(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023020699
(43)【公開日】2023-02-09
(54)【発明の名称】殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/20 20060101AFI20230202BHJP
【FI】
A61L2/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021126203
(22)【出願日】2021-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】392022064
【氏名又は名称】キヤノンメドテックサプライ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花田 康史
(72)【発明者】
【氏名】小山 高志
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058BB07
4C058CC02
4C058DD02
4C058DD04
4C058DD13
4C058EE26
4C058EE29
4C058JJ12
(57)【要約】
【課題】殺菌装置の殺菌性能の向上を図る。
【解決手段】殺菌装置1は、殺菌庫11と、殺菌剤供給部12と、複数の加熱部43と、制御装置3と、を備える。殺菌庫11には、被殺菌物100を収容する殺菌室11aが内部に設けられている。殺菌剤供給部12は、殺菌室11a内を減圧することにより液体状の殺菌剤を気化させて、気化された殺菌剤を殺菌室11aに供給する。加熱部43は、殺菌室11aに収容されている。複数の加熱部43は、殺菌室11aに収容された被殺菌物100を加熱する。制御装置3は、複数の加熱部43をそれぞれ独立して制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被殺菌物を収容する殺菌室が内部に設けられた殺菌庫と、
前記殺菌室内を減圧することにより液体状の殺菌剤を気化させて、気化された前記殺菌剤を前記殺菌室に供給する殺菌剤供給部と、
前記殺菌室に収容された前記被殺菌物を加熱する複数の加熱部と、
前記複数の加熱部をそれぞれ独立して制御する制御装置と、
を備えた殺菌装置。
【請求項2】
前記殺菌庫の外側に配置され、前記殺菌庫を加熱する外側加熱部を備え、
前記複数の加熱部は、前記殺菌室に収容された、請求項1に記載の殺菌装置。
【請求項3】
前記殺菌庫は、前記殺菌室を囲む壁を有し、
前記複数の加熱部のそれぞれの比熱は、前記壁の比熱よりも低い、請求項1または2に記載の殺菌装置。
【請求項4】
前記殺菌室内に前記殺菌庫の上下方向に間隔を空けて配置され、前記被殺菌物が載置される複数の棚を備え、
前記殺菌剤供給部は、互いに異なる前記棚の前記上下方向の下側に配置された複数のユニットを有し、
前記ユニットは、それぞれ、前記加熱部と、間隔を空けて前記上下方向に対向した一対の板と、前記加熱部を収容し前記一対の板を支持したケースと、を有し、
前記加熱部は、前記一対の板の周囲に設けられ、
前記殺菌剤供給部には、液体状の前記殺菌剤を前記一対の板の間に供給する供給口と、前記上下方向と交差する方向に前記供給口と離間し、前記一対の板の間の前記殺菌剤が前記一対の板の間の外に流出する出口と、が設けられ、
前記殺菌剤が、前記一対の板の間で気化される、請求項3に記載の殺菌装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記加熱部の温度が目標温度となるように前記加熱部を制御し、
前記加熱部の目標温度が前記ユニットごとに異なる、請求項4に記載の殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等に開示の実施形態は、殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、殺菌庫内の殺菌室を減圧して、過酸化水素水溶液等の殺菌剤を殺菌室に吸引しつつ気化させて、殺菌室に収容された被殺菌物を気化された殺菌剤によって殺菌する殺菌装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の殺菌装置では、より殺菌性能の向上を図ることができれば有益である。本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、殺菌装置の殺菌性能の向上を図ることである。ただし、本明細書等に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を、本明細書等に開示の実施形態が解決する他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の殺菌装置は、被殺菌物を収容する殺菌室が内部に設けられた殺菌庫と、前記殺菌室内を減圧することにより液体状の殺菌剤を気化させて、気化された前記殺菌剤を前記殺菌室に供給する殺菌剤供給部と、前記殺菌室に収容された前記被殺菌物を加熱する複数の加熱部と、前記複数の加熱部をそれぞれ独立して制御する制御装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態の殺菌装置の構成を例示的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態の殺菌装置における殺菌庫の一部を例示的に示す正面図であって、殺菌庫の扉以外の部分を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態の殺菌装置の主棚を例示的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、実施形態の殺菌装置の加熱・気化ユニットの一部を例示的に示す平面図であって、上壁以外の部分を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4のV-V線に沿った断面の一部を例示的に示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図4のVI-VI線に沿った断面の一部を例示的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、
図4のVII-VII線に沿った断面の一部を例示的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態の変形例の加熱・気化ユニットの一部を例示的に示す平面図であって、上壁以外の部分を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0008】
また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。また、図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0009】
図1は、実施形態の殺菌装置1の構成を例示的に示す図である。
図1に示されるように、殺菌装置1は、殺菌処理部2と、制御装置3と、を備える。殺菌処理部2は、液体状の殺菌剤を気化させて、気化させた殺菌剤によって被殺菌物100を殺菌する。すなわち、殺菌処理部2は、菌を殺すことができる。換言すると、殺菌処理部2は、滅菌する。すなわち、殺菌処理部2は、菌を減らすことができる。液体状の殺菌剤は、例えば過酸化水素水溶液である。また、被殺菌物100は、例えば、医療用機器である。医療用機器は、例えば内視鏡等の内腔が設けられたものであってもよいし、内腔が設けられていないものであってもよい。なお、被殺菌物100は、医療用機器以外であってもよい。制御装置3は、殺菌処理部2を制御する。殺菌装置1は、滅菌装置とも称される。
【0010】
殺菌処理部(滅菌処理部)2は、殺菌庫(滅菌庫)11と、殺菌剤供給部(滅菌剤供給部)12と、を備える。殺菌庫11の内部には、被殺菌物(被滅菌物)100を収容する殺菌室(滅菌室)11aが設けられており、殺菌剤供給部12は、殺菌室11aに殺菌剤(滅菌剤)を供給する。殺菌室11aは、チャンバーとも称される。
【0011】
また、本実施形態では、便宜上、互いに直交する三方向が定義されている。X方向は、殺菌庫11の前後方向(奥行方向)の後方と一致し、Y方向は、殺菌庫11の幅方向に沿い、Z方向は、殺菌庫11の上下方向(高さ方向)の上方と一致する。なお、以後では、殺菌庫11の幅方向を左右方向とも称する。
【0012】
殺菌剤供給部12は、カートリッジ31と、液相ポンプ32と、濃縮器33と、電磁弁34と、分配器35と、加熱・気化ユニット36と、真空ポンプ37と、電磁弁38と、真空ゲージ39と、を備える。カートリッジ31と、液相ポンプ32と、濃縮器33と、電磁弁34と、分配器35と、加熱・気化ユニット36とは、流体回路を構成している。加熱・気化ユニット36は、ユニットの一例である。
【0013】
真空ポンプ37は、殺菌庫11内すなわち殺菌室11a、加熱・気化ユニット36内、分配器35内の気体を吸引して、それぞれの空間内を減圧し真空状態(大気圧より低い圧力である陰圧の気体で満たされた空間内の状態)にする。真空状態は、陰圧状態とも称される。
【0014】
カートリッジ31は、液体状の殺菌剤(原液)を収容している。液相ポンプ32は、カートリッジ31から液体状の殺菌剤を吸引して、吸引した液体状の殺菌剤を濃縮器33へ吐出すなわち供給する。液相ポンプ32は、殺菌剤の吸引量および吐出量を計量可能なチューブポンプである。
【0015】
濃縮器33は、液体状の殺菌剤を加熱して液体状の殺菌剤を濃縮する。具体的には、濃縮器33は、過酸化水素水溶液中の水を熱により気化させて、過酸化水素水溶液中の過酸化水素の濃度を上げる。
【0016】
電磁弁34は、濃縮器33と殺菌室11aとの間に設けられている。電磁弁34が開くと、殺菌室11aが陰圧となっている場合には、濃縮器33からの殺菌剤が殺菌室11aに供給される。
【0017】
分配器35は、濃縮器33と殺菌室11aとの間に設けられている。分配器35は、陰圧によって電磁弁34から流入した液体状の殺菌剤を、パスカルの法則により四分割して、後述の四つの気化器42に等量で分配する。
【0018】
四つの気化器42は、液体状の殺菌剤を気化させて、気体状の殺菌剤を殺菌室11a内に供給する。
【0019】
電磁弁38は、殺菌室11aの内と外とを連通する開弁状態と殺菌室11aの内と外とを遮断する閉弁状態とに変化可能である。電磁弁38が開弁状態になると、殺菌室11aが減圧状態から大気圧状態に戻る。真空ゲージ39は、殺菌室11aの真空度を測定する。
【0020】
図2は、実施形態の殺菌装置1における殺菌庫11の一部を例示的に示す正面図であって、殺菌庫11の扉22以外の部分を示す図である。
図1および
図2に示されるように、殺菌庫11の内部には、殺菌室11aが設けられている。殺菌室11aに被殺菌物100(
図1)が収容される。
【0021】
殺菌庫11は、前後方向を長手方向とし幅方向を短手方向とする略直方体状の箱形である。殺菌庫11は、本体21と、扉22と、を有する。なお、殺菌庫11は、筐体とも称される。
【0022】
本体21は、上壁21aと、下壁21bと、右壁21cと、左壁21dと、後壁21eと、を有する。上壁21aおよび下壁21bは、いずれも上下方向と直交する方向に延びており、上下方向に間隔を空けて互いに平行に設けられている。右壁21cおよび左壁21dは、いずれも幅方向と直交する方向に延びており、幅方向に間隔を空けて互いに平行に設けられている。後壁21eは、前後方向と直交する方向に延びており、上壁21a、下壁21b、右壁21c、および左壁21dのそれぞれの後端部を接続している。
【0023】
本体21の内部に殺菌室11aが設けられている。殺菌室11aは、上壁21a、下壁21b、右壁21c、左壁21d、および後壁21eによって囲まれている。
【0024】
扉22は、上壁21a、下壁21b、右壁21cまたは左壁21dの前端部に回転可能に支持され、本体21に対して開閉可能である。扉22は、殺菌庫11の前壁である。扉22は、閉められた状態では、前後方向と直交する方向に延びており、上壁21a、下壁21b、右壁21c、および左壁21dのそれぞれの前端部と重なり、殺菌室11aを閉塞する。扉22が開かれると、殺菌室11aが前方に開放される。なお、後壁21eが、扉22と同様に開閉可能な扉として構成されていてもよい。すなわち、扉22と後壁21eとが、両方とも開閉可能であってもよい。扉22は、壁の一例である。
【0025】
上壁21a、下壁21b、右壁21c、左壁21d、後壁21e、および扉22は、殺菌室11aを囲んでいる。換言すると、上壁21a、下壁21b、右壁21c、左壁21d、後壁21e、および扉22は、殺菌室11aを形成している。上壁21a、下壁21b、右壁21c、左壁21d、後壁21e、および扉22は、例えば、厚さ数mmのステンレス製の板によって構成される。殺菌庫11は、剛体であり、比較的比熱が高い。
【0026】
また、
図1に示されるように、扉22、上壁21a、下壁21b、右壁21c、左壁21d、および後壁21eの外面には、外側ヒータ25が重ねられている。なお、
図1では、上記の外側ヒータ25のうち一部だけが示されている。外側ヒータ25は、殺菌庫11の外側から殺菌庫11の内部すなわち殺菌室11aを加熱する。外側ヒータ25は、シートヒータ等の熱源を有する。以下、この殺菌室11aの殺菌時(滅菌時)の温度を殺菌温度(滅菌温度)と称することがある。外側ヒータ25は、外側加熱部の一例である。
【0027】
図2に示されるように、殺菌室11aには、二つの主棚23と、二つの副棚24と、二つの加熱・気化ユニット36と、が収容されている。主棚23は、第1棚とも称され、副棚24は、第2棚とも称される。主棚23は、棚の一例である。
【0028】
二つの主棚23および二つの副棚24は、上下方向に間隔を空けて並べられている。下壁21bの上側に二つの主棚23のうち下側の主棚23が配置され、当該下側の主棚23の上側に二つの副棚24のうち下側の副棚24が配置され、当該下側の副棚24の上側に二つの主棚23のうち上側の主棚23が配置され、当該上側の主棚23の上側に二つの副棚24のうち上側の副棚24が配置されている。各主棚23および副棚24は、右壁21cと左壁21dとに設けられた支持部21f,21gによって着脱可能に支持されている。二つの主棚23および二つの副棚24は、殺菌庫11に対して前後方向にスライド可能である。二つの主棚23および二つの副棚24は、それぞれ、被殺菌物100の載置が可能である。
【0029】
図3は、実施形態の殺菌装置1の主棚23を例示的に示す平面図である。
図3に示されるように、主棚23は、複数の開口部23cが設けられた網状である。具体的には、主棚23は、棒状の複数の第1部材23aと、棒状の複数の第2部材23bと、を有する。複数の第1部材23aは、前後方向に延びるとともに、幅方向に互いに間隔を空けて配置されている。複数の第2部材23bは、幅方向に延びるとともに、前後方向に互いに間隔を空けて配置されている。複数の第1部材23aと複数の第2部材23bとは互いに接続されている。主棚23の下側には、ネット26が重ねられている。例えば、ネット26は、主棚23に溶接され、主棚23と一体化されている。ネット26の比熱は、主棚23の比熱よりも低い。ネット26には、複数の開口部が設けられている。なお、ネット26は設けられていなくてもよい。
【0030】
図2に示されるように、二つの加熱・気化ユニット36は、それぞれ、二つの主棚23の下側に配置されている。詳細には、二つの加熱・気化ユニット36は、それぞれ、二つの主棚23のそれぞれの直下に配置されている。直下とは、加熱・気化ユニット36に含まれる加熱部43の上端と主棚23の上端との間の上下方向の距離が、当該主棚23上の被殺菌物100を収容可能な空間(以後、棚上収容空間とも称する)の上下方向の高さの半分以下のことをいう。本実施形態では、主棚23上の棚上収容空間の下端は、当該主棚23の上端と一致し、棚上収容空間の上端は、上下方向で当該主棚23と隣り合う当該主棚23の上側の副棚24の下端と一致する。なお、加熱部43の上端と主棚23の上端との間の上下方向の距離は、当該主棚23上の棚上収容空間の上下方向の高さの1/4以下や1/10以下であってもよい。
【0031】
二つの加熱・気化ユニット36のうち上側の加熱・気化ユニット36は、右壁21cと左壁21dとに設けられた支持部21hによって着脱可能に支持されている。また、二つの加熱・気化ユニット36のうち下側の加熱・気化ユニット36は、下壁21bcに着脱可能に支持されている。
【0032】
図4は、実施形態の殺菌装置1の加熱・気化ユニット36の一部を例示的に示す平面図であって、上壁41a以外の部分を示す図である。
図5は、
図4のV-V線に沿った断面の一部を例示的に示す断面図である。
図6は、
図4のVI-VI線に沿った断面の一部を例示的に示す断面図である。
【0033】
図1,4,5に示されるように、加熱・気化ユニット36は、ケース41と、二つの気化器42と、加熱部43と、温度センサ44と、有する。
【0034】
ケース41は、上壁41a(
図4,5)、下壁41b、右壁41c(
図4)と、左壁41d(
図4)と、後壁41e(
図4)と、前壁41f(
図4)と、を有する。ケース41は、例えば、アルミニウムによって構成されている。
【0035】
上壁41aおよび下壁41bは、いずれも上下方向と直交する方向に延びており、上下方向に間隔を空けて互いに平行に設けられている。上壁41aには、開口部41aa(
図5,6)が設けられている。開口部41aaは、上壁41aを上下方向に貫通した貫通孔である。右壁41cおよび左壁41dは、いずれも幅方向と直交する方向に延びており、幅方向に間隔を空けて互いに平行に設けられている。後壁41eおよび前壁41fは、前後方向と直交する方向に延びており、前後方向に間隔を空けて互いに平行に設けられている。
【0036】
図4に示されるように、二つの気化器42は、上下方向と交差する方向である前後方向に間隔を空けてケース41に配置されている。各気化器42は、一対のすなわち二つの板45,46を有する。したがって、二つの板45,46の組47が二つ設けられており、これらの組47は、前後方向に間隔を空けてケース41に配置されている。なお、組47の数は、上記に限定されない。例えば、組47は、一つであってもよいし、三つ以上であってもよい。
【0037】
図1に示されるように、二つの板45,46は、殺菌室11aにおいて主棚23の下側に配置されている。
図4~6に示されるように、板45,46は、平板状である。二つの板45,46は、いずれも上下方向と直交する方向に延びて、上下方向に間隔を空けて互いに平行に設けられている。二つの板45,46は、平行平板とも称される。二つの板45,46の厚さは、例えば3mm程度あるが、これに限定されない。板46は、板45の下側に配置されている。板45は、開口部41aaは、上壁41aの開口部41aaの一部を覆った状態でネジ等の結合具51によって上壁41aの上面に固定されている。すなわち、板45は、上壁41aに支持されている。板46は、上壁41aと下壁41bとの間に配置され、結合具51によって上壁41aおよび下壁41bのそれぞれの内面に固定されている。すなわち、板46は、上壁41aおよび下壁41bに支持されている。板46は、対向部46a(
図5,6)と、張出部46bと、を有する。対向部46aは、板45と上下方向に対向する。張出部46bは、対向部46aと接続され板45に対して上下方向と交差する幅方向に張り出している。板46と下壁41bとの間には板50が設けられている。板50は、例えばアルミニウムによって構成されている。
【0038】
また、
図5,6に示されるように、気化器42には、供給口42bと出口42c(
図6)とが設けられている。供給口42bは、板46の略中央部に設けられている。すなわち、供給口42bは、二つの板45,46のうち一方の板46において当該板46の外縁部46cの内側に設けられている。供給口42bには、チューブ48を介して分配器35から液体状の殺菌剤が供給される。供給口42bは、液体状の殺菌剤を二つの板45,46の間の隙間42aに供給する。隙間42aは、殺菌剤の通路である。隙間42aは、上壁41aの開口部41aaに含まれる。チューブ48は、例えば、ステンレスによって構成されている。また、チューブ48は、例えばステンレスチューブと耐熱性のシリコンチューブとが接続された構成である。シリコンチューブは、加熱部43に近接する部分に設けられている。チューブ48は、配管とも称される。
【0039】
出口42cは、上下方向と交差する幅方向に供給口42bと離間している。出口42cは、二つの板45,46の間の隙間42aにおける二つの板45,46の外部に開放された外縁部42dによって構成されている。また、出口42cは、張出部46bに接続されている。出口42cから、二つの板45,46の間の殺菌剤が二つの板45,46の間の隙間42aの外に流出する。
【0040】
図1に示されるように、加熱部43は、殺菌室11aにおいて主棚23の下側に配置されている。また、
図4に示されるように、加熱部43は、二つの組47のそれぞれの二つの板45,46の周囲に設けられている。加熱部43は、折り曲げ加工された一つのシーズヒータである。シーズヒータは、例えば、外周部を構成するステンレス鋼管を含む。シーズヒータは、外径が例えば6mmであり、定格電力が1500W程度であるが、これに限定されない。加熱部43は、比較的に比熱が低い。加熱部43は、複数の第1延部43aと、複数の第2延部43bと、複数の第3延部43cと、一つの第4延部43dと、を有する。複数の第1延部43aは、いずれも幅方向に延びており、前後方向に間隔を空けて互いに平行に設けられている。二つの第1延部43aの間に気化器42が配置されている。複数の第2延部43bは、いずれも前後方向に延びて、前後方向に間隔を空けて設けられている。第2延部43bは、前後方向に隣り合う二つの第1延部43aの右側の端部を接続している。複数の第3延部43cは、いずれも前後方向に延びて、前後方向に間隔を空けて設けられている。第3延部43cは、前後方向に隣り合う二つの第1延部43aの左側の端部を接続している。なお、第2延部43bと第3延部43cとは、交互に配置されている。第4延部43dは、複数の第1延部43aのうち最も前側に位置する第1延部43aの左側の端部から後方に延びている。
【0041】
図4に示されるように、温度センサ44は、ケース41内に設けられ、二つの気化器42の間に位置している。温度センサ44は、例えば熱電対である。温度センサ44は、伝熱部材52を介して、加熱部43の第2延部43bと熱的に接続されている。温度センサ44は、加熱部43の温度を測定する。温度センサ44は、加熱・気化ユニット36の温度を測定するとも言うことができる。
【0042】
図7は、
図4のVII-VII線に沿った断面の一部を例示的に示す断面図である。
図7に示されるように、伝熱部材52は、接触部52a,52bを有する。接触部52aは、凹状の面である。接触部52aには、加熱部43が入れられており、接触部52aは、加熱部43と接触している。接触部52bは、凹状の面である。接触部52bには、温度センサ44が入れられており、接触部52bは、温度センサ44と接触している。伝熱部材52は、例えば、アルミニウムによって構成されている。
【0043】
ここで、加熱・気化ユニット36の加熱部43、二つの板45,46、およびケース41のそれぞれの比熱は、殺菌庫11の各壁(上壁21a、下壁21b、右壁21c、左壁21d、後壁21e、扉22)の比熱よりも低い。すなわち、加熱・気化ユニット36は、全体として殺菌庫11よりも比熱が低い。
【0044】
図1に示される制御装置3は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、およびRAM(Random Access Memory)を有する。すなわち、制御装置3は、コンピュータである。CPUは、ROM等に記憶されたプログラムを読み出して実行する。RAMは、CPUがプログラムを実行して種々の演算処理を実行する際に用いられる各種データを一時的に記憶する。また、制御装置3は、外側ヒータ25、液相ポンプ32、濃縮器33、電磁弁34、加熱部43、真空ポンプ37、および電磁弁38等を制御する。また、制御装置3には、真空ゲージ39、温度センサ44等が接続されている。
【0045】
制御装置3は、所定の位置(例えば、殺菌庫11の内側の上面)に設けられた庫内用温度センサの測定値に基づいて、殺菌庫11内の中心すなわち殺菌室11aの中心が規定の目標温度(以後、庫内設定温度とも称する)となるように、外側ヒータ25を制御する。庫内設定温度は、例えば、40℃~65℃であってもよいし、45℃~60℃であってもよいし、65℃以上であってもよいし、これら以外であってもよい。なお、庫内用温度センサが測定する箇所は、加熱部43が発する熱の影響を受けにくい箇所である。
【0046】
制御装置3は、複数の加熱部43をそれぞれ独立して制御する。換言すると、制御装置3は、複数の加熱部43をそれぞれ個別に制御する。制御装置3は、温度センサ44の測定値に基づいて、加熱部43の温度が規定の目標温度(以後、加熱設定温度とも称する)となるように加熱部43を制御する。このような制御は、例えば、被殺菌物100の温度を所定時間経過後に加熱設定温度にするために実行されうる。加熱設定温度は、例えば庫内設定温度よりも高い。上記制御は、例えば、温度センサ44の測定値を入力値とするPID(Proportional Integral Differential)制御である。加熱設定温度は、制御目標温度とも称される。
【0047】
加熱部43の加熱設定温度は、加熱・気化ユニット36ごとに異なる。加熱設定温度は、種々の事情を考慮し、例えば実験的に定めることができる。例えば、加熱設定温度は、加熱部43の配置される位置、殺菌庫11の上壁21aの内面または下壁21bの内面からの加熱部43の距離、他の加熱部43との位置関係等が影響を与える。
【0048】
例えば、下側の加熱・気化ユニット36の加熱部43の加熱設定温度は、上側の加熱・気化ユニット36の加熱・気化ユニット36の加熱設定温度よりも低く設定されうる。これは、以下が考慮された場合の例である。例えば、加熱・気化ユニット36が二つである場合、上側の主棚23に配置される被殺菌物100は、上側の加熱・気化ユニット36の上側に位置するので、主に上側の加熱・気化ユニット36の熱を受け、下側の加熱・気化ユニット36の熱は比較的受けにくい。一方、下側の主棚23に配置される被殺菌物100は、上側と下側の二つの加熱・気化ユニット36の間に配置されるので、上側と下側の両方の加熱・気化ユニット36の熱を受けやすい。すなわち、下側の主棚23に配置される被殺菌物100は、上側の主棚23に配置される被殺菌物100よりも熱せられやすい可能性がある。
【0049】
また、別の一例では、下側の加熱・気化ユニット36は、より殺菌庫11の下壁21bに近く、上側の加熱・気化ユニット36よりも熱を奪われやすい可能性がある。このため、下側の加熱・気化ユニット36の加熱設定温度は、上側の加熱・気化ユニット36よりも高く設定されうる。
【0050】
また、別の一例では、両方の加熱・気化ユニット36の加熱設定温度は、同じでありうる。
【0051】
また、別の一例として、加熱・気化ユニット36の加熱設定温度は、加熱・気化ユニット36に対応する主棚23に載置される被殺菌物100に応じて設定されうる。例えば、一方の加熱・気化ユニット36の加熱設定温度は、被殺菌物100であって金属(例えばチタン合金)の塊である開胸固定用具用に設定され、他方の加熱・気化ユニット36の加熱設定温度は、シリコンピンマットに包まれた上にさらに不織布に梱包された被殺菌物100用の温度に設定されてもよい。
【0052】
次に、殺菌装置1の動作を説明する。以下の動作の制御は、制御装置3によって行われる。また、以下の動作においては、外側ヒータ25が動作しており、外側ヒータ25が殺菌室11aを殺菌室11aの外側から加熱している。殺菌装置1は、電磁弁34を閉じた状態で、真空ポンプ37によって殺菌室11aおよび殺菌室11aから電磁弁34までの間の流体回路中の空間の圧力を減圧する。殺菌装置1は、殺菌室11aの圧力が規定の圧力まで下がった場合に、電磁弁34を開く。これにより、濃縮器33から出た殺菌剤が、殺菌室11aに向かって進み、分配器35によって、各加熱・気化ユニット36に流入する。殺菌剤は、各加熱・気化ユニット36において、供給口42bから二つの板45,46の間に進み、二つの板45,46の間で加熱部43によって加熱される。これにより、殺菌剤は、二つの板45,46の間を熱膨張しながら、真空に引かれて、同心円状に広がり、二つの板45,46との接触面積が瞬時に増大する。このとき、加熱部43は、加熱に殺菌剤を加熱することにより殺菌剤の気化を促進している。これにより、殺菌剤が二つの板45,46の間で瞬時に飽和水蒸気圧まで蒸発する。すなわち、殺菌剤が、二つの板45,46の間で気化する。よって、過酸化水素水溶液中の水分子の気化と過酸化水素分子の気化とに時間差が生じるのが抑制される。ここで、気化した殺菌剤(ガス)における過酸化水素と水との割合は、過酸化水素が60%で水が40%となるかそれに近い値となる。
【0053】
気体状の殺菌剤は、出口42cから二つの板45,46の外側の殺菌室11aに流出する。殺菌室11aに入った気体状の殺菌剤は、上方に流れて、主棚23に載置された被殺菌物100に接触する。これにより、被殺菌物100が殺菌される。このように、主棚23の直下の気化器42で殺菌剤が気化して、気化した殺菌剤が主棚23上の被殺菌物100に到達する。よって、気化器42で気化した殺菌剤が比較的短時間および短距離で被殺菌物100に到達することができる。したがって、被殺菌物100に到達したガスにおける過酸化水素と水との割合が、過酸化水素が60%で水が40%となるか近い値に維持されやすい。
【0054】
このとき、加熱部43は、被殺菌物100を加熱(加温)する。すなわち、加熱部43は、殺菌剤供給部12によって殺菌室11aへ殺菌剤の供給が行われている場合に、被殺菌物100を加熱する。具体的には、加熱部43は、被殺菌物100を輻射熱で加熱(加温)する。各加熱部43は、上述の通り、温度センサ44が検出する加熱部43の温度が加熱設定温度に維持されるように制御装置3によって互いに独立して制御される。一例として、加熱部43は、殺菌時には加熱部43の温度が第1温度となるように制御され、待機時(非殺菌時)には加熱部43の温度が第1温度よりも低い第2温度となるように制御される。第1温度は、例えば、80℃を含む規定の範囲内の温度であり、第2温度は、55℃を含む規定の範囲内の温度である。待機時の温度は、殺菌室11a内であってケース41から比較的離れた場所の温度と同じである。
【0055】
上記のように、過酸化水素水溶液における過酸化水素と水との割合が、過酸化水素が60%で水が40%となるかそれに近い値になるのは、以下の理由である。すなわち、過酸化水素水溶液は、例えば濃度60%程度(実際は59%)の水溶液で提供されるが、これは60%の過酸化水素分子と40%の水で構成され、過酸化水素は、水と高い親和性を持つことから反応や結合をせずにそのまま水溶液として存在するからである。
【0056】
このような過酸化水素水溶液が気化する場合、水が先に気化し過酸化水素が遅れて気化する割合が高い。これは、単純に分子の質量(H2O=18、H2O2=34)の差によるものであり、真空蒸発でも熱蒸発でもこの傾向は変わらない。このような傾向により、過酸化水素水溶液の気化の初期に、水が気化し遅れて過酸化水素が気化することとなる。このため、被殺菌物100の殺菌の場合、先に気化した水が先に被殺菌物100に到達し水の膜を形成し遅れて過酸化水素が被殺菌物100に到達する傾向となりやすい。この場合、被殺菌物100に到着した過酸化水素が、先に被殺菌物100に到着した水の膜により薄められるため、殺菌効果が大きくなりにくい虞がある。これに対して、本実施形態では、上記のとおり、殺菌剤が二つの板45,46の間で瞬時に気化されることによって、酸化水素水溶液において水の気化と過酸化水素の気化とに時間差が生じるのが抑制されるので、過酸化水素と水との被殺菌物100への到着時間に生じる差が小さくなりやすい。よって、過酸化水素の殺菌効果が大きくなりやすい。
【0057】
次に、過酸化水素水溶液の気化現象について説明する。気化現象として、まずは、100Pa程度の真空状態下に80℃程度に加温した蒸発皿を置きこの蒸発皿に60%の過酸化水素水溶液を数ミリリットル垂らした場合について説明する。この場合、蒸発皿に過酸化水素水溶液を垂らすと、過酸化水素水溶液が一瞬にして蒸発すると考えられるが、実際は、フライパン等の物体上に滴下した水滴の様に、数ミリリットルの過酸化水素水溶液は、一部が跳ね一部が踊る動作を続けながら、若干分かれて徐々に体積を縮小させてゆき、最終的には完全蒸発する現象を起こす。この蒸発現象を蒸発途中で一旦止めて、残った過酸化水素水溶液の濃度を測定すると凡そ60%より高く測定される。また、蒸発現象の初期より中期、中期より後期の方がより過酸化水素の濃度が高くなる現象が確認される。これは、加熱された過酸化水素水溶液が経時的に水分子から優先的に蒸発していることを意味し、その原因は分子量にある。分子量が小さいほど振動しやすく気化しやすいため過酸化水素分子より先に水分子が気化すると考えられる。この気化順の傾向は、分子量が起因と考えられることからから不可避とも考えられるが気化現象自体をごく短時間を完了させるよう気化させれば事実上気化順は無視できると考えられる。本実施形態では、上記の考えに基づき、上記のとおり、二つの板45,46を設け、この板45,46の間で過酸化水素水溶液を瞬時に気化させることを実現した。
【0058】
以上、説明したように、本実施形態では、殺菌装置1は、殺菌庫11と、殺菌剤供給部12と、複数の加熱部43と、制御装置3と、を備える。殺菌庫11には、被殺菌物100を収容する殺菌室11aが内部に設けられている。殺菌剤供給部12は、殺菌室11a内を減圧することにより液体状の殺菌剤を気化させて、気化された殺菌剤を殺菌室11aに供給する。複数の加熱部43は、殺菌室11aに収容された被殺菌物100を加熱する。制御装置3は、複数の加熱部43をそれぞれ独立して制御する。
【0059】
このような構成によれば、加熱部43によって被殺菌物100を加熱した状態で、気化された殺菌剤によって被殺菌物100を殺菌することが可能である。すなわち、気化された滅菌剤を加熱部43で十分に加熱された被滅菌物100に作用させることができる。よって、被殺菌物100を加熱せずに、気化された殺菌剤だけで被殺菌物100を殺菌する構成に比べて、殺菌装置1の殺菌性能の向上を図ることができる。また、制御装置3が複数の加熱部43をそれぞれ独立して制御するので、被殺菌物100の温度を目標温度に保ちやすい。
【0060】
また、本実施形態では、殺菌装置1は、外側ヒータ25(外側加熱部)を備える。外側ヒータ25は、殺菌庫11の外側に配置され、殺菌庫11を加熱する。すなわち、外側ヒータ25は、殺菌室11aを加熱する。複数の加熱部43は、殺菌室11aに収容されている。
【0061】
このような構成によれば、外側ヒータ25が殺菌庫11を加熱するので、殺菌庫11内すなわち殺菌室11aが冷えるのが抑制されやすい。また、複数の加熱部43は、殺菌室11aに収容されているので、加熱部43の熱が被殺菌物100に伝わりやすい。
【0062】
また、本実施形態では、殺菌庫11は、殺菌室11aを囲む壁(上壁21a、下壁21b、右壁21c、左壁21d、後壁21e、扉22)を有する。複数の加熱部43のそれぞれの比熱は、壁(上壁21a、下壁21b、右壁21c、左壁21d、後壁21e、扉22)の比熱よりも低い。
【0063】
このような構成によれば、加熱部43の比熱が壁(上壁21a、下壁21b、右壁21c、左壁21d、後壁21e、扉22)の比熱よりも低いので、加熱部43の比熱が上記壁の比熱よりも高い場合に比べて、加熱部43を短時間で目標温度にすることができる。
【0064】
また、本実施形態では、殺菌装置1は、殺菌室11a内に殺菌庫11の上下方向に間隔を空けて配置され、被殺菌物100が載置される複数の主棚23(棚)を備える。殺菌剤供給部12は、互いに異なる前記主棚23の上下方向の下側に配置された複数の加熱・気化ユニット36(ユニット)を有する。加熱・気化ユニット36は、それぞれ、加熱部43と、間隔を空けて上下方向に対向した一対の板45,46と、加熱部43を収容し一対の板45,46を支持したケース41と、を有する。加熱部43は、一対の板45,46の周囲に設けられている。殺菌剤供給部12には、液体状の殺菌剤を一対の板45,46の間に供給する供給口42bと、上下方向と交差する方向に供給口42bと離間し、一対の板45,46の間の殺菌剤が一対の板45,46の間の外に流出する出口42cと、が設けられている。殺菌剤が、一対の板45,46の間で気化される。
【0065】
このような構成によれば、加熱部43が主棚23の下側に配置されているので、加熱部43を主棚23の近くに配置しやすい。よって、加熱部43による被殺菌物100の加熱量を大きくしやすい。
【0066】
また、上記構成によれば、二つの板45,46の間(例えば一定の間隔の隙間)に気体状の殺菌剤が噴出するので、気体状の殺菌剤を均一に拡散することができる。また、供給口42bから二つの板45,46の間に供給された液体状の殺菌剤が、二つの板45,46の間に広がるので、殺菌剤に加熱部43の熱が伝わりやすい。よって、殺菌剤を比較的短時間で気化させることができる。また、二つの板45,46が主棚23の下側に配置されているので、出口42cから出た気体状の殺菌剤が上昇して、主棚23上の被殺菌物100に到達する。よって、気体状の殺菌剤が被殺菌物100に比較的早く供給されやすい。
【0067】
ここで、例えば、気化器が殺菌室の外側に配置された構成の場合には、気化器から被殺菌物までの距離が長くなるので、例えば、気化器から殺菌室へ至る管内等の比較的温度が低い部分によって殺菌剤が凝結現象を起こし過酸化水素分子が奪われるため濃度が低下する場合がある。これに対して、本実施形態では、気化器42(二つの板45,46)が殺菌室11aに収容されているので、気化した殺菌剤が比較的短時間および短距離で被殺菌物100に到達することができる。よって、被殺菌物100に到達するまでの間に殺菌剤の温度が低下しにくい。これにより、気化した殺菌剤の結晶化が抑制されやすい。
【0068】
また、上記構成によれば、加熱部43と二つの板45,46とが加熱・気化ユニット36に含まれるので、加熱部43と二つの板45,46とが別個の構成に比べて、殺菌室11aへの加熱部43と二つの板45,46との設置がしやすい。
【0069】
また、本実施形態では、制御装置3は、加熱部43の温度が目標温度となるように加熱部43を制御する。加熱部43の目標温度が加熱・気化ユニット36ごとに異なる。
【0070】
ここで、複数の加熱・気化ユニット36は、互いに位置が異なるので、輻射熱の影響や当該加熱・気化ユニット36が発した発の殺菌庫11による吸収の量等が互いに異なる。これに対して、本実施形態では、上記のように、加熱部43の目標温度が加熱・気化ユニット36ごとに異なるので、加熱・気化ユニット36ごとに、被殺菌物100の温度を目標温度に保ちやすい。
【0071】
ここで、加熱・気化ユニット36は、殺菌時に例えば80℃程度の高温になり、殺菌後に作業者が接触可能な温度(例えば60℃)位まで下がるのに時間がかかる。これに対して、本実施形態では、主棚23に主棚23よりも比熱が低いネット26が設けられている。ネット26は、主棚23よりも比熱が低いので、主棚23よりも温度が冷めやすい。よって、殺菌装置1による殺菌動作が完了した後に、作業者が、被殺菌物100を取り出すために主棚23を引き出す場合には、主棚23に比べて温度が下がったネット26を介して、主棚23を引き出せばよい。これにより、作業者は、高温の加熱・気化ユニット36またはケース41に直接触れることなく、主棚23を引き出すことができる。ネット26は、加熱・気化ユニット36に作業者の指などが触れないようにするための安全柵である。
【0072】
次に、変形例について説明する。
図8は、実施形態の変形例の加熱・気化ユニット36の一部を例示的に示す平面図であって、上壁41a以外の部分を示す図である。本変形例では、加熱部43は、二つの凹凸状部43e,43fと、二つの直線状部43g,43hと、を有する。
【0073】
二つの凹凸状部43e,43fは、いずれも前後方向に延びており、幅方向に間隔を空けて設けられている。凹凸状部43fは、凹凸状部43eの右側に位置している。二つの凹凸状部43e,43fの間に二つの気化器42が位置している。
【0074】
二つの直線状部43g,43hは、いずれも幅方向に延びており、前後方向に間隔を空けて互いに平行に設けられている。直線状部43hは、直線状部43gの後側に位置している。二つの直線状部43g,43hの間に二つの気化器42が位置している。直線状部43gは、二つの凹凸状部43e,43fのそれぞれの前側の端部に亘っている。直線状部43hは、凹凸状部43fの後側の端部から左方に延びている。
【0075】
本変形例では、凹凸状部43eが伝熱部材52を介して温度センサ44と熱的に接続されている。
【0076】
次に、参考例としてのプラズマ滅菌装置について説明する。プラズマ滅菌装置は、例えば1インチの空間に、パンチングメタルの板である電極によってプラズマ放電させ、放電熱により温める方式のものである。
【0077】
過酸化水素ガスによる低温滅菌法は1990年代アメリカから製品が製造し始められ、1997年頃に日本でもその装置の販売が開始された。この滅菌法はプラズマ滅菌法と呼ばれた。これは滅菌工程中に30Pa前後まで真空にしプラズマを起こす工程が含まれるからであった。当時は、真空気化された過酸化水素分子がプラズマ放電により放出された電子と衝突することにより分離し、OHラジカルを生成させ、このOHラジカルに殺菌作用があることから、プラズマによる滅菌装置と呼ばれ、またメーカーもそのように説明し販売した。しかし、電子の衝突により生成されたOHラジカルは極めて短命で被殺菌物に到達する以前に消滅してしまう。また、プラズマ放電は、アンテナと殺菌庫内周の被殺菌物とは関わらない空間で主に発生しており、被殺菌物のある空間に達する電子はわずかである。また、そもそも過酸化水素ガスが発生した結果、殺菌庫の内部は1600Paまで圧力が上昇しており、プラズマなどは到底発生しえない状態である。また、プラズマが発生する30Pa程度では殺菌作用をもたらすような濃度の過酸化水素分子はほとんど存在しておらず殺菌していたとしても極めて僅かな影響しかないと考えられる。
【0078】
現在、プラズマは、むしろ、殺菌工程終了後の残留過酸化水素の分解処理が主な役割とする考え方が専門家の考えである。然るに、いまだにこのプラズマ滅菌法なる装置が存在し販売されているのかというと、プラズマには上記の説明以外の効果があるからである。すなわち、殺菌作用に効果があるのは、放出された電子ではなくプラズマ放電によるアンテナより発せられる放電熱なのである。過酸化水素に限らずガス滅菌を効率的に行うためには、被殺菌物の所低温までの加温が必要であるがプラズマ滅菌の場合、この放電熱により被殺菌物が加温され殺菌の効果を上げていると考えられる。
【0079】
よって、現在のプラズマ滅菌装置は、過酸化水素放出工程より前段階の滅菌工程の最初にプラズマ工程を設けている。例えば、滅菌工程の最初に減圧し約10~15分のプラズマ放電期間を設けている。先に説明した通り、プラズマは30Pa程度まで減圧しないと発生しない。この間、過酸化水素を投入しても直ちに真空ポンプに吸い出されてしまい真空ポンプを停止すると圧力は上昇しプラズマ現象は発生しない。すなわち、この区間行われているのは、エアープラズマでしかない。エアープラズマは、放電色がピンクに見えるが、それは、窒素が発色しているからであり、エアープラズマは窒素プラズマといえる。窒素は大変安定した分子なので、エアープラズマは殺菌に貢献しないとすると、殺菌に貢献するのは加熱(加温)としか考えられない。殺菌に貢献するのが加熱と考えるならば、10分から15分加熱した後、この熱で被殺菌物が加熱され後のプラズマに関係せず投入される過酸化水素ガスの殺菌作用にその加熱が貢献すると考えられる。
【0080】
しかしながら、上記のプラズマ装置は、加温装置として使うにはあまりに高価で複雑ある。
【0081】
なお、上記実施形態では、加熱・気化ユニット36が、主棚23の下側に配置されている例が示されたが、これに限定されない。例えば、加熱・気化ユニット36の上側で、右壁21cや左壁21d、上壁21aに重ねられていてもよい。また、上記実施形態では、副棚24が設けられた例が示されたが、副棚24は設けられていなくてもよい。
【0082】
発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0083】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、殺菌性能の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0084】
1…殺菌装置、3…制御装置、11…殺菌庫、11a…殺菌室、12…殺菌剤供給部、21a…上壁(壁)、21b…下壁(壁)、21c…右壁(壁)、21d…左壁(壁)、21e…後壁(壁)、22…扉(壁)、23…主棚(棚)、25…外側ヒータ(外側加熱部)、36…加熱・気化ユニット(ユニット)、41…ケース、42b…供給口、42c…出口、43…加熱部、45,46…板、100…被殺菌物。