(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020613
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】立軸水車発電の機据付け工法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/16 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
H02K15/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126072
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 広雄
(72)【発明者】
【氏名】高木 誠司
(72)【発明者】
【氏名】塚本 高裕
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 高志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 伸人
(72)【発明者】
【氏名】椿原 大貴
(72)【発明者】
【氏名】平井 亮太
(72)【発明者】
【氏名】古川 武也
(72)【発明者】
【氏名】木村 尊昭
(72)【発明者】
【氏名】武田 裕
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB02
5H615BB07
5H615BB14
5H615BB17
5H615PP01
5H615PP02
5H615PP28
5H615SS59
(57)【要約】 (修正有)
【課題】容易かつ高精度に構造物のセンタリングを行うことが可能な立軸水車発電機の据付け工法を提供する。
【解決手段】水車フロア基礎コンクリートに据付けられる水車と発電機フロア基礎コンクリートに据付けられる発電機とを有する立軸水車発電機の据付け工法は、下カバを水車フロア基礎コンクリートに据付ける下カバ据付けステップS10と、据付けられた下カバの下カバ内周面の中心点を求め据付け中心軸を導出する中心軸導出ステップS20と、据付け中心軸に基づいて水車フロア基礎コンクリートおよび発電機フロア基礎コンクリートに設置したターゲットマークの座標を算出する転写ステップS30と、下カバより上方に据付けられるべき各部材のそれぞれについてターゲットマークの情報に基づいてその中心位置を据付け中心軸上となるように位置決めし順次据え付ける各部材据付けステップS200と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下カバ、ランナ、ガイドベーン、および上カバの各部材を備え水車フロア基礎コンクリートに据付けられる水車と、下部ブラケット、固定子、フレーム、および上部ブラケットの各部材を備え発電機フロア基礎コンクリートに据付けられる発電機とを有する立軸水車発電機の据付け工法であって、
前記下カバを前記水車フロア基礎コンクリートに据付ける下カバ据付けステップと、
前記下カバ据付けステップで据付けられた前記下カバの下カバ内周面の中心点を求め、据付け中心軸を導出する中心軸導出ステップと、
前記据付け中心軸に基づいて、前記水車フロア基礎コンクリートおよび前記発電機フロア基礎コンクリートに設置したターゲットマークの座標を算出する転写ステップと、
前記下カバより上方に据付けられるべき前記各部材のそれぞれについて、前記ターゲットマークの情報に基づいて、その中心位置を前記据付け中心軸上となるように位置決めし順次据え付ける各部材据付けステップと、
を有することを特徴とする立軸水車発電機の据付け工法。
【請求項2】
前記中心軸導出ステップは、
前記下カバ内周面上の少なくとも3か所の測定個所の位置を測定する位置測定ステップと、
前記測定個所のうちの3か所の位置を頂点とする三角形の外心の位置を前記下カバ内周面の中心位置として算出する中心算出ステップと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の立軸水車発電機の据付け工法。
【請求項3】
前記位置測定ステップにおいては、前記下カバ内周面上に設置したレーザ受光ポインタに、レーザトラッカからレーザを送受信し、
前記中心算出ステップにおいては、前記頂点を前記レーザ受光ポインタの中心とする、
ことを特徴とする請求項2に記載の立軸水車発電機の据付け工法。
【請求項4】
前記転写ステップは、
前記水車フロア基礎コンクリートおよび前記発電機フロア基礎コンクリートに前記ターゲットマークを設置するステップと、
前記ターゲットマークの位置を測定するステップと、
前記ターゲットマークの位置の座標を、前記据付け中心軸を基準とした座標に変換するステップと、
を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の立軸水車発電機の据付け工法。
【請求項5】
前記各部材据付けステップにおける前記固定子の据付けステップは、
前記固定子を前記フレーム内に収納し一体物とするステップと、
前記一体物を前記発電機フロア基礎コンクリートに仮置きするステップと、
前記固定子の固定子内周面の3か所以上の複数個所の位置を測定するステップと、
前記固定子内周面の中心位置を算出するステップと、
前記フレームのフレーム外周面の3か所以上の位置を測定するステップと、
前記外周面の中心位置を算出するステップと、
前記算出された前記固定子内周面の中心位置および前記フレーム外周面の中心位置の相対関係に基づいて、前記固定子内周面の中心位置が前記中心軸上に来るように、前記フレームの位置を調整する固定子センタリングステップと、
を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の立軸水車発電機の据付け工法。
【請求項6】
前記各部材設置ステップは、
前記ランナおよび前記ガイドベーンを前記下カバ上に設置するステップと、
前記ランナおよび前記ガイドベーンの上部に前記上カバを据え付けるステップと、
前記上カバ上に水車軸受支持台を据え付ける水車軸受支持台据付けステップと、
前記水車軸受支持台据付けステップの後に、前記発電機フロア基礎コンクリートに前記下部ブラケットを据え付ける下ブラケット据付けステップと、
前記下ブラケット据付けステップの後に、前記固定子を据え付ける固定子据付けステップと、
前記固定子内に回転子を挿入する回転子設置ステップと、
前記回転子設置ステップの後に前記上部ブラケットを据え付けるステップと、
を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の立軸水車発電機の据付け工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、立軸水車発電機の据付け工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に水車のランナの上方に発電機の回転子が直結され、これらの回転部が複数の軸受により支持される立軸水車発電機の据付けにおいては、立軸水車発電機を構成する回転部と静止部との芯出し(センタリング)を行う必要がある。ここで、立軸水車発電機の静止部は、例えば水車の上カバおよび下カバ、並びに、発電機の上部ブランケットおよび下部ブラケットなどである。
【0003】
センタリングは、回転部のそれぞれの部材および静止部のそれぞれの部材の中心を一致させるために実施される。このセンタリングが十分に実施されていないと、振動や回転体の異常な振れ等の不具合に繋がるおそれがある。
【0004】
従来、センタリングは、ピアノ線センタリング方式により実施されている。
図13は、立軸水車発電機30の従来の据付け工法を説明するための立断面図である。
【0005】
立軸水車発電機30は、まず、水車10を水車フロア基礎コンクリート1に据え付けた後に、発電機20を発電機フロア基礎コンクリート2に据え付ける。なお、また、水車フロア基礎コンクリート1には、ケーシング11およびスピードリング12が埋め込まれた状態となっている。水車および発電機のそれぞれの据え付けは、それぞれの各部材を、下方に配されるものから順次、据え付けていく方法が一般的である。
【0006】
センタリングは、これらの各部材の据え付けに先立って実施される。すなわち、まず、
図13に示すように、静止部の各部材を設置する。具体的には、下方から、水車10の下カバ13および上カバ14を水車フロア基礎コンクリート1の水車フロア1aより低いそれぞれの高さ位置に設置する。
【0007】
また、水車軸受支持台15を上カバ14上に設置する。また、発電機20の下部ブラケット21を発電機フロア基礎コンクリート2に、フレーム23に収納状態の固定子22を発電機フロア2a上に設置し、さらに上部ブラケット24をフレーム23上に設置する。
【0008】
次に、回転体の軸中心の目安として、上部ブラケット24の上部ブラケット内周面24aの中心位置から、下端に錘61のついたピアノ線60を吊り下げる。次に、吊り下げられたピアノ線60が中心となるように、他の静止部の各部材の位置を調整する。
【0009】
具体的には、水車10については、下カバ13の下カバ内周面13a、上カバ14の上カバ内周面14a、および水車軸受支持台15の水車軸受支持台内周面15aのそれぞれについて、内周面上に3箇所以上の基準点を決めて、各基準点とピアノ線60との間の距離をマイクロメータ等の測定手段により測定する。この測定結果に基づいて、測定したそれぞれの距離が同じ値となるように、それぞれの静止部の位置を調整する。
【0010】
同様に、発電機20についても、下部ブラケット21の下部ブラケット内周面21a、および固定子22の固定子内周面22aのそれぞれについて、内周面上の各基準点とピアノ線60との間の距離を測定し、その測定結果に基づいて、測定したそれぞれの距離が同じ値となるように、それぞれの静止部の位置を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述した従来のピアノ線方式センタリング工法の場合、センタリングを終えた後に、最下方の下カバ13以外の部材を取り外し、下方から上方に向かって、静止部および回転部の部材を、順次、上方から搬入し据え付けることになる。
【0013】
このため、センタリング後に取り外した各静止部については、据付け手順によりそれが必要となる時期まで、現地に保管する必要がありその保管スペースを確保する必要がある。
【0014】
また、従来のピアノ線方式の場合、マイクロメータ等の測定手段を使用して距離を測定しているため、作業者に技量が要求されるとともに、測定誤差が生じやすい。さらに、上部ブラケットから水車主軸の上端部までは、たとえば10メートルにも及ぶものが多く、ピアノ線が風で振動し易く、精度が求められる芯出しの課題となっている。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、容易かつ高精度に構造物のセンタリングを行うことが可能な立軸水車発電機の据付け工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
実施形態によれば、立軸水車発電機の据付け工法は、下カバ、ランナ、ガイドベーン、および上カバの各部材を備え水車フロア基礎コンクリートに据付けられる水車と、下部ブラケット、固定子、フレーム、および上部ブラケットの各部材を備え発電機フロア基礎コンクリートに据付けられる発電機とを有する立軸水車発電機の据付け工法であって、前記下カバを前記水車フロア基礎コンクリートに据付ける下カバ据付けステップと、前記下カバ据付けステップで据付けられた前記下カバの中心軸を求める中心軸導出ステップと、前記中心軸に基づいて、前記中心軸との相対関係が記録されたターゲットマークを、前記水車フロア基礎コンクリートおよび前記発電機フロア基礎コンクリートに設置する転写ステップと、前記下カバより上方に据付けられるべき前記各部材のそれぞれについて、ターゲットマークの情報に基づいて、その中心位置を前記中心軸上に合わせて位置決めし順次設置する各部材設置ステップと、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法の対象とする立軸水車発電機の構成の例を示す立断面図である。
【
図2】実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法の手順を示すフロー図である。
【
図3】実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における下カバの据付け位置に基づく据付け中心軸の設定ステップの詳細手順を示すフロー図である。
【
図4】実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における下カバの据付け位置に基づく据付け中心軸の設定ステップでのレーザ受光ポインタの配置を示す部分縦断面図である。
【
図5】実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における下カバの据付け位置に基づく据付け中心軸の設定ステップでのレーザ受光ポインタの配置を示す部分平面図である。
【
図6】実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における下カバの据付け位置に基づく据付け中心軸の設定ステップでのレーザ受光ポインタの位置の測定を示す斜視図である。
【
図7】実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における下カバの据付け位置に基づく据付け中心軸の設定ステップでのレーザ受光ポインタの位置決めを示す平面図である。
【
図8】実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における下カバの据付け位置に基づく据付け中心軸の導出を説明するための平面図である。
【
図9】実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における建屋側にターゲットマークを設置し据付け中心軸情報を転写するステップの詳細手順を示すフロー図である。
【
図10】実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における建屋側のターゲットマークへの据付け中心軸情報の転写を説明するための平面図である。
【
図11】実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における固定子の設置ステップの詳細手順を示すフロー図である。
【
図12】実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における固定子の設置ステップを説明するための平断面図である。
【
図13】立軸水車発電機の従来の据付け工法を説明するための立断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る立軸水車発電の機据付け工法について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複説明は省略する。
【0019】
図1は、実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法の対象とする立軸水車発電機の構成の例を示す立断面図である。
【0020】
立軸水車発電機30は、水車フロア基礎コンクリート1に据付けられる水車10と、発電機フロア基礎コンクリート2に据付けられる発電機20を有する。
【0021】
水車10は、下カバ13、上カバ14、ランナ16、水車ロータシャフト17、ガイドベーン18、および水車軸受支持台15を有する。
【0022】
ランナ16は、鉛直方向に下カバ13と上カバ14とに挟まれている。
【0023】
ガイドベーン18は、スピードリング12とランナ16の間の流路に、周方向に複数設けられている。それぞれのガイドベーン18は、回動可能に、その回転軸が下カバ13および上カバ14に支持されている。全てのガイドベーン18は、同時に同一の開度に開閉するように連結機構により駆動され、ランナへの作動流体の流量が制御される。
【0024】
水車ロータシャフト17はランナ16に直結している。水車ロータシャフト17には、水車軸受19の回転部が取り付けられている。水車軸受19は、水車軸受支持台15により回転可能に水平方向の変位を拘束されるように支持されている。
【0025】
発電機20は、発電機ロータシャフト25、発電機ロータシャフト25に取り付けられた回転子26、回転子26の径方向外側に回転子26を囲むように配された固定子22、固定子22を収納するフレーム23、発電機ロータシャフト25を回転可能に支持する下部軸受27および上部軸受28を有する。なお、上部軸受28は、図示しないスラスト軸受とラジアル軸受を有し、下部軸受27は図示しないラジアル軸受を有する。下部軸受27および上部軸受28は、それぞれ下部ブラケット21および上部ブラケット24により支持される。
【0026】
水車10の回転トルクを発電機20に伝達するために、水車ロータシャフト17と発電機ロータシャフト25とはカップリング31にて結合されている。
【0027】
ランナ16、水車ロータシャフト17、発電機ロータシャフト25および回転子26は、一体となって、水車軸受19、下部軸受27および上部軸受28により回転可能に支持されている。
【0028】
ランナ16は、水車フロア基礎コンクリート1に周方向に亘り埋め込まれたケーシング11からスピードリング12を介して周方向内側に向かって流入する作動流体である水を受け入れて回転し、仕事を終えた水を下方に排出する。
【0029】
図2は、実施形態に係る立軸水車発電機30の据付け工法の手順を示すフロー図である。
【0030】
なお、立軸水車発電機30の据付け開始の前提として、水車フロア基礎コンクリート1および発電機フロア基礎コンクリート2は打設されており、ケーシング11およびスピードリング12は、水車フロア基礎コンクリート1内に設置されているものとする。
【0031】
まず、下カバ13を据え付ける(ステップS10)。すなわち、水車フロア基礎コンクリート1の水車フロア1aより低い位置で水車フロア基礎コンクリート1を基礎として、下カバ13を設置し、固定する。
【0032】
次に、下カバ13の位置に基づく据付け中心軸L0の導出を行う(ステップS20)。すなわち、設置、固定された下カバ13の下カバ内周面13aの中心位置を導出することにより、立軸水車発電機30全体のセンタリングの基準となる据付け中心軸L0(
図7参照)を導出する。
【0033】
さらに、水車フロア基礎コンクリート1および発電機フロア基礎コンクリート2にそれぞれ複数のターゲットマーク55(
図10参照)を設置し、ターゲットマーク55に中心位置情報を転写する(ステップS30)。ステップS20およびステップS30の詳細については、後述するが、ステップS30の一部はステップS20と並行して実施される。
【0034】
これ以降、下カバ13より上方に配される据付け対象とする部材を下側から順次据え付ける(ステップS200)。以下、各部材据付けステップS200の各ステップを順次説明する。
【0035】
これらの据付けにおいては、ターゲットマーク55に基づいて中心位置を求め、センタリングして行う。なお、ターゲットマーク55に基づくセンタリングについては後に詳しく説明するが、ここでは、まず、全体の据付けの手順について説明する。
【0036】
まず、ランナ16およびガイドベーン18の設置を行う(ステップS40)。ランナ16は水車ロータシャフト17と結合した状態で設置する。また、上カバ14の設置を行う(ステップS50)。ガイドベーン18は、下カバ13と上カバ14とに挟まれた状態で、その回転軸を下カバ13および上カバ14によって回動可能に支持されるように設置されるので、ステップS40とステップS50とは、必要に応じて、一部互いに並行しながら行われる。
【0037】
次に、水車軸受支持台15の据付けを行う(ステップS60)。水車軸受支持台15は、上カバ14上に据付けられる。
【0038】
ランナ16、ガイドベーン18、上カバ14および水車軸受支持台15のそれぞれの据付けは、水車フロア基礎コンクリート1に設けられたターゲットマーク55の情報に基づいて、それぞれの内周面あるいは外周面の中心が据付け中心軸L0上となるように行われる。
【0039】
次に、下部ブラケット21を据え付ける(ステップS70)。下部ブラケット21の据付けは、発電機フロア基礎コンクリート2に設けられたターゲットマーク55の情報に基づいて、下部ブラケット21の下部ブラケット内周面21a中心が据付け中心軸L0上となるように行われる。
【0040】
次に、固定子22を発電機フロア2a上に据付ける(ステップS80)。ステップS80の詳細については、後述する。
【0041】
次に、回転子26を設置する(ステップS90)。回転子26は、発電機ロータシャフト25に取り付けた状態で、下部軸受27と一体で設置される。すなわち、下部軸受27を下部ブラケット21内に、また、回転子26を固定子22内に、それぞれ挿入する。
【0042】
さらに、上部ブラケット24を据え付ける(ステップS100)。上部ブラケット24の据付けは、発電機フロア基礎コンクリート2に設けられたターゲットマーク55の情報に基づいて、上部ブラケット24の中心が据付け中心軸L0上となるように行われる。上部ブラケット24を据付けた後に、発電機ロータシャフト25に上部軸受28を取り付ける。上部軸受28が取り付けられることにより、回転子26、発電機ロータシャフト25、下部軸受27および上部軸受28が一体となって、発電機20の回転部分が位置決めされる。
【0043】
なお、据付け中においても、回転子26と発電機ロータシャフト25の一体物の鉛直方向の荷重をスラスト軸受で支持するために、ステップS90とステップS100の一部を互いに並行して実施することでもよい。
【0044】
次に、発電機ロータシャフト25の下端部と水車ロータシャフト17の上端部とを結合してカップリング31を形成する(ステップS110)。
【0045】
図3は、実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における下カバ13の据付け位置に基づく据付け中心軸L0の導出ステップS20の詳細手順を示すフロー図である。
【0046】
ステップS20は、下カバ13の位置測定ステップ(ステップS21)および中心位置の算出ステップ(ステップS22)を有する。
【0047】
図4は、実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における下カバ13の据付け位置に基づく据付け中心軸L0の設定ステップでのレーザ受光ポインタ52の配置を示す部分縦断面図、
図5は、同じくレーザ受光ポインタの配置を示す部分平面図である。
【0048】
下カバ13の位置測定ステップ(ステップS21)においては、まず、レーザ受光ポインタ52を下カバ内周面13a上に配置する(ステップS21a)。なお、このステップS21においては、ステップS30における後述するターゲットマーク55の設置および位置測定を並行して行う。
【0049】
図4および
図5に示すように、下カバ内周面13a上に配置したレーザ受光ポインタ52は、その受光側がレーザトラッカ51の方向に向くように配置する。レーザ受光ポインタ52は、測定者が手で下カバ内周面13aに押し当てることでもよい。
【0050】
次に、レーザ受光ポインタ52の位置の測定を行う(ステップS21b)。
【0051】
図6は、実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における下カバ13の据付け位置に基づく据付け中心軸L0の設定ステップS20でのレーザ受光ポインタの位置の測定を示す斜視図である。
【0052】
レーザトラッカ51からレーザ受光ポインタ52へのレーザ送受信により、レーザトラッカ51とレーザ受光ポインタ52間の距離Lを取得する(レーザ送受信の往復の距離2Lより)。この際、レーザ発信部の位置を原点として、レーザ送信方向を、水平方向すなわちxy平面上をx軸から角度Θ、さらに垂直方向(-z方向)に向けて角度Φとするベクトル的な座標となる。なお、レーザ受光ポインタ52は球体であり、レーザの反射位置は、実質的に、レーザ受光ポインタ52の中心であるとみなせる。
【0053】
次に、x、y、z体系での各レーザ受光ポインタの中心座標を算出する(ステップS21c)。ここで、z軸は鉛直方向である。x軸、y軸は互いに直行する座標軸であれば、方向は、立軸水車発電機30の据付け用のみを目的とする座標系でよい。あるいは、建屋の全体的な座標系があればそれに合わせてもよい。
【0054】
レーザトラッカ51のレーザ発信部の位置を原点として、レーザ受光ポインタ52の中心位置のx、y、z体系での座標は、次の式(1)、(2)および(3)により求められる。
x =L・cosΦ・cosΘ ・・・(1)
y =L・cosΦ・sinΘ ・・・(2)
z =L・sinΦ ・・・(3)
【0055】
このように、レーザ受光ポインタ52を配置してのレーザ受光ポインタ52位置の測定を順次、たとえばP1、P2およびP3の3か所について行う。
【0056】
この結果、各点の座標が、P1(x1,y1,z1)、P2(x2,y2,z2)、P3(x3,y3,z3)として得られる。
【0057】
次に、下カバ13の中心位置の算出を行う(ステップS22)。
【0058】
まず、P1、P2,P3の位置の、高さz=z0の平面への射影を行う(ステップS22a)。同一水平面への射影ができればよいので、高さz=z0は任意であるが、高さz=z0の平面(z0平面)としては、たとえば、水車フロア1aの床面高さでもよい。
【0059】
図7は、実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における下カバ13の据付け位置に基づく据付け中心軸L0の導出ステップS20でのレーザ受光ポインタの位置決めを示す平面図である。
【0060】
P1、P2、およびP3からz0平面への射影を、
図7に示すように、それぞれPr1、Pr2、およびPr3とする。
【0061】
ここで、下カバ内周面13aによる円S0の半径をR0、レーザ受光ポインタの半径をr、(R0―r)をR1とする。射影された点Pr1、Pr2、およびPr3は、半径R1の円S1上にある。ここで、半径R1の円S1と半径R0の円S0とは、同一の水平面上にあり、両者の中心は一致する。ここで、両者の共通の中心を、Pc(xc,yc,z0)とする。
【0062】
次に、下カバ内周面13aの中心座標を算出する(ステップS22b)。上述のように下カバ内周面13aによる高さz0における円は円S0である。円S0の中心Pcは、円S1の中心でもある。
【0063】
図8は、実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における下カバ13の据付け位置に基づく据付け中心軸L0の導出を説明するための平面図である。
【0064】
中心Pcの座標は、中心Pcと点Pr1との距離、中心Pcと点Pr2との距離、および中心Pcと点Pr3との距離が一致するという条件から算出することができる。
【0065】
あるいは、円S1が、三角形(Pr1-Pr2-Pr3)の外接円であることから、三角形の外接円の中心、すなわち外心を求める方法でもよい。
【0066】
三角形(Pr1-Pr2-Pr3)の外心は、
図8に示すように、辺Pr1-Pr2の垂直二等分線Laと、辺Pr2-Pr3の垂直二等分線Lbとの交点を求めることにより得られる。
【0067】
次に、据付け中心軸L0を設定する(ステップS22c)。具体的には、求めた円S1の中心位置Pc(xc,yc,z0)を鉛直方向に伸ばして、すなわち、zを可変として据付け中心軸L0(xc,yc,z)が得られる。据付け中心軸L0は、下カバ内周面13aの中心点Pcを含む。ここで、xy座標については、原点が据付け中心軸L0上に来るように、座標変換を行う。具体的には、座標変換前のx座標、y座標の値がそれぞれx1、y1であった場合、x座標の値を(x1-xc)、y座標の値を(y1-yc)とする。この結果、据付け中心軸L0上の高さ位置座標zの点の座標は、(0、0、z)で与えられる。
【0068】
以上が、下カバの設置位置に基づく据付け中心軸の導出ステップ(ステップS20)の手順の詳細である。
【0069】
次に、建屋側にターゲットマークを設置し据付け中心軸情報を転写する(ステップS30)。
【0070】
図9は、実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における建屋側にターゲットマークを設置し据付け中心軸情報を転写するステップS30の詳細手順を示すフロー図である。
【0071】
図10は、実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における建屋側のターゲットマークへの据付け中心軸情報の転写を説明するための平面図である。
【0072】
まず、建屋側にターゲットマーク55を設置する(ステップS31)。ターゲットマーク55は、水車フロア1aおよび発電機フロア2aのそれぞれに少なくとも一つを設置する。なお、ターゲットマーク55を、水車フロア基礎コンクリート1の水車フロア1a以外の箇所、および発電機フロア基礎コンクリート2の発電機フロア2a以外の箇所に設置してもよい。なお、設置とは、建屋の床、壁への貼り付けを含むものとする。
【0073】
ここで、ターゲットマーク55は、建屋側、すなわち水車フロア1aおよび発電機フロア2aのそれぞれにおいて、基準位置を示すものである。ターゲットマーク55は、たとえば、正方形あるいは矩形で平面状の板、紙、布等に十字型の表示がされたものである。十字の交点が基準位置となる。基準位置の座標は、当該ターゲットマーク55に対応して記録されている。
【0074】
また、複数のターゲットマーク55を設置した方が、据付け対象とする部材の位置との関係から測定がしやすい場合は、ターゲットマーク55を周方向に分散させて設置する。ここで、たとえば、ターゲットマーク55が3つの場合、それぞれのターゲットマーク55の中心位置をPt1、Pt2、Pt3とする。ステップS31は、前述の、下カバ13の位置測定ステップS21と並行して行う。
【0075】
次に、順次、それぞれのターゲットマーク55の中心の鉛直線上にレーザ受光ポインタ52の中心がくるようにレーザ受光ポインタ52を設置する。
図10では、Pt1の位置にレーザ受光ポインタ52を設置している場合を示す。前述の、下カバ13の位置測定ステップS21において用いたレーザトラッカ51を同じ位置のまま用いてそれぞれのターゲットマーク55上のレーザ受光ポインタ52の位置の測定を行う(ステップS32)。得られるターゲットマーク55の位置座標は、レーザ発信部の位置を原点とするベクトル的な座標となる。
【0076】
次に、レーザ受光ポインタ52の位置について、レーザ発信部の位置を原点とした(x、y、z)体系での座標を算出する(ステップS33)。この際の算出は、前述の式(1)ないし(3)と同様の算出法となる。ターゲットマーク55平面的位置、すなわち(x座標の値、y座標の値)はレーザ受光ポインタ52に一致する。この結果、(x、y、z)体系におけるターゲットマーク55の中心位置Pt1、Pt2、Pt3のそれぞれの座標が得られる。ここで、たとえば、Pt1の座標を(xt1、yt1、zt1)であるとする。
【0077】
次に、前述の下カバ13についての中心位置の算出ステップS22において行われたxy座標の原点を据付け中心軸L0上とするための座標変換を、ターゲットマーク55の位置座標に適用する。具体的には、座標変換前のx座標、y座標の値がそれぞれxt1、yt1であった場合、x座標の値を(xt1-xc)、y座標の値を(yt1-yc)とする。この結果、ターゲットマーク55の中心位置Pt1の座標は、(xt1-xc、yt1-yc、z)で与えられる。他のターゲットマークについても同様である。
【0078】
この結果、据付け中心軸L0に対するターゲットマーク55の位置の3次元座標が得られる。据付け中心軸L0(0,0,z)は、仮想的な直線であり視認することはできないが、この得られたターゲットマーク55の位置の3次元座標から、据付け中心軸L0の水平位置が逆算することができる。すなわち、据付け中心軸L0(0,0,z)の情報は、ターゲットマーク55の各座標情報として、各ターゲットマーク55に転写されたことになる。
【0079】
このように、据付け中心軸L0の情報がターゲットマーク55の各座標の情報として転写されたことにより、各部材の据付け時には、ターゲットマーク55との相対的な位置に基づいて、その部材の中心位置を求めることができる。したがって、その中心位置が据付け中心軸L0(0、0、z)上に来るようにセンタリングを行うことができる。
【0080】
図11は、実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における固定子22の設置ステップS80の詳細手順を示すフロー図である。また、
図12は、実施形態に係る立軸水車発電機の据付け工法における固定子22の設置ステップを説明するための平断面図である。
【0081】
ステップS80は、固定子22をフレーム23内に取り付けた固定子一体物20a(
図12)を仮置きするステップ(ステップS81)、固定子内周面22a上の測定点およびフレーム外周面23a上の測定点の座標を測定するステップ(ステップS82)、および固定子22の位置決め、設置を行うステップ(ステップS83)を有する。
【0082】
まず、固定子22をフレーム23内に取り付けた固定子一体物20aを発電機フロア基礎コンクリート2の発電機フロア2a上に設置する(ステップS81)。
【0083】
次に、固定子内周面22aおよびフレーム外周面23aのそれぞれの中心座標を測定する(ステップS82)。ステップS82の詳細な手順は以下のとおりである。なお、ステップS20で実施する内容と同様の部分についてはステップS20と同様の符号を用い、また、詳細な説明を省略する。
【0084】
まず、レーザ受光ポインタ52を固定子内周面22a上の測定点に設置し、レーザトラッカ51からレーザ送受信し、固定子内周面22a上の測定点の水平方向Θ、垂直方向Φ、測定距離Lsを得る(ステップS82a)。これを、少なくとも、固定子内周面22a上の3か所について行う。
【0085】
次に、(x、y、z)体系での各レーザ受光ポインタ52の中心(球体の中心)のレーザトラッカ51を原点とする相対座標を算出する(ステップS82b)。
【0086】
次に、発電機フロア基礎コンクリート2に設けられたターゲットマーク55から、レーザトラッカ51の3次元位置を算定し、各レーザ受光ポインタの中心(球体の中心)座標を補正する。さらに、各レーザ受光ポインタ52の補正後の座標に基づいて、固定子内周面22aの中心点C1の座標を算出する(ステップS82c)。
【0087】
次に、フレーム外周面23a上のレーザ受光ポインタ52の位置座標を、発電機フロア基礎コンクリート2に設けられたターゲットマーク55の位置座標に基づいて算出する(ステップS82d)。次に、フレーム外周面23aの中心点C2の座標を算出する(ステップS82e)。レーザ受光ポインタ52が設置されたフレーム外周面23a上の点には、ターゲットマーク57を設置する。
【0088】
次に、固定子の位置決め、設置を行う(ステップS83)。
【0089】
ステップS83としては、まず、フレーム外周面23aの中心C2の固定子内周面22aの中心C1に対する相対位置を算出する(ステップS83a)。
【0090】
次に、発電機フロア基礎コンクリート2に設けられたターゲットマーク55とフレーム外周面23a上のターゲットマーク57との関係を確認しながら、固定子内周面の中心C1が据え付け中心線上に来るように、固定子一体物20aの水平方向位置を調整する(ステップS83b)。
【0091】
次に、固定子22がフレーム23内に収納固定された固定子一体物20aの位置を固定する(ステップS83c)。
【0092】
以上のように、本実施形態によれば、まず、最下方の下カバ13を据付けた後に、下カバ内周面13aに基づき、据付け中心軸L0を決定し、この結果を、建屋側すなわち水車フロア基礎コンクリート1および発電機フロア基礎コンクリート2に転写する。この結果、これ以降に順次上方から搬入し据付ける各部材は、据え付ける際にセンタリングを行うことができる。この結果、各部材は、その据付け時期に現地に搬入すればよく、保管スペースを大幅に低減することができる。
【0093】
また、建屋側に転写された情報に基づいて各部材のセンタリングを行えることから、従来のピアノ線方式の場合のような測定誤差が生じやすいという問題が解決される。
【0094】
また、本実施形態の据付け工法では、立軸水車発電機30を分解することなく中心位置の経年的な変化も確認できるため、中心位置の変化を通して立軸水車発電機30が故障する前の予兆を確認できる。例えば、軸受の温度が上昇している場合に、本実施形態に記載された据え付け中心に対する中心位置C2の相対位置を算出し、この相対位置が所定値よりも大きい場合には、ブラケットの中心位置(軸受ギャップ)が大きくずれている可能性を確認できる。あるいは、固定子22や回転子26に振動が起こっている場合に本実施形態に記載された据え付け中心に対する中心位置C2の相対位置を算出し、その変化を追うことで、固定子22と回転子26との間の隙間であるエアギャップが変化している可能性を確認することもできる。
【0095】
以上、説明した実施形態によれば、下カバ13を据付けた後に、下カバ内周面13aの中心点を求め据付け中心軸L0を導出するとともに据付け中心軸L0の情報を建屋のターゲットマーク55に転写することにより、容易かつ高精度に構造物のセンタリングを行うことを可能とする。
【0096】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
1…水車フロア基礎コンクリート、1a…水車フロア、2…発電機フロア基礎コンクリート、2a…発電機フロア、10…水車、11…ケーシング、12…スピードリング、13…下カバ、13a…下カバ内周面、14…上カバ、14a…上カバ内周面、15…水車軸受支持台、15a…水車軸受支持台内周面、16…ランナ、17…水車ロータシャフト、18…ガイドベーン、19…水車軸受、20…発電機、20a…固定子一体物、21…下部ブラケット、21a…下部ブラケット内周面、22…固定子、22a…固定子内周面、23…フレーム、23a…フレーム外周面、24…上部ブラケット、24a…上部ブラケット内周面、25…発電機ロータシャフト、26…回転子、27…下部軸受、28…上部軸受、30…立軸水車発電機、31…カップリング、51…レーザトラッカ、52…レーザ受光ポインタ、55…水車フロアターゲットマーク、56…発電機フロアターゲットマーク、57…フレーム外側ターゲットマーク、60…ピアノ線、61…錘