力及び出力の少なくともいずれか一方を複数とした入出力端子と、前記複数の入出力端子のいずれか一方に接続されて、第1抵抗温度係数をもつ抵抗を含む第1抵抗回路と、前記複数の入出力端子のいずれか他方に接続されて、前記第1抵抗温度係数と温度特性が異なる第2抵抗温度係数をもつ抵抗を含む第2抵抗回路とを有し、前記保護回路は、前記半導体スイッチの制御端子に電気的に接続され、前記半導体スイッチの温度が所定温度以上の場合に、前記半導体スイッチの通過電流を遮断する。
[2]上記発明において前記保護回路は、前記第1抵抗温度係数及び前記第2抵抗温度係数の特性は、温度に対する抵抗の特性で、正、負、及びフラットのいずれかの特性となり、かつ、互いに異なる特性である。
[3]上記発明において前記保護回路は、前記第1抵抗回路は、第1負荷抵抗と第1電流源用抵抗を有し、前記第2抵抗回路は、第2負荷抵抗と第2電流源用抵抗を有し、
前記第1負荷抵抗、前記第1電流源用抵抗、前記第2負荷抵抗、及び前記第2電流源用抵抗のうち、一の抵抗がもつ抵抗温度係数は、他の抵抗がもつ抵抗温度係数と異なる。
[4]上記発明において前記保護回路は、前記第1抵抗回路及び前記第2抵抗回路に含まれるスイッチング素子は化合物半導体で形成され、前記一の抵抗及び前記他の抵抗のいずれか一方の抵抗は窒化材料で形成されている。
[5]上記発明において前記保護回路は、前記第1抵抗回路の出力電圧と前記第2抵抗回路の出力電圧との電圧差は温度に応じて変化する。
[6]本発明に係るスイッチ制御装置は、上記保護回路を有し、前記半導体スイッチのオン、オフを切り替えるための閾値電圧を選択する電圧選択回路を有し、前記保護回路は前記電圧選択回路に接続され、前記電圧選択回路は、前記半導体スイッチの温度が前記所定温度以上の場合に、前記スイッチ制御装置の入力電圧の大きさに関わらずに、前記半導体スイッチがオフになるように前記閾値電圧を設定する。
[7]上記発明において前記スイッチ制御装置は、前記所定温度を調整するための可変抵抗を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、保護回路は、入力及び出力の少なくともいずれか一方を複数とした入出力端子と、複数の入出力端子のいずれか一方に接続されて、第1抵抗温度係数をもつ抵抗を含む第1抵抗回路と、複数の入出力端子のいずれか他方に接続されて、第1抵抗温度係数と温度特性が異なる第2抵抗温度係数をもつ抵抗を含む第2抵抗回路とを有し、保護回路は、半導体スイッチの制御端子に電気的に接続され、半導体スイッチの温度が所定温度以上の場合に、半導体スイッチの通過電流を遮断する。これにより、シンプルな回路構成で半導体スイッチの過加熱を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るスイッチ制御装置の回路図である。
【
図3】
図3は、一般的な抵抗と、窒化材料を用いた抵抗の温度特性を示すグラフである。
【
図4】
図4は、2種の抵抗を用いたレベルシフタ回路の組み合わせを説明するための回路図である。
【
図5】
図5は、
図4(а)~(d)に示したCase1~4の出力電圧温度特性を示すグラフである。
【
図6】
図6は、本実施形態におけるスイッチ制御装置の温度特性を示すグラフである。
【
図7】
図7は、抵抗R70の抵抗値を変化させた場合の、メインスイッチの通過電流温度特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
本実施形態に係るスイッチ制御装置10について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るスイッチ制御装置10の回路図である。なお、
図1に示す、スイッチ制御装置10に含まれる入力信号増幅回路20等の回路構成及び接続形態は一例にすぎず、他の回路構成でもよい。また
図1に示す、抵抗値、電圧値、及び電流値も一例にすぎない。
【0011】
スイッチ制御装置10は、入力信号に基づきメインスイッチQ27のオン及びオフを切り替えるための制御回路である。入力信号は外部から入力されるスイッチング信号であって、入力信号の波形は、ハイレベル(オン電圧)及びローレベル(オフ電圧)のオンオフ波形である。スイッチ制御装置10は、入力信号の電圧差でメインスイッチQ27のオンオフを切り替えるために、入力信号の電圧を増幅し、電圧レベルをシフトさせる(電圧レベルを変換している)。入力信号の電圧差は、オン状態を示すハイレベルの電圧と、オフ状態を示すローレベルの電圧の差に相当する。
【0012】
メインスイッチQ27は、GaN半導体スイッチである。ゲート電圧選択回路40で選択されたゲート電圧以上の入力電圧がスイッチ制御装置10に入力されると、メインスイッチQ27はオンになり、メインスイッチQ27のドレインソース間で通過電流が流れる。
【0013】
スイッチ制御装置10は、入力信号増幅回路20、保護回路30、ゲート電圧選択回路40、トラッキング回路50、電流源60を有している。各回路に含まれるスイッチング素子(スイッチングトランジスタ)は、例えばGaN半導体等の化合物半導体で形成されている。
【0014】
ここで、化合物半導体の素子特性について、シリコンプロセスの素子特性と比較しつつ説明する。化合物半導体は、絶縁破壊強度、熱伝導率、及び高温状態での動作性等で優れた特性をもっており、材料としての物性特性で優位な点が多い。その一方で、化合物半導体として例えばGaN系のプロセス(製造工程、市場への汎用性)は、Si系のプロセスと比べて成熟していないため素子のばらつきが大きく、また化合物半導体はSi系プロセスと比較して素子サイズが大きいという問題がある。さらに、化合物半導体は、電圧レファレンスや温度特性を容易に得ることができないと問題点もある。そのため、従来は、過加熱から保護する回路を化合物半導体で構成した場合に、回路構成が複雑な構成になり易く、回路構成の煩雑さ及び化合物半導体の素子自体の大きさから、シンプルな回路構成や省面積化が困難である。
【0015】
本実施形態に係るスイッチ制御装置10は、メインスイッチのオン、オフを切り替えるために、化合物半導体を含んだ、モノリシック化した制御回路(IC回路)であって、
図1に示すような回路構成をとることで、ばらつきの大きい化合物半導体を使用しつつ、シンプルな回路構成/省面積で、過加熱に伴う熱暴走及び過電流を抑制できる。なお、
図1に示す回路構成は一例にすぎず、入力信号の電圧レンジ又はメインスイッチの動作電圧のレンジに応じて、電源電圧、抵抗、又は各回路素子の接続形態を変更してもよい。
【0016】
図1に示すように、スイッチ制御装置10の入力側には、入力信号増幅回路20が設けられている。入力信号増幅回路20は、片側入力差動回路を含み、入力信号に対する差分を増幅する。入力信号増幅回路20は、片側入力差動回路の他にゲート抵抗及び分圧抵抗等を含んでいる。入力信号(V
in)は、0Vをローレベルとし、+3.3Vをハイレベルとしたスイッチング信号である。片側入力差動回路は、対称に接続された複数のスイッチング素子Q10、Q11、抵抗R40~R41を有している。スイッチング素子Q10のドレイン端子は抵抗R40を介して基準電源に接続され、スイッチング素子Q11のドレイン端子は抵抗R41を介して電源に接続されている。スイッチング素子Q10のゲート端子は、ゲート抵抗R19を介して入力端子に接続され、スイッチング素子Q11のゲート端子は、分圧抵抗R20を介して基準電源に接続されている。スイッチング素子Q10の特性及びスイッチング素子Q11の特性は同一である。スイッチング素子Q10のゲート端子(制御端子)には入力信号が入力され、スイッチング素子Q11のゲート端子には参照電圧が入力される。スイッチング素子Q10のソース端子及びスイッチング素子Q11のソース端子は、1つの電流源に共通して接続されている。
【0017】
図1に示すように、入力信号増幅回路20は、片側入力差動回路の他に、差動増幅回路、分圧抵抗等を含んでいる。入力信号増幅回路20の出力ラインは、ゲート電圧選択回路40に含まれるスイッチング素子Q19のソース端子に接続されている。また、入力信号増幅回路20の片側入力差動回路及び差動増幅回路において、対になって接続されているスイッチング素子Q10、Q11とスイッチング素子Q16、Q17は、それぞれ1つの電流源に共通して接続されている。
【0018】
保護回路30は、ゲート電圧選択回路40を介して、メインスイッチQ27のゲート端子に電気的に接続されている。保護回路30は、メインスイッチQ27の温度が所定温度(電流遮断温度)以上の場合に、メインスイッチQ27の通過電流を遮断する回路である。保護回路30は、ゲート電圧選択回路40に含まれるスイッチング素子Q19のゲート端子に接続されている。
【0019】
図2は保護回路30の回路図である。
図2に示す保護回路30が
図1の点線部分に接続される。保護回路30は、第1レベルシフタ回路31、第2レベルシフタ回路32、電流源33、入力端子I
1、I
2、及び出力端子O
1を有している。保護回路30は、入力及び出力の少なくともいずれか一方を複数とした入出力端子(I
1、I
2、O
1)を有している。
図2の例では、入力端子(I
1、I
2)が複数端子である。
図2の例では、出力端子O
1は共通端子である。なお、保護回路30の入出力端子は、
図2の例に限らず、出力端子を複数にしてもよい。
【0020】
第1レベルシフタ回路31は、負荷抵抗R31と電流源とを直列に接続した第1抵抗回路31аと、負荷抵抗R34と電流源とを直列に接続した第2抵抗回路31bを有している。負荷抵抗R31と電流源との接続点が入力端子I1に相当し、負荷抵抗R34と電流源との接続点が入力端子I2に相当する。第1抵抗回路31аに含まれる電流源は、スイッチング素子Q31及び抵抗(電流源用抵抗)R32、R33を有している。抵抗R32はスイッチング素子Q31のゲート-ソース間に接続されている。抵抗R33は、抵抗R32と並列に接続され、スイッチング素子Q31のソース端子に接続されている。第2抵抗回路31bに含まれる電流源は、スイッチング素子Q32及び抵抗(電流源用抵抗)R35、R36を有している。第2抵抗回路31bに含まれる電流源の接続形態は、第1抵抗回路31аに含まれる電流源の接続形態と同様である。
【0021】
第1抵抗回路31аに含まれる負荷抵抗R31と電流源の接続点は、スイッチング素子Q33のゲート端子に接続されている。第2抵抗回路31bに含まれる負荷抵抗R34と電流源の接続点は、スイッチング素子Q34のゲート端子に接続されている。
【0022】
第2レベルシフタ回路32は、負荷抵抗R37、R38及びスイッチング素子Q33を直列に接続した第1抵抗回路32аと、負荷抵抗R39、R40及びスイッチング素子Q34を直列に接続した第2抵抗回路32bを有している。第2レベルシフタ回路32の入力端子はスイッチング素子Q33、Q34のゲート端子であり、入力端子I1、I2に相当する。スイッチング素子Q33のドレイン端子は負荷抵抗R37に接続されており、スイッチング素子Q33のソース端子は負荷抵抗R38に接続されている。また、スイッチング素子Q34のドレイン端子は負荷抵抗R39に接続されており、スイッチング素子Q34のソース端子は負荷抵抗R40に接続されている。抵抗R38と抵抗R40の低電圧側の端子は出力端子(O1)に接続されている。
【0023】
電流源33は、第2レベルシフタ回路32の低電流側に接続されており、第2レベルシフタ回路32に定電流を流すための電流源となる。電流源33は、スイッチング素子Q35及び抵抗R41、R42を有している。抵抗R41はスイッチング素子Q35のゲート-ソース間に接続されている。抵抗R42は、抵抗R41と並列に接続され、スイッチング素子Q35のソース端子に接続されている。
【0024】
図1に示すように、ゲート電圧選択回路40は、保護回路30とメインスイッチQ27の間に接続されている。ゲート電圧選択回路40は、メインスイッチQ27をオンにするための閾値電圧(ゲート閾値電圧)を選択する回路である。メインスイッチQ27は、ゲート電圧選択回路40で選択された電圧をベースにして、入力信号(V
in)に基づく入力電圧の高低でオン、オフを切り替える。
【0025】
ゲート電圧選択回路40は、スイッチング素子Q19、Q20及び抵抗R28、R29、R53を備えている。スイッチング素子Q19のドレイン端子は抵抗R29、R53に接続され、スイッチング素子Q19のゲート端子は抵抗R28を介して保護回路30の出力端子(O1)に接続され、スイッチング素子Q19のソース端子は、電流源60に接続されている。抵抗R29はスイッチング素子Q20のゲート-ソース間に接続されている。抵抗R53は、抵抗R29と並列に接続され、スイッチング素子Q20のソース端子に接続されている。スイッチング素子Q19のドレイン端子は抵抗R29、R53に接続されている。スイッチング素子Q19のドレイン端子はメインスイッチQ27のゲート端子に接続されている。
【0026】
トラッキング回路50は、入力電圧をゲート電圧に追随させることで、ゲート電圧を安定化するための回路である。トラッキング回路50に含まれる回路素子及び回路構成は
図1に示す通りである。
【0027】
電流源60は、複数の定電流回路を備えている。複数の定電流回路は、入力信号増幅回路20及びトラッキング回路50の低電流側にそれぞれ接続されており、各回路に定電流を流すための電流源となる。各定電流回路に回路素子及び回路構成は
図1に示す通りである。
【0028】
次に、保護回路30に使用される抵抗と、保護回路30に含まれる抵抗回路の組み合わせについて説明する。
【0029】
第1抵抗回路31а及び第2抵抗回路31bは、2種の抵抗を用いたレベルシフタ回路である。第1抵抗回路31а及び第2抵抗回路31bは、負荷抵抗R31、電流源で用いる抵抗R32、R33、負荷抵抗R34、及び電流源で用いる抵抗R35、R36の間で、異なる抵抗温度係数をもつ抵抗を含んでいる。言い換えると、第1抵抗回路31а及び第2抵抗回路31bに含まれる、負荷抵抗R31、電流源で用いる抵抗R32、R33、負荷抵抗R34、及び電流源で用いる抵抗R35、R36のうち、少なくとも一の抵抗の抵抗温度係数は、他の抵抗の抵抗温度係数と異なる。
【0030】
図3は、一般的な抵抗と、窒化材料を用いた抵抗の温度特性を示す。
図3において、グラフаは一般的な抵抗の特性を、グラフbは窒化材料を用いた抵抗の特性を示す。一般的な抵抗は、GaN-on-SiCエピタキシャル基板のシート抵抗を利用した抵抗(Epi-R)である。窒化材料を用いた抵抗は、窒化ジルコニウム薄膜を利用した抵抗(ZrN-R)である。窒化材料は、窒化ジルコニウムの他に、窒化チタン(TiN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化タンタル(TaN)又は窒化ハフニウム(HfN)でもよい。
【0031】
図3に示すように、一般的な抵抗の温度特性は、温度に対して正の傾きになっている。一方、窒化材料を用いた抵抗(以下、窒化抵抗とも称す)の温度特性は、温度に対して負の傾きになっている。つまり、一般的な抵抗と窒化抵抗は異なる抵抗温度係数をもつことになる。本実施形態では、第1レベルシフタ回路31に含まれる抵抗は2種類のものを用いている。第1レベルシフタ回路31に含まれる抵抗のうち、一の抵抗を一般的な抵抗と窒化抵抗のいずれか一方の抵抗とし、他の抵抗を一般的な抵抗と窒化抵抗のいずれか他方の抵抗とする。2種の抵抗は、第1抵抗回路31аに含まれる複数の抵抗の間で異なる種類としてもよく、あるいは、第1抵抗回路31аに含まれる抵抗と第2抵抗回路31bに含まれる抵抗との間でなる種類としてもよい。
【0032】
図4は、2種の抵抗を用いたレベルシフタ回路の組み合わせを説明するための回路図である。点線の枠では一般的な抵抗が使用され、実線の枠では窒化抵抗が使用される。
図4(а)に示すように、Case1の抵抗回路は、負荷抵抗に一般的な抵抗を使用し、電流源に含まれる抵抗に窒化抵抗を使用する。
図4(b)に示すように、Case2の抵抗回路は、負荷抵抗に一般的な抵抗を使用し、電流源に含まれる抵抗に一般的な抵抗を使用する。
図4(c)に示すように、Case3の抵抗回路は、負荷抵抗に窒化抵抗を使用し、電流源に含まれる抵抗に窒化抵抗を使用する。
図4(d)に示すように、Case4の抵抗回路は、負荷抵抗に窒化抵抗を使用し、電流源に含まれる抵抗に一般的な抵抗を使用する。
【0033】
Case1及びCase4では、1つの抵抗回路内で異なる種類の抵抗を用いているため、各抵抗の温度抵抗係数の特性は、温度に対する抵抗の特性で、正、負、及びフラットのいずれかの特性となり、かつ、互いに異なる特性となる。例えば、Case1の第1抵抗回路31аでは、抵抗R31の温度抵抗係数は正の特性となり、抵抗R32、R33の温度抵抗係数は負又はフラットの特性となる。なお、フラットの特性は、所定の温度帯域で抵抗係数がほぼ一定になる特性である。
【0034】
図5は、
図4(а)~(d)に示したCase1~4の出力電圧温度特性を示すグラフである。
図5に示すように、レベルシフタ回路に含まれる抵抗回路の出力電圧温度特性は、使用される抵抗の種類によって異なっている。そして、本実施形態では、Case1~4を組み合わせてレベルシフタ回路を構成して、出力電圧の差を利用して、メインスイッチQ27の温度が所定の設定温度(電流遮断温度)以上になった場合に通過電流を遮断するような回路を実現している。
【0035】
具体的には、例えば第1抵抗回路31аにCase1の回路を使用し、第2抵抗回路31bにCase4の回路を使用する。Case1とCase4との組み合わせでレベルシフタ回路を構成した場合に、温度が25℃程度を境に、温度が高くなるほど抵抗回路の出力電圧の差が大きくなる。すなわち、抵抗回路の出力電圧の差は温度に応じて変化する。通過電流を遮断させる設定温度を100度とした場合に、
図5に示すように、Case1の抵抗回路の出力電圧は約-10Vとなり、Case4の抵抗回路の出力電圧は約-22Vとなる。そして、設定温度(100度)の時に出力電圧の差が生じた場合に、保護回路30からゲート電圧選択回路40に出力される電圧によって、ゲート電圧選択回路40によるゲート閾値電圧の調整機能が作用し、メインスイッチQ27が入力信号の入力電圧(Vi)の大きさに関わらずオフになるようにする。またスイッチング素子Q27の温度と保護回路30の温度は相関性を有しており、メインスイッチQ27の温度が上昇すると、保護回路30に含まれる抵抗の温度は、メインスイッチQ27の温度と同じように上昇する。スイッチング素子Q27の温度上昇により、保護回路30に含まれる抵抗の温度が設定温度(100度)以上になった場合に、メインスイッチQ27が強制的にオフになるよう、保護回路30及びゲート電圧選択回路40に含まれる回路パラメータを設定する。
【0036】
図6は、本実施形態におけるスイッチ制御装置の温度特性を示すグラフである。(а)はメインスイッチQ27のオン抵抗の電圧温度特性を、(b)はメインスイッチQ27の通過電流温度特性を示す。
図6(а)に示すように、温度が100度以上になると、メインスイッチQ27のオン抵抗が急峻に上がる。また温度が100度以上になると、通過電流は急峻に下がりゼロアンペアになる。これにより、スイッチング素子Q27の温度が設定温度(100度)以上になると、メインスイッチQ27は、入力信号の入力電圧の大きさに関わらずオフになり、通過電流が遮断される。
【0037】
なお、本実施形態において、第2レベルシフタ回路32に含まれる第2抵抗回路32аと第2抵抗回路32bを、2種の抵抗を用いた回路としてもよい。例えば、抵抗R37~40のうち、一の抵抗を一般的な抵抗とし、他の抵抗を窒化抵抗としてもよい。また、第2抵抗回路32аに含まれる負荷抵抗と、電流源33で用いる抵抗との間で、2種の抵抗としてもよい。第2抵抗回路32bに含まれる負荷抵抗と、電流源33で用いる抵抗との間で、2種の抵抗としてもよい。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る保護回路30は、入力及び出力の少なくともいずれか一方を複数とした入出力端子(I1、I2、O1)と、複数の入出力端子(I1、I2、O1)のいずれか一方に接続されて、第1抵抗温度係数をもつ抵抗を含む第1抵抗回路31а、32аと、複数の入出力端子(I1、I2、O1)のいずれか他方に接続されて、第1抵抗温度係数と温度特性が異なる第2抵抗温度係数をもつ抵抗を含む第2抵抗回路31b、32bとを有する。保護回路30は、メインスイッチQ27の制御端子(ゲート端子)に電気的に接続され、メインスイッチQ27の温度が所定温度(電流遮断温度)以上の場合に、メインスイッチQ27の通過電流を遮断する。これにより、シンプルな回路構成で過加熱を防止できる。また省面積でフェールセーフ機能(オーバーヒートプロテクション, オーバーカレントプロテクション)を実現できる。また、抵抗温度係数の異なる複数種類の抵抗で、過加熱を防止する回路を実現できる。
【0039】
また本実施形態に係る保護回路30において、第1抵抗温度係数及び第2抵抗温度係数の特性は、温度に対する抵抗の特性で、正、負、及びフラットのいずれかの特性となり、かつ、互いに異なる特性である。これにより、抵抗温度係数の異なる複数種類の抵抗で、過加熱を防止する回路を実現できる。
【0040】
また本実施形態に係る保護回路30において、第1抵抗回路31а、32аは抵抗R31、R37(本発明の「負荷抵抗」に相当)と抵抗R32、R33、R41、R42(本発明の「電流源用抵抗」に相当)を有し、第2抵抗回路31b、32bは抵抗R34、R39(本発明の「負荷抵抗」に相当)と抵抗R35、R36、R41、R42(本発明の「電流源用抵抗」に相当)を有し、抵抗R31、R37、抵抗R32、R33、R41、R42、抵抗R34、R39、及び抵抗R35、R36、R41、R42のうち、一の抵抗がもつ抵抗温度係数は他の抵抗がもつ抵抗温度係数と異なる。これにより、抵抗温度係数の異なる複数種類の抵抗で、過加熱を防止する回路を実現できる。なお、本実施形態において、第1抵抗回路32аと電流源33を含む抵抗回路が本発明の「第1抵抗回路」に相当し、第2抵抗回路32bと電流源33を含む抵抗回路が本発明の「第2抵抗回路」に相当する。
【0041】
また本実施形態に係る保護回路30において、第1抵抗回路31а、32а及び第2抵抗回路31b、32bに含まれるスイッチング素子は化合物半導体で形成され、上記一の抵抗及び上記他の抵抗のいずれか一方の抵抗は窒化材料で形成されている。これにより、抵抗温度係数の異なる複数種類の抵抗で、過加熱を防止する回路を実現できる。
【0042】
また本実施形態に係る保護回路30において、第1抵抗回路31а、32аの出力電圧と第2抵抗回路31b、32bの出力電圧との電圧差は温度に応じて変化する。これにより、任意に電流遮断温度を設定できるため、回路の拡張性を確保できる。
【0043】
また本実施形態に係るスイッチ制御装置10は、メインスイッチQ27のオン、オフを切り替える閾値電圧を選択するゲート電圧選択回路40を備え、保護回路30はゲート電圧選択回路40に接続され、ゲート電圧選択回路40は、メインスイッチQ27の温度が所定温度以上の場合に、スイッチ制御装置10の入力電圧の大きさに関わらずに、メインスイッチQ27がオフになるように閾値電圧を設定する。これにより、シンプルな回路構成で過加熱を防止できる。また省面積でフェールセーフ機能(オーバーヒートプロテクション、オーバーカレントプロテクション)を実現できる。
【0044】
なお本実施形態の変形例として、入力信号増幅回路20に含まれる抵抗R70を可変抵抗にして、抵抗R70の抵抗値を変更することで、通過電流を遮断する温度を任意に設定してもよい。
図7は、抵抗R70の抵抗値を変化させた場合の、メインスイッチQ27の通過電流温度特性を示す。
図7に示すように、抵抗R70の抵抗値を高くした場合(例えば220kΩ)には、メインスイッチQ27の電流遮断温度が120度ぐらいの時に通過電流はゼロになる。そして、抵抗R70の抵抗値を低くなるにつれて、電流遮断温度は高くなり、抵抗R70の抵抗値を180(kΩ)に設定すると、メインスイッチQ27の電流遮断温度は165度ぐらいになる。このように、抵抗R70の回路パラメータを変えることで、メインスイッチQ27の電流遮断温度を任意の値に設定できる。変形例に係るスイッチ制御装置10は、電流遮断温度を調整するための可変抵抗を有する。これにより、回路パラメータの変更で任意に電流遮断温度を設定できる。なお、電流遮断温度を調整する抵抗は、抵抗R70に限らず、スイッチ制御装置10に含まれる他の抵抗でもよい。
【0045】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0046】
10 スイッチ制御装置
20 入力信号増幅回路
30 保護回路
31 第1レベルシフタ回路
31а 第1抵抗回路
31b 第2抵抗回路
32 第2レベルシフタ回路
32а 第1抵抗回路
32b 第2抵抗回路
33 電流源
40 ゲート電圧選択回路
50 トラッキング回路
60 電流源