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特開2023-20644絶縁皮膜除去方法及び絶縁皮膜除去装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020644
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】絶縁皮膜除去方法及び絶縁皮膜除去装置
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/12 20060101AFI20230202BHJP
   H02K 15/04 20060101ALN20230202BHJP
【FI】
H02G1/12 053
H02K15/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126124
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】399107937
【氏名又は名称】日本電産マシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】谷口 諒敏
(72)【発明者】
【氏名】森田 真幸
【テーマコード(参考)】
5G353
5H615
【Fターム(参考)】
5G353AC02
5G353CA05
5G353DA01
5H615AA01
5H615PP14
5H615QQ03
5H615SS08
(57)【要約】
【課題】絶縁皮膜によって表面を被覆された導線から前記絶縁皮膜を除去する絶縁皮膜除去方法において、前記導線から前記絶縁皮膜を容易に分離させることにより、絶縁皮膜除去の作業性を向上可能な方法を得る。
【解決手段】絶縁皮膜除去方法は、延伸方向に延びるとともに絶縁皮膜Yによって表面を被覆された導線Xから、絶縁皮膜Yを除去する絶縁皮膜除去方法である。この絶縁皮膜除去方法は、絶縁皮膜Yに導線Xの延伸方向に延びる切れ込み部Tを形成する切れ込み部形成工程S1と、第1切削工具41、第2切削工具51、第3切削工具61,71によって、導線Xから絶縁皮膜Yを除去する絶縁皮膜除去工程S2と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸方向に延びるとともに絶縁皮膜によって表面を被覆された導線に対して、前記絶縁皮膜を除去する絶縁皮膜除去方法であって、
前記絶縁皮膜に前記導線の延伸方向に延びる切れ込み部を形成する切れ込み部形成工程と、
切削工具によって、前記絶縁皮膜を除去する絶縁皮膜除去工程と、
を有する、絶縁皮膜除去方法。
【請求項2】
請求項1に記載の絶縁皮膜除去方法において、
前記切れ込み部の前記延伸方向の長さは、
前記絶縁皮膜除去工程において除去される前記絶縁皮膜の前記延伸方向の長さ以上である、
絶縁皮膜除去方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の絶縁皮膜除去方法において、
前記切れ込み部形成工程では、
前記導線を前記延伸方向に対して直交する断面で見て、前記導線に対して、前記導線の断面中心を含む第1中心線を挟んで前記導線の両側に、前記第1中心線に向かって、前記切れ込み部を形成する、
絶縁皮膜除去方法。
【請求項4】
請求項3に記載の絶縁皮膜除去方法において、
前記切れ込み部形成工程では、
前記導線の前記断面において、前記導線に対し、前記第1中心線の延伸方向に直交する方向から見て少なくとも一部が重なる位置に、前記切れ込み部を形成する、
絶縁皮膜除去方法。
【請求項5】
請求項1に記載の絶縁皮膜除去方法において、
前記切れ込み部形成工程では、
前記導線を前記延伸方向に対して直交する断面で見て、前記導線に対して、前記導線の断面中心を含む第1中心線に直交し且つ前記導線の断面中心を含む第2中心線に対して前記第1中心線の延伸方向の一側の位置に、前記第2中心線に向かって、前記切れ込み部を形成する、
絶縁皮膜除去方法。
【請求項6】
請求項5に記載の絶縁皮膜除去方法において、
前記切れ込み部形成工程では、
前記導線を前記断面で見て、前記導線に対して、前記第1中心線を挟んで前記導線の両側に、それぞれ、前記第1中心線に向かって、前記切れ込み部を形成する、
絶縁皮膜除去方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の絶縁皮膜除去方法において、
前記絶縁皮膜除去工程は、
前記導線を前記延伸方向に対して直交する断面で見て、第1切削工具によって、前記絶縁皮膜の一部を、前記延伸方向に交差する方向で且つ前記切れ込み部を通過する方向に除去する第1絶縁皮膜除去工程と、
前記導線を前記断面で見て、第2切削工具によって、前記絶縁皮膜の一部を、前記第1絶縁皮膜除去工程における前記絶縁皮膜の除去の方向とは交差する方向に除去する第2絶縁皮膜除去工程とを有する、
絶縁皮膜除去方法。
【請求項8】
請求項7に記載の絶縁皮膜除去方法において、
前記第1絶縁皮膜除去工程は、前記第1切削工具によって、前記延伸方向に交差する方向で且つ前記切れ込み部に向かう方向に、前記絶縁皮膜の一部を除去し、
前記第2絶縁皮膜除去工程は、前記第1絶縁皮膜除去工程の後に行われる、
絶縁皮膜除去方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一つに記載の絶縁皮膜除去方法において、
前記導線は、前記延伸方向に交差する断面が矩形状である平角導線である、
絶縁皮膜除去方法。
【請求項10】
請求項9に記載の絶縁皮膜除去方法において、
前記切れ込み部形成工程では、
前記平角導線を前記延伸方向に対して直交する断面で見て、前記平角導線の一辺に位置する前記絶縁皮膜に前記導線の延伸方向に延びる切れ込み部を形成し、
前記絶縁皮膜除去工程は、
前記平角導線を前記断面で見て、前記平角導線に対して、前記延伸方向に交差する方向で且つ前記切れ込み部を通過する方向に、第1切削工具を相対的に移動させることにより、前記平角導線の表面を被覆した前記絶縁皮膜の一部を除去する第1絶縁皮膜除去工程と、
前記平角導線を前記断面で見て、前記絶縁皮膜に対して、前記第1絶縁皮膜除去工程における前記第1切削工具及び前記絶縁皮膜の相対移動方向と交差する方向に、第2切削工具を相対的に移動させることにより、前記絶縁皮膜の一部を除去する第2絶縁皮膜除去工程と、
第3切削工具によって、前記絶縁皮膜のうち前記平角導線の角部を覆う部分の少なくとも一部を除去する第3絶縁皮膜除去工程と、
を有する、
絶縁皮膜除去方法。
【請求項11】
延伸方向に延びて絶縁皮膜によって表面を被覆された導線から、前記絶縁皮膜を除去する絶縁皮膜除去装置であって、
前記導線を前記延伸方向に搬送する導線搬送部と、
前記絶縁皮膜に前記導線の延伸方向に延びる切れ込み部を形成する切れ込み形成用工具を有する切れ込み形成部と、
前記導線から前記絶縁皮膜を除去する切削工具を有する絶縁皮膜除去部と、
を有し、
前記切れ込み形成部は、前記導線搬送部による前記導線の搬送方向において、前記絶縁皮膜除去部よりも上流側に位置する、
絶縁皮膜除去装置。
【請求項12】
請求項11に記載の絶縁皮膜除去装置において、
前記絶縁皮膜除去部は、
前記導線を前記延伸方向に対して直交する断面で見て、前記導線に対して、前記延伸方向に交差する方向で且つ前記切れ込み部を通過する方向に相対的に移動させることにより、前記導線の表面を被覆した前記絶縁皮膜の一部を除去する第1切削工具を有する第1絶縁皮膜除去部と、
前記導線を前記断面で見て、前記導線に対して、前記第1切削工具及び前記絶縁皮膜の相対移動方向と交差する方向に相対的に移動させることにより、前記絶縁皮膜の一部を除去する第2切削工具を有する第2絶縁皮膜除去部と、
を有し、
前記第1絶縁皮膜除去部は、前記搬送方向において、前記第2絶縁皮膜除去部よりも上流側に位置する、
絶縁皮膜除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁皮膜除去方法及び絶縁皮膜除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁皮膜によって表面を被覆された導線から前記絶縁皮膜を除去する絶縁皮膜除去方法として、例えば、特許文献1に開示されている絶縁皮膜除去方法が知られている。
【0003】
前記特許文献1に開示されている絶縁皮膜除去方法では、第1の除去工程と、第2の除去工程と、第3の除去工程とを有する。前記第1の除去工程では、平角導体が他の平角導体と接合する接合面と、前記接合面と対向する対向面とに被覆された絶縁皮膜を除去する。前記第2の除去工程では、前記接合面と、前記接合面及び前記対向面と隣り合う側面とにバリが発生するように、前記平角導体の角を除去する。前記第3の除去工程では、前記接合面側にバリが発生するように、前記側面に被覆された前記絶縁皮膜を除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-061419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の特許文献1に開示されている絶縁皮膜除去方法では、絶縁皮膜によって表面を被覆された導線から前記絶縁皮膜を除去する際に、前記絶縁皮膜が前記導線から分離されずに前記導線に繋がった状態になる可能性がある。そのため、前記導線から前記絶縁皮膜を効率良く除去することができず、絶縁皮膜除去の作業性があまり良くないという問題が生じていた。
【0006】
本発明の目的は、絶縁皮膜によって表面を被覆された導線から前記絶縁皮膜を除去する絶縁皮膜除去方法において、前記導線から前記絶縁皮膜を容易に分離させることにより、絶縁皮膜除去の作業性を向上可能な方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る絶縁皮膜除去方法は、延伸方向に延びるとともに絶縁皮膜によって表面を被覆された導線から、前記絶縁皮膜を除去する絶縁皮膜除去方法である。この絶縁皮膜除去方法は、前記絶縁皮膜に前記導線の延伸方向に延びる切れ込み部を形成する切れ込み部形成工程と、切削工具によって、前記導線から前記絶縁皮膜を除去する絶縁皮膜除去工程と、を有する。
【0008】
本発明の一実施形態に係る絶縁皮膜除去装置は、延伸方向に延びて絶縁皮膜によって表面を被覆された導線から、前記絶縁皮膜を除去する絶縁皮膜除去装置である。この絶縁皮膜除去装置は、前記導線を前記延伸方向に搬送する導線搬送部と、前記絶縁皮膜に前記導線の延伸方向に延びる切れ込み部を形成する切れ込み形成用工具を有する切れ込み形成部と、前記導線から前記絶縁皮膜を除去する切削工具を有する絶縁皮膜除去部と、を有する。前記切れ込み形成部は、前記導線搬送部による前記導線の搬送方向において、前記絶縁皮膜除去部よりも上流側に位置する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態に係る絶縁皮膜除去方法によれば、前記導線から前記絶縁皮膜を容易に分離させることにより、絶縁皮膜除去の作業性を向上可能な方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る絶縁皮膜除去方法の概略を示す模式図である。
図2図2は、絶縁皮膜除去方法において、導線の角部を被覆する絶縁皮膜の除去の概略を示す模式図である。
図3図3は、導線の延伸方向において導線を覆う絶縁皮膜を除去する範囲と切れ込み部の長さとの関係を示す斜視図である。
図4図4は、一対の切れ込み部が、導線を延伸方向に直交する断面で見て、第2中心線を挟んで第1方向の両側に形成された状態を示す図である。
図5図5は、絶縁皮膜除去装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。なお、図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0012】
なお、以下の説明では、導線の延びる方向を「延伸方向」、前記導線における前記延伸方向に直交する断面において、短手方向を「第1方向」、長手方向を「第2方向」とそれぞれ称する。ただし、この方向の定義により、導線及び該導線を用いたモータなどの使用時の向きを限定する意図はない。
【0013】
また、以下の説明において、“固定”、“接続”及び“取り付ける”等(以下、固定等)の表現は、部材同士が直接、固定等されている場合だけでなく、他の部材を介して固定等されている場合も含む。すなわち、以下の説明において、固定等の表現には、部材同士の直接的及び間接的な固定等の意味が含まれる。
【0014】
(絶縁皮膜除去方法)
図1は、本発明の実施形態に係る絶縁皮膜除去方法の概略を模式的に示す図である。絶縁皮膜除去方法は、例えばモータのステータコイルを構成する導線Xを覆う絶縁皮膜Yの一部を除去する方法である。以下では、絶縁皮膜Yによって覆われた導線を、絶縁皮膜付き導線100という。
【0015】
本実施形態では、導線Xは、例えば、導線Xの延伸方向に直交する断面が長方形である。すなわち、本実施形態の導線Xは、平角導線である。よって、導線Xは、前記延伸方向に直交する断面で見て、導線Xの断面中心Cに対し、第1方向に位置する一対の第1側面部X1と、前記第1方向に直交する第2方向に位置する一対の第2側面部X2とを有する。
【0016】
絶縁皮膜Yは、前記延伸方向に直交する断面で見て、導線Xの側面を覆う長方形状である。詳しくは、絶縁皮膜Yは、前記延伸方向に直交する断面で見て、導線Xの断面中心Cに対し、第1方向に位置し且つ導線Xの第1側面部X1を覆う一対の第1皮膜側面部Y1と、前記第1方向に直交する第2方向に位置し且つ導線Xの第2側面部X2を覆う一対の第2皮膜側面部Y2と、導線Xの角部を覆う4つの皮膜角部Y3を有する。
【0017】
なお、導線Xの断面中心は、導線Xにおいて延伸方向に直交する断面の図形中心である。
【0018】
本実施形態の絶縁皮膜除去方法では、まず、絶縁皮膜付き導線100に、一対の切れ込み形成用工具21によって、一対の切れ込み部Tを形成する。この工程が、本発明の切れ込み部形成工程S1である。一対の切れ込み形成用工具21は、両刃の工具が好ましいが、片刃の工具であってもよい。また、一対の切れ込み部Tは、一つの切れ込み形成用工具によって形成されてもよい。
【0019】
具体的には、一対の切れ込み形成用工具21を用いて、導線Xの下側の両角部に対して導線Xの内方に向かって斜めに一対の切れ込み部Tを形成する。すなわち、一対の切れ込み部Tは、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、絶縁皮膜Yにおいて第1皮膜側面部Y1と第2皮膜側面部Y2との間に位置する皮膜角部Y3に形成されている。一対の切れ込み部Tの深さは、絶縁皮膜Yの厚みよりも大きい。
【0020】
図3は、導線Xの延伸方向において、絶縁皮膜Yを除去する範囲と切れ込み部Tとの関係を示す図である。図3に示すように、一対の切れ込み部Tは、導線Xにおいて端部から延伸方向に所定長さを有する部分に形成される。前記延伸方向において、一対の切れ込み部Tの長さは、絶縁皮膜Yが除去された範囲である絶縁皮膜除去範囲よりも長い。すなわち、一対の切れ込み部Tの前記延伸方向の長さは、後述する絶縁皮膜除去工程において除去される絶縁皮膜Yの前記延伸方向の長さ以上である。これにより、導線Xに切れ込み部Tを形成して、後述する絶縁皮膜除去工程によって、導線Xから絶縁皮膜Yを容易に除去することができる。なお、前記延伸方向において絶縁皮膜Yが除去される範囲は、例えば10mmであり、切れ込み部Tの前記延伸方向の長さは、例えば11mmである。
【0021】
図1に示すように、本実施形態では、一対の切れ込み部Tは、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、導線Xの内方に向かって、導線Xの断面中心を短手方向に通過する第1中心線C1に対して45度の方向に延びている。第1中心線C1は、導線Xの断面中心を第1方向に延びる線である。切れ込み部Tと第1中心線C1とがなす角度は、前記断面における切れ込み部Tの幅方向の中心を通過する切れ込み中心線と第1中心線C1とがなす角度である。
【0022】
本実施形態では、一対の切れ込み部Tは、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、導線Xに対し、第1中心線C1を挟んで第2方向の両側に、第1中心線C1に向かって延びるように形成される。図4に示すように、一対の切れ込み部Tは、前記断面で見て、導線Xに対し、導線Xの断面中心を長手方向に通過し且つ第1中心線C1に直交する第2中心線C2を挟んで第1方向の両側に、第1中心線C1に向かって延びるように形成されていてもよい。
【0023】
なお、第1中心線C1は、導線Xの断面中心を長手方向に通過する直線であってもよいし、第2中心線C2は、導線Xの断面中心を短手方向に通過する直線であってもよい。
【0024】
本実施形態では、一対の切れ込み部Tは、導線Xを延伸方向に直交する断面において、第1中心線C1の延伸方向に直交する方向から見て少なくとも一部が重なる位置に形成されている。
【0025】
また、本実施形態では、一対の切れ込み部Tは、前記断面において、第2中心線C2に対して第1中心線C1の延伸方向の一側の位置に、第2中心線C2に向かって延びている。
【0026】
なお、切れ込み部Tは、導線Xの他の角部に形成されてもよいし、導線Xにおいて角部以外の部分に形成されてもよい。また、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、切れ込み部Tが第1中心線C1に対してなす角度は45度以外の角度であってもよい。
【0027】
次に、一対の第1切削工具41を、一対の切れ込み部Tが形成された絶縁皮膜付き導線100に対して、第1方向で且つ一対の切れ込み部Tとは反対側から一対の切れ込み部Tをそれぞれ通過する方向に移動させることにより、絶縁皮膜付き導線100から絶縁皮膜Yの一対の第2皮膜側面部Y2を同時に切り落とす。この工程が、第1絶縁皮膜除去工程SAである。
【0028】
一対の第1切削工具41は、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、前記第2方向に第1間隔で並んでいる。一対の第1切削工具41は、絶縁皮膜付き導線100に対して前記第1方向に移動する。図1において、一対の第1切削工具41は、白抜き矢印の方向である。
【0029】
本実施形態の一対の第1切削工具41は、厚み方向の一側のみに刃部を有する片刃の工具である。一対の第1切削工具41の刃部は、絶縁皮膜付き導線100から第2皮膜側面部Y2を切り落とす際には、絶縁皮膜付き導線100における第2皮膜側面部Y2側を通過する。これにより、一対の第1切削工具41によって、第2皮膜側面部Y2が除去された導線Xの前記第2方向の寸法精度を確保することができる。
【0030】
一対の第1切削工具41における前記第1間隔は、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、一対の切れ込み部Tにおける前記第2方向の最小間隔よりも大きい。一対の第1切削工具41における前記第1間隔は、前記第2方向において、一対の第1切削工具41における刃部の先端同士の間隔である。一対の切れ込み部Tにおける前記第2方向の最小間隔は、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、前記第2方向における一対の切れ込み部Tの底部の最短距離である。
【0031】
これにより、一対の第1切削工具41は、絶縁皮膜付き導線100から絶縁皮膜Yの第2皮膜側面部Y2を切り落とす際に、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、一対の切れ込み部Tをそれぞれ通過する。したがって、一対の第1切削工具41によって、導線Xから絶縁皮膜Yの第2皮膜側面部Y2を切り落とす際に、第2皮膜側面部Y2は導線Xから容易に分離する。よって、絶縁皮膜Yを導線Xから容易に除去することができ、絶縁皮膜除去作業の作業性を向上することができる。
【0032】
なお、第2皮膜側面部Y2は、一つの第1切削工具41によって、絶縁皮膜付き導線100から切り落とされてもよい。また、一対の第2皮膜側面部Y2は、絶縁皮膜付き導線100から順に切り落とされてもよい。
【0033】
次に、一対の第2切削工具51を、第2皮膜側面部Y2が除去された絶縁皮膜付き導線100に対して、第1皮膜側面部Y1に沿って第1方向に移動させることにより、絶縁皮膜付き導線100から絶縁皮膜Yの第1皮膜側面部Y1を同時に切り落とす。この工程が、第2絶縁皮膜除去工程SBである。
【0034】
一対の第2切削工具51は、前記第1方向に第2間隔で並んでいる。一対の第2切削工具51は、導線Xに対して前記第2方向に移動する。図1において、一対の第2切削工具51は、白抜き矢印の方向である。
【0035】
本実施形態の一対の第2切削工具51は、厚み方向の一側のみに刃部を有する片刃の工具である。一対の第2切削工具51の刃部は、絶縁皮膜付き導線100から第1皮膜側面部Y1を切り落とす際には、絶縁皮膜付き導線100における第1皮膜側面部Y1側を通過する。これにより、一対の第2切削工具51によって、第1皮膜側面部Y1が除去された導線Xの前記第1方向の寸法精度を確保することができる。
【0036】
一対の第2切削工具51における前記第2間隔は、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、前記第1方向における一対の第1皮膜側面部Y1の最小間隔よりも小さい。一対の第2切削工具51における前記第2間隔は、一対の第2切削工具51における刃部の先端同士の間隔である。
【0037】
なお、第1皮膜側面部Y1は、一つの第2切削工具51によって、絶縁皮膜付き導線100から切り落とされてもよい。また、一対の第1皮膜側面部Y1は、絶縁皮膜付き導線100から順に切り落とされてもよい。
【0038】
図2は、導線Xの角部を覆う絶縁皮膜Yを除去する方法を模式的に示す図である。図2に示すように、一対の第3切削工具61,71によって、第1皮膜側面部Y1及び第2皮膜側面部Y2が除去された導線Xの角部を覆う皮膜角部Y3を除去する。
【0039】
具体的には、一対の第3切削工具61によって、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、導線Xの一方の対角線上に位置する角部を覆う一対の皮膜角部Y3を、切り落とす。一対の第3切削工具71によって、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、絶縁皮膜付き導線100の他方の対角線上に位置する角部を覆う一対の皮膜角部Y3を、切り落とす。一対の第3切削工具61,71によって皮膜角部Y3を切り落とす工程が、第3絶縁皮膜除去工程SCである。
【0040】
一対の第3切削工具61,71は、それぞれ、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、導線Xの対角線の延伸方向に第3間隔で並んでいる。一対の第3切削工具61の移動方向は、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、前記他方の対角線の延伸方向である。一対の第3切削工具71の移動方向は、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、前記一方の対角線の延伸方向である。図2において、一対の第3切削工具61,71の移動方向は、白抜き矢印の方向である。
【0041】
一対の第3切削工具61,71における前記第3間隔は、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、前記対角線の両端に位置する角部の最大間隔よりも小さい。本実施形態の一対の第3切削工具61,71は、それぞれ、厚み方向の一側のみに刃部を有する片刃の工具である。一対の第3切削工具61,71における前記第3間隔は、一対の第3切削工具61,71における刃部の先端同士の間隔である。
【0042】
なお、上述のように導線Xから絶縁皮膜Yを除去する工程が、本発明の絶縁皮膜除去工程S2である。絶縁皮膜除去工程S2は、第1絶縁皮膜除去工程SAと、第2絶縁皮膜除去工程SBと、第3絶縁皮膜除去工程SCとを有する。
【0043】
また、絶縁皮膜除去工程S2において用いられる第1切削工具41、第2切削工具51及び第3切削工具61,71が、本発明の切削工具である。
【0044】
以上の方法により、絶縁皮膜Yが、導線Xの表面から除去される。しかも、絶縁皮膜付き導線100に切れ込み部Tを形成することにより、一対の第1切削工具41によって第2皮膜側面部Y2を切り落とす際に、導線X対して第2皮膜側面部Y2を容易に分離させることができる。
【0045】
このように、本実施形態の絶縁皮膜除去方法は、延伸方向に延びるとともに絶縁皮膜Yによって表面を被覆された導線Xから、絶縁皮膜Yを除去する絶縁皮膜除去方法である。この絶縁皮膜除去方法は、絶縁皮膜Yに導線Xの延伸方向に延びる切れ込み部Tを形成する切れ込み部形成工程S1と、第1切削工具41、第2切削工具51、第3切削工具61,71によって、導線Xから絶縁皮膜Yを除去する絶縁皮膜除去工程S2と、を有する。
【0046】
導線Xの表面を被覆する絶縁皮膜Yは、一般的に、樹脂製であり且つ薄い。そのため、切削工具によって、導線Xから絶縁皮膜Yを除去する場合、前記切削工具によって絶縁皮膜Yを切断できず、絶縁皮膜Yが導線Xから分離しない可能性がある。
【0047】
これに対し、本実施形態の絶縁皮膜除去方法により、導線Xの表面を被覆する絶縁皮膜Yに切れ込み部Tが形成される。よって、第1切削工具41によって、絶縁皮膜Yを導線Xから除去する際に、絶縁皮膜Yが切れ込み部Tで導線Xから容易に分離する。したがって、導線Xから絶縁皮膜Yを容易に除去することができる。
【0048】
また、本実施形態の切れ込み部形成工程S1では、導線Xを前記延伸方向に対して直交する断面で見て、導線Xに対して、導線Xの断面中心を含む第1中心線C1を挟んで導線Xの両側に、前記第1中心線に向かって、切れ込み部Tを形成する。本実施形態では、導線Xの両側は、導線Xにおいて、第1中心線C1に対して第2方向の両側を意味する。なお、第1中心線が導線Xの断面中心を長手方向に通過する直線の場合には、導線Xにおいて、導線Xの両側は、第1中心線に対して第1方向の両側を意味する。
【0049】
これにより、導線Xをその延伸方向に対して直交する断面で見て、導線Xの断面中心を含む第1中心線C1を挟んで導線Xの両側に、第1中心線C1に向かう切れ込み部Tを形成することができる。よって、第1中心線C1を挟んで導線Xの両側を覆う絶縁皮膜Yを、絶縁皮膜除去工程S2で第1切削工具41によって切り落とすことにより、切れ込み部Tで容易に分離させることができる。
【0050】
本実施形態の切れ込み部形成工程S1では、導線Xの前記断面において、導線Xに対し、第1中心線C1の延伸方向に直交する方向から見て少なくとも一部が重なる位置に、切れ込み部Tを形成する。
【0051】
これにより、導線Xを前記断面で見て、導線Xの断面中心を含む第1中心線C1を挟んで導線Xの両側で且つ第1中心線C1の延伸方向の同じ位置に、第1中心線C1に向かう切れ込み部Tを形成することができる。よって、第1中心線C1を挟んで導線Xの両側を覆う絶縁皮膜Yを、絶縁皮膜除去工程S2で第1切削工具41によって切り落とすことにより、切れ込み部Tで容易に分離させることができる。
【0052】
本実施形態の切れ込み部形成工程S1では、導線Xを延伸方向に対して直交する断面で見て、導線Xに対して、導線Xの断面中心を含む第1中心線C1に直交し且つ導線Xの断面中心を含む第2中心線C2に対して第1中心線C1の延伸方向の一側の位置に、第2中心線C2に向かって、切れ込み部Tを形成する。
【0053】
これにより、導線Xを前記断面で見て、第2中心線C2に対して第1中心線C1の延伸方向の一側の位置に、第2中心線C2に向かう切れ込み部Tを形成することができる。よって、導線Xに対して、切れ込み部Tは同じ方向に向いているため、導線Xに切れ込み部Tを容易に形成することができる。
【0054】
また、本実施形態では、導線Xを延伸方向に対して直交する断面で見て、導線Xに対して、第2中心線C2に対して第1中心線C1の延伸方向の一側の位置に、第2中心線C2に向かって切れ込み部Tを形成する切れ込み部形成工程S1において、導線Xを前記断面で見て、導線Xに対して、第1中心線C1を挟んで導線Xの両側に、それぞれ、第1中心線C1に向かって、切れ込み部Tを形成する。
【0055】
これにより、導線Xに、第1中心線C1及び第2中心線C2に対して斜めに延びる切れ込み部Tを形成することができる。よって、導線Xの表面を覆う絶縁皮膜Yを第1切削工具41によって切り落とす際に、導線Xの前記断面において、第1切削工具41が切れ込み部Tをより確実に通過することができる。したがって、導線Xから絶縁皮膜Yをより容易に除去することができる。
【0056】
また、本実施形態では、絶縁皮膜除去工程S2は、導線Xを前記延伸方向に対して直交する断面で見て、第1切削工具41によって、絶縁皮膜Yの一部を、前記延伸方向に交差する方向で且つ切れ込み部Tを通過する方向に除去する第1絶縁皮膜除去工程SAと、導線Xを前記断面で見て、第1切削工具41によって、絶縁皮膜Yの一部を、第1絶縁皮膜除去工程SAにおける絶縁皮膜Yの除去の方向とは交差する方向に除去する第2絶縁皮膜除去工程SBとを有する。
【0057】
これにより、導線Xの表面を覆う絶縁皮膜Yを、絶縁皮膜Yに形成された切れ込み部Tを利用して、第1切削工具41によって容易に除去することができる。すなわち、第1絶縁皮膜除去工程SAでは、第1切削工具41によって、前記導線の延伸方向に交差する方向で且つ前記切れ込み部を通過する方向に前記導線から前記絶縁皮膜を除去し、第2絶縁皮膜除去工程では、第2切削工具51によって、第1絶縁皮膜除去工程SAにおける絶縁皮膜Yの除去の方向とは交差する方向に導線Xから絶縁皮膜Yを除去する。よって、導線Xから絶縁皮膜Yを容易に除去することができる。
【0058】
また、本実施形態では、第1絶縁皮膜除去工程SAは、第1切削工具41によって、前記延伸方向に交差する方向で且つ切れ込み部Tに向かう方向に、絶縁皮膜Yの一部を除去する。第2絶縁皮膜除去工程SBは、第1絶縁皮膜除去工程SAの後に行われる。
【0059】
これにより、まず、第1切削工具41によって、導線Xの延伸方向に交差する方向で且つ切れ込み部Tに向かう方向に、導線Xから絶縁皮膜Yを除去することができる。よって、絶縁皮膜Yを、切れ込み部Tで導線Xから容易に分離させることができる。その後、第1絶縁皮膜除去工程SAにおける絶縁皮膜Yの除去の方向とは交差する方向に導線Xから絶縁皮膜Yを除去することにより、絶縁皮膜Yを導線Xから容易に除去することができる。したがって、上述の方法により、導線Xから絶縁皮膜Yを容易に除去することができる。
【0060】
また、本実施形態では、導線Xは、前記延伸方向に交差する断面が矩形状である平角導線である。導線Xが平角導線の場合には、絶縁皮膜Yに切れ込み部Tを設けることにより、第1切削工具41によって絶縁皮膜Yを除去する際に、絶縁皮膜Yを切れ込み部Tで容易に分離させることができる。よって、導線Xが平角導線の場合に、本実施形態の絶縁皮膜除去方法を用いることが、より効果的である。
【0061】
また、本実施形態では、切れ込み部形成工程S1では、平角導線である導線Xを前記延伸方向に対して直交する断面で見て、導線Xの一辺に位置する絶縁皮膜Yに導線Xの延伸方向に延びる切れ込み部Tを形成する。絶縁皮膜除去工程S2は、導線Xを前記断面で見て、導線Xに対して、前記延伸方向に交差する方向で且つ切れ込み部Tを通過する方向に、第1切削工具41を相対的に移動させることにより、導線Xの表面を被覆した絶縁皮膜Yの一部を除去する第1絶縁皮膜除去工程SAと、導線Xを前記断面で見て、絶縁皮膜Yに対して、第1絶縁皮膜除去工程SAにおける第1切削工具41及び絶縁皮膜Yの相対移動方向と交差する方向に、第2切削工具51を相対的に移動させることにより、絶縁皮膜Yの一部を除去する第2絶縁皮膜除去工程SBと、第3切削工具61,71によって、絶縁皮膜Yのうち導線Xの角部を覆う部分の少なくとも一部を除去する第3絶縁皮膜除去工程SCと、を有する。
【0062】
これにより、平角導線である導線Xの表面を覆う絶縁皮膜Yを、第1切削工具41、第2切削工具51及び第3切削工具61,71によって、容易に除去することができる。
【0063】
(絶縁皮膜除去装置)
図5に、上述の絶縁皮膜除去方法を実現するための絶縁皮膜除去装置1の一例の概略構成を示す。すなわち、絶縁皮膜除去装置1は、導線Xを覆う絶縁皮膜Yを、導線Xから除去する装置である。
【0064】
絶縁皮膜除去装置1は、切れ込み形成部2と、絶縁皮膜除去部3と、導線搬送部8とを有する。導線Xは、導線搬送部8によって、導線Xの延伸方向に搬送される。図5において、導線Xの搬送方向は、白抜き矢印の方向である。また、図5において、1点鎖線が、導線Xの延伸方向に延びる軸線である。
【0065】
切れ込み形成部2は、絶縁皮膜Yによって表面を被覆された導線Xに対して、切れ込み部Tを形成する。具体的には、切れ込み形成部2は、一対の切れ込み形成用工具21と、一対の駆動部22とを有する。一対の切れ込み形成用工具21は、駆動部22によって一方向に移動可能である。
【0066】
一対の切れ込み形成用工具21は、例えば、両刃の工具である。一対の切れ込み形成用工具21は、導線Xの下方に、導線Xの延伸方向に見て、鉛直方向に対して45度の方向に刃先が延びるように位置する。一対の切れ込み形成用工具21は、刃先が最も近くなる姿勢で、水平方向で且つ導線Xの搬送方向に対して直交する方向に離間して並んでいる。一対の切れ込み形成用工具21は、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、それぞれ、導線Xの下側の角部に向かって、鉛直方向に対して斜めに移動する。なお、一対の切れ込み形成用工具21は、導線Xの下方に、導線Xの延伸方向に見て、鉛直方向に対して45度以外の方向に刃先が延びるように位置していてもよい。一対の切れ込み形成用工具21は、片刃の工具であってもよい。
【0067】
一対の駆動部22は、それぞれ、切れ込み形成用工具21を、導線Xの下側の角部に向かって、鉛直方向に対して斜めに移動させる。駆動部22は、特に図示しないが、例えば、ボールねじを回転させるモータなどを有する。駆動部22は、一対の切れ込み形成用工具21を直線に移動可能な構成であれば、どのような構成を有していてもよい。一つの駆動部が、一対の切れ込み形成用工具21を移動させてもよい。
【0068】
絶縁皮膜除去部3は、絶縁皮膜Yによって表面を被覆された導線Xから絶縁皮膜Yを除去する。絶縁皮膜除去部3は、第1絶縁皮膜除去部4と、第2絶縁皮膜除去部5と、第1皮膜角除去部6と、第2皮膜角除去部7とを有する。
【0069】
第1絶縁皮膜除去部4は、切れ込み部Tが形成された導線Xから絶縁皮膜Yの第2皮膜側面部Y2を除去する。具体的には、第1絶縁皮膜除去部4は、一対の第1切削工具41と、駆動部42とを有する。
【0070】
一対の第1切削工具41は、例えば、片刃の工具である。一対の第1切削工具41は、導線Xの上方に位置する。一対の第1切削工具41は、駆動部42によって上下方向に移動する。一対の第1切削工具41は、水平方向で且つ導線Xの搬送方向に、第1間隔で並んでいる。前記第1間隔の定義は既述したとおりなので、説明を省略する。
【0071】
駆動部42は、導線Xに対して一対の第1切削工具41を上下方向に移動させる。駆動部42は、一対の第1切削工具41を直線に移動可能な構成であれば、どのような構成を有していてもよい。一つの駆動部が、一対の第1切削工具41を移動させてもよい。
【0072】
第2絶縁皮膜除去部5は、絶縁皮膜Yの第2皮膜側面部Y2が除去された導線Xから絶縁皮膜Yの第1皮膜側面部Y1を除去する。具体的には、第2絶縁皮膜除去部5は、一対の第2切削工具51と、駆動部52とを有する。一対の第2切削工具51は、駆動部52によって一方向に移動可能である。
【0073】
一対の第2切削工具51は、例えば、片刃の工具である。一対の第2切削工具51は、導線Xに対して水平方向で且つ導線Xの搬送方向に直交する方向に位置する。一対の第2切削工具51は、駆動部52によって水平方向に移動する。一対の第2切削工具51は、上下方向に第2間隔で並んでいる。前記第2間隔の定義は既述したとおりなので、説明を省略する。
【0074】
駆動部52は、導線Xに対して一対の第2切削工具51を水平方向に移動させる。駆動部52は、一対の第2切削工具51を直線に移動可能な構成であれば、どのような構成を有していてもよい。一つの駆動部が、一対の第2切削工具51を移動させてもよい。
【0075】
第1皮膜角除去部6は、絶縁皮膜Yの第1皮膜側面部Y1及び第2皮膜側面部Y2が除去された導線Xの一対の角部を覆う皮膜角部Y3を除去する。具体的には、第1皮膜角除去部6は、一対の第3切削工具61と、駆動部62とを有する。
【0076】
一対の第3切削工具61は、例えば、片刃の工具である。一対の第3切削工具61は、導線Xに対して斜め上方に位置する。本実施形態では、一対の第3切削工具61は、導線Xの搬送方向下流側から見て、導線Xに対して右斜め上に位置する。一対の第3切削工具61は、駆動部62によって、導線Xの角部に向かって、鉛直方向に対して斜めに移動可能である。
【0077】
一対の第3切削工具61は、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、導線Xの対角線の延伸方向に第3間隔で並んでいる。前記第3間隔の定義は既述したとおりなので、説明を省略する。
【0078】
駆動部62は、導線Xに対して一対の第3切削工具61を、鉛直方向に対して斜めに移動させる。駆動部62は、一対の第3切削工具61を直線に移動可能な構成であれば、どのような構成を有していてもよい。一つの駆動部が、一対の第3切削工具61を移動させてもよい。
【0079】
第2皮膜角除去部7は、絶縁皮膜Yの第1皮膜側面部Y1及び第2皮膜側面部Y2が除去された導線Xの他の一対の角部を覆う皮膜角部Y3を除去する。具体的には、第2皮膜角除去部7は、一対の第3切削工具71と、駆動部72とを有する。
【0080】
一対の第3切削工具71は、例えば、片刃の工具である。一対の第3切削工具71は、導線Xに対して斜め上方に位置する。本実施形態では、一対の第3切削工具71は、導線Xの搬送方向下流側から見て、導線Xに対して左斜め上に位置する。一対の第3切削工具71は、駆動部72によって、導線Xの角部に向かって、鉛直方向に対して斜めに移動可能である。
【0081】
一対の第3切削工具71は、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、導線Xの対角線の延伸方向に第3間隔で並んでいる。前記第3間隔の定義は既述したとおりなので、説明を省略する。
【0082】
駆動部72は、導線Xに対して一対の第3切削工具71を水平方向に移動させる。駆動部72は、一対の第3切削工具71を直線方向に移動可能な構成であれば、どのような構成を有していてもよい。一つの駆動部が、一対の第3切削工具71を移動させてもよい。
【0083】
絶縁皮膜除去装置1では、切れ込み形成部2及び絶縁皮膜除去部3が、導線Xの搬送方向の上流側から下流側に向かって、順に並んでいる。すなわち、絶縁皮膜除去装置1では、切れ込み形成部2、第1絶縁皮膜除去部4、第2絶縁皮膜除去部5、第1皮膜角除去部6及び第2皮膜角除去部7が、この順で、導線Xの搬送方向の上流側から下流側に向かって並んでいる。
【0084】
これにより、前記搬送装置によって延伸方向に搬送される絶縁皮膜付き導線100に、切れ込み形成部2によって切れ込み部Tが形成された後、第1絶縁皮膜除去部4によって導線Xの表面から絶縁皮膜Yの第1皮膜側面部Y1が除去され、第2絶縁皮膜除去部5によって導線Xの表面から絶縁皮膜Yの第2皮膜側面部Y2が除去され、第1皮膜角除去部6及び第2皮膜角除去部7によって導線Xの表面から皮膜角部Y3が除去される。
【0085】
したがって、上述の構成を有する絶縁皮膜除去装置1によって、導線Xの表面から絶縁皮膜Yが除去される。
【0086】
本実施形態では、絶縁皮膜除去装置1は、延伸方向に延びて絶縁皮膜Yによって表面を被覆された導線Xから、絶縁皮膜Yを除去する装置である。絶縁皮膜除去装置1は、導線Xを前記延伸方向に搬送する導線搬送部8と、絶縁皮膜Yに導線Xの延伸方向に延びる切れ込み部Tを形成する切れ込み形成用工具21を有する切れ込み形成部2と、導線Xから絶縁皮膜Yを除去する第1切削工具41、第2切削工具51及び第3切削工具61,71を有する絶縁皮膜除去部3と、を有する。切れ込み形成部2は、導線搬送部8による導線Xの搬送方向において、絶縁皮膜除去部3よりも上流側に位置する。
【0087】
これにより、切れ込み形成部2によって絶縁皮膜Yに切れ込み部Tを設けた後、絶縁皮膜除去部3によって導線Xから絶縁皮膜Yを除去することができる。
【0088】
また、本実施形態では、絶縁皮膜除去部3は、導線Xを前記延伸方向に対して直交する断面で見て、導線Xに対して、前記延伸方向に交差する方向で且つ切れ込み部Tを通過する方向に相対的に移動させることにより、導線Xの表面を被覆した絶縁皮膜Yの一部を除去する第1切削工具41を有する第1絶縁皮膜除去部4と、導線Xを前記断面で見て、導線Xに対して、第1切削工具41及び絶縁皮膜Yの相対移動方向と交差する方向に相対的に移動させることにより、絶縁皮膜Yの一部を除去する第2切削工具51を有する第2絶縁皮膜除去部5と、を有する。第1絶縁皮膜除去部4は、前記搬送方向において、第2絶縁皮膜除去部5よりも上流側に位置する。
【0089】
これにより、絶縁皮膜Yに切れ込み部Tが設けられた絶縁皮膜付き導線100から、第1絶縁皮膜除去部4によって切れ込み部Tを通過する方向に絶縁皮膜Yを除去した後、第2絶縁皮膜除去部5によって第1絶縁皮膜除去部4による絶縁皮膜Yの除去方向とは交差する方向に絶縁皮膜Yを除去することができる。したがって、第1絶縁皮膜除去部4及び第2絶縁皮膜除去部5によって、導線Xに対して絶縁皮膜Yを容易に除去することができる。
【0090】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0091】
前記実施形態では、導線Xは、導線Xを延伸方向に直交する断面で見て、長方形状である。しかしながら、導線は、正方形状、楕円状や円形状などのような他の断面形状を有していてもよい。
【0092】
前記実施形態では、切れ込み部Tは、導線Xの延伸方向に直交する断面において、導線Xに対し、第1中心線C1の延伸方向に直交する方向から見て少なくとも一部が重なる位置に形成されている。しかしながら、切れ込み部は、導線の前記断面において、導線に対し、第1中心線C1の延伸方向に直交する方向から見て重ならない位置に形成されていてもよい。
【0093】
前記実施形態では、切れ込み部Tの前記延伸方向の長さは、除去される絶縁皮膜Yの前記延伸方向の長さ以上である。しかしながら、切れ込み部の前記延伸方向の長さは、除去される絶縁皮膜の前記延伸方向の長さと同じか、それよりも短くてもよい。
【0094】
前記実施形態では、絶縁皮膜Yは、第1切削工具41、第2切削工具51及び第3切削工具61,71によって除去される。しかしながら、絶縁皮膜を除去する工具の少なくとも一部は、同じ工具を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、延伸方向に延びるとともに絶縁皮膜によって表面を被覆された導線に対して、前記絶縁皮膜を除去する絶縁皮膜除去方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 絶縁皮膜除去装置
2 切れ込み形成部
3 絶縁皮膜除去部
4 第1絶縁皮膜除去部
5 第2絶縁皮膜除去部
6 第1皮膜角除去部
7 第2皮膜角除去部
8 導線搬送部
21 切れ込み形成用工具
22 駆動部
41 第1切削工具
42 駆動部
51 第2切削工具
52 駆動部
61 第3切削工具
62 駆動部
71 第3切削工具
72 駆動部
100 絶縁皮膜付き導線
X 導線
X1 第1側面部
X2 第2側面部
Y 絶縁皮膜
Y1 第1皮膜側面部
Y2 第2皮膜側面部
Y3 皮膜角部
T 切れ込み部
C 断面中心
C1 第1中心線
C2 第2中心線
図1
図2
図3
図4
図5