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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020671
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】レーザ誘起ブレークダウン分光装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/63 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
G01N21/63 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126162
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】000129253
【氏名又は名称】株式会社キーエンス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 隼人
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 亮介
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043CA02
2G043CA05
2G043EA10
2G043HA01
2G043HA02
2G043HA09
2G043LA01
2G043LA03
2G043NA01
2G043NA06
(57)【要約】
【課題】分析対象物の深さ方向における物質の変化を容易に推定する。
【解決手段】分析観察装置は、物質を、該物質を構成する元素の種類と該元素の含有率と対応付けた物質ライブラリを保持するライブラリ保持部と、スペクトルに基づいて、物質を構成する元素の種類および該元素の含有率を推定するともに、該推定された特徴と、物質ライブラリとに基づいて物質を推定する成分分析部とを備える。成分分析部は、分析深さの異なる複数の位置の各々で、物質を構成する元素の種類および該元素の含有率、さらに、物質を推定する。
【選択図】図16C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ誘起ブレークダウン分光法を用いることにより、分析対象物の成分分析を該分析対象物の深さ方向に行うレーザ誘起ブレークダウン分光装置であって、
前記分析対象物にレーザ光を出射する出射部と、
前記出射部から出射された前記レーザ光が前記分析対象物に照射されたことによって該分析対象物において発生したプラズマ光を収集する収集ヘッドと、
前記分析対象物において発生しかつ前記収集ヘッドによって収集された前記プラズマ光を受光し、該プラズマ光の波長毎の強度分布であるスペクトルを生成する検出器と、
物質を構成する構成元素と該構成元素の含有率とを、物質を特定する情報として含む物質ライブラリを保持するライブラリ保持部と、
前記検出器により生成された前記スペクトルに基づいて、前記分析対象物を構成する構成元素および該構成元素の含有率を推定するとともに、該推定された構成元素および該構成元素の含有率と、前記ライブラリ保持部に保持された物質ライブラリと、に基づいて、前記分析対象物に含まれる物質を推定する成分分析部と、
前記成分分析部により推定された前記構成元素および該構成元素の含有率と、前記物質を特定する情報を表示部に表示させる表示制御部と、を備え、
前記出射部は、前記分析対象物に対してレーザ光を複数回出射することで、分析深さが異なる複数の位置へ前記レーザ光を照射し、
前記成分分析部は、前記分析深さの異なる複数の位置のそれぞれにおいて、前記分析対象物を構成する構成元素および該構成元素の含有率の推定と、前記分析対象物に含まれる物質の推定とを実行し、
前記表示制御部は、前記成分分析部で推定された前記分析深さの異なる複数の位置における前記構成元素および該構成元素の含有率と、前記分析対象物に含まれる物質を特定する情報とを、前記分析深さに沿って示す深さ分析画面を表示部に表示させることを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ誘起ブレークダウン分光装置であって、
前記成分分析部は、
前記分析深さの異なる複数の位置のそれぞれにおいて、前記分析対象物を構成する構成元素および該構成元素の含有率と、前記ライブラリ保持部に保持された物質ライブラリとを照合し、
前記物質ライブラリに含まれる各々の物質について、一の物質の構成元素および該構成元素の含有率と、前記分析対象物を構成する構成元素および該構成元素の含有率との一致度が予め定められた閾値以下の場合には、一の物質から他の物質へ変化中の中間物質であると推定することを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
前記成分分析部は、
第1の分析深さにおける一の構成元素の含有率と、前記第1の分析深さよりも深い第2の分析深さにおける前記一の構成元素の含有率とが所定の閾値以上相違した場合に、前記第2の分析深さにおける物質が、前記第1の分析深さにおける物質から異なる物質へ変化中の中間物質であると推定し、
前記表示制御部は、前記成分分析部により前記第2の分析深さにおける物質が中間物質であると推定された場合には、前記第2の分析深さにおける物質が前記中間物質であることを前記表示部に表示させることを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザ誘起ブレークダウン分光装置であって、
前記成分分析部は、
第1の分析深さにおける一の構成元素の含有率と、前記第1の分析深さよりも深い第2の分析深さにおける前記一の構成元素の含有率とが所定の閾値以上相違した場合に、前記第1の分析深さにおける物質から異なる物質への変化が開始したと推定し、
前記表示制御部は、前記成分分析部により異なる物質への変化開始が推定された場合には、前記第2の分析深さにおける物質として、前記第1の分析深さにおける物質を前記表示部に表示させることを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、さらに、
前記レーザ光の出射回数の設定を受け付ける分析設定部と、
前記出射部によるレーザ光の出射を制御する出射制御部と、を備え、
前記出射制御部は、前記分析設定部で設定された設定に基づく分析開始後の前記レーザ光の出射回数が、前記分析設定部で設定された出射回数未満の場合に、前記出射制御部に対して前記レーザ光の出射を許可する出射許可信号を生成することを特徴とする分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載のレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
前記成分分析部は、
前記第2の分析深さよりも深い複数の分析深さにおいて推定した前記物質が、連続して同一であった場合に、前記第1の深さにおける物質から異なる物質への変化が完了していると推定し、
当該推定時点において、前記分析設定部で設定された設定に基づく分析開始後の前記レーザ光の出射回数が、前記分析設定部で設定された設定に基づく分析開始後の前記分析設定部で設定された出射回数未満である場合に、前記出射制御部に対して、前記レーザ光の出射を停止させる停止信号を生成することを特徴とする分析装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、さらに、
前記ライブラリ保持部は、複合物質の名称と、当該複合物質を構成する複数の物質の構成情報とを対応付けた複合物質ライブラリを保持し、
前記分析深さの異なる複数の位置の各々において推定された物質と、前記ライブラリ保持部に保持されている複合物質ライブラリとに基づいて、前記分析対象物の複合物質の名称を推定する複合物質推定部と、を備えることを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザ誘起ブレークダウン分光装置であって、さらに、
前記載置台に載置された前記分析対象物により反射された反射光を受光する撮像部と、
前記撮像部により受光された反射光に基づいて、前記分析対象物の画像を生成する撮像処理部と、を備え、
前記ライブラリ保持部は、前記複合物質ライブラリとして、前記複数の物質の複合物質中における深さ情報をさらに対応付けて保持し、
前記撮像処理部は、前記撮像部と前記分析対象物との相対距離が異なる複数の画像に基づいて、前記分析深さを算出し、
前記複合物質推定部は、前記分析深さの異なる複数の位置の各々において推定された物質と、前記撮像処理部により算出された前記分析深さと、前記ライブラリ保持部に保持されている複合物質ライブラリとに基づいて、前記分析対象物の複合物質の名称を推定することを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載のレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
前記表示制御部は、前記複合物質特定部により推定された前記分析対象物の複合物質の名称を、前記深さ分析画面上に表示させることを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載のレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、さらに、
前記分析対象物により反射された反射光を受光し、該受光した反射光の受光量に基づいた電気信号を生成する撮像部と、
前記撮像部により生成された前記電気信号に基づいて、前記分析対象物の画像を生成する撮像処理部と、を備え、
前記撮像処理部は、前記分析対象物の成分分析ごとに、前記分析対象物の画像を順次生成し、
前記表示制御部は、前記分析対象物の成分分析毎に順次生成された複数の画像を前記表示部に表示させることを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
前記深さ表示画面は、前記物質を構成する構成元素および該構成元素の含有率と、前記物質とが前記分析深さ順に前記表示部の上下方向に整列されることを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のレーザ誘起ブレークダウン分光装置において、
前記表示制御部は、前記深さ分析画面として、前記構成元素と、該構成元素の含有率とを表形式とグラフ形式の少なくとも一方の表示形式で前記表示部に表示させることを特徴とするレーザ誘起ブレークダウン分光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、レーザ誘起ブレークダウン分光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、サンプルの成分分析を行うための分析装置(分光装置)が開示されている。具体的に、特許文献1に開示されている分光装置は、レーザ誘起ブレークダウン分光法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy:LIBS)を用いた成分分析を行うべく、1次電磁波(紫外レーザ光)を集光するための集光レンズと、1次電磁波に対応してサンプル表面で発生した2次電磁波(プラズマ)を収集するための収集ヘッドと、を備えている。前記特許文献1によれば、2次電磁波の信号からサンプルのスペクトルのピークを測定することで、測定されたピークに基づいたサンプルの化学分析を実行することができる。一般的なレーザ誘起ブレークダウン分光装置では、分析対象物に対してレーザ光が照射することにより、分析対象物に生じたプラズマ光を検出器により検出し、プラズマ光の波長ごとのスペクトルが生成される。そして、生成されたスペクトルに基づいて、分析対象物に含まれる元素と、その含有率が推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-113569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サンプルを成分分析することで得られるスペクトルには、数多くのピークが存在することが一般的であるため、スペクトルだけでは、分析に精通していないユーザにとって、そのスペクトルが有する意味を解釈することが難しい。また、スペクトルに基づいて、サンプルに含まれる元素と、その含有率が推定された場合であっても、そのような組成を有する物質が何であるかを把握することは難しい。特に、レーザ誘起ブレークダウン分光装置を用いる場合、サンプルの深さ方向に掘り進める(ドリリングする)ことができる。そのため、成分分析を行うユーザは、サンプル表面の成分分析を行うだけでなく、サンプルを深さ方向にドリリング分析して、物質がどのように変化しているかを確認したい場合がある。しかしながら、分析に精通していないユーザにとって、サンプルの深さ方向の各位置で得られたスペクトルや、サンプルに含まれる元素とその含有率に基づいて、深さ方向の物質の変化を理解することは難しい。
【0005】
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、サンプルの深さ方向における物質の変化を容易に推定し、ひいては分析装置のユーザビリティを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の第1の開示は、レーザ誘起ブレークダウン分光法を用いることにより、分析対象物の成分分析を行うレーザ誘起ブレークダウン分光装置を前提とすることができる。
【0007】
レーザ誘起ブレークダウン分光装置は、分析対象物にレーザ光を出射する出射部と、出射部から出射された前記レーザ光が分析対象物に照射されたことによって、該分析対象物において発生したプラズマ光を収集する収集ヘッドと、分析対象物において発生し、かつ、収集ヘッドによって収集されたプラズマ光を受光し、該プラズマ光の波長毎の強度分布であるスペクトルを生成する検出器と、物質を構成する構成元素と該構成元素の含有率とを、物質を特定する情報として含む物質ライブラリを保持するライブラリ保持部と、検出器により生成されたスペクトルに基づいて、分析対象物を構成する構成元素および該構成元素の含有率を推定するとともに、該推定された構成元素および該構成元素の含有率と、ライブラリ保持部に保持された物質ライブラリとに基づいて、分析対象物に含まれる物質を推定する成分分析部と、成分分析部により推定された構成元素および該構成元素の含有率と、物質を特定する情報と、を表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【0008】
そして、出射部は、分析対象物に対してレーザ光を複数回出射することで、分析深さが異なる複数の位置へレーザ光を照射し、成分分析部は、分析深さの異なる複数の位置のそれぞれにおいて、分析対象物を構成する構成元素および該構成元素の含有率の推定と、分析対象物に含まれる物質の推定とを実行し、表示制御部は、成分分析部で推定された分析深さの異なる複数の位置における構成元素および該構成元素の含有率と、分析対象物に含まれる物質を特定する情報とを、分析深さに沿って示す深さ分析画面を表示部に表示させる。
【0009】
この構成によれば、成分分析部は、構成元素の種類と、その含有率に基づいて、物質を推定することができる。ここで、物質としては例えば、ステンレス鋼や、SUS-304等があげられる。また、出射部は、分析対象物に対して複数回レーザ光を出射するため、分析対象物を深さ方向に掘り進めることができる。そのため、深さ方向の異なる位置に対してレーザ光が出射されることになるため、成分分析部は、分析深さが異なる複数の位置において、分析対象物を構成する構成元素と、その含有率とを算出することができる。これにより、スペクトルや元素の種類、元素の含有率といったユーザの解釈が必要な1次情報ではなく、1次情報に成分分析部による解釈が加わった2次情報が、分析深さが異なる複数の位置において得られる。そのため、成分分析に精通していないユーザにとっても、各分析深さにおける成分分析結果を容易に理解できる。
【0010】
さらに、表示制御部は、深さ表示画面を表示部に表示させることができる。深さ表示画面は、物質を特定する情報を深さ方向に沿って示すものであるため、分析対象物の深さ方向に、どのように物質が変化しているかを容易に把握できるようになる。
【0011】
本発明の他の開示では、成分分析部は、第1の分析深さにおける一の構成元素の含有率と、第1の分析深さよりも深い第2の分析深さにおける一の構成元素の含有率とが所定の閾値以上相違した場合に、第2の分析深さにおける物質が、第1の分析深さにおける物質から異なる物質へ変化中の中間物質であると推定できる。そして、表示制御部は、成分分析部により第2の分析深さにおける物質が中間物質であると推定された場合には、第2の分析深さにおける物質が中間物質であることを表示部に表示させる。
【0012】
この構成によれば、物質として、ニクロム線や真鍮といったいわゆる純物質であるのか、純物質であるCrから、純物質であるニクロム線への変化中であるのかを把握することができる。そのため、ユーザは、分析対象物に含まれる物質が変化したかということや、その変化が完了したかということを容易に把握できるようになる。
【0013】
本発明の他の開示では、レーザ誘起ブレークダウン分光装置は、分析設定部と、出射制御部とを備える。そして、成分分析部は、第2の分析深さよりも深い複数の分析深さにおいて推定した物質が、連続して同一であった場合に、第1の分析深さにおける物質から異なる物質への変化が完了していると推定することができる。そして、成分分析部は、推定時点において、分析設定部で設定された設定に基づく分析開始後のレーザ光の出射回数が、分析設定部で設定された出射回数未満である場合に、出射制御部に対して、レーザ光の出射を停止させる停止信号を生成する。
【0014】
この構成によれば、成分分析部は、一の物質から他の物質への変化が完了したことを検知できる。特に、所定回数以上連続して同一の物質が推定された場合に、他の物質への変化が完了したと推定することにより、一の物質から他の物質への変化中に偶然第3の物質の組成と一致した場合でも、第3の物質が一過性のものであれば、中間物質として推定される。そのため、より正確に他の物質への変化完了を推定することができる。
【0015】
本発明の他の開示では、ライブラリ保持部は、複合物質の名称と、当該複合物質を構成する複数の物質の構成情報とを対応付けた複合物質ライブラリを保持できる。また、レーザ誘起ブレークダウン分光装置は、さらに、分析深さの異なる複数の位置の各々において推定された物質と、ライブラリ保持部に保持されている複合物質ライブラリとに基づいて、分析対象物の複合物質の名称を推定する複合物質推定部を備える。
【0016】
この構成によれば、成分分析部により分析深さの異なる複数の位置において推定された物質に基づいて、複合物質推定部は、分析対象物の複合物質の名称を推定することができる。分析深さ順に物質が推定されるだけでは、分析に精通していないユーザにとっては、分析対象物そのものが何であるかを推定することは難しい。分析対象物の複合物質の名称をも推定することにより、分析対象物が所望の複合物質であるかや、どのような不純物が混入したかなどの特定が容易にできる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、サンプルの深さ方向における物質の変化を容易に推定し、ひいては分析装置のユーザビリティを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、分析観察装置の全体構成を例示する模式図である。
図2図2は、光学系アセンブリの構成を模式化して示す側面図である。
図3図3は、分析光学系の構成を例示する模式図である。
図4図4は、ヘッド部の水平移動について説明するための図である。
図5図5は、制御部の構成を例示するブロック図である。
図6図6は、物質ライブラリの概念について説明するための図である。
図7図7は、分析設定について説明するための図である。
図8図8は、制御部によるサンプルの分析手順を例示するフローチャートである。
図9図9は、画像の表示画面を例示する図である。
図10図10は、制御部によるサンプルの分析手順を例示するフローチャートである。
図11図11は、出力画像選択画面について説明するための図である。
図12図12は、ドリリング設定画面について説明するための図である。
図13図13は、ドリリング結果について説明するための図である。
図14図14は、複合物質ライブラリについて説明するための図である。
図15図15は、制御部によるドリリング手順を例示するフローチャートである。
図16A図16Aは、表示部の表示画面を例示する図である。
図16B図16Bは、表示部の表示画面を例示する図である。
図16C図16Cは、表示部の表示画面を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明は例示である。
【0020】
<分析観察装置Aの全体構成>
図1は、本開示の実施形態に係る分析装置としての分析観察装置Aの全体構成を例示する模式図である。図1に例示される分析観察装置Aは、観察対象物および分析対象物としてのサンプルSPの拡大観察を行うとともに、該サンプルSPの成分分析を行うことができる。
【0021】
詳しくは、本実施形態に係る分析観察装置Aは、例えば微少物体等の試料、電子部品、被加工物等からなるサンプルSPを拡大して撮像することで、そのサンプルSPにおいて成分分析が行われるべき部位を探索したり、その外観の検査、計測等を行ったりすることができる。分析観察装置Aは、その観察機能に着目した場合、拡大観察装置と呼称したり、単に顕微鏡と呼称したり、あるいは、デジタルマイクロスコープと呼称したりすることができる。
【0022】
分析観察装置Aはまた、サンプルSPの成分分析に際し、レーザ誘起ブレークダウン法(Laser Induced Breakdown Spectroscopy:LIBS)、レーザ誘起プラズマ分光法(Laser Induced Plasma Spectroscopy:LIPS)等と呼称される手法を実施することができる。分析観察装置Aは、その分析機能に着目した場合、成分分析装置と呼称したり、単に分析装置と呼称したり、あるいは、分光装置と呼称したりすることもできる。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る分析観察装置Aは、主要な構成要素として、光学系アセンブリ(光学系本体)1と、コントローラ本体2と、操作部3と、を備える。
【0024】
このうち、光学系アセンブリ1は、サンプルSPの撮像および分析を行うとともに、その撮像結果および分析結果に対応した電気信号を外部に出力することができる。
【0025】
コントローラ本体2は、第1カメラ81等、光学系アセンブリ1を構成する種々の部品を制御するための制御部21を有する。コントローラ本体2は、制御部21を介して、光学系アセンブリ1にサンプルSPの観察および分析を行わせることができる。コントローラ本体2はまた、種々の情報を表示可能な表示部22を有する。この表示部22には、光学系アセンブリ1において撮像された画像、サンプルSPの分析結果を示すデータ等を表示することができる。
【0026】
操作部3は、ユーザによる操作入力を受け付けるマウス31、コンソール32などを有する。コンソール32は、ボタン、調整ツマミ等を操作することで、コントローラ本体2に画像データの取込、明るさ調整、第1カメラ81等のピント合わせ等を指示することができる。
【0027】
<光学系アセンブリ1の詳細>
図1に示すように、光学系アセンブリ1は、各種機器を支持するとともにサンプルSPが載置されるステージ4と、このステージ4に取り付けられるヘッド部6と、を備える。ここで、ヘッド部6は、分析光学系7が収容された分析筐体70に、観察光学系9が収容された観察筐体90を装着してなる。ここで、分析光学系7はサンプルSPの成分分析を行うための光学系である。観察光学系9はサンプルSPの拡大観察を行うための光学系である。ヘッド部6は、サンプルSPの分析機能と拡大観察機能とを兼ね備えた装置群として構成されている。
【0028】
なお、以下の説明では、図1に示すように光学系アセンブリ1の前後方向および左右方向が定義される。すなわち、ユーザと対面する一側が光学系アセンブリ1の前側であり、これと反対側が光学系アセンブリ1の後側であり、ユーザと光学系アセンブリ1とが対面したときに、そのユーザから見て右側が光学系アセンブリ1の右側であり、ユーザから見て左側が光学系アセンブリ1の左側である。なお、前後方向および左右方向の定義は、説明の理解を助けるためのものであり、実際の使用状態を限定するものではない。いずれの方向が前となるように使用してもよい。
【0029】
また詳細は後述するが、ヘッド部6は、図1に示す中心軸Acに沿って移動したり、この中心軸Acまわりに揺動したりすることができる。この中心軸Acは、図1等に示すように、前述の前後方向に沿って延びるように構成される。
【0030】
(ステージ4)
ステージ4は、作業台等に設置されるベース41と、ベース41に接続されたスタンド42と、ベース41またはスタンド42によって支持された載置台5と、を有する。このステージ4は、載置台5およびヘッド部6の相対的な位置関係を規定するための部材であり、少なくとも、ヘッド部6の観察光学系9および分析光学系7を取付可能に構成される。
【0031】
図2に示すように、ベース41の後側部分には、第1支持部41aと第2支持部41bが、前側から順番に並んだ状態で設けられる。第1および第2支持部41a,41bは、双方ともベース41から上方へ突出するように設けられる。第1および第2支持部41a,41bには、前記中心軸Acと同心になるように配置される円形の軸受孔(不図示)が形成される。
【0032】
また、図2に示すように、スタンド42の下側部分には、第1取付部42aと第2取付部42bが、前側から順番に並んだ状態で設けられる。第1および第2取付部42a,42bは、前述の第1および第2支持部41a,41bに対応した構成とされている。具体的に、第1および第2支持部41a,41bならびに第1および第2取付部42a,42bは、第1取付部42aと第2取付部42bによって第1支持部41aを挟み込むとともに、第1支持部41aと第2支持部41bによって第2取付部42bを挟み込むようにレイアウトされる。
【0033】
また、第1および第2取付部42a,42bには、第1および第2支持部41a,41bに形成された軸受孔と同心かつ同径に構成された円形の軸受孔(不図示)が形成される。これら軸受孔に対し、クロスローラベアリング等のベアリング(不図示)を介して軸部材44が挿入される。この軸部材44は、その軸心が前述の中心軸Acと同心になるように配置される。軸部材44を挿入することで、ベース41とスタンド42は、相対的に揺動可能に連結される。軸部材44は、第1および第2支持部41a,41bならびに第1および第2取付部42a,42bとともに、本実施形態における傾斜機構45を構成する。
【0034】
また、図2に示すように、傾斜機構45を構成する軸部材44には、俯瞰カメラ48が内蔵されている。この俯瞰カメラ48は、サンプルSPで反射された可視光を、軸部材44の前面に設けられた貫通孔44aを介して受光する。俯瞰カメラ48は、受光した反射光の受光量を検出することで、サンプルSPを撮像する。
【0035】
俯瞰カメラ48の撮像視野は、後述の第1カメラ81および第2カメラ93の撮像視野よりも広い。言い換えると、俯瞰カメラ48の拡大倍率は、第1カメラ81および第2カメラ93の拡大倍率よりも小さい。そのため、俯瞰カメラ48は、第1カメラ81および第2カメラ93よりも広い範囲にわたってサンプルSPを撮像することができる。
【0036】
具体的に、本実施形態に係る俯瞰カメラ48は、その受光面に配置された複数の画素によって、貫通孔44aを通じて入射した光を光電変換し、被写体(サンプルSP)の光学像に対応した電気信号に変換する。
【0037】
俯瞰カメラ48は、受光面に沿って複数の受光素子を並べたものとすればよい。この場合、各受光素子が画素に対応することになり、各受光素子での受光量に基づいた電気信号を生成することができるようになる。具体的に、本実施形態に係る俯瞰カメラ48は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)からなるイメージセンサによって構成されているが、この構成には限定されない。俯瞰カメラ48としては、例えばCCD(Charged-Coupled Device)からなるイメージセンサを使用することもできる。
【0038】
そして、俯瞰カメラ48は、各受光素子での受光量を検出することで生成される電気信号をコントローラ本体2の制御部21に入力する。制御部21は、入力された電気信号に基づいて、被写体の光学像に対応した画像データを生成する。制御部21は、そうして生成された画像データを、被写体を撮像してなる画像として表示部22等に表示させることができる。
【0039】
なお、前述した俯瞰カメラ48の構成は例示に過ぎない。俯瞰カメラ48は、少なくとも第1カメラ81および第2カメラ93よりも撮像視野の広いものとすればよく、俯瞰カメラ48のレイアウト、その撮像光軸の向き等については自由に変更することができる。例えば、光学系アセンブリ1またはコントローラ本体2に有線また無線で接続されたUSBカメラによって俯瞰カメラ48を構成してもよい。
【0040】
(ヘッド部6)
ヘッド部6は、ヘッド取付部材61と、分析筐体70に分析光学系7を収容してなる分析ユニットと、観察筐体90に観察光学系9を収容してなる観察ユニットと、筐体連結具64と、スライド機構(水平駆動機構)65と、を有する。ヘッド取付部材61は、分析筐体70をスタンド42に接続するための部材である。分析ユニットは、分析光学系7によってサンプルSPの成分分析を行うための装置である。観察ユニット63は、観察光学系9によってサンプルSPの観察を行うための装置である。筐体連結具64は、観察筐体90を分析筐体70に接続するための部材である。スライド機構65は、スタンド42に対して分析筐体70をスライド移動させるための機構である。
【0041】
以下、分析ユニット、観察ユニット、および、スライド機構65の構成について順番に説明する。
【0042】
-分析ユニット-
図3は、分析光学系7の構成を例示する模式図である。
【0043】
分析ユニットは、分析光学系7と、分析光学系7が収容された分析筐体70と、を有する。分析光学系7は、分析対象物としてのサンプルSPの分析を行うための部品の集合であり、各部品が分析筐体70に収容されるようになっている。分析筐体70は、撮像部としての第1カメラ81および検出器としての第1および第2検出器77A、77Bを収容する。また、サンプルSPの分析を行うための要素には、コントローラ本体2の制御部21も含まれる。
【0044】
分析光学系7は、例えばLIBS法を用いた分析を行うことができる。この分析光学系7には、コントローラ本体2との間で電気信号を送受するための通信ケーブルC1が接続される。この通信ケーブルC1は必須ではなく、分析光学系7とコントローラ本体2とを無線通信によって接続してもよい。
【0045】
なお、ここでいう「光学系」の語は、広義で用いる。すなわち、分析光学系7は、レンズ等の光学素子に加え、光源、撮像素子等を包括したシステムとして定義される。観察光学系9についても同様である。
【0046】
図3に示すように、本実施形態に係る分析光学系7は、出射部71と、出力調整手段72と、偏向素子73と、収集ヘッドとしての反射型対物レンズ74と、分光素子75と、第1パラボリックミラー76Aと、第1検出器77Aと、第1ビームスプリッター78Aと、第2パラボリックミラー76Bと、第2検出器77Bと、第2ビームスプリッター78Bと、同軸照明79と、結像レンズ80と、第1カメラ81と、側射照明84と、を含んでなる。分析光学系7の構成要素のうちの一部は、図2にも示す。また、側射照明84は、図5のみに示す。
【0047】
出射部71は、サンプルSPに1次電磁波を出射する。特に、本実施形態に係る出射部71は、1次電磁波としてのレーザ光をサンプルSPに出射するレーザ光源によって構成される。なお、本実施形態に係る出射部71は、1次電磁波として、紫外線からなるレーザ光を出力することができる。
【0048】
出力調整手段72は、出射部71と偏向素子73を結ぶ光路上に配置されており、レーザ光(1次電磁波)の出力を調整することができる。
【0049】
出力調整手段72によってその出力が調整されたレーザ光(1次電磁波)は、不図示のミラーによって反射されて偏向素子73に入射する。
【0050】
詳しくは、偏向素子73は、出射部71から出力されて出力調整手段72を通過したレーザ光を反射させ、反射型対物レンズ74を介してサンプルSPに導く一方、このレーザ光に対応してサンプルSPにおいて発生した光(サンプルSPの表面で生じるプラズマ化に伴って発せられる光であり、以下、「プラズマ光」と呼称する)を通過させ、これを第1検出器77A、第2検出器77Bに導くようにレイアウトされている。偏向素子73はまた、撮像用に集光した可視光を通過させ、その大部分を第1カメラ81に導くようにレイアウトされている。
【0051】
偏向素子73によって反射された紫外レーザ光は、平行光として分析光軸Aaに沿って伝搬し、反射型対物レンズ74に至る。
【0052】
収集ヘッドとしての反射型対物レンズ74は、出射部71から出射された1次電磁波がサンプルSPに照射されることによって該サンプルSPにおいて生じた2次電磁波を収集するように構成されている。特に、本実施形態に係る反射型対物レンズ74は、1次電磁波としてのレーザ光を集光してサンプルSPに照射するとともに、サンプルSPに照射されたレーザ光(1次電磁波)に対応してサンプルSPにおいて発生したプラズマ光(2次電磁波)を収集するように構成されている。この場合、2次電磁波は、サンプルSPの表面で生じるプラズマ化に伴って発せられるプラズマ光に相当する。
【0053】
反射型対物レンズ74は、前述の略上下方向に沿って延びる分析光軸Aaを有する。分析光軸Aaは、観察光学系9の対物レンズ92が有する観察光軸Aoと平行になるように設けられる。
【0054】
詳しくは、本実施形態に係る反射型対物レンズ74は、2枚のミラーからなるシュヴァルツシルト型の対物レンズである。この反射型対物レンズ74は、図3に示すように、分円環状かつ相対的に大径の1次ミラー74aと、円板状かつ相対的に小径の2次ミラー74bと、を有する。
【0055】
1次ミラー74aは、その中央部に設けた開口によってレーザ光(1次電磁波)を通過させる一方、その周囲に設けられた鏡面によってサンプルSPにて発生したプラズマ光(2次電磁波)を反射させる。後者のプラズマ光は、2次ミラー74bの鏡面によって再び反射され、レーザ光と同軸化された状態で1次ミラー74aの開口を通過する。
【0056】
2次ミラー74bは、1次ミラー74aの開口を通過したレーザ光を透過させる一方、1次ミラー74aによって反射されたプラズマ光を集光して反射するように構成される。前者のレーザ光はサンプルSPに照射される一方、後者のプラズマ光は、前述のように1次ミラー74aの開口を通過して偏向素子73に至る。
【0057】
分光素子75は、反射型対物レンズ74の光軸方向(分析光軸Aaに沿った方向)において偏向素子73と第1ビームスプリッター78Aとの間に配置されており、サンプルSPで発生したプラズマ光のうちの一部を第1検出器77Aに導く一方、他部を第2検出器77B等へ導く。後者のプラズマ光は、その大部分が第2検出器77Bに導かれるものの、その残りは第1カメラ81に至る。
【0058】
第1パラボリックミラー76Aは、いわゆる放物面鏡であり、分光素子75と第1検出器77Aとの間に配置される。第1パラボリックミラー76Aは、分光素子75によって反射された2次電磁波を集光し、集光された2次電磁波を第1検出器77Aに入射させる。
【0059】
第1検出器77Aは、サンプルSPにおいて発生しかつ反射型対物レンズ74によって収集されたプラズマ光(2次電磁波)を受光し、該プラズマ光の波長毎の強度分布であるスペクトルを生成する。
【0060】
特に、レーザ光源によって出射部71を構成するとともに、1次電磁波としてのレーザ光の照射に対応して発生した2次電磁波としてのプラズマ光を集光するように反射型対物レンズ74を構成した場合、第1検出器77Aは、波長毎に異なる角度に光を反射させることで光を分離し、分離させた各々を複数の画素を有する撮像素子に入射させる。これにより、各画素によって受光される光の波長を相違させるとともに、波長毎に受光強度を取得することができる。この場合、スペクトルは、光の波長毎の強度分布に相当する。
【0061】
なお、スペクトルは、波数毎に取得された受光強度によって構成してもよい。波長と波数とは一意に対応しているため、波数毎に取得された受光強度を用いた場合であっても、スペクトルを波長毎の強度分布とみなすことができる。後述の第2検出器77Bにおいても同様である。
【0062】
第1ビームスプリッター78Aは、分光素子75を透過した光のうちの一部(可視光帯域を含む赤外側の2次電磁波)を反射して第2検出器77Bに導く一方、他部(可視光帯域の一部)を透過して第2ビームスプリッター78Bに導く。可視光帯域に属するプラズマ光のうち、相対的に多量のプラズマ光が第2検出器77Bに導かれ、相対的に少量のプラズマ光が、第2ビームスプリッター78Bを介して第1カメラ81に導かれる。
【0063】
第2パラボリックミラー76Bは、第1パラボリックミラー76Aと同様にいわゆる放物面鏡であり、第1ビームスプリッター78Aと第2検出器77Bとの間に配置される。第2パラボリックミラー76Bは、第1ビームスプリッター78Aによって反射された2次電磁波を集光し、集光された2次電磁波を第2検出器77Bに入射させる。
【0064】
第2検出器77Bは、第1検出器77Aと同様に、出射部71から出射された1次電磁波がサンプルSPに照射されることによってサンプルSPで生じた2次電磁波を受光し、該2次電磁波の波長毎の強度分布であるスペクトルを生成する。
【0065】
制御部21には、第1検出器77Aによって生成された紫外側のスペクトルと、第2検出器77Bによって生成された赤外側のスペクトルと、が入力される。制御部21は、それらのスペクトルに基づいて、後述の基本原理を用いてサンプルSPの成分分析を行う。制御部21は、紫外側のスペクトルと、赤外側のスペクトルとを組合わせて用いることで、より広い周波数域を利用した成分分析を行うことができる。
【0066】
第2ビームスプリッター78Bは、LED光源79aから発せられて光学素子79bを通過した照明光(可視光)を反射して、これを第1ビームスプリッター78A、分光素子75、偏向素子73および反射型対物レンズ74を介してサンプルSPに照射する。サンプルSPで反射された反射光(可視光)は、反射型対物レンズ74を介して分析光学系7に戻る。
【0067】
同軸照明79は、照明光を発するLED光源79aと、LED光源79aから発せられた照明光が通過する光学素子79bと、を有する。同軸照明79は、いわゆる「同軸落射照明」として機能する。LED光源79aから照射される照明光は、出射部71から出力されてサンプルSPに照射されるレーザ光(1次電磁波)、および、サンプルSPから戻る光(2次電磁波)と同軸に伝搬する。
【0068】
第2ビームスプリッター78Bはまた、分析光学系7に戻った反射光のうち、第1ビームスプリッター78Aを透過した反射光と、第1および第2検出器77A,77Bに到達せずに第1ビームスプリッター78Aを透過したプラズマ光とをさらに透過させ、結像レンズ80を介して第1カメラ81に入射させる。
【0069】
同軸照明79は、図3に示す例では分析筐体70に内蔵されているが、本開示は、そうした構成には限定されない。例えば、分析筐体70の外部に光源をレイアウトし、その光源と分析光学系7とを光ファイバーケーブルを介して光学系に結合してもよい。
【0070】
側射照明84は、反射型対物レンズ74を取り囲むように配置される。図示は省略するが、側射照明84は、サンプルSPの側方(言い換えると、分析光軸Aaに対して傾斜した方向)から照明光を照射する。
【0071】
第1カメラ81は、サンプルSPで反射された反射光を、反射型対物レンズ74を介して受光する。第1カメラ81は、受光した反射光の受光量を検出することで、サンプルSPを撮像する。第1カメラ81は、本実施形態における「撮像部」の例示である。
【0072】
具体的に、本実施形態に係る第1カメラ81は、その受光面に配置された複数の画素によって結像レンズ80を通じて入射した光を光電変換し、被写体(サンプルSP)の光学像に対応した電気信号に変換する。
【0073】
第1カメラ81は、受光面に沿って複数の受光素子を並べたものとすればよい。この場合、各受光素子が画素に対応することになり、各受光素子での受光量に基づいた電気信号を生成することができるようになる。具体的に、本実施形態に係る第1カメラ81は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)からなるイメージセンサによって構成されているが、この構成には限定されない。第1カメラ81としては、例えばCCD(Charged-Coupled Device)からなるイメージセンサを使用することもできる。
【0074】
そして、第1カメラ81は、各受光素子での受光量を検出することで生成される電気信号をコントローラ本体2の制御部21に入力する。制御部21は、入力された電気信号に基づいて、被写体の光学像に対応した画像データを生成する。制御部21は、そうして生成された画像データを、被写体を撮像してなる画像として表示部22等に表示させることができる。
【0075】
ここまでに説明した光学部品は、前述の分析筐体70に収容される。分析筐体70の下面には、貫通孔70aが設けられている。反射型対物レンズ74は、この貫通孔70aを介して載置面51aと対峙する。
【0076】
-分析光学系7による分析の基本原理-
制御部21は、検出器としての第1検出器77Aおよび第2検出器77Bから入力されたスペクトルに基づいて、サンプルSPの成分分析を実行する。具体的な分析手法としては、前述のようにLIBS法を用いることができる。LIBS法は、サンプルSPに含まれる成分を元素レベルで分析する手法(いわゆる元素分析法)である。
【0077】
LIBS法によれば、真空引きが不要であり、大気開放状態で成分分析を行うことができる。また、サンプルSPの破壊試験ではあるものの、サンプルSP全体を溶解させるなどの処理は不要であり、サンプルSPの位置情報が残存する(局所的な破壊試験にすぎない)。
【0078】
-観察ユニット-
観察ユニットは、観察光学系9と、観察光学系9が収容された観察筐体90と、を有する。観察光学系9は、観察対象物としてのサンプルSPの観察を行うための部品の集合であり、各部品が観察筐体90に収容されるようになっている。観察筐体90は、前述した分析筐体70とは別体に構成されており、第2撮像部としての第2カメラ93を収容する。また、サンプルSPの観察を行うための要素には、コントローラ本体2の制御部21も含まれる。
【0079】
観察光学系9は、対物レンズ92を有するレンズユニット9aを備える。このレンズユニット9aは、観察筐体90の下端側に配置された筒状のレンズ鏡筒に相当する。レンズユニット9aは、分析筐体70によって保持される。
【0080】
観察筐体90には、コントローラ本体2との間で電気信号を送受するための通信ケーブルC2と、外部から照明光を導光するための光ファイバーケーブルC3と、が接続される。なお、通信ケーブルC2は必須ではなく、観察光学系9とコントローラ本体2とを無線通信によって接続してもよい。
【0081】
具体的に、観察光学系9は、図2に示すように、ミラー群91と、対物レンズ92と、第2撮像部としての第2カメラ93と、第2同軸照明94と、第2側射照明95と、拡大光学系96と、を含んでなる。
【0082】
対物レンズ92は、略上下方向に沿って延びる観察光軸Aoを有し、照明光を集光して載置台本体51に載置されたサンプルSPに照射するとともに、そのサンプルSPからの光(反射光)を集光する。観察光軸Aoは、分析光学系7の反射型対物レンズ74が有する分析光軸Aaと平行になるように設けられる。対物レンズ92によって収集された反射光は、第2カメラ93によって受光される。
【0083】
ミラー群91は、対物レンズ92によって収集された反射光を透過させ、これを第2カメラ93に導く。本実施形態に係るミラー群91は、図2に例示されるように全反射ミラーとビームスプリッター等を用いて構成することができる。ミラー群91はまた、第2同軸照明94から照射された照明光を反射して、これを対物レンズ92に導く。
【0084】
第2カメラ93は、サンプルSPで反射された反射光を、対物レンズ92を介して受光する。第2カメラ93は、受光した反射光の受光量を検出することで、サンプルSPを撮像する。第2カメラ93は、本実施形態における「第2撮像部」の例示である。
【0085】
一方、前述のように、第1カメラ81は、本実施形態における「撮像部」の例示である。本明細書では、第2カメラ93を第2撮像部とみなし、第1カメラ81を撮像部とみなした構成を中心に説明するが、後述のように、第1カメラ81を第2撮像部とみなし、第2カメラ93を撮像部とみなしてもよい。
【0086】
本実施形態に係る第2カメラ93は、第1カメラ81と同様にCMOSからなるイメージセンサによって構成されているが、CCDからなるイメージセンサを使用することもできる。
【0087】
そして、第2カメラ93は、各受光素子での受光量を検出することで生成される電気信号をコントローラ本体2の制御部21に入力する。制御部21は、入力された電気信号に基づいて、被写体の光学像に対応した画像データを生成する。制御部21は、そうして生成された画像データを、被写体を撮像してなる画像として表示部22等に表示させることができる。
【0088】
第2同軸照明94は、光ファイバーケーブルC3から導光された照明光を出射する。第2同軸照明94は、対物レンズ92を介して集光される反射光と共通の光路を介して照明光を照射する。つまり、第2同軸照明94は、対物レンズ92の観察光軸Aoと同軸化された「同軸落射照明」として機能することになる。なお、光ファイバーケーブルC3を介して外部から照明光を導光する代わりに、レンズユニット9aの内部に光源を内蔵してもよい。その場合、光ファイバーケーブルC3は不要となる。
【0089】
第2側射照明95は、図2に模式的に例示したように、対物レンズ92を取り囲むように配置されたリング照明によって構成される。第2側射照明95は、分析光学系7における側射照明84と同様に、サンプルSPの斜め上方から照明光を照射する。
【0090】
拡大光学系96は、ミラー群91と第2カメラ93との間に配置されており、第2カメラ93によるサンプルSPの拡大倍率を変更可能に構成されている。本実施形態に係る拡大光学系96は、変倍レンズと、その変倍レンズを第2カメラ93の光軸に沿って移動させるように構成されたアクチュエータと、を有している。アクチュエータは、制御部21から入力される制御信号に基づいて変倍レンズを移動させることで、サンプルSPの拡大倍率を変更することができる。
【0091】
-スライド機構65-
図4は、スライド機構65によるヘッド部6の水平移動について説明するための図である。
【0092】
スライド機構65は、観察光学系9によるサンプルSPの撮像と、分析光学系7によってスペクトルを生成する場合における電磁波(レーザ光)の照射(換言すれば、分析光学系7の出射部71による電磁波の照射)と、を観察対象物としてのサンプルSPにおける同一箇所に対して実行可能となるように、載置台本体51に対する観察光学系9および分析光学系7の相対位置を水平方向に沿って移動させるよう構成されている。
【0093】
スライド機構65による相対位置の移動方向は、観察光軸Aoおよび分析光軸Aaの並び方向とすることができる。図4に示すように、本実施形態に係るスライド機構65は、載置台本体51に対する観察光学系9および分析光学系7の相対位置を前後方向に沿って移動させる。
【0094】
本実施形態に係るスライド機構65は、スタンド42およびヘッド取付部材61に対し、分析筐体70を相対的に変位させるものである。分析筐体70とレンズユニット9aとは筐体連結具64によって連結されているため、分析筐体70を変位させることで、レンズユニット9aも一体的に変位することになる。
【0095】
具体的に、本実施形態に係るスライド機構65は、ガイドレール65aと、アクチュエータ65bと、を有する、このうち、ガイドレール65aは、ヘッド取付部材61の前面から前方に突出するように構成されている。
【0096】
図4に示すように、スライド機構65が作動することで、ヘッド部6が水平方向に沿ってスライドし、載置台5に対する観察光学系9および分析光学系7の相対位置が移動(水平移動)することになる。この水平移動によって、ヘッド部6は、反射型対物レンズ74をサンプルSPに対峙させた第1モードと、対物レンズ92をサンプルSPに対峙させた第2モードと、の間で切り替わるようになっている。スライド機構65は、第1モードと第2モードとの間で、分析筐体70および観察筐体90をスライドさせることができる。
【0097】
以上のように構成することで、第1モードと第2モードとの切替を行う前後のタイミングにおいて、観察光学系9によるサンプルSPの画像生成と、分析光学系7によるスペクトルの生成(具体的には、分析光学系7によってスペクトルが生成される場合における、分析光学系7による1次電磁波の照射)と、をサンプルSP中の同一箇所に対して同一方向から実行することができるようになる。
【0098】
<コントローラ本体の詳細>
図5は、コントローラ本体2の制御部21の構成を例示するブロック図である。なお、本実施形態では、コントローラ本体2と光学系アセンブリ1とが別体に構成されているが、本開示は、そうした構成には限定されない。コントローラ本体2の少なくとも一部を光学系アセンブリ1に設けてもよい。例えば、制御部21を構成する処理部21aの少なくとも一部を光学系アセンブリ1に内蔵させることができる。
【0099】
前述のように、本実施形態に係るコントローラ本体2は、種々の処理を行う制御部21と、制御部21が行う処理に係る情報を表示する表示部22と、を備える。
【0100】
制御部21によって、アクチュエータ65b、同軸照明79、側射照明84、第2同軸照明94、第2側射照明95、第1カメラ81、第2カメラ93、俯瞰カメラ48、出射部71、第1検出器77A、第2検出器77Bが電気的に制御される。
【0101】
また、第1カメラ81、第2カメラ93、俯瞰カメラ48、第1検出器77A、第2検出器77Bの出力信号は、制御部21に入力される。制御部21は、入力された出力信号に基づいた演算等を実行し、その演算結果に基づいた処理を実行する。そうした処理を行うためのハードウェアとして、本実施形態に係る制御部21は、種々の処理を実行する処理部21aと、処理部21aが行う処理に関連したデータを記憶する1次記憶部21bおよび2次記憶部21cと、入出力バス21dと、を有する。
【0102】
処理部21aは、CPU、システムLSI、DSP等からなる。処理部21aは種々のプログラムを実行することで、サンプルSPの分析を実行したり、表示部22等、分析観察装置Aの各部を制御したりする。特に、本実施形態に係る処理部21aは、サンプルSPの分析結果を示す情報、ならびに、第1カメラ81、第2カメラ93および俯瞰カメラ48から入力される画像データに基づいて、表示部22上の表示画面を制御することができる。
【0103】
なお、処理部21aによる制御対象としての表示部は、コントローラ本体2が有する表示部22には限定されない。本開示に係る「表示部」には、分析観察装置Aが非具備とした表示部も含まれる。例えば、分析観察装置Aと有線または無線で接続されたコンピュータ、タブレット端末等のディスプレイを表示部とみなし、その表示部上にサンプルSPの分析結果を示す情報、および、種々の画像データを表示してもよい。このように、本開示は、分析観察装置Aと、該分析観察装置Aと有線または無線で接続された表示部と、を備える分析システムに適用することもできる。
【0104】
図5に示すように、本実施形態に係る処理部21aは、機能的な要素として、モード切替部211と、照明制御部212と、撮像処理部213と、出射制御部214と、スペクトル取得部215と、成分分析部216と、複合物質推定部217と、複合物質登録部218と、ユーザインターフェース制御部(以下、単に「UI制御部」という)221と、ライブラリ読出部225と、設定部226と、を有する。これらの要素は、論理回路によって実現されてもよいし、ソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。また、これらの要素のうちの少なくとも一部を、ヘッド部6等、光学系アセンブリ1に設けることもできる。
【0105】
なお、スペクトル取得部215、成分分析部216等の分類は、便宜的なものに過ぎず、自由に変更することができる。例えば、成分分析部216がスペクトル取得部215を兼用してもよいし、スペクトル取得部215が成分分析部216を兼用してもよい。
【0106】
UI制御部221は、表示制御部221aと、入力受付部221bとを含む。表示制御部221aは、表示部22に成分分析部216による成分分析結果や、撮像処理部213により生成された画像を表示部22に表示させる。入力受付部221bは、操作部3を通したユーザによる操作入力を受け付ける。
【0107】
ライブラリ読出部225は、物質推定部216bによる物質の推定を行うために、ライブラリ保持部232に保持されている物質ライブラリLiSを読み出す。また、ライブラリ読出部225は、複合物質推定部217による複合物質の推定を行うために、ライブラリ保持部232に保持されている複合物質ライブラリLiMを読み出す。
【0108】
1次記憶部21bは、揮発性メモリまたは不揮発性メモリによって構成される。本実施形態に係る1次記憶部21bは、設定部226により設定された様々な設定を記憶することができる。また、1次記憶部21bは、本実施形態に係る分析方法を構成する各ステップを分析観察装置Aに実行させるための分析プログラムを保持することもできる。
【0109】
2次記憶部21cは、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の不揮発性メモリによって構成される。2次記憶部21cは、物質ライブラリLiSおよび複合物質ライブラリLiMを保持するライブラリ保持部232を含む。なお、各種データを記憶するデータ保持部がさらに含まれてもよい。2次記憶部21cは、物質ライブラリLiSと、複合物質ライブラリLiMと、を継続的に記憶することができる。なお、物質ライブラリLiS、複合物質ライブラリLiMは、2次記憶部21cに記憶させる代わりに、光学ディスク等の記憶媒体に記憶させてもよいし、分析観察装置Aと有線または無線で接続されたコンピュータ、タブレット端末等に各種データを記憶させてもよい。
【0110】
1.サンプルSPの成分分析
-スペクトル取得部215-
図5に示すスペクトル取得部215は、検出器としての第1および第2検出器77A,77Bにより生成されたスペクトルを取得する。ここで、スペクトル取得部215により取得されたスペクトルは「分析データ」の一例である。
【0111】
具体的に、第1モードにおいて出射部71から1次電磁波(例えばレーザ光)が出射されることによって2次電磁波(例えばプラズマ光)が生じる。この2次電磁波は、第1検出器77Aおよび第2検出器77Bに到達する。
【0112】
検出器としての第1および第2検出器77A,77Bは、各々に到達した2次電磁波に基づいてスペクトルを生成する。そうして生成されたスペクトルは、スペクトル取得部215によって取得される。スペクトル取得部215により取得されたスペクトルは、波長と強度の関係を示し、サンプルSPに含まれる特徴に対応するピークが複数存在する。スペクトル取得部215により取得されたスペクトルは、サンプルSPの成分分析を行うために、成分分析部216に出力される。
【0113】
-成分分析部216-
図5に示す成分分析部216は、スペクトル取得部215によって取得されたスペクトルに基づいて、サンプルSPの成分分析を実行するスペクトルのピーク位置を特定することで、そのピーク位置に対応した元素がサンプルSPに含まれている成分であると判定することができ、また、ピーク同士の大きさ(ピークの高さ)を比較することで、各元素の成分比を決定するとともに、決定された成分比に基づいて、サンプルSPの組成を推定することもできる。
【0114】
成分分析部216は、特徴推定部216aと、物質推定部216bと、を含む。特徴推定部216aは、スペクトル取得部215によって取得されたスペクトルに基づいて、サンプルSPに含まれる物質の特徴Chを推定する。例えば、分析方法としてLIBS法を用いた場合、特徴推定部216aは、取得されたスペクトル中のピーク位置と、そのピークの高さと、を抽出する。そして、特徴推定部216aは、抽出されたピーク位置およびピークの高さに基づいて、物質の特徴Chとして、サンプルSPの構成元素と、その構成元素の含有量と、を推定する。
【0115】
図5に示す物質推定部216bは、特徴推定部216aによって推定された物質の特徴Chと、2次記憶部21bに保持された物質ライブラリLiSと、に基づいて、その物質を推定する。ここで、特徴推定部216aにより推定された物質の特徴Chおよび、物質推定部216bにより推定された物質は、「分析データ」の一例である。
【0116】
ここで、物質ライブラリLiSについて図6を用いて説明する。物質ライブラリLiSは、サンプルSPに含有されると考えられる物質の総称を表す上位分類C1と、この上位分類C1に属する物質を表す下位分類C3と、の階層情報が記憶されることで構成されている。上位分類C1は、少なくとも、下位分類C3の1つ以上が属するように構成すればよい。ここで、上位分類C1は、物質を特定する情報の一例である。
【0117】
例えば、サンプルSPが鉄鋼材料だった場合、物質を特定する情報である上位分類C1は、合金鋼、炭素鋼、鋳鉄等の分類としてもよいし、それらの分類を細分化することで得られるステンレス鋼、超硬合金、ハイテン鋼等の分類としてもよい。
【0118】
また、サンプルSPが鉄鋼材料だった場合、下位分類C3は、オーステナイト系、析出硬化系、フェライト系等の分類としてもよいし、それらの分類を、例えば日本産業規格(Japanese Industrial Standards:JIS)に基づいて細分化してなるSUS301、SUS302等の分類としてもよい。下位分類C3は、少なくとも上位分類C1を細分化した分類であればよい。言い換えると、上位分類C1は、下位分類C3の少なくとも一部が属する分類であればよい。
【0119】
また、上位分類C1と下位分類C3の間に1つ以上の中位分類C2を設けてもよい。この場合、中位分類C2の階層情報が上位分類C1および下位分類C3の階層情報とともに記憶されることで、物質ライブラリLiSが構成されることになる。この中位分類C2は、上位分類C1に属する複数の系統を表す。ここで、中位分類C2は、物質を特定する情報の一例である。
【0120】
例えば、サンプルSPが鉄鋼材料だった場合において、物質を特定する情報である上位分類C1としてステンレス鋼、超硬合金、ハイテン鋼等の分類を用いるとともに、下位分類C3としてSUS301、SUS302、A2017等の分類を用いた場合、物質を特定する情報である中位分類C2は、オーステナイト系、析出硬化系等の分類としてもよいし、「SUS300番台」等、下位分類C3の一部を総称した分類としてもよい。
【0121】
また、物質ライブラリLiSを構成する下位分類C3は、サンプルSPに含まれると考えられる物質の特徴Chと対応づけられるように構成されている。例えば、分析方法としてLIBS法を用いた場合、物質の特徴Chには、サンプルSPの構成元素と、その構成元素の含有量(または含有率)と、を1セットにまとめた情報が含まれる。
【0122】
この場合、下位分類C3を構成する物質毎に、構成元素の組み合わせと、各構成元素の含有量(または含有率)の上限値および下限値とを、物質ライブラリLiに組み込んでおくことで、後述のように、物質の特徴Chから下位分類C3を推定することができるようになる。
【0123】
図5に示す2次記憶部21cは、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の不揮発性メモリによって構成される。2次記憶部21cは、物質ライブラリLiSを継続的に記憶することができる。なお、2次記憶部21cに物質ライブラリLiSを記憶させる代わりに、記憶媒体1000等の外部から物質ライブラリLiSを読み込んでもよい。
【0124】
また、コントローラ本体2は、プログラムを記憶する記憶媒体1000を読み込むことができる(図5を参照)。特に、本実施形態に係る記憶媒体1000は、本実施形態に係る分析方法を構成する各ステップを分析観察装置Aに実行させるための分析プログラムを記憶する。この分析プログラムは、コンピュータであるコントローラ本体2によって読み込まれて実行される。コントローラ本体2が分析プログラムを実行することで、分析観察装置Aは、本実施形態に係る分析方法を構成する各ステップを実行する分析装置として機能することになる。
【0125】
前述のように、物質ライブラリLiSを構成する下位分類C3は、サンプルSPに含まれると考えられる物質の特徴Chと対応づけられるように構成されている。そこで、物質推定部216bは、特徴推定部216aによって推定された物質の特徴Chを、2次記憶部21bに保持された物質ライブラリLiSと照合することで、特徴Chが推定された物質を下位分類C3から推定する。ここでの照合とは、物質ライブラリLiSに登録された代表データとの類似度を計算することだけでなく、物質ライブラリLiに登録されたパラメータ群を用いて物質の確度を示す指標を獲得する行為全般を指す。
【0126】
ここで、図6に示した、「物質α」と「特徴α」のように、下位分類C3と特徴Chとが一意に紐付いているケースに加えて、「特徴α」に対応した下位分類C3の候補が複数存在する場合も考えられる。その場合、特徴推定部216aは、サンプルSPに含まれ得る物質のうち相対的に確度が高い物質を下位分類C3の中から複数にわたり推定し、確度が高い順番に、推定された下位分類C3を出力する。ここで、確度としては、スペクトルの分析に際して得られたパラメータに基づいた指標を用いることができる。
【0127】
物質推定部216bはまた、推定された下位分類C3と物質ライブラリLiSとを照合することで、その下位分類C3が属する中位分類C2、ひいては上位分類C1を推定する。
【0128】
特徴推定部216aにより推定された物質の特徴Chと、物質推定部216bにより推定された特徴は、分析レコードARを構成する一のデータとして分析履歴保持部231に出力される。また、物質の特徴Chと、特徴はUI制御部221に出力され、表示部22に表示される。
【0129】
-分析設定部226a-
図5に示す分析設定部226aは、サンプルSPの分析に係る各種の設定を受け付ける。特にここでは、サンプルSPを構成する特徴を推定するために、特定の元素に重みづけの設定を受け付けることができる。
【0130】
分析設定部226aは、入力受付部221bにより分析設定の要求を受け付けると、分析設定画面を生成する。分析設定部226aにより生成された分析設定画面は表示制御部221aに出力される。そして、表示制御部221aは、表示部22上に分析設定画面を表示させる。表示部22に表示される分析設定画面の一例を図7の左側に示す。
図7の例のように、この分析設定画面には、周期表(図例では、周期表の一部のみを示す)と、「リストから選択」と表記された第1アイコンIc1と、「再計算」と表記された第2アイコンIc2と、を表示することができる。
【0131】
ここで、入力受付部221bは、表示部に表示された周期表中の各元素に対する操作入力を受け付けるように構成されている。図7に例示されるように、元素毎になされた操作入力に基づいて、元素名を黒字で表示した標準項目と、元素名を白字で表示した必須項目と、元素名に水玉模様を重ねて表示した除外項目と、の3種類の検出レベルに各元素を分類することができる。各元素に対する検出レベルを設定した状態で第2アイコンIc2に操作入力が施されると、その操作入力を受け付けた入力受付部221bは、成分分析部216に対して再分析の指示を行う。再分析の指示を受け付けた成分分析部216は、スペクトルからピーク位置とピーク高さを再抽出するとともに、特徴Chと物質の再推定を実行する。なお、成分分析部216によりピーク位置とピーク高さが再抽出されたことに応じて、表示制御部221aは、スペクトル上に重畳表示されるピーク位置を更新して表示部22に表示させてもよい。
【0132】
元素の分類である検出レベルについて説明する。標準項目に分類された元素は、スペクトル中にピークが見つかった場合に、検出元素として検出される。検出元素として検出された元素のピーク位置は、表示制御部221aにより表示部22に表示されるスペクトル上に識別可能に表示されてもよい。
【0133】
また、必須項目に分類された元素は、スペクトル中にピークが存在するか否かに関わらず、特徴Chを構成する検出元素として検出される。図7に示す例では、マンガンが必須項目に分類されている。この場合、特徴推定部216aは、マンガンに対応した波長λ5の位置にピークがあると仮定して、特徴を推定する。さらに、表示制御部221aは、マンガンに対応した波長λ5の位置を、スペクトル上に重畳表示することができる。例えば、サンプルSPにマンガンが含まれていない場合、図7に示すように、スペクトル中のピークが現れない位置に、前記波長λ5を示す鎖線が重畳表示されることになる。
【0134】
また、除外項目に分類された元素は、スペクトル中にピークが存在するか否かに関わらず、特徴Chを構成する検出元素から除外されることになる。図7に示す例では、ニッケルが除外項目に分類されている。この場合、特徴推定部216aは、除外項目に分類された元素が含まれないと仮定して、除外項目以外の検出元素から特徴を推定する。さらに、図7に例示されるスペクトルとは異なり、ニッケルに対応するピーク位置には、ピーク高さの大きさにかかわらず、ニッケルに対応した波長を示す鎖線が非表示となる。
【0135】
すなわち、特徴推定部216aは、必須項目に分類された元素が存在する場合、スペクトル中に該必須項目に対応するピークが存在するか否かに関わらず、必須項目に分類された元素が特徴を構成する検出元素として検出対象となるように、特徴Chを再推定する。また、除外項目に分類された元素が存在する場合、スペクトル中に該除外項目に対応するピークが存在するか否かに関わらず、除外項目に分類された元素が特徴Chを構成する検出元素として検出対象外となるように、特徴Chを再推定する。
【0136】
さらに、図7に示す第1アイコンIc1に対する操作入力を受け付けた場合、表示制御部221aは、表示部22上に、各元素を箇条書きにしたリストを表示する(図示省略)。そして、入力受付部221bは、リスト中の各元素に対して個別に、前述の標準項目、必須項目および除外項目といった分類を受け付けることができる。
【0137】
分析設定画面において設定された分析設定は、1次記憶部21bに出力される。また、成分分析部216は、1次記憶部21bに記憶された分析設定を取得し、分析設定とスペクトルとに基づいて特徴Chの推定を実行する。このように、分析設定部226aでは、分析対象物に含まれると予めユーザが認識している特徴である必須項目を抽出するように設定できる。スペクトル上には、複数のピークが表示される。そのため、必須項目に対応するピークからわずかにずれた位置にピークが存在するような場合、スペクトルから必須項目を正確に抽出することが難しい場合がある。そのような場合であっても、事前に必須項目に設定しておくことで、分析対象物に含まれると予めユーザが認識している特徴を抽出することができ、よりユーザの期待に近い成分分析結果を得ることができる。
【0138】
また、分析設定部226aでは、分析対象物に含まれないと予めユーザが認識している特徴である除外項目が抽出対象外となるように設定できる。スペクトル上には、複数のピークが表示される。そのため、ピーク位置が理想的な位置からわずかにでもずれていた場合、本来抽出されるべき特徴ではなく、異なる特徴が抽出される虞がある。ユーザが予め分析対象物に含まれないと認識している特徴に関しては、事前に除外項目に設定しておくことで、該除外項目を成分分析部による抽出対象外とすることができる。これにより、分析対象物に含まれないと予めユーザが認識している特徴以外から特徴を抽出することができ、よりユーザの期待に近い成分分析結果を得ることができる。
【0139】
分析設定部226aはさらに、成分分析部216による成分分析の条件を設定することもできる。例えば、出射部71から出射される電磁波または1次線の強度や、スペクトル取得部215によりスペクトルを取得する際の積算時間を分析設定として受け付けることができる。
【0140】
<成分分析フロー>
図8は、処理部21aによるサンプルSPの分析手順を例示するフローチャートである。
【0141】
まず、ステップS801において、成分分析部216は、1次記憶部に記憶された分析設定を取得する。なお、分析設定が予め設定されていない場合はこのステップをスキップすることができる。
【0142】
次に、ステップS802において、分析設定部226aで設定された分析設定に基づいて出射制御部214により出射部71が制御され、サンプルSPに電磁波としてレーザ光が出射される。
【0143】
次に、ステップS803において、スペクトル取得部215は、第1および第2検出器77A,77Bが生成したスペクトルを取得する。すなわち、出射部71から電磁波が出射されることに起因したプラズマ光が第1および第2検出器77A、77Bで受光される。第1および第2検出器77A,77Bは、分析設定部226aで設定された分析設定に基づいて該プラズマ光の波長毎の強度分布であるスペクトルを生成する。スペクトル取得部215は第1および第2検出器77A,77Bが生成した分析データであるスペクトルを取得する。
【0144】
続くステップS804において、特徴推定部216aは、分析設定およびスペクトル取得部215によって取得されたスペクトルに基づいて、サンプルSPに含有される物質の特徴Chを推定する。この例では、特徴推定部216aは、分析データである物質の特徴Chとして、サンプルSPの構成元素と、その構成元素の含有率と、を推定する。この推定は、種々の物理モデルに基づいて行ってもよいし、検量線グラフを通じて行ってもよいし、重回帰分析等、統計的な手法を用いて行ってもよい。
【0145】
続くステップS805において、物質推定部216bは、特徴推定部216aによって推定された物質の特徴Chに基づいて、サンプルSPに含まれる物質(特に、レーザ光が照射された位置における物質)を分析データとして推定する。この推定は、物質推定部216bが物質の特徴Chと物質ライブラリLiSとを照合することで行うことができる。その際、物質ライブラリLiSにおいて下位分類C3と区分された物質と、特徴推定部216aによって推定された構成元素の含有率と、の確度(類似度)に基づいて、確度が高い順に、下位分類C3のうちの2つ以上が推定されてもよい。ステップS803~S805は、本実施形態における「分析ステップ」の例示である。
【0146】
続くステップS806において、特徴推定部216aは、分析設定が変更されたか否かを判定する。この判定がYES、すなわち分析設定が変更された場合は、ステップS807に進み、この判定がNO、すなわち、分析設定が変更されていない場合は、ステップS808に進む。
【0147】
ステップS807では、特徴推定部216aは、分析設定部226aまたは1次記憶部21bから変更後の分析設定を取得する。そして、変更後の分析設定を取得すると、ステップS804に戻り、特徴推定部216aは、変更後の分析設定に基づいて特徴Chを再推定する。
【0148】
ステップS808では、分析を終了するか否かを判定する。この判定がYESの場合は、分析を終了し、この判定がNOの場合は、ステップS806に進む。
【0149】
2.サンプルSPの画像生成
-照明設定部226b-
図5に示す照明設定部226bは、照明条件の設定を受け付ける。照明条件とは、第1カメラ81、同軸照明79および側射照明84に係る制御パラメータと、第2カメラ93、第2同軸照明94および第2側射照明95に係る制御パラメータとを指し、照明条件には、各照明の光量、各照明の点灯状態等が含まれる。
【0150】
-照明制御部212-
図5に示す照明制御部212は、照明設定部226bにより設定された照明条件を1次記憶部21bまたは2次記憶部21cから読み込むとともに、読み込んだ照明条件を反映するように、同軸照明79、側射照明84、第2同軸照明94、および、第2側射照明95の少なくとも1つを制御する。この制御によって、照明制御部212は、同軸照明79および側射照明84の少なくとも一方を点灯させたり、第2同軸照明94および第2側射照明95の少なくとも一方を点灯させたりすることができる。
【0151】
-撮像処理部213-
図5に示す撮像処理部213は、第1カメラ81、第2カメラ93、俯瞰カメラ48の少なくとも1つのカメラで生成された電気信号を受信し、サンプルSPの画像Pを生成する。撮像処理部213により生成された画像Pは、分析レコードARを構成する一の分析データとして分析履歴保持部231に出力される。
【0152】
第1カメラ81により生成された画像Pの一例を図9のFIG.9Aに示す。第1カメラ81は、サンプルSPの分析箇所を詳細に観察するために、後述の第2カメラ93と比較してより高倍率でサンプルSPを観察できる。サンプルSPを高倍率で観察する場合、第1カメラ81の倍率に注目すると撮像処理部213により生成される画像Pは高倍画像と称することができる。またこの場合、第1カメラ81の視野範囲(撮像視野)は第2カメラ93と比較して狭い。そのため、第1カメラ81の視野範囲(撮像視野)に注目すると撮像処理部213により生成される画像は狭域画像と称することができる。ここで、高倍画像、狭域画像といった呼称は説明のためのものであり、本実施形態をこれに限定するものではない。
【0153】
なお、第1カメラ81で撮影された画像は、その撮像タイミングに応じて、照射前画像Pb、照射後画像Paと称することもある。照射前画像Pbとは、サンプルSPに対してレーザ光が照射される前の画像Pを指し、照射後画像Paとは、サンプルSPに対してレーザ光が照射された後の画像Pを指す。
【0154】
第2カメラ93により生成された画像Pの一例を図9のFIG.9Bに示す。サンプルSPを撮像するための撮像部は、後述のモード切替部211により第1カメラ81と第2カメラ93とで切り替えられる。第2カメラ93は、サンプルSPの全体を観察するために、第1カメラ81と比較してより低倍率でサンプルSPを観察できる。サンプルSPを低倍率で観察する場合、第2カメラ93の倍率に注目すると撮像処理部213により生成される画像Pは低倍画像と称することができる。またこの場合、第2カメラ93の視野範囲(撮像視野)は第1カメラ81と比較して広い。そのため、第2カメラ93の視野範囲(撮像視野)に注目すると撮像処理部213により生成される画像は広域画像と称することができる。
【0155】
なお、広域画像は第1カメラ81により生成された電気信号に基づいて生成することもできる。一例として、第1カメラ81により生成された電気信号に基づいて、撮像処理部213は高倍画像を生成する。そして、第1カメラ81とサンプルSPの相対的な位置を変化させながら、撮像処理部213は複数の高倍画像を生成する。そして撮像処理部213は、一の高倍画像を生成した際の第1カメラ81とサンプルSPの相対的な位置関係に基づいて複数の高倍画像を張り合わせる。これにより撮像処理部213は、個々の高倍画像よりも視野範囲の広い広域画像を生成することもできる。
【0156】
俯瞰カメラ48により生成された画像の一例を図9のFIG.9Cに示す。本実施形態における俯瞰画像Pfは、サンプルSPを側方から見た画像Pに相当する。なお、俯瞰カメラ48は、本実施形態における「第2撮像部」の例示である。また、俯瞰画像Pfは、第1カメラ81により生成された電気信号に基づいて生成された高倍画像よりも視野範囲(撮像視野)の広い画像であるため、上記の広域画像の一種に分類することができる。
【0157】
すなわち、本明細書において広域画像と称する場合は、高倍画像を複数張り合わせて生成された画像P、第2カメラ93により生成された受光信号に基づいて生成された画像P、俯瞰カメラ48により生成された俯瞰画像Pfの少なくとも1つを指す。
【0158】
また、撮像処理部213は、載置台5と、第1カメラ81または第2カメラ93の相対距離を変化させることで得られた複数の画像Pに基づいて、サンプルSPの分析箇所までの距離を算出することができる。ここで測定される距離は、レーザ光の照射位置までの距離であり、後述の分析深さに対応する。LIBS法を用いた分析を行う場合、レーザ光の照射によりサンプルSPの分析箇所は掘り進められる。そのため、レーザ光の照射毎に、分析箇所の深さを算出することができるため、ユーザは、サンプルSPのどの深さを分析しているのかを把握できる。
【0159】
-モード切替部211-
図5に示すモード切替部211は、水平方向(本実施形態では前後方向)に沿って分析光学系7および観察光学系9を進退させることで、第1モードから第2モードへと切り替えたり、第2モードから第1モードに切り替えたりする。例えば、本実施形態に係るモード切替部211は、載置台5に対して観察筐体90および分析筐体70を相対的に移動させることで、第2カメラ93および第1カメラ81のうちの一方に切り替えることができる。
【0160】
モード切替部211は、サンプルSPを撮像するための撮像部として、第1カメラ81および第2カメラ93のうちの一方に切り替えることができる。例えば本実施形態では、モード切替部211は、第1モードでは撮像部として第1カメラ81に設定し、第2モードでは撮像部として第2カメラ93に設定する。
【0161】
具体的に、本実施形態に係るモード切替部211は、予め2次記憶部21cに記憶されている観察光軸Aoと分析光軸Aaとの間の距離を事前に読み込む。次いで、モード切替部211は、スライド機構65のアクチュエータ65bを作動させることで、分析光学系7および観察光学系9を進退させる。
【0162】
<サンプルSPの画像生成と成分分析を行うフロー>
サンプルSPを撮像し、画像Pを生成する処理と、サンプルSPの成分分析とを行う場合の処理を図10のフローチャートに従って説明する。
【0163】
まず、ステップS1201において、入力受付部221bは、分析を実行する操作が行われたか否かを判定し、この判定がYESの場合は制御プロセスをステップS1202へ進める一方、NOの場合はステップS1201の判定を繰り返す。
【0164】
続いて、ステップS1202において、撮像処理部213は、広域画像を生成する。広域画像は第1カメラ81により生成された受光信号に基づく高倍画像を複数張り合わせることで生成してもよいし、第2カメラ93により生成された受光信号に基づいて生成してもよい。
【0165】
続いて、ステップS1203において、撮像処理部213は、サンプルSPの照射前画像Pbを生成する。照射前画像Pbは、第1カメラ81または第2カメラ93により生成された電気信号に基づいて生成される。
【0166】
続いて、ステップS1204において、サンプルSPの成分分析を行う。サンプルSPの成分分析手順は図8と同様である。
【0167】
続いて、ステップS1205において、撮像処理部213は、サンプルSPの照射後画像Paを生成する。照射後画像は、第1カメラ81により生成された電気信号に基づいて生成される。
続いて、ステップS1206において、入力受付部221bは、俯瞰画像Pfを撮影する操作が行われたか否かを判定し、この判定がYESの場合は制御プロセスをステップS1207へ進める一方、NOの場合はステップS1212に進む。
【0168】
ステップS1207において、撮像処理部213は、俯瞰画像Pfを生成する。俯瞰画像Pfは、俯瞰カメラ48により生成された電気信号に基づいて生成される。
【0169】
続いて、ステップS1208において、入力受付部221bは、画像Pを更新する操作が行われたか否かを判定し、この判定がYESの場合は制御プロセスをステップS1209へ進める一方、NOの場合はステップS1212に進む。
【0170】
ステップS1208において、画像Pを更新する操作が行われた場合、ステップS1209において表示制御部221aは、図11に示すような出力画像選択画面を表示部22に表示させる。そして、入力受付部221bは、出力画像選択画面に表示された画像Pから一の画像の選択を受け付ける。
【0171】
続くステップS1210において、入力受付部221bは、画像Pの更新を実行する操作が行われたか否かを検知し、この判定がYESの場合は制御プロセスをステップS1211へ進める一方、NOの場合は、ステップS1212に進む。
【0172】
ステップS1211において、撮像処理部213は、出力画像選択画面で選択された画像の更新を行う。
【0173】
続いて、ステップS1212において、分析を終了するか否かを判定し、この判定がYESの場合は分析を終了する一方、NOの場合はステップS1208に戻る。
【0174】
3.サンプルSPの深さ方向の分析
上記の説明において、サンプルSPに対して電磁波であるレーザ光を出射し、電磁波が照射されたサンプルSPの位置における物質を推定する方法を説明した。本実施の形態においては、サンプルSPの略同一箇所に対して電磁波であるレーザ光を複数回出射し、サンプルSPを深さ方向に分析することもできる。サンプルSPの略同一箇所を掘り進めることでサンプルSPを深さ方向に分析するため、サンプルSPの深さ方向の分析をドリリングと称する。
【0175】
図12は、サンプルSPを深さ方向に分析する際にユーザが各種設定を行うためのドリリング設定画面2000を示す。ドリリング設定画面2000には、レーザ照射ボタン2001と、連射モードを有効にするか否かを選択するチェックボックスCB31と、連射回数入力欄2002と、物質の変化開始を検知する閾値を設定する変化開始閾値設定欄2003と、物質の変化完了を検知する閾値を設定する変化完了閾値設定欄2004と、物質の変化が完了したら分析を停止するか否かを選択するチェックボックスCB32と、分析停止条件を設定するためのラジオボタンRB33およびRB34と、分析前の画像を保存するか否かを選択するチェックボックスCB35と、電磁波であるレーザ光の照射毎に画像を保存するか否かを選択するチェックボックスCB36と、が含まれる。ドリリング設定画面2000において設定されたパラメータは、上述の分析設定部226aで設定される。すなわち、分析設定部226aは、レーザ光の出射回数、変化開始閾値、変化完了閾値等のドリリングに係る各種のパラメータの設定を受け付ける。
【0176】
レーザ照射ボタン2001は、サンプルSPの成分分析を行うために、レーザ照射を実行するためのボタンである。レーザ照射を実行するためのトリガ信号は、出射制御部214に入力される。
【0177】
チェックボックスCB31は、連射モードを有効にするか否かを選択するためのチェックボックスである。また、連射回数入力欄2002は、電磁波であるレーザ光の出射回数を入力するための入力欄である。連射モードが有効の場合、連射回数入力欄2002に入力された出射回数を満たすまで、出射制御部214は、電磁波であるレーザ光を出射するよう出射部71を制御する。すなわち、レーザ光の出射を停止させるための条件であるレーザ停止条件として、連射回数入力欄2002に入力された出射回数を設定し、レーザ停止条件を満たすまで、出射制御部214は、レーザ光を出射するようにレーザ光の出射許可信号を生成する。
【0178】
変化開始閾値設定欄2003は、物質の変化開始を検知するための閾値を設定する設定欄である。また、変化完了閾値設定欄2004は、物質の変化完了を検知するための閾値を設定する設定欄である。詳細は後述するが、成分分析部216は、レーザ光が出射されることにより推定された物質に、変化があったか否かを検知することができる。この変化を検知するための条件を設定する設定欄が変化開始閾値設定欄2003および変化完了閾値設定欄2004である。
【0179】
図12に示す例では、物質の構成元素であるいずれかの元素の含有率に変化開始閾値設定欄2003で設定された10以上の変化があった場合に、成分分析部216は、一の物質から他の物質へと変化が開始したことを検知する。そして、成分分析部216は、物質として一の物質から他の物質へと変化中であることを示す「中間物質」と推定する。また、成分分析部216は、レーザ光が出射されることで推定された物質が、変化完了閾値設定欄2004で設定された回数である2回以上同一であった場合に、一の物質から他の物質への変化が完了したと判断し、物質として変化後の物質を特定する。ここで、中間物質の推定は、物質ライブラリLiS中の物質に対する不一致度、複合物質ライブラリLiM中の多層構造をもつ複合物質との一致度を加味して自動的に行うこともできる。すなわち、成分分析部216は、分析対象物を構成する構成元素および該構成元素の含有率と、物質ライブラリLiSとを照合する。そして、物質ライブラリに含まれる各々の物質について、一の物質の構成元素および該構成元素の含有率と、分析対象物を構成する構成元素および該構成元素の含有率と、の一致度が予め定められた閾値以下の場合(閾値以上の一致度となる物質が存在しない場合)に、成分分析部216は、一の物質から他の物質へ変化中の中間物質と推定できる。なお、分析対象物を構成する構成元素および該構成元素の含有率と、物質ライブラリに含まれる物質との一致度が予め定められた閾値を上回るものが存在する場合は、一致度の大きさに応じて物質を推定できる。
【0180】
チェックボックスCB32は、物質の変化が完了したら分析を停止するか否かを選択するためのチェックボックスである。連射モードが有効の場合、レーザ光を複数回サンプルSPに照射することで得られる成分分析結果が変化する場合がある。このような場合、一の物質から他の物質への変化が開始した場合や、一の物質から他の物質への変化が完了した場合に分析を停止することができる。すなわち、成分分析部216は、物質の変化開始または物質の変化完了といった所定の分析停止条件を満たしたことを検知すると、出射制御部214に対してレーザ光の出射を停止させる停止信号を出力する。ここでは、レーザ光の出射回数が、ドリリング設定画面で設定された出射回数未満であったとしても、一の物質から他の物質への変化が開始した場合や、一の物質から他の物質への変化が完了した場合等、所定の分析停止条件を満たした場合に、停止信号を生成する。
【0181】
ラジオボタンRB33およびラジオボタンRB34は、どのような条件で分析を停止するかを選択するためのラジオボタンである。ラジオボタンRB33またはラジオボタンRB34の切り替えに応じて、分析停止条件を変更できる。ラジオボタンRB33は、元素の含有率に一定以上の変化が生じた場合に分析を停止させることを設定するラジオボタンである。すなわち、分析停止条件として、含有率の変化を設定することができる。この場合、変化開始閾値設定欄2003で設定された閾値以上の変化が物質を構成する少なくとも1つの元素の含有率に生じた場合、成分分析部216は、含有率に一定以上の変化が生じていると判定し、出射制御部214に対して電磁波であるレーザ光の出射を停止させる停止信号を生成する。また、ラジオボタンRB34は、別の物質への変化を検知した場合に分析を停止させることを設定するラジオボタンである。すなわち、分析停止条件として、物質の変化を設定することができる。この場合、変化完了閾値設定欄2004で設定された回数連続して同一の物質が推定された場合、成分分析部216は、別の物質への変化が完了していると判定し、出射制御部214に対して電磁波であるレーザ光の出射を停止させる停止信号を生成する。
【0182】
また、チェックボックスCB32が選択されることにより分析停止条件が設定された場合、出射制御部214は、連射回数入力欄2003に入力された出射回数と、分析停止条件とに基づいて、レーザ停止条件を満たしているかを判定できる。すなわち、出射制御部214は、ドリリング設定画面で設定された設定に基づく分析開始後の電磁波出射回数が連射回数入力欄2003に入力された回数未満であり、かつ、分析停止条件を満たさない場合に、出射部71に対してレーザ光を出射するようにレーザ光の出射信号を生成する。また、分析停止条件を満たす場合、すなわち、別の物質への変化が完了していると推定された場合、当該推定時点において、ドリリング設定画面で設定された設定に基づく分析開始後のレーザ光の出射回数が、連射回数入力欄2002に入力された出射回数未満であったとしても、出射制御部214は、出射部71に対してレーザ光の出射を停止させる停止信号を生成する。これにより、ドリリング設定画面で設定された設定に基づく分析開始後のレーザ光の出射回数が連射回数入力欄2002に入力された出射回数未満であり、かつ、成分分析部216により、一の物質から他の物質への変化が完了したと推定されるまでの間は、出射部71から電磁波であるレーザ光の出射を許可することができる。換言すれば、分析開始後のレーザ光の出射回数が連射回数入力欄2002に入力された回数以上となるか、一の物質から他の物質への変化が完了したと推定された場合には、出射制御部214は、出射部71に対してレーザ停止条件を満たしていると判定し、出射部71から電磁波であるレーザ光の出射を停止させるための停止信号を生成する。
【0183】
これにより、レーザ光の出射回数が、ドリリング設定画面で設定された出射回数未満である場合、すなわちレーザ光の出射が可能な状態でも、分析停止条件を満たしている場合には、停止信号を生成することができる。LIBS法を用いた分析手法は、破壊分析であるが、意図せぬレーザ光の出射により、サンプルSP以外を破壊することなく、必要最低限の回数で分析を完了させることができる。
【0184】
チェックボックスCB35は、分析前の画像Pを取得するか否かを選択するためのチェックボックスである。チェックボックスCB35が選択された場合、入力受付部221bが、ユーザによる分析開始の指示を受け付けたことを検知すると、出射制御部214に対してレーザ光の出射信号を生成する前に、撮像処理部213を駆動することで、サンプルSPの分析前の画像P(照射前画像Pb)を生成する。ここで生成されるサンプルSPの画像は、撮像部としての第1カメラ81により撮影された画像でもよいし、第2撮像部としての第2カメラ93により撮影された画像でもよい。第1カメラ81でサンプルSPを撮影する場合は、サンプルSPをより高倍率で観察することができる。さらに、第1カメラ81は、サンプルの成分分析に係る分析光学系と同一筐体に配置されているため、画像生成と分析とをシームレスに実行することができる。第2カメラ93によりサンプルSPを撮影する場合は、サンプルSPの広範囲を撮影することができるため、サンプルSPの広域画像を残すことができる。
【0185】
LIBSを用いた分析手法は、サンプルSPに電磁波であるレーザ光を照射し、照射により発生したプラズマ光を検出するものであり、破壊分析に分類される。破壊分析では、サンプルSPの分析を行うとクレーターのような傷や穴が生じることがある。そのため、サンプルSPの分析前の画像Pである照射前画像Pbを自動的に撮影することで、分析前の状態を記録することができる。
【0186】
チェックボックスCB36は、レーザ光の照射毎に画像を取得するか否かを選択するためのチェックボックスである。チェックボックスCB36が選択された場合、入力受付部221bが、出射制御部214に対して電磁波であるレーザ光の出射信号を生成する。そして、出射部71がサンプルSPにレーザ光を照射する毎に、撮像処理部213が駆動されることで、サンプルSPの画像Pが複数生成される。上記の通り、LIBSを用いた分析は破壊分析であるため、サンプルSPにレーザ光を照射する毎に画像Pを取得することで、レーザ光の出射に応じたサンプルSPの変化が観察できるように構成されていてもよい。このようにすることによって、各分析深さでの分析箇所の色情報を得ることができ、成分分析結果の確認や考察に有利である。また、深い部分では照明光が届きにくくなるため、HDRのような画像処理や、分析箇所の輝度にもとづいて都度照明の最適化を実行することもできる。また、照射ごとに画像のボケ情報から分析箇所の底部のフォーカス位置を求め、実際に分析を行った分析深さを測定することもできる。
【0187】
<物質の変化検知>
上記のように、成分分析部216は、電磁波であるレーザ光が出射されることで推定された物質に変化があったか否かを検知することができる。この変化の検知方法について、図13を用いて説明する。
【0188】
図13は、サンプルSPの略同一箇所に対して電磁波であるレーザ光を複数回照射することで得られた、サンプルSPの深さ方向の異なる複数の位置における成分分析結果を一覧表示した図である。
【0189】
一番左の列は、レーザ光の照射回数を表す。サンプルSPに対してレーザ光を照射すると、サンプルSPにクレーター上の穴が生じる。サンプルSPの略同一箇所に対して複数回レーザ光を照射すると、サンプルSPは深さ方向に掘り進められる。そのため、出射部71は、サンプルSPに対してレーザ光が照射される深さである分析深さが異なる複数の位置へレーザ光を照射する。図13に示す表では、表の上下方向と、サンプルの深さ方向とが一致する。すなわち、1回目の成分分析結果は、サンプルSPの表面の成分分析結果に対応する。そして、照射回数が増えるにつれて、サンプルSPの表面から分析深さがより深い箇所の成分分析を行うことになる。そのため、表の下方の成分分析結果は、サンプルSPの表面から分析深さがより深い箇所の成分分析結果に対応する。ここでは、説明のため、電磁波であるレーザ光が1回目に照射されたサンプルSPの深さを第1の分析深さと称し、レーザ光が2回目に照射されたサンプルSPの深さを第2の分析深さと称する。以下同様に、レーザ光がN回目に照射されたサンプルSPの深さを第Nの分析深さと称する。なお、この呼称は説明のためのものであり、レーザ光が3回目に照射されたサンプルSPの深さが第1の分析深さと称され、レーザ光が10回目に照射されたサンプルSPの深さが第2の分析深さと称されてもよい。すなわち、第1、第2、・・・、第Nの分析深さという呼称は、分析深さの相対的な関係を表すものであり、この順に、分析深さが深くなっていればよい。
【0190】
第1の分析深さにおける成分分析結果は、特徴推定部216aにより、Cr:100%と推定されている。そのため、物質推定部216bは、第1の分析深さにおける物質としてCrと推定する。第2の分析深さにおける物質は、第1の分析深さにおける物質と同様である。
【0191】
第3の分析深さにおける成分分析結果は、特徴推定部216aにより、Cr:97%、Ni:3%と推定されている。直前の成分分析結果である第2の深さにおける成分分析結果からCrの含有率は3%減少し、Niの含有率は3%増加している。すなわち、第2の分析深さにおける成分分析結果と、第3の分析深さにおける成分分析結果との少なくとも一方に含まれるいずれの構成元素の含有率も、変化開始閾値設定欄2003で設定された閾値である10以上変化していない。そのため、物質推定部216bは、第3の分析深さにおける物質として、直前の物質と同じCrと推定する。
【0192】
第4の分析深さにおける成分分析結果は、特徴推定部216aにより、Cr:70%、Ni:30%と推定されている。直前の成分分析結果である第3の深さにおける成分分析結果からCrの含有率は27%減少し、Niの含有率は27%増加している。すなわち、第4の分析深さにおける成分分析結果と、第3の分析深さにおける成分分析結果との少なくとも一方に含まれる構成元素の含有率には、変化開始閾値設定欄2003で設定された閾値である10以上の変化が生じている。そのため、物質推定部216bは、第4の分析深さにおける物質として、一の物質から他の物質への変化中である中間物質と推定する。なお、ここでは、中間物質として推定する場合を説明したが、第4の分析深さにおける物質として、第3の分析深さにおける物質であるCrと推定してもよい。すなわち、直前の分析深さにおける物質を、第4の分析深さにおける物質として推定できる。また、ラジオボタンRB33が選択され、含有率に一定以上の変化が生じた場合に分析を停止する場合、第4の分析深さにおける成分分析を以って成分分析を停止する。
【0193】
第5の分析深さにおける成分分析結果は、特徴推定部216aにより、Cr:20%、Ni:80%と推定されている。そのため、物質推定部216bは、第5の分析深さにおける物質としてニクロム線と推定することができる。また、物質推定部216bは、第6の分析深さにおける成分分析結果に基づいて、第5の分析深さの物質を推定することもできる。
【0194】
第6の分析深さにおける成分分析結果は、特徴推定部216aにより、Cr:5%、Ni:95%と推定されている。変化完了閾値設定欄2004において、一の物質から他の物質への変化が完了したと検知する閾値として2が設定されている場合、物質推定部216bにより2回以上同一の物質が推定された場合に変化が完了したと検知する。第6の分析深さにおける物質は、成分分析結果に基づいてNiと推定されるが、第5の分析深さにおける物質と、第6の分析深さにおける物質とが異なる。そのため、変化完了閾値設定欄2005において設定された閾値である2回以上同一の物質が推定されていない。この場合、第5の分析深さおよび第6の分析深さにおける物質として、物質推定部216bは、一の物質であるCrから他の物質への変化中である中間物質と推定することができる。すなわち、物質推定部216bは、第5の分析深さにおける物質を推定するために、第5の分析深さよりも深い位置における成分分析結果を考慮することができる。
【0195】
第7の分析深さにおける成分分析結果は、特徴推定部216aにより、Ni:100%と推定されている。そのため、物質推定部216bは、第7の分析深さにおける物質として、Niと推定する。この場合、第6の分析深さにおける物質と、第7の分析深さにおける物質とが同一であり、変化完了閾値設定欄2004において設定された閾値である2回以上同一の物質が推定されている。そのため、物質推定部216bは、第7の分析深さにおける物質としてNiと推定する。なお、第6の分析深さにおける物質と、第7の分析深さにおける物質とが同一であるため、物質推定部216bは、第6の分析深さにおける物質をNiであると再推定してもよい。
【0196】
詳細は省略するが、第8の分析深さ以降の成分分析結果および物質は図13に示す通りとなる。さらに、上記した通り成分分析毎に分析深さを求めることもできる。この場合、図13に示す成分分析結果の一覧表示の中に撮像処理部213により算出された分析深さを表示することもできる。
【0197】
以上説明したように、成分分析部216は、第1の分析深さにおける物質の構成元素の含有率と、該第1の分析深さよりも深い第2の分析深さにおける物質の構成元素の含有率とが、変化開始閾値設定欄2003で設定された所定の閾値以上相違した場合に、第1の分析深さにおける一の物質から他の物質への変化が開始したと推定し、第2の分析深さにおける物質として「変化途中の物質」であることを示す中間物質と推定することができる。なお、この場合、第2の分析深さにおける物質として、「中間物質」に代えて、第1の分析深さにおける物質と同じ物質を推定することもできる。
【0198】
また、成分分析部216は、第2の分析深さよりも深い第3の分析深さにおける物質を、該第3の分析深さよりも深い第4の分析深さにおける物質および、変化完了閾値設定欄2004で設定された所定の閾値に基づいて推定することができる。すなわち、変化完了閾値設定欄2004で閾値として2以上の値が設定されていた場合、第3の分析深さにおける物質と、第4の分析深さにおける物質とが相違する場合には、成分分析部216は、第3の分析深さにおける物質として中間物質と推定する。
【0199】
これにより、一の物質から他の物質への変化中に、成分分析結果が該一の物質および該他の物質とは異なる第3の物質の成分分析結果と一致した場合であっても、実際に第3の物質が存在するのか、一時的に第3の物質として検出されたのかを判定し、より適切に物質を推定することができる。
【0200】
さらに、成分分析部216は、第4の分析深さにおける物質を、第4の分析深さよりも浅い第3の分析深さにおける物質および、変化完了閾値設定欄2004で設定された所定の閾値に基づいて推定することができる。すなわち、変化完了閾値設定欄2004で閾値として2が設定されていた場合、第3の深さにおける物質と第4の分析深さにおける物質とが一致する場合に、成分分析部216は、一の物質から、他の物質への変化が完了したと推定する。そして、第4の分析深さにおける物質として、該第4の分析深さにおいて得られた成分分析結果に対応する物質を推定する。変化完了閾値設定欄2004で閾値として2より大きい値が設定されていた場合は、閾値回数以上連続して同一の物質が推定された場合に、一の物質から、他の物質への変化が完了したと推定する。
【0201】
これにより、所定の分析深さにおける物質を、前後の分析深さにおいて推定された物質に基づいて推定することで、一の物質から他の物質への変化中に、成分分析結果が該一の物質および該他の物質とは異なる第3の物質の成分分析結果と一致した場合であっても、実際に第3の物質が存在するのか、一時的に第3の物質として検出されたのかを判定し、より適切に一の物質から他の物質への変化が完了したことを推定することができる。
【0202】
-複合物質推定部217-
図5に示す複合物質推定部217は、成分分析部216により推定された物質と、ライブラリ保持部232に保持された複合物質ライブラリLiMとに基づいて、サンプルSPの複合物質を推定する。サンプルSPが基板上に所定の金属を被膜したような複合物質であった場合、物質を推定するだけではサンプルSPの性質を正確に把握できない場合がある。そのため、物質推定部216bは、サンプルSPの物質を複数回推定する。そして、複合物質推定部217は、複数回推定された物質に基づいて、サンプルSPの複合物質名を推定する。これにより、サンプルSPの複合物質の名称をユーザが把握でき、サンプルSPをより適切に評価することができる。図14を用いて複合物質ライブラリLiMについて説明する。
【0203】
複合物質ライブラリLiMは、複合物質の名称と、当該複合物質を構成する複数の物質の構成情報とを対応付けて記憶したライブラリである。ここで、構成情報の一例としては、一の複合物質を構成する複数の物質の深さ方向における順序が挙げられる。さらに、複数の物質の各々について、複合物質中における深さ情報が含まれていてもよい。また、物質に代えてまたは物質に加えて、物質を特定する情報である上位分類や中位分類により構成情報が構築されてもよい。すなわち、図14に示す例では、鋼板と真鍮に分類される複合物質の材料について、複合物質の名称と、該複合物質を構成する複数の物質が対応付けられている。この複合物質ライブラリLiMは、図5に示すライブラリ読出部225により読み出される。
【0204】
例えば、複合物質ライブラリLiMには、鋼板に分類される亜鉛メッキ鋼板が含まれている。亜鉛メッキ鋼板の構成情報には、Znメッキと鉄鋼とが含まれ、この構成情報と、複合物質の名称である亜鉛メッキ鋼板とが対応付けられている。一の複合物質の構成情報には、該一の複合物質の表面から下層に一の複合物質を構成する複数の物質が含まれてもよい。すなわち、亜鉛メッキ鋼板の場合、鉄鋼上にZnメッキが施されているものであるため、サンプルの表面からは亜鉛が検出され、分析深さが深くなるにつれて鉄鋼が検出される。このような場合には、Znメッキと、鉄鋼とがこの順に対応付けられていてもよい。図14においては、一の複合物質を構成する物質または物質を特定する情報として、Znメッキと鉄鋼とをこの順に対応付けるために、構成物質1にZnメッキが、構成物質2に鉄鋼が対応付けられている。
【0205】
また、複合物質ライブラリLiMには、鋼板に分類されるニッケルメッキ鋼板が含まれている。ニッケルメッキ鋼板の構成情報には、Niメッキと鉄鋼とが含まれ、この構成情報と、複合物質の名称であるニッケルメッキ鋼板とが対応付けられている。上記の亜鉛メッキ鋼板と同様、複合物質の表面から下層に存在する順に複数の物質を対応付けるため、構成物質1にNiメッキが、構成物質2に鉄鋼が対応付けられている。
【0206】
さらに、複合物質ライブラリLiMには、真鍮に分類されるニッケルクロムメッキ真鍮が含まれている。ニッケルクロムメッキ真鍮の構成情報には、Crメッキ、Niメッキ、真鍮が含まれ、この構成情報と、複合物質の名称であるニッケルクロムメッキ真鍮とが対応付けられている。上記の亜鉛メッキ鋼板と同様、複合物質の表面から下層に存在する順に複数の物質を対応付けるため、構成物質1にCrメッキが、構成物質2にNiメッキが、構成物質3に真鍮が対応付けられている。
【0207】
このように複合物質ライブラリLiMは、複合物質の表面から下層に向かう深さ方向に物質が異なる一の複合物質の名称と、該一の複合物質を構成する複数の物質の構成情報とを対応付けたデータを保持する。そして、複合物質推定部217は、出射部71により分析深さが異なる複数の位置にレーザ光が照射され、物質推定部216bにより推定されたそれぞれの分析深さにおける物質と、複合物質ライブラリLiMとに基づいて、サンプルSPの複合物質名を推定することができる。すなわち、複合物質推定部217は、レーザ光が照射された特定の分析深さにおける物質だけでなく、分析深さが異なる複数の位置における物質を特定する情報に基づいてサンプルSPの複合物質の名称を推定できる。図13の場合、Cr、Ni、真鍮がサンプルSPの表面から下層に向かって存在している。そのため、複合物質推定部217は、複合物質ライブラリLiMに基づいて、サンプルSPの複合材料がニッケルクロムメッキ真鍮であると推定する。ニッケルクロムメッキ真鍮の場合、CrとNiはそれぞれメッキされたものであるため、後述の図16Cに示す結果表示領域3020では、Crメッキと、Niメッキとして推定されている。
【0208】
また、複合物質ライブラリLiMは、複合物質の名称と、該複合物質を構成する複数の物質の構成情報と、当該物質の複合物質中における深さ情報とが対応付けられていてもよい。この場合、複合物質推定部217は、分析深さの異なる複数の位置の各々において推定された物質と、撮像処理部213により算出されたレーザ光の照射位置である分析深さと、ライブラリ保持部に保持されている複合物質ライブラリとに基づいて複合物質の名称の特定を行うことで、より正確に複合物質を特定することができる。
【0209】
複数の分析深さにおける物質を特定する情報に基づいて、サンプルSPの複合物質名を推定することにより、分析に精通していないユーザであっても、サンプルSPの性質を容易に把握することができ、ユーザビリティの向上につながる。
【0210】
-複合物質登録部218-
複合物質登録部218は、物質推定部216bにより推定されたそれぞれの分析深さにおける物質または物質を特定する情報に基づいて、サンプルSPの複合物質の名称が推定できない場合、すなわち、サンプルSPの深さ方向における物質の分布または、サンプルSPの深さ方向における物質を特定する情報の分布に対応する複合物質の名称が複合物質ライブラリLiMに登録されていない場合、複合物質ライブラリLiMに、新たな複合物質を登録できる。例えば、複合物質推定部217によりサンプルSPの複合物質名が推定できなかった場合、表示制御部221aは、表示部22に複合物質を特定できなかったことを通知するエラー画面を表示できる。このエラー画面上で、入力受付部221bは、新規の複合物質として登録するか否かの選択を受け付ける。入力受付部221bが新規の複合物質としての登録を受け付けた場合、複合物質登録部218は、ユーザにより入力された複合物質の名称と、物質推定部216bにより推定されたそれぞれの分析深さにおける物質に基づく構成情報とを対応付けて、物質ライブラリLiMに登録する。複合物質登録部218は、新たな複合物質を複合物質ライブラリLiMに登録することで、一度でも分析された複合物質についてはその複合物質を特定できる。これにより、ユーザ環境に応じて適切な複合物質ライブラリLiMを構築することができる。
【0211】
<ドリリングのフローチャート>
サンプルSPの深さ方向の分析であるドリリングを行う方法を図15のフローチャートに従って説明する。
【0212】
まず、ステップS2501において、分析設定部226aは、ドリリング設定を受け付ける。ドリリング設定は、例えば、表示制御部221aが表示部22上に図12に示すようなドリリング設定画面2000を表示させ、該ドリリング設定画面2000上で、入力受付部221bがユーザによる入力を受け付けることで設定される。
【0213】
次に、ステップS2502において、分析設定部226aは、照射前画像Pbを取得するか否かを判定する。この判定は、例えば、ドリリング設定画面2000上で、照射前の画像を取得するためのチェックボックスCB15が選択されたか否かに基づいて行うことができる。この判定がYESの場合は、制御プロセスをステップS2503へ進める一方、NOの場合は、ステップS2503をスキップして制御プロセスをステップS2504に進める。
【0214】
ステップS2503において、撮像処理部213は、サンプルSPの照射前画像を生成する。サンプルSPの照射前画像としては、第1カメラ81によりサンプルSPが撮影された画像であってもよいし、第2カメラ93によりサンプルSPが撮影された画像であってもよい。
【0215】
続いて、ステップS2504において、サンプルSPの成分分析を行う。このステップは、図8のフローチャートと同様である。
【0216】
次にステップS2505において、分析設定部226aは、出射部71によりサンプルSPにレーザ光が照射されるごとに画像Pを取得するか否かを判定する。この判定は、例えば、ドリリング設定画面2000上で、照射毎に画像Pを取得するためのチェックボックスCB36が選択されたか否かに基づいて行うことができる。この判定がYESの場合は、制御プロセスをステップS2506へ進める一方、NOの場合は、ステップS2506をスキップして制御プロセスをステップS2507に進める。
【0217】
ステップS2506において、撮像処理部213は、サンプルSPの画像を生成する。サンプルSPの画像としては、成分分析を行うための光学系である分析光学系を収容する分析筐体に含まれる第1カメラ81によりサンプルSPが撮影された画像であってもよい。また、ステップS2506において、フォーカスが合う点を探すことで、撮像処理部213は分析箇所の底部の深さを求めることもできる。
【0218】
次に、ステップS2507において、出射制御部214は、出射部71からの電磁波であるレーザ光の出射回数が、連射回数入力欄2002で入力された回数未満か否かを判定する。この判定がYESの場合は、制御プロセスをステップS2508に進める一方、NOの場合は、制御プロセスをステップS2509に進める。
【0219】
ステップS2508において、成分分析部216は、物質の変化開始または物質の変化完了といった分析停止条件を満たしているか否かを判定する。この判定は、ドリリング設定画面2000において、物質の変化が完了したら分析を停止するためのチェックボックスCB32が選択され、ドリリング設定として、分析停止条件が設定されている場合のみ行ってもよい。この判定がYESの場合は、制御プロセスをステップS2509に進め、NOの場合は、制御プロセスをS2504に戻し、再び成分分析を行う。
【0220】
次に、ステップS2509において、複合物質推定部217は、物質推定部216bにより推定された複数の物質と、該複数の物質が推定された順序と分析深さの少なくとも一方と、ライブラリ読出部225により読み出された複合物質ライブラリLiMとに基づいて、サンプルSPの複合物質名を推定できたか否かを判定する。この判定がYESの場合は、制御プロセスをステップS2510に進め、NOの場合は、制御プロセスをステップS2511に進める。ステップS2510において、ステップS2509で推定された複合物質名を表示部22に表示させる。
【0221】
ステップS2511において、入力受付部221bは追加分析を行う操作が行われたか否かを判定する。深さ方向における情報が不足する場合は、追加分析により複合物質を推定できる可能性を高めることができる。この判定がYESの場合はステップS2504に戻り成分分析を再実行し、NOの場合は、制御プロセスをステップS2512に進める。
【0222】
ステップS2512において、入力受付部221bは、新たな複合物質名を複合物質ライブラリLiMに登録する操作が行われたか否かを判定する。この判定がYESの場合は、制御プロセスをステップS2513に進める一方、NOの場合は、分析を終了する。
【0223】
ステップS2513おいて、入力受付部221bは、複合物質ライブラリLiMに登録する複合物質名の入力を受け付ける。そして複合物質登録部218は、入力受付部221bにより受け付けた複合物質名を、物質推定部216bにより推定された複数の分析深さにおける物質と対応付けて複合物質ライブラリLiMに登録する。ステップS2514において、表示制御部221aは、ステップS2512で登録された複合物質名を表示部22に表示させる。
【0224】
以上のステップS2501~S2514によりサンプルSPの深さ方向の分析を行う。
【0225】
<ドリリング分析のユーザインターフェース>
図16A図16Cは、ドリリング分析の結果を表示するためのドリリング画面3000の一例を示す図である。
【0226】
図16Aは、サンプルSPに対してレーザ光を照射する前のドリリング画面3000を示す図である。ドリリング画面3000は、画像表示領域3010と、結果表示領域3020と、関連画像表示領域3030とを有する。
【0227】
画像表示領域3010は、サンプルSPの画像Pを表示させるための領域である。画像表示領域3010には、分析光学系を収容する分析筐体に設けられた第1カメラ81でサンプルSPを撮影した画像Pを表示させることができる。また、この場合、画像表示領域3010には、第1カメラ81で撮影したサンプルSPの画像Pをリアルタイムで更新してなるライブ画像を表示させることもできる。サンプルSPのライブ画像を表示させる場合、ユーザはサンプルのどの位置を分析しようとしているのかを簡単に把握できるようになる。
【0228】
また、画像表示領域3010に表示されるサンプルSPのライブ画像には、視野中心を表す位置情報を重畳表示することができる。位置情報の重畳表示は、視野中心が交点となるような十字線をサンプルSPの画像上に重畳することで実現されてもよいし、視野中心に対応する位置に任意のマークを重畳することにより実現されてもよい。
【0229】
結果表示領域3020は、成分分析部216による成分分析結果および、複合物質推定部217による複合物質推定結果を表示するための領域であり、複合物質推定部217による複合物質推定結果を表示する推定複合物質表示領域3021と、成分分析部216による成分分析結果を表示する成分分析結果表示領域3022とを含む。
【0230】
図16Aは、分析前のドリリング画面3000を示す図である。そのため、図16Aに示す例では、推定複合物質表示領域3021には、分析前であることを示す「未分析」と表示される。また、成分分析結果表示領域3022に表示される成分分析結果は存在しない。
【0231】
関連画像表示領域3030は、一の成分分析結果に対応付けて保存された画像Pを表示するための領域である。上記の通り一の成分分析結果には、広域画像、照射前画像Pb、照射後画像Pa、俯瞰画像Pfといった画像Pを対応付けることができる。表示制御部221aは、これらの対応付けられた画像Pを、関連画像表示領域3030に表示させることができる。図16Aに示す例では、分析前の状態であるため。関連画像表示領域3030に表示される関連画像は存在しない。
【0232】
図16Bは、サンプルSPに対してレーザ光を3回照射した後のドリリング画面3000を示す図である。
【0233】
画像表示領域3010には、サンプルSPの照射前画像Pbと、1回目、2回目、3回目のレーザ光が照射された後の照射後画像Pa1、Pa2、Pa3とがサンプルSPのライブ画像に重畳して表示されている。ここで表示される照射前画像Pbと照射後画像Paは、分析箇所の周辺を拡大表示したものが用いられてもよい。これにより、分析箇所周辺の色合いや形状などをより詳細に確認することができる。
【0234】
ドリリング設定において、照射前の画像を取得するか否かをチェックボックスCB35の選択により選択することができる。チェックボックスCB15が選択されることにより、照射前の画像を取得するよう設定された場合、撮像処理部213は、出射部71からレーザ光の出射に先立って、サンプルSPの画像Pを生成する。これにより得られた照射前画像Pbを、画像表示領域3010上に重畳して表示する。
【0235】
また、チェックボックスCB36が選択されることにより、照射毎に画像を取得するように設定された場合、撮像処理部213は、出射部71からレーザ光が出射されるごとにサンプルSPの画像を生成し、これにより得られた照射後画像Paを画像表示領域3010上に重畳して表示することができる。
【0236】
深さ分析画面3040は、どの元素がどの割合で存在しているかをサンプルSPの深さ方向に示す画面である。深さ分析画面3040の詳細は後述する。
【0237】
図16Bに示す例では、サンプルSPに対して電磁波であるレーザ光を3回照射した状態であり、サンプルSPの成分分析は完了していない。そのため、表示制御部221aは、成分分析の途中である「分析中」という表示を推定複合物質表示領域3021に表示させる。また、成分分析結果表示領域3022には、サンプルSPに対してレーザ光が照射されることにより、成分分析部216により得られた成分分析結果や物質推定部216bにより推定された物質が表示される。なお、成分分析結果表示領域3022には、物質推定部216bにより推定された物質に代えて、または該物質に加えて、物質を特定する情報が表示されてもよい。ここで、物質を特定する情報とは、例えば、物質の上位分類や中位分類などが含まれる。すなわち、物質推定部216bにより推定された物質の一般名や総称などが含まれる。すなわち、物質推定部216bにより物質としてSUS300番台と推定された場合、オーステナイト系、ステンレス鋼、合金といった情報が物質を特定する情報に対応する。
【0238】
図16Cは、サンプルSPの分析深さの異なる複数の位置にレーザ光を照射し、分析が完了した状態を示す図である。この例は、連射回数入力欄2003において、連射回数が15回と入力されている場合の例である。また、変化開始閾値と、変化完了閾値は図22で説明した通りであり、物質の変化が完了したら分析を停止するか否かを選択するチェックボックスCB32は選択されていないとする。
【0239】
画像表示領域3010には、サンプルSPの照射前画像Pbと、照射後画像Pa1、Pb2、・・・が表示されている。スペースの関係上、図16Cには、9枚の照射後画像Pa1~9のみ表示しているが、上下または左右方向のカーソル移動、画像の縮小表示などにより、すべての照射後画像Paが表示されてもよい。
【0240】
また、深さ分析画面3040には、サンプルSPの深さ方向に、特徴推定部216aにより推定された特徴Chが表示される。これにより、サンプルSPの表面から下層に進むにつれて、特徴を構成する元素の種類と、該元素の含有率がどのように分布しているのかを把握することができる。
【0241】
推定複合物質表示領域3021には、15回の成分分析結果と、複合物質ライブラリLiMとに基づいて複合物質推定部217により推定された複合物質が表示される。サンプルSPの表面から下層に進むにつれて、順にCr、Ni、真鍮と物質が変化している。そのため、複合物質推定部217は、サンプルSPの複合物質名はニッケルクロムメッキ真鍮材であると推定し、表示制御部221aは、推定複合物質表示領域301に、「ニッケルクロムメッキ真鍮材」と表示する。
【0242】
成分分析結果表示領域3022には、サンプルSPに対してレーザ光が照射される毎に、成分分析部216により得られた成分分析結果を表示している。それぞれの成分分析結果には、特徴推定部216aにより推定された特徴Chを構成する構成元素と、該元素の含有率、物質推定部216bにより推定された物質が含まれる。これにより、分析深さが異なる複数の位置において、サンプルSPを構成する特徴Chがどのように変化しているかを把握することができる。
【0243】
ここで、深さ分析画面3040および成分分析結果表示領域3022の少なくとも一方には、撮像処理部213により算出された分析深さを示す深さ情報が表示されてもよい。これによりサンプルのどの深さを分析した結果であるのかということをより正確に把握することができる。
【0244】
関連画像表示領域3030には、一の成分分析結果に関連付けられた画像を表示させることができる。図16Cに示す例では、一の成分分析結果として、No.2の成分分析結果がユーザにより選択されている。一の成分分析結果の選択を入力受付部221bが受け付けると、表示制御部221aは、表示部22上に、該一の成分分析結果に関連付けられた画像を表示させる。この例では、No.2の成分分析結果に関連付けて保存されたサンプルSPの高倍画像である照射後画像Pa2と、俯瞰画像Pfとが表示される。
【0245】
<深さ分析画面3040>
深さ分析画面3040について、図16Cに基づいて説明する。
【0246】
サンプルSPの深さ方向の分析であるドリリングでは、サンプルSPに対して電磁波であるレーザ光が照射される毎に、分析箇所にクレーター状の穴が生じる。その結果として、サンプルSPを深さ方向に掘り進めることができ、異なる分析深さにおける物質を推定することができる。
【0247】
深さ分析画面3040は、異なる分析深さに存在する元素の種類と、該元素の含有率を、分析深さの深さ順に表示させる画面である。
【0248】
サンプルSPに対してレーザ光が照射されることで、サンプルSPはレーザ光が照射された表面から順に掘り進められる。そのため、略同一の分析箇所に繰り返しレーザ光を照射する場合、レーザ光の出射回数が増えるにつれて、サンプルSPの表面からより深い箇所にレーザ光が照射される。そのため、レーザ光の出射回数と、分析深さとは正の相関関係がある。
【0249】
そこで、レーザ光がサンプルSPに照射されることで得られた複数の成分分析結果を、該成分分析結果が得られた順に表示部22の上から下へと整列させることで、表示部の上下方向と、分析の深さ方向とが対応する。このようにすることで、サンプルSPの表面から下層に進むにつれて、特徴を構成する元素の種類と、該元素の含有率がどのように分布しているのかを直感的に把握することができる。
【0250】
サンプルSPに対して1回目のレーザ光が照射されることで得られた成分分析結果は、Cr:100%である。これを深さ分析画面3040の所定の位置に表形式およびグラフ方式で表示する。
【0251】
次に、サンプルSPに対して2回目のレーザ光が照射されることで得られた成分分析結果も、1回目と同様Cr:100%である。これを深さ分析画面3040上で、1回目の成分分析結果の下に表示する。同様に3回目以降の成分分析結果もそれぞれ、直前の成分分析結果である2回目、3回目、・・・の成分分析結果の下に表示する。
【0252】
これにより上から下へと成分分析結果が表形式およびグラフ形式で表示されることになる。上記の通り、1回目の成分分析結果は、サンプルSPの表面の成分分析結果に対応し、レーザ光の照射回数が増えるにつれてサンプルSPの下層の成分分析結果に対応する。そのため、レーザ光の照射順に上から下へと成分分析結果を表示することは、サンプルSPの分析深さ順に表示することである。
【0253】
また、深さ分析画面3040には、複合物質推定部217により推定されたサンプルSPの複合物質名を表示することもできる。これにより、サンプルSPがどのような複合物質であるかを容易に把握することができる。
【0254】
このように分析深さ順に、表示部22の上下方向に成分分析結果を表示させることで、サンプルSPをあたかも断面から見たような形で成分分析結果を表示させることができる。サンプルSPの深さ方向と、表示部22の上下方向とが対応することにより、物質がサンプルSPの表面から下層にかけてどのように変化しているのかを直感的に把握できるため、ユーザビリティを向上させることができる。
【0255】
さらに、深さ分析画面3040には、サンプルSPのどの深さを分析しているかを直感的に示す分析深さ描画画面3041を表示させることができる。
【0256】
サンプルSPに対して繰り返しレーザ光を照射することにより、サンプルSPは深さ方向に掘り進められる。レーザ光がサンプルSPに照射されることで得られた複数の成分分析結果を、該成分分析結果が得られた順に表示部22の上から下へと整列させることに加えて、サンプルSPのどの深さを分析しているかを示す分析深さ描画画面3041を対応付けて表示させることで、より簡単に、サンプルSPの表面から下層に進むにつれて、特徴を構成する元素の種類と、該元素の含有率がどのように分布しているのかを直感的に把握することができる。
【0257】
<分析深さ測定>
本実施形態では、サンプルSPへのレーザ光の照射前または照射後に、オートフォーカスを実行し、分析深さを測定することもできる。詳細は省略するが、サンプルSPとヘッド部6との間の相対距離を変化させつつ、第1カメラ81による画像Pの生成を実行することにより、ヘッド部からサンプルSPのレーザ照射箇所までの距離を測定できる。ここで測定された距離に基づいて、分析深さ描画画面3041に分析深さを表示させることができる。これにより、実際の深さに基づいて特徴を構成する元素の種類と、該元素の含有率の分布を表示できるため、より正確にサンプルSPの分析結果を評価できる。
【0258】
さらに、サンプルSPへのレーザ光の照射前または照射後に分析深さを測定することで、一の物質が分布する厚さ(深さ方向の幅)を推定することもできる。この厚さに基づいて、複合物質推定部217は、サンプルSPの複合物質名として確度が高いものを推定することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0259】
以上説明したように、本発明に係るレーザ誘起ブレークダウン分光装置は、各種サンプルを分析する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0260】
A 分析観察装置
SP サンプル(分析対象物)
1 光学系アセンブリ
5 載置台
6 ヘッド部
7 分析光学系
71 出射部
74 反射型対物レンズ(収集ヘッド)
77A 第1検出部(検出部)
77B 第2検出部(検出部)
81 第1カメラ(撮像部)
9 観察光学系
93 第2カメラ(撮像部)
96 拡大光学系
2 コントローラ本体
21a 処理部
211 モード切替部
212 照明制御部
213 撮像処理部
214 出射制御部
215 スペクトル取得部
216 成分分析部
217 複合物質推定部
221 UI制御部
225 ライブラリ読出部
226 設定部
21b 1次記憶部
21c 2次記憶部
22 表示部
P 画像
Pb 照射前画像
Pa 照射後画像
Pf 俯瞰画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図16A
図16B
図16C