(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020633
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】蛍光測定装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20230202BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20230202BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
G01N21/17 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126111
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】渡部 倭斗
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】大浦 雅彦
【テーマコード(参考)】
2G043
2G059
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043AA03
2G043CA03
2G043EA01
2G043EA13
2G043EA14
2G043FA06
2G043JA03
2G043KA03
2G043LA01
2G043MA01
2G043NA01
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB04
2G059DD12
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE07
2G059EE11
2G059GG02
2G059GG03
2G059HH03
2G059JJ03
2G059KK01
2G059KK03
2G059LL04
2G059MM01
2G059MM17
2G059NN01
(57)【要約】
【課題】構成が簡単な蛍光測定装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る蛍光測定装置は、被測定水中の測定対象の濃度を測定する蛍光測定装置であって、前記被測定水を貯留する測定室と、前記測定室に第1方向に光を投光する投光路と、前記測定室から前記第1方向と異なる方向に光を出射する測定光路と、前記測定室から前記投光路の延長線上に光を出射する透過光路と、前記投光路を通して前記測定室に前記測定対象を励起して蛍光を生じさせる第1波長の第1測定光を投光する第1光源と、前記投光路を通して前記測定室に前記測定対象の前記蛍光の波長と同一又は近似する第2波長の第2測定光を投光する第2光源と、前記測定光路から出射する光を受光する第1受光素子と、前記透過光路から出射する光を受光する第2受光素子と、前記第1光源及び前記第2光源の少なくとも一方から前記測定室への投光量を調節する光量調節機構と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定水中の測定対象の濃度を測定する蛍光測定装置であって、
前記被測定水を貯留する測定室と、
前記測定室に第1方向に光を投光する投光路と、
前記測定室から前記第1方向と異なる方向に光を出射する測定光路と、
前記測定室から前記投光路の延長線上に光を出射する透過光路と、
前記投光路を通して前記測定室に前記測定対象を励起して蛍光を生じさせる第1波長の第1測定光を投光する第1光源と、
前記投光路を通して前記測定室に前記測定対象の前記蛍光の波長と同一又は近似する第2波長の第2測定光を投光する第2光源と、
前記測定光路から出射する光を受光する第1受光素子と、
前記透過光路から出射する光を受光する第2受光素子と、
前記第1光源及び前記第2光源の少なくとも一方から前記測定室への投光量を調節する光量調節機構と、
を備える、蛍光測定装置。
【請求項2】
前記光量調節機構は、前記第1光源及び前記第2光源の少なくとも一方の光路を制限する絞りを有する、請求項1に記載の蛍光測定装置。
【請求項3】
前記第1光源及び前記第2光源は同じ基板上に隣接して配設される、請求項1又は2に記載の蛍光測定装置。
【請求項4】
前記測定光路から出射する光から前記第1波長の成分を除去するフィルタをさらに備える、請求項1又は2に記載の蛍光測定装置。
【請求項5】
前記第1受光素子が所定の閾値以上の光を検出している場合には前記測定室が開放状態であると判断する常時開放判定部をさらに備える、請求項1から4のいずれかに記載の蛍光測定装置。
【請求項6】
前記第1測定光及び前記第2測定光を投光していないときに前記第1受光素子又は前記第2受光素子が光を検出している場合には前記測定室が開放状態であると判断する休止時開放判定部をさらに備える、請求項1から5のいずれかに記載の蛍光測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水質を確認する方法として、被測定水に測定対象を励起して蛍光を生じさせる波長の測定光を投光し、測定光が直接入射しない位置に設けた受光素子により測定対象の蛍光を測定することで、測定対象の濃度を算出する方法が知られている。被測定水が測定対象以外に濁質などの光を散乱又は吸収する成分を含む場合、受光素子が受光する光量がこれらの成分の影響を受ける。このため、測定対象を励起しない波長の光を投光して透過光及び散乱光を測定し、これらの測定値に基づいて、蛍光の測定値に含まれ得る測定対象以外の成分による光の散乱及び吸収による誤差を補正する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の蛍光測定装置は、蛍光測定用光源及び散乱光測定用光源を被測定水に同軸に投光可能に配設し、この投光位置を基準に90°の角度位置に蛍光を検出する第1の検出器、180°の角度位置に透過光を検出する第2の検出器、270°の角度位置に散乱光を検出する第3の検出器を必要とし、構成が複雑である。
【0005】
従って、本発明は、構成が簡単な蛍光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る蛍光測定装置は、被測定水中の測定対象の濃度を測定する蛍光測定装置であって、前記被測定水を貯留する測定室と、前記測定室に第1方向に光を投光する投光路と、前記測定室から前記第1方向と異なる方向に光を出射する測定光路と、前記測定室から前記投光路の延長線上に光を出射する透過光路と、前記投光路を通して前記測定室に前記測定対象を励起して蛍光を生じさせる第1波長の第1測定光を投光する第1光源と、前記投光路を通して前記測定室に前記測定対象の前記蛍光の波長と同一又は近似する第2波長の第2測定光を投光する第2光源と、前記測定光路から出射する光を受光する第1受光素子と、前記透過光路から出射する光を受光する第2受光素子と、前記第1光源及び前記第2光源の少なくとも一方から前記測定室への投光量を調節する光量調節機構と、を備える。
【0007】
上述の蛍光測定装置において、前記光量調節機構は、前記第1光源及び前記第2光源の少なくとも一方の光路を制限する絞りを有してもよい。
【0008】
上述の蛍光測定装置において、前記第1光源及び前記第2光源は同じ基板上に隣接して配設されてもよい。
【0009】
上述の蛍光測定装置は、前記測定光路から出射する光から前記第1波長の成分を除去するフィルタをさらに備えてもよい。
【0010】
上述の蛍光測定装置は、前記測定室に開閉可能な蓋部と、前記第1受光素子が所定閾値以上の光を検出している場合には前記蓋部が開放状態であると判断する開放判定部と、をさらに備えてもよい。
【0011】
上述の蛍光測定装置は、前記測定室に開閉可能な蓋部と、前記第1測定光及び前記第2測定光を投光していないときに前記第1受光素子又は前記第2受光素子が光を検出している場合には前記蓋部が開放状態であると判断する開放判定部と、をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、構成が簡単な蛍光測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る蛍光測定装置の構成を示す模式図である。
【
図2】
図1の蛍光測定装置による濃度測定の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る蛍光測定装置1の構成を示す模式図である。なお、図示する蛍光測定装置1の各構成要素の形状は簡略化されており、各構成要素の寸法も見やすいよう調整されている。
【0015】
蛍光測定装置1は、被測定水中の測定対象の濃度を測定する。蛍光測定装置1は、ハウジング10と、投光部20と、第1受光部30と、第2受光部40と、供給ライン50と、排出ライン60と、制御装置70と、を備える。
【0016】
ハウジング10は、遮光性を有する材料から形成される本体容器11と、遮光性を有する材料から形成され、本体容器11に着脱可能に取り付けられる蓋体12と、によって構成される。蓋体12は、一例として、本体容器11の開口部に形成される内ねじ111に螺合する外ねじ121を有するプラグ状に形成され得る。
【0017】
ハウジング10は、被測定水を貯留する測定室13と、測定室13に第1方向に光を投光する投光路14と、測定室13から第1方向と異なる方向に光を出射する測定光路15と、測定室13から投光路14の延長線上に光を出射する透過光路16と、供給ライン50が接続される供給流路17と、排出ライン60が接続される排出流路18と、を有する。
【0018】
投光路14、測定光路15及び透過光路16は、測定室13から被測定水を流出させることなく、少なくとも後述する第1測定光及び第2測定光を透過するよう構成される。例として、投光路14、測定光路15及び透過光路16は、ハウジング10に測定室13に連通するよう形成される穴によって画定され、少なくとも測定室13側の端部が透光性を有する材料で封止される構成とされ得る。投光路14、測定光路15及び透過光路16は、光の入射方向及び出射方向を限定できるよう、小さい断面を有する真直ぐな穴によって形成されることが好ましい。
【0019】
投光路14と透過光路16とは、測定室13の両側に同軸に形成される。測定光路15は、その軸が投光路14及び透過光路16の軸と交差するよう形成される。測定光路15の軸は、投光路14及び透過光路16の軸と直交することが好ましい。また、測定光路15の軸は、投光路14及び透過光路16の軸と測定室13の中心部で交差することが好ましい。さらに、投光路14、測定光路15及び透過光路16は、投光路14から測定光路15に至る光路の長さと投光路14から透過光路16に至る光路の長さとが等しくなるよう配設されることが好ましい。なお、
図1では、全ての構成を示すために、投光路14、測定光路15及び透過光路16の軸が同一の鉛直面内に存在するよう図示されているが、現実的には投光路14、測定光路15及び透過光路16の軸が同一の水平面内に存在するよう配設されることが想定される。
【0020】
測定室13は、本体容器11の内部空間として画定され、蓋体12によって形成される開閉可能な蓋部131を有する。蓋部131を開放することにより、測定室13の内部のクリーニング等のメンテナンスを可能にする。
【0021】
供給流路17は、測定室13の底部に開口するよう形成されることが好ましく、排出流路18は、測定室13の上部に開口するよう形成されることが好ましい。これにより、測定室13内の被測定水を効率よく入れ換えることができる。排出流路18は測定室13の上部から古い被測定水を排水系統にオーバーフローさせるよう形成される。
【0022】
投光部20は、投光路14を通して測定室13に被測定水中の測定対象を励起して蛍光を生じさせる第1波長の第1測定光(例えば、365nmの紫外光)を投光する第1光源21と、投光路14を通して測定室13に測定対象の蛍光の波長と同一又は近似する第2波長の第2測定光(例えば、420nmの紫色光)を投光する第2光源22と、第1光源21及び第2光源22が実装され、第1光源21及び第2光源22に必要に応じて電力を供給する投光回路基板23と、第1光源21及び第2光源22の少なくとも一方(図示する例では第2光源22)から測定室13への投光量を調節する光量調節機構24と、を有する。投光部20は、投光路14への外光の入射を防止する投光部カバー25を有することが好ましい。
【0023】
第1光源21及び第2光源22は、典型的には発光ダイオードによって構成される。発光ダイオードのように小さい素子からなる第1光源21及び第2光源22は、同じ投光回路基板23上に隣接して配設することができる。
図1では第1光源21及び第2光源22を大きく図示するが、実際には、第1光源21及び第2光源22は同じ位置に存在するものと考えて差し支えない程度小さく、互いに接近して配置され得る。このように微小な第1光源21及び第2光源22を隣接して配置することにより、第1測定光の光軸と第2測定光の光軸とを実質的に合致させることができるので、第1測定光と第2測定光の入射方向の差によって生じ得る測定誤差を小さくできる。
【0024】
投光回路基板23は、第1光源21及び第2光源22を投光路14を通して測定室13の中に測定光を投光できる位置に保持する機能を果たす。また、投光回路基板23は、制御装置70からの指令信号に従って、第1光源21又は第2光源22を選択的に発光させる駆動回路を有する。
【0025】
光量調節機構24は、第1測定光の投光時に第1受光部30に入射する測定対象の蛍光の強度と第2測定光の投光時に被測定水の着色等に起因して第1受光部30に入射する散乱光の強度とがいずれも第1受光部30の測定可能範囲内に収まるよう、第1光源21及び第2光源22のいずれかの光量を制限する。光量調節機構24は、図示する例では第2測定光の光量を制限するよう配設されるが、例えば測定対象の種類、第1測定光及び第2測定光の波長、第1光源21及び第2光源22の仕様等によっては、第1測定光の光量を制限するよう配設されてもよく、第1測定光及び第2測定光の両方の光量を個別に制限するよう配設されてもよい。なお、測定対象の濃度の測定範囲及び想定される散乱度の範囲は任意に設定され得る。
【0026】
光量調節機構24としては、投光回路基板23に形成される駆動回路に組み込まれ、第1光源21又は第2光源22に供給される電力を調整する回路等を使用してもよいが、より簡単な構成として、図示するように、光路の断面積を制限する絞りを用いることができる。光量調節機構24として絞りを用いることにより、構成が簡単でありながら、第1受光部30が受光する蛍光の強度と散乱光の強度とを容易に近づけることができる。
【0027】
第1受光部30は、測定光路15から出射する光を受光してその強度に応じた電気信号を生成する第1受光素子31と、第1受光素子31が実装される第1検出回路基板32と、測定光路15から出射する光から第1波長の成分を除去するフィルタ33と、を有する。第1受光部30は、測定光路15への外光の入射を防止する第1受光部カバー34を有することが好ましい。
【0028】
第1受光素子31は、典型的にはフォトダイオードによって構成される。第1検出回路基板32は、第1受光素子31が出力する信号を増幅し、必要に応じてディジタル信号に変換することにより、制御装置70に入力される検出信号を出力する検出回路を有する。フィルタ33は、第1波長を含む波長域の光を遮断する一方、第2波長の近傍の波長域の光を透過する。これにより、第1受光素子31は、測定光路15から出射する第2波長の光の強度を検出する。つまり、フィルタ33を設けることによって、第1受光素子31は、測定室13に第1測定光が透光されているときに、着色による第1測定光の散乱光を受光せず、測定対象の蛍光の強度だけを検出できるので、蛍光の光量を正確に測定し、測定対象の濃度をより正確に算出することを可能にする。
【0029】
第2受光部40は、透過光路16を通して測定室13から出射する第1測定光及び第2測定光の光量を検出する。つまり、第2受光部40は、測定対象に吸収又は反射されることなく直進した第1測定光又は第2測定光の強度を検出する。第2受光部40は、透過光路16から出射する光を受光してその強度に応じた電気信号を生成する第2受光素子41と、第2受光素子41が実装される第2検出回路基板42と、を有する。第2受光部40は、透過光路16への外光の入射を防止する第2受光部カバー43を有することが好ましい。
【0030】
第2受光素子41は、第1受光素子31と同様に、典型的にはフォトダイオードによって構成される。第2検出回路基板42は、第1検出回路基板32と同様に、第2受光素子41が出力する信号を増幅し、必要に応じてディジタル信号に変換することにより、制御装置70に入力される検出信号を出力する検出回路を有する。第2受光部40は、測定対象に吸収又は反射されることなく直進した第1測定光又は第2測定光の強度を検出する。
【0031】
供給ライン50は、供給流路17から測定室13に新たに測定される被測定水を供給する。供給ライン50は、制御装置70によって制御され、被測定水の供給を遮断する開閉弁51を有する。
【0032】
排出ライン60は、測定室13から測定済みの被測定水を排出する。具体的には、排出ライン60は、供給ライン50から新たな被測定水を供給したときに、被測定水をオーバーフローさせるよう、排出流路18から下方に延びる。
【0033】
制御装置70は、投光部20及び供給ライン50を制御し、第1受光素子31及び第2受光素子41が受光した光の強度から、被測定水中の測定対象の濃度を算出する。制御装置70は、例えばメモリ、CPU、入出力インターフェイス等を有するコンピュータ装置に適切なプログラムを実行させることにより実現できる。
【0034】
制御装置70は、測定制御部71と、濃度算出部72と、常時開放判定部73と、休止時開放判定部74と、を備える。なお、測定制御部71、濃度算出部72、常時開放判定部73及び休止時開放判定部74は、制御装置70の機能を類別したものであって、物理的構成及びプログラム構成において明確に区別できるものでなくてもよい。
【0035】
測定制御部71は、投光部20の第1光源21及び第2光源22に順番に測定光を投光させ、濃度算出部72に第1受光部30及び第2受光部40の検出値に基づいて被測定水における測定対象の濃度を算出させる。また、測定制御部71は、投光部20による測定光の投光及び濃度算出部72による測定対象の濃度算出を行う前に、所定時間だけ開閉弁51を開放することにより、測定室13の中の被測定水を入れ換える。さらに、測定制御部71は、常時開放判定部73及び休止時開放判定部74の少なくともいずれかが測定室13の蓋部131が開放状態であると判断している間は、開閉弁51の開放を禁止する。
【0036】
基本的な考え方として、第1光源21から第1測定光を投光したときの第1受光素子31が受光する第2波長の光は、被測定水中の測定対象の蛍光によるものであるため、第1測定光の投光時の第1受光素子31の受光強度から被測定水中の測定対象の濃度が算出できる。しかしながら、投光路14から測定光路15に至るまでの被測定水中の光路において第1測定光及び測定対象の蛍光が測定対象及び着色等によって吸光されることにより、第1受光素子31の受光強度が正確に測定対象の濃度と対応しなくなり得る。このため、濃度算出部72は、第1測定光の投光時の第2受光素子41の受光強度、第2測定光の投光時の第1受光素子31の受光強度及び第2受光素子41の受光強度に基づいて、吸光及び散乱による受光強度の誤差を補正して正確な測定対象の濃度を算出する。
【0037】
図2に、制御装置70によって制御される蛍光測定装置1における測定対象の濃度測定の手順を示す。濃度測定は、第1波長測定工程(ステップS1)、第2波長測定工程(ステップS2)、基準濃度算出工程(ステップS3)、第1波長吸光度算出工程(ステップS4)、第2波長吸光度算出工程(ステップS5)、吸光度補正工程(ステップS6)、散乱度算出工程(ステップS7)、及び散乱度補正工程(ステップS8)を備える。
【0038】
ステップS1の第1波長測定工程では、第1光源21から第1波長の第1測定光を投光し、第1受光素子31及び第2受光素子41の受光強度を測定する。
【0039】
ステップS2の第2波長測定工程では、第2光源22から第2波長の第2測定光を投光し、第1受光素子31及び第2受光素子41の受光強度を測定する。
【0040】
ステップS3の基準濃度算出工程では、第1波長測定工程で測定した第1受光素子31の受光強度に基づいて、着色等の光の吸収がないものと仮定した測定対象の濃度である基準濃度を算出する。具体的には、基準濃度は、第1波長測定工程で測定した第1受光素子31の受光強度に比例する値として算出することができる。ここで算出される基準濃度は、着色等の影響に起因する誤差を含む値となる。
【0041】
ステップS4の第1波長吸光度算出工程では、第1波長測定工程で測定した第2受光素子41の受光強度に基づいて、被測定水の第1波長の吸光度である第1吸光度を算出する。具体的には、予め測定室13に純水を貯留した状態で測定される第2受光素子41の受光強度(ブランク)に対する第1波長測定工程で測定した第2受光素子41の受光強度の比率から、被測定水の第1吸光度を算出できる。なお、ここで算出される第1吸光度は、厳密に正確な光の吸収度合いを示すものではなく光の散乱による誤差を含み得る。
【0042】
ステップS5の第2波長吸光度算出工程では、第2波長測定工程で測定した第2受光素子41の受光強度に基づいて、第1波長測定工程と同様の手法により被測定水の第2波長の吸光度である第2吸光度を算出する。この第2吸光度も、光の散乱による誤差を含み得る。
【0043】
ステップS6の吸光度補正工程では、基準濃度算出工程で算出した基準濃度を、第1波長吸光度算出工程で算出した第1吸光度及び第2波長吸光度算出工程で算出した第2吸光度によって補正する。第1波長測定工程における第1受光素子31の受光強度の光の吸収による低下は、投光路14から測定室13の中心部(投光路14の軸と測定光路15の軸との交点)までの光路での被測定水による第1測定光の吸光と、測定室13の中心部から測定光路15までの光路での被測定水による蛍光の吸光と、に分けて考えられる。
【0044】
このため、投光路14から測定室13の中心部までの光路における第1測定光の吸光は第1吸光度に基づいて補正することができ、測定室13の中心部から測定光路15までの光路における蛍光の吸光は、第2吸光度に基づいて補正することができる。計算を容易にするために、投光路14から測定室13の中心部までの光路長、測定室13の中心部から透過光路16までの光路長、及び測定室13の中心部から測定光路15までの光路長が等しいことが好ましい。
【0045】
ステップS7の散乱度算出工程では、第2波長測定工程で測定した第1受光素子31の受光強度に基づいて、測定室13の中心部以外の領域で励起された蛍光が被測定水における光の散乱により第1受光素子31に到達することにより生じる第1受光素子31の受光強度のオフセットを示す散乱度を算出する。
【0046】
ステップS8の散乱度補正工程では、散乱度算出工程で算出した散乱度に基づいて、吸光度補正工程で基準濃度を補正した値をさらに補正する。これによって、被測定水中の測定対象の濃度の正確な値を算出できる。
【0047】
常時開放判定部73は、第1受光素子31が所定の閾値以上の光を検出している場合には測定室13の蓋部131が開放状態であると判断する。つまり、常時開放判定部73は、第1光源21及び第2光源22が発し得る光量の最大値において第1受光素子31が受光し得る光量の最大値として想定される閾値を超えると判断する基準値として予め設定される閾値以上の光を第1受光素子31が検出する場合には、蓋体12が取り外されており、外光が測定室13及び測定光路15を通して第1受光素子31に入射していると判断する。
【0048】
休止時開放判定部74は、投光部20により測定光(第1測定光及び第2測定光)を投光していないときに第1受光部30又は第2受光部40が光を検出している場合、つまり第1受光素子31及び第2受光素子41の少なくとも一方が受光している場合には、測定室13の蓋部131が開放状態であると判断する。
【0049】
以上のように、被測定水を貯留する測定室13と、測定室13に第1方向に光を投光する投光路14と、測定室13から第1方向と異なる方向に光を出射する測定光路15と、測定室13から投光路14の延長線上に光を出射する透過光路16と、投光路14を通して測定室13に測定対象を励起して蛍光を生じさせる第1波長の第1測定光を投光する第1光源21と、投光路14を通して測定室13に測定対象の蛍光の波長と同一又は近似する第2波長の第2測定光を投光する第2光源22と、測定光路15から出射する光を受光する第1受光素子31と、透過光路16から出射する光を受光する第2受光素子41と、を備える蛍光測定装置1は、被測定水中での光の吸収及び拡散を考慮して、比較的正確に測定対象の濃度を測定できる。
【0050】
また、蛍光測定装置1は、第1光源21及び第2光源22の少なくとも一方から測定室13への投光量を調節する光量調節機構24を備えるため、第1測定光の投光時の測定対象の蛍光の強度と第2測定光の投光時の着色等による散乱光の強度とを第1受光素子31の測定可能範囲内に収めることができる。このため、蛍光測定装置1は、同じ第1受光素子31によって蛍光の強度と散乱光の強度を測定することができるので、受光素子の数が少なく、構成が簡単である。また、蛍光測定装置1は、蛍光の強度と散乱光の強度を同一の光路で測定するため、装置の部分的な汚れ等による測定誤差が発生しにくい。
【0051】
また、蛍光測定装置1は、測定室13の蓋部131の開放を検知する常時開放判定部73及び休止時開放判定部74を備えるため、蛍光測定装置1は、蓋部131を開放している状態で供給ライン50から測定室13に新たに被測定水が供給され、開放されている蓋部131から被測定水が外部に噴出するトラブルを防止できる。
【0052】
また、蛍光測定装置1は、測定光を投光する前に所定時間だけ開閉弁51を開放し、開閉弁51を閉鎖した状態で測定光を投光して濃度を測定するので、開閉弁51が開放される時間が短く、開閉弁51が開放されているときに誤って蓋部131が開放されるリスクを低減できる。
【0053】
また、蛍光測定装置1は、第1検出回路基板32及び第2検出回路基板42に受光部30,40の検出信号を増幅する増幅回路を設けることで、測定光の強度を小さく設定して相対的に外光の検出感度を向上できるので、蓋部131の開放をより確実に検知できる。
【0054】
以上、本発明の蛍光測定装置の好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0055】
例として、基準濃度、第1吸光度、第2吸光度及び散乱度の少なくともいずれかを算出することなく、受光強度の検出値を代入して測定対象の濃度を直接算出する計算式を用いてもよい。
【0056】
また、第2波長の光を遮断せず、第1波長の光だけを遮断するフィルタを設けることが難しい場合等、第1測定部にフィルタを設けず、第2測定光による測定値から算出される第2波長の散乱度と第1波長における散乱度が同程度であるものとして補正を行ってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 蛍光測定装置
10 ハウジング
11 本体容器
111 内ねじ
12 蓋体
121 外ねじ
13 測定室
131 蓋部
14 投光路
15 測定光路
16 透過光路
17 供給流路
18 排出流路
20 投光部
21 第1光源
22 第2光源
23 投光回路基板
24 光量調節機構
25 透光部カバー
30 第1受光部
31 第1受光素子
32 第1検出回路基板
33 フィルタ
34 第1受光部カバー
40 第2受光部
41 第2受光素子
42 第2検出回路基板
43 第2受光部カバー
50 供給ライン
51 開閉弁
60 排出ライン
70 制御装置
71 測定制御部
72 濃度算出部
73 常時開放判定部
74 休止時開放判定部