(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020627
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/32 20100101AFI20230202BHJP
H01L 33/40 20100101ALI20230202BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20230202BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
H01L33/32
H01L33/40
H01L21/28 301R
H01L21/28 301B
H01L21/285 P
H01L21/285 S
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126105
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 紀隆
(72)【発明者】
【氏名】稲津 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】相田 晴久
【テーマコード(参考)】
4M104
5F241
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA09
4M104BB04
4M104BB14
4M104BB30
4M104CC01
4M104DD37
4M104DD78
4M104DD79
4M104EE09
4M104EE14
4M104EE16
4M104FF13
4M104GG04
4M104HH20
5F241AA43
5F241CA05
5F241CA13
5F241CA40
5F241CA57
5F241CA65
5F241CA66
5F241CA73
5F241CA74
5F241CA83
5F241CA92
5F241CB11
5F241CB15
(57)【要約】
【課題】半導体発光素子の信頼性を向上させる。
【解決手段】半導体発光素子10は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層24と、n型半導体層24上に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層26と、活性層26上に設けられるp型半導体層28と、p型半導体層28の上面28aと接触するRh層を含むp側コンタクト電極30と、p側コンタクト電極30の上面30aおよび側面30bと接触し、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含むp側電極被覆層32と、p側電極被覆層32上に設けられる接続開口を有し、接続開口とは異なる箇所においてp側電極被覆層32を被覆する誘電体被覆層と、接続開口においてp側電極被覆層32と接続するp側電流拡散層40と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層と、
前記n型半導体層上に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、
前記活性層上に設けられるp型半導体層と、
前記p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極と、
前記p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含むp側電極被覆層と、
前記p側電極被覆層上に設けられる接続開口を有し、前記接続開口とは異なる箇所において前記p側電極被覆層を被覆する誘電体被覆層と、
前記接続開口において前記p側電極被覆層と接続するp側電流拡散層と、を備える半導体発光素子。
【請求項2】
前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層の膜密度は、前記p側電極被覆層に含まれる前記Rh層の膜密度よりも大きい、請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記p側電流拡散層は、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含み、前記p側電流拡散層に含まれる前記Rh層の膜密度は、前記p側電極被覆層に含まれる前記Rh層の膜密度よりも大きい、請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層上に、AlGaN系半導体材料から構成される活性層を形成する工程と、
前記活性層上にp型半導体層を形成する工程と、
前記p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極を形成する工程と、
前記p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含むp側電極被覆層を形成する工程と、
前記p側電極被覆層の上面および側面を被覆する誘電体被覆層を形成する工程と、
前記p側電極被覆層上の前記誘電体被覆層を除去し、前記p側電極被覆層が露出する接続開口を形成する工程と、
前記接続開口において前記p側電極被覆層と接続するp側電流拡散層を形成する工程と、を備え、
前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層は、蒸着法により形成され、
前記p側電極被覆層に含まれる前記Rh層は、スパッタリング法により形成される、半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記p側電極被覆層の形成前に前記p側コンタクト電極を500℃以上650℃以下の温度にてアニールする工程と、
前記誘電体被覆層の形成後に前記p側電極被覆層を500℃以上650℃以下の温度にてアニールする工程と、をさらに備える、請求項4に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記p側電流拡散層は、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含み、前記p側電流拡散層に含まれるRh層は、スパッタリング法により形成され、
前記p側電流拡散層を200℃以上400℃以下の温度にて加熱する工程をさらに備える、請求項5に記載の半導体発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子および半導体発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体発光素子は、基板上に積層されるn型半導体層、活性層およびp型半導体層を有する。p型半導体層上にはp側コンタクト電極が設けられ、p側コンタクト電極上には誘電体層が設けられる。深紫外光を出力する発光素子において、発光波長に対して高反射率を有するロジウム(Rh)がp側コンタクト電極に用いられることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
Rhは、誘電体材料との接着性が低いため、誘電体層の剥離によって素子信頼性が低下する可能性がある。また、p側コンタクト電極上の誘電体層を除去して接続開口を形成する際に、接続開口にて露出するp側コンタクト電極に当該誘電体層の除去に伴うダメージが生じ、p側コンタクト電極の反射特性が低下する可能性がある。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、半導体発光素子の信頼性を向上させる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の半導体発光素子は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層と、n型半導体層上に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、活性層上に設けられるp型半導体層と、p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極と、p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含むp側電極被覆層と、p側電極被覆層上に設けられる接続開口を有し、接続開口とは異なる箇所においてp側電極被覆層を被覆する誘電体被覆層と、接続開口においてp側電極被覆層と接続するp側電流拡散層と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様は、半導体発光素子の製造方法である。この方法は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層上に、AlGaN系半導体材料から構成される活性層を形成する工程と、活性層上にp型半導体層を形成する工程と、p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極を形成する工程と、p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含むp側電極被覆層を形成する工程と、p側電極被覆層の上面および側面を被覆する誘電体被覆層を形成する工程と、p側電極被覆層上の誘電体被覆層を除去し、p側電極被覆層が露出する接続開口を形成する工程と、接続開口においてp側電極被覆層と接続するp側電流拡散層を形成する工程と、を備える。p側コンタクト電極に含まれるRh層は、蒸着法により形成され、p側電極被覆層に含まれるRh層は、スパッタリング法により形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体発光素子の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る半導体発光素子の構成を概略的に示す断面図である。
【
図2】p側電極被覆層およびp側電流拡散層の構成を概略的に示す断面図である。
【
図3】n側コンタクト電極およびn側電流拡散層の構成を概略的に示す断面図である。
【
図4】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図5】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図6】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図7】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図8】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図9】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図10】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図11】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【
図12】半導体発光素子の製造工程を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、説明の理解を助けるため、各図面における各構成要素の寸法比は、必ずしも実際の発光素子の寸法比と一致しない。
【0011】
本実施の形態に係る半導体発光素子は、中心波長λが約360nm以下となる「深紫外光」を発するように構成され、いわゆるDUV-LED(Deep UltraViolet-Light Emitting Diode)チップである。このような波長の深紫外光を出力するため、バンドギャップが約3.4eV以上となる窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)系半導体材料が用いられる。本実施の形態では、特に、中心波長λが約240nm~320nmの深紫外光を発する場合について示す。
【0012】
本明細書において、「AlGaN系半導体材料」とは、少なくとも窒化アルミニウム(AlN)および窒化ガリウム(GaN)を含む半導体材料のことをいい、窒化インジウム(InN)などの他の材料を含有する半導体材料を含むものとする。したがって、本明細書にいう「AlGaN系半導体材料」は、例えば、In1-x-yAlxGayN(0<x+y≦1、0<x<1、0<y<1)の組成で表すことができ、AlGaNまたはInAlGaNを含む。本明細書の「AlGaN系半導体材料」は、例えば、AlNおよびGaNのそれぞれのモル分率が1%以上であり、好ましくは5%以上、10%以上または20%以上である。
【0013】
また、AlNを含まない材料を区別するために「GaN系半導体材料」ということがある。「GaN系半導体材料」には、GaNやInGaNが含まれる。同様に、GaNを含まない材料を区別するために「AlN系半導体材料」ということがある。「AlN系半導体材料」には、AlNやInAlNが含まれる。
【0014】
図1は、実施の形態に係る半導体発光素子10の構成を概略的に示す断面図である。半導体発光素子10は、基板20と、ベース層22と、n型半導体層24と、活性層26と、p型半導体層28と、p側コンタクト電極30と、p側電極被覆層32と、第1誘電体被覆層34と、第2誘電体被覆層36と、n側コンタクト電極38と、p側電流拡散層40と、n側電流拡散層42と、誘電体保護層44と、p側パッド電極46と、n側パッド電極48とを備える。
【0015】
図1において、矢印Aで示される方向を「上下方向」または「厚み方向」ということがある。また、基板20から見て、基板20から離れる方向を上側、基板20に向かう方向を下側ということがある。
【0016】
基板20は、第1主面20aと、第1主面20aとは反対側の第2主面20bとを有する。第1主面20aは、ベース層22からp型半導体層28までの各層を成長させるための結晶成長面である。基板20は、半導体発光素子10が発する深紫外光に対して透光性を有する材料から構成され、例えば、サファイア(Al2O3)から構成される。第1主面20aには、深さおよびピッチがサブミクロン(1μm以下)である微細な凹凸パターンが形成される。このような基板20は、パターン化サファイア基板(PSS;Patterned Sapphire Substrate)とも呼ばれる。第2主面20bは、活性層26が発する深紫外光を外部に取り出すための光取り出し面である。基板20は、AlNから構成されてもよいし、AlGaNから構成されてもよい。基板20は、第1主面20aがパターン化されていない平坦面によって構成される通常の基板であってもよい。
【0017】
ベース層22は、基板20の第1主面20aの上に設けられる。ベース層22は、n型半導体層24を形成するための下地層(テンプレート層)である。ベース層22は、例えば、アンドープのAlN層であり、具体的には高温成長させたAlN(HT-AlN;High Temperature-AlN)層である。ベース層22は、AlN層上に形成されるアンドープのAlGaN層を含んでもよい。基板20がAlN基板またはAlGaN基板である場合、ベース層22は、アンドープのAlGaN層のみから構成されてもよい。つまり、ベース層22は、アンドープのAlN層およびAlGaN層の少なくとも一方を含む。
【0018】
n型半導体層24は、ベース層22の上面22aに設けられる。n型半導体層24は、n型のAlGaN系半導体材料から構成され、例えば、n型の不純物としてSiがドープされる。n型半導体層24は、活性層26が発する深紫外光を透過するように組成比が選択され、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように構成される。n型半導体層24は、活性層26が発する深紫外光の波長よりも大きいバンドギャップを有し、例えば、バンドギャップが4.3eV以上となるように構成される。n型半導体層24は、AlNのモル分率が80%以下、つまり、バンドギャップが5.5eV以下となるように構成されることが好ましく、AlNのモル分率が70%以下(つまり、バンドギャップが5.2eV以下)となるように構成されることがより望ましい。n型半導体層24は、1μm以上3μm以下の厚さを有し、例えば、2μm程度の厚さを有する。
【0019】
n型半導体層24は、不純物であるSiの濃度が1×1018/cm3以上5×1019/cm3以下となるように構成される。n型半導体層24は、Si濃度が5×1018/cm3以上3×1019/cm3以下となるように構成されることが好ましく、7×1018/cm3以上2×1019/cm3以下となるように構成されることがより好ましい。ある実施例において、n型半導体層24のSi濃度は、1×1019/cm3前後であり、具体的には8×1018/cm3以上1.5×1019/cm3以下の範囲である。
【0020】
n型半導体層24は、第1上面24aと、第2上面24bとを有する。第1上面24aは、活性層26が形成される部分であり、第2上面24bは、活性層26が形成されない部分である。
【0021】
活性層26は、n型半導体層24の第1上面24aに設けられる。活性層26は、AlGaN系半導体材料から構成され、n型半導体層24とp型半導体層28の間に挟まれてダブルへテロ構造を形成する。活性層26は、波長355nm以下の深紫外光を出力するためにバンドギャップが3.4eV以上となるように構成され、例えば、波長320nm以下の深紫外光を出力できるようにAlN組成比が選択される。
【0022】
活性層26は、例えば、単層または多層の量子井戸構造を有し、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成される障壁層と、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成される井戸層とを含む。活性層26は、例えば、n型半導体層24と直接接触する第1障壁層と、第1障壁層上に設けられる第1井戸層とを含む。第1井戸層とp型半導体層28の間に、障壁層および井戸層の一以上のペアが追加的に設けられてもよい。障壁層および井戸層のそれぞれは、1nm以上20nm以下の厚さを有し、例えば、2nm以上10nm以下の厚さを有する。
【0023】
活性層26とp型半導体層28の間には、電子ブロック層がさらに設けられてもよい。電子ブロック層は、アンドープのAlGaN系半導体材料から構成され、例えば、AlNのモル分率が40%以上、好ましくは、50%以上となるように構成される。電子ブロック層は、AlNのモル分率が80%以上となるように構成されてもよく、GaNを含有しないAlN系半導体材料から構成されてもよい。電子ブロック層は、1nm以上10nm以下の厚さを有し、例えば、2nm以上5nm以下の厚さを有する。
【0024】
p型半導体層28は、活性層26の上に形成される。p型半導体層28は、p型のAlGaN系半導体材料層またはp型のGaN系半導体材料層であり、例えば、p型の不純物としてマグネシウム(Mg)がドープされるAlGaN層またはGaN層である。p型半導体層28は、例えば、20nm以上400nm以下の厚さを有する。
【0025】
p型半導体層28は、複数層によって構成されてもよい。p型半導体層28は、例えば、p型クラッド層とp型コンタクト層を有してもよい。p型クラッド層は、p型コンタクト層と比較してAlN比率の高いp型AlGaN層であり、活性層26と直接接触するように設けられる。p型コンタクト層は、p型クラッド層と比較してAlN比率の低いp型AlGaN層またはp型GaN層である。p型コンタクト層は、p型クラッド層の上に設けられ、p側コンタクト電極30と直接接触するように設けられる。p型クラッド層は、p型第1クラッド層と、p側第2クラッド層とを有してもよい。
【0026】
p型第1クラッド層は、活性層26が発する深紫外光を透過するように組成比が選択される。p型第1クラッド層は、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように構成される。p型第1クラッド層のAlN比率は、例えば、n型半導体層24のAlN比率と同程度、または、n型半導体層24のAlN比率よりも大きい。p型クラッド層のAlN比率は、70%以上または80%以上であってもよい。p型第1クラッド層は、10nm以上100nm以下の厚さを有し、例えば、15nm以上70nm以下の厚さを有する。
【0027】
p型第2クラッド層は、p型第1クラッド層上に設けられる。p型第2クラッド層は、AlN比率が中程度のp型AlGaN層であり、p型第1クラッド層よりもAlN比率が低く、p型コンタクト層よりもAlN比率が高い。p型第2クラッド層は、例えば、AlNのモル分率が25%以上、好ましくは、40%以上または50%以上となるように形成される。p型第2クラッド層のAlN比率は、例えば、n型半導体層24のAlN比率の±10%程度となるように形成される。p型第2クラッド層は、5nm以上250nm以下の厚さを有し、例えば、10nm以上150nm以下の厚さを有する。なお、p型第2クラッド層が設けられなくてもよく、p型クラッド層がp型第1クラッド層のみで構成されてもよい。
【0028】
p型コンタクト層は、相対的に低AlN比率のp型AlGaN層またはp型GaN層である。p型コンタクト層は、p側コンタクト電極30と良好なオーミック接触を得るためにAlN比率が20%以下となるよう構成され、好ましくは、AlN比率が10%以下、5%以下または0%となるように形成される。つまり、p型コンタクト層は、実質的にAlNを含まないp型GaN系半導体材料で形成されうる。その結果、p型コンタクト層は、活性層26が発する深紫外光を吸収しうる。p型コンタクト層は、活性層26が発する深紫外光の吸収量を小さくするために薄く形成されることが好ましい。p型コンタクト層は、5nm以上30nm以下の厚さを有し、例えば、10nm以上20nm以下の厚さを有する。
【0029】
p側コンタクト電極30は、p型半導体層28の上面28aに設けられる。p側コンタクト電極30は、p型半導体層28(例えば、p型コンタクト層)とオーミック接触可能であり、活性層26が発する深紫外光に対する反射率が高い材料で構成される。p側コンタクト電極30は、p型半導体層28の上面28aと直接接触するRh層を含む。p側コンタクト電極30は、例えばRh層のみからなる。p側コンタクト電極30に含まれるRh層の厚さは、50nm以上200nm以下であり、例えば70nm以上150nm以下である。p側コンタクト電極30に含まれるRh層の膜密度は、12g/cm3以上であり、例えば12.2g/cm3以上12.5g/cm3以下である。p側コンタクト電極30に含まれるRh層の膜密度を大きくすることにより、反射電極としての機能を高めることができる。Rh層の膜密度を12g/cm3以上とすることにより、波長280nmの紫外光に対して65%以上の反射率が得られる。
【0030】
p側電極被覆層32は、p側コンタクト電極30の上面30aおよび側面30bと直接接触し、p側コンタクト電極30の全体を被覆するように設けられる。p側電極被覆層32は、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含む。p側電極被覆層32の構成の詳細は、
図2を参照しながら別途後述する。
【0031】
第1誘電体被覆層34は、p側電極被覆層32の上面32aに設けられる第1接続開口34pを有し、第1接続開口34pとは異なる箇所においてp側電極被覆層32を被覆する。第1誘電体被覆層34は、p側電極被覆層32の上面32aおよび側面32bと直接接触し、p型半導体層28の上面28aと直接接触するように設けられる。第1誘電体被覆層34は、p型半導体層28の側面28bおよび活性層26の側面26aとは接触しない。
【0032】
第1誘電体被覆層34は、第1酸化物材料から構成され、酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)または酸化ハフニウム(HfO2)から構成される。第1誘電体被覆層34は、好ましくはSiO2から構成される。第1誘電体被覆層34の厚さは、50nm以上であり、例えば100nm以上500nm以下である。
【0033】
第2誘電体被覆層36は、p側電極被覆層32の上面32aに設けられる第2接続開口36pを有し、第2接続開口36pとは異なる箇所において第1誘電体被覆層34を被覆する。第2接続開口36pは、第1接続開口34pと連通する位置に設けられる。第2接続開口36pの形成範囲は、第1接続開口34pの形成範囲よりも大きい。例えば、第2接続開口36pの外周は、第1接続開口34pの外側に位置する。第2誘電体被覆層36は、n型半導体層24の第2上面24bに設けられるコンタクト開口36nを有し、コンタクト開口36nとは異なる箇所においてn型半導体層24の第2上面24bを被覆する。第2誘電体被覆層36は、第1誘電体被覆層34と直接接触し、p型半導体層28の側面28bおよび活性層26の側面26bと直接接触し、n型半導体層24の第2上面24bと直接接触するように設けられる。
【0034】
第2誘電体被覆層36は、第1誘電体被覆層34とは異なる第2酸化材料から構成され、SiO2、Al2O3またはHfO2から構成される。第2誘電体被覆層36は、好ましくはAl2O3から構成される。第2誘電体被覆層36の厚さは、10nm以上100nm以下であり、例えば20nm以上50nm以下である。
【0035】
n側コンタクト電極38は、n型半導体層24の第2上面24bに設けられる。n側コンタクト電極38は、コンタクト開口36nを塞ぐように設けられ、コンタクト開口36nの外側において第2誘電体被覆層36の上に重なる。n側コンタクト電極38は、順に積層される第1Ti層、Al層、第2Ti層およびTiN層を含む。n側コンタクト電極38の構成の詳細は、
図3を参照しながら別途後述する。
【0036】
p側電流拡散層40は、p側電極被覆層32の上面32aに設けられ、接続開口(第1接続開口34pおよび第2接続開口36p)においてp側電極被覆層32と接続する。p側電流拡散層40は、第1接続開口34pおよび第2接続開口36pを塞ぐように設けられ、第1接続開口34pの外側において第1誘電体被覆層34の上に重なり、第2接続開口36pの外側において第2誘電体被覆層36の上に重なる。p側電流拡散層40は、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含む。p側電流拡散層40の構成の詳細は、
図2を参照しながら別途後述する。
【0037】
n側電流拡散層42は、n側コンタクト電極38の上面38aおよび側面38bを被覆するように設けられる。n側電流拡散層42は、n側コンタクト電極38の外側において第2誘電体被覆層36の上に重なる。n側電流拡散層42は、p側電流拡散層40と同様の構成を有し、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含む。n側電流拡散層42の構成の詳細は、
図3を参照しながら別途後述する。
【0038】
誘電体保護層44は、p側電流拡散層40の上に設けられるp側パッド開口44pと、n側電流拡散層42の上に設けられるn側パッド開口44nとを有する。誘電体保護層44は、p側パッド開口44pとは異なる箇所においてp側電流拡散層40を被覆し、n側パッド開口44nとは異なる箇所においてn側電流拡散層42を被覆する。誘電体保護層44は、ベース層22の上面22a、n型半導体層24の側面24c、第2誘電体被覆層36、p側電流拡散層40およびn側電流拡散層42と直接接触するように設けられる。
【0039】
誘電体保護層44は、第2誘電体被覆層36とは異なる第3酸化物材料から構成され、酸化シリコン(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)または酸化ハフニウム(HfO2)から構成される。誘電体保護層44は、好ましくはSiO2から構成される。誘電体保護層44の厚さは、300nm以上1500nm以下であり、例えば、600nm以上1000nm以下である。
【0040】
p側パッド電極46は、p側電流拡散層40の上に設けられ、p側パッド開口44pにおいてp側電流拡散層40と接続する。p側パッド電極46は、p側パッド開口44pを塞ぐように設けられ、p側パッド開口44pの外側において誘電体保護層44の上に重なる。p側パッド電極46は、p側電流拡散層40およびp側電極被覆層32を介してp側コンタクト電極30と電気的に接続される。
【0041】
n側パッド電極48は、n側電流拡散層42の上に設けられ、n側パッド開口44nにおいてn側電流拡散層42と接続する。n側パッド電極48は、n側パッド開口44nを塞ぐように設けられ、n側パッド開口44nの外側において誘電体保護層44の上に重なる。n側パッド電極48は、n側電流拡散層42を介してn側コンタクト電極38と電気的に接続される。
【0042】
p側パッド電極46およびn側パッド電極48は、半導体発光素子10をパッケージ基板などに実装する際に接合される部分である。p側パッド電極46およびn側パッド電極48は、例えば、Ni/Au、Ti/AuまたはTi/Pt/Auの積層構造を含む。p側パッド電極46およびn側パッド電極48のそれぞれの厚さは、100nm以上であり、例えば200nm以上1000nm以下である。
【0043】
図2は、p側電極被覆層32およびp側電流拡散層40の構成を概略的に示す。p側電極被覆層32は、Ti層50と、Rh層52と、TiN層54とを含む。p側電流拡散層40は、第1TiN層56と、多層金属膜58と、第2TiN層60とを含む。p側電流拡散層40は、Ti層62と、Au層64とをさらに含んでもよい。
【0044】
p側電極被覆層32のTi層50は、p側コンタクト電極30の上面30aおよび側面30bと直接接触する。Ti層50の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。Ti層50は、p側コンタクト電極30のRh層とp側電極被覆層32のRh層52の間の接着性を高める。
【0045】
p側電極被覆層32のRh層52は、Ti層50上に設けられ、Ti層50と直接接触する。Rh層52の厚さは、5nm以上100nm以下であり、例えば、10nm以上50nm以下である。Rh層52の膜密度は、p側コンタクト電極30に含まれるRh層の膜密度よりも低い。Rh層52の膜密度は、12g/cm3未満であり、例えば、11.5g/cm3以上11.8g/cm3以下である。
【0046】
p側電極被覆層32のTiN層54は、Rh層52上に設けられ、Rh層52と直接接触する。TiN層54は、導電性を有する窒化チタンから構成される。TiN層54の厚さは、5nm以上100nm以下であり、例えば、10nm以上50nm以下である。
【0047】
p側電流拡散層40の第1TiN層56は、p側電極被覆層32と直接接触する。p側電流拡散層40の多層金属膜58は、第1TiN層56上に設けられる。p側電流拡散層40の第2TiN60層は、多層金属膜58上に設けられる。第1TiN層56および第2TiN層60は、導電性を有するTiNから構成される。第1TiN層56および第2TiN層60のそれぞれの厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、50nm以上150nm以下である。
【0048】
p側電流拡散層40の多層金属膜58は、Ti層58aおよびRh層58bを含む。多層金属膜58は、交互に積層される複数のTi層58aおよび複数のRh層58bを有してもよい。Ti層58aおよびRh層58bのそれぞれの厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、20nm以上150nm以下である。p側電流拡散層40に含まれるRh層58bの膜密度は、p側電極被覆層32に含まれるRh層52の膜密度よりも高い。p側電流拡散層40に含まれるRh層58bの膜密度は、12g/cm3以上であり、例えば12.2g/cm3以上12.5g/cm3以下である。
【0049】
p側電流拡散層40のTi層62は、第2TiN層60の上に設けられる。Ti層62の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。p側電流拡散層40のAu層64は、Ti層62の上に設けられる。Au層64の厚さは、100nm以上500nm以下であり、例えば、150nm以上300nm以下である。
【0050】
図3は、n側コンタクト電極38およびn側電流拡散層42の構成を概略的に示す。n側コンタクト電極38は、第1Ti層66と、Al層68と、第2Ti層70と、TiN層72とを含む。n側電流拡散層42は、第1TiN層74と、多層金属膜76と、第2TiN層78とを含む。n側電流拡散層42は、Ti層80と、Au層82とをさらに含んでもよい。
【0051】
n側コンタクト電極38の第1Ti層66は、n型半導体層24の第2上面24bと直接接触する。第1Ti層66の厚さは、1nm以上10nm以下であり、好ましくは5nm以下または2nm以下である。n側コンタクト電極38のAl層68は、第1Ti層66上に設けられ、第1Ti層66と直接接触する。Al層68の厚さは、200nm以上であり、例えば300nm以上1000nm以下である。n側コンタクト電極38の第2Ti層70は、Al層68上に設けられ、Al層68と直接接触する。第2Ti層70の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。n側コンタクト電極38のTiN層72は、第2Ti層70上に設けられ、第2Ti層70と直接接触する。TiN層72は、導電性を有するTiNから構成される。TiN層72の厚さは、5nm以上100nm以下であり、例えば、10nm以上50nm以下である。
【0052】
n側電流拡散層42の第1TiN層74は、n側コンタクト電極38の上面38aおよび側面38bと直接接触する。n側電流拡散層42の多層金属膜76は、第1TiN層74上に設けられる。n側電流拡散層42の第2TiN層78は、多層金属膜76上に設けられる。第1TiN層74および第2TiN層78は、導電性を有するTiNから構成される。第1TiN層74および第2TiN層78のそれぞれの厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、50nm以上150nm以下である。
【0053】
n側電流拡散層42の多層金属膜76は、p側電流拡散層40の多層金属膜58と同様、Ti層76aとRh層76bから構成される。多層金属膜76は、交互に積層される複数のTi層76aおよび複数のRh層76bを有してもよい。多層金属膜76に含まれるTi層76aおよびRh層76bのそれぞれの厚さは、10nm以上200nm以下であり、例えば、20nm以上150nm以下である。n側電流拡散層42に含まれるRh層76bの膜密度は、p側電流拡散層40に含まれるRh層58bの膜密度と同等である。n側電流拡散層42に含まれるRh層76bの膜密度は、12g/cm3以上であり、例えば12.2g/cm3以上12.5g/cm3以下である。
【0054】
n側電流拡散層42のTi層80は、第2TiN78層上に設けられる。Ti層80の厚さは、1nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上25nm以下である。n側電流拡散層42のAu層82は、Ti層80の上に設けられる。Au層82の厚さは、100nm以上500nm以下であり、例えば、150nm以上300nm以下である。
【0055】
つづいて、半導体発光素子10の製造方法について説明する。
図4~
図12は、半導体発光素子10の製造工程を概略的に示す図である。まず、
図4において、基板20の第1主面20aの上にベース層22、n型半導体層24、活性層26、p型半導体層28を順に形成する。
【0056】
基板20は、例えばパターン化サファイア基板である。ベース層22は、例えばHT-AlN層と、アンドープのAlGaN層とを含む。n型半導体層24、活性層26およびp型半導体層28は、AlGaN系半導体材料、AlN系半導体材料またはGaN系半導体材料から構成される半導体層であり、有機金属化学気相成長(MOVPE;Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)法や、分子線エピタキシ(MBE;Molecular Beam Epitaxy)法などの周知のエピタキシャル成長法を用いて形成できる。
【0057】
つづいて、
図4に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、p型半導体層28の上面28aにp側コンタクト電極30を形成する。p側コンタクト電極30は、p型半導体層28の上面28aと直接接触するRh層を含む。p側コンタクト電極30のRh層は、蒸着法により100℃以下の温度で形成される。蒸着法によりRh層を形成することにより、スパッタリング法を用いる場合に比べて、p型半導体層28の上面28aに対するダメージを抑制でき、p側コンタクト電極30のコンタクト抵抗を向上できる。
【0058】
p側コンタクト電極30の形成後、p側コンタクト電極30をアニールする。p側コンタクト電極30は、例えば、RTA(Rapid Thermal Annealing)法を用いて、500℃以上650℃以下の温度にてアニールされる。p側コンタクト電極30のアニール処理により、p側コンタクト電極30のコンタクト抵抗が低下するとともに、p側コンタクト電極30に含まれるRh層の膜密度が12g/cm3以上に増加する。蒸着法により100℃以下の温度で形成されるRh層の膜密度は、12g/cm3未満であり、例えば11.6g/cm3以上11.9g/cm3以下である。Rh層の膜密度が12g/cm3未満の場合、波長280nmの紫外光に対する反射率は65%未満となり、60%~61%程度となる。一方、アニール処理後のRh層は、例えば12.2g/cm3以上12.5g/cm3以下の膜密度を有し、波長280nmの紫外光に対して65%以上の反射率、例えば66%~67%程度の反射率を有する。
【0059】
次に、
図5に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、p側コンタクト電極30の全体を被覆するようにp側電極被覆層32を形成する。p側電極被覆層32は、p側コンタクト電極30の上面30aおよび側面30bと接触し、順に積層されるTi層50、Rh層52およびTiN層54(
図2参照)を含む。p側電極被覆層32を構成するTi層50、Rh層52およびTiN層54は、スパッタリング法により形成され、例えば、アルゴン(Ar)ガスを用いるスパッタリング法により100℃以下の温度で形成される。p側電極被覆層32をスパッタリング法を用いて形成することにより、p側コンタクト電極30に対するp側電極被覆層32の接着性を高めることができる。スパッタリング法により100℃以下の温度で形成されるRh層の膜密度は、12g/cm
3未満であり、例えば11.6g/cm
3以上11.9g/cm
3以下である。
【0060】
つづいて、
図5に示すように、p型半導体層28の上面28aを被覆し、p側電極被覆層32の上面32aおよび側面32bを被覆するように第1誘電体被覆層34を形成する。第1誘電体被覆層34は、例えばSiO2から構成され、プラズマ励起化学気相成長(PECVD;Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法により形成できる。
【0061】
次に、
図6に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、第1誘電体被覆層34の上にマスク84を形成する。マスク84は、p側コンタクト電極30およびp側電極被覆層32の形成範囲よりも広い範囲にわたって設けられる。マスク84の形成後、マスク84と重ならない領域にある第1誘電体被覆層34、p型半導体層28および活性層26をドライエッチングなどにより除去し、n型半導体層24の第2上面24bを露出させる。このエッチング工程により、p型半導体層28の側面28b、活性層26の側面26bおよびn型半導体層24の第2上面24bが形成される。その後、マスク84が除去される。
【0062】
次に、
図7に示すように、第2誘電体被覆層36が形成される。第2誘電体被覆層36は、n型半導体層24の第2上面24b、活性層26の側面26b、p型半導体層28の側面28bおよび第1誘電体被覆層34と直接接触し、これらを被覆するように設けられる。第2誘電体被覆層36は、例えばAl
2O
3から構成され、原子堆積(ALD;Atomic Layer Deposition)法により形成できる。
【0063】
次に、
図8に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、第2誘電体被覆層36をドライエッチングなどにより部分的に除去し、第2接続開口36pおよびコンタクト開口36nを形成する。第2接続開口36pおよびコンタクト開口36nは、第2誘電体被覆層36を貫通するように形成され、第2接続開口36pにおいて第1誘電体被覆層34が露出し、コンタクト開口36nにおいてn型半導体層24の第2上面24bが露出する。
【0064】
つづいて、
図8に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、コンタクト開口36nを塞ぐようにn型半導体層24の第2上面24bにn側コンタクト電極38を形成する。n側コンタクト電極38は、n型半導体層24の第2上面24bと接触し、順に積層される第1Ti層66、Al層68、第2Ti層70およびTiN層72(
図3参照)を含む。n側コンタクト電極38を構成する第1Ti層66、Al層68、第2Ti層70およびTiN層72は、スパッタリング法により形成される。
【0065】
n側コンタクト電極38の形成後、n側コンタクト電極38をアニールする。n側コンタクト電極38は、例えば、RTA法を用いて、500℃以上650℃以下の温度にてアニールされる。n側コンタクト電極38のアニール処理により、n側コンタクト電極38のコンタクト抵抗が低下する。
【0066】
n側コンタクト電極38のアニール処理では、p側電極被覆層32も同時に500℃以上650℃以下の温度にてアニールされる。したがって、p側電極被覆層32は、誘電体被覆層(第1誘電体被覆層34および第2誘電体被覆層36)の形成後に500℃以上650℃以下の温度にてアニールされる。p側電極被覆層32に含まれるRh層52の膜密度は、アニール処理によってわずかに低下し、11.5g/cm3以上11.8g/cm3以下となる。スパッタリング法により100℃以下の温度で形成したRh層を500℃以上650℃以下の温度でアニールすると、アニール処理後のRh層の膜密度は12g/cm3未満となる。
【0067】
次に、
図9に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、第1誘電体被覆層34をドライエッチングなどにより部分的に除去し、第1接続開口34pを形成する。第1接続開口34pは、第1誘電体被覆層34を貫通するように形成され、第1接続開口34pにおいてp側電極被覆層32の上面32aが露出する。
【0068】
次に、
図10に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、接続開口(第1接続開口34pおよび第2接続開口36p)においてp側電極被覆層32と接続するp側電流拡散層40を形成し、n側コンタクト電極38の上面38aおよび側面38bを被覆するようにn側電流拡散層42を形成する。p側電流拡散層40およびn側電流拡散層42は、スパッタリング法を用いて同時に形成できる。
図2および
図3に示されるように、まず、第1TiN層56,74を形成し、第1TiN層56,74上にTi層58a,76aとRh層58b、76bを含む多層金属膜58,76を形成し、多層金属膜58,76上に第2TiN層60,78を形成する。第2TiN層60,78上にさらにTi層62,80およびAu層64,82を形成してもよい。スパッタリング法により100℃以下の温度で形成されるRh層の膜密度は、12g/cm
3未満であり、例えば11.6g/cm
3以上11.9g/cm
3以下である。なお、p側電流拡散層40およびn側電流拡散層42を別々に形成してもよい。
【0069】
次に、
図11に示すように、例えば公知のリソグラフィ技術を用いて、第2誘電体被覆層36、p側電流拡散層40およびn側電流拡散層42の上にマスク86を形成する。マスク86の形成後、マスク86と重ならない領域にある第2誘電体被覆層36およびn型半導体層24をドライエッチングなどにより除去し、ベース層22の上面22aを露出させる。このエッチング工程により、n型半導体層24の側面24cが形成される。その後、マスク86が除去される。
【0070】
次に、
図12に示すように、誘電体保護層44が形成される。誘電体保護層44は、ベース層22の上面22a、n型半導体層24の側面24c、第2誘電体被覆層36、p側電流拡散層40およびn側電流拡散層42と直接接触し、これらを被覆するように設けられる。誘電体保護層44は、例えばSiO2から構成され、PECVD法により形成できる。誘電体保護層44は、200℃以上400℃以下の温度にて形成される。
【0071】
誘電体保護層44を形成する工程では、p側電流拡散層40およびn側電流拡散層42が200℃以上400℃以下の温度にて加熱される。p側電流拡散層40およびn側電流拡散層42に含まれるRh層58b,76bの膜密度は、200℃以上400℃以下の温度にて加熱されることにより、12g/cm3以上に増加する。スパッタリング法により100℃以下の温度で形成されるRh層の膜密度は、12g/cm3未満であり、例えば11.6g/cm3以上11.9g/cm3以下である。一方、200℃以上400℃以下の温度にて加熱した後のRh層の膜密度は、例えば12.2g/cm3以上12.5g/cm3以下となる。
【0072】
次に、
図1に示すように、誘電体保護層44をドライエッチングなどにより部分的に除去し、p側パッド開口44pおよびn側パッド開口44nを形成する。p側パッド開口44pおよびn側パッド開口44nは、誘電体保護層44を貫通するように形成され、p側パッド開口44pにおいてp側電流拡散層40が露出し、n側パッド開口44nにおいてn側電流拡散層42が露出する。つづいて、p側パッド開口44pを塞ぐように、p側パッド開口44pにおいてp側電流拡散層40と接続するp側パッド電極46を形成し、n側パッド開口44nを塞ぐように、n側パッド開口44nにおいてn側電流拡散層42と接続するn側パッド電極48を形成する。p側パッド電極46およびn側パッド電極48は、同時に形成できるが、別々に形成されてもよい。
【0073】
以上の工程により、
図1に示す半導体発光素子10ができあがる。
【0074】
本実施の形態によれば、Rh層を含むp側コンタクト電極30の上面30aおよび側面30bをp側電極被覆層32によって被覆し、p側電極被覆層32の上面32aおよび側面32bと接触するように第1誘電体被覆層34を形成することにより、p側コンタクト電極30に対する第1誘電体被覆層34の接着性を向上できる。
【0075】
本実施の形態によれば、第1誘電体被覆層34に第1接続開口34pを形成する際、p側電極被覆層32に含まれるRh層をエッチングストップ層として用いることができる。これにより、p側コンタクト電極30に含まれるRh層へのダメージを防ぎ、p側コンタクト電極30の反射特性の低下を防止できる。
【0076】
本実施の形態によれば、p側電極被覆層32がTi/Rh/TiNの積層構造を有することにより、p側電極被覆層32においても電流を分散させることができる。言い換えれば、p側コンタクト電極30に向かう高電流をp側電極被覆層32およびp側電流拡散層40の双方において分散させることができ、局所的な電流集中を抑制できる。
【0077】
本実施の形態によれば、p側コンタクト電極30に含まれるRh層の膜密度は、p側電極被覆層32に含まれるRh層52の膜密度よりも大きいため、p側コンタクト電極30に含まれるRh層を緻密にして紫外光に対する反射率を高めることができる。これにより、p側コンタクト電極30を高効率の反射電極として機能させることができる。
【0078】
本実施の形態によれば、p側電流拡散層40がRh層58bを含むことにより、誘電体被覆層(第1誘電体被覆層34および第2誘電体被覆層36)が除去される接続開口(第1接続開口34pおよび第2接続開口36p)における封止性を高めることができ、半導体発光素子10の耐湿性を向上できる。同様に、n側電流拡散層42がRh層76bを含むことにより、n側コンタクト電極38の封止性を高めることができ、n側コンタクト電極38に含まれるAl層68の劣化を抑制できる。また、p側電流拡散層40およびn側電流拡散層42に含まれるRh層58b,76bの膜密度は、p側電極被覆層32に含まれるRh層52の膜密度よりも大きいため、p側電流拡散層40およびn側電流拡散層42に含まれるRh層58b,76bを緻密にして封止性をより高めることができる。
【0079】
本実施の形態によれば、p側コンタクト電極30に含まれるRh層を蒸着法により形成することにより、スパッタリング法に比べて、Rh層の形成時におけるp型半導体層28の上面28aのダメージを抑制し、p側コンタクト電極30のコンタクト抵抗をより低くできる。一方、p側電極被覆層32に含まれるRh層52をスパッタリング法により形成することにより、蒸着法に比べて、p側コンタクト電極30に対する接着性を高めることができ、p側電極被覆層32の剥離を抑制できる。
【0080】
本実施の形態によれば、p側コンタクト電極30を500℃以上650℃以下の温度にてアニールすることにより、アニール処理前に比べて、p側コンタクト電極30のコンタクト抵抗を低下させるとともに、p側コンタクト電極30に含まれるRh層の膜密度を向上できる。また、第1誘電体被覆層34の形成後にp側電極被覆層32を500℃以上650℃以下の温度にてアニールすることにより、アニール処理前に比べて、p側電極被覆層32の接着性を向上できる。これにより、p側電極被覆層32や第1誘電体被覆層34の剥離を抑制できる。
【0081】
本実施の形態によれば、p側電流拡散層40およびn側電流拡散層42を200℃以上400℃以下の温度にて加熱することにより、加熱処理前に比べて、p側電流拡散層40およびn側電流拡散層42に含まれるRh層58b、76bの膜密度を高めることができる。これにより、p側電流拡散層40およびn側電流拡散層42の封止性を向上できる。
【0082】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上述の実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。
【0083】
以下、本発明のいくつかの態様について説明する。
【0084】
本発明の第1の態様は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層と、前記n型半導体層上に設けられ、AlGaN系半導体材料から構成される活性層と、前記活性層上に設けられるp型半導体層と、前記p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極と、前記p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含むp側電極被覆層と、前記p側電極被覆層上に設けられる接続開口を有し、前記接続開口とは異なる箇所において前記p側電極被覆層を被覆する誘電体被覆層と、前記接続開口において前記p側電極被覆層と接続するp側電流拡散層と、を備える半導体発光素子である。第1の態様によれば、Rh層を含むp側コンタクト電極の上面および側面をp側電極被覆層によって被覆し、p側電極被覆層を被覆するように誘電体被覆層を形成することにより、p側コンタクト電極に対する誘電体被覆層の接着性を向上できる。
【0085】
本発明の第2の態様は、前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層の膜密度は、前記p側電極被覆層に含まれる前記Rh層の膜密度よりも大きい、第1の態様に記載の半導体発光素子である。第2の態様によれば、p側コンタクト電極に含まれるRh層を緻密にして紫外光に対する反射率を高めることができ、p側コンタクト電極を高効率の反射電極として機能させることができる。
【0086】
本発明の第3の態様は、前記p側電流拡散層は、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含み、前記p側電流拡散層に含まれる前記Rh層の膜密度は、前記p側電極被覆層に含まれる前記Rh層の膜密度よりも大きい、第1または第2の態様に記載の半導体発光素子である。第3の態様によれば、p側電流拡散層がRh層を含むことにより、誘電体被覆層が除去される接続開口における封止性を高めることができ、半導体発光素子の耐湿性を向上できる。さらに、p側電流拡散層に含まれるRh層を緻密にして封止性をより高めることができる。
【0087】
本発明の第4の態様は、n型AlGaN系半導体材料から構成されるn型半導体層上に、AlGaN系半導体材料から構成される活性層を形成する工程と、前記活性層上にp型半導体層を形成する工程と、前記p型半導体層の上面と接触するRh層を含むp側コンタクト電極を形成する工程と、前記p側コンタクト電極の上面および側面と接触し、順に積層されるTi層、Rh層およびTiN層を含むp側電極被覆層を形成する工程と、前記p側電極被覆層の上面および側面を被覆する誘電体被覆層を形成する工程と、前記p側電極被覆層上の前記誘電体被覆層を除去し、前記p側電極被覆層が露出する接続開口を形成する工程と、前記接続開口において前記p側電極被覆層と接続するp側電流拡散層を形成する工程と、を備え、前記p側コンタクト電極に含まれる前記Rh層は、蒸着法により形成され、前記p側電極被覆層に含まれる前記Rh層は、スパッタリング法により形成される、半導体発光素子の製造方法である。第4の態様によれば、p側コンタクト電極に含まれるRh層を蒸着法により形成することにより、スパッタリング法に比べて、Rh層の形成時におけるp型半導体層の上面のダメージを抑制し、p側コンタクト電極のコンタクト抵抗をより低くできる。一方、p側電極被覆層に含まれるRh層をスパッタリング法により形成することにより、蒸着法に比べて、p側コンタクト電極に対する接着性を高めることができ、p側電極被覆層の剥離を抑制できる。
【0088】
本発明の第5の態様は、前記p側電極被覆層の形成前に前記p側コンタクト電極を500℃以上650℃以下の温度にてアニールする工程と、前記誘電体被覆層の形成後に前記p側電極被覆層を500℃以上650℃以下の温度にてアニールする工程と、をさらに備える、第4の態様に記載の半導体発光素子の製造方法である。第5の態様によれば、p側コンタクト電極を500℃以上650℃以下の温度にてアニールすることにより、アニール処理前に比べて、p側コンタクト電極のコンタクト抵抗を低下させるとともに、p側コンタクト電極の膜密度を向上できる。また、第1誘電体被覆層の形成後にp側電極被覆層を500℃以上650℃以下の温度にてアニールすることにより、アニール処理前に比べて、p側電極被覆層の接着性を向上できる。
【0089】
本発明の第6の態様は、前記p側電流拡散層は、順に積層されるTiN層、Ti層、Rh層およびTiN層を含み、前記p側電流拡散層に含まれるRh層は、スパッタリング法により形成され、前記p側電流拡散層を200℃以上400℃以下の温度にて加熱する工程をさらに備える、第5の態様に記載の半導体発光素子の製造方法である。第7の態様によれば、p側電流拡散層を200℃以上400℃以下の温度にて加熱することにより、加熱処理前に比べて、p側電流拡散層に含まれるRh層の膜密度を高めることができる。これにより、p側電流拡散層の封止性を向上できる。
【符号の説明】
【0090】
10…半導体発光素子、24…n型半導体層、26…活性層、28…p型半導体層、28a…上面、28b…側面、30…p側コンタクト電極、30a…上面、30b…側面、32…p側電極被覆層、32a…上面、32b…側面、34…第1誘電体被覆層、34p…第1接続開口、36…第2誘電体被覆層、36p…第2接続開口、36n…コンタクト開口、38…n側コンタクト電極、38a…上面、38b…側面、40…p側電流拡散層、42…n側電流拡散層、44…誘電体保護層、44p…p側パッド開口、44n…n側パッド開口、46…p側パッド電極、48…n側パッド電極。